説明

ファイバレーザデリバリシステム

【課題】レーザ切断加工機の柔軟性及び機能性を高め、加工レーザの輝度及び出力を切り替えることを可能とし、切断速度に応じて、ファイバレーザ切断加工機を使用する素材厚さの範囲及び応用範囲を広げ、生産性の向上も目指す。
【解決手段】レーザエンジン(1)と、レーザエンジン(1)が発振したレーザ光を分配するビーム分配手段(5)と、ビーム分配手段(5)により選択されてレーザ光が入射される一群のプロセスファイバと(4)を備え、ビーム分配手段(5)により選択されたプロセスファイバ(4)を経たレーザ光を加工ヘッドに入射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板の切断、または、溶接などのレーザ加工を行うためのファイバレーザデリバリシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属板の切断、または、溶接などのレーザ加工は、一般に、高い平均出力を有するレーザ光を、わずか数百μmの大きさの点に集束させることによって行われている。kW級レーザを使用するレーザ加工は、これまで、COレーザを用いて行われていた。近年では、金属板の加工には、ディスクレーザやファイバレーザなどのレーザダイオード励起固体レーザが、COレーザに代わって使用されることが多くなってきた。
【0003】
ファイバレーザには、輝度が高いこと、金属ターゲットによる吸収度が高いこと、短波長(1μm帯)であるため出力密度が高いこと、電力変換効率が高いこと、フットプリントが小さいこと、デリバリファイバが使いやすいことなど、いくつかの利点がある。
【0004】
切断速度は、ランニングコスト及びレーザ切断加工機の生産性において、重要なパラメータである。レーザ出力や輝度向上によって、より速い切断が可能となったので、生産性が向上している。しかし、同時にワークの操作(handling)時間の割合が増えたので、機械の空き時間(off time)が増える傾向にある。例えば、加工した後、ワークを別のレーザ切断加工機に移動して追加加工を行う場合には、レーザ切断加工機を使わない状態が発生する。これは、生産性向上の妨げになるので、多数の機能を持つレーザ切断加工機、例えば、複合レーザ切断加工機を開発する必要が出てきた。
【0005】
さらに、ジョブショップ(job shop:注文生産方式)を採用するユーザにおいては、加工応用幅が広い、例えば、薄い板から厚い板まで切断可能なレーザ切断加工機が求められる。しかし、素材の特性によって最適なレーザの加工条件が違うので、広い範囲の条件が選択できるレーザ切断加工機が必要となる。つまり、レーザ光の特性を切り替えるような機能を有するレーザ切断加工機が必要となる。
【0006】
図7は、1ミクロン波長帯で、出力4kW、ビームパラメータ積(BPP値)が0.34mm−mradから8mm−mradまでの窒素切断で最大切断速度の板厚への依存性を示すグラフである。
【0007】
図7に示すように、板厚が5mmを越えると、切断速度のビームパラメータ積(BPP値)への依存性はほとんど無い。一方、板厚が5mm以下だと、BPP値が小さいほうが速く切れる。つまり、厚い金属板を切断する場合には、最高切断速度は、ただ単にレーザ総出力に依存するだけで、BPP値にはあまり依存しない。しかし、厚さ数mm未満の薄板を切断する場合には、BPP値が最高切断速度に及ぼす影響が大きくなる。
【0008】
図8は、1mm厚のSUS304(ステンレス)素材の切断速度のBPP値への依存性を示すグラフである。
【0009】
1mm厚のSUS304(ステンレス)素材を窒素切断する場合には、図8に示すように、BPP値が小さければ小さいほど切断速度が大きくなる。
【0010】
単一モード、または、準単一モードで放射されるファイバレーザのBPP値は、1mm−mradをかなり下回る。単一モード、または、準単一モードレーザは、一般に、スキャナ及び焦点距離の長いf−θレンズと組み合わせて使用され、ビームのスキャンを高速度で実行できる。これがリモート(遠隔)切断技術である。複雑な輪郭であっても、従来の切断技術(i.e.,conventional linear drive in fusion cutting)に比較して切断速度を高めることができる。単一モード、または、準単一モードレーザから得られる出力は、数kWに制限されるが、これは、誘導ラマン効果、または、ファイバコア内の高い出力密度により生じる光損傷があるためである。
【0011】
ファイバレーザのレーザ出力は、一般に、プロセスファイバ(PF)により加工ヘッドに伝えられる。プロセスファイバは、5m〜50mの長さと、50μm〜400μmのコア径を持つ受動ファイバである。BPP値は、一般に、プロセスファイバの入力側よりも出力側で大きくなるが、それは、プロセスファイバを透過する際に、単一モードと複数モードとの混合や分散が生じるからである。
【0012】
広範な厚さの金属板に対応できるように、加工ヘッドの光学倍率は一般に可変であり、これにより、ターゲット上でのビーム直径を調節することができる。つまり、小さな倍率及び短いレイリー長を使用して、薄い金属板を切断することができる。ときには、これは、特許文献1に記載されているように、適応型光学素子(曲率可変ミラー、または、レンズ等のいわゆる「Adaptive Optics」と称される光学素子)を使用するか、または、コリメーティングレンズ及び集束レンズの位置を調節することにより、加工ヘッドの光学素子を変更(交換)することなく実現することができる。しかし、この技術においても、レーザエンジンの利用可能な最大出力及びBPP値は、設計により固定されているため、薄い金属を切断するのに都合が良いBPP値を小さくする手段は存在しない。
【0013】
図9は、様々なレーザにおける輝度と出力との関係を示すグラフである。
【0014】
現在において可能なレーザの出力と輝度との組合せは、図9に示すように、ファイバレーザにおいて、出力2kW〜3kWまではシングルモードであるが、出力3kW以上の場合は、輝度が低くなる。そして、厚板と薄板では、それぞれに最適なパラメータ範囲が異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平11−058059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述したような従来のレーザ切断加工機においては、以下のような問題点がある。
【0017】
すなわち、薄板切断と厚板切断とでは、最適な領域が異なる。そして、厚板切断に相応しいパラメータの発振器を選択すれば、薄板に相応しいパラメータへの切り替え手段が無く、逆に、薄板切断に相応しいパラメータの発振器を選択すれば、厚板に相応しいパラメータへの切り替え手段が無い。
【0018】
このような制限があるため、1つのレーザエンジンと出力及びBPP値との最良の組み合わせでは、任意の厚さの金属板を切断することが不可能である。
【0019】
そこで、本発明は、前述の課題を解決するために提案されるものであって、本発明の目的は、レーザ切断加工機の柔軟性及び機能性を高めることであり、加工レーザの輝度及び出力を切り替えることを可能とし、切断速度に応じて、ファイバレーザ切断加工機を使用する素材厚さの範囲及び応用範囲を広げ、生産性の向上も目指すものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係るファイバレーザデリバリシステムは、以下の構成を有するものである。
【0021】
〔構成1〕
レーザエンジンと、レーザエンジンが発振したレーザ光を分配するビーム分配手段と、ビーム分配手段により選択されてレーザ光が入射される一群のプロセスファイバとを備え、ビーム分配手段により選択されたプロセスファイバを経たレーザ光を加工ヘッドに入射させることを特徴とするものである。
【0022】
〔構成2〕
構成1を有するファイバレーザデリバリシステムにおいて、レーザエンジンとして、1030±30nmの波長帯で発振するイッテルビウム添加発振器を有することを特徴とするものである。
【0023】
〔構成3〕
構成1を有するファイバレーザデリバリシステムにおいて、ビーム分配手段により、レーザエンジンから出るレーザ光を、一方のプロセスファイバから他方のプロセスファイバに切り替えることができることを特徴とするものである。
【0024】
〔構成4〕
構成1を有するファイバレーザデリバリシステムにおいて、プロセスファイバは、レーザ輝度を実質的に高めることを特徴とするものである。
【0025】
〔構成5〕
構成1を有するファイバレーザデリバリシステムにおいて、加工ヘッドは、コリメーテイングレンズ及び集束レンズを備え、加工ヘッドの変更、または、位置合わせを行うことなく、一方のプロセスファイバから他方のプロセスファイバに切り替えることが可能であることを特徴とするものである。
【0026】
〔構成6〕
構成1を有するファイバレーザデリバリシステムにおいて、レーザエンジンの個別のモジュールは、約1030±30nmの光を放射し、出力結合器の後のデリバリファイバは、放射光を1080±30nmに変換する能動ダブルクラッドファイバレーザであることを特徴とするものである。
【0027】
〔構成7〕
構成1を有するファイバレーザデリバリシステムにおいて、第1段階は、1030±30nmのレーザ光を放射する自由空間ディスクレーザであり、出力結合器の後のデリベリファイバは、放射光を1080±30nmに変換する能動ダブルクラッドファイバレーザであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るファイバレーザデリバリシステムにおいては、ビーム分配手段により選択されたプロセスファイバを経たレーザ光を加工ヘッドに入射させるので、プロセスファイバを選択することにより、加工レーザの輝度及び出力を切り替えることが可能であり、切断速度に応じて、ファイバレーザ切断加工機を使用する素材厚さの範囲及び応用範囲を広げることができる。
【0029】
すなわち、本発明に係るファイバレーザデリバリシステムにおいては、レーザ切断加工機の柔軟性及び機能性を高めることができ、加工レーザの輝度及び出力を切り替えることを可能とし、切断速度に応じて、ファイバレーザ切断加工機を使用する素材厚さの範囲及び応用範囲を広げ、生産性の向上も図ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るファイバレーザデリバリシステムの構成を示す側面図である。
【図2】ビームスイッチを備えた加工ヘッドのスキームである。
【図3】加工バリエーションを示す図である。
【図4】典型的なイッテルビウム添加ファイバのようなガラスの吸収や放出分光性を示すグラフである(出典:Rudiger Paschotta, Johan Nilsson, Anne C. Troper and David C. Hanna,`Ytterbium-doped fiber amplifiers`, IEEE. J. Quan. Electron. Vol. 33 (7), p.1049-1056, 1997.)。
【図5】能動デリパリファイバがレーザエンジンの内側に置かれている第2の実施の形態を示す図である。
【図6】ディスクレーザとファイバレーザとを組み合わせた第3の実施の形態を示す図である。
【図7】1ミクロン波長帯で、出力4kW、ビームパラメータ積が0.34mm−mradから8mm−mradまでの窒素切断で最大切断速度の板厚への依存性を示すグラフである(出典:Dirk Petring, Frank Schneider, Norbert Wolf, Vahid Nazery, The relevance of brightness for high power laser cutting and welding, ICALEO 2008, p.95-103.)。
【図8】1mm厚のSUS304(ステンレス)素材の切断速度のBPP値への依存性を示すグラフである(出典:本件出願人が作成)。
【図9】様々なレーザにおける輝度と出力との関係を示すグラフである(出典:Dirk Petring, Frank Schneider, Norbert Wolf, Vahid Nazery, The relevance of brightness for high power laser cutting and welding, ICALEO 2008, p.95-103.)。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0032】
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るファイバレーザデリバリシステムの構成を示す側面図である。
【0033】
本発明に係るファイバレーザデリバリシステムは、図1に示すように、二段階構造の発振器を有して構成される。このファイバレーザデリバリシステムは、第1段階のレーザエンジン(1)、ビーム分配手段となるビームスイッチ(5)及び一群の能動及び受動プロセスファイバ(4)を備える。
【0034】
第1段階のレーザエンジン(1)は、設計により固定されている最高出力及びビームパラメータ(BPP)を有し、1030±30nmの範囲の光を放射する。第1段階のレーザエンジン(1)は、フィーディングファイバから適切に定められた最大出力及びBPP値を持つビームを送出する従来のイッテルビウム添加ダブルクラッドファイバレーザエンジン(波長1030±30nm)である。これは、大半のイッテルビウムベースファイバレーザ(波長1080±30nm)とは、発光波長だけが異なるものである。
【0035】
フィーディングファイバから出力される光は、複数のプロセスファイバ(4)のいずれかに注入される。各プロセスファイバ(4)は、スライド式ステージ上に取付けられた移動可能な鏡により、いずれかが選択される。
【0036】
ビームスイッチ(5)は、フィーディングファイバから1つまたは複数のプロセスファイバ(4)内に出力を分配することができる一組の機械的及び光学的コンポーネントである。
【0037】
いくつかのプロセスファイバ(4)は、ほとんど出力損失を示さないが、BPP値の劣化(値は増加)をもたらす従来の受動ファイバである。また、いくつかのプロセスファイバ(4)は、低輝度のレーザ発光を高い輝度に変換するイッテルビウム添加ダブルクラッドファイバであるが、プロセスファイバ(4)の出力側では、出力は設計によって2割〜4割まで減少する。
【0038】
受動(イッテルビウム無添加)プロセスファイバ(4)に加えて、プロセスファイバ(4)のいくつかは、内側及び外側クラッドのほかに、イッテルビウム添加コアを含む。フィーディングファイバから出てくる光は、コリメートされ、プロセスファイバ(4)の内側クラッド内に集束される。光が、これ以降「能動」プロセスファイバと呼ばれるイッテルビウム添加コアを有するプロセスファイバ(4)内に注入される場合、注入光は、イッテルビウム添加コアにより吸収される。能動プロセスファイバは、1030±30nmの注入光から約1080±30nmに転換するレーザ発振器である。
【0039】
能動プロセスファイバにおいては、以下の〔表1〕に示すように、従来の受動プロセスファイバと異なり、輝度は入力輝度よりも高くなるが、光−光変換効率により出力が低下する。コア−クラッド比及び添加濃度など、プロセスファイバの適切な設計により、輝度の増大及び出力を調節して、種々の用途及び素材に最適な組み合わせを実現することができる。受動プロセスファイバは、損失が最小であるため、厚い金属板の溶接、または、切断に使用されるべきであるが、BPP値の増加は、加工速度及び品質に目立った影響を及ぼすほどではない。薄い金属板の切断、または、遠隔切断を行う場合など、輝度を高めることが有利な場合には、能動プロセスファイバを選択する。
【0040】
【表1】

〔表1〕は、50μmのフィーディングファイバから出た5kW、3mm−mradのビームに対して、受動プロセスファイバ及び能動プロセスファイバから出た出力とビーム品質の計算値を示している。
【0041】
この第1の実施の形態において、一組のプロセスファイバ(4)の一実施例を使用すると、50μmのフィーディングファイバからBPP値=3mm−mradのビームを送出する5kWのファイバレーザの場合について、〔表1〕に示されている広範な応用例に対応することが可能となる。
【0042】
図2は、ビームスイッチを備えた加工ヘッドのスキームである。
【0043】
加工ヘッドは、図2に示すように、さらに、同じ加工ヘッドを使用しながらユーザ側でプロセスファイバ(4)を切り替えることができるビーム切り替えメカニズムを備えるように設計できる。
【0044】
この加工ヘッドにおいて、一方のプロセスファイバから他方のプロセスファイバに切り換える作業は、ビーム切り換えシステムを使用することにより、加工ヘッドを換えることなく行うことができる。複数のプロセスファイバに対応する2つまたは複数の出力コネクタを加工ヘッドに取り付けることができる。加工ヘッドの内側に適宜配置されたスライド式鏡を使用することにより、プロセスファイバ、または、加工ヘッドを操作しなくても、ビーム出力を選択することができる。
【0045】
次に、本発明係るファイバレーザデリバリシステムの動作を説明する。
【0046】
図3は、加工バリエーションを示す図である。
【0047】
左図は、励起光源は半導体レーザであるので、出力の低下が起こらないが、輝度が良くない場合である。
【0048】
中央の図は、ファイバレーザの出力は、励起光源に比べて30%程度低いが、輝度の増加があるので、溶接や切断に相応しいものである。。
【0049】
右図は、第2段階において、第1段階から出て来た光を励起光源として、イッテルビウム添加ファイバに入射させて、輝度を増加させるものである。この場合には、出力が30%程度低くなるので、薄い板の切断や遠隔切断に相応しい。
【0050】
このような加工バリエーションを目的として、図3に示すように、2段階に分けて輝度を増加させる。まず、発振器そのものでは、出力は半導体励起光源に比べて2割〜4割程度低くなるが、輝度が高くなる。これを、第1段階の光という。輝度増加率Aは、次の方程式で計算することができる。
【0051】
【数1】

ここで、ηは光−光出力変換効率であって、BPPLDとBPPfiberは励起光とファイバレーザ光のBPP値である。Double- fiberの特性で書くと、以下のように示される。
【0052】
【数2】

ここで、NAは、クラッドあるいはコアの広がり角度、Dは、クラッドあるいはコアの直径である。
【0053】
設計によって、数字が変わるが、一般的に、以下のように示される。
【0054】
【数3】

したがって、輝度増加率は、以下のように示される。
【0055】
【数4】

第1段階から出た光は、別のイッテルビウム添加されたファイバを励起させて、更に輝度を高めることができる。
【0056】
図4は、典型的なイッテルビウム添加ファイバのようなガラスの吸収や放出分光性を示すグラフである。
【0057】
二段階輝度増加ができる理由は、いくつかある。まず、図4に示すように、ファイバの吸収や放出分幅も広い。したがって、第1段階で、1030nm付近で発振させたら、1030nm付近でイッテルビウムの吸収があるので、さらに1030nmでの励起光源として使える。もう一つの理由は、吸収係数が小さくても、コア−クラッド比を大きく選択でき、さらにファイバ長さが長く選べるので、吸収率や利得係数と長さとの積も充分大きくすることができ、 充分に高い光−光変換効率が得られる。
【0058】
〔第2の実施の形態〕
図5は、能動デリパリファイバがレーザエンジンの内側に置かれている第2の実施の形態を示す図である。
【0059】
ビーム分配手段となる受動デリバリファイバは、図5に示すように、イッテルビウム添加ダブルクラッドファイバレーザ(8)により置き換えることができる。数kWのレーザエンジンは、一般に、一組のモジュール(6)からなり、モジュール(6)からのファイバは、テーパが付けられ、束ねてまとめられる(7)。これらは、次いで、自由空間の光学素子により、または、出力結合器をデリバリファイバ(8)と継ぎ合わせることにより、デリバリファイバ(8)に送られる。デリバリファイバ(8)は、出力結合器から出る光を吸収して、約1080±30nmのレーザ波長に変換する。光の注入はデリバリファイバ(8)内のより大きなクラッディング(9)内で行われ、誘導放出は小さなイッテルビウム添加コア(10)内で生じるため、出力及び輝度が高められる。
【0060】
この実施の形態では、レーザエンジン及び上述の能動プロセスファイバは、レーザエンジンの内部にまとめることができる。
【0061】
この実施の形態では、出力結合器からの光を内側第1のクラッド(9)のより大きな開口内に注入することが可能なので、輝度及び出力のスケーラビリティは、従来の設計に比べて高められている。そのため、外側第2クラッドへの出力の漏れが抑えられ、したがって熱負荷が小さくなる。その結果、より大きな出力をプロセスファイバに注入することができる。さらに、第2段階のビーム質や輝度も、小さなイッテルビウム添加コアの内側でのレーザ変換により高められる。
【0062】
なお、従来の技術では、結合器の後に放射される光の輝度は、それぞれのモジュールにより放射される光よりも一般に低い。レーザエンジンの輝度を高めるために以下のようにレーザ発振器を設計する。
【0063】
(1)それぞれのモジュールから出力されるレーザを約1030±30nmに設定し、
(2)合器の出力後の光は、イッテルビウム添加ダブルクラッドファイバを備えるデリバリファイバ(8)内に注入され、
(3)デリバリファイバは、1030±30nmの励起光を吸収し、約1080±30nm光を放射する。
【0064】
〔第3の実施の形態〕
図6は、ディスクレーザとファイバレーザとを組み合わせた第3の実施の形態を示す図である。
【0065】
第3の実施の形態は、図6に示すように、薄いディスクレーザとファイバレーザとを組み合わせたものである。イッテルビウム添加YAG材料、または、類似のホスト(11)が、薄いディスクレーザ(12)に対する能動媒体として使用される。
【0066】
レーザ発光は、約1030nmのYAGで発生する。次に、ディスクレーザエンジンから光を加工ヘッドに伝達するために従来の技術で使用されている従来の受動多モードファイバは、能動イッテルビウム添加DCFL(13)により置き換えられる。
【0067】
ディスクレーザ(12)からのレーザ発光は、自由空間内で発生する。本発明では、ディスクレーザの能動素子(例えば、イッテルビウム添加されたYAGホスト)(11)は、ビーム分配手段となる受動デリパリファイバの代わりとなるイッテルビウム添加ファイバレーザ(13)の1030nm波長付近の励起光源として使用される。
【0068】
能動イッテルビウム添加DCFL(13)は、約1030nmの入射光により励起されるレーザ発振器であり、能動ファイバの特性に応じて、〜1030nmから〜1080nmの範囲のレーザ変換による放射光の輝度を高めるが、出力損失が存在する。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は金属板の切断、または、溶接などのレーザ加工を行うためのファイバレーザデリバリシステムに適用される。
【符号の説明】
【0070】
1 第1段階のレーザエンジン
4 プロセスファイバ(PF)
5 ビームスイッチ
6 モジュール
8 デリバリファイバ
9 クラッディング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザエンジンと、
前記レーザエンジンが発振したレーザ光を分配するビーム分配手段と、
前記ビーム分配手段により選択されてレーザ光が入射される一群のプロセスファイバと
を備え、
前記ビーム分配手段により選択されたプロセスファイバを経たレーザ光を加工ヘッドに入射させる
ことを特徴とするファイバレーザデリバリシステム。
【請求項2】
前記レーザエンジンとして、1030±30nmの波長帯で発振するイッテルビウム添加発振器を有する
ことを特徴とする請求項1記載のファイバレーザデリバリシステム。
【請求項3】
前記ビーム分配手段により、前記レーザエンジンから出るレーザ光を、一方のプロセスファイバから他方のプロセスファイバに切り替えることができる
ことを特徴とする請求項1記載のファイバレーザデリバリシステム。
【請求項4】
前記プロセスファイバは、レーザ輝度を実質的に高める
ことを特徴とする請求項1記載のファイバレーザデリバリシステム。
【請求項5】
前記加工ヘッドは、コリメーテイングレンズ及び集束レンズを備え、加工ヘッドの変更、または、位置合わせを行うことなく、一方のプロセスファイバから他方のプロセスファイバに切り替えることが可能である
ことを特徴とする請求項1記載のファイバレーザデリバリシステム。
【請求項6】
レーザエンジンの個別のモジュールは、約1030±30nmの光を放射し、出力結合器の後のデリバリファイバは、放射光を1080±30nmに変換する能動ダブルクラッドファイバレーザである
ことを特徴とする請求項1記載のファイバレーザデリバリシステム。
【請求項7】
第1段階は、1030±30nmのレーザ光を放射する自由空間ディスクレーザであり、出力結合器の後のデリベリファイバは、放射光を1080±30nmに変換する能動ダブルクラッドファイバレーザである
ことを特徴とする請求項1記載のファイバレーザデリバリシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−43849(P2012−43849A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181373(P2010−181373)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(390014672)株式会社アマダ (548)
【Fターム(参考)】