説明

ファイル変換処理方法とその装置

【課題】 従来の印刷環境における出力機のアミ点再現を忠実に行えるようにする標準化的なDTPサーバであるRIP装置を使用したファイル変換処理方法とその装置を提供する。
【解決手段】 製作データからのRIP処理によるレンダリング/ラスタライズ・ビットマップを任意のファイル形式で加工する加工機を備えたファイル変換処理装置1であって、加工後の製作データをマシンを動作可能な言語に翻訳する言語翻訳機構と、翻訳したファイルを整理し印刷すべきデータのみとするアウトライン化機構と、アウトライン化した製作データを指示したトーンに置き換えるグレー化機構と、グレー化した製作データをアミ点に置き換えるビットマップ化機構とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラスタライズイメージプロセッサ(以後、RIPと略称する)処理中のラスタライズ/ビットマップ系のTiffファイルを出力機(出力エンジン)に関係なく変換処理が行えるようにしたファイル変換処理方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製作データからのRIP処理によるレンダリング/ラスタライズ・ビットマップを、画像ファイルの保存形式として例えばTiffファイル形式で印刷データ加工した後に、印刷環境に対応した出力機によってアミ点再現を行う技術がある。尚、このRIP処理とは、DTPで作った例えばポストスクリプトデータ(以後、PSデータと略称する)をイメージセッター等に出力するに際し、全て出力解像度に合わせてビットマップデータ、つまり白黒の点(ドット)に変えるとき、階調もアミ点として発生し、データは1ビットTiffの画像データとなるように作業を行うためのプログラムである。
【0003】
また、従来の印刷では、水の油をはじく性質を利用して、印刷版に親水性の部分と、インキの乗る親油性の部分とを構成するようにしてある。この印刷版をデータから直接作り出す装置または出力機をCTP(コンピュータツープレート)またはプレートセッターと称している。例えば、データが50%のアミ点を要求した場合、印刷版には親水性の部分と親油性の部分が半分づつの多くは市松模様になっており、この模様の黒い部分にインキが付着して最終的に紙等のメディアに転写される。
【特許文献1】特になし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来における製作データのRIP処理後のアミ入れ加工は、出力機による制限があったため、当該出力機に連動させる必要性が要求されていた。また、フィルム出力等による製作データとCTP出力等による印刷データとの間では、異なるRIP処理によってアミの再現が失われる。さらに、製作会社で作られた印刷データは、印刷会社の特有のRIP処理によりCTP出力されても同品質の状態では出力できない。
【0005】
また、従来の印刷では、インキには表面張力があり、正確な正方形の角を構成することは無理であるし、印刷機の能力や印刷技術にも問題があり、紙に転写される際の印刷機のブランケットと紙の間に係る圧力である印圧により市松模様のまま転写されずにはみ出して印刷されることとなる。
【0006】
これをアミ点の太り、すなわちドットゲインと称し、印圧のみが原因ではなく使用する水の量にも影響される。尚、水の量が少ない程ドットゲインは少ないと言われていて、それを考慮した方式を水無し印刷と称している。このドットゲインは各印刷所、印刷機(新旧の違い)、方式(平台校正機と枚葉印刷機、輪転機)等の違いによっても起こる。要するに、現状のままでは印刷版が正しくても正確な印刷がどれなのか判断できない。したがって、各印刷機毎の性格またはプロファイルを印刷版に予め与えておく方法が採られるが、必ずしもこれが考慮されている訳ではないのが実状である。
【0007】
そこで、本発明は、叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、製作データからのRIP処理によるレンダリング/ラスタライズ・ビットマップをTiffファイル形式で印刷データ加工後に、従来の印刷環境における出力機のアミ点再現を忠実に行えるようにする標準化的なDTPサーバであるRIP装置を使用したファイル変換処理方法とその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明に係るファイル変換処理方法にあっては、製作データからのRIP処理によるレンダリング/ラスタライズ・ビットマップを任意のファイル形式で加工する工程を有するファイル変換処理方法であって、加工後の製作データをマシンを動かせる言語に翻訳し直し、翻訳されたファイルを整理し印刷すべきデータのみとするようアウトライン化し、アウトライン化された製作データを指示されたトーンに置き換えてグレー化した後に、グレー化された製作データをアミ点に置き換えてビットマップ化するものである。
【0009】
また、前記したそれぞれの処理による段階で独自のファイルフォーマットによるデータを適宜取り出せるものとすることができる。
【0010】
また、本発明に係るファイル変換処理装置にあっては、製作データからのRIP処理によるレンダリング/ラスタライズ・ビットマップを任意のファイル形式で加工する加工機を備えたファイル変換処理装置であって、加工後の製作データをマシンを動かせる言語に翻訳する言語翻訳機構と、翻訳されたファイルを整理し印刷すべきデータのみとするアウトライン化機構と、アウトライン化された製作データを指示されたトーンに置き換えるグレー化機構と、グレー化された製作データをアミ点に置き換えるビットマップ化機構とを備えたものである。
【0011】
さらに、前記したそれぞれの機構による段階でデータを適宜取り出せるよう独自のファイルフォーマットを備えたものとすることができる。
【0012】
以上のように構成された本発明に係るファイル変換処理方法とその装置にあって、加工後の製作データをマシンを動かせる言語に翻訳し直したファイルを整理して印刷すべきデータのみとするようアウトライン化させる。そして、アウトライン化された製作データを指示されたトーンに置き換え(グレー化)た後に、グレー化された製作データをアミ点に置き換える(ビットマップ化)。こうすることで、少なくとも印刷工程まで製作データと同じ状態のCTP出力を可能にさせる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、製作データからのRIP処理によるレンダリング/ラスタライズ・ビットマップをTiffファイル形式で印刷データ加工後に、従来の印刷環境における出力機のアミ点再現を忠実に行うことができる。
【0014】
すなわち、少なくとも印刷工程まで製作データと同じ状態のCTP出力を可能にし、色調再現を製作データに限りなく近づけることができる。また、製作会社で1ビットにTiff化されたデータは、海外でも同様、何処の印刷会社でCTP出力されても同品質の状態で出力できる。さらに、RIP処理によるラスタライズ後のデータのアミ入れ加工が容易に行える。また、ターゲットはデータ、印刷版にはドットゲインを考慮せず、印刷結果はデータに極力近いアミ%に仕上げることができ、印刷技術の向上、工程の組み替え(ワークフローの再構成)、人員の再配置、印刷機の入れ替え等々昨今いわれている業界改革に拍車を駆けることとなる。しかも、現状の作業工程を考慮し、印刷機のプロファイルを印刷版上に活かした出力も行える。
【0015】
また、印刷サイトにおいては、
(1)印刷工程の刷版処理にかかる時間効率が向上する。
(2)印刷品質の安定化(アミ%の再現性)の向上と共に、メーカを選ばずに印刷量の向上が図れる。
(3)各印刷会社の出力機相互間では異なるアミ点形状のものも出力(印刷)が可能となる。
(4)印刷標準を作りやすい。
(5)印刷用のデータ変換時に文字化けやレイアウト崩れ等が発生しない。
(6)出力機側の高解像度フォントが不要となる。
(7)印刷データ送信に際し、ファイルの圧縮化や1ファイル(色別ファイル)毎の転送送信が可能となる。
【0016】
一方、製作サイトにおいては、
(1)RIP処理後のCTP出力機の購入を必要としないため、安価にシステム化することができる。
(2)DTP作業工程の一環となるRIP(1ビットTiff)ファイルを作製することで、全ての印刷会社へのデータ渡しが可能となる等、印刷会社への供給がスムーズになる。
(3)製作データで変換したアミ点を外部で出力した場合に、フィルム使用時やドットゲイン処理したRIPでは各社仕様の異なるアミ点となるが、本発明では、自社仕様と同一のアミ点が再現できる。
(4)印刷会社では独自に出力環境を構築しているため、同一品質の印刷物の製作が不可能だが、本発明では、1ビットTiffを使用しているために容易に固定化できる。
(5)アプリケーションまたはそのバージョンを気にせずに変換が可能となる。
(6)フォントは印刷サイトの環境から独立しているため、製作サイトは自由にフォントを選択でき、デザインの自由度が向上する。
(7)印刷工程へのデータ送信に際し、ファイルの圧縮や1ファイル(色別ファイル)毎の転送送信が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図面を参照して本発明を実施するための最良の一形態を説明すると、図において示される符号1は、製作データからのRIP処理によるレンダリング/ラスタライズ・ビットマップを任意の、例えばTiffファイル形式等で加工する加工機を備えたファイル変換処理装置である。
【0018】
RIP処理によるファイル変換処理装置1は、図1に示すように、入力機2から受け取ったPS、PDF、EPS、その他のアプリケーションファイルによるDTPデータからTiffファイルのみを利用して、CTP、プレートセッター、プリンタ等、その他の出力機6に送るものであり、言語翻訳機構を備えたインタープリタ部3、アウトライン化機構とグレー化機構を備えたレンダリング部4、ビットマップ化機構を備えたラスタライズ部5とから成り、インタープリタ部3からレンダリング部4までのベクトル系以外、レンダリング部4からラスタライズ部5までのラスタ系、ラスタライズ部5から出力機6までのビットマップ系それぞれのTiffファイルのみを利用するものである。また、図3に示すように、それぞれの機構による段階で独自のファイルフォーマットによるデータを適宜取り出せるものとしてある。
【0019】
インタープリタ部3は、入力機2から受け取ったDTPデータがPS、PDF、EPSのどのアプリケーションファイルによるものかを判断し、言語翻訳機構によって加工後の製作データをマシンを動かせる言語に翻訳するためのものである。
【0020】
レンダリング部4は、アウトライン化機構で、翻訳されたファイルを整理し印刷すべきデータのみとし線画像状態にすると共に、グレー化機構によって、アウトライン化された製作データを指示されたトーンに置き換えるためのものである。
【0021】
ラスタライズ部5は、ビットマップ化機構により、グレー化された製作データをビットマップ化すなわちアミ点に置き換えるためのものである。
【0022】
レンダリング部4のグレー化機構の後で取り出されたデータには絵としての表現はされているがアミ点化(固定)されていないので、このデータに対しアミ入れを各印刷サイトで行うものとした場合には、既に標準化されたアミのターゲット(例えばJMPA)があれば、それに従うことも可能である。ただし、ここにターゲットを持つことは印刷機の性能がこの表現を受け入れられる範囲内にあるか否かが判別できないので従来の印刷工程を改善する方向には向かないものとなる。
【0023】
そこで、この段階でデータに対し印刷サイト(実際に利用する印刷機)に適合したアミ入れを行うものとしてある。この場合、印刷機の表現能力の範囲内であるにも関わらず目的の表現ができ、標準化に向かう強力な方法となる。
【0024】
例えば、現状フィルムの場合のアミ再現では、現状での印刷物とは最終工程の印刷会社で違うものとなり、製作会社が作り上げたものとは異なる。また、アプリケーション渡しによる現状のプレート出力の場合は、現状のアプリケーション渡しに際し、フィルム同様に異なる印刷物が出来上がってしまう。また、Tiff渡しによる現状のプレート出力の場合は、印刷物自体の出来上がりは問題ないが、作製時点とRIP変換時に再現性が違うため微妙に変化した印刷物(例えば作製時5%が印刷時では2%となる等)となる。これに対し、本発明による、1対1Tiffの場合は、全て同一データからの変換・出力のため、同一印刷物の出来上がりとなる。
【0025】
次に、製作データからのRIP処理によるファイル変換処理装置1の動作について、図2、図3を参照して説明する。先ず、インタープリタ部3で、入力機2から受け取ったDTPデータがPS、PDF、EPSのどのアプリケーションファイルによるものかを判断し、言語翻訳機構により加工後の製作データをマシンを動かせる言語に翻訳する。これを出力するものと判断した場合には、ファイル出力フォーマットとしてPDFv1.3を採用する。
【0026】
出力しないと判断したデータは、ベクトル系ファイルとしてレンダリング部4のアウトライン化機構に送り、翻訳されたファイルを整理し印刷すべきデータのみとし線画像状態にする所謂アウトライン化する。これを出力するものと判断した場合には、ファイル出力フォーマットとしてノーマライズドPDFを採用する。このレベルのデータまではこれまでの方法でもユーザー側で作製可能な、例えばアウトラインPDFがある。尚、通常/標準印刷データでも良い。
【0027】
出力しないと判断したデータは、レンダリング部4のグレー化機構に送り、アウトライン化された製作データを指示されたデータ通りのトーンに置き換える。これを出力するものと判断した場合には、ファイル出力フォーマットとしてTiff4cGrayを採用する。これまでは、アミがかかっていないため、融通性のきくデータであり、直しの必要がある時には、利用価値はあるが、工程改善には結びつかない。
【0028】
出力しないと判断したデータはラスタ系ファイルとしてラスタライズ部5に送り、ビットマップ化機構によって、グレー化された製作データをビットマップ化すなわちアミ点に置き換える(スクリーニング)。これを出力するものと判断した場合には、ビットマップ系ファイルの出力フォーマットとして1ビットTiffを採用する。この時点のデータは固定されたデータであり、直しは利かない(直しはしないことを前提としている)。そして、出力しないと判断したデータは、プレートセッター、プリンタ等の出力機6によって出力される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を実施するための最良の形態を示すRIP処理によるファイル変換処理装置のブロック構成図である。
【図2】同じくRIP処理によるファイル変換処理装置動作を説明する説明図である。
【図3】同じくRIP処理によるファイル変換処理装置の動作を説明するフローチャート図である。
【符号の説明】
【0030】
1 RIP処理によるファイル変換処理装置
2 入力機
3 インタープリタ部
4 レンダリング部
5 ラスタライズ部
6 出力機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
製作データからのRIP処理によるレンダリング/ラスタライズ・ビットマップを任意のファイル形式で加工する工程を有するファイル変換処理方法であって、加工後の製作データをマシンを動かせる言語に翻訳し直し、翻訳されたファイルを整理し印刷すべきデータのみとするようアウトライン化し、アウトライン化された製作データを指示されたトーンに置き換えてグレー化した後に、グレー化された製作データをアミ点に置き換えてビットマップ化することを特徴としたファイル変換処理方法。
【請求項2】
前記したそれぞれの処理による段階で独自のファイルフォーマットによるデータを適宜取り出せるものとした請求項1記載のファイル変換処理方法。
【請求項3】
製作データからのRIP処理によるレンダリング/ラスタライズ・ビットマップを任意のファイル形式で加工する加工機を備えたファイル変換処理装置であって、加工後の製作データをマシンを動かせる言語に翻訳する言語翻訳機構と、翻訳されたファイルを整理し印刷すべきデータのみとするアウトライン化機構と、アウトライン化された製作データを指示されたトーンに置き換えるグレー化機構と、グレー化された製作データをアミ点に置き換えるビットマップ化機構とを備えて成ることを特徴とするファイル変換処理装置。
【請求項4】
前記したそれぞれの機構による段階でデータを適宜取り出せるよう独自のファイルフォーマットを備えた請求項3記載のファイル変換処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−50062(P2006−50062A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225416(P2004−225416)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(504294433)有限会社サイトウ企画 (1)
【出願人】(502243952)
【出願人】(504294444)
【Fターム(参考)】