説明

ファクシミリ装置及びファクシミリ通信システム

【課題】受信側ファクシミリ装置側で電源供給が遮断されても、ファクシミリ通信内容をロスすることのないファクシミリ装置及びファクシミリ通信システムを提供する。
【解決手段】受信側ファクシミリ装置10bは、ある時間帯に停電により電源供給が絶たれる場合、停電情報は、受信側ファクシミリ装置10bから送信側ファクシミリ装置10aに送られる。送信側ファクシミリ装置10aは、通常は受信側ファクシミリ装置10bに向けてファクシミリ送信を行うが、通知された停電情報により、停電の間は、代替先ファクシミリ番号の代替先ファクシミリ装置10cに向けてファクシミリ送信を行う。受信側ファクシミリ装置10bは、停電時間から電源復旧後、あらかじめ登録されていた代替先ファクシミリ番号へポーリング要求を行って、代替先ファクシミリ装置10cに対して受信データを取りに行く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停電により電源供給が遮断された場合にも通信内容を失うことのないファクシミリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のファクシミリ装置では、ファクシミリ通信中に受信側装置が停電等で装置への電源供給が遮断された場合、送信側装置は受信側装置の電源供給が遮断されてしまったことを知ることができず、単なる通信エラーとして処理されるため、送信側装置は所定回数の再送信(再発信)を実行していた。しかしこの状態では、何度再送信を行なっても、受信側装置の電源供給が再度行なわれない限り通信エラーとなるばかりで不都合が生じていた。
【0003】
この課題を解決するために、例えば特許文献1のように、ファクシミリの送信処理が未完了の場合(送信処理が開始されたが、停電発生等で送信処理が未完了)、当該ファクシミリ装置に「未完了」を表示し、また、受信先ファクシミリ装置が不応答の場合には、当該ファクシミリ装置を「送信処理未開始」状態とする処理を行なっていた。このようなファクシミリ装置によって、利用者に送信処理が未完了であることを認識させたり、受信先ファクシミリ装置が不応答の場合には、送信側装置の空き状態を待って再送信を行なうことができた。
【0004】
また、特許文献2には、停電発生時には、電圧供給のバックアップを受けたメモリへの受信を行なうファクシミリ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−54161号公報
【特許文献2】特開平6−311285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、送信側装置は送信処理未完了を認識できるものの、その理由が受信側装置の停電発生によるものであることは知り得ず、その結果、受信側装置の空き状態を長時間待ち、その結果送信処理の実行が完了できるため、非常に効率および使い勝手が悪い。
【0007】
また特許文献2では、停電発生時にはバックアップされたメモリへの受信を行なうファクシミリ装置が開示されているが、これは、メモリに対してのみのバックアップであり、ファクシミリ受信完了後の停電においては画像データが消えないようにできた。しかし、メモリバックアップ用の電源を準備しておかなければならない点や、完全に電源供給が絶たれてしまうような状況、つまり、ファクシミリ通信自体が実行できないような状況は考慮されていない。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、受信側ファクシミリ装置側で電源供給が遮断されても、ファクシミリ通信内容をロスすることのないファクシミリ装置及びファクシミリ通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、受信側ファクシミリ装置に画像データを送信する送信側ファクシミリ装置であって、前記受信側ファクシミリ装置とデータの送受信を行う通信手段と、前記受信側ファクシミリ装置から前記通信手段を介して受信した、前記受信側ファクシミリ装置の停電時間と、停電中に送信する代替先ファクシミリ装置の宛先を含む停電情報を記憶する第1の記憶手段と、を備え、
前記停電情報に基づいて、停電時間中は前記代替先ファクシミリ装置に切り換えて画像データの送信を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明の送信側ファクシミリ装置において、送信途中で前記停電時間となり、前記受信側ファクシミリ装置へ未送信のページがあった場合でも、前記代替先ファクシミリ装置へは全ページの画像情報を送信することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、送信側ファクシミリ装置から画像データを受信する受信側ファクシミリ装置であって、前記送信側ファクシミリ装置とデータの送受信を行う通信手段と、
前記受信側ファクシミリ装置の停電時間と、停電中に送信する代替先ファクシミリ装置の宛先を含む停電情報を記憶する第2の記憶手段と、を備え、
前記停電情報を前記通信手段により前記送信側ファクシミリ装置に送信し、停電時間中により、ファクシミリ受信が正常に終了しなかった場合には、電源供給復帰後、前記停電情報に基づいて、前記代替先ファクシミリ装置へ発呼し、前記代替先ファクシミリ装置が受信した画像データをポーリング取得することを特徴とする。
【0012】
本発明の受信側ファクシミリ装置において、電源供給が絶たれる前に正常受信したページも含め、前記代替先ファクシミリ装置よりポーリング受信することを特徴とする。
【0013】
本発明の受信側ファクシミリ装置において、電源供給が絶たれる前に正常受信できなかったページのみ、前記代替先ファクシミリ装置よりポーリング受信することを特徴とする。
【0014】
本発明は、前記送信側ファクシミリ装置と、前記受信側ファクシミリ装置と、受信側ファクシミリ装置が停電で停止したとき、代わりに前記送信側ファクシミリ装置から画像データを受信する代替先ファクシミリ装置と、を備えたことを特徴とするファクシミリ通信システムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、受信側ファクシミリ装置側で電源供給が遮断されることが予め分かっている場合には、通信手順を利用して、代替となる受信側ファクシミリ装置を送信側ファクシミリ装置に通知し、代替の装置とファクシミリ通信させ、代替の装置で受信した画像情報を簡易な方法で取得させるので、使い勝手がよく、ファクシミリ通信内容をロスすることのないという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係るファクシミリ装置によって構築された通信システムの構成図である。
【図2】本実施形態に係るファクシミリ装置の構成を示すブロック図である。
【図3】ファクシミリ装置の発呼側装置と被呼側装置との間におけるファクシミリ通信手順を示すシーケンス図である。
【図4】送信側ファクシミリ装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】受信側ファクシミリ装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】受信側ファクシミリ装置の停電時間経過後の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係るファクシミリ装置によって構築された通信システムの構成図である。
このシステムは、ファクシミリ装置10a,10b,10cと、停電情報が予め登録されている外部装置(サーバ)50とから構成される。ファクシミリ装置10aは、データ送信側(発呼側)の装置であり、ファクシミリ装置10bは、データ受信側(被呼側)の装置であり、ファクシミリ装置10cは、ファクシミリ装置10bの代替先の装置である。ファクシミリ装置10a,10b,10cは、電話回線(一般公衆電話回線)に接続されており、ファクシミリ画像データの送受信が可能となっている。また、外部装置50は、インターネット等のネットワーク60を介してファクシミリ装置10bに接続されている。
【0019】
受信側ファクシミリ装置10bは、ある時間帯に停電により電源供給が絶たれるとする。この場合、受信側ファクシミリ装置10bは、あらかじめ停電情報を取得する。停電情報とは、何時から何時までの間停電となるかを示す停電時間と、代替先のファクシミリ装置へ送信するための宛先情報(ファクシミリ番号)とを含む停電に関する情報である。この停電情報を取得する場合は、2種類の方法がある。まず、ユーザが停電情報をファクシミリ装置10bに直接入力する方法である。もう一つは、外部装置(配信サーバ等)50に停電情報が記憶されており、外部装置50がネットワーク60を介して受信側ファクシミリ装置10bに停電情報を送る方法である。
【0020】
停電情報は、受信側ファクシミリ装置10bから送信側ファクシミリ装置10aに送られる。送信側ファクシミリ装置10aは、通常は受信側ファクシミリ装置10bに向けてファクシミリ送信を行うが、通知された停電情報により、停電の間は、代替先ファクシミリ番号の代替先ファクシミリ装置10cに向けてファクシミリ送信を行う。受信側ファクシミリ装置10bは、停電時間から電源復旧後、あらかじめ登録されていた代替先ファクシミリ番号へポーリング要求を行って、代替先ファクシミリ装置10cに対して受信データを取りに行く。
【0021】
図2は、本実施形態に係るファクシミリ装置の構成を示すブロック図である。ファクシミリ装置10a,10b,10cは共通の構成である。
【0022】
このファクシミリ装置10は、データ(画像データ)を記録媒体に印刷するプリンタ/コピーや、電話回線を利用した通常のファクシミリとしての機能を有する。
【0023】
このファクシミリ装置10は、メイン制御部11、パネル制御部12、制御用メモリ13、制御用バッファ14、読取部15、記録部16、画像記憶部17、符号/復号化制御部18、LAN(Local Area Network)制御部19、モデム20、網制御部(NCU:Network Control Unit)21を備えて構成されている。以下、各部について説明する。
【0024】
メイン制御部11は、CPU(Central Processin Uit)などを備えて構成され、ファクシミリ装置10の全体を統括的に制御する。
【0025】
パネル制御部12では、原稿の読み込み、相手先入力などの指示が行われ、対応した画面が表示される。パネル制御部12は、図示しない表示装置及び操作部を備えている。表示装置は、液晶表示装置(LCD)又はCRTディスプレイ等の表示装置であり、動作状態や送信先などを表示する。操作部は、操作するために必要なキー(入力装置)を備えている。本実施形態のパネル制御部12は、表示装置及び操作部を一体としたタッチパネルである。本実施形態ではパネル制御部12のタッチパネルから、相手先の設定を行う。設定された相手先情報は、制御用メモリ3に格納される。
【0026】
制御用メモリ13は、ROMなどの不揮発性のメモリや、バックアップされた揮発性のメモリなどから成り、各種制御プログラムや相手先情報(送信先の電話番号、短縮番号等)が格納されているとともに、これらの制御プログラムを実行するのに必要なシステムデータや各種データが記憶されている。制御用バッファ14は、RAM等から成り、制御プログラムを動作させる上で必要なデータを格納する。画像記憶部17は、符号化された画像データもしくはフォーマット変換後のデータを記憶するとともに、後述する読取部15から読込んだデータ、またはファクシミリ受信したデータ、復号化後のデータなどを記憶する。
【0027】
読取部15は、原稿読取り手段としての光電変換素子(CCD;Charge Coupled Device)を利用したスキャナで、原稿を所定の解像度で読取る。そして、読取った結果、ドットイメージデータを出力する。記録部16は、電子写真方式のプリンタ装置を備え、ファクシミリ通信によって受信した原稿画像や読取部15で読取った原稿画像等のデータをハードコピー(プリントアウト)する。また、サーマル素子を利用したサーマル記録装置として構成されていてもよい。
【0028】
符号/復号化制御部18は、読込んだ原稿画像のデータの符号化や画像データ受信時の復号化を行う。すなわち、この符号/復号化制御部18は、読取部15で読取った原稿画像のデータを、算術符号化演算により符号化圧縮するとともに、符号化圧縮されている受信画像データを元のデータに復号化する。この符号/復号化制御部18は、ファクシミリ通信で一般に使用されている、MH(Modified Hufman)、MR(Modified READ)、MMR(Modified Modified READ)、及びJBIGなどの符号化方式を用いることができる。
【0029】
LAN制御部19は、インターネット経由による外部装置(サーバ)50との送受信通信を行うために、LAN(Local Area Network)と接続するためのものである。モデム20は、G3通信の送信信号を回線の伝達に適した形態に変調し、また、回線から送られてきた変調信号を復調するファクシミリモデムから構成されている。このモデム20は、網制御部(NCU:Network Control Unit)21を介して公衆電話回線と接続されている。網制御部21は、アナログの公衆電話回線網(PSTN)との回線の閉結及び開放の回線制御動作を行うハードウェアであり、必要に応じてモデム20を公衆電話回線網と接続する。つまり、この網制御部21は、G3通信プロトコルに従って画像データの送・受信及び制御信号の送・受信を行うとともに、自動発・着呼処理を行う。
【0030】
次に、図1のファクシミリ装置10a、10b間での通信手順について説明する。
図3は、ファクシミリ装置の発呼側装置と被呼側装置との間におけるファクシミリ通信手順を示すシーケンス図である。発呼側装置と被呼側装置は、ITU−T勧告V.21に規定される手順にて通信(G3通信)を行うものとするが、これに限定されるわけではない。
【0031】
発呼側装置10aから被呼側装置10bに対してデータを送信する場合、最初に発呼側装置10aから被呼側装置10b対し、ダイヤリングが行われて通信接続し、コーリングトーン(CNG:Calling Tone)が送信される。
【0032】
被呼側装置10bがITU−T勧告のV.21の手順に従う装置であれば、被呼側装置10bは、発呼側装置10aからのコーリングトーンを検出すると、まず被呼局識別信号(CED:Called Station Identification signal)を送出し、続いて、自装置の製造メーカ情報を含む非標準機能信号(NSF:Non-Standard Facilities signal)と、自装置の電話番号を含む被呼装置識別信号(CSI:Called Subscriber Identification signal)と、伝送速度や最大受信幅などの自装置の性能情報を含むデジタル識別信号(DIS:Digital Transmit Command signal)とを送出することによって、自装置の機能を発呼側装置10aへ知らせる。
【0033】
すると、これらの信号に応答して、発呼側装置10aが、自装置の電話番号を含む送信装置識別信号(TSI:Transmitting Subscriber Identification signal)と、伝送速度や最大受信幅などの自装置の性能情報を含むデジタル命令信号(DCS:Digital Command Signal)とを送出することによって、自装置の機能を被呼側装置10bへ知らせる。自装置の製造メーカ情報を含む非標準手順信号(NSS:Non-Standard facilities Set-up)も被呼側装置へ知らせる場合がある。
【0034】
続いて、発呼側装置10aから送信されたトレーニングチェック信号(TCF:Training Check signal)を被呼側装置10bが受信すると、受信準備確認信号(CFR:Confirmation to Receive signal)が被呼側装置10bから発呼側装置10aに返信される。
【0035】
発呼側装置10aは、被呼側装置10bからCFR信号を受信後、被呼側装置10bに対して、画像のデータ(PIX)を1ページ分ずつ送信する。全ての符号化データの送信が終了すると、被呼側装置10bに手順終了信号(PPS−EOP)を送信する。全ページ分の画像のデータを受信したことを被呼側装置10bが確認すれば、メッセージ確認信号(MCF:Message Confirmation Signal)が被呼側装置10bから発呼側装置10aに返信される。
最後に、切断命令信号DCN(Disconnect signal)が発呼側装置10aから送信されて被呼側装置10bで受信されると、ファクシミリ通信が終了する。
【0036】
この様な各信号およびデータを送受するための制御は、発呼側および被呼側のファクシミリ装置のいずれにおいてもメイン制御部11によって行われる。
【0037】
ファクシミリ通信は上記手順で行われるが、図3の新規信号は、停電情報を意味し、これによって停電情報を発呼側装置10aに通知する。停電情報は、図1に示したように、被呼側装置10bにユーザが直接入力したり、あるいは外部装置5に記憶された停電情報を被呼側装置10bに取得したりする。そして、NSF/CSI/DIS信号を発呼側装置10aに通知後、新規信号として停電情報を通知する。あるいは、PPS−EOP信号が発呼側装置10aから被呼側装置10bに通知された時点で、被呼側装置10bから発呼側装置10aに新規信号として停電情報を通知する。
【0038】
しかし、通知タイミングはこれに限るものではない。たとえば、NSF信号にて停電情報を通知してもよい。この場合はNSF信号の中身にASCIIコードにて停電情報を入れて通知する。また、通知形式は、ASCIIコードに限るものではなく、別の形式でもよい。
【0039】
上記通信手順は、ITU−T勧告V.21に規定される手順であったが、ITU−T勧告V.8に規定される手順でも通信(スーパーG3通信)してもよい。たとえば、送信側と受信側のファクシミリ装置が、スーパーG3対応とする。その場合は、発呼側装置10aからCNG信号が被呼側装置10bに送信されると、被呼側装置10bはANSam信号を送信し、発呼側装置10aがANSam信号を受信することで、V.8手順が開始される。従って、停電情報はそれ以降に送信される。
【0040】
また、送受信のファクシミリ装置の片方がG3対応で、他方がスーパーG3の対応の場合もあり、そのときはV.21対応であることを示す信号を相手に送り、G3通信が行われる。この場合には、停電信号は、V.21対応であることを示す信号が送信され、G3通信が開始されてから送信される。
【0041】
図4のフローチャートを用いて送信側ファクシミリ装置の動作を説明する。
【0042】
ステップS1では、送信側ファクシミリ装置(発呼側装置)10aのメイン制御部11は、パネル制御部12より入力されたファクシミリ送信を行う相手先のファクシミリ番号をもとにモデム20及び網制御部21を介して回線に対してダイヤルを実施する。
ステップS2では、発呼側装置10aのメイン制御部11がT0タイマーをスタートさせる。
【0043】
ステップS3では、モデム20及び網制御部21を介してCNG信号を送出する。このCNG信号にて、受信側ファクシミリ装置(被呼側装置)10bは、電話の相手がファクシミリ送信してきていることが分かる。
【0044】
ステップS4では、送信側ファクシミリ装置10aのメイン制御部11が、相手機10bから次のいずれかの信号(ANSam、CED、DIS、V.21)が送信されているかどうかを判断し、送信されている場合には、ITU−T T.30の手順に従ってファクシミリ送信を行う。
【0045】
ステップS4で、相手機10bからの上記信号が検出できない場合、ステップS5にてT0時間が経過(タイムアップ)しているかどうかを判定する。ステップS5にて、タイムアップしていない場合には、ステップS3に戻り、CNG信号の送出からのステップを繰り返す。ステップS5にて、タイムアップしている場合には、ステップS6にて相手機10bが無応答として回線を切断する。
【0046】
ステップS4では、相手機10bからの信号(ANSam、CED、DIS、V.21のいずれか)を検出している場合には、ステップS7にて停電情報が受信側から送信されてきているかどうかを判断する。停電情報が送信されてきていない場合には、ステップS8にて送信側ファクシミリ装置10aのメイン制御部11は、通常のファクシミリ送信を行う。
【0047】
ステップS7にて停電情報が受信側ファクシミリ装置10bから送信されてきている場合には、ステップS9にて送信側ファクシミリ装置10aのメイン制御部11は、停電情報受信による処理を実施し、その後、ステップS8に進んでファクシミリ送信を行う。
【0048】
ステップS9による停電情報受信による処理としては、停電情報を送信側ファクシミリ装置10aの制御用メモリ13に記憶する。停電情報には、以下の情報が含まれている。
・停電している時間情報
・停電時の代替先であるファクシミリの番号情報
停電している時間情報は、時間帯のみ、日付+時間、停電している時間などがある。停電時の代替先であるファクシミリの番号情報は一つとは限らず、複数でもよい。
【0049】
なお、停電情報の信号受信は、どのタイミングでもよい。ここの説明では、便宜上、相手機からのファクシミリ信号(ANSam、CED、DIS、V.21)を受信した後として記載している。
【0050】
ステップS9で、受信側ファクシミリ装置10bから停電情報を受信し、停電情報を制御用メモリ13に記憶した後、この停電情報に基づいて、送信側ファクシミリ装置10aのメイン制御部11は、ステップS8で、次のようなファクシミリ通信を行う。
(1)停電時間に到達しても、受信側ファクシミリ装置10bファクシミリ送信を続ける。ファクシミリ送信途中で送信エラーが発生した場合には、再コール時に制御用メモリ13に記憶した停電情報に基づき、停電時の代替先であるファクシミリ番号へファクシミリ送信する。
(2)停電時間に到達したときは、ファクシミリ送信を中断し、制御用メモリ13に記憶した停電情報に基づき、代替先ファクシミリ装置10cのファクシミリ番号へファクシミリ送信する。
(1)(2)いずれでの場合でも、代替先ファクシミリ装置10cへ全画像データを送信してもよいし、送信エラーが生じてからの送信画像データ、あるいは停電時間に到達後の画像データを送信してもよい。
(3)停電情報により、ファクシミリ送信エラーの原因が、停電によるものであれば、制御メモリ13に「受信先停電」という履歴を残す。そしてパネル制御部12が表示させて利用者に報知する。報知するのは、これに限らず、停電情報と送信画像データに関する情報を印刷してもよい。
【0051】
こうして、停電時間に送信する画像データを代替先ファクシミリ装置10cに送信するので、送信データを喪失することがない。なお、全画像データを代替先ファクシミリ装置10cに送信すれば、送信漏れが起こらないという利点があり、送信エラーが生じた画像データあるいは停電時間以降の画像データのみを送信すれば、二重に送信することがなく通信費も安くできるという利点がある。また、「受信先停電」という履歴が残れば、利用者がどのような事態が起こっているかが分かるという利点がある。
【0052】
続いて、図5のフローチャートを用いて受信側ファクシミリ装置の動作を説明する。
【0053】
ステップS11では、交換機からの呼出音を検出して、ステップS12にて、ファクシミリ受信動作を開始する。
ステップS13では、受信側ファクシミリ装置10bのメイン制御部11が、制御用メモリ13に、予め登録された停電情報があるかどうかを判断する。停電情報が登録されていない場合には、ステップS15へ進み、通常のファクシミリ受信を実施する。停電情報が登録されている場合には、ステップS14へ進む。
【0054】
ステップS14にて、停電情報を読み出し、送信側ファクシミリ装置10aに対して、停電情報を通知する。停電情報を通知後は、通常のファクシミリ受信を実施する(ステップS15)。
【0055】
ここで、図1でも説明したが、停電情報の登録は次のように行う。
・ユーザによる受信側ファクシミリ装置10bへの直接登録
・登録された停電情報取得先の外部装置50からの受信側ファクシミリ装置10bへの通知あるいは受信側ファクシミリ装置10bのポーリングによる取得
【0056】
図6のフローチャートを用いて受信側ファクシミリ装置にて、停電時間経過後の動作を説明する。
ステップS21で、停電から復旧して電源がONされる。
【0057】
ステップS22にて、受信側ファクシミリ装置10bのメイン制御部11は、制御用メモリ13からあらかじめ登録されていた停電情報を読み出し停電時間帯を抽出して、経過したかどうか判定する。経過していない場合は、何もせずに終了する。経過している場合は、ステップS23へ進む。
【0058】
ステップS23にて、あらかじめ登録されている代替先ファクシミリ番号へポーリング受信を行う。ここで、ポーリング受信は、ITU−TのT.30で規定されている一般的なポーリング受信である。
【0059】
このように、受信側ファクシミリ装置10bが停電により機能できない場合に、予め送信側ファクシミリ装置10aに停電情報として通知されていた代替先ファクシミリ装置10cに一旦データを受信しておき、受信側ファクシミリ装置10bに電源が供給された時点で、受信データを受信側ファクシミリ装置10bが受信するので、受信データを喪失することがない。
【0060】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も特許請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
10 ファクシミリ装置
10a 送信側ファクシミリ装置(発呼側装置)
10b 受信側ファクシミリ装置(被呼側装置)
10c 代替先ファクシミリ装置
11 メイン制御部
12 パネル制御部
13 制御用メモリ
14 制御用バッファ
15 読取部
16 記録部
17 画像記憶部
18 復号化制御部
19 LAN制御部
20 モデム
21 網制御部
50 外部装置
60 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信側ファクシミリ装置に画像データを送信する送信側ファクシミリ装置であって、
前記受信側ファクシミリ装置とデータの送受信を行う通信手段と、
前記受信側ファクシミリ装置から前記通信手段を介して受信した、前記受信側ファクシミリ装置の停電時間と、停電中に送信する代替先ファクシミリ装置の宛先を含む停電情報を記憶する第1の記憶手段と、
を備え、
前記停電情報に基づいて、停電時間中は前記代替先ファクシミリ装置に切り換えて画像データの送信を行うことを特徴とする送信側ファクシミリ装置。
【請求項2】
送信途中で前記停電時間となり、前記受信側ファクシミリ装置へ未送信のページがあった場合でも、前記代替先ファクシミリ装置へは全ページの画像情報を送信することを特徴とする請求項1に記載の送信側ファクシミリ装置。
【請求項3】
送信側ファクシミリ装置から画像データを受信する受信側ファクシミリ装置であって、
前記送信側ファクシミリ装置とデータの送受信を行う通信手段と、
前記受信側ファクシミリ装置の停電時間と、停電中に送信する代替先ファクシミリ装置の宛先を含む停電情報を記憶する第2の記憶手段と、
を備え、
前記停電情報を前記通信手段により前記送信側ファクシミリ装置に送信し、
停電時間中により、ファクシミリ受信が正常に終了しなかった場合には、電源供給復帰後、前記停電情報に基づいて、前記代替先ファクシミリ装置へ発呼し、前記代替先ファクシミリ装置が受信した画像データをポーリング取得することを特徴とする受信側ファクシミリ装置。
【請求項4】
電源供給が絶たれる前に正常受信したページも含め、前記代替先ファクシミリ装置よりポーリング受信することを特徴とする請求項3に記載の受信側ファクシミリ装置。
【請求項5】
電源供給が絶たれる前に正常受信できなかったページのみ、前記代替先ファクシミリ装置よりポーリング受信することを特徴とする請求項3に記載の受信側ファクシミリ装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の送信側ファクシミリ装置と、
請求項3から5のいずれか一項に記載の受信側ファクシミリ装置と、
前記受信側ファクシミリ装置が停電で停止したとき、代わりに前記送信側ファクシミリ装置から画像データを受信する代替先ファクシミリ装置と、
を備えたことを特徴とするファクシミリ通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−66107(P2013−66107A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204463(P2011−204463)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】