説明

ファン・モータ結線回路および液滴吐出装置

【課題】コストの上昇や大型化を招くことなく、突入電流の発生に起因する不具合の発生を抑制することのできるファン・モータ結線回路および液滴吐出装置を得る。
【解決手段】複数のファン・モータ73の間に介在されて各ファン・モータ73をデイジーチェーン接続するトランジスタQ1〜Q4により、上流側に接続されたファン・モータ73が正常に駆動されるまでは下流側に接続されたファン・モータ73へ駆動用の電力を供給するための電力供給結線L1を切断し、正常に駆動された後に電力供給結線L1を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン・モータ結線回路および液滴吐出装置に係り、特に、駆動用の電力が供給される供給端子と、正常に駆動しているか否かを示す状態検出信号を出力する駆動状態出力端子とを有する複数のファン・モータを結線するファン・モータ結線回路、および前記複数のファン・モータを用いて、液滴により画像が形成された記録媒体を乾燥させる液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリント方式等により液滴を吐出することによって当該液滴により形成されるドットの集合により記録媒体に画像を形成する液滴吐出装置が知られている。そして、この種の液滴吐出装置には、画像が形成された記録媒体を複数のファン・モータを用いて乾燥するものがある。
【0003】
ところで、ファン・モータには、当該ファン・モータに駆動用の電力を供給するための供給端子に加えて、ファン・モータが正常に駆動しているか否かを示す状態検出信号を出力する駆動状態出力端子を有するものがある。なお、上記状態検出信号は、ロック信号、ロック検出信号、ファン・ロック検出信号、異常検出信号等と呼ばれる場合もあるが、ここでは、状態検出信号と表現する。
【0004】
この種の駆動状態出力端子を有するファン・モータを複数用いる際の各ファン・モータの結線に関する技術として、特許文献1には、複数のファンを制御側に接続するための結線方法であって、各ファンに供給される電源用の2本の電線を並列接続して共通の2本の電源用電線とすると共に、各ファンから出力される異常検出信号の論理和信号を生成して1本の信号出力とし、合計3本の電線で前記複数のファンと前記制御側との電気接続をとる技術が開示されている。
【0005】
図8には、この技術を適用したファン・モータ結線回路の一例が示されている。
【0006】
同図に示されるように、このファン・モータ結線回路には、図示しない複数のファン・モータ(同図に示す例では5つのファン・モータ)に各々が個別に接続されるコネクタCN1〜CN5が設けられている。
【0007】
上記5つのファン・モータには、駆動用の電力を供給するための供給端子(電圧印加用および接地用の2つの端子)および上記駆動状態出力端子の3つの端子が備えられており、これら3つの端子に対応して、各コネクタCN1〜CN5には1番ピン、2番ピン、および3番ピンの3つの接続端子が設けられている。
【0008】
ここで、各コネクタCN1〜CN5における各接続端子は、1番ピンがファン・モータの電圧印加用の端子に対応し、2番ピンがファン・モータの駆動状態出力端子に対応し、3番ピンがファン・モータの接地用の端子に対応している。
【0009】
同図に示すように、このファン・モータ結線回路では、電圧印加端子DC_INおよび接地端子GNDに電力供給源として接続される電源に対して各ファン・モータが並列に接続されている。また、このファン・モータ結線回路には、各ファン・モータに対応して、オープン・コレクタ構成とされたトランジスタQ1〜Q5が個別に設けられており、各ファン・モータの駆動状態出力端子は、対応するコネクタCN1〜CN5の何れか1つを介して、対応するトランジスタQ1〜Q5の何れか1つのベースに接続されている。
【0010】
そして、各トランジスタQ1〜Q5のコレクタはワイヤード・オア接続されると共に抵抗器R6を介してプル・アップされて状態検出端子SDに接続されている。
【0011】
また、同図に示されるように、各トランジスタQ1〜Q5のベースは対応する抵抗器R1〜R5の何れか1つによってプル・アップされている。また、各コネクタCN1〜CN5の1番ピンを介して各ファン・モータに電源電圧を印加する結線には、スイッチ制御端子SW1_ONに開閉制御端子が接続され、当該結線を断続するためのスイッチSW1と、ファン・モータ結線回路の各素子を保護するためのヒューズFU1とが介在されている。
【0012】
状態検出端子SDおよびスイッチ制御端子SW1_ONは不図示の制御部に接続されており、当該制御部はファン・モータの駆動状態を検出することができると共に、スイッチSW1の開閉動作を制御することができる。
【0013】
このファン・モータ結線回路では、各コネクタCN1〜CN5の1番ピンおよび3番ピンの間に電源電圧が印加されると各ファン・モータが起動する。
【0014】
このとき、各コネクタCN1〜CN5の2番ピンから入力される状態検出信号が、ファン・モータの起動前のハイ・インピーダンス状態から正常動作時のロー・レベルに移行することで各トランジスタQ1〜Q5がオフ状態となる一方、状態検出端子SDが抵抗器R6によってプル・アップされているため、当該状態検出端子SDからは全てのファン・モータが正常に駆動していることを示すハイ・レベルの信号が出力される。
【0015】
ここで、ファン・モータの少なくとも1つが異常状態になると、当該ファン・モータから出力されている状態検出信号がハイ・インピーダンス状態となり、対応するトランジスタがオン状態となる結果、状態検出端子SDから出力されている信号がハイ・レベルからロー・レベルに移行する。
【0016】
従って、上記制御部は、状態検出端子SDがロー・レベルに移行した場合に、ファン・モータの少なくとも1つが異常状態となっているものと判断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2007−46511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、一例として図8に示すようなファン・モータ結線回路等によって複数のファン・モータを同時に起動すると、各ファン・モータの起動電流が重なってしまい、一時的に大きな電流(突入電流)が流れてしまう場合があり、この場合、通常動作時の電流値によって設定した保護用のヒューズ(図8に示す例では、ヒューズFU1)の定格電流値を越えてしまい、当該ヒューズの溶断に至ったり、上記突入電流の発生により電流容量を超えてしまうことに伴う電圧降下に起因して他の回路の誤動作が誘発されたり、電力供給経路に位置する素子が破壊される等といった不具合が発生する場合がある、という問題点があった。
【0019】
この問題点に対処するために、一例として図9に示すように、ファン・モータを複数のグループ(同図に示す例では、2つのグループ)に分けて、各グループ別に時間差をつけて起動する方法も考えられるが、この場合、電力供給用の結線やスイッチ等が複数系統分必要となってしまい、コストの上昇や大型化を招いてしまう、という問題点があった。
【0020】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、コストの上昇や大型化を招くことなく、突入電流の発生に起因する不具合の発生を抑制することのできるファン・モータ結線回路および液滴吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のファン・モータ結線回路は、駆動用の電力が供給される供給端子、および正常に駆動しているか否かを示す状態検出信号を出力する駆動状態出力端子を有する複数のファン・モータの前記供給端子に前記駆動用の電力を供給するための電力供給結線と、前記複数のファン・モータの間に介在されて各ファン・モータをデイジーチェーン接続すると共に、上流側に接続された前記ファン・モータの前記駆動状態出力端子から出力される状態検出信号に基づいて、当該上流側に接続された前記ファン・モータが正常に駆動されるまでは下流側に接続された前記ファン・モータへ前記駆動用の電力を供給するための前記電力供給結線を切断し、正常に駆動された後に当該電力供給結線を接続する少なくとも1つのスイッチ素子と、を備えている。
【0022】
請求項1に記載のファン・モータ結線回路によれば、駆動用の電力が供給される供給端子、および正常に駆動しているか否かを示す状態検出信号を出力する駆動状態出力端子を有する複数のファン・モータの前記供給端子に、電力供給結線によって前記駆動用の電力が供給される。
【0023】
ここで、本発明では、前記複数のファン・モータの間に介在されて各ファン・モータをデイジーチェーン接続する少なくとも1つのスイッチ素子により、上流側に接続された前記ファン・モータの前記駆動状態出力端子から出力される状態検出信号に基づいて、当該上流側に接続された前記ファン・モータが正常に駆動されるまでは下流側に接続された前記ファン・モータへ前記駆動用の電力を供給するための前記電力供給結線が切断され、正常に駆動された後に当該電力供給結線が接続される。
【0024】
従って、本発明では、上流側に接続されたファン・モータが正常に駆動された後に下流側に接続されたファン・モータへの電力供給が開始されるため、複数のファン・モータが同時に起動することがなく、この結果として突入電流の発生に起因する不具合の発生を抑制することができる。
【0025】
なお、本発明では、全てのファン・モータをデイジーチェーン接続するため、ファン・モータを複数のグループに分けて各グループ別に時間差をつけて起動する場合のように、コストの上昇や大型化を招くことはない。
【0026】
このように、請求項1に記載のファン・モータ結線回路によれば、複数のファン・モータの間に介在されて各ファン・モータをデイジーチェーン接続するスイッチ素子により、上流側に接続されたファン・モータが正常に駆動されるまでは下流側に接続されたファン・モータへ駆動用の電力を供給するための電力供給結線を切断し、正常に駆動された後に当該電力供給結線を接続しているので、コストの上昇や大型化を招くことなく、突入電流の発生に起因する不具合の発生を抑制することができる。
【0027】
なお、本発明は、請求項2に記載の発明のように、前記スイッチ素子が、開閉制御端子が上流側に接続された前記ファン・モータの前記駆動状態出力端子に接続され、接続端子および被接続端子が下流側に接続された前記ファン・モータに前記駆動用の電力を供給するための前記電力供給結線に介在されたものとしてもよい。
【0028】
また、本発明は、請求項3に記載の発明のように、前記スイッチ素子を、トランジスタまたはリレースイッチとしてもよい。なお、上記トランジスタには、バイポーラ・トランジスタおよび電界効果トランジスタが含まれる。
【0029】
さらに、本発明は、請求項4に記載の発明のように、前記上流側に接続された前記ファン・モータが正常に駆動された後に前記下流側に接続された前記ファン・モータへ前記駆動用の電力を供給するための前記電力供給結線を接続するタイミングを遅延させる遅延回路をさらに備えてもよい。これにより、より確実に各ファン・モータの起動タイミングをずらすことができる結果、より確実に突入電流の発生に起因する不具合の発生を抑制することができる。
【0030】
一方、上記目的を達成するために、請求項5に記載の液滴吐出装置は、請求項1〜請求項4の何れか1項記載のファン・モータ結線回路と、前記ファン・モータ結線回路によって結線された複数のファン・モータと、画像情報に基づいて記録媒体に液滴を吐出することにより、前記画像情報により示される画像を前記記録媒体に形成する形成手段と、前記形成手段によって画像が形成された記録媒体を前記複数のファン・モータを用いて乾燥する乾燥手段と、を備えている。
【0031】
従って、本発明によれば、本発明のファン・モータ結線回路を備え、当該ファン・モータ結線回路によって結線された複数のファン・モータにより、液滴によって画像が形成された記録媒体を乾燥するので、本発明のファン・モータ結線回路と同様に、コストの上昇や大型化を招くことなく、突入電流の発生に起因する不具合の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、複数のファン・モータの間に介在されて各ファン・モータをデイジーチェーン接続するスイッチ素子により、上流側に接続されたファン・モータが正常に駆動されるまでは下流側に接続されたファン・モータへ駆動用の電力を供給するための電力供給結線を切断し、正常に駆動された後に当該電力供給結線を接続しているので、コストの上昇や大型化を招くことなく、突入電流の発生に起因する不具合の発生を抑制することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施の形態に係る画像形成装置の構成を示す断面側面図である。
【図2】実施の形態に係る画像形成装置に設けられた熱風ノズルの構成を示す概略斜視図である。
【図3】実施の形態に係るファン・モータ結線回路の構成を示す回路図である。
【図4】実施の形態に係る画像形成装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図5】実施の形態に係るファン・モータ駆動処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施の形態に係るファン・モータ結線回路の他の構成例を示す回路図である。
【図7】実施の形態に係るファン・モータ結線回路の他の構成例を示す回路図である。
【図8】従来のファン・モータ結線回路の構成例を示す回路図である。
【図9】従来のファン・モータ結線回路の他の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、ここでは、本発明を、インク滴により画像を形成する所謂インクジェットプリンタ(以下、「画像形成装置」という。)に適用した場合について説明する。
【0035】
まず、本実施の形態に係る画像形成装置10の全体構成について説明する。
【0036】
[画像形成装置]
図1に示すように、本実施の形態に係る画像形成装置10には、記録媒体としての枚葉紙(以下、「用紙」という)の搬送方向上流側に、用紙を給紙搬送する給紙搬送部12が設けられている。この給紙搬送部12の下流側には、用紙の搬送方向に沿って、用紙の記録面(画像形成面)に処理液を塗布する処理液塗布部14、用紙の記録面に画像を形成する画像形成部16、記録面に形成された画像を乾燥させるインク乾燥部18、乾燥した画像を用紙に定着させる画像定着部20、画像が定着した用紙を排出する排出部21が設けられている。
【0037】
以下、各処理部について説明する。
【0038】
(給紙搬送部)
給紙搬送部12には、用紙が積載される積載部22が設けられており、積載部22の用紙の搬送方向下流側(以下、「用紙の搬送方向」を省略する場合もある)には、該積載部22に積載された用紙を一枚ずつ給紙する給紙部24が設けられている。この給紙部24によって給紙された用紙は、複数のローラ26対で構成された搬送部28を経て、処理液塗布部14へ搬送される。
【0039】
(処理液塗布部)
処理液塗布部14では、処理液塗布ドラム30が回転可能に配設されている。この処理液塗布ドラム30には、用紙の先端部を挟持して用紙を保持する保持部材32が設けられており、該保持部材32を介して、処理液塗布ドラム30の表面に用紙を保持した状態で、処理液塗布ドラム30の回転によって該用紙を下流側へ搬送する。
【0040】
なお、後述する中間搬送ドラム34、画像形成ドラム36、インク乾燥ドラム38、および定着ドラム40についても、処理液塗布ドラム30と同様に保持部材32が設けられている。そして、この保持部材32によって、上流側のドラムから下流側のドラムへの用紙の受け渡しが行われる。
【0041】
処理液塗布ドラム30の上部には、処理液塗布ドラム30の周方向に沿って、処理液塗布装置42および処理液乾燥装置44が配設されており、処理液塗布装置42によって、用紙の記録面に処理液が塗布され、処理液乾燥装置44によって、該処理液が乾燥される。
【0042】
ここで、処理液はインクと反応して色材(顔料)を凝集し、色材(顔料)と溶媒を分離促進する効果を有している。処理液塗布装置42には、処理液が貯留している貯留部46が設けられており、グラビアローラ48の一部が処理液に浸されている。
【0043】
このグラビアローラ48にはゴムローラ50が圧接して配置されており、該ゴムローラ50が用紙の記録面(表面)側に接触して処理液が塗布される。また、グラビアローラ48にはスキージ(図示省略)が接触しており、用紙の記録面に塗布する処理液塗布量を制御する。
【0044】
処理液膜厚はヘッド打滴の液滴より十分小さいことが理想である。例えば2plの打滴量の場合、ヘッド打滴の液滴の平均直径は15.6μmであり、処理液膜厚が厚い場合、インクドットは用紙の記録面と接触することなく処理液内で浮遊する。2plの打滴量で着弾ドット径を30μm以上得るには処理液膜厚を3μm以下にすることが好ましい。
【0045】
一方、処理液乾燥装置44には、熱風ノズル54および赤外線ヒータ56(以下、「IRヒータ56」という)が処理液塗布ドラム30の表面に近接して配設されている。この熱風ノズル54およびIRヒータ56により、処理液中の水などの溶媒を蒸発させ、固体もしくは薄膜処理液層を用紙の記録面側に形成する。処理液乾燥工程で処理液を薄層化することで、画像形成部16でインク打滴したドットが用紙表面と接触して必要なドット径が得られると共に、薄層化した処理液と反応し色材凝集して用紙表面に固定する作用が得られやすい。
【0046】
このようにして、処理液塗布部14で記録面に処理液が塗布、乾燥された用紙は、処理液塗布部14と画像形成部16の間に設けられた中間搬送部58へ搬送される。
【0047】
(中間搬送部)
中間搬送部58には、中間搬送ドラム34が回転可能に設けられており、中間搬送ドラム34に設けられた保持部材32を介して、中間搬送ドラム34の表面に用紙を保持し、中間搬送ドラム34の回転によって該用紙を下流側へ搬送する。
【0048】
(画像形成部)
画像形成部16には、画像形成ドラム36が回転可能に設けられており、画像形成ドラム36に設けられた保持部材32を介して、画像形成ドラム36の表面に用紙を保持し、画像形成ドラム36の回転によって該用紙を下流側へ搬送する。
【0049】
画像形成ドラム36の上部には、画像形成ドラム36の表面に近接して、各々インク滴を吐出する複数のノズルが2次元状に設けられたシングルパス方式のインクジェットラインヘッド64(以下、「ヘッド64」という。)を有するヘッドユニット66が配設されている。このヘッドユニット66では、少なくとも基本色であるY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)のヘッド64が画像形成ドラム36の周方向に沿って配列され、処理液塗布部14で用紙の記録面に形成された処理液層上に各色の画像を形成する。
【0050】
処理液はインク中に分散する色材(顔料)とラテックス粒子を処理液に凝集する効果を持たせ、用紙上で色材流れなど発生しない凝集体を形成する。インクと処理液の反応の一例として、処理液内に酸を含有しPHダウンにより顔料分散を破壊し、凝集するメカニズムを用い色材滲み、各色インク間の混色、インク滴の着弾時の液合一による打滴干渉を回避する。
【0051】
ヘッド64は、画像形成ドラム36に配置された回転速度を検出するエンコーダ(図示省略)に同期して打滴を行うことで、高精度に着弾位置を決定すると共に、画像形成ドラム36の振れ、回転軸68の精度、ドラム表面速度に依存せず、打滴斑を低減することが可能となる。
【0052】
なお、ヘッドユニット66は画像形成ドラム36の上部から退避可能とされており、ヘッド64のノズル面清掃や増粘インク排出などのメンテナンス動作は、該ヘッドユニット66を画像形成ドラム36の上部から退避させることで実施される。
【0053】
記録面に画像が形成された用紙は、画像形成ドラム36の回転によって、画像形成部16とインク乾燥部18の間に設けられた中間搬送部70へ搬送されるが、中間搬送部70については、中間搬送部58と構成が略同一であるため説明を省略する。
【0054】
(インク乾燥部)
インク乾燥部18には、インク乾燥ドラム38が回転可能に設けられており、インク乾燥ドラム38の上部には、インク乾燥ドラム38の表面に近接して、熱風ノズル72およびIRヒータ74が複数配設されている。この熱風ノズル72およびIRヒータ74による温風によって、用紙の画像形成部では、色材凝集作用により分離された溶媒が乾燥され、薄膜の画像層が形成される。
【0055】
温風は用紙の搬送速度によっても異なるが、通常は50℃〜70℃に設定されている。蒸発した溶媒はエアーと共に画像形成装置10の外部へ排出されるが、エアーは回収される。このエアーは、冷却器/ラジエータ等で冷却して液体として回収しても良い。
【0056】
記録面の画像が乾燥した用紙は、インク乾燥ドラム38の回転によって、インク乾燥部18と画像定着部20の間に設けられた中間搬送部76へ搬送されるが、中間搬送部76については、中間搬送部58と構成が略同一であるため説明を省略する。
【0057】
(画像定着部)
画像定着部20には、画像定着ドラム40が回転可能に設けられており、画像定着部20では、インク乾燥ドラム38上で形成された薄層の画像層内のラテックス粒子が加熱/加圧されて溶融し、用紙上に固着定着する機能を有する。
【0058】
画像定着ドラム40の上部には、画像定着ドラム40の表面に近接して、加熱ローラ78が配設されている。この加熱ローラ78は熱伝導率の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプが組み込まれており、該加熱ローラ78によって、ラテックスのTg温度以上の熱エネルギーが付与される。これにより、ラテックス粒子を溶融し、用紙上の凹凸に押し込み定着を行うと共に画像表面の凹凸をレベリングし光沢性を得ることを可能とする。
【0059】
加熱ローラ78の下流側には、定着ローラ80が設けられている。この定着ローラ80は画像定着ドラム40の表面に圧接した状態で配置され、画像定着ドラム40との間でニップ力を得るようにしている。このため、定着ローラ80又は画像定着ドラム40のうち、少なくとも一方は表面に弾性層を持ち、用紙に対して均一なニップ幅を持つ構成とする。
【0060】
以上のような工程により、記録面の画像が定着した用紙は、画像定着ドラム40の回転によって、画像定着部20の下流側に設けられた排出部21側へ搬送される。
【0061】
なお、本実施の形態では、画像定着部20について説明したが、インク乾燥部18で記録面に形成された画像を乾燥・定着させることができれば良いため、この画像定着部20は必ずしも必要ではない。
【0062】
(インク乾燥部の熱風ノズル)
ここで、本発明に特に関係する、インク乾燥部18に設けられた熱風ノズル72の構成を説明する。なお、図1に示すように、本実施の形態に係る画像形成装置10では、複数の熱風ノズル72が適用されているが、これらは全て同一の構成とされている。
【0063】
図2に示すように、本実施の形態に係る熱風ノズル72は、インク乾燥ドラム38によって搬送されている用紙の画像形成面に向けて送風する複数(本実施の形態では、8個)のファン72Aと、各ファン72Aにより送風される空気を加熱する複数(本実施の形態では、2本)のIRヒータ72Bと、を備えている。
【0064】
ここで、本実施の形態に係る熱風ノズル72は、インク乾燥ドラム38の表面に近接する側(同図下側)の面が断面視テーパ状に傾斜されて先端部が用紙幅方向に長いスリット状の開口72Cを有すると共に、これに反対側(同図上側)の全面が開放されている筐体72Dを有しており、当該開放されている部分に上記複数のファン72Aが用紙幅方向に沿う方向に配列される一方、筐体72Dの内部に上記複数のIRヒータ72Bが設けられている。
【0065】
この構成により、熱風ノズル72は、各ファン72Aによる送風がIRヒータ72Bによって効率的に加熱され、当該加熱された風が開口72Cを介して用紙の画像形成面に集中的に吹き付けられる。
【0066】
なお、同図では図示を省略するが、各ファン72Aには、対応するファン72Aの回転中心が回転軸に取り付けられたモータ(以下、「ファン・モータ」という。)73(図3参照。)が個別に設けられており、各ファン72Aは対応するファン・モータ73の駆動によって回転される。
【0067】
[ファン・モータ結線回路]
次に、図3を参照して、各ファン・モータ73の結線回路である、本実施の形態に係るファン・モータ結線回路71の構成を説明する。なお、錯綜を回避するために、ここでは、ファン・モータ73の数が5つである場合について説明する。
【0068】
同図に示すように、本実施の形態に係るファン・モータ結線回路71には、上記複数のファン・モータ73に各々個別に接続される複数のコネクタCN1〜CN5が設けられている。なお、同図では、ファン・モータ73を1つのみ図示し、他のファン・モータ73の図示を省略している。
【0069】
同図に示すように、各ファン・モータ73には、当該ファン・モータ73に駆動用の電力を供給するための供給端子(電圧印加用および接地用の2つの端子)と、正常に駆動しているか否かを示す状態検出信号を出力する駆動状態出力端子との3つの端子が備えられており、これら3つの端子に対応して、各コネクタCN1〜CN5には1番ピン、2番ピン、および3番ピンの3つの接続端子が設けられている。
【0070】
各コネクタCN1〜CN5における各接続端子は、1番ピンがファン・モータ73の電圧印加用の端子に接続され、2番ピンがファン・モータ73の駆動状態出力端子に接続され、3番ピンがファン・モータ73の接地用の端子に接続されている。
【0071】
同図に示すように、このファン・モータ結線回路71には、各ファン・モータ73の供給端子に駆動用の電力を供給するための電力供給結線L1、L2が備えられている。電力供給結線L1は、各ファン・モータ73に対して高圧側の所定電圧(本実施の形態では、24V)を印加するための配線であり、一端部に当該所定電圧が印加される電圧印加端子DC_INが設けられている。また、電力供給結線L2は各ファン・モータ73の接地用の端子を接地させるための配線であり、一端部に接地端子GNDが設けられている。
【0072】
また、ファン・モータ結線回路71には、各ファン・モータ73の間に介在されて各ファン・モータ73をデイジーチェーン接続すると共に、上流側に接続されたファン・モータ73の駆動状態出力端子から出力される状態検出信号に基づいて、当該上流側に接続されたファン・モータ73が正常に駆動されるまでは下流側に接続されたファン・モータ73へ駆動用の電力を供給するための電力供給結線L1を切断し、正常に駆動された後に当該電力供給結線L1を接続するスイッチ素子として機能する4つ(ファン・モータ73より1つ少ない数)のバイポーラ・トランジスタ(以下、単に「トランジスタ」という。)Q1〜Q4が備えられている。
【0073】
ここで、電力供給結線L1は、最上流に位置付けられるコネクタCN1の1番ピンと、各トランジスタQ1〜Q4のエミッタに接続されており、電力供給結線L2は各コネクタCN1〜CN5の3番ピンに接続されると共に接地されている。
【0074】
また、各トランジスタQ1〜Q4のベースは、対応する抵抗器R1,R3,R5,R7の何れか1つを介して上流側に位置されたコネクタCN1〜CN4の何れか1つにおける2番ピンに接続されており、各トランジスタQ1〜Q4のコレクタは下流側に位置されたコネクタCN2〜CN5の何れか1つにおける1番ピンに接続されている。
【0075】
一方、各トランジスタQ1〜Q4のベースは、対応する抵抗器R2,R4,R6,R8の何れか1つを介してプル・アップされる一方、コネクタCN5の2番ピンは抵抗器R9を介してプル・アップされて状態検出端子SDに接続されている。
【0076】
さらに、電力供給結線L1には、電圧印加端子DC_INと抵抗器R9との間に、当該結線を断続するためのスイッチSW1と、ファン・モータ結線回路71の各素子を保護するためのヒューズFU1とが介在されている。
【0077】
そして、スイッチSW1の開閉制御端子はスイッチ制御端子SW1_ONに接続されている。
【0078】
なお、図1に示すように、本実施の形態に係る画像形成装置10では、複数の熱風ノズル72がインク乾燥部18に設けられているため、ファン・モータ結線回路71もまた熱風ノズル72の数だけ設けられている。
【0079】
[システム構成]
次に、図4を参照して、本実施の形態に係る画像形成装置10のシステム構成を説明する。
【0080】
同図に示されるように、画像形成装置10は、通信インタフェース83、システムコントローラ84、画像メモリ85、ROM86、モータドライバ87、ヒータドライバ88、ファン・モータドライバ81、プリント制御部89、画像バッファメモリ90、画像処理部91、ヘッドドライバ92等を備えている。
【0081】
通信インタフェース83は、ユーザが画像形成装置10に対して画像形成の指示等を行うため等に用いられるホスト装置99とのインタフェース部である。通信インタフェース83にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインタフェースやセントロニクスなどのパラレルインタフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0082】
ホスト装置99から送出された画像情報は通信インタフェース83を介して画像形成装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ85に記憶される。画像メモリ85は、通信インタフェース83を介して入力された画像情報を記憶する記憶手段であり、システムコントローラ84を通じて情報の読み書きが行われる。画像メモリ85は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0083】
システムコントローラ84は、中央演算処理装置(CPU)およびその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従って画像形成装置10の全体を制御する制御装置として機能すると共に、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ84は、通信インタフェース83、画像メモリ85、モータドライバ87、ヒータドライバ88、ファン・モータドライバ81等の各部を制御し、ホスト装置99との間の通信制御、画像メモリ85およびROM86の読み書き制御等を行うと共に、用紙搬送系のモータ93やIRヒータ56,74,72Bを制御する制御信号を生成する。なお、プリント制御部89に対しては、制御信号の他に、画像メモリ85に記憶された画像情報を送信する。
【0084】
また、ROM86には、システムコントローラ84のCPUが実行するプログラムおよび制御に必要な各種データなどが格納されている。ROM86は、書き換え不能な記憶手段であってもよいが、各種のデータを必要に応じて更新する場合は、EEPROMのような書き換え可能な記憶手段を用いることが好ましい。
【0085】
画像メモリ85は、画像情報の一時記憶領域として利用されると共に、プログラムの展開領域およびCPUの演算作業領域としても利用される。
【0086】
モータドライバ87は、システムコントローラ84からの指示に従って用紙搬送系のモータ93を駆動するドライバ(駆動回路)である。また、ヒータドライバ88は、システムコントローラ84からの指示に従ってIRヒータ56,74,72Bを駆動するドライバである。
【0087】
また、ファン・モータドライバ81は、システムコントローラ84からの指示に従って、各ファン・モータ73およびファン・モータ結線回路71を駆動するドライバである。
【0088】
ここで、各熱風ノズル72におけるファン・モータ結線回路71の電圧印加端子DC_IN、スイッチ制御端子SW1_ON、状態検出端子SD、および接地端子GNDはファン・モータドライバ81に接続されており、システムコントローラ84は、各熱風ノズル72に対し、電圧印加端子DC_INおよび接地端子GNDを介した各ファン・モータ73への電源電圧の供給の制御、スイッチ制御端子SW1_ONを介したスイッチSW1の開閉の制御、および状態検出端子SDを介したファン・モータ73の駆動状態の把握を、各々ファン・モータドライバ81を介して行うことができる。
【0089】
一方、プリント制御部89は、CPUおよびその周辺回路等から構成され、システムコントローラ84の制御に従い、画像処理部91と協働して画像メモリ85内の画像情報から吐出制御用の信号を生成するための各種加工、補正等の処理を行うと共に、生成したインク吐出データをヘッドドライバ92に供給してヘッドユニット66の吐出駆動を制御する。
【0090】
プリント制御部89には、プリント制御部89のCPUが実行するプログラムおよび制御に必要な各種データなどが格納されているROM94が接続されている。ROM94もまた書き換え不能な記憶手段であってもよいが、各種のデータを必要に応じて更新する場合は、EEPROMのような書き換え可能な記憶手段を用いることが好ましい。
【0091】
画像処理部91は、入力された画像情報からインク色別のドット配置データを生成するものであり、入力画像情報に対してハーフトーニング処理を行って高品質のドット位置を決定する。
【0092】
本実施の形態に係る画像処理部91は、濃度変換処理(UCR処理や色変換を含む。)および必要な場合には画素数変換処理、濃度補正処理、並びに多値の濃度データから2値(又は多値)のドット配置データに変換するハーフトーニング処理(中間階調処理)等を行う。
【0093】
なお、図4において、画像処理部91は、システムコントローラ84やプリント制御部89とは別個のものとして図示しているが、例えば、画像処理部91は、システムコントローラ84或いはプリント制御部89に含まれて、その一部を構成するようにしてもよい。
【0094】
また、プリント制御部89は、画像処理部91で生成されたドット配置データに基づいてインクの吐出データ(ヘッド64のノズルに対応するアクチュエータの制御信号)を生成するインク吐出データ生成機能と、駆動波形生成機能とを有している。
【0095】
インク吐出データ生成機能にて生成されたインク吐出データはヘッドドライバ92に与えられ、ヘッドユニット66のインク吐出動作が制御される。
【0096】
駆動波形生成機能は、ヘッド64の各ノズルに対応したアクチュエータを駆動するための駆動信号波形を生成する機能であり、当該駆動波形生成機能にて生成された信号(駆動波形)は、ヘッドドライバ92に供給される。なお、駆動波形生成機能にて生成される信号は、デジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
【0097】
プリント制御部89には画像バッファメモリ90が備えられており、プリント制御部89における画像情報処理時に画像情報やパラメータ等のデータが画像バッファメモリ90に一時的に格納される。なお、図4において画像バッファメモリ90はプリント制御部89に付随する態様で示されているが、画像メモリ85と兼用することも可能である。
【0098】
なお、プリント制御部89とシステムコントローラ84とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0099】
次に、本実施の形態に係る画像形成装置10の作用として、本発明に特に関係する、システムコントローラ84により各熱風ノズル72に設けられたファン・モータ73の回転駆動を制御する際の作用を、図5を参照しつつ詳細に説明する。なお、図5は、各熱風ノズル72によって用紙を乾燥するタイミングが到来した際にシステムコントローラ84のCPUによって実行されるファン・モータ駆動処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはROM86の所定領域に予め記憶されている。また、ここでは、錯綜を回避するために、1つの熱風ノズル72のみを制御するものとして説明する。
【0100】
同図のステップ100では、ファン・モータ結線回路71の電圧印加端子DC_INと接地端子GNDとの間への上記所定電圧(ここでは、24V)の印加を開始するようにファン・モータドライバ81を制御し、次のステップ102にて、スイッチSW1をオン状態(接続状態)とするようにファン・モータドライバ81を制御する。
【0101】
以上の処理により、ファン・モータ結線回路71は、コネクタCN1の1番ピンおよび3番ピンの間へのファン・モータ73の駆動用電力の供給が開始される結果、コネクタCN1に接続されたファン・モータ73(以下、「最上流ファン・モータ」という。)が起動される。
【0102】
その後、最上流ファン・モータの動作が安定すると、当該ファン・モータの駆動状態出力端子から出力されている状態検出信号が、当該ファン・モータの異常時または起動前の状態を示すレベル(本実施の形態では、ハイ・レベル)から当該ファン・モータが正常に駆動していることを示すレベル(本実施の形態では、ロー・レベル)に移行するため、コネクタCN1の2番ピンもまた、ハイ・レベルからロー・レベルに移行する結果、トランジスタQ1がオフ状態からオン状態に移行する。
【0103】
このトランジスタQ1のオン状態への移行によってコネクタCN2の1番ピンおよび3番ピンの間へのファン・モータ73の駆動用電力の供給が開始される結果、コネクタCN2に接続されたファン・モータ73が起動される。
【0104】
以降、最下流に位置されたファン・モータ73(以下、「最下流ファン・モータ」という。)に至るまで同様の動作が順次行われる結果、最上流ファン・モータから最下流ファン・モータに至るまで、各ファン・モータ73が1つずつ上流側から順に起動されることになる。
【0105】
次のステップ104では、上記ステップ102の処理が実行されてから最下流ファン・モータが正常に駆動するまでの期間として予め定められた期間の経過待ちを行い、次のステップ106にて、状態検出端子SDからの出力信号(最下流ファン・モータの駆動状態を示す信号)のレベルを示す情報を、ファン・モータドライバ81を介して取得し、当該情報が、ファン・モータ73が正常に駆動しているものとして予め定められたレベル(本実施の形態では、ロー・レベル)となっているか否かを判定することにより、最下流ファン・モータが正常に駆動しているか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ108に移行する。
【0106】
ステップ108では、熱風ノズル72による用紙乾燥を終了するタイミングが到来したか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ106に戻る一方、肯定判定となった時点でステップ112に移行する。
【0107】
なお、本実施の形態に係る画像形成装置10では、上記熱風ノズル72による用紙乾燥を終了するタイミングとして、一連の画像形成処理が終了してから所定期間(本実施の形態では、5分間)が経過したタイミングを適用しているが、これに限らず、画像形成処理に用紙詰まり等の何らかの異常が発生して画像形成動作が停止したタイミング、ユーザによって画像形成動作が強制的に停止されたタイミング、画像形成装置10が省エネルギー・モード等の予め定められた動作モードに移行したタイミング等の他のタイミングを適用してもよいことは言うまでもない。
【0108】
一方、上記ステップ106において否定判定となった場合にはステップ110に移行し、ファン・モータ73が異常である場合に実行するものとして予め定められた異常対応処理を実行し、その後にステップ112に移行する。
【0109】
なお、本実施の形態に係る画像形成装置10では、上記異常対応処理として、画像形成動作を強制的に停止する処理を適用しているが、これに限らず、この処理に加えて、ブザーの鳴動や表示手段による表示等によってファン・モータ73に異常が生じていることをユーザに提示する処理、ファン・モータ73への給電を強制的に停止する処理等の他の処理の何れか1つ、または複数の組み合わせを適用してもよいことは言うまでもない。
【0110】
ステップ112では、スイッチSW1をオフ状態(切断状態)とするようにファン・モータドライバ81を制御し、次のステップ114にて、上記ステップ100の処理によって開始した電力の供給を停止するようにファン・モータドライバ81を制御した後、本ファン・モータ駆動処理プログラムを終了する。
【0111】
本実施の形態に係るファン・モータ結線回路71では、最上流ファン・モータから最下流ファン・モータに至るまで、上流側に隣接するファン・モータ73が安定動作した後に次段のファン・モータ73が起動されるため、複数のファン・モータ73の起動電流が重なることがない。これにより、起動時における大電流の発生を防止することができると共に、保護用ヒューズ(本実施の形態では、ヒューズFU1)の溶断の発生を抑制することができる。
【0112】
また、本実施の形態に係るファン・モータ結線回路71では、各ファン・モータ73から状態検出信号を出力する駆動状態出力端子をカスケードに接続しているので、途中のファン・モータ73が故障等によって非動作状態となった場合には次段のファン・モータ73が起動しないため、最下流ファン・モータの状態検出信号のみを監視することで、各ファン・モータ73の動作確認を行うことができる。
【0113】
以上詳細に説明したように、本実施の形態では、複数のファン・モータ(ここでは、ファン・モータ73)の間に介在されて各ファン・モータをデイジーチェーン接続するスイッチ素子(ここでは、トランジスタQ1〜Q4)により、上流側に接続されたファン・モータが正常に駆動されるまでは下流側に接続されたファン・モータへ駆動用の電力を供給するための電力供給結線(ここでは、電力供給結線L1)を切断し、正常に駆動された後に当該電力供給結線を接続しているので、コストの上昇や大型化を招くことなく、突入電流の発生に起因する不具合の発生を抑制することができる。
【0114】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0115】
また、上記の実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明を抽出できる。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0116】
例えば、上記実施の形態では、本発明のファン・モータ結線回路として図3に示されるものを適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図6に示されるファン・モータ結線回路71’を適用する形態としてもよい。なお、同図における図3と同一の構成要素には図3と同一の符号を付する。
【0117】
同図に示されるように、このファン・モータ結線回路71’では、各トランジスタQ1〜Q4のベースと接地端子GNDとの間に、対応するトランジスタQ1〜Q4のオン状態への移行を遅延させるための遅延回路としてコンデンサC1〜C4が追加されている点のみが、上記実施の形態に係るファン・モータ結線回路71と異なっている。
【0118】
従って、この場合、上記実施の形態に係るファン・モータ結線回路71に比較して、より確実に各ファン・モータの起動タイミングをずらすことができる結果、より確実に突入電流の発生に起因する不具合の発生を抑制することができる。なお、この場合、上記遅延回路として、コンデンサに代えてディレイ・ライン等の他の遅延素子を適用することができることは言うまでもない。
【0119】
また、上記実施の形態では、本発明のスイッチ素子としてバイポーラ・トランジスタを用いてファン・モータ結線回路を構成した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、一例として図7に示されるような、本発明のスイッチ素子として電界効果トランジスタを用いてファン・モータ結線回路71’’を構成する形態としてもよい。なお、図7では、最上流ファン・モータから2段目のファン・モータ73までのみの回路構成を示し、3段目以降の図示は省略している。
【0120】
同図に示すように、このファン・モータ結線回路71’’では、電力供給結線L1がコネクタCN1の1番ピンに接続されると共に、電界効果トランジスタF1のソースに接続されている。また、各コネクタCN1,CN2,・・・の3番ピンは各々接地されている。
【0121】
一方、ファン・モータ結線回路71’’には、ベースが抵抗器R10を介してコネクタCN1の2番ピンに接続されたバイポーラ・トランジスタQ1が備えられており、そのエミッタが抵抗器12を介して電界効果トランジスタF1のゲートに接続される一方、コレクタが接地されている。また、バイポーラ・トランジスタQ1のエミッタが抵抗器R11を介して自身のベースに接続されている。なお、電界効果トランジスタF1のゲートは抵抗器13を介してプル・アップされる一方、ドレインが下流側に隣接するコネクタCN2の1番ピンに接続されている。
【0122】
このファン・モータ結線回路71’’では、電界効果トランジスタF1が本発明のスイッチ素子として機能し、各ファン・モータ73が最上流ファン・モータから最下流ファン・モータに至るまで順に起動することになる。
【0123】
従って、このファン・モータ結線回路71’’においても突入電流の発生に起因する不具合の発生を抑制することができる。
【0124】
なお、このファン・モータ結線回路71’’においても、図6に示されるファン・モータ結線回路71’と同様に、バイポーラ・トランジスタQ1のベースと接地端子GNDとの間に遅延回路として機能するコンデンサC1が介在されているため、このファン・モータ結線回路71’’においても、より確実に、突入電流の発生に起因する不具合の発生を抑制することができる。
【0125】
また、上記実施の形態では、本発明のスイッチ素子としてトランジスタを適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、リレースイッチを適用する形態とすることもできる。この場合も上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0126】
また、上記実施の形態では、本発明のファン・モータ結線回路を液滴吐出装置に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、パーソナル・コンピュータ、大型コンピュータ等、複数のファン・モータを同時に使用する他の電子機器に本発明のファン・モータ結線回路を適用する形態とすることもできる。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0127】
また、上記実施の形態では、本発明の形成手段として、液滴の吐出口を記録媒体の幅方向の全域に対応するように複数有する、所謂シングルパス方式のヘッド64を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、主走査方向に移動しつつ画像を形成する、所謂シャトル・スキャン方式のヘッドを本発明の形成手段として適用する形態とすることもできる。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0128】
また、上記実施の形態では、本発明の形成手段として、液滴の吐出口が2次元状に設けられたヘッド64を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、液滴の吐出口が主走査方向に沿った1次元状に設けられたヘッドを本発明の形成手段として適用する形態とすることもできる。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0129】
その他、上記実施の形態に係る画像形成装置10の構成(図1〜図4参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0130】
さらに、上記実施の形態において説明したファン・モータ駆動処理プログラムの処理の流れ(図5参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、各ステップの処理順序の変更、処理内容の変更、不要なステップの削除、新たなステップの追加等を行うことができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0131】
10 画像形成装置
64 インクジェットラインヘッド(形成手段)
71,71’,71’’ ファン・モータ結線回路
72 熱風ノズル(乾燥手段)
72A ファン
72B ヒータ
72C 開口
72D 筐体
73 ファン・モータ
84 システムコントローラ
C1〜C4 コンデンサ(遅延回路)
CN1〜CN5 コネクタ
F1 電界効果トランジスタ(スイッチ素子)
FU1 ヒューズ
L1,L2 電力供給結線
Q1〜Q4 トランジスタ(スイッチ素子)
R1〜R13 抵抗器
SW1 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用の電力が供給される供給端子、および正常に駆動しているか否かを示す状態検出信号を出力する駆動状態出力端子を有する複数のファン・モータの前記供給端子に前記駆動用の電力を供給するための電力供給結線と、
前記複数のファン・モータの間に介在されて各ファン・モータをデイジーチェーン接続すると共に、上流側に接続された前記ファン・モータの前記駆動状態出力端子から出力される状態検出信号に基づいて、当該上流側に接続された前記ファン・モータが正常に駆動されるまでは下流側に接続された前記ファン・モータへ前記駆動用の電力を供給するための前記電力供給結線を切断し、正常に駆動された後に当該電力供給結線を接続する少なくとも1つのスイッチ素子と、
を備えたファン・モータ結線回路。
【請求項2】
前記スイッチ素子は、開閉制御端子が上流側に接続された前記ファン・モータの前記駆動状態出力端子に接続され、接続端子および被接続端子が下流側に接続された前記ファン・モータに前記駆動用の電力を供給するための前記電力供給結線に介在されたものである
請求項1記載のファン・モータ結線回路。
【請求項3】
前記スイッチ素子は、トランジスタまたはリレースイッチである
請求項1または請求項2記載のファン・モータ結線回路。
【請求項4】
前記上流側に接続された前記ファン・モータが正常に駆動された後に前記下流側に接続された前記ファン・モータへ前記駆動用の電力を供給するための前記電力供給結線を接続するタイミングを遅延させる遅延回路
をさらに備えた請求項1〜請求項3の何れか1項記載のファン・モータ結線回路。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項記載のファン・モータ結線回路と、
前記ファン・モータ結線回路によって結線された複数のファン・モータと、
画像情報に基づいて記録媒体に液滴を吐出することにより、前記画像情報により示される画像を前記記録媒体に形成する形成手段と、
前記形成手段によって画像が形成された記録媒体を前記複数のファン・モータを用いて乾燥する乾燥手段と、
を備えた液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−206903(P2010−206903A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48420(P2009−48420)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】