フィブリン由来ペプチドB―βによる動脈瘤治療のための装置および方法
少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの局所投与による動脈瘤の治療に関する方法およびステントグラフトが、本明細書において開示される。少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、ステントグラフト上へ少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを直接配置すること、ステントグラフトに見られるコーティングに少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを組み込むこと、ステントグラフトと結合した送給装置に少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを含むこと、および/または、ステントグラフト配置の時間か、時間前後に、搬送および/または注入カテーテルにより少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを注入すること、の1または2以上によって、局所的に投与することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの局所投与による動脈瘤治療に関する。少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、ステントグラフト上へ少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを直接配置すること、ステントグラフトに見られるコーティングに少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを組み込むこと、ステントグラフトと結合した送給装置に少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを含むこと、および/または、ステントグラフト配置のとき又はその前後に、搬送および/または注入カテーテルにより少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを注入することによって、局所的に投与することができる。
【背景技術】
【0002】
動脈瘤は、動脈壁の薄化、脆弱化した部位が膨らんだときに発生し、動脈が正常な直径の150%以上まで拡張したときに一般に治療される。動脈瘤のうち最も一般的および致命的なものは、大血管が心臓から下腹部へと伸びる、大動脈において発生する。正常な大動脈は、幅が1.6センチメートルと2.8センチメートルの間にあり、領域が5.5センチメートルと同程度の幅に達する場合には、手術が推奨されるほど、破裂の危険性が増加する。動脈瘤は、症状がないため、多くの場合、患者が病院に到着する前に破裂する。
【0003】
動脈瘤は、米国で、毎年約32,000件の死をもたらしていると推定される。その上、米国だけで約450,000件とされる、原因不明の突然死が、多くの場合、心臓発作または脳卒中と簡単に誤診されるが、それらの多くが動脈瘤に起因する可能性があるため、動脈瘤による死は過少報告されていると疑われる。動脈瘤は、ほとんどの場合、体で最も大きな動脈である、大動脈で発生する。約15,000件/年にあたる、大部分の大動脈瘤が腹大動脈に関係し、約2,500件が胸郭で発生する。脳動脈瘤は脳で発生し、検出および治療がより困難であるためより複雑な症例を示し、米国で1年に約14,000件の死をもたらす。大動脈瘤は、標準的な超音波、コンピュータ断層撮影(CT)および磁気共鳴映像法(MRI)走査によって検出され、そして、これらの走査技術の他の疾病での増加した利用は、無傷の大動脈瘤の診断の、およそ200%の増加をもたらした。約200,000件の無傷の大動脈瘤が、この増加した判別検査のみから、毎年診断されている。
【0004】
米国の外科医は、通常、外科的な切開処置で血管の異常部位をポリマーグラフトに置き換えることによって、約50,000件の腹部大動脈瘤を毎年治療する。もっと最近になって使われているより低侵襲的な処置は、動脈瘤部位へのステントグラフトの配置である。ステントグラフトは、血管の部位を置換せずに支持するように動脈瘤部位を架橋する、管状装置である。ステントグラフトは、動脈瘤部位で血管内に配置された場合に、血流と脆弱化した血管壁間の障壁として作用し、これにより、血管の損害を受けた部分への圧力を減少させる。複数の医学的共存症が従来の動脈瘤治療の危険性を非常に高くする患者は、ステント移植の候補となる可能性がある。
【0005】
ステント移植は有効であるが、動脈瘤部位が回避されても、動脈瘤は残される。動脈瘤の組織は、血管壁の継続する薄化のために、動脈瘤の大きさが増加し続けるように変性し続ける可能性がある。したがって、従来技術においては、ステントグラフト配置後に、動脈瘤自体を治療する必要、および/または、継続する動脈瘤の成長を遅らせるかまたは止める必要がある。本発明は、そのような進歩に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ステントグラフト配置後に動脈瘤を治療するために用いることができる方法およびステントグラフトを提供する。
【0007】
一実施形態においては、本発明は、動脈瘤を治療する方法である。この方法は、以下の工程を含む。ステントグラフトを動脈瘤部位に搬送すること、動脈瘤に橋を架けるようにステントグラフトを配置すること、および、動脈瘤部位に少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを局所的に投与すること。
【0008】
別の実施形態においては、局所投与の方法が説明される。この方法は、以下の工程を含む。少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βをステントグラフトの外表面に塗布すること、および/または、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βをステントグラフト上のコーティングに組み込むこと。
【0009】
別の実施形態においては、局所投与の方法が説明される。この方法は、以下の工程を含む。少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βをコーティングに組み込んで、ステントグラフトの外表面上にコーティングを配置すること。
【0010】
別の実施形態においては、局所投与の方法が説明される。この方法は、以下の工程を含む。送給装置をステントグラフトに取り付けること。この送給装置は、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを保持および放出する。この方法の別の実施形態においては、送給装置はパウチである。
【0011】
別の実施形態においては、局所投与の方法が説明される。この方法は、以下の工程を含む。2つの層をステントグラフトに提供すること。配置後、第1層が血流にさらされ、第2層が血管壁に面する。また、第2層は半透性であり、パウチが形成されるように、部分的に層を互いに密着すること、および、パウチに少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを装填すること。
【0012】
別の実施形態においては、局所投与の方法が説明される。この方法は、以下の工程を含む。少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βをパウチに装填する前に、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを担体と結合すること。
【0013】
別の実施形態においては、局所投与の方法が説明される。この方法は、以下の工程を含む。ステントグラフトがステント配置カテーテル内に圧縮されるときに、ステントグラフトの外表面に少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを直接塗布すること。
【0014】
別の実施形態においては、局所投与の方法が説明される。この方法は、以下の工程を含む。搬送カテーテルおよび/または注入カテーテルによって、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを投与すること。
【0015】
別の実施形態においては、局所投与の方法が説明される。この方法は、以下の工程を含む。少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βが、動脈瘤の嚢をしっかりと充填すること。
【0016】
別の実施形態においては、局所投与の方法が説明される。この方法は、以下の工程を含む。注入カテーテルが、単一ルーメン注入カテーテルおよびマルチルーメン注入カテーテルを含むグループから選択されること。
【0017】
別の実施形態においては、局所投与の方法が説明される。この方法は、以下の工程を含む。少なくとも2つの注入カテーテルによって、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを投与することで、第1および第2注入カテーテルは、異なる経路で動脈瘤に達する。
【0018】
本発明は、また、本発明に従って使用することができるステントグラフトを含む。一実施形態においては、本発明は、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを備えたステントグラフトを含み、この少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、ステントグラフトの外表面に塗布され、ステントグラフトに塗布されるコーティング、または、ステントグラフトと結合した送給装置内に組み込まれるもののうちの、1または2以上である。
【0019】
ステントグラフトの別の実施形態においては、ステントグラフトは、ステントグラフトに塗布されるコーティングに組み込まれる少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを備え、このコーティングは、生分解性である。
【0020】
ステントグラフトの別の実施形態においては、ステントグラフトは、ステントグラフトに塗布されるコーティングに組み込まれる少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを備え、このコーティングは、温度感受性および/またはpH感受性を有する。
【0021】
ステントグラフトの別の実施形態においては、ステントグラフトは、ステントグラフトに塗布されるコーティングに組み込まれる少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを備え、このコーティングは、速放性コーティング、中間放出性のコーティングまたは徐放性コーティングになるように、調製される。
【0022】
ステントグラフトの別の実施形態においては、ステントグラフトは、ステントグラフトと結合した送給装置内に、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを備え、そこで、この少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、更に、担体と結合をする。
【0023】
ステントグラフトの別の実施形態においては、担体は、シート、スラブ、ゲル、カプセル(単数)、カプセル(複数)、微小粒子、ナノ粒子およびこれらの組み合わせ、から成るグループから選択される。
【0024】
ステントグラフトの別の実施形態においては、送給装置は、ステントグラフトと結合したパウチである。ステントグラフトの別の実施形態においては、パウチは、2つの層を有するステントグラフトを提供することによって作製され、配置後、第1層は血流にさらされ、第2層は血管壁に面し、また、第2層は半透性であり、1または2以上のパウチが形成されるように、層は部分的に共に密着する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】腹部大動脈瘤において用いられるような、外側の金属の骨組みを有する、完全に配置されたステントグラフトを示す。
【図2】動脈瘤部位に配置されたステントグラフトと結合をした、送給装置を示す。
【図3a】パウチ(pouch)送給装置の側面図である。
【図3b】パウチ送給装置がステントグラフトの外表面を巻装した、ステントグラフトの断面図である。
【図4】搬送カテーテル内で、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βでステントグラフト外壁のコーティングができるように構成された、ステントグラフト搬送カテーテルを示す。
【図5】搬送カテーテル内で、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βでステントグラフト外壁のコーティングができるように構成された、代替的なステントグラフト搬送カテーテルを示す。
【図6a】治療部位での、注入カテーテルによる少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの送給を伴った、ステントグラフト配置を示す。
【図6b】治療部位での、注入カテーテルによる少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの送給を伴った、ステントグラフト配置を示す。
【図6c】治療部位での、注入カテーテルによる少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの送給を伴った、ステントグラフト配置を示す。
【図7a】治療部位での、複数の注入カテーテルによる少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの送給を伴った、ステントグラフト配置を示す。
【図7b】治療部位での、複数の注入カテーテルによる少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの送給を伴った、ステントグラフト配置を示す。
【図7c】治療部位での、複数の注入カテーテルによる少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの送給を伴った、ステントグラフト配置を示す。
【図8】ステントグラフト配置後、動脈瘤嚢内に直接、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを送給する別の手段を示す。
【図9】ステントグラフト配置後、動脈瘤嚢内に直接、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを送給する別の手段を示す。
【図10】ステントグラフト配置後、動脈瘤嚢内に直接、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを送給する、更に別の予備手段を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
動脈瘤は膨化、または血管の拡張で、血管壁欠陥と一般に関連している。動脈瘤を治療する過去の方法は、非常に侵襲性の高い外科的処置が関与し、冒された血管領域が除去され(または開放され)、合成グラフトで置き換えられて(または内部で補われて)それは所定の位置に縫合された。しかしながら、この処置は、非常に侵襲性が高く、すべての患者に適切というわけではなかった。歴史的に、この処置の候補ではない患者は、未治療のままで、動脈瘤破裂による急死の、継続した危険の状態のままであった。
【0027】
侵襲性の動脈瘤手術と関連をしたいくらかの危険性を解決するために、ステントグラフトは開発された。ステントグラフトは、侵襲性の処置を最小限に使用して、位置を定め、配置することができる。基本的に、カテーテルは、圧縮してカテーテルの遠位端に装入されたステントグラフトを有し、動脈瘤部位の橋架位置へ、動脈を通って前進をする。それから、ステントグラフトは、ストレスおよび破裂を促進する可能性のある、血流の通過およびその結果として生じる血流力から、動脈瘤を保護する、内部のライナを形成して、脆弱化した血管壁に並列をした血管腔内に配置される。ステントグラフトの大きさおよび形状は、治療部位の内腔内径および動脈瘤の長さに適合する。
【0028】
ステントグラフトは、一般に、ダクロン(商標)、伸展PTFE、または、様々な生体適合性ポリマー繊維から織られた布状の素材といった、生体適合性グラフト素材の内張りまたは外皮を有する金属の骨組みを備える。グラフト素材は、骨組みに、縫われるか、接着されるか、または、成形することができる。自己拡張ステントグラフトが搬送カテーテルから配置されるとき、骨組みは、管腔を満たすためにグラフト素材を拡張し、内腔壁に対して放射状の力を及ぼす。
【0029】
図1は、腹部大動脈瘤部位での、例示的なステントグラフト配置を示す。この種の配置では、ステントグラフト100は、左の腸骨動脈114を通って動脈瘤部位104に配置される。ステントグラフト100は、遠位端部102、および、右の腸骨動脈116にステントグラフトを固定するための腸骨脚部108を有する。ステントグラフト100が、最初に、第1配置カテーテルで配置され、そして、腸骨脚部108が、第2配置カテーテルで配置される。この2つのセグメントは、重複部分106で接合される。更に、配置後、ステントグラフト100は、少なくとも、部位110、120および122で血管壁と接触し、これらの部位での動脈瘤嚢への血液の漏れを防ぐ。
【0030】
図1に示されるようなステント移植は、動脈瘤破裂の可能性を減少することができるが、動脈瘤そのものを治療しない。すなわち、迂回され、保護されたとしても、動脈瘤および動脈瘤に関連した患部組織は残される。そのため、動脈瘤の組織は、血管壁の継続する薄化のために、動脈瘤の大きさが増加し続けるように変性し続ける可能性がある。したがって、ステント移植に加えて(または、ステント移植の代わりに)患部組織を治療する方法は、動脈瘤治療の有意な進歩を提供する。
【0031】
例えば血管壁に沿った、細胞結合組織の崩壊は、正常な生理的過程である。健康な血管においては、細胞結合組織の崩壊は、細胞結合組織の再合成と修復の、動的平衡の中に存在する。一般に、MMPは、MMPの合成および分泌の段階で、更に、他の再合成と修復過程の適切な平衡を維持するために、MMPの細胞外活性の段階で、厳しく調節される。しかしながら、MMPの過剰発現、または、MMP間の平衡異常は、過度の組織崩壊、および、その結果として生じる変性疾患過程の原因となる可能性がある。この変性疾患過程としては、細胞外基質または結合組織の過度の崩壊を特徴とする動脈瘤が挙げられるが、これに限定されるものではない。したがって、MMPの作用を阻害することは、動脈瘤部位の、欠陥のある血管壁を治療するために、有効なストラテジを提供することができる。
【0032】
理論に拘束されることを望むものではないが、一態様では、大動脈瘤は、1または2以上の炎症過程によって引き起こされた細胞外基質の撹乱を特徴とすることができる。炎症細胞は、腹大動脈などの、アテローム斑を含んでいる領域に移動する。そこで、炎症細胞は、MMPを分泌すると考えられる。その結果、細胞外基質の分解に導かれる。炎症は、血流から組織までの、循環白血球の移動を必要とする。白血球の移動は、白血球遊出の多段階過程によって調整される。血管内皮(VE)カドヘリンは、重要な役割を演じると考えられる。VEカドヘリンは、内皮間の結合分子である。VEカドヘリンは、白血球遊出を可能にするか、または、制限する門となる。フィブリンは、VEカドヘリンと結合し、炎症過程を誘導することができる。更に、フィブリンは、それ自身の断片化を調節することができる。これらの破片は、フィブリンのN末端断片に由来する。これらの断片は、E破片と呼ばれる。あるの破片は、VEカドヘリンを結合し、炎症および白血球遊出を誘導することができる。フィブリン由来ペプチドB―β(一実施形態では、フィブリン由来B―β15―42)は、この過程を阻害する可能性があり、その結果、腹部大動脈瘤などの、動脈瘤を治療または安定させる可能性がある。
【0033】
一般に、MMP阻害を用いるさまざまな疾患の治療は、全身用のMMP阻害剤を利用している。すなわち、MMP阻害剤は、標的部位に到達する阻害剤の量が効果をもたらすのに十分であったと保証できる十分な投薬量で、経口、筋注、または、静注のいずれかで、投与される。本発明の一態様は、ステント移植処置を利用して、動脈瘤部位に局所的に1または2以上のフィブリン由来ペプチドB―βを投与することである。少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの散布は、個人に対する総投薬量が減少できるように治療反応を実質的に局所化させ、そして、望ましくない副作用を最小にする。
【0034】
少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、本発明による3つの主要な方法で、動脈瘤部位に送給することができる。(1)少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、ステントグラフト上へ直接配置、または、ステントグラフトに見られるコーティングに組み込むことができ、(2)少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、ステントグラフトと結合された送給装置によって、いくつかの実施形態では、担体と結合して、提供することができ、および/または(3)少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、ステントグラフト配置の時間、又は、配置の時間前後に、搬送および/または注入カテーテルによって動脈瘤部位に投与することができる。
【0035】
少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、ステントグラフトの表面に塗布することができる。ステントグラフト配置後、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、ステントグラフト素材から離れて動脈瘤治療部位に放散する。この実施形態が利用される場合には、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、沈澱、コアセルベーション、または、結晶化を含むがこれに限定されない方法を利用して、ステントグラフトの表面に塗布することができる。また、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、共有結合、イオン結合、または、限定されるものではないが、水素結合およびファンデルワールス力を含む、他の分子内相互作用によって、ステントグラフトに結合することができる。
【0036】
少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、ステントグラフト上へ配置されるコーティングに組み込むこともできる。したがって、ステントグラフトコーティングは、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを保持および放出のできる、ステントグラフトの布上へ配置される素材である。
【0037】
本発明に基づいて利用されるステントグラフトコーティングは、生分解性と非生分解性のいずれでもよい。生分解性コーティングを作成するために利用することができる素材の、非限定的な代表例としては、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、フィブリノーゲン、ヒアルロン酸、デンプン、セルロースおよびセルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸セルロース琥珀酸エステル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート)、カゼイン、デキストラン、多糖類、ポリ(乳酸)、ポリ(D、L―ラクチド)、ポリ(D、L―ラクチド―コ―グリコリド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ヒドロキシ酪酸塩)、ポリ(アルキルカーボネート)、ポリエステル類、ポリ(オルトエステル)、(例えば、1,4―ブチレングリコール、アジピン酸および1,6―アミノヘキサン酸(BAK 1095)を主成分とした)ポリ(エステルアミド)類、ポリ(エステルカーボネート)類(例えば、チロシン―ポリ(アルキレンオキシド)―由来ポリ(エーテルカーボネート)類)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリ酸無水物類(例えば、ポリ(アジピン酸無水物)およびポリ(セバシン酸―コ―1,3―ビス(p―カルボキシフェノキシ)プロパン))、ポリホスファゼン、ポリ(アミノ酸)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸塩)、ポリ(ヒドロキシブチレート―コ―ヒドロキシ吉草酸塩)、ポリ(ブチレン琥珀酸エステル)(例えば、Bionolle(商標))、ポリ(ブチレンアジペート)、ポリアリーレート類(例えば、チロシン由来ポリアリーレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)―ポリ(エチレングリコール)共重合体(polyActive(商標))、ポリ(ε―カプロラクトン)―b―ポリ(エチレングリコール))ブロック共重合体、並びに、ポリ(エチレンオキシド)―b―ポリ(ヒドロキシブチレート)ブロック共重合体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
生分解性でないコーティングを作成するために利用することができる素材の、非限定的な代表例としては、ポリ(エチレン―酢酸ビニル)(「EVA」)共重合体、シリコーンゴム、アクリルポリマー類(例えば、ポリアクリル酸、ポリメチルアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリアルキルシアノアクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン6,6)、ポリウレタン、ポリ(エステルウレタン)、ポリ(エーテルウレタン)、ポリ(エステル―ウレア)、(例えば、ポリ(オキシエチレン)およびポリ(オキシプロピレン)ユニット(Pluronic(商標))を主成分とした)ポリエーテル類、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、他のプルロニック、ポリ(1,4―ブチレングリコール))、並びに、ビニルポリマー類、(例えばポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアセテートフタレート)およびポリ(塩化ビニル))が挙げられる。
【0039】
コーティングを作成するために用いることができる他の役立つ素材としては、ポリ(D,L―乳酸)、ポリ(L―乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(バレロラクトン)、ポリエチレングリコール(例えば、MePEG)とポリ(カプロラクトン)またはポリ(乳酸)の共重合体、カルボン酸ポリマー、ポリアセテート、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリシラン、ポリウレア、ポリオキシド、ポリスチレン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリスルホニド、ハロゲン化ポリビニル、ピロリドン、架橋性のアクリルおよびメタクリル酸ポリマー、ビニルアセテートポリマー、ビニルアセタールポリマー、エポキシ、メラミン、フェノールポリマー、水不溶性のセルロースエステルポリマー(例えば、セルロースアセトプロピオネート、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、硝酸セルロース、および、それらの混合物)、ポリエチレンオキシド、ポリヒドロキシアクリレート、ポリ(エチレンテレフタレート)、キサンタン、ヒドロキシプロピルセルロース、ビニルラクタム、ビニルブチロラクタム、ビニルカプロラクタム、極性ペンダント基を有する他のビニル化合物、親水性のエステル化基を有するアクリレートおよびメタクリレート、ヒドロキシアクリレート、セルロースエステルおよびエーテル、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリレート、天然および合成エラストマ、ゴム、アセタール、ナイロン、スチレンポリブタジエン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル酢酸ビニル、ペクチン、蔗糖酢酸イソ酪酸エステル、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、珪酸塩(例えば、Bioglass(商標)、モンモリロナイトおよび雲母)、アルギン酸塩、ポリ(アクリル酸)、ポリ―L―リジン、ポリエチレンイミン、ポリ(アリルアミン)、フッ化ポリオレフィン(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(商標))、ポリ(N―イソプロピルアクリルアミド)、ポリアセタール、芳香族ポリエステル、ポリ(プロピレンテレフタレート)(Sorona(商標))、ポリ(エーテルエーテルケトン)類、並びに、ポリ(エステルイミド)類などの、ポリマー類が挙げられる。一般に、Williamsの米国特許第6,514,515号、Parkらの米国特許第6,506,410号、Mathiowitzらの米国特許第6,531,154号、Chudzikらの米国特許第6,344,035号、Zdrahalaらの米国特許第6,376,742号、Griffith、L.A.のAnn,N.Y.of Sciences(2002)961:83―95、および、ChaikofらのAnn,N.Y.of Sciences(2002)961:96―105を参照にし、それぞれの全体の内容を参照により本明細書に組み込む。加えて、本明細書において説明されるすべての素材は、適切さ、有益さまたは必要に応じて、さまざまな組成で混合または共重合することができる。このような混同または共重合は、従来技術において、当業者のレベルの範囲内である。
【0040】
特定のコーティングに利用される選択された素材は、当業者に公知のさまざまな化学会社から得ることができる。しかしながら、ポリマー類がコーティング材として選択された場合、このような市販のポリマー類内の、未反応モノマー、低分子量オリゴマー、触媒または他の夾雑物の潜在的な存在のために、選択されたポリマーの純度を増加させることが(または、利用される、必要な素材に応じて)望ましい場合がある。このような純化工程は、より周知で、より純粋な組成のポリマー類を産生して、その結果、コーティングの機械的な特徴の予測可能性および性能を向上させる。厳格な純化工程は、選択されるポリマーまたはポリマー類によって決定される。しかしながら、一般に、純化工程で、ポリマーは、適切な溶媒に溶解される。適切な溶媒としては、塩化メチレン、酢酸エチル、クロロホルム、エタノールおよびテトラヒドロフラン(THF)が挙げられる(がこれらに限定されない)。それから、ポリマー溶液は、ポリマー(しかし、多量の夾雑物または未反応モノマーがない)が溶液から沈殿するように、通常、溶媒と相溶性があるが、ポリマーは溶けにくい第2素材と混合される。例えば、ポリマーの塩化メチレン溶液は、ヘプタンと混合することができ、ポリマーを溶液の中に降下させる。それから、溶剤混合物は、従来技術を用いて、共重合体沈殿物から除去される。
【0041】
本発明に基づいて利用されるコーティングは、所望の剥離性および/または他の特定の所望の性質を有する様々な形状で、形作ることができる。例えば、コーティングは、増加または減少したpHなどの、特定のトリガリングイベントに晒されると、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを放出するように、作りだすことができる。pH感受性コーティング材の非限定的な代表例としては、ポリ(アクリル酸)およびその誘導体(例えば、ポリ(アミノカルボン酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルアクリル酸)などのホモポリマー類)、このようなホモポリマーの共重合体、並びに、ポリ(アクリル酸)および他のアクリルモノマーの共重合体が、挙げられる。他のpH感受性ポリマーとしては、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、セルロースアセテートトリメリレート、および、キトサンなどの多糖類が挙げられる。更に、他のpH感受性ポリマーとしては、pH感受性ポリマーと水溶性高分子の任意の混合物が挙げられる。
【0042】
活性薬剤の放出がポリマーの温度に依存している、温度感受性ポリマーのコーティングを用いることもできる。温度感受性素材およびそれらのジェラチン温度の非限定的な代表例としては、ポリ(N―メチル―N―n―プロピルアクリルアミド)(19.8℃)、ポリ(N―n―プロピルアクリルアミド)(21.5℃)、ポリ(N―メチル―N―イソプロピルアクリルアミド)(22.3℃)、ポリ(N―n―プロピルメタクリルアミド(28.0℃)、ポリ(N―イソプロピルアクリルアミド)(30.9℃)、ポリ(N,n―ジエチルアクリルアミド)(32.0℃)、ポリ(N―イソプロピルメタクリルアミド)(44.0℃)、ポリ(N―シクロプロピル・アクリルアミド)(45.5℃)、ポリ(N―エチルメタクリルアミド)(50.0℃)、ポリ(N―メチル―N―エチルアクリルアミド)(56.0℃)、ポリ(N―シクロプロピルメタクリルアミド)(59.0℃)およびポリ(N―エチルアクリルアミド)(72.0℃)などのホモポリマー類が挙げられる。ヒドロキシプロピルセルロース(41℃)、メチルセルロース(55℃)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(66℃)およびエチルヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースエーテル誘導体、並びに、F―127(10℃〜15℃)、L―122(19℃)、L―92(26℃)、L―81(20℃)およびL―61(24℃)などのプルロニックを利用することもできる。さらに、温度感受性素材は、前記のモノマー同士(間)で共重合体を調製するか、または、アクリルモノマー類(例えば、アクリル酸、および、メチルアクリル酸などのその誘導体、アクリレート、および、メタクリル酸ブチルなどのその誘導体、アクリルアミド、並びに、N―n―ブチルアクリルアミド)などの他の水溶性高分子と、このようなホモポリマー類を結合することによって、作成することができる。
【0043】
また、本発明に基づいて使用されるコーティングは、様々なペーストまたはゲルの形状で調製することができる。例えば、本発明の一実施形態では、一方の温度(例えば、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃または約60℃などの、約37℃より高い温度)で液体で、もう一方の温度(例えば、約37°Cより低い周囲の体温または何らかの温度)で固体または半固体は他の温度で(環境体の温度、または約37°より低い温度)であるコーティングが、提供される。当業者によって理解されるように、このようなペーストまたはゲルは、様々な技術を利用して作成することができる。他のペーストまたはゲルを液体として塗布することができ、この液体は、ペーストの水溶性成分の溶解、および、封入された薬剤の水を含んだ体環境内での沈澱により、生体内で凝固することができる。
【0044】
コーティングは、任意の適切な厚さで、形作ることができる。例えば、コーティングは、厚さ約2mm未満、厚さ約1mm未満、厚さ約0.75mm未満、厚さ約0.5mm未満、厚さ約0.25mm未満、厚さ約0.10mm未満、厚さ約50μm未満、厚さ約25μm未満または厚さ約10μm未満とすることができる。一般に、このようなコーティングは、優れた引張強度(例えば、約50N/cm2以上、約100N/cm2以上、または、約150N/cm2若しくは200N/cm2以上)によって可撓性があり、優れた密着性を有し(つまり、湿った表面か、濡れた表面に密着し)、そして、制御された透過性を有する。
【0045】
当業者によって理解されるように、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、コーティング基質に包蔵によって繋がるかづ、コーティングまたは医療装置自体に共有結合によって結合されるか、または、コーティングの中でマイクロカプセルに封入することができるが、これらに限定されない。いくらかの実施形態では、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、例えば、限定されるものではないが、(ナノメートルからマイクロメートルにわたる大きさの)ミクロスフェア、ペースト、さまざまな太さの糸、フィルムまたは噴霧といった、カプセルに封入されない製剤形態で提供することができる。
【0046】
本発明に基づいて使用されるコーティングは、約数分、数時間、数日、数カ月または数年にわたって、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを送給するように、調製することができる。例えば、「速放性」または「破裂性」コーティングは、約7日から約10日にわたって、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの約10%以上、約20%以上または約25%(w/v)以上を放出することができる。「徐放性」コーティングは、約7日から約10日にわたって、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの約1%(w/v)未満を放出することができる。「中間放出性」コーティングは、速放性および徐放性の間の、放出特性を有することができる。
【0047】
一実施形態においては、本発明に基づいて使用されるコーティングは、包装、貯蔵および配置処置の間、コーティングを保護するために、物的障壁で被覆することができる。物的障壁は、ステントグラフトが配置されると、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの、コーティングからの放出特性に作用するように、利用することもできる。このような障壁としては、ゼラチン、ポリ(乳酸―コ―グリコール酸)/メトキシポリエチレングリコールフィルム、ポリ乳酸またはポリエチレングリコールなどの不活性生分解性素材が挙げられるが、これに限定されない。ポリ(乳酸―コ―グリコール酸)/メトキシポリエチレングリコールの場合、ポリ(乳酸―コ―グリコール酸)/メトキシポリエチレングリコールが血液にさらされると、メトキシポリエチレングリコールはポリ(乳酸―コ―グリコール酸)から溶解し、そして、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを含む下にあるコーティングへ、ポリ(乳酸―コ―グリコール酸)を通る溝を残す。
【0048】
また、コーティングおよびコーティングの少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの保護は、コーティングおよび少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βへの、立体障害を通過した接近を防ぐ不活性分子で、コーティング表面を覆うことによって、獲得することができる。コーティングは、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの不活性型よって覆うこともでき、この不活性型を後に活性化させることができる。例えば、一実施形態においては、コーティングは酵素で被覆することができ、この酵素は、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを放出させるか、または、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを活性化させる。活性化は、ステントグラフトが配置された後、動脈瘤嚢に別の素材を注入することによって、獲得することもできる。
【0049】
コーティング上の適切な物的障壁の別の例としては、抗凝固物質(例えば、ヘパリン)が挙げられる。この抗凝固物質は、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを含んでいるコーティンの上部に塗布することができる。抗凝固物質の存在により、凝固を遅らせることができる。抗凝固物質が溶解すると、抗凝固活性は停止し、そして、新たに露出した少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βのコーティングが、その意図された作用を開始することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、保護コーティングと、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βコーティングの交互層が、コーティングの徐放性を全体的に強化することができる。
【0051】
本発明によるコーティングは、医療装置製造の、当業者に公知な任意の技術によって、塗布することができる。例えば、コーティングは、本発明に基づいて使用されるステントグラフトに、「噴霧」として塗布することができ、この噴霧はコーティングとして凝固する。このような噴霧は、例えば、限定されるものではないが、約0.1μmから約3μm、約10μmから約30μm、または、約30μmから約100μmまでを含む、多様な大きさのミクロスフェアから調製することができる。付加的または代替的に、コーティングは、含浸、吹付け、ブラッシング、浸漬および/またはロール塗によって、塗布することができるが、これらに限定されるものではない。別の実施形態においては、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βに混合するポリマーを、ステントグラフトの布に組み込まれる繊維またはストランドを製作するために、利用することができる。コーティングは、塗布された後、乾燥することができる。乾燥用の技術としては、加熱強制空気、冷却強制空気、真空乾燥または静的蒸発が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
ステント、ステントグラフトおよびコーティングに関する追加的な情報としては、Altの米国特許第6,387,121号、Hossainyらの米国特許第6,451,373号およびTsengらの米国特許第6,364,903号を参照にし、それぞれの全体の内容を参照により本明細書に組み込む。
【0053】
また、ステントグラフト上のコーティングの代わりに、または、コーティングに加えて、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、ステントグラフトと結合した送給装置を用いて、ステントグラフト配置後、動脈瘤部位に投与することができる。この実施形態では、ステントグラフトが、動脈瘤部位を血流から分離し、そして、送給装置を取り付けることが可能な構造を提供する。このようにして、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを、周囲の健康な組織にではなく、動脈瘤部位に直接送給することができる。少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βがこの領域にほとんど限定されるように、その比較的密閉された環境に放出される。したがって、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの最大濃度が、治療部位に残り、体の他の部分に搬送されない。結果として、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βのかなりの量が、より長期にわたり治療部位に残り、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの潜在能力の有効性を増加させる。
【0054】
送給装置は、本明細書において説明されるように、ステントグラフトに取り付けられるかまたはステントグラフト層から作られた、パウチを含むことができるが、これに限定されない。この場合、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―β(そして、利用時に結合された担体)は、パウチ内部に配置される。
【0055】
図2は、パウチ50の形の、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―β送給装置を示す。この例示的な実施形態では、パウチ50は、ステントグラフト22の外表面上のリング48に接合される。送給装置50は、動脈瘤部位(図示された例では、大動脈10の動脈瘤嚢18)への配置時に、送給装置50がステントグラフト22と大動脈10の動脈瘤壁16の間に設置されるように、位置を定められる。
【0056】
図3aは、パウチ50を示す。パウチ50は、ステントグラフトの外壁を巻装し、一実施形態においては、パウチ50の端部58で、取り付けることができる。パウチ50は、例えば、嚢素材のシートを半分に折り重ね、そして、例えば、開口部を残すように、糸綴じ、レーザ溶接、接着剤または同種のもので、端部56を形成する折り目で生じた折りじわから、突き出た対向側を互いにくっつけることによって、調製することができる。それから、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βが、パウチ50の内部に(担体と共に、または、担体なしで)装填される。それから、開口部58を、密閉することができる。図3bは、ステントグラフト22のリング48に取り付けられた、パウチ50の水平断面図を示す。
【0057】
代替として、複数のパウチを、各パウチをステントグラフトに取り付けて、利用することができる。一実施形態においては、ステントグラフトの円周のまわりに広がる隣接したパウチの間隔が、比較的等しくなるように、パウチを配列する。一実施形態においては、少なくとも4つの、このような送給装置が、ステントグラフトの円周のまわりに等間隔で設置される。代替として、複数の送給装置を、ステントグラフトの円周のまわりに、かつ、ステントグラフトに沿って縦方向に、設置することができる。別の実施形態においては、適切に配置されたパウチを、2枚の布の層を含むステントグラフトを採用することによって、作製することができる。布の層は、パウチの、任意の所望の数または構成を作製するために、さまざまな場所で、互いに密着させることができる。
【0058】
説明された送給装置と併用した場合の、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの担体としては、シート、スラブ、ゲル、カプセル、微小粒子、ナノ粒子および/またはこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。例えば、担体は、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを担持するポリマーのシートを含むことができる。このようなシートは、適切な溶媒に、ポリマーと少なくと1つのフィブリン由来ペプチドB―βを、共に、溶解または分散させ、この溶液を適切な型に注入し、そして、蒸発して溶媒を除去することによって、形成することができる。それから、形成されたシートは、送給装置を適合させるために切断することができる。
【0059】
代替として、ゲルを、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの担体として、利用することができる。このようなゲルは、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βが溶解または分散した、有機溶媒にポリマーを溶解することによって、調製することができる。このゲルは、送給装置に配置することができ、ステントグラフトが挿入された場合に、動脈瘤嚢に少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを放出し、動脈瘤嚢で、其の送給装置は、動脈瘤嚢に隣接してゲルを維持するのに都合のよいメカニズムを提供する。
【0060】
前記のコーティングと同様に、送給装置および/または担体は、生分解性または非生分解性で、前記の素材のいずれかによって、作り上げることができる。したがって、同じ所望の剥離性および性質を、phまたは温度感受性、速いか、中間であるか、または遅い放出特性、物的障壁、などに関する前記のものを含んで、獲得することができる。
【0061】
また、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、ステントグラフト配置の時間か、または、配置の時間前後に、搬送および/または注入カテーテルを利用して、動脈瘤部位に送給することができる。一実施形態においては、ステントグラフトは、図4に示されるような搬送カテーテルに、予め装填される。ステントグラフト100は、搬送カテーテル200の遠位端部のステントグラフト室218を満たすために、半径方向に圧縮される。ステントグラフト100は、格納式外被220に覆われる。この図示された実施形態においては、搬送カテーテル200は、配置前にステントグラフトの外壁上へ少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを塗布するための、第1注入口208および第2注入口210を有する。それから、ステントグラフト100は、図1に示されるように、治療部位に配置される。
【0062】
搬送カテーテル200内でステントグラフト100の外壁をコーティングするための別の実施形態は、図5に示される。格納式外被220は、配置前にステントグラフト室218内に圧縮されたステントグラフト100の外壁に、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを塗布することができる複数の穴250を含む。それから、ステントグラフト100は、図1に示されるように、治療部位に配置される。
【0063】
別の実施形態においては、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、ステントグラフト配置の間か、または、配置後に、ステントグラフトと血管壁の間に注入される。図6aに示されるように、ステントグラフト100は、ステント搬送カテーテル300のステントグラフト室218を満たすために、半径方向に圧縮され、それから、左の腸骨動脈114を経て治療部位に配置される。また、マルチルーメン注入カテーテル302も、右の腸骨動脈116を通って治療部位に配置される。ガイドワイヤ用管腔が必要とされる場合、マルチルーメン注入カテーテル302は、2つの注入管腔を有する同軸カテーテル、若しくは、デュアルルーメンカテーテル、または、代替としてトリプルルーメンカテーテルとすることができる。注入カテーテル302は、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを治療部位に送給することができる第1注入口304および第2注入口306を有する。この配置図解(図6a)の第1段階においては、ステント搬送カテーテル300および注入カテーテル302が、治療部位に独立して配置される。
【0064】
図6bは、配置されたステントグラフト100を示す。この図示された実施形態においては、搬送カテーテル300は除去され、腸骨肢108が配置されている。ステントグラフト100の腸骨肢セグメント108は、近位端部122で動脈瘤嚢を密閉する。注入カテーテル302も、第1注入口304および第2注入口306が動脈瘤嚢104内にあるように、引き込まれている。それから、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―β308を、動脈瘤嚢104内で、血管管腔壁とステントグラフトの間に注入することができる(図6c)。それから、注入カテーテル302は、回収される。
【0065】
別の実施形態においては、単一ルーメン注入カテーテルを、マルチルーメンカテーテルの代わりに、利用することができる。ガイドワイヤが管腔から取り出された後、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを、シングルルーメン注入カテーテルの同じ管腔を通って、治療部位に送給することができる。代替の実施形態においては、1または2以上の単一ルーメン注入カテーテルを、カテーテルの遠位端部を動脈瘤嚢で出会って、各腸骨動脈に配置することができる。
【0066】
他の代替の実施形態においては、1または2以上の注入カテーテルを、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを動脈瘤嚢に送給するために、利用することができる(図7a)。図1および図6で前記したように、ステントグラフト100は、左の腸骨動脈114を経て、治療部位に配置される(図7a)。複数の単一ルーメンまたはマルチルーメン注入カテーテル302および500も、右の腸骨動脈116および左の腸骨動脈114を通って、動脈瘤嚢104に配置される(図10a)。注入カテーテル302および500は、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを預けることができる注入口を有する。搬送カテーテル300は、図7bのように、両ステントグラフト肢が配置されて、除去されるが、注入カテーテル302および500は、動脈瘤嚢104内に注入口304および306および504および506を有して、適所に残される。ステントグラフト100の腸骨肢セグメント108は、近位端部122で動脈瘤嚢を密閉する。それから、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―β308が、動脈瘤嚢104に投与されて(図7c)、そして、注入カテーテル302および500を取り出すことが可能となる。
【0067】
さらに別の実施形態においては、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを、ステントグラフト100の壁を通って成分を注入することによって、動脈瘤嚢104に送給することができる(図8)。注入カテーテル900は、すでに配置されたステントグラフト100の部位へと前進し、そして、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―β308を動脈瘤嚢104に送給するために、針902がステントグラフト100を貫通する。注入カテーテル900は、マルチルーメンまたは単一ルーメンカテーテルとすることができる。
【0068】
別の実施形態においては、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを、経腰大動脈注入によって、動脈瘤嚢104に送給する(図9)。限定されないが注射器のような、注入装置920が、エックス線誘導または超音波検査誘導の下、ステントグラフト100および腸骨脚部108がすでに配置された動脈瘤嚢に向けられる。注入装置920が、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―β308を、動脈瘤嚢104へ送給する。注入装置920は、単一の管腔または複数の管腔を有することができる。
【0069】
さらに別の実施形態においては、動脈瘤の位置およびステントグラフトの配置に応じて、側副動脈を、動脈瘤嚢に接近するために、利用することができる(図10)。例えば、これに限定するものではないが、腎動脈の近くだが、腎動脈の下にある腹大動脈154に遠位端部102があるように、ステントグラフト100を配置することができる。ステントグラフト100の配置後、配置カテーテルは除去され、そして、注入カテーテル302が、上の腸間膜動脈150へ動脈瘤嚢104を過えて大動脈を上昇させられる。それから、注入カテーテル302は、上の腸間膜動脈150を通って前進し、腸間膜動脈が動脈瘤嚢104内の大動脈で始まる下腸間膜動脈へと下降する。それから、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―β308を、第1注入口304および第2注入口306を通して、動脈瘤嚢104に注入することができる。
【0070】
本発明によれば、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの部位特異的送達に加えて、1または2以上の追加的な生理活性剤を、局所的に投与することもできる。組み込む生理活性剤の選択、または、組み込む量は、一実施形態においては、ステントグラフトをコーティングするために選択されたポリマーと深い関係があり得る。当業者は、疎水剤が疎水性ポリマーを好み、親水剤が親水性ポリマーを好む事を理解する。したがって、コーティングは、剤、または、速放性、中間の放出性若しくは徐放性との剤の組み合わせのために、設計することができる。
【0071】
特定の生理活性剤の非限定的な例、または、本発明の文脈の中で特に有益な可能性がある生理活性剤の種類としては、化合物を結合しているFKBP―12結合化合物を含んだマクロライド抗生物質、エストロゲン、シャペロン阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、蛋白チロシンキナーゼ阻害剤、レプトマイシンB、ペルオキシゾーム増殖因子活性化受容体γリガンド(PPAR)、ハイポセマイシン、一酸化窒素、ビスホスホネート、上皮成長因子阻害剤、抗体、プロテアソーム阻害剤、抗生剤、消炎剤、アンチセンスヌクレオチド、マトリックス金属蛋白分解酵素阻害剤、および、形質転換核酸類、を含む抗増殖性剤が挙げられるが、これらに限定されない。また、生理活性剤としては、抗増殖性化合物、細胞増殖抑制性化合物、中毒性化合物、抗炎症性化合物、化学療法剤、鎮痛剤、抗生剤、プロテアーゼ阻害剤、スタチン、核酸、ポリペプチド、組換え微生物を含んでいる成長因子および送達ベクター、リポソームなどを挙げることができる。例示的なFKBP―12結合剤としては、シロリムス(ラパマイシン)、タクロリムス(FK506)、エベロリムス(サーティカンまたはRAD―001)、テムシロリムス(CCI―779、または、米国特許出願番号第10/930,487号で開示したような3―ヒドロキシ―2―(ヒドロキシメチル)―2―メチルプロピオン酸を有するアモルファスラパマイシン42―エステル)およびzotarolimus(ABT―578、米国特許第6,015,815号および第6,329,386号を参照)が挙げられる。加えて、米国特許第5,362,718号で開示したような、他のラパマイシンヒドロキシエステルが、利用される可能性がある。
【0072】
特記しない限り、明細書および請求の範囲で使われる、成分の量、分子量および反応条件等の性質を表しているすべての数は、すべての例において、用語「約」によって修飾されると理解すべきである。したがって、特に明記しない限り、明細書および添付の請求の範囲に記載される数のパラメーターは近似値であり、本発明によって得られると考えられる所望の性質に応じて変化する可能性がある。最低でも、均等論の適用を請求の範囲に限定する試みではなく、それぞれの数のパラメーターは、多くの報告された有意な数字を考慮して、そして、通常の丸め技法を適用することによって、少なくとも解釈されなければならない。本発明の幅広い範囲を記載している数値域およびパラメーターは近似値であるが、特定の例において記載する数値は、できる限り正確に報告される。しかしながら、任意の数値は、本質的にいくらかの誤差を含み、それぞれの試験している測定において見られる、標準偏差から必然的に生じる。
【0073】
用語「a(一)」、「an(一)」および「the(当)」、並びに、本発明を説明する文脈において(特に以下の請求の範囲の文脈において)使用される同様の指示語の対象は、本明細書において特記しない限り、または、明らかに文脈によって否定されない限り、単数および複数の両方を包含するものとして解釈すべきである。本明細書においての値の範囲の説明は、範囲の中に含まれている値を各々分離するために、単に個々に言及する簡便な方法として役立つことを目的とするだけである。本明細書において特記しない限り、各々の単一値は、あたかもそれが本明細書において個々に詳述されるかのように、明細書に組み込まれる。本明細書において説明されるすべての方法は、本明細書において特記しない限り、または、文脈によって明らかに否定されない限り、任意の適切な順序で実行することができる。すべての例、または、本明細書において提供される例示的な言語(例えば、「など」)の利用は、単によりよく本発明を説明することを目的とするだけで、別途請求される本発明の範囲に対する制限をもたらすものではない。明細書の言語は、本発明の実施に不可欠な任意の請求されない要素を示すものとして解釈してはならない。
【0074】
代替的要素または本明細書において開示される本発明の実施形態の、グループは、制限するように解釈するべきではない。各グループのメンバーは、個々に、または、グループの他のメンバーまたは本明細書において見られる他の要素との任意の組み合わせで、言及され、主張することができる。グループの1または2以上のメンバーが、便利さおよび/または特許性の理由で、グループに含まれるかまたはグループから削除される可能性があることが予想される。任意のこのような包含または削除が生じる場合、明細書は、修正されるグループを含み、その結果、添付の請求の範囲において使用されるすべてのマーカッシュグループの記載を満たすとみなされる。
【0075】
本発明のいくらかの実施形態が、本明細書において説明され、これには、本発明を実行するために、発明者に知られている最良の形態が含まれる。もちろん、これらの説明された実施形態の変形形態は、前記の説明を読むと、即座に、当業者に明らかとなる。発明者は、当業者が適切にこのような変形形態を用いるのを予想し、また、本明細書において詳しく説明されたものとは、別の方法で本発明が実施されることを意図する。したがって、本発明は、準拠法によって許されるように、本明細書に添付される請求の範囲において詳述される内容すべての修正形態および等価物を含む。さらに、すべての可能な変形形態における前記の要素の任意の組み合わせは、本明細書において特記しない限り、または、文脈によって明らかに否定されない限り、本発明に包含される。
【0076】
更に、本明細書の全体にわたって特許および印刷した刊行物への参照がなされている。前記の参考文献および印刷した刊行物のそれぞれは、その全体が参照によって、本明細書に個々に組み込まれる。
【0077】
最後に、本明細書で開示される本発明の実施形態が、本発明の原理を例示すると理解すべきである。使用することができる他の修正形態は、本発明の範囲内である。したがって、例えば、限定されないが、本発明の代替的な構成は、本明細書の教示に従って利用することができる。したがって、本発明は、正確に図と共に記載されたものに、限定されない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの局所投与による動脈瘤治療に関する。少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、ステントグラフト上へ少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを直接配置すること、ステントグラフトに見られるコーティングに少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを組み込むこと、ステントグラフトと結合した送給装置に少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを含むこと、および/または、ステントグラフト配置のとき又はその前後に、搬送および/または注入カテーテルにより少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを注入することによって、局所的に投与することができる。
【背景技術】
【0002】
動脈瘤は、動脈壁の薄化、脆弱化した部位が膨らんだときに発生し、動脈が正常な直径の150%以上まで拡張したときに一般に治療される。動脈瘤のうち最も一般的および致命的なものは、大血管が心臓から下腹部へと伸びる、大動脈において発生する。正常な大動脈は、幅が1.6センチメートルと2.8センチメートルの間にあり、領域が5.5センチメートルと同程度の幅に達する場合には、手術が推奨されるほど、破裂の危険性が増加する。動脈瘤は、症状がないため、多くの場合、患者が病院に到着する前に破裂する。
【0003】
動脈瘤は、米国で、毎年約32,000件の死をもたらしていると推定される。その上、米国だけで約450,000件とされる、原因不明の突然死が、多くの場合、心臓発作または脳卒中と簡単に誤診されるが、それらの多くが動脈瘤に起因する可能性があるため、動脈瘤による死は過少報告されていると疑われる。動脈瘤は、ほとんどの場合、体で最も大きな動脈である、大動脈で発生する。約15,000件/年にあたる、大部分の大動脈瘤が腹大動脈に関係し、約2,500件が胸郭で発生する。脳動脈瘤は脳で発生し、検出および治療がより困難であるためより複雑な症例を示し、米国で1年に約14,000件の死をもたらす。大動脈瘤は、標準的な超音波、コンピュータ断層撮影(CT)および磁気共鳴映像法(MRI)走査によって検出され、そして、これらの走査技術の他の疾病での増加した利用は、無傷の大動脈瘤の診断の、およそ200%の増加をもたらした。約200,000件の無傷の大動脈瘤が、この増加した判別検査のみから、毎年診断されている。
【0004】
米国の外科医は、通常、外科的な切開処置で血管の異常部位をポリマーグラフトに置き換えることによって、約50,000件の腹部大動脈瘤を毎年治療する。もっと最近になって使われているより低侵襲的な処置は、動脈瘤部位へのステントグラフトの配置である。ステントグラフトは、血管の部位を置換せずに支持するように動脈瘤部位を架橋する、管状装置である。ステントグラフトは、動脈瘤部位で血管内に配置された場合に、血流と脆弱化した血管壁間の障壁として作用し、これにより、血管の損害を受けた部分への圧力を減少させる。複数の医学的共存症が従来の動脈瘤治療の危険性を非常に高くする患者は、ステント移植の候補となる可能性がある。
【0005】
ステント移植は有効であるが、動脈瘤部位が回避されても、動脈瘤は残される。動脈瘤の組織は、血管壁の継続する薄化のために、動脈瘤の大きさが増加し続けるように変性し続ける可能性がある。したがって、従来技術においては、ステントグラフト配置後に、動脈瘤自体を治療する必要、および/または、継続する動脈瘤の成長を遅らせるかまたは止める必要がある。本発明は、そのような進歩に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ステントグラフト配置後に動脈瘤を治療するために用いることができる方法およびステントグラフトを提供する。
【0007】
一実施形態においては、本発明は、動脈瘤を治療する方法である。この方法は、以下の工程を含む。ステントグラフトを動脈瘤部位に搬送すること、動脈瘤に橋を架けるようにステントグラフトを配置すること、および、動脈瘤部位に少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを局所的に投与すること。
【0008】
別の実施形態においては、局所投与の方法が説明される。この方法は、以下の工程を含む。少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βをステントグラフトの外表面に塗布すること、および/または、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βをステントグラフト上のコーティングに組み込むこと。
【0009】
別の実施形態においては、局所投与の方法が説明される。この方法は、以下の工程を含む。少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βをコーティングに組み込んで、ステントグラフトの外表面上にコーティングを配置すること。
【0010】
別の実施形態においては、局所投与の方法が説明される。この方法は、以下の工程を含む。送給装置をステントグラフトに取り付けること。この送給装置は、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを保持および放出する。この方法の別の実施形態においては、送給装置はパウチである。
【0011】
別の実施形態においては、局所投与の方法が説明される。この方法は、以下の工程を含む。2つの層をステントグラフトに提供すること。配置後、第1層が血流にさらされ、第2層が血管壁に面する。また、第2層は半透性であり、パウチが形成されるように、部分的に層を互いに密着すること、および、パウチに少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを装填すること。
【0012】
別の実施形態においては、局所投与の方法が説明される。この方法は、以下の工程を含む。少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βをパウチに装填する前に、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを担体と結合すること。
【0013】
別の実施形態においては、局所投与の方法が説明される。この方法は、以下の工程を含む。ステントグラフトがステント配置カテーテル内に圧縮されるときに、ステントグラフトの外表面に少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを直接塗布すること。
【0014】
別の実施形態においては、局所投与の方法が説明される。この方法は、以下の工程を含む。搬送カテーテルおよび/または注入カテーテルによって、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを投与すること。
【0015】
別の実施形態においては、局所投与の方法が説明される。この方法は、以下の工程を含む。少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βが、動脈瘤の嚢をしっかりと充填すること。
【0016】
別の実施形態においては、局所投与の方法が説明される。この方法は、以下の工程を含む。注入カテーテルが、単一ルーメン注入カテーテルおよびマルチルーメン注入カテーテルを含むグループから選択されること。
【0017】
別の実施形態においては、局所投与の方法が説明される。この方法は、以下の工程を含む。少なくとも2つの注入カテーテルによって、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを投与することで、第1および第2注入カテーテルは、異なる経路で動脈瘤に達する。
【0018】
本発明は、また、本発明に従って使用することができるステントグラフトを含む。一実施形態においては、本発明は、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを備えたステントグラフトを含み、この少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、ステントグラフトの外表面に塗布され、ステントグラフトに塗布されるコーティング、または、ステントグラフトと結合した送給装置内に組み込まれるもののうちの、1または2以上である。
【0019】
ステントグラフトの別の実施形態においては、ステントグラフトは、ステントグラフトに塗布されるコーティングに組み込まれる少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを備え、このコーティングは、生分解性である。
【0020】
ステントグラフトの別の実施形態においては、ステントグラフトは、ステントグラフトに塗布されるコーティングに組み込まれる少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを備え、このコーティングは、温度感受性および/またはpH感受性を有する。
【0021】
ステントグラフトの別の実施形態においては、ステントグラフトは、ステントグラフトに塗布されるコーティングに組み込まれる少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを備え、このコーティングは、速放性コーティング、中間放出性のコーティングまたは徐放性コーティングになるように、調製される。
【0022】
ステントグラフトの別の実施形態においては、ステントグラフトは、ステントグラフトと結合した送給装置内に、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを備え、そこで、この少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、更に、担体と結合をする。
【0023】
ステントグラフトの別の実施形態においては、担体は、シート、スラブ、ゲル、カプセル(単数)、カプセル(複数)、微小粒子、ナノ粒子およびこれらの組み合わせ、から成るグループから選択される。
【0024】
ステントグラフトの別の実施形態においては、送給装置は、ステントグラフトと結合したパウチである。ステントグラフトの別の実施形態においては、パウチは、2つの層を有するステントグラフトを提供することによって作製され、配置後、第1層は血流にさらされ、第2層は血管壁に面し、また、第2層は半透性であり、1または2以上のパウチが形成されるように、層は部分的に共に密着する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】腹部大動脈瘤において用いられるような、外側の金属の骨組みを有する、完全に配置されたステントグラフトを示す。
【図2】動脈瘤部位に配置されたステントグラフトと結合をした、送給装置を示す。
【図3a】パウチ(pouch)送給装置の側面図である。
【図3b】パウチ送給装置がステントグラフトの外表面を巻装した、ステントグラフトの断面図である。
【図4】搬送カテーテル内で、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βでステントグラフト外壁のコーティングができるように構成された、ステントグラフト搬送カテーテルを示す。
【図5】搬送カテーテル内で、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βでステントグラフト外壁のコーティングができるように構成された、代替的なステントグラフト搬送カテーテルを示す。
【図6a】治療部位での、注入カテーテルによる少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの送給を伴った、ステントグラフト配置を示す。
【図6b】治療部位での、注入カテーテルによる少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの送給を伴った、ステントグラフト配置を示す。
【図6c】治療部位での、注入カテーテルによる少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの送給を伴った、ステントグラフト配置を示す。
【図7a】治療部位での、複数の注入カテーテルによる少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの送給を伴った、ステントグラフト配置を示す。
【図7b】治療部位での、複数の注入カテーテルによる少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの送給を伴った、ステントグラフト配置を示す。
【図7c】治療部位での、複数の注入カテーテルによる少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの送給を伴った、ステントグラフト配置を示す。
【図8】ステントグラフト配置後、動脈瘤嚢内に直接、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを送給する別の手段を示す。
【図9】ステントグラフト配置後、動脈瘤嚢内に直接、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを送給する別の手段を示す。
【図10】ステントグラフト配置後、動脈瘤嚢内に直接、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを送給する、更に別の予備手段を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
動脈瘤は膨化、または血管の拡張で、血管壁欠陥と一般に関連している。動脈瘤を治療する過去の方法は、非常に侵襲性の高い外科的処置が関与し、冒された血管領域が除去され(または開放され)、合成グラフトで置き換えられて(または内部で補われて)それは所定の位置に縫合された。しかしながら、この処置は、非常に侵襲性が高く、すべての患者に適切というわけではなかった。歴史的に、この処置の候補ではない患者は、未治療のままで、動脈瘤破裂による急死の、継続した危険の状態のままであった。
【0027】
侵襲性の動脈瘤手術と関連をしたいくらかの危険性を解決するために、ステントグラフトは開発された。ステントグラフトは、侵襲性の処置を最小限に使用して、位置を定め、配置することができる。基本的に、カテーテルは、圧縮してカテーテルの遠位端に装入されたステントグラフトを有し、動脈瘤部位の橋架位置へ、動脈を通って前進をする。それから、ステントグラフトは、ストレスおよび破裂を促進する可能性のある、血流の通過およびその結果として生じる血流力から、動脈瘤を保護する、内部のライナを形成して、脆弱化した血管壁に並列をした血管腔内に配置される。ステントグラフトの大きさおよび形状は、治療部位の内腔内径および動脈瘤の長さに適合する。
【0028】
ステントグラフトは、一般に、ダクロン(商標)、伸展PTFE、または、様々な生体適合性ポリマー繊維から織られた布状の素材といった、生体適合性グラフト素材の内張りまたは外皮を有する金属の骨組みを備える。グラフト素材は、骨組みに、縫われるか、接着されるか、または、成形することができる。自己拡張ステントグラフトが搬送カテーテルから配置されるとき、骨組みは、管腔を満たすためにグラフト素材を拡張し、内腔壁に対して放射状の力を及ぼす。
【0029】
図1は、腹部大動脈瘤部位での、例示的なステントグラフト配置を示す。この種の配置では、ステントグラフト100は、左の腸骨動脈114を通って動脈瘤部位104に配置される。ステントグラフト100は、遠位端部102、および、右の腸骨動脈116にステントグラフトを固定するための腸骨脚部108を有する。ステントグラフト100が、最初に、第1配置カテーテルで配置され、そして、腸骨脚部108が、第2配置カテーテルで配置される。この2つのセグメントは、重複部分106で接合される。更に、配置後、ステントグラフト100は、少なくとも、部位110、120および122で血管壁と接触し、これらの部位での動脈瘤嚢への血液の漏れを防ぐ。
【0030】
図1に示されるようなステント移植は、動脈瘤破裂の可能性を減少することができるが、動脈瘤そのものを治療しない。すなわち、迂回され、保護されたとしても、動脈瘤および動脈瘤に関連した患部組織は残される。そのため、動脈瘤の組織は、血管壁の継続する薄化のために、動脈瘤の大きさが増加し続けるように変性し続ける可能性がある。したがって、ステント移植に加えて(または、ステント移植の代わりに)患部組織を治療する方法は、動脈瘤治療の有意な進歩を提供する。
【0031】
例えば血管壁に沿った、細胞結合組織の崩壊は、正常な生理的過程である。健康な血管においては、細胞結合組織の崩壊は、細胞結合組織の再合成と修復の、動的平衡の中に存在する。一般に、MMPは、MMPの合成および分泌の段階で、更に、他の再合成と修復過程の適切な平衡を維持するために、MMPの細胞外活性の段階で、厳しく調節される。しかしながら、MMPの過剰発現、または、MMP間の平衡異常は、過度の組織崩壊、および、その結果として生じる変性疾患過程の原因となる可能性がある。この変性疾患過程としては、細胞外基質または結合組織の過度の崩壊を特徴とする動脈瘤が挙げられるが、これに限定されるものではない。したがって、MMPの作用を阻害することは、動脈瘤部位の、欠陥のある血管壁を治療するために、有効なストラテジを提供することができる。
【0032】
理論に拘束されることを望むものではないが、一態様では、大動脈瘤は、1または2以上の炎症過程によって引き起こされた細胞外基質の撹乱を特徴とすることができる。炎症細胞は、腹大動脈などの、アテローム斑を含んでいる領域に移動する。そこで、炎症細胞は、MMPを分泌すると考えられる。その結果、細胞外基質の分解に導かれる。炎症は、血流から組織までの、循環白血球の移動を必要とする。白血球の移動は、白血球遊出の多段階過程によって調整される。血管内皮(VE)カドヘリンは、重要な役割を演じると考えられる。VEカドヘリンは、内皮間の結合分子である。VEカドヘリンは、白血球遊出を可能にするか、または、制限する門となる。フィブリンは、VEカドヘリンと結合し、炎症過程を誘導することができる。更に、フィブリンは、それ自身の断片化を調節することができる。これらの破片は、フィブリンのN末端断片に由来する。これらの断片は、E破片と呼ばれる。あるの破片は、VEカドヘリンを結合し、炎症および白血球遊出を誘導することができる。フィブリン由来ペプチドB―β(一実施形態では、フィブリン由来B―β15―42)は、この過程を阻害する可能性があり、その結果、腹部大動脈瘤などの、動脈瘤を治療または安定させる可能性がある。
【0033】
一般に、MMP阻害を用いるさまざまな疾患の治療は、全身用のMMP阻害剤を利用している。すなわち、MMP阻害剤は、標的部位に到達する阻害剤の量が効果をもたらすのに十分であったと保証できる十分な投薬量で、経口、筋注、または、静注のいずれかで、投与される。本発明の一態様は、ステント移植処置を利用して、動脈瘤部位に局所的に1または2以上のフィブリン由来ペプチドB―βを投与することである。少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの散布は、個人に対する総投薬量が減少できるように治療反応を実質的に局所化させ、そして、望ましくない副作用を最小にする。
【0034】
少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、本発明による3つの主要な方法で、動脈瘤部位に送給することができる。(1)少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、ステントグラフト上へ直接配置、または、ステントグラフトに見られるコーティングに組み込むことができ、(2)少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、ステントグラフトと結合された送給装置によって、いくつかの実施形態では、担体と結合して、提供することができ、および/または(3)少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、ステントグラフト配置の時間、又は、配置の時間前後に、搬送および/または注入カテーテルによって動脈瘤部位に投与することができる。
【0035】
少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、ステントグラフトの表面に塗布することができる。ステントグラフト配置後、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、ステントグラフト素材から離れて動脈瘤治療部位に放散する。この実施形態が利用される場合には、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、沈澱、コアセルベーション、または、結晶化を含むがこれに限定されない方法を利用して、ステントグラフトの表面に塗布することができる。また、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、共有結合、イオン結合、または、限定されるものではないが、水素結合およびファンデルワールス力を含む、他の分子内相互作用によって、ステントグラフトに結合することができる。
【0036】
少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、ステントグラフト上へ配置されるコーティングに組み込むこともできる。したがって、ステントグラフトコーティングは、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを保持および放出のできる、ステントグラフトの布上へ配置される素材である。
【0037】
本発明に基づいて利用されるステントグラフトコーティングは、生分解性と非生分解性のいずれでもよい。生分解性コーティングを作成するために利用することができる素材の、非限定的な代表例としては、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、フィブリノーゲン、ヒアルロン酸、デンプン、セルロースおよびセルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸セルロース琥珀酸エステル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート)、カゼイン、デキストラン、多糖類、ポリ(乳酸)、ポリ(D、L―ラクチド)、ポリ(D、L―ラクチド―コ―グリコリド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ヒドロキシ酪酸塩)、ポリ(アルキルカーボネート)、ポリエステル類、ポリ(オルトエステル)、(例えば、1,4―ブチレングリコール、アジピン酸および1,6―アミノヘキサン酸(BAK 1095)を主成分とした)ポリ(エステルアミド)類、ポリ(エステルカーボネート)類(例えば、チロシン―ポリ(アルキレンオキシド)―由来ポリ(エーテルカーボネート)類)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリ酸無水物類(例えば、ポリ(アジピン酸無水物)およびポリ(セバシン酸―コ―1,3―ビス(p―カルボキシフェノキシ)プロパン))、ポリホスファゼン、ポリ(アミノ酸)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸塩)、ポリ(ヒドロキシブチレート―コ―ヒドロキシ吉草酸塩)、ポリ(ブチレン琥珀酸エステル)(例えば、Bionolle(商標))、ポリ(ブチレンアジペート)、ポリアリーレート類(例えば、チロシン由来ポリアリーレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)―ポリ(エチレングリコール)共重合体(polyActive(商標))、ポリ(ε―カプロラクトン)―b―ポリ(エチレングリコール))ブロック共重合体、並びに、ポリ(エチレンオキシド)―b―ポリ(ヒドロキシブチレート)ブロック共重合体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
生分解性でないコーティングを作成するために利用することができる素材の、非限定的な代表例としては、ポリ(エチレン―酢酸ビニル)(「EVA」)共重合体、シリコーンゴム、アクリルポリマー類(例えば、ポリアクリル酸、ポリメチルアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリアルキルシアノアクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン6,6)、ポリウレタン、ポリ(エステルウレタン)、ポリ(エーテルウレタン)、ポリ(エステル―ウレア)、(例えば、ポリ(オキシエチレン)およびポリ(オキシプロピレン)ユニット(Pluronic(商標))を主成分とした)ポリエーテル類、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、他のプルロニック、ポリ(1,4―ブチレングリコール))、並びに、ビニルポリマー類、(例えばポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアセテートフタレート)およびポリ(塩化ビニル))が挙げられる。
【0039】
コーティングを作成するために用いることができる他の役立つ素材としては、ポリ(D,L―乳酸)、ポリ(L―乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(バレロラクトン)、ポリエチレングリコール(例えば、MePEG)とポリ(カプロラクトン)またはポリ(乳酸)の共重合体、カルボン酸ポリマー、ポリアセテート、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリシラン、ポリウレア、ポリオキシド、ポリスチレン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリスルホニド、ハロゲン化ポリビニル、ピロリドン、架橋性のアクリルおよびメタクリル酸ポリマー、ビニルアセテートポリマー、ビニルアセタールポリマー、エポキシ、メラミン、フェノールポリマー、水不溶性のセルロースエステルポリマー(例えば、セルロースアセトプロピオネート、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、硝酸セルロース、および、それらの混合物)、ポリエチレンオキシド、ポリヒドロキシアクリレート、ポリ(エチレンテレフタレート)、キサンタン、ヒドロキシプロピルセルロース、ビニルラクタム、ビニルブチロラクタム、ビニルカプロラクタム、極性ペンダント基を有する他のビニル化合物、親水性のエステル化基を有するアクリレートおよびメタクリレート、ヒドロキシアクリレート、セルロースエステルおよびエーテル、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリレート、天然および合成エラストマ、ゴム、アセタール、ナイロン、スチレンポリブタジエン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル酢酸ビニル、ペクチン、蔗糖酢酸イソ酪酸エステル、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、珪酸塩(例えば、Bioglass(商標)、モンモリロナイトおよび雲母)、アルギン酸塩、ポリ(アクリル酸)、ポリ―L―リジン、ポリエチレンイミン、ポリ(アリルアミン)、フッ化ポリオレフィン(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(商標))、ポリ(N―イソプロピルアクリルアミド)、ポリアセタール、芳香族ポリエステル、ポリ(プロピレンテレフタレート)(Sorona(商標))、ポリ(エーテルエーテルケトン)類、並びに、ポリ(エステルイミド)類などの、ポリマー類が挙げられる。一般に、Williamsの米国特許第6,514,515号、Parkらの米国特許第6,506,410号、Mathiowitzらの米国特許第6,531,154号、Chudzikらの米国特許第6,344,035号、Zdrahalaらの米国特許第6,376,742号、Griffith、L.A.のAnn,N.Y.of Sciences(2002)961:83―95、および、ChaikofらのAnn,N.Y.of Sciences(2002)961:96―105を参照にし、それぞれの全体の内容を参照により本明細書に組み込む。加えて、本明細書において説明されるすべての素材は、適切さ、有益さまたは必要に応じて、さまざまな組成で混合または共重合することができる。このような混同または共重合は、従来技術において、当業者のレベルの範囲内である。
【0040】
特定のコーティングに利用される選択された素材は、当業者に公知のさまざまな化学会社から得ることができる。しかしながら、ポリマー類がコーティング材として選択された場合、このような市販のポリマー類内の、未反応モノマー、低分子量オリゴマー、触媒または他の夾雑物の潜在的な存在のために、選択されたポリマーの純度を増加させることが(または、利用される、必要な素材に応じて)望ましい場合がある。このような純化工程は、より周知で、より純粋な組成のポリマー類を産生して、その結果、コーティングの機械的な特徴の予測可能性および性能を向上させる。厳格な純化工程は、選択されるポリマーまたはポリマー類によって決定される。しかしながら、一般に、純化工程で、ポリマーは、適切な溶媒に溶解される。適切な溶媒としては、塩化メチレン、酢酸エチル、クロロホルム、エタノールおよびテトラヒドロフラン(THF)が挙げられる(がこれらに限定されない)。それから、ポリマー溶液は、ポリマー(しかし、多量の夾雑物または未反応モノマーがない)が溶液から沈殿するように、通常、溶媒と相溶性があるが、ポリマーは溶けにくい第2素材と混合される。例えば、ポリマーの塩化メチレン溶液は、ヘプタンと混合することができ、ポリマーを溶液の中に降下させる。それから、溶剤混合物は、従来技術を用いて、共重合体沈殿物から除去される。
【0041】
本発明に基づいて利用されるコーティングは、所望の剥離性および/または他の特定の所望の性質を有する様々な形状で、形作ることができる。例えば、コーティングは、増加または減少したpHなどの、特定のトリガリングイベントに晒されると、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを放出するように、作りだすことができる。pH感受性コーティング材の非限定的な代表例としては、ポリ(アクリル酸)およびその誘導体(例えば、ポリ(アミノカルボン酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルアクリル酸)などのホモポリマー類)、このようなホモポリマーの共重合体、並びに、ポリ(アクリル酸)および他のアクリルモノマーの共重合体が、挙げられる。他のpH感受性ポリマーとしては、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、セルロースアセテートトリメリレート、および、キトサンなどの多糖類が挙げられる。更に、他のpH感受性ポリマーとしては、pH感受性ポリマーと水溶性高分子の任意の混合物が挙げられる。
【0042】
活性薬剤の放出がポリマーの温度に依存している、温度感受性ポリマーのコーティングを用いることもできる。温度感受性素材およびそれらのジェラチン温度の非限定的な代表例としては、ポリ(N―メチル―N―n―プロピルアクリルアミド)(19.8℃)、ポリ(N―n―プロピルアクリルアミド)(21.5℃)、ポリ(N―メチル―N―イソプロピルアクリルアミド)(22.3℃)、ポリ(N―n―プロピルメタクリルアミド(28.0℃)、ポリ(N―イソプロピルアクリルアミド)(30.9℃)、ポリ(N,n―ジエチルアクリルアミド)(32.0℃)、ポリ(N―イソプロピルメタクリルアミド)(44.0℃)、ポリ(N―シクロプロピル・アクリルアミド)(45.5℃)、ポリ(N―エチルメタクリルアミド)(50.0℃)、ポリ(N―メチル―N―エチルアクリルアミド)(56.0℃)、ポリ(N―シクロプロピルメタクリルアミド)(59.0℃)およびポリ(N―エチルアクリルアミド)(72.0℃)などのホモポリマー類が挙げられる。ヒドロキシプロピルセルロース(41℃)、メチルセルロース(55℃)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(66℃)およびエチルヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースエーテル誘導体、並びに、F―127(10℃〜15℃)、L―122(19℃)、L―92(26℃)、L―81(20℃)およびL―61(24℃)などのプルロニックを利用することもできる。さらに、温度感受性素材は、前記のモノマー同士(間)で共重合体を調製するか、または、アクリルモノマー類(例えば、アクリル酸、および、メチルアクリル酸などのその誘導体、アクリレート、および、メタクリル酸ブチルなどのその誘導体、アクリルアミド、並びに、N―n―ブチルアクリルアミド)などの他の水溶性高分子と、このようなホモポリマー類を結合することによって、作成することができる。
【0043】
また、本発明に基づいて使用されるコーティングは、様々なペーストまたはゲルの形状で調製することができる。例えば、本発明の一実施形態では、一方の温度(例えば、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃または約60℃などの、約37℃より高い温度)で液体で、もう一方の温度(例えば、約37°Cより低い周囲の体温または何らかの温度)で固体または半固体は他の温度で(環境体の温度、または約37°より低い温度)であるコーティングが、提供される。当業者によって理解されるように、このようなペーストまたはゲルは、様々な技術を利用して作成することができる。他のペーストまたはゲルを液体として塗布することができ、この液体は、ペーストの水溶性成分の溶解、および、封入された薬剤の水を含んだ体環境内での沈澱により、生体内で凝固することができる。
【0044】
コーティングは、任意の適切な厚さで、形作ることができる。例えば、コーティングは、厚さ約2mm未満、厚さ約1mm未満、厚さ約0.75mm未満、厚さ約0.5mm未満、厚さ約0.25mm未満、厚さ約0.10mm未満、厚さ約50μm未満、厚さ約25μm未満または厚さ約10μm未満とすることができる。一般に、このようなコーティングは、優れた引張強度(例えば、約50N/cm2以上、約100N/cm2以上、または、約150N/cm2若しくは200N/cm2以上)によって可撓性があり、優れた密着性を有し(つまり、湿った表面か、濡れた表面に密着し)、そして、制御された透過性を有する。
【0045】
当業者によって理解されるように、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、コーティング基質に包蔵によって繋がるかづ、コーティングまたは医療装置自体に共有結合によって結合されるか、または、コーティングの中でマイクロカプセルに封入することができるが、これらに限定されない。いくらかの実施形態では、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、例えば、限定されるものではないが、(ナノメートルからマイクロメートルにわたる大きさの)ミクロスフェア、ペースト、さまざまな太さの糸、フィルムまたは噴霧といった、カプセルに封入されない製剤形態で提供することができる。
【0046】
本発明に基づいて使用されるコーティングは、約数分、数時間、数日、数カ月または数年にわたって、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを送給するように、調製することができる。例えば、「速放性」または「破裂性」コーティングは、約7日から約10日にわたって、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの約10%以上、約20%以上または約25%(w/v)以上を放出することができる。「徐放性」コーティングは、約7日から約10日にわたって、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの約1%(w/v)未満を放出することができる。「中間放出性」コーティングは、速放性および徐放性の間の、放出特性を有することができる。
【0047】
一実施形態においては、本発明に基づいて使用されるコーティングは、包装、貯蔵および配置処置の間、コーティングを保護するために、物的障壁で被覆することができる。物的障壁は、ステントグラフトが配置されると、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの、コーティングからの放出特性に作用するように、利用することもできる。このような障壁としては、ゼラチン、ポリ(乳酸―コ―グリコール酸)/メトキシポリエチレングリコールフィルム、ポリ乳酸またはポリエチレングリコールなどの不活性生分解性素材が挙げられるが、これに限定されない。ポリ(乳酸―コ―グリコール酸)/メトキシポリエチレングリコールの場合、ポリ(乳酸―コ―グリコール酸)/メトキシポリエチレングリコールが血液にさらされると、メトキシポリエチレングリコールはポリ(乳酸―コ―グリコール酸)から溶解し、そして、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを含む下にあるコーティングへ、ポリ(乳酸―コ―グリコール酸)を通る溝を残す。
【0048】
また、コーティングおよびコーティングの少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの保護は、コーティングおよび少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βへの、立体障害を通過した接近を防ぐ不活性分子で、コーティング表面を覆うことによって、獲得することができる。コーティングは、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの不活性型よって覆うこともでき、この不活性型を後に活性化させることができる。例えば、一実施形態においては、コーティングは酵素で被覆することができ、この酵素は、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを放出させるか、または、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを活性化させる。活性化は、ステントグラフトが配置された後、動脈瘤嚢に別の素材を注入することによって、獲得することもできる。
【0049】
コーティング上の適切な物的障壁の別の例としては、抗凝固物質(例えば、ヘパリン)が挙げられる。この抗凝固物質は、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを含んでいるコーティンの上部に塗布することができる。抗凝固物質の存在により、凝固を遅らせることができる。抗凝固物質が溶解すると、抗凝固活性は停止し、そして、新たに露出した少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βのコーティングが、その意図された作用を開始することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、保護コーティングと、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βコーティングの交互層が、コーティングの徐放性を全体的に強化することができる。
【0051】
本発明によるコーティングは、医療装置製造の、当業者に公知な任意の技術によって、塗布することができる。例えば、コーティングは、本発明に基づいて使用されるステントグラフトに、「噴霧」として塗布することができ、この噴霧はコーティングとして凝固する。このような噴霧は、例えば、限定されるものではないが、約0.1μmから約3μm、約10μmから約30μm、または、約30μmから約100μmまでを含む、多様な大きさのミクロスフェアから調製することができる。付加的または代替的に、コーティングは、含浸、吹付け、ブラッシング、浸漬および/またはロール塗によって、塗布することができるが、これらに限定されるものではない。別の実施形態においては、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βに混合するポリマーを、ステントグラフトの布に組み込まれる繊維またはストランドを製作するために、利用することができる。コーティングは、塗布された後、乾燥することができる。乾燥用の技術としては、加熱強制空気、冷却強制空気、真空乾燥または静的蒸発が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
ステント、ステントグラフトおよびコーティングに関する追加的な情報としては、Altの米国特許第6,387,121号、Hossainyらの米国特許第6,451,373号およびTsengらの米国特許第6,364,903号を参照にし、それぞれの全体の内容を参照により本明細書に組み込む。
【0053】
また、ステントグラフト上のコーティングの代わりに、または、コーティングに加えて、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、ステントグラフトと結合した送給装置を用いて、ステントグラフト配置後、動脈瘤部位に投与することができる。この実施形態では、ステントグラフトが、動脈瘤部位を血流から分離し、そして、送給装置を取り付けることが可能な構造を提供する。このようにして、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを、周囲の健康な組織にではなく、動脈瘤部位に直接送給することができる。少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βがこの領域にほとんど限定されるように、その比較的密閉された環境に放出される。したがって、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの最大濃度が、治療部位に残り、体の他の部分に搬送されない。結果として、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βのかなりの量が、より長期にわたり治療部位に残り、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの潜在能力の有効性を増加させる。
【0054】
送給装置は、本明細書において説明されるように、ステントグラフトに取り付けられるかまたはステントグラフト層から作られた、パウチを含むことができるが、これに限定されない。この場合、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―β(そして、利用時に結合された担体)は、パウチ内部に配置される。
【0055】
図2は、パウチ50の形の、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―β送給装置を示す。この例示的な実施形態では、パウチ50は、ステントグラフト22の外表面上のリング48に接合される。送給装置50は、動脈瘤部位(図示された例では、大動脈10の動脈瘤嚢18)への配置時に、送給装置50がステントグラフト22と大動脈10の動脈瘤壁16の間に設置されるように、位置を定められる。
【0056】
図3aは、パウチ50を示す。パウチ50は、ステントグラフトの外壁を巻装し、一実施形態においては、パウチ50の端部58で、取り付けることができる。パウチ50は、例えば、嚢素材のシートを半分に折り重ね、そして、例えば、開口部を残すように、糸綴じ、レーザ溶接、接着剤または同種のもので、端部56を形成する折り目で生じた折りじわから、突き出た対向側を互いにくっつけることによって、調製することができる。それから、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βが、パウチ50の内部に(担体と共に、または、担体なしで)装填される。それから、開口部58を、密閉することができる。図3bは、ステントグラフト22のリング48に取り付けられた、パウチ50の水平断面図を示す。
【0057】
代替として、複数のパウチを、各パウチをステントグラフトに取り付けて、利用することができる。一実施形態においては、ステントグラフトの円周のまわりに広がる隣接したパウチの間隔が、比較的等しくなるように、パウチを配列する。一実施形態においては、少なくとも4つの、このような送給装置が、ステントグラフトの円周のまわりに等間隔で設置される。代替として、複数の送給装置を、ステントグラフトの円周のまわりに、かつ、ステントグラフトに沿って縦方向に、設置することができる。別の実施形態においては、適切に配置されたパウチを、2枚の布の層を含むステントグラフトを採用することによって、作製することができる。布の層は、パウチの、任意の所望の数または構成を作製するために、さまざまな場所で、互いに密着させることができる。
【0058】
説明された送給装置と併用した場合の、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの担体としては、シート、スラブ、ゲル、カプセル、微小粒子、ナノ粒子および/またはこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。例えば、担体は、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを担持するポリマーのシートを含むことができる。このようなシートは、適切な溶媒に、ポリマーと少なくと1つのフィブリン由来ペプチドB―βを、共に、溶解または分散させ、この溶液を適切な型に注入し、そして、蒸発して溶媒を除去することによって、形成することができる。それから、形成されたシートは、送給装置を適合させるために切断することができる。
【0059】
代替として、ゲルを、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの担体として、利用することができる。このようなゲルは、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βが溶解または分散した、有機溶媒にポリマーを溶解することによって、調製することができる。このゲルは、送給装置に配置することができ、ステントグラフトが挿入された場合に、動脈瘤嚢に少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを放出し、動脈瘤嚢で、其の送給装置は、動脈瘤嚢に隣接してゲルを維持するのに都合のよいメカニズムを提供する。
【0060】
前記のコーティングと同様に、送給装置および/または担体は、生分解性または非生分解性で、前記の素材のいずれかによって、作り上げることができる。したがって、同じ所望の剥離性および性質を、phまたは温度感受性、速いか、中間であるか、または遅い放出特性、物的障壁、などに関する前記のものを含んで、獲得することができる。
【0061】
また、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、ステントグラフト配置の時間か、または、配置の時間前後に、搬送および/または注入カテーテルを利用して、動脈瘤部位に送給することができる。一実施形態においては、ステントグラフトは、図4に示されるような搬送カテーテルに、予め装填される。ステントグラフト100は、搬送カテーテル200の遠位端部のステントグラフト室218を満たすために、半径方向に圧縮される。ステントグラフト100は、格納式外被220に覆われる。この図示された実施形態においては、搬送カテーテル200は、配置前にステントグラフトの外壁上へ少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを塗布するための、第1注入口208および第2注入口210を有する。それから、ステントグラフト100は、図1に示されるように、治療部位に配置される。
【0062】
搬送カテーテル200内でステントグラフト100の外壁をコーティングするための別の実施形態は、図5に示される。格納式外被220は、配置前にステントグラフト室218内に圧縮されたステントグラフト100の外壁に、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを塗布することができる複数の穴250を含む。それから、ステントグラフト100は、図1に示されるように、治療部位に配置される。
【0063】
別の実施形態においては、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βは、ステントグラフト配置の間か、または、配置後に、ステントグラフトと血管壁の間に注入される。図6aに示されるように、ステントグラフト100は、ステント搬送カテーテル300のステントグラフト室218を満たすために、半径方向に圧縮され、それから、左の腸骨動脈114を経て治療部位に配置される。また、マルチルーメン注入カテーテル302も、右の腸骨動脈116を通って治療部位に配置される。ガイドワイヤ用管腔が必要とされる場合、マルチルーメン注入カテーテル302は、2つの注入管腔を有する同軸カテーテル、若しくは、デュアルルーメンカテーテル、または、代替としてトリプルルーメンカテーテルとすることができる。注入カテーテル302は、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを治療部位に送給することができる第1注入口304および第2注入口306を有する。この配置図解(図6a)の第1段階においては、ステント搬送カテーテル300および注入カテーテル302が、治療部位に独立して配置される。
【0064】
図6bは、配置されたステントグラフト100を示す。この図示された実施形態においては、搬送カテーテル300は除去され、腸骨肢108が配置されている。ステントグラフト100の腸骨肢セグメント108は、近位端部122で動脈瘤嚢を密閉する。注入カテーテル302も、第1注入口304および第2注入口306が動脈瘤嚢104内にあるように、引き込まれている。それから、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―β308を、動脈瘤嚢104内で、血管管腔壁とステントグラフトの間に注入することができる(図6c)。それから、注入カテーテル302は、回収される。
【0065】
別の実施形態においては、単一ルーメン注入カテーテルを、マルチルーメンカテーテルの代わりに、利用することができる。ガイドワイヤが管腔から取り出された後、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを、シングルルーメン注入カテーテルの同じ管腔を通って、治療部位に送給することができる。代替の実施形態においては、1または2以上の単一ルーメン注入カテーテルを、カテーテルの遠位端部を動脈瘤嚢で出会って、各腸骨動脈に配置することができる。
【0066】
他の代替の実施形態においては、1または2以上の注入カテーテルを、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを動脈瘤嚢に送給するために、利用することができる(図7a)。図1および図6で前記したように、ステントグラフト100は、左の腸骨動脈114を経て、治療部位に配置される(図7a)。複数の単一ルーメンまたはマルチルーメン注入カテーテル302および500も、右の腸骨動脈116および左の腸骨動脈114を通って、動脈瘤嚢104に配置される(図10a)。注入カテーテル302および500は、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを預けることができる注入口を有する。搬送カテーテル300は、図7bのように、両ステントグラフト肢が配置されて、除去されるが、注入カテーテル302および500は、動脈瘤嚢104内に注入口304および306および504および506を有して、適所に残される。ステントグラフト100の腸骨肢セグメント108は、近位端部122で動脈瘤嚢を密閉する。それから、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―β308が、動脈瘤嚢104に投与されて(図7c)、そして、注入カテーテル302および500を取り出すことが可能となる。
【0067】
さらに別の実施形態においては、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを、ステントグラフト100の壁を通って成分を注入することによって、動脈瘤嚢104に送給することができる(図8)。注入カテーテル900は、すでに配置されたステントグラフト100の部位へと前進し、そして、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―β308を動脈瘤嚢104に送給するために、針902がステントグラフト100を貫通する。注入カテーテル900は、マルチルーメンまたは単一ルーメンカテーテルとすることができる。
【0068】
別の実施形態においては、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを、経腰大動脈注入によって、動脈瘤嚢104に送給する(図9)。限定されないが注射器のような、注入装置920が、エックス線誘導または超音波検査誘導の下、ステントグラフト100および腸骨脚部108がすでに配置された動脈瘤嚢に向けられる。注入装置920が、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―β308を、動脈瘤嚢104へ送給する。注入装置920は、単一の管腔または複数の管腔を有することができる。
【0069】
さらに別の実施形態においては、動脈瘤の位置およびステントグラフトの配置に応じて、側副動脈を、動脈瘤嚢に接近するために、利用することができる(図10)。例えば、これに限定するものではないが、腎動脈の近くだが、腎動脈の下にある腹大動脈154に遠位端部102があるように、ステントグラフト100を配置することができる。ステントグラフト100の配置後、配置カテーテルは除去され、そして、注入カテーテル302が、上の腸間膜動脈150へ動脈瘤嚢104を過えて大動脈を上昇させられる。それから、注入カテーテル302は、上の腸間膜動脈150を通って前進し、腸間膜動脈が動脈瘤嚢104内の大動脈で始まる下腸間膜動脈へと下降する。それから、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―β308を、第1注入口304および第2注入口306を通して、動脈瘤嚢104に注入することができる。
【0070】
本発明によれば、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βの部位特異的送達に加えて、1または2以上の追加的な生理活性剤を、局所的に投与することもできる。組み込む生理活性剤の選択、または、組み込む量は、一実施形態においては、ステントグラフトをコーティングするために選択されたポリマーと深い関係があり得る。当業者は、疎水剤が疎水性ポリマーを好み、親水剤が親水性ポリマーを好む事を理解する。したがって、コーティングは、剤、または、速放性、中間の放出性若しくは徐放性との剤の組み合わせのために、設計することができる。
【0071】
特定の生理活性剤の非限定的な例、または、本発明の文脈の中で特に有益な可能性がある生理活性剤の種類としては、化合物を結合しているFKBP―12結合化合物を含んだマクロライド抗生物質、エストロゲン、シャペロン阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、蛋白チロシンキナーゼ阻害剤、レプトマイシンB、ペルオキシゾーム増殖因子活性化受容体γリガンド(PPAR)、ハイポセマイシン、一酸化窒素、ビスホスホネート、上皮成長因子阻害剤、抗体、プロテアソーム阻害剤、抗生剤、消炎剤、アンチセンスヌクレオチド、マトリックス金属蛋白分解酵素阻害剤、および、形質転換核酸類、を含む抗増殖性剤が挙げられるが、これらに限定されない。また、生理活性剤としては、抗増殖性化合物、細胞増殖抑制性化合物、中毒性化合物、抗炎症性化合物、化学療法剤、鎮痛剤、抗生剤、プロテアーゼ阻害剤、スタチン、核酸、ポリペプチド、組換え微生物を含んでいる成長因子および送達ベクター、リポソームなどを挙げることができる。例示的なFKBP―12結合剤としては、シロリムス(ラパマイシン)、タクロリムス(FK506)、エベロリムス(サーティカンまたはRAD―001)、テムシロリムス(CCI―779、または、米国特許出願番号第10/930,487号で開示したような3―ヒドロキシ―2―(ヒドロキシメチル)―2―メチルプロピオン酸を有するアモルファスラパマイシン42―エステル)およびzotarolimus(ABT―578、米国特許第6,015,815号および第6,329,386号を参照)が挙げられる。加えて、米国特許第5,362,718号で開示したような、他のラパマイシンヒドロキシエステルが、利用される可能性がある。
【0072】
特記しない限り、明細書および請求の範囲で使われる、成分の量、分子量および反応条件等の性質を表しているすべての数は、すべての例において、用語「約」によって修飾されると理解すべきである。したがって、特に明記しない限り、明細書および添付の請求の範囲に記載される数のパラメーターは近似値であり、本発明によって得られると考えられる所望の性質に応じて変化する可能性がある。最低でも、均等論の適用を請求の範囲に限定する試みではなく、それぞれの数のパラメーターは、多くの報告された有意な数字を考慮して、そして、通常の丸め技法を適用することによって、少なくとも解釈されなければならない。本発明の幅広い範囲を記載している数値域およびパラメーターは近似値であるが、特定の例において記載する数値は、できる限り正確に報告される。しかしながら、任意の数値は、本質的にいくらかの誤差を含み、それぞれの試験している測定において見られる、標準偏差から必然的に生じる。
【0073】
用語「a(一)」、「an(一)」および「the(当)」、並びに、本発明を説明する文脈において(特に以下の請求の範囲の文脈において)使用される同様の指示語の対象は、本明細書において特記しない限り、または、明らかに文脈によって否定されない限り、単数および複数の両方を包含するものとして解釈すべきである。本明細書においての値の範囲の説明は、範囲の中に含まれている値を各々分離するために、単に個々に言及する簡便な方法として役立つことを目的とするだけである。本明細書において特記しない限り、各々の単一値は、あたかもそれが本明細書において個々に詳述されるかのように、明細書に組み込まれる。本明細書において説明されるすべての方法は、本明細書において特記しない限り、または、文脈によって明らかに否定されない限り、任意の適切な順序で実行することができる。すべての例、または、本明細書において提供される例示的な言語(例えば、「など」)の利用は、単によりよく本発明を説明することを目的とするだけで、別途請求される本発明の範囲に対する制限をもたらすものではない。明細書の言語は、本発明の実施に不可欠な任意の請求されない要素を示すものとして解釈してはならない。
【0074】
代替的要素または本明細書において開示される本発明の実施形態の、グループは、制限するように解釈するべきではない。各グループのメンバーは、個々に、または、グループの他のメンバーまたは本明細書において見られる他の要素との任意の組み合わせで、言及され、主張することができる。グループの1または2以上のメンバーが、便利さおよび/または特許性の理由で、グループに含まれるかまたはグループから削除される可能性があることが予想される。任意のこのような包含または削除が生じる場合、明細書は、修正されるグループを含み、その結果、添付の請求の範囲において使用されるすべてのマーカッシュグループの記載を満たすとみなされる。
【0075】
本発明のいくらかの実施形態が、本明細書において説明され、これには、本発明を実行するために、発明者に知られている最良の形態が含まれる。もちろん、これらの説明された実施形態の変形形態は、前記の説明を読むと、即座に、当業者に明らかとなる。発明者は、当業者が適切にこのような変形形態を用いるのを予想し、また、本明細書において詳しく説明されたものとは、別の方法で本発明が実施されることを意図する。したがって、本発明は、準拠法によって許されるように、本明細書に添付される請求の範囲において詳述される内容すべての修正形態および等価物を含む。さらに、すべての可能な変形形態における前記の要素の任意の組み合わせは、本明細書において特記しない限り、または、文脈によって明らかに否定されない限り、本発明に包含される。
【0076】
更に、本明細書の全体にわたって特許および印刷した刊行物への参照がなされている。前記の参考文献および印刷した刊行物のそれぞれは、その全体が参照によって、本明細書に個々に組み込まれる。
【0077】
最後に、本明細書で開示される本発明の実施形態が、本発明の原理を例示すると理解すべきである。使用することができる他の修正形態は、本発明の範囲内である。したがって、例えば、限定されないが、本発明の代替的な構成は、本明細書の教示に従って利用することができる。したがって、本発明は、正確に図と共に記載されたものに、限定されない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを含んでいるステントグラフトであって、前記少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βが、前記ステントグラフトの外表面に塗布されるもの、前記ステントグラフトに塗布されるコーティング内、または、前記ステントグラフトと結合した送給装置内に組み込まれるもののうちの1または2以上である、ステントグラフト。
【請求項2】
前記ステントグラフトが、前記ステントグラフトに塗布されるコーティングに組み込まれた少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを備え、前記コーティングが、生分解性である、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項3】
前記ステントグラフトが、前記ステントグラフトに塗布されるコーティングに組み込まれた少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを備え、前記コーティングが、温度感受性および/またはpH感受性を有する、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項4】
前記ステントグラフトが、前記ステントグラフトに塗布されるコーティングに組み込まれた少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを備え、前記コーティングが、速放性コーティング、中間の放出性のコーティングまたは徐放性コーティングになるように、調製される、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項5】
前記ステントグラフトが、前記ステントグラフトと結合した送給装置内に、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを備え、及び前記少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βが、更に、担体と結合をする、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項6】
前記担体が、シート、スラブ、ゲル、カプセル(単数)、カプセル(複数)、微小粒子、ナノ粒子およびこれらの組み合わせ、から成るグループから選択される、請求項5に記載のステントグラフト。
【請求項7】
前記送給装置が、前記ステントグラフトと結合したパウチである、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項8】
前記パウチが、2つの層を有するステントグラフトを提供することによって作製され、配置後、第1層が血流にさらされ、第2層が血管壁に面し、また、前記第2層が半透性であり、1または2以上のパウチが形成されるように、層が部分的に互いに密着をする、請求項7に記載のステントグラフト。
【請求項1】
少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを含んでいるステントグラフトであって、前記少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βが、前記ステントグラフトの外表面に塗布されるもの、前記ステントグラフトに塗布されるコーティング内、または、前記ステントグラフトと結合した送給装置内に組み込まれるもののうちの1または2以上である、ステントグラフト。
【請求項2】
前記ステントグラフトが、前記ステントグラフトに塗布されるコーティングに組み込まれた少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを備え、前記コーティングが、生分解性である、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項3】
前記ステントグラフトが、前記ステントグラフトに塗布されるコーティングに組み込まれた少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを備え、前記コーティングが、温度感受性および/またはpH感受性を有する、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項4】
前記ステントグラフトが、前記ステントグラフトに塗布されるコーティングに組み込まれた少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを備え、前記コーティングが、速放性コーティング、中間の放出性のコーティングまたは徐放性コーティングになるように、調製される、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項5】
前記ステントグラフトが、前記ステントグラフトと結合した送給装置内に、少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βを備え、及び前記少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドB―βが、更に、担体と結合をする、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項6】
前記担体が、シート、スラブ、ゲル、カプセル(単数)、カプセル(複数)、微小粒子、ナノ粒子およびこれらの組み合わせ、から成るグループから選択される、請求項5に記載のステントグラフト。
【請求項7】
前記送給装置が、前記ステントグラフトと結合したパウチである、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項8】
前記パウチが、2つの層を有するステントグラフトを提供することによって作製され、配置後、第1層が血流にさらされ、第2層が血管壁に面し、また、前記第2層が半透性であり、1または2以上のパウチが形成されるように、層が部分的に互いに密着をする、請求項7に記載のステントグラフト。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2012−511396(P2012−511396A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540759(P2011−540759)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/065063
【国際公開番号】WO2010/068382
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(511126109)メドトロニック ヴァスキュラー インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/065063
【国際公開番号】WO2010/068382
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(511126109)メドトロニック ヴァスキュラー インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】
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