説明

フィラメント補強されたコンポジットファイバー

【課題】ファイバー、メッシュ、および縫合糸のような移植可能な材料を含む外科用デバイスの形成において有用なフィラメント補強コンポジットを提供する。
【解決手段】複数のフィラメントおよび接着マトリックス材料を含むフィラメント補強コンポジットファィバーであって、その上の表面に形成された少なくとも1つの一体的なとげを有する、フィラメント補強コンポジットファィバーが提供される。さらに、医療用デバイスを作製する方法であって:複数のフィラメントに接着マトリックス材料を付与する工程であって、フィラメント補強コンポジットファイバーを提供する工程;および該フィラメント補強コンポジットファイバーの表面上に少なくとも1つのとげをコーティングする工程、を包含する、方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2007年10月29に出願された米国仮特許出願番号第60/983,262号の利益およびそれへの優先権を主張しており、この特許出願の全体の開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(背景)
(技術分野)
本開示は、一般に外科用デバイスの分野に関し、そしてより特定すれば、ファイバー、メッシュ、および縫合糸のような移植可能な材料を含む外科用デバイスを形成することにおいて有用なフィラメントで補強されたコンポジットに関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の背景)
外科用縫合糸は、組織および創傷閉鎖を含む種々のタイプの医療手順のために首尾良く用いられている。外科用縫合糸は、種々のサイズおよびタイプ(例えば、モノフィラメントおよび編み組み)で利用可能であり、異なるタイプの組織閉鎖を支持する。外科用縫合糸は、代表的には、1つの端部に取り付けられたニードルを有する。このニードルが組織を貫通するとき、縫合糸は、組織に入り、組織を通過し、そして組織を出て、その点で結ばれ、組織たまは創傷を固定するために用いられ得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モノフィラメントのとげのある縫合糸(Surgical Specialitiesから市販され入手可能)は、額および顔の持ち上げを含む美容の下垂症の手順における使用のために認可されている。縫合糸の全長に沿ったとげは、組織と係合し、とげのある縫合糸を適所に結び目を必要とせずに固定する。大きな負荷およびストレスが、とげ形成プロセスの間に単一のフィラメントに与えられる。これらのストレスはフィラメントを弱体化し得、そして、特により高い張力の創傷においては、とげは、このフィラメントから容易に剥離され得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(概要)
複数のフィラメントおよびマトリックスから作製されたフィラメント補強コンポジットファイバーは、縫合糸およびメッシュのような医療用デバイスを形成することにおいて有用である。
【0006】
本発明は、さらに以下の手段を提供する。
【0007】
(項目1)複数のフィラメントおよび接着マトリックス材料を含むフィラメント補強コンポジットファィバーであって、その上の表面に形成された少なくとも1つの一体的なとげを有する、フィラメント補強コンポジットファィバー。
【0008】
(項目2)上記接着マトリックス材料が、上記フィラメント補強コンポジットの全長の少なくとも5%を構成する、項目1に記載のフィラメント補強コンポジットファィバー。
【0009】
(項目3)項目1に記載のフィラメント補強コンポジットを含む、メッシュ。
【0010】
(項目4)上記複数のフィラメントの少なくとも1つが、吸収性である、項目1に記載のフィラメント補強コンポジットファィバー。
【0011】
(項目5)上記複数のフィラメントの少なくとも1つが、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン、バレロラクトン、トリメチレンカーボネート、1,4−ジオキサノン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、コラーゲン、ガット、ポリマー薬物、エチレングリコール、エチレンオキシド、エステルアミド、γ−ヒドロキシバレレート、β−ヒドロキシプロピオネート、α−ヒドロキシ酸、およびβ−ヒドロキシブテレート、コラーゲン、セルロース、ガット、およびそれらのコポリマーからなる群から選択されるポリマーを含む、項目4に記載のフィラメント補強コンポジットファィバー。
【0012】
(項目6)上記複数のフィラメントの少なくとも1つが、非吸収性である、項目1に記載のフィラメント補強コンポジットファィバー。
【0013】
(項目7)上記複数のフィラメントの少なくとも1つが、シルク、綿、ゴム、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリエステルならびにそれらのコポリマーから選択されるポリマーを含む、項目6に記載のフィラメント補強コンポジットファィバー。
【0014】
(項目8)上記接着マトリックス材料が、モノマー、オリゴマー、ポリマーからなる群から選択される、項目1に記載のフィラメント補強コンポジットファィバー。
【0015】
(項目9)上記接着マトリックス材料が、シアノアクリレート、ウレタン、アクリレート、フィブリン、アルブミン、トロンビン、ゼラチン、タンパク質、多糖、ラクチド、コラーゲン、およびカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーから形成されるポリマーを含む、項目1に記載のフィラメント補強コンポジットファィバー。
【0016】
(項目10)上記マトリックス材料が、メチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、オクチルシアノアクリレート、イソブチルシアノアクリレートおよびメトキシプロピルシアノアクリレートならびにそれらのコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つのシアノアクリレートを含む、項目9に記載のフィラメント補強コンポジットファィバー。
【0017】
(項目11)上記フィラメント補強コンポジットファィバーが、薬剤を含む、項目1に記載のフィラメント補強コンポジットファィバー。
【0018】
(項目12)上記フィラメント補強コンポジットファイバーが、脂肪酸エステルをさらに含む、項目1に記載のフィラメント補強コンポジットファィバー。
【0019】
(項目13)上記フィラメント補強コンポジットファイバーが、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ラクチド、グリコリド、およびカプロラクトンならびにそれらのコポリマーからなる群から選択されるコーティングをさらに含む、項目1に記載のフィラメント補強コンポジットファイバー。
【0020】
(項目14)上記フィラメント補強コンポジットファイバーが、クリップ、ファスナー、創傷用品、包帯、薬物送達デバイス、吻合リング、ステント、グラフト、カテーテル、組織足場、バットレス、ガーゼ、ラップバンド、テープ、またはリボンである、項目1に記載のフィラメント補強コンポジットファイバー。
【0021】
(項目15)上記フィラメント補強コンポジットファイバーが、薬剤をさらに含む、項目1に記載のフィラメント補強コンポジットファイバー。
【0022】
(項目16)複数のフィラメント、および接着マトリックス材料を含む縫合糸であって、その上の表面に形成された少なくとも1つの一体的なとげを規定する、縫合糸。
【0023】
(項目17)少なくとも1つのニードルをさらに含む、項目16に記載の縫合糸。
【0024】
(項目18)医療用デバイスであって:
複数のフィラメント、および接着マトリックス材料を含むフィラメント補強コンポジットファイバーを含み;そして
ここで、該接着マトリックス材料が、該フィラメント補強コンポジットファイバーの全長の少なくとも5%の上に存在し;そして
該フィラメント補強コンポジットファイバーが、その中に結ばれた結び目を有し得る、医療用デバイス。
【0025】
(項目19)上記接着マトリックス材料が、上記フィラメント補強コンポジットファイバーの全長の5%〜95%を構成する、項目18に記載の医療用デバイス。
【0026】
(項目20)上記接着マトリックス材料が、上記フィラメント補強コンポジットファイバーの全長の20%〜70%を構成する、項目18に記載の医療用デバイス。
【0027】
(項目21)上記フィラメント補強コンポジットファイバーが、縫合糸、メッシュ、クリップ、ファスナー、創傷用品、包帯、薬物送達デバイス、吻合リング、ステント、グラフト、カテーテル、組織操作足場、ガーゼ、ラップバンド、テープ、またはリボンである、項目18に記載の医療用デバイス。
【0028】
(項目22)上記フィラメント補強コンポジットファイバーが、薬剤をさらに含む、項目18に記載の医療用デバイス。
【0029】
(項目23)上記フィラメント補強コンポジットファイバーが、形状記憶ポリマーを含む、項目18に記載の医療用デバイス。
【0030】
(項目24)医療用デバイスを作製する方法であって:
複数のフィラメントに接着マトリックス材料を付与する工程であって、フィラメント補強コンポジットファイバーを提供する工程;および
該フィラメント補強コンポジットファイバーの表面上に少なくとも1つのとげをコーティングする工程、を包含する、方法。
【0031】
(項目25)組織の第1の部分を通ってフィラメント補強コンポジットファイバーを挿入する工程;
該フィラメント補強コンポジットファイバーを、組織の第2の部分を通って引く工程;および、該組織を出て創傷閉鎖を生成する工程を提供して創傷を閉じる方法。
【0032】
(項目26)
創傷を閉じるためのシステムであって、組織の第1の部分を通るように構成されたフィラメント補強コンポジットファイバーと;
該ファイバーが組織を出て創傷閉鎖を生成するように、該フィラメント補強コンポジットファイバーを組織の第2の部分を通って引くための手段と;
を備える、システム。
【0033】
(摘要)
本開示の第1の局面では、フィラメント補強コンポジットファイバーは、複数のフィラメント、接着マトリックス材料を含み、そしてこのフィラメント補強コンポジットファイバーは、その表面上に形成された少なくとも1つの一体的なとげを有する。実施形態では、このフィラメント補強コンポジットファイバーは、縫合糸として用いられ得るか、またはメッシュ中に取り込まれ得る。
【0034】
上記フィラメント補強コンポジットファイバーの別の実施形態では、複数のフィラメントおよび接着マトリックス材料を含み、ここで、この接着マトリックス材料は、上記フィラメント補強コンポジットファイバーの全長の少なくとも5%上に存在し、そしてこのフィラメント補強コンポジットファイバーは、その中に結ばれた結び目を有し得る。
【0035】
本開示に従う医療用デバイスを作製するための1つの方法は、フィラメント補強コンポジットファイバーを提供するために接着マトリックス材料を複数のフィラメントに付与する工程、およびこのフィラメント補強コンポジットファイバーの表面上に少なくとも1つのとげを生成する工程を含む。
【0036】
上記フィラメント補強コンポジットファイバーの種々の好ましい実施形態は、図面を参照して本明細書中に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
(実施形態の詳細な説明)
本開示は、フィラメント補強コンポジットファイバーに関する。このフィラメント補強コンポジットファイバーは、接着マトリックス材料と組み合わせて、複数のフィラメントから形成された細長い本体を有する。本開示の実施形態の医療用デバイスは、このフィラメント補強コンポジットファイバーから作製された外科用メッシュおよび外科用縫合糸を含む。
【0038】
記載されるような「フィラメント」は、10:1より大きい直径に対する長さの比をもつ、細長い本体部分を有する連続的なストランドを意味する。用語「フィラメント」は、本明細書では、全体または合わせて「ファイバー」を生成する複数の「フィラメント」を記載する際に用いられる。実施形態では、いくつかのフィラメントは、編まれか、織られ得るか、融合され得るか、または一緒に編み組まれ得て、ファィバーを生成する
一般に、フィラメントは、約1ミクロン〜約50ミクロン、実施形態では約5ミクロン〜約15ミクロンの直径を有し得る。上記フィラメント補強コンポジットファイバーを形成するために適切な個々のフィラメントは、任意のフィイバーを形成する合成または天然材料、例えば、ポリマーおよび金属(例えば、マグネシウム誘導体、スチールおよびチタン)に由来し得る。これらフィイバー形成材料は、生体吸収性または生体非吸収性であり得る。異なる材料(例えば、天然もしくは合成、または生体吸収性もしくは生体非吸収性の材料)から作製されたフィラメントの組み合わせが、本発明のフィラメント補強コンポジットファイバーを作製するために用いられ得る。
【0039】
適切な合成の吸収性材料は、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン、バレロラクトン、カーボネート(例えば、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネートなど)、ジオキサノン(例えば、1,4−ジオキサノン)、δ−バレロラクトン、1,ジオキセパノン(例えば、1,4−ジオキセパン−2−オンおよび1,5−ジオキセパン−2−オン)、エチレングリコール、エチレンオキシド、エステルアミド、γ−ヒドロキシバレレート、β−ヒドロキシプロピオネート、α−ヒドロキシ酸、ヒドロキシブテレート、オルトエステル、ヒドロキシアルカノエート、チロシンカーボネート、ポリイミドカーボネート、ポリイミノカーボネート(例えば、ポリ(ビスフェノールA−イミノカーボネート)およびポリ(ヒドロキノン−イミノカーボネート))、およびポリマー薬物(例えば、ポリジフルニソール、ポリアスピリン、およびタンパク質治療薬)ならびにそれらのコポリマーおよび組み合わせを含む。適切な天然の吸収性ポリマーは、コラーゲン、セルロースおよびガット(gut)を含む。実施形態では、ラクチドおよびグリコリドを含む、グリコリドおよびラクチドを基礎にしたポリエステルが用いられ得る。
【0040】
フィラメント補強コンポジットファイバーを形成するために用いられ得る適切な非吸収性材料は、綿、シルク、およびゴムのような非吸収性の天然材料を含む。適切な非吸収性の合成材料は、ナイロン、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレンおよびポリエチレン)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリアミド、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))、ポリアリ−レンケトン、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、アクリル、ポリアミド、アラミド、フルオロポリマー、ポリブトエステル、シリコーン、およびポリマーブレンド、それらのコポリマーおよび分解可能なポリマーとの組み合わせのような材料に由来するモノマーおよびポリマーを含む。実施形態では、ポリプロピレンが、縫合糸を形成するために利用され得る。このポリプロピレンは、アイソタクチックポリプロピレン、またはアイソタクチックおよびシンジオタクチックまたはアタクチックポリプロピレンの組み合わせであり得る。さらに、非吸収性の合成および天然ポリマーおよびモノマーは、互いに組み合わされ得、そしてまた、種々の吸収性ポリマーおよびモノマーと組み合わされ得、本発明のフィラメント補強コンポジットファイバーのためのファイバーおよびフィラメントを生成する。
【0041】
実施形態では、フィラメントは、形状記憶ポリマーを用いて構築され得る。形状記憶ポリマーのハードセグメントおよびソフトセグメントを調製するために用いられる適切なポリマーは、ポリカプロラクトン、ジオキサノン、ラクチド、グリコリド、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリエステルアミド、ポリウレタン/尿素、ポリエーテルエステル、およびポリウレタン/ブタジエンコポリマーならびにそれらの組み合わせを含む。
【0042】
実施形態では、上記フィラメントは、金属(例えば、スチールおよび分解性マグネシウム)、金属合金などから形成され得る。
【0043】
用語「フィラメント」は、本明細書では、全体または合わせて「ファイバー」を生成する複数の「フィラメント」を記載する際に用いられる。これら適切な材料からフィラメントを作製するための方法は、当業者の範囲内である(例えば、押出成形、および鋳造)。複数のフィラメントは、本開示における使用のために任意の様式で組み合わされ得る。複数のフィラメントは、当業者の範囲内の任意の技法を用いて組み合わされ得、例えば、混合、撚り合わせ、編み組み、織ること、絡ませること、および編むことがある。例えば、複数のフィラメントは、単純に合わせられてヤーンを形成し得る。別の例として、複数のフィラメンは編み組まれ得る。なお別の例として、複数のフィラメントは合わせられてヤーンを形成し得、次にこれらマルチフィラメントのヤーンは編み組まれ得る。本開示を読む当業者は、フィラメントが合わせられ得るその他の方法を想定する。フィラメントはまた、不織マルチフィラメントファイバーを生成するために合わせられ得る。特定の実施形態では、本開示によるフィラメント補強コンポジットファイバーを形成する際に有用なマルチフィラメント構造は、編み組むことにより生成され得る。この編み組むことは、当業者の範囲内の任意の方法によってなされ得る。例えば、縫合糸およびその他の医療用デバイスのための編み組み構築物は、米国特許第5,019,093号、同第5,059,213号、同第5,133,738号、同第5,181,923号、同第5,226,912号、同第5,261,886号、同第5,306,289号、同第5,318,575号、同第5,370,031号、同第5,383,387号、同第5,662,682号、同第5,667,528号、および同第6,203,564号に記載され、これら特許の各々の全体の開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0044】
いくつかの場合には、管状編み組みまたはシースが、製紐機の中心を通って供給されるコア構造の周りで構築され得る。コアを所有するものを含む公知の管状編み組み縫合糸は、例えば、米国特許第3,187,752号、同第3,565,077号、同第4,104,973号、同第4,043,344号、および同第4,047,533号に開示されている。
【0045】
適切なフィラメントは、引き出され、編み組まれ、編まれ、配向され、縮らされ、撚られ、絡ませられ、混合され、または実質的に平行にされて、ファイバー形成プロセスの一部としてヤーンを形成し得る。さらに、メッシュのような本発明のフィラメント補強コンポジットファイバーは、個々のフィラメントを一緒に編み組むこと、織ること、編むこと、マットに編むこと、スプレーすることなどによって形成され得る。図1は1つの実施形態を示し、本開示のフィラメント補強コンポジットファイバーから形成されたメッシュ30である。このメッシュ30は、このフィラメント補強コンポジットファイバーの一部に沿ってとげ32を有し、その一方、このメッシュの中心は、とげのない部分36を含む。複数のフィラメントに接着材料を付与することにより、フィラメント補強コンポジットファイバーは構築され得る。適切なマトリックス材料は、フィラメントがマトリックス材料内に包埋され、一緒に結合され、粘着性のコンポジット材料を生成するような、個々のフィラメント間および/または個々のフィラメント間の隙間中に貫通するかまたは貫通させられ得る任意の化合物または組成物を含む。このフィラメント補強コンポジットファイバーにとげが形成される実施形態では、このマトリックスは、とげの深さより深く複数のフィラメントを貫通し、とげがある領域のための支持を提供する。
【0046】
適切なマトリックス材料は、シアノアクリレート、イソシアネート、ポリウレタン、ポリアミン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、シリコーン、カーボネート、およびその他の合成モノマーおよびポリマーならびにそれらの組み合わせを含む吸収性および非吸収性材料を含むが、これらに制限されるわけではない。マトリックス材料はまた、フィブリン、アルブミン、トロンビン、ゼラチン、タンパク質、コラーゲン、多糖、およびこれらの組み合わせのような天然材料を含み得る。
【0047】
実施形態では、シアノアクリレートのようなマトリックス材料が、本開示において採用され得る。適切なシアノアクリレートは、メチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、オクチルシアノアクリレート、イソブチルシアノアクリレートおよびメトキシプロピルシアノアクリレートならびにそれらの組み合わせなど由来の材料を含む。
【0048】
実施形態では、適切な接着マトリックス材料は、乳酸、グリコール酸、カプロラクトン、ジオキサノン、PEG、プルロニクス、イソシアネート、およびそれらの組み合わせなどのような材料から合成されるものを含む合成の吸収性および非吸収性のモノマーおよびオリゴマーを含む。
【0049】
接着マトリックス材料はまた、極性および非極性溶媒を含む溶媒と組み合わされ得る。適切な溶媒は、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、塩素化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロ−エタン)、およびヘキサン、ヘプタン、酢酸エチルのような脂肪族炭化水素を含む。
【0050】
このマトリックス材料は、規則的または不規則な間隔で付与される。例えば、マトリックス材料は、以下により詳細に記載されるように、とげが、フィラメント補強コンポジットファイバーに沿って存在すべき場所のみに複数のフィラメントに沿って付与され得る。その他の実施形態では、このマトリックス材料は、全体のファイバーの長さに沿って付与され得る。別の実施形態では、縫合糸は、第1の部分上にフィラメント補強コンポジットファイバーを含み得、その一方、第2の部分は、複数のフィラメントのみを含む。これは、異なる縫合糸強度が要求されるときに所望され得、例えば、1つのファイバーを用いて種々の組織タイプおよび層を閉鎖する。一般に、このマトリックスは、複数のフィラメントの長さの少なくとも5%上に付与され得る。実施形態では、このマトリックス材料は、本発明のフィラメント補強コンポジットファイバーを作製するために用いられる複数のフィラメントの全長の約5%〜約95%、実施形態では約20%〜約70%上に存在する。
【0051】
マトリックス材料は、浸漬、スプレー、ブラッシング、蒸着、同時押出、毛細管芯材料、フィルムキャスティング、成形などのような当業者の範囲内の任意の技法を用いて上記複数のフィラメントに付与され得る。このマトリックス材料は、複数のフィラメントの処理(例えば、編み組み、機織り、または編むことなど)の後、またはその間に付与され得る。実施形態では、このマトリックス材料は、フィラメントを織ること、または編み組む直前に個々のフィラメントに付与され得、フィラメント補強コンポジットファイバーを生成する。
【0052】
さらに、上記コンポジットは、可塑剤、抗酸化剤、色素、希釈材、生物活性薬剤およびそれらの組み合わせのような生物学的に受容可能な添加物を含み得、これらは、本開示のコンポジットを形成するために用いられる、フィラメントおよびファイバー上にコーティングされ得るか、またはファイバーまたはフィラメントおよび/または接着マトリックス中に含浸され得る。
【0053】
種々の組成物および材料がまた、必要に応じてフィラメント、ファイバーに付与され得るか、そして/またはマトリックス材料中に含まれて、取り扱い、および結び目強度の機械的性質を改善し、または薬剤を送達し得る。適切なコーティング材料は、縫合糸に従来付与される任意の材料を含む。例えば、適切な材料は、コーティング組成物中で脂肪酸の金属塩と組み合わされ得る脂肪酸エステルを含む。このようなエステルは、例えば、ステアリン酸カルシウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウムのようなステアロイルラクチレートエステル、パルミチルラクチレートエステル、オレイルラクチレートエステル、または亜鉛ステアロイルラクチレート、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、または亜鉛パルミチルラクチレート;カルシウム、マンガン、アルミニウム、バリウムまたは亜鉛オレイルラクチレートを含み;ステアリン酸カルシウムおよび(American Ingredients Co.,Kansas City,Mo.から商標名VERVの下で市販され入手可能なカルシウムステアロイル−2−ラクチレートのような)カルシウムステアロイル−2−ラクチレートが好適である。所望されるとき、この脂肪酸エステルは溶媒と組み合わされ得る。適切な溶媒は、上記で列挙されたものを含む。
【0054】
実施形態では、上記フィラメント補強コンポジットファイバーは、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、それらのコポリマーなどを含む適切な材料と組み合わされ得、そして/またはコーティングされ得、これらには、アクリル酸PEG、およびアクリル酸PEG/PPGコポリマーのようなアクリル酸基を有するものが含まれる。このような組み合わせは、ポリアルキレンオキシドオリゴマーまたはポリマーまたはその他の非毒性界面活性剤とのブレンドまたはコポリマーを含み得る。得られる組成物は、上記に記載のコポリマーの存在に起因して抗微生物性質を所有し得る。その他の実施形態では、上記フィラメント補強コンポジットファイバーは、シリコーンアクリレートと組み合わされ得る。コーティングは、滅菌技法の前の任意の時間に個々のフィラメントまたはコンポジットファイバー構造に付与され得る。コーティングは、当業者の範囲内の任意の技法を用いて、フィラメントまたはコンポジットファイバーに付与され得る。
【0055】
さらに、上記フィラメント補強コンポジットファイバーは、種々の医薬および薬剤を取り込み得る。編み組みフィラメントは大きな表面積を有し、薬物の装着および貯蔵のために利用可能ないくつかの個々のフィラメントおよび(フィラメント間の)隙間部位を含む。種々の生物活性/医療用の薬剤の塊(バルク)装填が達成され得、そして一旦上記マトリックスが付与されると、必要に応じて所望の時間経過に亘る制御放出/溶出のために、上記編み組み中にシールされ得る。薬剤および薬物は、当業者の範囲内の方法によってフィラメントおよび/またはファイバーに付与され得、限定されないで、浸漬、噴霧、ブラッシング、蒸着、同時押出、キャピラリーウィッキング、フィルムキャスティング、成形などを含む。適切な薬剤はまた、混合、撹拌、乳化、相分離などによって上記接着マトリックス中に取り込まれ得る。さらに、溶媒が、コンポジットデバイス中に種々の薬剤を取り込むために用いられ得る。適切な溶媒は、上記に列挙されたものを含む。
【0056】
上記コンポジット中に取り込まれ得る薬剤は、抗微生物剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤などを含む。本明細書で用いられるとき、抗微生物剤は、それ自体で、または身体(免疫系)を支援することにより、病原性(疾患を引き起こす)であり得る微生物を破壊またはそれに抵抗して身体を支援する作用剤によって規定される。用語「抗微生物剤」は、抗生物質、集団感知ブロッカー、界面活性剤、金属イオン、抗微生物タンパク質およびペプチド、抗微生物多糖、防腐剤、殺菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、およびそれらの組み合わせを含む。
【0057】
本開示と組み合わされ得る適切な防腐剤および殺菌剤の例は、ヘキサクロロフェン、クロロヘキサジンおよびシクロヘキシジンのようなカチオン性ビグアニド、ヨウ素およびポビドンヨードのようなヨードフォア、PCMX(すなわち、p−クロロ−m−キシレノン)およびトリクロサン(例えば、2,4,4’−トリクロロ−2’ヒドロキシ−ジフェニルエーテル)のようなハロ置換フェノール化合物、ニトロフラントインおよびニトロフラゾンのような医薬調製物、メタンアミド、グルタルアルデヒドおよびホルムアルデヒドのようなアルデヒド、アルコール、それらの組み合わせなどを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗微生物剤は、トリクロサンのような防腐剤であり得る。
【0058】
本開示と組み合わされ得る抗生物質のクラスは、ミノマイシンのようなテトラサイクリン、リファンプシンのようなリファマイシン、エリスロマイシンのようなマクロライド、ナフシリンのようなペニシリン、セファゾロンのようなセファロスポリン、イミペネンおよびアズトレオナムのようなβ−ラクタム抗生物質、ゲンタマイシンおよびTOBRAMYCIN(登録商標)のようなアミノグリコシド、クロラムフェニコール、スルファメトキサゾールのようなスルホンアミド、バンコマイシンのような糖ペプチド、シプロフラキシンのようなキロン、フシジン酸、トリメトプリム、メトロニダゾール、クリンダマイシン、ムピロシン、アムホテリシンBのようなポリエン、フルコナゾールのようなアゾール、およびサブラクタムのようなβ−ラクタムインヒビターを含む。添加され得るその他の抗微生物剤は、例えば、抗微生物ペプチドおよび/またはタンパク質、抗微生物多糖、集団感知ブロッカー、抗ウイルス剤、銀イオンおよび銀ガラスイオン(ionic silver glass)のような金属イオン、界面活性剤、化学療法薬物、テロメラーゼインヒビター、5−サイクリックモノマーを含むその他の環状モノマー、マイトキサントロンなどを含む。
【0059】
用いられ得るさらなる適切な薬剤は、着色剤、色素、保存剤、タンパク質およびペプチド調製物、タンパク質治療剤、ヒアルロン酸のような多糖、レクチン、脂質、プロビオティクス、抗生物質、血管新生薬剤、抗血栓剤、抗凝固剤、凝固剤、鎮痛剤、麻酔薬、創傷修復薬剤、化学療法剤、生物薬剤、抗炎症剤、抗増殖剤、診断剤、解熱剤、抗炎症薬および鎮痛薬剤、血管拡張薬、抗高血圧薬および不整脈治療剤、血圧降下剤、鎮咳薬、抗新生物剤、局所麻酔剤、ホルモン調製物、抗喘息薬および抗アレルギー薬、抗ヒスタミン剤、抗凝固剤、鎮痙薬、脳循環および代謝改善剤、抗鬱薬および抗不安薬、ビタミンD調製物、低血糖症薬剤、抗潰瘍剤、気管支拡張剤、抗ウイルス剤、排尿困難剤、臭素化またはハロゲン化フラノンなどを含む。実施形態では、ポリマー薬物、すなわち、例えば、ポリマー抗生物質、ポリマー防腐剤、ポリマー化学療法剤、ボリマー抗増殖剤、ポリマー防腐剤、ポリマー非ステロイド抗炎症薬物(NSAIDS)など、およびそれらの組み合わせが利用され得る。
【0060】
本開示のフィラメント補強コンポジットファイバーは、ウイルスおよび細胞、免疫グロブリンのようなペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、アナログ、ムテイン、およびそのフラグメント、抗体(モノクローナルおよびポリクローナル)、サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン)、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6)、インターフェロン(β−INF、α−INFおよびγ−INF)、エリスロポイエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF)、インシュリン、抗腫瘍薬剤およびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン)、ワクチン(例えば、腫瘍抗原、も細菌抗原およびウイルス抗原)、ソマトスタチン、抗原、血液凝固因子、成長因子、タンパク質インヒビター、タンパク質アンタゴニスト、およびタンパク質アゴニスト、核酸、例えば、アンチセンス分子、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドおよびリボザイム、ならびにこれらの組み合わせのような適切な薬剤をさらに含み得る。
【0061】
これら薬剤を本開示の組成物と組み合わせる方法は、当業者の範囲にあり、そして制限されないで、混合、ブレンド、浸漬、スプレー、ウィッキング(wicking)、溶媒蒸発などを含む。
【0062】
実施形態では、本発明のフィラメント補強コンポジットファイバーは、縫合糸として用いられる。図2に示されるように、フィラメント補強コンポジットファイバー40は、縫合糸44の1つの端部に配置されたニードル42を含み得る。縫合糸は、代表的には、その中に結び目を結ぶための能力を含む良好な取り扱い性質を有する。取り扱い性質は、結び目を結ぶこと、結び目安全性、結び目再配置、および結び目解放の特徴のような、標準的な試験を用いて評価され得、これらの試験は、本質的に定量的または定性的であり得、そして縫合糸組成、および加工の制約によって変動し得る。例えば、ベンチ結び目ボード(bench top tie board)および/またはインビボ動物評価を用いて、結び目減少、結び目再配置および安全特徴のような縫合糸の取り扱い性質を決定し得る。フィラメント補強コンポジットファイバーはまた、剥離強度に対するより高い耐性を提供する。後に論議される実施形態では、とげのあるフィラメント補強コンポジットファイバーは、高いとげ剥離強度を有し、これは、このとげのあるコンポジットがより高い張力の創傷を保持することを可能にする。剥離強度は、定性的または定量的に試験され得、そして値が設定され得る。
【0063】
実施形態では、上記フィラメント補強コンポジットファイバーはとげを含み、とげは、その表面上に形成され、そしてこのコンポジットと一体的である。図3は、開示されるフィラメント補強コンポジットファイバー10上のとげ12を示す。とげは、制限されないで、レーザー、成形、ナイフ、ブレード、打ち抜き加工(スタンピング)、および当業者の範囲内のその他の切断手段を含む任意の技法を用いてフィラメント補強コンポジットファイバー上に生成される。実施形態では、超音波エネルギーがまた、2007年9月17日に出願され、「縫合糸上にとげを形成する方法」と題する米国特許出願番号第60/994,173号に記載されるようなとげを生成するために用いられ得、この特許出願の全体の開示は、本明細書中に参考として援用される。図4は、超音波エネルギーを用いるとげを生成する1つの実施形態を示す。装置50は、ブランクワークピース(図示はされていない)に超音波エネルギーを印加するために用いられる。装置50は、エネルギー供給のための超音波発生機52、切断のためのナイフまたはブレード54(必要に応じてコンバーター、増幅器/ホーンとともに)、随意の回転モーター56、随意のワークピース把持器58、随意の光源60、随意のカメラ62、随意のxyzスライド64、および随意のナイフ位置決めスライド66を含む。実施形態では、ナイフ54はブランクワークピース(図示はされていない)と接触し、ここで、超音波エネルギーがコンバーター54を用いることによりワークピースに印加され得、超音波エネルギーをホーン54に伝達し、ナイフ54の機械的移動を引き起こす。1つの実施形態では、このナイフ、ホーンおよびコンバーターは、図4に示されるように一緒に連結される。
【0064】
上記のとげは、任意の適切なパターン、例えば、らせん状、直線状のパターンで配列され得、またはランダムな間隔があけられ得る。とげの数、形態、間隔および表面積は、縫合糸が用いられる組織、および縫合糸を形成するために利用される材料の組成および幾何学的形状に依存して変動し得る。例えば、創傷閉鎖デバイスが、比較的柔軟な脂肪組織で用いられることが意図される場合、これらのとげはより長く、そしてより遠く離れて間隔を置かれ、縫合糸またはメッシュが軟組織を把持することを可能にする。これらのとげは、種々の角度で種々の方向に配列され得る。いくつかの実施形態では、上記フィラメント補強コンポジットファイバーは、大きなとげまたは小さなとげの千鳥状配列を含み得る。その他の実施形態では、2方向性のフィラメント補強コンポジットファイバー縫合糸は、大きなとげおよび小さなとげの両方のランダム形態を有し得る。
【0065】
一体的なとげの表面積は、また変動し得る。例えば、丸みを帯びた先端のとげが、特定の外科的適用のために設計された変動するサイズから作製され得る。脂肪組織と比較的柔軟な組織とを接続するとき、より大きなとげが所望され得る。その一方、より小さなとげは、コラーゲンが密な組織に対してより好適であり得る。いくつかの実施形態では、同じ縫合糸内の大きなとげおよび小さなとげの組み合わせが有益であり得、例えば、ファイバーが異なる層構造を備えた組織修復で用いられるときである。同じファイバーでの大きなとげおよび小さなとげの組み合わせの使用であって、とげのサイズが各組織層について特別に製作される使用は、最大の係留特性を確実にする。実施形態では、図5に描写されるようなフィラメント補強コンポジットファイバーは、大きなとげおよび小さなとげの両方を有し得る。
【0066】
実施形態では、すべてのとげは整列されて、縫合糸が1つの方向に組織を通って移動することを可能にし得、そして別の方向に組織を通って移動することに抵抗する。例えば、図5を参照して、フィラメント補強コンポジットファイバー10のとげ12は、単一の方向にとげのある縫合糸に形成され得る。実施形態では、このフィラメント補強コンポジットファイバー縫合糸10は、ニードル16に取り付けられ得る。とげ12は、縫合糸10の本体14の方向に曲がることができる。とげ12は、ニードル16の移動の方向に組織を通る縫合糸10の移動を許容するが、反対方向には一般に柔軟性がなく、そしてニードル16の移動とは反対の方向への縫合糸10の移動を防ぐ。
【0067】
その他の実施形態では、とげは、縫合糸の第1の部分上で整列され得、1つの方向に組織を通る縫合糸の第1の端部の移動を可能にし、その一方、縫合糸の長さの第2の部分上のとげが整列されて反対方向に縫合糸の第2の端部の移動を可能にする。例えば、図5に描写されるように、とげのある縫合糸10は2方向性であり得る。この2方向性のマルチフィラメント補強コンポジットファイバーは、1つの端部または両方の端部に配置されたニードルを有し得る。
【0068】
本開示のファイバーへのニードル取り付けを容易にするために、従来のチッピング剤が編み組みに付与され得る。ファイバーの2つの先端部には、このファイバーの各端部にニードルを取り付けることが望ましく、いわゆる二重アームの縫合糸を提供する。ニードルの取り付けは、クリンプ留め、スエージ加工など、当業者の範囲内で公知である任意の従来方法によってなされ得る。あるいは、低減された直径が、ニードルの穿孔端部中に挿入されるべき縫合糸の端部において提供され得る。低減された直径を提供するために、縫合糸は、切断、研磨、レーザー機械加工などのような、当業者の範囲内の任意の技法を用いて機械加工され得る。
【0069】
組織は、創傷を閉鎖するために、組織を通って、本発明のフィラメント補強コンポジットファイバーから作製されたニードルのある縫合糸を通過させることによって縫合され得る。このニードルは、次いで、縫合糸から除去され、そして必要に応じてその中に結び目が結ばれる。フィラメント補強コンポジットファイバーは、組織中に残り得、そして汚染および感染を防止することを助ける。本明細書で用いられるとき、用語「組織」は、制限されないで、皮膚のような組織、脂肪、筋膜、骨、筋肉、腱、靱帯、器官、神経、および血管を含む。本明細書でまた用いられる用語「創傷」は、限定するものではなく、ヒトもしくは動物の皮膚、またはその他のヒトもしくは動物の身体組織における、外科的切開、切断、裂傷または切断された組織を含む。
【0070】
本開示のフィラメント補強コンポジットファイバーは、医療用デバイス、薬物送達デバイスおよびコーティングにおいて採用され得る。上記フィラメント補強コンポジットファイバーを採用する医療用デバイスおよび/または外科用デバイスの例は、限定するものではなく、縫合糸、メッシュ、クリップおよびその他のファスナー、創傷用品、包帯、薬物送達デバイス、吻合リング、ステント、グラフト、カテーテル、軟組織修復および増強デバイス、足場、バットレス、ラップバンド、テープ、アンカー、リボン、整形外科デバイス、組織加工足場、種々の細胞成基質、およびその他の移植可能なデバイスを含む。実施形態では、本開示のフィラメント補強コンポジットファイバーは、吸収性または非吸収性フィラメントのいずれかであるその他のフィラメントと編まれるか、または織られ得、外科用デバイスを形成する。上記フィラメント補強コンポジットファイバーはまた、メッシュまたは不織材料に作製され得、編んだ布およびフェルトのような布を形成する。
【0071】
さらに、本発明のフィラメント補強コンポジットファイバーは、個々のフィラメントと一緒に、編み組むこと、織ること、編むこと、マットに編むこと、スプレーすることなどにより、メッシュのようなテキスタイルに形成され得る。図1は1つの実施形態を示し、メッシュ30は、本開示のフィラメント補強コンポジットファイバーから形成される。このメッシュ30は、上記ファイバーが補強されたコンポジットファイバーの一部分に沿ってとげ32を有し、その一方、このメッシュの中心は、とげのない部分36を含む。
【0072】
さらに、本開示のフィラメント補強コンポジットファイバーは、湿気障壁を提供し得る。ホイルおよび種々のプラスチック(例えば、ポリエチレン)を含む、当業者の範囲内の公知の材料を用いて梱包され得る。
【0073】
一旦、フィラメント補強コンポジットファイバーが構築されると、当業者の範囲内の任意の手段により滅菌され得、限定されるものではないが、それには、エチレンオキシド、電子ビーム(e−ビーム)、γ線照射、オートクレーブ処理などが含まれる。
【実施例】
【0074】
(実施例1)
PolysorbTMマルチフィラメント吸収性縫合糸を、オクチルシアノアクリレート中に浸漬した。このシアノアクリレートを硬化させ、フィラメント補強コンポジットファイバー縫合糸を提供した。シアノアクリレートが、編み組みのフィラメントが一緒に結合されるシアノアクリレートマトリックス材料内に包埋され、密着したコンポジットファイバーを生成するように、編み組まれた縫合糸の間隙の間に貫通された。とげを、ナイフブレードを用い、フィラメント補強コンポジットファイバーに沿って規則的な間隔をあけて手で切断した。
【0075】
(実施例2)
PolysorbTMマルチフィラメント吸収性縫合糸を、塩化メチレン中、2wt%トリクロサン溶液中に浸漬した。縫合糸を乾燥させ、そして塩化メチレンを溶媒蒸発し、編み組まれた縫合糸上にトリクロサン堆積物を得た。次いで、縫合糸をオクチルシアノアクリレート中に浸漬した。シアノアクリレートを硬化させ、フィラメント補強コンポジットファイバー縫合糸を提供した。シアノアクリレートが、編み組みのフィラメントが一緒に結合されるシアノアクリレートマトリックス材料内に包埋され、密着したコンポジットファイバーを生成するように、編み組まれた縫合糸の間隙の間に貫通された。とげを、ナイフブレードを用い、コンポジットマルチフィラメント縫合糸に沿って規則的な間隔をあけて手で切断した。サンプルを、抑止ゾーン(ZOI)を含むさらなる試験に供し、そこでは、上記フィラメント補強コンポジットファイバーは、ZOIを示した。
【0076】
本開示は、創傷閉鎖に限定されず、そして美容手順および整形外科手順のようなその他の手順を企図することに注意すべきである。さらに、上記の説明は多くの詳細を含み;これら詳細は、本明細書中の開示の範囲に対する制限として解釈されるべきではなく、その特定の有用な実施形態の単なる例示である。当業者は、本明細書に添付された請求項によって規定されるような本開示の範囲および思想内の多くのその他の可能性を想定する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、とげを含むメッシュに形成されるフィラメント補強コンポジットファイバーの実施形態を示す平面図である。
【図2】図2は、フィラメント補強コンポジットファイバー縫合糸の1つの実施形態を示す側面図である。
【図3A】図3A〜3Dは、フィラメント補強コンポジットファイバーの1つの実施形態を示す部分図である。
【図3B】図3A〜3Dは、フィラメント補強コンポジットファイバーの1つの実施形態を示す部分図である。
【図3C】図3A〜3Dは、フィラメント補強コンポジットファイバーの1つの実施形態を示す部分図である。
【図3D】図3A〜3Dは、フィラメント補強コンポジットファイバーの1つの実施形態を示す部分図である。
【図4】図4は、フィラメント補強コンポジットファイバー上にとげを形成する実施形態による方法を示す。
【図5】図5は、2方向のとげのある縫合糸を有するフィラメント補強コンポジットファイバー縫合糸のさらなる実施形態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0078】
10 フィラメント補強コンポジットファイバー
12 とげ
14 本体
16 ニードル
30 メッシュ
32 とげ
36 とげのない部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフィラメントおよび接着マトリックス材料を含むフィラメント補強コンポジットファィバーであって、その上の表面に形成された少なくとも1つの一体的なとげを有する、フィラメント補強コンポジットファィバー。
【請求項2】
前記接着マトリックス材料が、前記フィラメント補強コンポジットの全長の少なくとも5%を構成する、請求項1に記載のフィラメント補強コンポジットファィバー。
【請求項3】
請求項1に記載のフィラメント補強コンポジットを含む、メッシュ。
【請求項4】
前記複数のフィラメントの少なくとも1つが、吸収性である、請求項1に記載のフィラメント補強コンポジットファィバー。
【請求項5】
前記複数のフィラメントの少なくとも1つが、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン、バレロラクトン、トリメチレンカーボネート、1,4−ジオキサノン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、コラーゲン、ガット、ポリマー薬物、エチレングリコール、エチレンオキシド、エステルアミド、γ−ヒドロキシバレレート、β−ヒドロキシプロピオネート、α−ヒドロキシ酸、およびβ−ヒドロキシブテレート、コラーゲン、セルロース、ガット、およびそれらのコポリマーからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項4に記載のフィラメント補強コンポジットファィバー。
【請求項6】
前記複数のフィラメントの少なくとも1つが、非吸収性である、請求項1に記載のフィラメント補強コンポジットファィバー。
【請求項7】
前記複数のフィラメントの少なくとも1つが、シルク、綿、ゴム、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリエステルならびにそれらのコポリマーから選択されるポリマーを含む、請求項6に記載のフィラメント補強コンポジットファィバー。
【請求項8】
前記接着マトリックス材料が、モノマー、オリゴマー、ポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載のフィラメント補強コンポジットファィバー。
【請求項9】
前記接着マトリックス材料が、シアノアクリレート、ウレタン、アクリレート、フィブリン、アルブミン、トロンビン、ゼラチン、タンパク質、多糖、ラクチド、コラーゲン、およびカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーから形成されるポリマーを含む、請求項1に記載のフィラメント補強コンポジットファィバー。
【請求項10】
前記マトリックス材料が、メチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、オクチルシアノアクリレート、イソブチルシアノアクリレートおよびメトキシプロピルシアノアクリレートならびにそれらのコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つのシアノアクリレートを含む、請求項9に記載のフィラメント補強コンポジットファィバー。
【請求項11】
前記フィラメント補強コンポジットファィバーが、薬剤を含む、請求項1に記載のフィラメント補強コンポジットファィバー。
【請求項12】
前記フィラメント補強コンポジットファイバーが、脂肪酸エステルをさらに含む、請求項1に記載のフィラメント補強コンポジットファィバー。
【請求項13】
前記フィラメント補強コンポジットファイバーが、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ラクチド、グリコリド、およびカプロラクトンならびにそれらのコポリマーからなる群から選択されるコーティングをさらに含む、請求項1に記載のフィラメント補強コンポジットファイバー。
【請求項14】
前記フィラメント補強コンポジットファイバーが、クリップ、ファスナー、創傷用品、包帯、薬物送達デバイス、吻合リング、ステント、グラフト、カテーテル、組織足場、バットレス、ガーゼ、ラップバンド、テープ、またはリボンである、請求項1に記載のフィラメント補強コンポジットファイバー。
【請求項15】
前記フィラメント補強コンポジットファイバーが、薬剤をさらに含む、請求項1に記載のフィラメント補強コンポジットファイバー。
【請求項16】
複数のフィラメント、および接着マトリックス材料を含む縫合糸であって、その上の表面に形成された少なくとも1つの一体的なとげを規定する、縫合糸。
【請求項17】
少なくとも1つのニードルをさらに含む、請求項16に記載の縫合糸。
【請求項18】
医療用デバイスであって:
複数のフィラメント、および接着マトリックス材料を含むフィラメント補強コンポジットファイバーを含み;そして
ここで、該接着マトリックス材料が、該フィラメント補強コンポジットファイバーの全長の少なくとも5%の上に存在し;そして
該フィラメント補強コンポジットファイバーが、その中に結ばれた結び目を有し得る、医療用デバイス。
【請求項19】
前記接着マトリックス材料が、前記フィラメント補強コンポジットファイバーの全長の5%〜95%を構成する、請求項18に記載の医療用デバイス。
【請求項20】
前記接着マトリックス材料が、前記フィラメント補強コンポジットファイバーの全長の20%〜70%を構成する、請求項18に記載の医療用デバイス。
【請求項21】
前記フィラメント補強コンポジットファイバーが、縫合糸、メッシュ、クリップ、ファスナー、創傷用品、包帯、薬物送達デバイス、吻合リング、ステント、グラフト、カテーテル、組織操作足場、ガーゼ、ラップバンド、テープ、またはリボンである、請求項18に記載の医療用デバイス。
【請求項22】
前記フィラメント補強コンポジットファイバーが、薬剤をさらに含む、請求項18に記載の医療用デバイス。
【請求項23】
前記フィラメント補強コンポジットファイバーが、形状記憶ポリマーを含む、請求項18に記載の医療用デバイス。
【請求項24】
医療用デバイスを作製する方法であって:
複数のフィラメントに接着マトリックス材料を付与する工程であって、フィラメント補強コンポジットファイバーを提供する工程;および
該フィラメント補強コンポジットファイバーの表面上に少なくとも1つのとげをコーティングする工程、を包含する、方法。
【請求項25】
創傷を閉じるためのシステムであって、組織の第1の部分を通るように構成されたフィラメント補強コンポジットファイバーと;
該ファイバーが組織を出て創傷閉鎖を生成するように、該フィラメント補強コンポジットファイバーを組織の第2の部分を通って引くための手段と;
を備える、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−106750(P2009−106750A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277318(P2008−277318)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】