説明

フィラー、およびポリマーを含有する平膜の製造方法

【課題】
本発明は、フィラー、およびポリマーを含有する平膜であって、および両面が平滑な膜の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
フィラー、およびポリマーを含有する平膜の製造方法であって、
工程1:フィラー、ポリマー、および溶媒を含有する塗料組成物を、第1の基材の片面上、および第2の基材の片面上に、それぞれ塗布すること、
工程2:前記塗布された組成物から前記溶媒を蒸発させることによって、前記塗料組成物から、自立可能かつ可塑変形可能な塗膜を形成させること、および
工程3:第1の基材の表面上に形成された塗膜と第2の基材の表面上に形成された塗膜とを、各基材とは反対側の面が接触するように貼り合わせること
を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラー、およびポリマーを含有する平膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な技術分野で、フィラー、およびポリマーを含有し、かつ両面が平滑な平膜の開発が求められることがある。
その一例として、例えば、電気二重層キャパシタの電極膜が挙げられる。電気二重層キャパシタは、高比表面積を有する、導電フィラー含有電極を2枚対向させ、その間に電解質イオンを含む電解液を充填したセパレーターからなり、その電極/電解液界面に電荷を蓄える蓄電デバイスである。このようなキャパシタの特性を向上させるため、導電フィラーとしてカーボンナノチューブを、電解質塩としてイオン性液体を、およびセパレーターとしてイオン性液体を含浸できるゲルポリマーを用いたキャパシタが注目されている。電気二重層キャパシタは、通常、使用する電解液が電気分解しない低電圧で使用する必要があり、高電圧で使用する場合には、複数のキャパシタを直列に繋ぐ必要がある。この際、各キャパシタを電線で繋いでもよいが、電線を使用せずに、電極膜/電解膜/電極膜/電解膜/電極膜/‥‥‥‥/電解膜/電極膜のように積層することにより、小型で高電圧に耐える電気二重層キャパシタを得ることができる。電極膜の表面が平滑でないと本来の静電容量が得られないため、このようなキャパシタを製造するには、電極膜の両面が平滑である必要がある。
しかし、一般に、フィラー、およびポリマーを含有する平膜であって、および両面が平滑な膜を製造することは困難である。
例えば、カーボンフィラーを含有する電極の製造においては、カーボンフィラーと樹脂と溶剤とを混合して得られた塗料を、基板上に塗布する方法が用いられるが、電解膜が、得られた電極の基板側の表面とは接着するが、空気側であった表面とは接着しないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、フィラー、およびポリマーを含有する平膜であって、および両面が平滑な膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、鋭意検討の結果、
工程1:フィラー、ポリマー、および溶媒を含有する塗料組成物を、第1の基材の片面上、および第2の基材の片面上に、それぞれ塗布すること、
工程2:前記塗布された組成物から前記溶媒を蒸発させることによって、前記塗料組成物から、自立可能かつ可塑変形可能な塗膜を形成させること、および
工程3:第1の基材の表面上に形成された塗膜と第2の基材の表面上に形成された塗膜とを、各基材とは反対側の面が接触するように貼り合わせること
を含む方法によって、フィラー、およびポリマーを含有する平膜であって、および両面が平滑な膜を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
フィラー、およびポリマーを含有する平膜の製造方法であって、
工程1:フィラー、ポリマー、および溶媒を含有する塗料組成物を、第1の基材の片面上、および第2の基材の片面上に、それぞれ塗布すること、
工程2:前記塗布された組成物から前記溶媒を蒸発させることによって、前記塗料組成物から、自立可能かつ可塑変形可能な塗膜を形成させること、および
工程3:第1の基材の表面上に形成された塗膜と第2の基材の表面上に形成された塗膜とを、各基材とは反対側の面が接触するように貼り合わせること
を含む方法に関する。
本発明において、好ましくは、前記平膜は1〜50重量%のフィラーを含有する。
本発明において、好ましくは、前記平膜は電極膜である。
本発明において、好ましくは、前記フィラーは導電性フィラーである。
本発明において、好ましくは、前記導電性フィラーは、カーボンナノチューブである。
本発明において、好ましくは、前記ポリマーが含フッ素ポリマーである。
本発明において、好ましくは、前記含フッ素ポリマーは(CFCH)ユニットを含む。
本発明において、好ましくは、前記工程2において、塗料組成物中の溶媒/ポリマーの重量比が30〜3の範囲内になるように前記塗布された組成物から前記溶媒を蒸発させる。
本発明において、好ましくは、前記平膜は電解質塩を更に含有する。
【0005】
また、本発明は、本発明の方法で製造された平膜に関する。
本発明において、好ましくは、平膜は電極膜である。
【0006】
また、本発明は、本発明の電極膜と、当該電極膜の各面上に配置された2枚の電解質ポリマー層とを含有する電気化学デバイスに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フィラー、およびポリマーを含有する平膜であって、かつ両面が平滑な膜を製造することができる。
本発明の平膜は、両面が高度に平滑である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本発明の製造方法の一実施態様である、電解質膜W1の製造方法の概要を示すスキームである。
【図2】図2は本発明の電気化学デバイスの一実施態様である、積層体W1の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書中、「含フッ素」とは、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていること、すなわちフッ化されていることを意味する。
本明細書中、「エーテル結合を有する」とは、単結合の一部または全部がエーテル結合に置き換えられていること(言い換えれば、エーテル結合が挿入されていること)を意味する。
本明細書中、「有機基」とは、炭素を有する基を意味する。本明細書中、特に限定の無い限り、「有機基」の炭素数は、好ましくは、1〜100である。
【0010】
本発明の、フィラー、およびポリマーを含有する平膜の製造方法は、
工程1:フィラー、ポリマー、および溶媒を含有する塗料組成物を、第1の基材の片面上、および第2の基材の片面上に、それぞれ塗布すること、
工程2:前記塗布された組成物から前記溶媒を蒸発させることによって、前記塗料組成物から、自立可能かつ可塑変形可能な塗膜を形成させること、および
工程3:第1の基材の表面上に形成された塗膜と第2の基材の表面上に形成された塗膜とを、各基材とは反対側の面が接触するように貼り合わせること
を含む。
【0011】
本発明の製造方法は、前記平膜が1〜50重量%のフィラーを含有する平膜の製造にも、好適に適用される。
一般に、フィラーの含有量が高く、かつ両面が平滑である平膜を製造することは困難であるが、本発明の製造方法によれば、フィラーの含有量が1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは10〜30重量%である平膜であり、かつ両面が平滑である平膜を製造することができる。
【0012】
本発明の製造方法は、電極膜の製造に好適に適用される。電極膜が本来の性能を発揮するためには、高度に両面が平滑であることが求められるが、本発明の製造方法によれば、十分に両面が平滑である電極膜を製造することができる。
本明細書中、電極膜が本来の性能を発揮するために十分な平滑さとは、表面粗さRaが0.5μm以下であることをいう。なお、本明細書中、表面粗さRaは、JIS B0601:2001における「算術平均高さ」である。「表面粗さRa」は、市販の測定器(レーザー顕微鏡)によって測定される。
【0013】
以下に、本発明の製造方法の各工程について、詳細に説明する。
[工程1]
工程1は、フィラー、ポリマー、および溶媒を含有する塗料組成物を、第1の基材の片面上、および第2の基材の片面上に、それぞれ塗布する工程である。
工程1で用いられる塗料組成物は、後記で詳細に説明するフィラー、ポリマー、および所望により添加される他の成分を慣用の方法で溶媒中に溶解または分散させることにより、用意される。
例えば、ポリマーとして含フッ素ポリマーを用い、他の成分としてイオン性液体を添加する場合、均一な膜を得る観点から、好ましくは、フッ素樹脂とイオン性液体を溶媒に溶かし、次いで、当該溶液に導電性フィラーを分散させる。
工程1で用いられる第1の基材および第2の基材としては、表面が平滑なものであれば特に限定ないが、例えば、PTFEフィルムが好適に用いられる。
これらの基材の片面上に、前記の塗料組成物を、適当な器具を使用して塗布する。塗布は、例えば、塗料組成物を滴下し、その後必要に応じてブレード処理することによって、またはブレードを用いて塗布することによって、行うことができる。
【0014】
(塗料組成物)
工程1において用いられる塗料組成物は、フィラー、ポリマー、および溶媒を含有する。
また、工程1において用いられる塗料組成物は、所望により、その他の成分(例、電解質塩架橋剤、架橋促進剤、可塑剤、着色剤、および安定剤)を含有してもよい。
(I)フィラー
本発明で用いられるフィラーは、特に限定されるものではないが、本発明の製造方法で製造される平膜が電極膜などである場合、フィラーは、好ましくは導電性フィラーである。
【0015】
本発明で用いられる導電性フィラーの例としては、フェノール樹脂系活性炭、やしがら系活性炭、石油コークス系活性炭、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化メソカーボン小球体、黒鉛化ウィスカ、気層成長炭素繊維、フルフリルアルコール樹脂の焼成品またはノボラック樹脂の焼成品等のカーボンフィラー、および金属粉などが例示できるが、なかでも導電性ナノカーボン材および導電性金属ナノ粒子等の導電性ナノフィラーが好ましい。ここにいう「ナノフィラー」とは、少なくとも1つの部分がナノレベル(0.1nmから1000nm)の構造(粒子状、シート状、層状、針状、棒状、繊維状、筒状)を有するフィラーを意味する。以下、各導電性ナノフィラーについて詳述する。
【0016】
(A)導電性ナノカーボン材
ナノレベルの構造を有する炭素原子から構成される化合物のうち導電性をもつ化合物であり、具体的には以下のものが例示できる。
【0017】
(A−1)フラーレン
球状に結合した構造をもつ炭素数が60以上の炭素分子である。
【0018】
(A−2)カーボンナノボール(カーボンブラック)
炭化水素化合物の不完全燃焼物が熱分解することにより生成される黒色から帯灰黒色の粉末である。
【0019】
(A−3)カーボンナノファイバー
鉄やコバルトなどの金属触媒を用いて気相の炭素源を適切な条件下で熱分解することにより合成される。繊維状炭素の組織としては、炭素網面の繊維軸に対する配向が平行(リボン型)、垂直(プレートレット型)、傾斜(へリングボーン型)の3種類が主に知られている。
【0020】
(A−4)カーボンナノチューブ(CNT)
カーボンナノファイバーの一種である。炭素によって形成される六員環ネットワーク(グラフェンシート)が単層あるいは多層の同軸管状になった“フラーレン”フラーレンの一種である。単層のものをシングルウォールナノチューブ(SWNT)、複層のものをマルチウォールナノチューブ(MWNT)という。特に二層のものはダブルウォールナノチューブ(DWNT)とも呼ばれる。
【0021】
(A−5)カーボンナノホーン(CNH)
カーボンナノファイバーの一種である。炭素によって形成される六員環ネットワーク(グラフェンシート)が通常多層の角(ホーン)状に繋がった炭素構造物である。
【0022】
なお、これらのナノカーボン材としては、化学工業56巻、P50−62(2005)に記載されるものや、Langmuir、11巻、P3682−3866(1995)に記載のものなども挙げられる。そして、これらナノカーボン材の中では、カーボンナノファイバーが好ましく、さらにカーボンナノチューブが特に好ましい。
【0023】
(B)導電性金属ナノ粒子
粒径が1nm〜100nmの金属粒子である。金属ナノ粒子の構成金属は、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム、アルミニウム、スズ、亜鉛、鉛、チタンおよび、タンタルの金属からなるナノ粒子または、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム、アルミニウム、スズ、亜鉛、鉛、チタン、タンタル、および炭素のうちから選択される二種以上の金属からなる合金からなるナノ粒子を利用することでき、目的・用途に合わせて適宜選定する。
【0024】
これらの導電性ナノフィラーは使用する環境により適宜選択すればよいが、高導電性であって高比表面積のものが好ましい。なかでも、表面積が大きいことと、量子効果などにより高い伝導性を有する点で、導電性ナノカーボン材、さらにはカーボンナノチューブが好ましい。実用に供されるカーボンナノチューブの好適な例として、一酸化炭素を原料として比較的量産が可能なHiPco(カーボン・ナノテクノロジー・インコーポレーテッド社製)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0025】
工程1に用いられる塗料組成物は、本発明の製造方法によって製造される平膜におけるフィラーの含有率が1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは10〜30重量%となるように、フィラーを含有する。
【0026】
(II)ポリマー
本発明で用いられるポリマーは、特に限定されないが、含フッ素ポリマーが好ましい。本発明の製造方法で製造される平膜が電極膜などである場合、当該ポリマーには、化学的・電気化学的な耐久性が求められる。また、後述するように本発明の方法で製造される平膜が電解質塩としてのイオン性液体を含有する場合、これとの相溶性も求められる。このような観点からは、本発明で用いられるポリマーとしては、極性を持ったポリマーが好ましく、その例としては、例えば、極性を持つ含フッ素(共)重合体、ポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリレート(poly−HEMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのポリ(メタ)アクリレート類、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)などが挙げられる。なかでも、極性を持つ含フッ素(共)重合体が好ましい。
なお、本明細書中、ポリマーの構造式において、当業者に明らかなように、特に記載のない限り、各構造単位は、任意の組み合わせおよび順序で結合していてもよい。
【0027】
極性を持つ含フッ素(共)重合体として好ましくは、例えば、下記で説明する含フッ素ポリマー(I)、および官能基含有含フッ素ポリマー(Ia)〜(Id)が挙げられる。
(含フッ素ポリマー(I))
本発明で使用可能な含フッ素ポリマー(I)は、ビニリデンフルオライド由来の構造単位を有する、式(1):
【化1】

(式中、
構造単位Mはビニリデンフルオライド(m)由来の構造単位であり、
構造単位Nは単量体(m)と共重合可能な単量体(n)由来の繰り返し単位である。)で表される含フッ素ポリマーである。
単量体(n)としては、単量体(m)と共重合可能なものであれば、いかなるものでもよいが、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、およびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)等の含フッ素単量体;並びに、例えばエチレン、プロピレン、およびアルキルビニルエーテル等の非含フッ素単量体が挙げられる。
【0028】
(官能基含有含フッ素ポリマー(Ia)〜(Id))
極性を持つ含フッ素(共)重合体として好ましくは、また、例えば、下記で説明する官能基含有含フッ素ポリマー(Ia)〜(Id)等の官能基含有含フッ素ポリマーも挙げられる。
【0029】
本発明で使用可能な官能基含有含フッ素ポリマーの第1としては、式(2):
【0030】
【化2】

(式中、XおよびXは同じかまたは異なり、HまたはF;XはH、F、CHまたはCF;XおよびXは同じかまたは異なり、H、FまたはCF;Rfは官能基Y(Yは同じかまたは異なりいずれも−OH、−COOH、−COOR、−CN、ヨウ素原子、エポキシ基または(メタ)アクリロイル基)を1〜5個有し、官能基に含まれる炭素数を除く炭素数が1〜50の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基;aは0〜10の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位、構造単位Aは該式(M)で示される含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位Mを0.1〜100モル%および構造単位Aを0〜99.9モル%含む官能基含有含フッ素ポリマー(Ia)が挙げられる。このように官能基含有含フッ素ポリマー(Ia)には、パーフルオロスルホン酸ポリマーは含まれない。
【0031】
本発明において、式(2)の官能基含有含フッ素ポリマー(Ia)における構造単位Mは、なかでも式(3)で示される構造単位M1:
【0032】
【化3】

(式中、X、X、X、X、X、Rf、aおよびcは前記と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位が好ましい。
【0033】
この構造単位M1を含む共重合体は、官能基含有含フッ素ポリマー(Ia)のイオン性液体への相溶性を上げることで、イオン伝導性を向上させ、応答速度、駆動幅を上げるだけでなく、弾性率の制御や密着性などの性能を付与させるのに、好ましいものである。
【0034】
この構造単位M1を含む重合体は、特に共重合体に限らず、構造単位M1のみからなるホモポリマーにおいても好ましいものである。
【0035】
さらに構造単位M1のより好ましい具体例は式(4)で示される構造単位M2:
【0036】
【化4】

(式中、Rfは前記と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位である。
【0037】
この構造単位M2は特定の官能基を少なくとも1個有する含フッ素アリルエーテル由来の構造単位であり、イオン性液体の相溶性を上げるだけでなく、重合性が良好であり、特にホモ重合性および他の含フッ素エチレン系単量体との共重合性が良好であるため好ましい。
【0038】
また、構造単位M1の別の好ましい具体例は式(5)で示される構造単位M3:
【0039】
【化5】

(式中、Rfは前記と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位である。
【0040】
この構造単位M3は特定の官能基を少なくとも1個有する含フッ素ビニルエーテル由来の構造単位であり、イオン性液体の相溶性を上げることができ、また他の含フッ素エチレン系単量体との共重合性が良好である点で好ましい。
【0041】
本発明で使用する式(2)の官能基含有含フッ素ポリマー(Ia)において構造単位M、M1、M2およびM3に含まれるRfは、前記のとおり、特定の官能基Yを1〜5個有し、該官能基中の炭素を除く炭素数1〜50の含フッ素アルキル基または該官能基中の炭素を除く炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基である。
【0042】
このRf中の官能基Yは、−OH、−COOH、−COOR、−CN、ヨウ素原子、エポキシ基または(メタ)アクリロイル基であり、複数含有している場合は同じでも異なっていてもよい。
【0043】
また、官能基Yを除いたRfは、炭素数1〜49の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜99のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基であり、含まれる炭素原子にフッ素原子が結合していればよく、一般に、炭素原子にフッ素原子と水素原子もしくは塩素原子が結合した含フッ素アルキレン基またはエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。
【0044】
官能基Yを除くRf基の炭素数は大きすぎると、含フッ素アルキレン基の場合は官能基含有含フッ素ポリマー(Ia)のイオン性液体への溶解性が低下することがあり、好ましくない。含フッ素アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10である。エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は好ましくは2〜30、より好ましくは2〜20である。
【0045】
官能基Yを除くRf基の好ましい具体例としては、
【0046】
−(CF−(CH−、
−[CF2CF(CF3)]−(CH−、
−(CH2CF−(CH−、
−(CH2−C(CF
(mは1〜10の整数、nは0〜5の整数)、
−(CF2CF−[CF2CF(CF3)]−(CH−、
−(CF2CF−(CH2CF−(CH−、
−(CF2−C(CF−、
−(CH2CF−[CF2CF(CF3)]−(CH
(lは1〜10の整数、mは1〜10の整数、nは0〜5の整数)、
【化6】

(XおよびXは同じかまたは異なり、FまたはCF;XおよびXは同じかまたは異なり、HまたはF;0+p+qは1〜30;rは0または1;s,tは0または1)
などが挙げられる。
【0047】
前述のとおり、本発明で用いる官能基含有含フッ素ポリマー(Ia)を構成する構造単位Mは構造単位M1が好ましく、構造単位M1はさらに構造単位M2および構造単位M3が好ましい。そこで、つぎに構造単位M2およびM3の具体例について述べる。
【0048】
構造単位M2を与える単量体として好ましい具体例としては、特定の官能基含有部分をRf′で示すと
CH=CFCFO[CF(CF)CFO]CF(CF)−(CF−Rf′(mは0〜10の整数;nは0〜8の整数)、
CH=CFCFO[CF(CF)CFO]CF(CF)−(CF−(CH−Rf′(lは1〜4の整数;mは0〜10の整数;nは0〜8の整数)、
CH=CFCFO(CFCFO)−(CF−Rf′(mは0〜8の整数;nは0〜8の整数)、
CH=CFCFO(CFCFO)−(CF−(CH−Rf′(lは1〜4の整数;mは0〜10の整数;nは0〜8の整数)
などが挙げられる。
【0049】
より具体的には、
CH=CFCFO[CF(CF)CFO]CF(CF)−(CF−I(nは0〜8の整数;mは0〜10の整数)、
CH=CFCFO[CF(CF)CFO]CF(CF)COR(nは0〜8の整数;Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基)、
CH=CFCFO[CF(CF)CFO]CF(CF)CHOH(nは0〜8の整数)、
CH=CFCFO[CF(CF)CFO]CF(CF)CN(nは0〜8の整数)、
【0050】
【化7】

(nは0〜8の整数;lは0〜4の整数)
CH=CFCFO(CFCFO)−(CF−I(nは0〜8の整数;mは0〜10の整数)、
CH=CFCFO(CFCFO)−(CF−COR(nは0〜8の整数;mは0〜10の整数;Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基)、
CH=CFCFO(CFCFO)−(CF−CHOH(nは0〜8の整数;mは0〜10の整数)、
CH=CFCFO(CFCFO)−(CF−CN(nは0〜8の整数;mは0〜10の整数)、
【0051】
【化8】

(nは0〜8の整数;mは0〜10の整数;lは0〜4の整数)
などが挙げられる。
【0052】
構造単位M3を与える単量体として好ましい具体例としては、特定の官能含有部分をRf′で示すと、
CF=CF[OCFCF(CF)]−(CF−Rf′(nは0〜8の整数;mは0〜10の整数)、
CF=CF[OCFCF(CF)]−(CF−(CH−Rf′(lは1〜4の整数;nは0〜8の整数;mは0〜10の整数)、
CF=CF(OCFCFO(CF−Rf′(nは0〜8の整数;mは0〜10の整数)、
CF=CF(OCFCFO(CF−(CH−Rf′(lは1〜4の整数;nは0〜8の整数;mは0〜10の整数)
などが挙げられる。
【0053】
より具体的には、
CF=CF[OCFCF(CF)]−(CF−I(nは0〜8の整数;mは0〜10の整数)、
CF=CF[OCFCF(CF)]−(CF−COR(nは0〜8の整数;mは0〜10の整数;RはHまたは炭素数1〜20の炭化水素基)、
CF=CF[OCFCF(CF)]−(CF−CN(nは0〜8の整数;mは0〜10の整数)、
CF=CF[OCFCF(CF)]−(CF−CHOH(nは0〜8の整数;mは0〜10の整数)、
【0054】
【化9】

(nは0〜8の整数;mは0〜10の整数;lは0〜4の整数)、
CF=CF(OCFCFO(CF−I(nは0〜8の整数;mは0〜10の整数)、
CF=CF(OCFCFO(CF−COR(nは0〜8の整数;mは0〜10の整数;Rは水素原子またはハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基)、
CF=CF(OCFCFO(CF−CN(nは0〜8の整数;mは0〜10の整数)、
CF=CF(OCFCFO(CF−CHOH(nは0〜8の整数;mは0〜10の整数)、
【0055】
【化10】

(nは0〜8の整数;mは0〜10の整数;lは0〜4の整数)
などが挙げられる。
【0056】
これらの構造単位M2およびM3以外に、官能基含有フッ素ポリマー(Ia)の構造単位Mを構成する単量体の好ましい具体例としては、例えば特定の官能基含有部分をRf′で示すと、
CH=CF(Rf−Rf′(RfはCF、CH、CFCFCl、CFCF(CF)、CFCH;nは0〜20の整数)、
CH=CF(Rf−(CH−Rf′(RfはCF、CH、CFCFCl、CFCF(CF)、CFCH;lは1〜4の整数;nは0〜20の整数)、
CF=CF(Rf−Rf′(RfはCF、CH、CFCFCl、CFCF(CF)、CFCH;nは0〜20の整数)、
CF=CF(Rf−(CH−Rf′(RfはCF、CH、CFCFCl、CFCF(CF)、CFCH;lは1〜4の整数;nは0〜20の整数)、
CH=CH(Rf−Rf′(RfはCF、CH、CFCFCl、CFCF(CF)、CFCH;nは0〜20の整数)、
CH=CH(Rf−(CH−Rf′(RfはCF、CH、CFCFCl、CFCF(CF)、CFCH;lは1〜4の整数;nは0〜20の整数)、
CH=CF(CFO[CF(CF)CFO]CF(CF)−(CF−Rf′(nは0〜10の整数;mは0〜8の整数;pは0〜10の整数)、
CH=CF(CFO[CF(CF)CFO]CF(CF)−(CF−(CH−Rf′(lは1〜4の整数;nは0〜10の整数;mは0〜8の整数;pは0〜10の整数)、
CF=CF(CFO[CF(CF)CFO]CF(CF)−(CF−Rf′(nは0〜10の整数;mは0〜8の整数;pは0〜10の整数)、
CF=CF(CFO[CF(CF)CFO]CF(CF)−(CF−(CH−Rf′(lは1〜4の整数;nは0〜10の整数;mは0〜8の整数;pは0〜10の整数)、
CH=CH(CFO[CF(CF)CFO]CF(CF)−(CF−Rf′(nは0〜10の整数;mは0〜8の整数;pは0〜10の整数)、
CH=CH(CFO[CF(CF)CFO]CF(CF)−(CF−(CH−Rf′(lは1〜4の整数;nは0〜10の整数;mは0〜8の整数;pは0〜10の整数)、
CH=CF(CFO(CFCFO)(CF−Rf′(nは0〜10の整数;mは0〜8の整数;pは0〜10の整数)、
CH=CF(CFO(CFCFO)(CF−(CH−Rf′(lは1〜4の整数;nは0〜10の整数;mは0〜8の整数;pは0〜10の整数)、
CF=CF(CFO(CFCFO)(CF−Rf′(nは0〜10の整数;mは0〜8の整数;pは0〜10の整数)、
CF=CF(CFO(CFCFO)(CF−(CH−Rf′(lは1〜4の整数;nは0〜10の整数;mは0〜8の整数;pは0〜10の整数)、
CH=CH(CFO(CFCFO)(CF−Rf′(nは0〜10の整数;mは0〜8の整数;pは0〜10の整数)、
CH=CH(CFO(CFCFO)(CF−(CH−Rf′(lは1〜4の整数;nは0〜10の整数;mは0〜8の整数;pは0〜10の整数)、
CH=CF−C−Rf′(XはHまたはF)、
CH=CF−C−(CH−Rf′(XはHまたはF;nは1〜10の整数)、
CF=CF−C−Rf′(XはHまたはF)、
CF=CF−C−(CH−Rf′(XはHまたはF;nは1〜10の整数)、
CH=CH−C−Rf′(XはHまたはF)、
CH=CH−C−(CH−Rf′(XはHまたはF;nは1〜10の整数)、
CH=CX−CO−(CH−(CF−(CH−Rf′(XはFまたはCF;lは1〜4の整数;nは0〜10の整数;mは0〜4の整数)などが挙げられる。
【0057】
より具体的には、
CH=CF(CF−I(nは0〜20の整数)、
CH=CF(CF−COR(nは0〜20の整数;RはHまたは炭素数1〜20の炭化水素基)、
CH=CF(CF−CN(nは0〜20の整数)、
CH=CF(CF−CHOH(nは0〜20の整数)、
【0058】
【化11】

(nは0〜20の整数;lは0〜4の整数)、
CH=CF(CFCFCl)−(CF−I(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数)、
CH=CF(CFCFCl)−(CF−COR(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数;RはHまたは炭素数1〜20の炭化水素基)、
CH=CF(CFCFCl)−(CF−CN(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数)、
CH=CF(CFCFCl)−(CF−CHOH(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数)、
【0059】
【化12】

(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数;lは0〜4の整数)、
CH=CF(CHCF−(CF−I(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数)、
CH=CF(CHCF−(CF−COR(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数;RはHまたは炭素数1〜20の炭化水素基)、
CH=CF(CHCF−(CF−CN(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数)、
CH=CF(CHCF−(CF−CHOH(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数)、
【0060】
【化13】

(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数;lは0〜4の整数)、
CF=CF(CF−I(nは0〜20の整数)、
CF=CF(CF−COR(nは0〜20の整数;RはHまたは炭素数1〜20の炭化水素基)、
CF=CF(CF−CN(nは0〜20の整数)、
CF=CF(CF−CHOH(nは0〜20の整数)、
【0061】
【化14】

(nは0〜20の整数;lは0〜4の整数)、
CF=CF(CFCFCl)−(CF−I(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数)、
CF=CF(CFCFCl)−(CF−COR(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数;RはHまたは炭素数1〜20の炭化水素基)、
CF=CF(CFCFCl)−(CF−CN(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数)、
CF=CF(CFCFCl)−(CF−CHOH(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数)、
【0062】
【化15】

(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数;lは0〜4の整数)、
CF=CF(CHCF−(CF−I(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数)、
CF=CF(CHCF−(CF−COR(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数;RはHまたは炭素数1〜20の炭化水素基)、
CF=CF(CHCF−(CF−CN(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数)、
CF=CF(CHCF−(CF−CHOH(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数)、
【0063】
【化16】

(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数;lは0〜4の整数)、
CH=CH(CF−I(nは0〜20の整数)、
CH=CH(CF−COR(nは0〜20の整数;RはHまたは炭素数1〜20の炭化水素基)、
CH=CH(CF−CN(nは0〜20の整数)、
CH=CH(CF−CHOH(nは0〜20の整数)、
【0064】
【化17】

(nは0〜20の整数;lは0〜4の整数)、
CH=CH(CFClCF−(CF−I(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数)、
CH=CH(CFClCF−(CF−COR(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数;RはHまたは炭素数1〜20の炭化水素基)、
CH=CH(CFClCF−(CF−CN(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数)、
CH=CH(CFClCF−(CF−CHOH(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数)、
【0065】
【化18】

(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数;lは0〜4の整数)、
CH=CH(CFCH−(CF−I(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数)、
CH=CH(CFCH−(CF−COR(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数;RはHまたは炭素数1〜20の炭化水素基)、
CH=CH(CFCH−(CF−CN(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数)、
CH=CH(CFCH−(CF−CHOH(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数)、
【0066】
【化19】

(nは1〜10の整数;mは0〜10の整数;lは0〜4の整数)、
CH=CF−C−I(XはHまたはF)、
CH=CF−C−COR(XはHまたはF;Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基)、
CH=CF−C−CN(XはHまたはF)、
CH=CF−C−OH(XはHまたはF)、
CH=CF−C−CYOH(XはHまたはF;YはHまたはCF)、
【0067】
【化20】

(XはHまたはF;YはHまたはCF;lは0〜8の整数)、
CH=CF−O−C(XはHまたはF)、
CH=CF−O−C−I(XはHまたはF)、
CH=CF−O−C−COR(XはHまたはF;Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基)、
CH=CF−O−C−CN(XはHまたはF)、
CH=CF−O−C−OH(XはHまたはF)、
CH=CF−O−C−CYOH(XはHまたはF;YはHまたはCF)、
【0068】
【化21】

(XはHまたはF;YはHまたはCF;lは0〜8の整数)、
CF=CF−C(XはHまたはF)、
CF=CF−C−I(XはHまたはF)、
CF=CF−C−COR(XはHまたはF;Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基)、
CF=CF−C−CN(XはHまたはF)、
CF=CF−C−OH(XはHまたはF)、
CF=CF−C−CYOH(XはHまたはF;YはHまたはCF)、
【0069】
【化22】

(XはHまたはF;YはHまたはCF;lは0〜8の整数)、
CF=CF−O−C(XはHまたはF)、
CF=CF−O−C−I(XはHまたはF)、
CF=CF−O−C−COR(XはHまたはF;Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基)、
CF=CF−O−C−CN(XはHまたはF)、
CF=CF−O−C−OH(XはHまたはF)、
【0070】
【化23】

(XはHまたはF;lは0〜8の整数)、
CF=CF−O−C−CYOH(XはHまたはF;YはHまたはCF)、
【0071】
【化24】

(XはHまたはF;YはHまたはCF;lは0〜8の整数)、
CH=CH−C(XはHまたはF)、
CH=CH−C−I(XはHまたはF)、
CH=CH−C−COR(XはHまたはF;Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基)、
CH=CH−C−CN(XはHまたはF)、
CH=CH−C−OH(XはHまたはF)、
【0072】
【化25】

(XはHまたはF;lは0〜8の整数)、
CH=CH−C−CYOH(XはHまたはF;YはHまたはCF)、
【0073】
【化26】

(XはHまたはF;YはHまたはCF;lは0〜8の整数)、
CH=CH−O−C(XはHまたはF)、
CH=CH−O−C−I(XはHまたはF)、
CH=CH−O−C−COR(XはHまたはF;Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基)、
CH=CH−O−C−CN(XはHまたはF)、
CH=CH−O−C−OH(XはHまたはF)、
【0074】
【化27】

(XはHまたはF;lは0〜8の整数)、
CH=CH−O−C−CYOH(XはHまたはF;YはHまたはCF)、
【0075】
【化28】

(XはHまたはF;YはHまたはCF;lは0〜8の整数)、
CH=CF−CO−(CH−(CF−(CH−I(lは1〜4の整数;nは0〜10の整数;mは0〜4の整数)、
CH=CF−CO−(CH−(CF−(CH−COR(lは1〜4の整数;nは0〜10の整数;mは0〜4の整数;Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基)、
CH=CF−CO−(CH−(CF−(CH−CN(lは1〜4の整数;nは0〜10の整数;mは0〜4の整数)、
CH=CF−CO−(CH−(CF−(CH−OH(lは1〜4の整数;nは0〜10の整数;mは0〜4の整数)、
【0076】
【化29】

(lは1〜4の整数;nは0〜10の整数;mは0〜4の整数;pは0〜4の整数)、
CH=C(CF)−CO−(CH−(CF−(CH−I(lは1〜4の整数;nは0〜10の整数;mは0〜4の整数)、
CH=C(CF)−CO−(CH−(CF−(CH−COR(lは1〜4の整数;nは0〜10の整数;mは0〜4の整数;Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基)、
CH=C(CF)−CO−(CH−(CF−(CH−CN(lは1〜4の整数;nは0〜10の整数;mは0〜4の整数)、
CH=C(CF)−CO−(CH−(CF−(CH−OH(lは1〜4の整数;nは0〜10の整数;mは0〜4の整数)、
【0077】
【化30】

(lは1〜4の整数;nは0〜10の整数;mは0〜4の整数;pは0〜4の整数)
などが挙げられる。
【0078】
式(2)の官能基含有含フッ素ポリマー(Ia)において、構造単位M、M1、M2およびM3に含まれるYが(メタ)アクリロイル基Yの場合は、末端がエチレン性炭素−炭素二重結合となっており、これを含フッ素プレポリマー(IA)の形態で使用することもできる。
【0079】
このY中の炭素−炭素二重結合はラジカル重合、カチオン重合などを起こす能力を有し、硬化(架橋)体を与えることができるものである。詳しくは、例えばラジカルやカチオンの接触によって、含フッ素プレポリマー(IA)分子間で、または含フッ素プレポリマー(IA)と必要に応じて加えられる硬化(架橋)剤との間で重合反応や環化反応を起こし、硬化(架橋)物を与えることができるものである。
【0080】
好ましいYの第1としては、
【0081】
【化31】

(式中、Yは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜5のアルケニル基または含フッ素アルケニル基;dおよびeは同じかまたは異なり、0または1)である。
【0082】
好ましいYとしては、
−CX30=CX3132
(式中、X30はH、F、CHまたはCF;X31およびX32は同じかまたは異なり、HまたはF)であり、この基はラジカルやカチオンの接触による硬化反応性が高く、好ましいものである。
【0083】
好ましいYの具体例としては、
【0084】
−CH=CH、−CF=CH、−C(CH)=CH、−CF=CF
などが挙げられる。
【0085】
また好ましいYの第2としては、
−O−C(=O)−CX30=CX3132
(式中、X30はH、F、CHまたはCF;X31およびX32は同じかまたは異なり、HまたはF)があげられ、この基は特にラジカルの接触による硬化反応性がより高い点で好ましく、光硬化などにより容易に硬化物を得ることができる点で好ましい。
【0086】
上記好ましいYの第2の具体例としては、
−O−CO−CH=CH、−O−CO−C(CH)=CH、−O−CO−CF=CH
−O−CO−C(CF)=CH、−O−CO−CF=CF
などが挙げられる。
【0087】
その他の好ましいYとしては、
【化32】

などが挙げられる。
【0088】
のなかでも、−O−CO−CH=CH、−O−CO−C(CH)=CH、−O−CO−CF=CH、−O−CO−C(CF)=CHの構造を有するものが、硬化(架橋)反応性が特に高く、効率よく硬化物を得ることができる点で好ましい。
【0089】
なお、(メタ)アクリロイル基Yは、ポリマー主鎖末端に導入してもよい。
【0090】
本発明で用いる官能基含有含フッ素ポリマー(Ia)において、構造単位Aは任意成分であり、構造単位M、M1、M2またはM3と共重合し得る単量体であれば特に限定されず、目的とする官能基含有含フッ素ポリマー(Ia)の要求特性などに応じて適宜選択すればよい。
【0091】
構造単位Aとして、例えばつぎの構造単位が例示できる。
(i)特定の官能基Yを含有していない官能基を有する含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位
これらは、官能基含有含フッ素ポリマー(Ia)およびその組成物のイオン性液体との相溶性を維持しながら、基材への密着性や溶剤、特に汎用溶剤への溶解性を付与できる点で好ましく、そのほか架橋性などの機能を付与できる点で好ましい。
【0092】
官能基を有する好ましい含フッ素エチレン性単量体の構造単位は、式(6):
【0093】
【化33】

(式中、XおよびXは同じかまたは異なり、HまたはF;XはH、F、CHまたはCF;XおよびXは同じかまたは異なり、H、FまたはCF;Rfは官能基Z(Zは同じかまたは異なりいずれも−OH、−COOH、−COOR、−CN、ヨウ素原子、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基またはスルホニル基以外の官能基)を1〜5個有し、官能基に含まれる炭素数を除く炭素数が1〜50の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基;aは0〜10の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)。Zとしては、アミノ基、アミン誘導体基、アルコキシル基、アシロキシル基、ホルミル基、アシル基、チオール基、リン酸基、リン酸エステル基、フェニル基、シリル基、シロキシ基などが例示できる。
【0094】
なかでも、
CH=CFCFORf13−Z
(式中、Rf13は炭素数1〜40の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;Zは前記と同じ)から誘導される構造単位が好ましい。
【0095】
より具体的には、
CH=CFCFO[CF(CF)CFO]CF(CF)−(CF−Z(mは0〜10の整数;nは0〜8の整数)、
CH=CFCFO[CF(CF)CFO]CF(CF)−(CF−(CH−Z(lは1〜4の整数;mは0〜10の整数;nは0〜8の整数)、
CH=CFCFO(CFCFO)−(CF−Z(mは0〜10の整数;nは0〜8の整数)、
CH=CFCFO(CFCFO)−(CF−(CH−Z(lは1〜4の整数;mは0〜10の整数;nは0〜8の整数)
などが挙げられる。
(式中、Zは前記と同じ)などの含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位が好ましく挙げられる。
【0096】
また、
CF=CFORf13−Z
(式中、Rf13およびZは前記と同じ)から誘導される構造単位も好ましく例示でき、より具体的には、
CF=CF[OCFCF(CF)]−(CF−Z(nは0〜8の整数;mは0〜10の整数)、
CF=CF[OCFCF(CF)]−(CF−(CH−Z(lは1〜4の整数;nは0〜8の整数;mは0〜10の整数)、
CF=CF(OCFCFO(CF−Z(nは1〜8の整数;mは0〜10の整数)、
CF=CF(OCFCFO(CF−(CH−Z(lは1〜4の整数;nは0〜8の整数;mは0〜10の整数)
(式中、Zは前記と同じ)などの単量体から誘導される構造単位が挙げられる。
【0097】
その他、官能基含有含フッ素エチレン性単量体としては、
CH=CF−Rf20−Z
CF=CF−Rf20−Z
CH=CH−Rf20−Z
CH=CF(CFO−Rf20−Z(nは0〜10の整数)、
CF=CF(CFO−Rf20−Z(nは0〜10の整数)、
CH=CH(CFO−Rf20−Z(nは0〜10の整数)、
CH=CF−CO−Rf20−Z
CH=C(CF)−CO−Rf20−Z
(Rf20は炭素数1〜40の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基)などがあげられ、より具体的には、
CH=CF(Rf−Z(RfはCF、CH、CFCFCl、CFCF(CF)、CFCH;nは0〜20の整数)、
CH=CF(Rf−(CH−Z(RfはCF、CH、CFCFCl、CFCF(CF)、CFCH;lは1〜4の整数;nは0〜20の整数)、
CF=CF(Rf−Z(RfはCF、CH、CFCFCl、CFCF(CF)、CFCH;nは0〜20の整数)、
CF=CF(Rf−(CH−Z(RfはCF、CH、CFCFCl、CFCF(CF)、CFCH;lは1〜4の整数;nは0〜20の整数)、
CH=CH(Rf−Z(RfはCF、CH、CFCFCl、CFCF(CF)、CFCH;nは0〜20の整数)、
CH=CH(Rf−(CH−Z(RfはCF、CH、CFCFCl、CFCF(CF)、CFCH;lは1〜4の整数;nは0〜20の整数)、
CH=CF(CFO[CF(CF)CFO]CF(CF)−(CF−Z(nは0〜10の整数;mは0〜8の整数;pは0〜10の整数)、
CH=CF(CFO[CF(CF)CFO]CF(CF)−(CF−(CH−Z(lは1〜4の整数;nは0〜10の整数;mは0〜8の整数;pは0〜10の整数)、
CF=CF(CFO[CF(CF)CFO]CF(CF)−(CF−Z(nは0〜10の整数;pは0〜10の整数;mは0〜8の整数)、
CF=CF(CFO[CF(CF)CFO]CF(CF)−(CF−(CH−Z(lは1〜4の整数;nは0〜10の整数;mは0〜8の整数;pは0〜10の整数)、
CH=CH(CFO[CF(CF)CFO]CF(CF)−(CF−Z(nは0〜10の整数;mは0〜10の整数;pは0〜8の整数)、
CH=CH(CFO[CF(CF)CFO]CF(CF)−(CF−(CH−Z(lは1〜4の整数;nは0〜10の整数;mは0〜8の整数;pは0〜10の整数)、
CH=CF(CFO(CFCFO)(CF−Z(nは0〜10の整数;mは0〜8の整数;pは0〜10の整数)、
CH=CF(CFO(CFCFO)(CF−(CH−Z(lは1〜4の整数;nは0〜10の整数;mは0〜8の整数;pは0〜10の整数)、
CF=CF(CFO(CFCFO)(CF−Z(nは0〜10の整数;mは0〜8の整数;pは0〜10の整数)、
CF=CF(CFO(CFCFO)(CF−(CH−Z(lは1〜4の整数;nは0〜10の整数;mは0〜8の整数;pは0〜10の整数)、
CH=CH(CFO(CFCFO)(CF−Z(nは0〜10の整数;mは0〜8の整数;pは0〜10の整数)、
CH=CH(CFO(CFCFO)(CF−(CH−Z(lは1〜4の整数;nは0〜10の整数;mは0〜8の整数;pは0〜10の整数)、
CH=CF−C−Z(XはHまたはF)
CH=CF−C−(CH−Z(XはHまたはF;nは1〜10の整数)
CF=CF−C−Z(XはHまたはF)
CF=CF−C−(CH−Z(XはHまたはF;nは1〜10の整数)
CH=CH−C−Z(XはHまたはF)
CH=CH−C−(CH−Z′(XはHまたはF;nは1〜10の整数)
CH=CX−CO−(CH−(CF−(CH−Z(XはFまたはCF;lは1〜4の整数;nは0〜10の整数;mは0〜4の整数)などが挙げられる
(式中、Zは前記と同じ)などが挙げられる。
【0098】
(ii)官能基を含まない含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位
これらは官能基含有含フッ素ポリマーまたはその硬化物の耐酸化性、耐熱性、高応答性、機械的強度などを向上させることができる点で好ましい。目的とする用途によって単量体を種々選択でき、伸び、降伏強さ、硬度、誘電率、弾性率、加工性、耐熱性、結晶度、ガラス転移点などを調整でき、特に構造単位Mと共重合して、機械的特性を幅広く制御することができ、好ましいものである。
【0099】
この含フッ素エチレン性単量体(ii)の構造単位としては、式(7):
【0100】
【化34】

(式中、X15、X16およびX18は同じかまたは異なり、HまたはF;X17はH、FまたはCF;h1、i1およびjは同じかまたは異なり、0または1;ZはH、FまたはCl;Rf14は炭素数1〜20の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基)で示されるものが好ましい。
【0101】
具体例としては、
【0102】
CF=CF、CF=CH、CF=CFCl、CF=CF−CF
CF=C(CF、CF=CF−O−(CF−F (n:1〜5)、
CH=C(CF、CF=CFH、CF=CCl
CF=CF−O−CF−CF(CF)−O−C
CH=CF−(CF−Z (Zは式(7)と同じ、n:1〜10)、
CH=CH−O−CH−(CF−Z (Zは式(7)と同じ、n:1〜10)
などの単量体から誘導される構造単位が好ましく挙げられる。
【0103】
(iii)フッ素を有する脂肪族環状の構造単位
これらの構造単位(iii)を導入すると、硬度を補った官能基含有含フッ素ポリマーが得られる点で好ましい。
【0104】
含フッ素脂肪族環状の構造単位(iii)としては式(8):
【0105】
【化35】

(式中、X19、X20、X23、X24、X25およびX26は同じかまたは異なり、HまたはF;X21およびX22は同じかまたは異なり、H、F、ClまたはCF;Rf15は炭素数1〜10の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜10のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;n2は0〜3の整数;n1、n3、n4およびn5は同じかまたは異なり、0または1の整数)で示されるものが好ましい。
【0106】
例えば、
【0107】
【化36】

(式中、Rf15、X21およびX22は前記と同じ)で示される構造単位が挙げられる。
【0108】
具体的には、
【0109】
【化37】

(式中、X19、X20、X23およびX24は前記と同じ)などが挙げられる。
【0110】
(iv)フッ素を含まないエチレン性単量体から誘導される構造単位
それによって、汎用溶剤への溶解性、イオン性液体との相溶性が向上したり、また、光触媒や必要に応じて添加する硬化剤との相溶性を改善できたりするので好ましい。
【0111】
非フッ素系エチレン性単量体の具体例としては、つぎのものが例示できる。
【0112】
(iv−1)エチレン、プロピレン、ブテン、イソプレン、ブタジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、無水マレイン酸。
【0113】
(iv−2)ビニルエーテル系またはビニルエステル系単量体:CH=CHOR、CH=CHOCOR(R:炭素数1〜20の炭化水素基)、−(CH1−10CHOH。
アクリロニトリル:CH=CXCN(X:H、F、CH、Cl)。
スチレン:CH=CX−C−R(X:H、F、CH、R:H、OH、OR、COH、CO(R:炭素数1〜20の炭化水素基)、COM、SOH、SO(R:炭素数1〜20の炭化水素基)、SOM、NO、CN、CF
【0114】
(iv−3)アクリル系またはメタクリル系単量体:CH=CXCOR、CH=C(CH)COR[X:H、F、Cl、R:OH,OR(R:炭素数1〜20の炭化水素基]、−(CH1−10CHOH)、NH2−X(x:0〜2,R:炭素数1〜20の炭化水素基)、−(CH1−10CHOH)。
【0115】
本発明で用いる官能基含有含フッ素ポリマー(Ia)において、構造単位M(M1、M2、M3)と構造単位Aとの組み合わせや組成比率は、上記の例示から目的とする用途、物性(弾性率、伸び、降伏強さ、ガラス転移点、硬度、耐熱性、誘電率、結晶度など)によって種々選択できる。
【0116】
本発明で用いる官能基含有含フッ素ポリマー(Ia)においては、構造単位M(M1、M2、M3)を必須成分として含むものであり、イオン性液体を溶解させ易くする特徴を有している。したがって官能基含有含フッ素ポリマー(Ia)は、構造単位Mを多く含む組成、極端には構造単位Mのみ(100モル%)からなる重合体であってもイオン性液体を溶解させやすくする特徴を高く維持できる。
【0117】
またさらに、官能基含有含フッ素ポリマー(Ia)の構造単位Mと構造単位Aとからなる共重合体の場合、構造単位Aを前述の例示から選択することによって、さらに耐酸化性、耐熱性、高応答性、機械的強度の高いポリマーとすることができる。
【0118】
官能基含有含フッ素ポリマー(Ia)が構造単位Mと構造単位Aとの共重合体の場合、構造単位Mの含有比率は、官能基含有含フッ素ポリマー(Ia)を構成する全構造単位に対し0.1モル%以上であればよい。
【0119】
構造単位Aのイオン性液体との相溶性、および官能基含有含フッ素ポリマー(Ia)と混ぜるイオン性液体の濃度にもよるが、官能基含有含フッ素ポリマー(Ia)の分離を起こさないようにするには1.0モル%以上とすることが好ましい。
【0120】
本発明で用いる官能基含有含フッ素ポリマー(Ia)は、構成単位Mの比率を増やしても利用可能である。構造単位Aの機械的強度にもよるが、構造単位Mの増加は機械的物性が不充分となりやすいことから、60モル%以下とすることが好ましい。
【0121】
本発明で用いる官能基含有含フッ素ポリマー(Ia)の分子量は、例えば数平均分子量において500〜1000000の範囲から選択できるが、好ましくは1000〜500000、特に2000から200000の範囲から選ばれるものが好ましい。
【0122】
分子量が低すぎると、機械的物性が不充分となりやすく、特に硬化物や硬化膜が脆く強度不足となりやすい。分子量が高すぎると、溶剤溶解性が損なわれ、特に薄膜形成時に成膜性やレベリング性が悪くなりやすい。コーティング用途としては、最も好ましくは数平均分子量が5000から100000の範囲から選ばれるものである。
【0123】
本発明で使用可能な官能基含有含フッ素ポリマーの第2としては、式(Ib):
【化38】

(式中、構造単位Nは前記の特定の官能基をもたない含フッ素単量体の1種または2種以上に由来する構造単位;構造単位Bは前記特定の官能基をもつ非フッ素系単量体の1種または2種以上に由来する構造単位)で示される官能基含有含フッ素ポリマー(Ib)が挙げられる。ポリマー(Ib)には、さらに要すれば、特定の官能基をもたない非フッ素系単量体を共重合してもよい。
【0124】
この第2の官能基含有含フッ素ポリマー(Ib)は公知のポリマーであり、例えば特開平5−194668号公報、特開平9−169822号公報、特開2000−313839号公報などに記載されているのもが使用できる。通常の付加重合ポリマーだけでなく、特開平9−165490号公報、特開2000−80136号公報などに記載されているブロック重合や、特開平9−157619号公報などに記載されているグラフト重合ポリマーなど幅広く使用できる。
【0125】
構造単位Nを与える特定の官能基をもたない含フッ素単量体としては、例えばCF=CF、CF=CH、CF=CFCl、CF=CF(CF)、CF=C(CF、CF=CCl、CF=CHF、CH=CHF、CH=C(CF
CF=CFO(CFF(nは0〜10の整数)、
CF=CFO[CFCF(CF)]OC(nは0〜8の整数)、
CH=CFCFO[CF(CF)CFOCHFCF(nは0〜8の整数)
などが例示できる。
【0126】
さらに、構造単位Nは含フッ素脂肪族環状の構造単位であってもよく、例えば式(8):
【0127】
【化39】

(式中、X19、X20、X23、X24、X25およびX26は同じかまたは異なり、HまたはF;X21およびX22は同じかまたは異なり、H、F、ClまたはCF;Rf15は炭素数1〜10の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜10のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;n2は0〜3の整数;n1、n3、n4およびn5は同じかまたは異なり、0または1の整数)を与える含フッ素脂肪族環状構造単位が好ましい。
【0128】
含フッ素脂肪族環状の構造単位としては、例えば
【0129】
【化40】

(式中、Rf15、X21およびX22は前記と同じ)で示される構造単位が挙げられる。
【0130】
具体的には、
【0131】
【化41】

(式中、X19、X20、X23およびX24は前記と同じ)などが挙げられる。
【0132】
また、構造単位Bを与える特定の官能基をもつ非フッ素系単量体としては、特定の官能基含有部分をRf′で示すと、例えば
CH=CXRf′(XはH、CH、Cl)、
CH=CHO−CH(CH−Rf′(nは炭素数0〜10の整数)、
CH=CHOCO−CH(CH−Rf′(nは炭素数0〜10の整数)、
CH=CX−C−(CH−Rf′(XはH、CH、Cl;nは炭素数0〜10の整数)、
CH=CXCOO−(CH−Rf′(XはH、CH、Cl;nは炭素数1〜10の整数)、
CH=CXCONR−(CH−Rf′(XはH、CH、Cl;Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基;nは炭素数1〜10の整数)
などが例示できる。
【0133】
より具体的には
CH=CHCOOR(Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基)、
CH=CHCN、
CH=CHI、
CH=C(CH)COOR(Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基)、
CH=C(CH)CN、
CH=C(CH)I、
CH=CClCOOR(Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基)、
CH=CClCN、
CH=CClI、
CH=CHO−CH(CH−COOR(Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基、nは0〜10の整数)、
CH=CHO−CH(CH−CN(nは0〜10の整数)、
CH=CHO−CH(CH−I(nは0〜10の整数)、
CH=CHO−CH(CH−OH(nは0〜10の整数)、
CH=CHOCO−CH(CH−COOR(Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基、nは0〜10の整数)、
CH=CHOCO−CH(CH−CN(nは0〜10の整数)、
CH=CHOCO−CH(CH−I(nは0〜10の整数)、
CH=CHOCO−CH(CH−OH(nは0〜10の整数)、
CH=CH−C−(CH−COOR(Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基、nは0〜10の整数)、
CH=CH−C−(CH−CN(nは0〜10の整数)、
CH=CH−C−(CH−I(nは0〜10の整数)、
CH=CH−C−(CH−OH(nは0〜10の整数)、
CH=C(CH)−C−(CH−COOR(Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基、nは0〜10の整数)、
CH=C(CH)−C−(CH−CN(nは0〜10の整数)、
CH=C(CH)−C−(CH−I(nは0〜10の整数)、
CH=C(CH)−C−(CH−OH(nは0〜10の整数)、
CH=CCl−C−(CH−COOR(Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基、nは0〜10の整数)、
CH=CCl−C−(CH−CN(nは0〜10の整数)、
CH=CCl−C−(CH−I(nは0〜10の整数)、
CH=CCl−C−(CH−OH(nは0〜10の整数)、
CH=CHCOO−(CH−COOR(Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基、nは1〜10の整数)、
CH=CHCOO−(CH−CN(nは1〜10の整数)、
CH=CHCOO−(CH−I(nは1〜10の整数)、
CH=CHCOO−(CH−OH(nは1〜10の整数)、
CH=C(CH)COO−(CH−COOR(Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基、nは1〜10の整数)、
CH=C(CH)COO−(CH−CN(nは1〜10の整数)、
CH=C(CH)COO−(CH−I(nは1〜10の整数)、
CH=C(CH)COO−(CH−OH(nは1〜10の整数)、
CH=CClCOO−(CH−COOR(Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基、nは1〜10の整数)、
CH=CClCOO−(CH−CN(nは1〜10の整数)、
CH=CClCOO−(CH−I(nは1〜10の整数)、
CH=CClCOO−(CH−OH(nは1〜10の整数)、
CH=CHCONH−(CH−COOR(Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基、nは1〜10の整数)、
CH=CHCONH−(CH−CN(nは1〜10の整数)、
CH=CHCONH−(CH−I(nは1〜10の整数)、
CH=CHCONH−(CH−OH(nは1〜10の整数)、
CH=CHCON(CH)−(CH−COOR(Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基、nは1〜10の整数)、
CH=CHCON(CH)−(CH−CN(nは1〜10の整数)、
CH=CHCON(CH)−(CH−I(nは1〜10の整数)、
CH=CHCON(CH)−(CH−OH(nは1〜10の整数)、
CH=C(CH)CONH−(CH−COOR(Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基、nは1〜10の整数)、
CH=C(CH)CONH−(CH−CN(nは1〜10の整数)、
CH=C(CH)CONH−(CH−I(nは1〜10の整数)、
CH=C(CH)CONH−(CH−OH(nは1〜10の整数)、
CH=CClCONH−(CH−COOR(Rは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基、nは1〜10の整数)、
CH=CClCONH−(CH−CN(nは1〜10の整数)、
CH=CClCONH−(CH−I(nは1〜10の整数)、
CH=CClCONH−(CH−OH(nは1〜10の整数)
などが挙げられる。
【0134】
任意の共単量体である特定の官能基をもたない非フッ素系単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、ブテン、イソプレン、ブタジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの非フッ素系オレフィン;CH=CHOR、CH=CHOCOR(R:炭素数1〜20の炭化水素基、−(CH1−10CHOHなどのビニルエーテル系またはビニルエステル系単量体;CH=CX−C−R(X:H、CH、R:H、OH、OR、COH、CO(R:炭素数1〜20の炭化水素基)、COM、NOなどのスチレン系単量体などが例示できる。
【0135】
本発明で用いる官能基含有含フッ素ポリマー(Ib)において、構造単位Nと構造単位Bとの組み合わせや組成比率は、上記の例示から目的とする用途、物性(弾性率、伸び、降伏強さ、ガラス転移点、硬度、耐熱性、誘電率、結晶度など)によって種々選択できる。
【0136】
本発明で用いる官能基含有含フッ素ポリマー(Ib)においては、構造単位Bは必須成分であり、イオン性液体を溶解させ易くする特徴を有している。したがって分子量が比較的小さい場合は、構造単位Bが少なくてもイオン性液体を溶解させやすくすることができる。
【0137】
またさらに、官能基含有含フッ素ポリマー(Ib)の構造単位Nと構造単位Bとを含む共重合体の場合、構造単位Nを前述の例示から選択することによって、さらに耐酸化性、耐熱性、高応答性、機械的強度の高いポリマーとすることができる。
【0138】
官能基含有含フッ素ポリマー(Ib)が構造単位Nと構造単位Bとの共重合体の場合、構造単位Bの含有比率は、官能基含有含フッ素ポリマー(Ib)を構成する全構造単位に対し0.1モル%以上であればよい。
【0139】
構造単位Bのイオン性液体との相溶性、および官能基含有含フッ素ポリマー(Ib)と混ぜるイオン性液体の濃度にもよるが、官能基含有含フッ素ポリマー(Ib)の分離を起こさないようにするには1.0モル%以上とすることが好ましい。
【0140】
本発明で用いる官能基含有含フッ素ポリマー(Ib)は、構成単位Bの比率を増やしても利用可能である。構造単位Nの機械的強度にもよるが、構造単位Bの増加は機械的物性が不充分となりやすいことから、60モル%以下とすることが好ましい。
【0141】
本発明で用いる官能基含有含フッ素ポリマー(Ib)の分子量は、例えば数平均分子量において500〜1000000の範囲から選択できるが、好ましくは1000〜500000、特に2000から200000の範囲から選ばれるものが好ましい。
【0142】
分子量が低すぎると、機械的物性が不充分となりやすく、特に硬化物や硬化膜が脆く強度不足となりやすい。分子量が高すぎると、溶剤溶解性が損なわれ、特に薄膜形成時に成膜性やレベリング性が悪くなりやすい。コーティング用途としては、最も好ましくは数平均分子量が5000から100000の範囲から選ばれるものである。
【0143】
本発明で使用可能な官能基含有含フッ素ポリマーの第3は、含フッ素単量体単独または含フッ素単量体を含む単量体混合物をヨウ素移動重合法により重合させて得られる末端にヨウ素原子を有する含フッ素ポリマー(Ic)である。
【0144】
ヨウ素移動重合法およびそれで製造される含フッ素ポリマー(Ic)は公知であり、例えば特開2005−104992号公報、特開2004−59597号公報などに記載されており、本発明でも使用できる。
【0145】
ヨウ素原子は片末端だけでもよいが、両末端に存在する方が、イオン性液体との相溶性を向上させる点で好ましい。
【0146】
ヨウ素末端含フッ素ポリマー(Ic)としては、なかでも、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体などが好ましい。
【0147】
本発明で用いるヨウ素末端含フッ素ポリマー(Ic)の分子量は、例えば数平均分子量において500〜10000の範囲から選択できるが、好ましくは1000〜5000の範囲から選ばれるものが好ましい。
【0148】
分子量が低すぎると、機械的物性が不充分となりやすく、特に硬化物や硬化膜が脆く強度不足となりやすい。分子量が高すぎると、溶剤溶解性が損なわれ、特に薄膜形成時に成膜性やレベリング性がわるくなりやすい。
【0149】
本発明で使用可能な官能基含有含フッ素ポリマーの第4は、含フッ素構造単位を含む含フッ素ポリマーの末端を前記特定の官能基に変性した末端変性含フッ素ポリマー(Id)である。
【0150】
かかる末端変性法およびそれで製造される末端変性含フッ素ポリマー(Id)は公知であり、例えば特開2001−81131号公報、特開平11−322842号公報、特開2003−176394号公報などに記載されており、本発明でも使用できる。
【0151】
変性は片末端だけでもよいが、両末端に施す方がイオン性液体との相溶性を向上させる点で好ましい。変性後の官能基としては、変性の容易さから、−COOH、−OH基などが好ましい。
【0152】
末端変性含フッ素ポリマー(Id)としては、なかでも、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体などが好ましい。
【0153】
本発明で用いる末端変性含フッ素ポリマー(Id)の分子量は、例えば数平均分子量において500〜10000の範囲から選択できるが、好ましくは1000〜5000の範囲から選ばれるものが好ましい。
【0154】
分子量が低すぎると、機械的物性が不充分となりやすく、特に硬化物や硬化膜が脆く強度不足となりやすい。分子量が高すぎると、溶剤溶解性が損なわれ、特に薄膜形成時に成膜性やレベリング性がわるくなりやすい。
【0155】
極性を持つ含フッ素(共)重合体としては、化学的・電気化学的な耐久性から、極性を持つフッ素化オレフィンを含有するフッ素化オレフィンが好ましく、中でも、水素原子を有するフッ素化オレフィン(特に、フッ化ビニリデンなど)を含有する含フッ素(共)重合体が、より好ましい。
【0156】
また、極性を持つ含フッ素(共)重合体としては、側鎖および/または主鎖末端に−OH、−COOH、−COOR、ヨウ素原子、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基を有するポリマー、主鎖構造にエステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合を有するものも好ましい。なかでも、電気化学的な耐久性の観点からは、主鎖に−(CFCH)−構造を持つポリマーがより好ましい。フッ化ビニリデンと共重合させるモノマーは、共重合可能であれば特に限定されないが、電気化学的な耐久性を向上させるためには、CF=CFやCF=CFCFなどの含フッ素モノマーが好ましい。なかでもイオン性液体との相溶性の点から、−(CFCH)−構造が60mol%以上含まれる含フッ素(共)重合体が好ましい。
【0157】
工程1に用いられる塗料組成物は、本発明の製造方法によって製造される平膜におけるポリマーの含有率が所望する含有率になるように、ポリマーを含有する。当該含有率は、通常、5〜90重量%、好ましくは、10〜70重量%である。
【0158】
(III)溶媒
本発明で用いられる溶媒としては、前記ポリマー等を溶解させられる溶媒を、適宜選択すればよいが、例えば、ポリマーとして含フッ素ポリマーを用い、他の成分としてイオン性液体を添加する場合、疎水性溶媒と親水性溶媒の混合溶媒を使用することが好ましい。
【0159】
親水性溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどのカーボネート類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、メタノール、エタノールなどの炭素数1〜3の低級アルコール、アセトニトリル等が挙げられる。疎水性溶媒としては、4−メチルペンタン−2−オンなどの炭素数5
〜10のケトン類、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類が挙げられる。
当該混合溶媒における親水性溶媒:疎水性溶媒の比としては、親水性溶媒:疎水性溶媒(重量比)=20:1〜1:10が好ましく、2:1〜1:5がより好ましい。
【0160】
(IV)その他の成分
工程1に用いられる塗料組成物は、フィラー、ポリマー、および溶媒以外の成分(例、電解質塩架橋剤、架橋促進剤、可塑剤、着色剤、および安定剤)を含有してもよい。
本発明の製造方法で製造される平膜が電極膜などである場合、当該塗料組成物は、好ましくは電解質塩を含有する。
また、前記ポリマーが架橋部位を有する場合、当該塗料組成物は、好ましくは架橋剤、および架橋促進剤を含有する。
【0161】
(a)電解質塩
本発明で用いられる電解質塩としては、従来公知のアンモニウム塩、金属塩のほか、液体状の塩(イオン性液体)、無機高分子型の塩、有機高分子型の塩などが挙げられる。中でも常温で液体となるイオン性液体が好ましい。
【0162】
本発明に用いられるイオン性液体(イオン液体、ionic liquid)は、常温溶融塩または単に溶融塩などとも称されるものであり、常温(室温)を含む幅広い温度域で溶融状態を呈する塩である。
【0163】
本発明においては、従来より知られた各種のイオン性液体を使用することができるが、常温(室温)または可及的に常温に近い温度において液体状態を呈し安定なものが好ましい。本発明においては、常温溶融塩であって、導電率が0.1Sm-1以上のものが好ましい。
【0164】
本発明において用いられる好適なイオン性液体としては、下記の一般式(I)〜(IV)で表されるカチオン(好ましくは、イミダゾリウムイオン)と、アニオン(X-)よりなるものを例示することができる。
【0165】
【化42】

式(III):
[NRx4-x+
式(IV):
[PRx4-x+
【0166】
これらの式(I)〜(IV)において、Rはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜12のアルキル基またはエーテル結合を含み炭素と酸素の合計数が3〜12のハロゲン原子を含んでいてもよいアルキル基であり、式(I)においてR1は炭素数1〜4のハロゲン原子を含んでいてもよいアルキル基または水素原子である。式(I)において、RとR1は同一ではないことが好ましい。式(III)および(IV)において、xはそれぞれ1〜4の整数である。
【0167】
さらに式(V):
【0168】
【化43】

(式中、Raは同じかまたは異なりいずれもハロゲン原子、官能基または有機基であって、かつ存在していても存在していなくてもよく、存在する場合は、ヘテロ芳香環の水素原子の全部または一部を置換している;Rfc1は式(c):
【0169】
【化44】

(式中、Rc1、Rc2およびRc3は同じかまたは異なり、いずれもH、ハロゲン原子、官能基、またはハロゲン原子で置換されていてもよくエーテル結合を含んでいてもよく重合性基を有していてもよい1価の有機基)で示されるフルオロアルキル基、または式(V)からRfc1基を除いた残基を1個以上有していてもよい1価の有機基);RdはHまたは1価の有機基;Xは対アニオン)で示される含フッ素イミダゾール化合物塩も使用できる。
【0170】
この含フッ素イミダゾール化合物塩のうち、Rfc1が−CFHCF3、−CF2CFZ3H、−CF=CFZ3(Z3はFまたはCl)である化合物以外は新規化合物である。
【0171】
式(V)の含フッ素イミダゾール化合物塩は、式(A):
【0172】
【化45】

(式中、Raは同じかまたは異なりいずれもハロゲン原子、官能基または有機基であって、かつ存在していても存在していなくてもよく、存在する場合は、ヘテロ芳香環の水素原子の全部または一部を置換している)で示されるイミダゾール化合物と、式(B):
【0173】
【化46】

(式中、Rb1、Rb2およびRb3は同じかまたは異なり、いずれもH、ハロゲン原子、官能基、またはハロゲン原子で置換されていてもよくエーテル結合を含んでいてもよく重合性基を有していてもよい1価の有機基)で示されるフルオロアルケン(B)とを反応させ、式(C):
【0174】
【化47】

【0175】
(式中、Raは同じかまたは異なりいずれもハロゲン原子、官能基または有機基であって、かつ存在していても存在していなくてもよく、存在する場合は、ヘテロ芳香環の水素原子の全部または一部を置換している;RfはRf1(Rf1は式(c)と同じかまたは式(C)からRf基を除いた残基を1個以上有していてもよい1価の有機基))で示される含フッ素イミダゾール化合物を合成し、ついで、塩形成化合物を作用させ、要すればさらにアニオン交換することにより製造することができる。
【0176】
イミダゾール化合物カチオンの好ましい具体例としては、例えば1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−イソプロピル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−イソブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−secブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−メトキシメチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−メトキシエチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−イソプロピルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−ブチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−イソブチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−secブチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メトキシメチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メトキシエチルイミダゾリウムカチオン、1−メチルイミダゾリウムカチオン、1−エチルイミダゾリウムカチオン、1−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−イソプロピルイミダゾリウムカチオン、1−ブチルイミダゾリウムカチオン、1−イソブチルイミダゾリウムカチオン、1−secブチルイミダゾリウムカチオン、1−メトキシメチルイミダゾリウムカチオン、1−メトキシエチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−イソプロピルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−ブチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−イソブチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−secブチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−メトキシメチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−メトキシエチルイミダゾリウムカチオンなどの非フッ素系イミダゾール化合物カチオン;1−メチル−3−トリフルオロメチルイミダゾリウムカチオン、1−ジフルオロメチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−ペンタフルオロエチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(2,2,2−トリフルオロエチル)イミダゾリウムカチオン、1−(1,1−ジフルオロエチル)−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)イミダゾリウムカチオン、1−(2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチル)−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ヘプタフルオロプロピル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ヘプタフルオロイソプロピル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(1,1,2,3,3,4,4,4−オクタフルオロブチル)イミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−(2−トリフルオロメトキシ−1,1,2−トリフルオロエチル)イミダゾリウムカチオン、1−(2−ヘプタフルオロプロポキシ−1,1,2−トリフルオロエチル)−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−トリフルオロメチルイミダゾリウムカチオン、1−ジフルオロメチル−3−エチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−ペンタフルオロエチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−(2,2,2−トリフルオロエチル)イミダゾリウムカチオン、1−(1,1−ジフルオロエチル)−3−エチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)イミダゾリウムカチオン、1−(2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチル)−3−エチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−ヘプタフルオロプロピルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−ヘプタフルオロイソプロピルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)イミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−(1,1,2,3,3,4,4,4−オクタフルオロブチル)イミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−(2−トリフルオロメトキシ−1,1,2−トリフルオロエチル)イミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−(2−ヘプタフルオロプロポキシ−1,1,2−トリフルオロエチル)イミダゾリウムカチオン、1−トリフルオロメチルイミダゾリウムカチオン、1−ジフルオロメチルイミダゾリウムカチオン、1−ペンタフルオロエチルイミダゾリウムカチオン、1−(2,2,2−トリフルオロエチル)イミダゾリウムカチオン、1−(1,1−ジフルオロエチル)イミダゾリウムカチオン、1−1,1,2,2−テトラフルオロエチル)イミダゾリウムカチオン、1−(2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチル)イミダゾリウムカチオン、1−ヘプタフルオロプロピルイミダゾリウムカチオン、1−ヘプタフルオロイソプロピルイミダゾリウムカチオン、1−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)イミダゾリウムカチオン、1−(1,1,2,3,3,4,4,4−オクタフルオロブチル)イミダゾリウムカチオン、1−(2−トリフルオロメトキシ−1,1,2−トリフルオロエチル)イミダゾリウムカチオン、1−(2−ヘプタフルオロプロポキシ−1,1,2−トリフルオロエチル)イミダゾリウムカチオン、2−フルオロ−1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、2−フルオロ−1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、2−フルオロ−1−イソプロピル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、2−フルオロ−1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、2−フルオロ−1−イソブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、2−フルオロ−1−secブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、2−フルオロ−1−メトキシメチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、2−フルオロ−1−メトキシエチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、2−フルオロ−1−メチル−3−トリフルオロメチルイミダゾリウムカチオン、2−フルオロ−1−メチル−3−ペンタフルオロエチルイミダゾリウムカチオン、2−フルオロ−1−メチル−3−(2,2,2−トリフルオロエチル)イミダゾリウムカチオン、2−フルオロ−1−(1,1−ジフルオロエチル)−3−メチルイミダゾリウムカチオン、2−フルオロ−1−メチル−3−(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)イミダゾリウムカチオン、1−(2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチル)−2−フルオロ−3−メチルイミダゾリウムカチオン、2−フルオロ−1−ヘプタフルオロプロピル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、2−フルオロ−1−ヘプタフルオロイソプロピル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、2−フルオロ−1−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)−3−メチルイミダゾリウムカチオン、2−フルオロ−1−メチル−3−(1,1,2,3,3,4,4,4−オクタフルオロブチル)イミダゾリウムカチオン、2−フルオロ−1−メチル−3−(2−トリフルオロメトキシ−1,1,2−トリフルオロエチル)イミダゾリウムカチオン、2−フルオロ−1−(2−ヘプタフルオロプロポキシ−1,1,2−トリフルオロエチル)−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−トリフルオロメチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−ペンタフルオロエチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−(2,2,2−トリフルオロエチル)イミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−(1,1−ジフルオロエチル)イミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)イミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−(2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチル)イミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−ヘプタフルオロプロピルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−ヘプタフルオロイソプロピルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)イミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−(1,1,2,3,3,4,4,4−オクタフルオロブチル)イミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−(2−トリフルオロメトキシ−1,1,2−トリフルオロエチル)イミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−(2−ヘプタフルオロプロポキシ−1,1,2−トリフルオロエチル)イミダゾリウムカチオンなどのフッ素系イミダゾール化合物カチオンが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0177】
アニオン(X-)としては、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸アニオン、過塩素酸アニオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)炭素酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ジシアンアミドアニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、有機カルボン酸アニオンおよびハロゲンイオンより選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0178】
工程1に用いられる塗料組成物が電解質塩を含有する場合、本発明の製造方法によって製造される平膜における電解質塩の含有率が所望する含有率になるように、電解質塩を含有する。当該含有率は、通常、20〜80重量%である。
【0179】
(b)架橋剤、および架橋促進剤
前記架橋剤としては、ポリアミン架橋系、ポリオール架橋系、パーオキサイド架橋系、および複素環架橋系のいずれも採用できる。なかでも架橋反応制御の容易さの点で、パーオキサイド架橋が好ましい。
パーオキサイド架橋系の架橋剤としては、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生し得る有機過酸化物であればよく、具体的には、例えば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどを挙げることができる。これらの中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
パーオキサイド架橋系の架橋促進剤としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5−トリス(2,3,3−トリフルオロ−2−プロペニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン)、トリス(ジアリルアミン)−S−トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N−ジアリルアクリルアミド、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルフタルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレート、トリアリルホスファイトなどが挙げられる。これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
本発明で用いられる塗料組成物における、架橋剤、および架橋促進剤の含有率は、架橋反応が適切に進行する量であればよい。
【0180】
[工程2]
溶媒の蒸発は、大気下で静置することで自然に蒸発させてもよく、蒸発を加速するために、減圧、または加熱等の操作を行ってもよい。
工程2において、「自立可能」とは、ピンセットなどでつかんだとき、自らの形を保って一体ものとして取り扱うことができることを意味する。
溶媒の蒸発は、不完全に、すなわち、溶媒が前記塗料中に残存するように実施する。これにより、自立可能かつ可塑変形可能な塗膜を形成させる。溶媒の蒸発により、好ましくは、前記塗料組成物中の溶媒/ポリマーの重量比が30〜3の範囲内にする。当該重量比が30を超えると、得られる平膜の表面が平滑にならない恐れがあり、一方、3未満であると、工程3での貼り合わせによる接着が不十分になる恐れがある。
【0181】
[工程3]
工程3では、第1の基材の表面上に形成された塗膜と第2の基材の表面上に形成された塗膜とを、塗膜が可塑変形可能な間(好ましくは、塗膜(すなわち、塗料組成物中)の溶媒/ポリマーの重量比が30〜3の範囲内である間)に、各基材とは反対側の面が接触するように貼り合わせる。この際、好ましくは、加圧して2つの塗膜を接着させる。当該加圧の圧力は、塗膜の大きさによって異なるが、例えば、約1cm×約8cmの場合、好ましくは、約50〜200gである。
【0182】
工程3で貼り合わせた塗膜から、所望により、更に不要な溶媒を蒸発させ、基材を取り除いて、フィラー、およびポリマーを含有する平膜を得る。
【0183】
なお、必要に応じて、工程3の後に、前記ポリマーの架橋を実施することができる。当該架橋は、例えば、前記ポリマーが架橋部位を有し、前記塗料組成物が、架橋剤、および架橋助剤を含有する場合、加熱(例、180℃、3分間)すること等によって実施すればよい。
【0184】
[平膜]
上記で説明した本発明の製造方法によって得られた平膜(例、電極膜)もまた、本発明の一態様である。
当該平膜は、前記で説明したフィラー、およびポリマー等の、前記塗料組成物に由来する成分を含有する。
当該平膜は、高度に両面が平滑であり、例えば、表面粗さRaが0.5μm以下である。
当該平膜は、好ましくは、電極膜であるが、これに限定されるものではない。
【0185】
[電気化学デバイス]
本発明の製造方法によって得られた電極膜の各面上に2枚の電解質ポリマー層をそれぞれ接着することにより、本発明の電気化学デバイスが得られる。このような接着は、公知の方法で行えばよく、例えば、市販の装置を用いて、加圧および加熱して行うことができる。
本発明の電気化学デバイスとしては、例えば、キャパシタ、およびアクチュエータ等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明の電気化学デバイスがキャパシタである場合、電極膜と、当該電極膜の各面上に配置された2枚の電解質ポリマー層に加えて、更に電極膜および電解質ポリマー層が交互に積層されていることが好ましい。
【実施例】
【0186】
以下に実施例、および比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0187】
実施例1
アセチレンブラック(電気化学工業社製デンカブラック)を3g、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメチルスルホナートを10g、カイナー741(ポリビニリデンフロライド、商品名、アルケマ社製)を8g、N,N−ジメチルアセトアミドを600mLを、ボールミルで24時間混合した。
この塗料を84mm×12mmの型に3mLキャストした。その後、キャスト液を40℃のホットプレートで総重量が20%になるまで乾燥させ、空気接触面どうしを貼り合わせた。貼り合わせた膜に120gのおもりを乗せ、室温で24時間真空乾燥させ、さらに40℃で24時間真空乾燥させ、電極膜W1を作製した。
表面粗さは、表面が0.3μm、裏面が0.3μmであった。
カイナー741を20g、N,N−ジメチルアセトアミド300mLを混合し、80℃で24時間撹拌した。この溶液を25mm×25mmの型に0.3mLキャストし、40℃で24時間真空乾燥することで、電解質膜W1を得た。図1に当該製造方法の概要を示す。
電極膜W1を2枚用意し、その表面間に電解質膜W1を挟み、ヒータープレスで無加圧で80℃1分軟化させた後、1500N、80℃で1分加圧することにより、積層体(電気化学デバイス)W1Aを作製した。また、同様に電極膜W1を2枚用意し、その裏面間に電解質膜W1を挟み、ヒータープレスで無加圧で80℃1分軟化させた後、1500N、80℃で1分加圧することにより、積層体(電気化学デバイス)W1Bを作製した。
ピンセットを用いて電極膜W1と電解質膜W1を剥離させようとしたが、どちらの積層体(電気化学デバイス)でも剥離できなかった。
【0188】
比較例1
アセチレンブラック(電気化学工業社製デンカブラック)を3g、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメチルスルホナートを10g、カイナー741(ポリビニリデンフロライド、商品名、アルケマ社製)を8g、N,N−ジメチルアセトアミドを600mLを、ボールミルで24時間混合した。
この塗料を、84mm×12mmの型に3mLキャストした。その後、キャスト液を40℃で24時間真空乾燥させ、電極膜R1を作製した。
表面粗さは、基板面が0.3μm、空気面が1.5μmであった。
電極膜R1を2枚用意し、その空気接触面間に実施例1と同様に作成した電解質膜W1を挟み、ヒータープレスで無加圧で80℃1分軟化させた後、1500N、80℃で1分加圧することにより、積層体(電気化学デバイス)R1を作製した。
ピンセットを用いて電極膜R1と電解質膜W1を剥離させたところ、容易に剥離でき、電解質膜の10%の範囲に電極が付着していた。
【0189】
実施例2
ケッチェンブラック(三菱化学株式会社)を3g、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートを10g、カイナーフレックスPPA2851(変性ポリビニリデンフロライド、商品名、アルケマ社製)を8g、リン酸トリメチル600mLを、ボールミルで24時間混合した。
この塗料を84mm×12mmの型に3mLキャストした。その後、キャスト液を40℃のホットプレートで総重量が20%になるまで乾燥させ、空気接触面どうしを貼り合わせた。貼り合わせた膜に120gのおもりを乗せ、室温で24時間真空乾燥させ、さらに40℃で24時間真空乾燥させ、電極膜W2を作製した。
表面粗さは、表面が0.3μm、裏面が0.3μmであった。
カイナーフレックスPPA2851を20g、リン酸トリメチル300mLを混合し、80℃で24時間撹拌した。この溶液を25mm×25mmの型に0.3mLキャストし、40℃で24時間真空乾燥することで、電解質膜W2を得た。電解質膜W2の概略図を図2に示す。
電極膜W1を2枚用意し、その表面間に電解質膜W1を挟み、ヒータープレスで無加圧で80℃1分軟化させた後、1500N、80℃で1分加圧することにより、積層体(電気化学デバイス)W2Aを作製した。また、同様に電極膜W1を2枚用意し、その裏面間に電解質膜W2を挟み、ヒータープレスで無加圧で80℃1分軟化させた後、1500N、80℃で1分加圧することにより、積層体(電気化学デバイス)W2Bを作製した。
ピンセットを用いて電極膜W2と電解質膜W2を剥離させようとしたが、どちらの積層体(電気化学デバイス)でも剥離できなかった。
【0190】
比較例2
ケッチェンブラック(三菱化学株式会社)を3g、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートを10g、カイナーフレックスPPA2851(変性ポリビニリデンフロライド、商品名、アルケマ社製)を8g、リン酸トリメチル600mLを、ボールミルで24時間混合した。
この塗料を、84mm×12mmの型に3mLキャストした。その後、キャスト液を40℃で24時間真空乾燥させ、電極膜R2を作製した。
表面粗さは、基板面が0.4μm、空気面が1.4μmであった。
電極膜R2を2枚用意し、その空気接触面間に実施例1と同様に作成した電解質膜W1を挟み、ヒータープレスで無加圧で80℃1分軟化させた後、1500N、80℃で1分加圧することにより、積層体(電気化学デバイス)R2を作製した。
ピンセットを用いて電極膜R2と電解質膜W1を剥離させたところ、容易に剥離でき、電解質膜の70%の範囲に電極が付着していた。
【産業上の利用可能性】
【0191】
本発明の製造方法は、フィラー、およびポリマーを含有する、両面が平滑な電極等の製造に用いる事ができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラー、およびポリマーを含有する平膜の製造方法であって、
工程1:フィラー、ポリマー、および溶媒を含有する塗料組成物を、第1の基材の片面上、および第2の基材の片面上に、それぞれ塗布すること、
工程2:前記塗布された組成物から前記溶媒を蒸発させることによって、前記塗料組成物から、自立可能かつ可塑変形可能な塗膜を形成させること、および
工程3:第1の基材の表面上に形成された塗膜と第2の基材の表面上に形成された塗膜とを、各基材とは反対側の面が接触するように貼り合わせること
を含む方法。
【請求項2】
前記平膜が1〜50重量%のフィラーを含有する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記平膜が電極膜である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィラーが導電性フィラーである
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマーが含フッ素ポリマーである
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記含フッ素ポリマーが(CFCH)ユニットを含む
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記平膜が電解質塩を更に含有する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程2において、前記塗料組成物中の溶媒/ポリマーの重量比が30〜3の範囲内になるように前記塗布された組成物から前記溶媒を蒸発させる
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法で製造された平膜。
【請求項10】
電極膜である請求項9に記載の平膜。
【請求項11】
請求項10に記載の電極膜と、当該電極膜の各面上に配置された2枚の電解質ポリマー層とを含有する
電気化学デバイス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−234770(P2010−234770A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88162(P2009−88162)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】