説明

フィルタエレメント

【課題】フィルタエレメントの部分的な目詰まりを低減して、交換頻度を減らすことができるとともに、濾過効率を向上させることができるフィルタエレメントを提供する。
【解決手段】内部にエレメント配設空間15を有しこのエレメント配設空間15と外部を連通させるオイル流入孔13およびオイル流出孔14が形成された円筒状のフィルタケース10内において、円筒状に形成された濾材21と、チューブ流通孔32を備え濾材21の内周面に沿う形状に形成されたインナーチューブ30と、濾材21およびインナーチューブ30の円筒軸方向の両端部側に設けられた上部および下部エンドプレート22,23とからなり、オイル流入孔13から流入空間15a内に導入されたオイルを、濾材21を通過させチューブ流通孔32から流出空間15b内に流出させるように構成し、インナーチューブ30が、チューブ流通孔32を円筒軸方向に対して略中央にのみ備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの潤滑油等の流体の濾過を行う流体フィルタに使用するフィルタエレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの潤滑をおこなうためのエンジンオイル(潤滑油)においては、エンジンの駆動によって発生する金属粉やカーボン等の固形分(ゴミ)をオイルフィルタによって捕捉することにより、エンジン各部の研削磨耗を減少させている。オイルフィルタとしては、エンジンに供給される潤滑油の濾過のみを行ういわゆるフルフロー式のオイルフィルタがある。さらに、このフルフロー式のオイルフィルタよりも濾過精度を高くした(濾材の目を細かくした)バイパスオイルフィルタを、上記フルフロー式のオイルフィルタとは別の送油回路においてオイルパンとの潤滑油の循環のみをして微細なゴミの除去を行い、よりエンジンの磨耗を減少させるようにしたコンビネーション型(フルフロー式フィルタとバイパスオイルフィルタとの併用型)がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなバイパスオイルフィルタにおいては、上述のように、フルフロー式のオイルフィルタでは捕捉できないカーボン等の固形分や微粒子の除去を目的として、フルフロー式のオイルフィルタよりもフィルタエレメントの濾過精度を高くして、潤滑油内の不純物を十分に濾過できるようにしているため、フルフロー式のオイルフィルタよりもフィルタエレメントの交換を頻繁におこなって濾過効率の低下を防止している。
【特許文献1】特開平9−192419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなバイパスオイルフィルタにおいて、潤滑油がフィルタエレメント全体に対して均一な流れで導入されず、全体の濾過面積が有効に生かされにくいため、フィルタエレメントの円筒軸方向(上下方向)によって目詰まりの程度がばらついてフィルタエレメントの劣化が不均一になり、濾過効率が低下する問題があった。さらに、フィルタエレメントの部分的な劣化により、全体を均一に使用することができず、フィルタエレメントとしての寿命が本来の耐用期間よりも短くなり、フィルタエレメントを頻繁に交換しなければならないという問題もあった。
【0005】
以上のような課題に鑑みて、本発明では、フィルタエレメントの部分的な目詰まりを低減して、交換頻度を減らすことができるとともに、濾過効率を向上させることができるフィルタエレメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために第1の本発明に係るフィルタエレメントは、内部にエレメント配設空間を有しこのエレメント配設空間と外部を連通させる流入孔(例えば、実施形態におけるオイル流入孔13)および流出孔(例えば、実施形態におけるオイル流出孔14)が形成された円筒状のフィルタケース内において、エレメント配設空間を流入孔に連通する流入空間と流出孔に連通する流出空間とに二分させ、円筒軸方向の両端部のうちいずれか一方の端部を前記流入孔に近接するようにしてエレメント配設空間内に着脱自在に装着されるフィルタエレメントであって、円筒状に形成された濾材と、チューブ流通孔を備え、濾材の内周面に沿う形状に形成されたインナーチューブと、濾材およびインナーチューブの円筒軸方向の両端部側を覆ってそれぞれ設けられたエンドプレートとからなり、流入孔から流入空間内に導入されたオイルを、濾材を通過させチューブ流通孔から流出空間内に流出させるように構成する。そして、インナーチューブが、チューブ流通孔を円筒軸方向に対して略中央にのみ備えて構成される。
【0007】
また、第2の本発明に係るフィルタエレメントは、内部にエレメント配設空間を有しこのエレメント配設空間と外部を連通させる流入孔および流出孔が形成された円筒状のフィルタケース内において、エレメント配設空間を流入孔に連通する流入空間と流出孔に連通する流出空間とに二分させ、円筒軸方向の一端部を流入孔に近接するようにしてエレメント配設空間内に着脱自在に装着されるフィルタエレメントであって、円筒状に形成された濾材と、チューブ流通孔を備え、濾材の内周面に沿う形状に形成されたインナーチューブと、濾材およびインナーチューブの円筒軸方向の一端部側を覆って設けられた第1エンドプレート(例えば、実施形態における上部エンドプレート22)と、濾材およびインナーチューブの円筒軸方向の他端部側を覆って設けられた第2エンドプレート(例えば、実施形態における下部エンドプレート23)とからなり、流入孔から流入空間内に導入されたオイルを、濾材を通過させチューブ流通孔から流出空間内に流出させるように構成する。そして、インナーチューブが、チューブ流通孔を円筒軸方向に対して第2エンドプレート側にのみ備えて構成される。
【0008】
また、第3の本発明に係るフィルタエレメントは、内部にエレメント配設空間を有しエレメント配設空間と外部を連通させる流入孔および流出孔が形成された円筒状のフィルタケース内において、エレメント配設空間を流入孔に連通する流入空間と流出孔に連通する流出空間とに二分させ、円筒軸方向の一端部を流入孔に近接するようにしてエレメント配設空間内に着脱自在に装着されるフィルタエレメントであって、円筒状に形成された濾材と、チューブ流通孔を備え、濾材の内周面に沿う形状に形成されたインナーチューブと、濾材およびインナーチューブの円筒軸方向の一端部側を覆って設けられた第1エンドプレート(例えば、実施形態における上部エンドプレート22)と、濾材およびインナーチューブの円筒軸方向の他端部側を覆って設けられた第2エンドプレート(例えば、実施形態における下部エンドプレート23)とからなり、流入孔から流入空間内に導入されたオイルを、濾材を通過させチューブ流通孔から流出空間内に流出させるように構成し、インナーチューブが、円筒軸方向に対して第1エンドプレート側から第2エンドプレート側にいくにしたがって大きな孔径のチューブ流通孔を備えて構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に関するフィルタエレメントによれば、濾過すべき流体を均一な流れで濾材全体に導入することができるため、フィルタエレメント(濾材)の目詰まりの程度がばらつくのを抑えることができることとなる。従って、フィルタエレメントの部分的な劣化に伴う濾過効率の低下が防止できるとともに、濾材全体を均一に使用するができるため、長期間の使用に耐えることができ、フィルタエレメントを頻繁に交換するという不具合も改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。まず、図1を用いて本発明に係るフィルタエレメントが適用され、流体の一例であるエンジンオイルの濾過を行うオイルフィルタ(バイパスオイルフィルタ)1の構成について説明する。オイルフィルタ1は、内部にエレメント配設空間15を有し、このエレメント配設空間15と外部とを連通させるオイル流入孔13およびオイル流出孔14が形成されたフィルタケース10と、エレメント配設空間15をオイル流入孔13と連通する流入空間15aとオイル流出孔14と連通する流出空間15bとに二分させてエレメント配設空間15内に着脱自在に取り付けられるフィルタエレメント20とから構成される。
【0011】
フィルタケース10は、フィルタヘッド11と、ケース本体12とからなり、これらフィルタヘッド11およびケース本体12との内部で形成されるエレメント配設空間15内に、このエレメント配設空間15を流入空間15aおよび流出空間15bとに二分するフィルタエレメント20が配設される。
【0012】
フィルタヘッド11は、下方に開口部を有した円筒状に形成されている。フィルタヘッド11には、外部と連通してオイルをエレメント配設空間15(流入空間15a)内に流入させるオイル流入孔13と、エレメント配設空間15(流出空間15b)内と連通してフィルタエレメント20によって濾過されたオイルを外部に流出させるオイル流出孔14とが形成されている。また、フィルタヘッド11には、流出空間15bとオイル流出孔14とを連通させる第1中間孔16および第2中間孔17とが上方に延びるようにして一体に連通されて形成されている。第1中間孔16には、センタボルト40の先端に形成された雄ネジ40cと螺合可能なヘリサート29が埋設状に固定されている。
【0013】
ケース本体12は、上側からフィルタエレメント20を挿入可能な開口を有する有底円筒状に形成されている。このケース本体12は、センタボルト40によりフィルタヘッド11に着脱自在に構成されている。ケース本体12の底部には、ボルト受け26が配設されており、このボルト受け26にはセンタボルト40を挿通可能な貫通孔が形成され、センタボルト40の頭部をこのボルト受け26の下端部が受けている。また、ボルト受け40の下端部の中央には、Oリング28が配設されており、センタボルト40の頭部がOリング28を押しつぶすように押さえ込んで封止するため、フィルタケース10内のオイルが、このボルト受け40の貫通孔から外部に漏れ出ることがない。
【0014】
ケース本体12内であってボルト受け26の上端部には、コイルスプリング27が立設されており、このコイルスプリング27は、一端部がボルト受け26に支持され、座金34を介してフィルタエレメント20をフィルタヘッド11側に付勢させる付勢力を有している。なお、フィルタヘッド11とケース本体12との取付部には、オイルの漏出を防止するためのシールリング19が備えられている。
【0015】
センタボルト40は、ボルト受け26の下端部に当接されるボルト頭部40aと、この頭部40aから上方に延びてフィルタケース10内に挿通可能なボルト軸部40bと、ボルト軸部40bの先端に形成された雄ネジ40cとから構成され、ケース本体12の全長よりも長く形成されている。このセンタボルト40には、上端部において第1中間孔16と連通するようセンタボルト油路42が長手軸方向に形成されているとともに、このセンタボルト油路42と流出空間15bとを連通させる絞り孔41がボルト軸部40bの外側から形成されている。この絞り孔41によりオイルの流量を抑制し、フルフロー式のオイルフィルタ(図示しない)へ導入されるオイルの流量が不足するのを防止し、エンジン(図示しない)へのオイルの供給に支障のないようにしている。このようにして、フィルタエレメント20の内周部に形成された流出空間15bとオイル流出孔14とが、これら絞り孔41、センタボルト油路42、第1中間孔16および第2中間孔17を介して連通されることとなる。それでは、本発明に係るフィルタエレメントの構成について3つの実施例を説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の第1実施例に係るフィルタエレメント20は、図1に示すように、濾材21と、外周がこの濾材21の内周面に当接接触するよう配設されたインナーチューブ30と、濾材21およびインナーチューブ30の上端部および下端部を覆うようにして固着された円盤状の上部および下部エンドプレート22,23とから構成される。
【0017】
濾材21は、一定の折曲幅を有して蛇腹状に折曲されて、上部エンドプレート22および下部エンドプレート23の間で保持されることにより、断面菊花状に形成されている。濾材21の内周はインナーチューブ30の外周に当接接触するような寸法になっている。
【0018】
インナーチューブ30は、オイルがフィルタエレメント20を通過する際に生じる差圧によりフィルタエレメント20が変形するのを防止するためのものであり、濾材21の内周面に沿ってパンチングメタル等から上下に延びた薄肉円筒状に形成される。このインナーチューブ30は、濾材21によって濾過されたオイルを流出空間15bに流出可能な多数のチューブ流通孔32を有し円筒軸方向の略中央に位置する有孔部30aと、この有孔部30aと上方で一体に繋がってチューブ流通孔32を有しない上側無孔部30bと、有孔部30aと下方で一体に繋がってチューブ流通孔32を有しない下側無孔部30cとから構成される。チューブ流通孔32は、有孔部30aにおいて円周方向および円筒軸方向に一定間隔を有して形成されている。このため、濾材21に導入されるオイルは、この濾材21内でチューブ流通孔32を有する有孔部32に向かって流れる。つまり、濾材21の外側全体から内側中央に向かって流れることとなる。なお、有孔部30aの長手方向の長さ(チューブ流通孔32の孔明け範囲)は、インナーチューブ30の全長に対して半分以下であることが好ましい。
【0019】
上部エンドプレート22および下部エンドプレート23の中央部には、ゴム等の弾性部材で形成されたゴムブッシュ24,25がそれぞれ配設されている。このゴムブッシュ24,25には、センタボルト40が挿入可能な貫通孔がそれぞれ形成されており、この貫通孔にセンタボルト40が挿入されるとゴムブッシュ24,25の弾性力によりセンタボルト40対して上下方向に摺動自在に、且つ、一定の保持力を有してセンタボルト40に保持される。
【0020】
このように構成されたフィルタエレメント20は、フィルタケース10内に挿入されて、スプリング27の付勢力によりフィルタヘッド11側(上方側)へ付勢されることにより、フィルタケース10内においてしっかりと保持されることとなる。
【0021】
次に、このフィルタエレメント20が装着されたオイルフィルタ1によってオイルの濾過を行う場合について説明する。なお、図1において、オイルの流れは矢印Aによって表されている。フィルタヘッド11に形成されたオイル流入孔13から流入したオイルは、まず、フィルタエレメント20の外側に形成される流入空間15a内に流入する。フィルタエレメント20の上端部および下端部は上部および下部エンドプレート22,23によって覆われているため、オイルが濾材21の上端部および下端部から流入することがないとともに、中央部ではセンタボルト40とゴムブッシュ24,25とが密着して嵌合されているため、オイルが濾材21を通過せずに流出空間15b内に流入することもない。よって、流入空間15a内に流入されたオイルは必ず、濾材21を通過して濾過され、インナーチューブ30のチューブ流通孔32から流出空間15b内に流入することとなる。
【0022】
また、インナーチューブ30には、円筒軸方向の略中央にのみチューブ流通孔32が形成されているため、濾材21の外側全体から流入するオイルは、チューブ流通孔32が形成された有孔部30a(内側中央)に向かって濾材21内を流通することとなる。よって、最もオイルが流入しやすいオイル流入孔13近傍の濾材部分(上側無孔部30b側)に多くのオイルが流入しても、オイルは上側無孔部30bから流出空間15bへ流入することができないため、オイルは濾材21内で有孔部30aへ向かって流通し、オイルが濾材21内をより広範囲に流れて濾過面積を有効に活用することができる。このようにして、オイルが濾材21を通過することによりオイル内に混入したゴミ等の不純物が濾過される。
【0023】
そして、濾材21によって濾過されたオイルは、有孔部30aに形成された多数のチューブ流通孔32を通過して流出空間15b内に流入する。この流出空間15b内に流入したオイルは、流入空間15b内の上方でセンタボルト40の絞り孔41で流量を絞られながらセンタボルト油路42から上方へ通過し、さらに、フィルタヘッド11の第1および第2中間孔16,17へ流入して、オイル流出孔14からオイルフィルタ1外へ流出されることとなる。
【0024】
なお、このフィルタエレメント20の取り付けにおいては、チューブ流通孔32を有する有孔部30aが円筒軸方向の中央に形成されフィルタエレメント20が上下対称となる構成となっているため、フィルタエレメント20の取り付けに際しては、上部側または下部側のどちらから装着してもよく、取り付けの方向性を気にする必要がなく、フィルタエレメント20の交換の作業性が向上する。
【実施例2】
【0025】
次に、図2を用いて本発明に係るフィルタエレメントの第2実施例について説明する。なお、第1実施例と同一の部材は同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。第1実施例では、チューブ流通孔32をインナーチューブ30に対して、円筒軸方向の中央に形成する構成としていたが、この第2実施例に係るフィルタエレメント120では、チューブ流通孔32をインナーチューブ130において、円筒軸方向の下方部に形成する構成としている。すなわち、多数のチューブ流通孔32が形成された有孔部130aをインナーチューブ130の円筒軸方向の下方部に設けて、インナーチューブ30におけるその他の部分についてはチューブ流通孔32が形成されていない無孔部130bからなる構成とする。
【0026】
このように構成されたフィルタエレメント120が装着されたオイルフィルタ101によって、オイルの濾過を行う場合について説明する。なお、図2において、オイルの流れは矢印Aによって表されている。フィルタヘッド11に形成されたオイル流入孔13から流入空間15a内に流入したオイルは、濾材21の外側全体から導入され、有孔部130aが位置する内側下方に向かって濾材21内を流れることとなる。このように、多数のチューブ流通孔32が形成された有孔部130aは、インナーチューブ130においてオイル流入孔13から最も離れた円筒軸方向の下方部に設けているため、有孔部130aよりも上方に位置する濾材部分にオイルが導入されたときでも、無孔部130bからはオイルの流通ができないことにより、有孔部130aが位置する内側下方へ向かって流れることとなる。よって、濾材21の全体にオイルが導入され易くなり、第1実施例におけるフィルタエレメント20よりも濾材21の全体を広範囲に使用することができ、目詰まりの程度のばらつきをより抑えることができる。
【0027】
なお、このフィルタエレメント120の取り付けにおいては、有孔部130a側を下側としてフィルタケース10内に装着しなければならないが、インナーチューブ131は、濾材21、上部エンドプレート22および下部エンドプレート23により全体を覆われて、外部から有孔部131側(取り付け方向)を確認することができないため、フィルタエレメント120の取り付け方向が確認できるような識別マーク等を付すことが好ましい。
【実施例3】
【0028】
次に、図3を用いて本発明に係るフィルタエレメントの第3実施例について説明する。なお、ここでも上述の第1実施例と同一の部材は同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。第1および第2実施例では、チューブ流通孔32をインナーチューブ30,130に対して一部の範囲(例えば、第1実施例では円筒軸方向の略中央)にのみ形成する構成としたが、この第3実施例に係るフィルタエレメント220では、チューブ流通孔32を、インナーチューブ230において下方にいくにしたがって徐々に孔径が大きくなるようインナーチューブ230の全面に多数形成する構成としている。
【0029】
このように構成されたフィルタエレメント220が装着されたオイルフィルタ201では、チューブ流通孔32に対するオイルの流通抵抗が、孔径の小さいチューブ流通孔32を有するインナーチューブ230の上部側では抵抗が大きく、孔径の小さいチューブ流通孔32を有するインナーチューブ230の下方部では抵抗が小さくなる。従って、チューブ流通孔32に対するオイルの流通抵抗が、インナーチューブ230の下方にいくにしたがって小さくなるため、濾材21の上方から導入されるオイルを流通抵抗の小さい濾材21の下方部まで流入させ、濾材21を広範囲に使用することができることとなる。なお、このフィルタエレメント230においても、フィルタケース10への取り付けの方向が確認できるような識別マーク等を付すことが好ましい。
【0030】
以上のように、本実施例に係るフィルタエレメント20,120,220によると、オイルが濾材21に広範囲に流れ、濾材21の目詰まりの程度のばらつきを抑えることができるため、フィルタエレメント20,120,220の部分的な劣化に伴う濾過効率の低下が防止できるとともに、濾材21における濾過面積が有効に活用され寿命が延長されて、フィルタエレメント20,120,220を頻繁に交換するという不具合も改善される。
【0031】
なお、上記の実施例においては、絞り孔41が流出空間15b内の上方に位置するようにセンタボルト40に形成されているが、これに限定されるものではなく、絞り孔41を流出空間15b内において、有孔部30a,130aの近傍に位置するようにセンタボルト40に形成してもよい。ただし、絞り孔41と連通するセンタボルト油路42をセンタボルト40の先端から穴あけ加工を行う上では、本実施例のように、センタボルト油路42の油路長さが短くて済むように絞り孔41の位置が流出空間15bに対して上方となるように形成されることが好ましい。
【0032】
さらに、上記の実施例においては、本発明に係るフィルタエレメントをエンジンオイル濾過用のバイパスオイルフィルタに適用された場合について説明したが、これに限られるものではなく、フルフロー式のオイルフィルタや、エンジンオイル以外の燃料等の他の流体フィルタに適用させて用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施例に係るフィルタエレメントを備えたオイルフィルタを示す側面断面図である。
【図2】本発明の第2実施例に係るフィルタエレメントを備えたオイルフィルタを示す側面断面図である。
【図3】本発明の第3実施例に係るフィルタエレメントを備えたオイルフィルタを示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1,101,201 オイルフィルタ(バイパスフィルタ)
10 フィルタケース
11 フィルタヘッド
12 ケース本体
15 エレメント配設空間
15a 流入空間
15b 流出空間
20,120,220 フィルタエレメント
21 濾材
22 上部エンドプレート
23 下部エンドプレート
30,130,230 インナーチューブ
30a,130a 有孔部
32 チューブ流通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にエレメント配設空間を有し前記エレメント配設空間と外部を連通させる流入孔および流出孔が形成された円筒状のフィルタケース内において、前記エレメント配設空間を前記流入孔に連通する流入空間と前記流出孔に連通する流出空間とに二分させ、円筒軸方向の両端部のうちいずれか一方の端部を前記流入孔に近接するようにして前記エレメント配設空間内に着脱自在に装着されるフィルタエレメントであって、
円筒状に形成された濾材と、
チューブ流通孔を備え、前記濾材の内周面に沿う形状に形成されたインナーチューブと、
前記濾材および前記インナーチューブの円筒軸方向の前記両端部側を覆ってそれぞれ設けられたエンドプレートとからなり、
前記流入孔から前記流入空間内に導入されたオイルを、前記濾材を通過させ前記チューブ流通孔から前記流出空間内に流出させるように構成し、
前記インナーチューブが、前記チューブ流通孔を円筒軸方向に対して略中央にのみ備えて構成されることを特徴とするフィルタエレメント。
【請求項2】
内部にエレメント配設空間を有し前記エレメント配設空間と外部を連通させる流入孔および流出孔が形成された円筒状のフィルタケース内において、前記エレメント配設空間を前記流入孔に連通する流入空間と前記流出孔に連通する流出空間とに二分させ、円筒軸方向の一端部を前記流入孔に近接するようにして前記エレメント配設空間内に着脱自在に装着されるフィルタエレメントであって、
円筒状に形成された濾材と、
チューブ流通孔を備え、前記濾材の内周面に沿う形状に形成されたインナーチューブと、
前記濾材および前記インナーチューブの円筒軸方向の前記一端部側を覆って設けられた第1エンドプレートと、
前記濾材および前記インナーチューブの円筒軸方向の他端部側を覆って設けられた第2エンドプレートとからなり、
前記流入孔から前記流入空間内に導入されたオイルを、前記濾材を通過させ前記チューブ流通孔から前記流出空間内に流出させるように構成し、
前記インナーチューブが、前記チューブ流通孔を円筒軸方向に対して前記第2エンドプレート側にのみ備えて構成されることを特徴とするフィルタエレメント。
【請求項3】
内部にエレメント配設空間を有し前記エレメント配設空間と外部を連通させる流入孔および流出孔が形成された円筒状のフィルタケース内において、前記エレメント配設空間を前記流入孔に連通する流入空間と前記流出孔に連通する流出空間とに二分させ、円筒軸方向の一端部を前記流入孔に近接するようにして前記エレメント配設空間内に着脱自在に装着されるフィルタエレメントであって、
円筒状に形成された濾材と、
チューブ流通孔を備え、前記濾材の内周面に沿う形状に形成されたインナーチューブと、
前記濾材および前記インナーチューブの円筒軸方向の前記一端部側を覆って設けられた第1エンドプレートと、
前記濾材および前記インナーチューブの円筒軸方向の他端部側を覆って設けられた第2エンドプレートとからなり、
前記流入孔から前記流入空間内に導入されたオイルを、前記濾材を通過させ前記チューブ流通孔から前記流出空間内に流出させるように構成し、
前記インナーチューブが、円筒軸方向に対して前記第1エンドプレート側から前記第2エンドプレート側にいくにしたがって大きな孔径の前記チューブ流通孔を備えて構成されたことを特徴とするフィルタエレメント。













【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−45596(P2009−45596A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216330(P2007−216330)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000252252)和興フィルタテクノロジー株式会社 (41)
【Fターム(参考)】