説明

フィルタープレス、排出土処理装置及び排出土処理車両

【課題】占有面積が少なくてすむフィルタープレス、小型の輸送用車両にも搭載できる排出土処理装置及び排出土処理車両の提供を目的とする。
【解決手段】排出土処理装置100は、排出土に含まれる固形分を凝集させてフロックを生成する凝集処理槽1と、凝集処理槽1より供給されたフロックを沈降分離する沈降分離槽2と、沈降分離槽2において分離されたフロックを濾過体33,34により濾過して固液分離するフィルタープレス3とを備え、前記沈降分離槽2を凝集処理槽1の下方に配設したものである。また、排出土処理車両は、前記排出土処理装置100を輸送用車両の荷台に搭載したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタープレス、排出土処理装置及び排出土処理車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建設現場等で発生した排出土を回収し、土砂分と水分とを分離し再利用する方法としては、振動スクリーン、フィルタープレス、遠心分離機等を単独または併用で用いて固液分離し、液体分を放流し、固形分を産業廃棄物として最終処分場に埋め立てて廃棄処理している。
【0003】
特許文献1には、このような処理を行う処理装置を輸送用車両の荷台に搭載した排出土処理車両が開示されており、排出土の処理に用いるフィルタープレスとして、一方端に先端ヘッドを他方端に押圧ヘッドを配置して、その間に濾過体を張設中空濾枠を横方向に積層させ、排出土の充填空間を形成し、この充填空間に排出土を充填した後、脱水濾過することで脱水ケーキとして排出する技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平2005−28195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、排出土の充填作業では先端ヘッド及び押圧ヘッドに高い圧力がかかり、上記特許文献1記載のフィルタープレスは装置自体が非常に大きくなり、工事現場等での使用面積が制限されるにもかかわらず、大型車両に搭載しなければならないという問題があった。
【0006】
また、地震、大雨、土砂崩れ、洪水等の災害発生時には、排出土の早急な除去作業が必要となるが、大型車両は災害発生現場に乗り入れることが困難であるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、占有面積が少なくてすむフィルタープレス、小型の輸送用車両にも搭載できる排出土処理装置及び排出土処理車両の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るフィルタープレスは、濾過体が張設された枠体が複数並設され、隣接する前記濾過体によって排出土の充填空間が形成され、前記充填空間に圧送された排出土を濾過して固液分離するフィルタープレスにおいて、前記並設された複数の枠体がヒンジ部を介して揺動自在に連結されるとともに、前記複数の枠体のうち少なくとも両端に位置する枠体を連結して前記複数の枠体を相互に密着離間させる連結アームを備えた構成にしてある。
【0009】
また、前記構成において、ヒンジ部は、枠体の上部に形成された少なくとも1個の長穴と、前記長穴に回動自在に軸支されるヒンジ軸とから構成されているものである。
【0010】
そして、本発明に係る排出土処理装置は、排出土に含まれる固形分を凝集させてフロックを生成する凝集処理槽と、凝集処理槽より供給されたフロックを沈降分離する沈降分離槽と、沈降分離槽において分離されたフロックを濾過体により濾過して固液分離するフィルタープレスとを備え、前記沈降分離槽を凝集処理槽の下方に配設したものである。
【0011】
更に、前記した各構成において、沈降分離槽内を加圧して沈降分離槽内のフロックをフィルタープレスへ圧送する加圧手段を備えているものである。
【0012】
更に、本発明に係る排出土処理車両は、前記した各構成の排出土処理装置を輸送用車両の荷台に搭載したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るフィルタープレスによれば、並設された複数の枠体がヒンジ部を介して揺動自在に連結されており、且つ、複数の枠体のうち少なくとも両端に位置する枠体を連結して前記枠体を相互に密着離間させる連結アームを備えているので、従来のフィルタープレスのように先端ヘッド及び押圧ヘッドを用いとことがなく、フィルタープレスの占有面積を非常に小さくできる。このようなフィルタープレスを用いた排出土処理装置は小型の輸送用車両の荷台に搭載可能となる。
【0014】
また、ヒンジ部を少なくとも1個の長穴とヒンジ軸とにより構成した場合は、枠体に挟まれる弾性パッキングの損傷を軽減するこができる。
【0015】
そして、沈降分離槽は凝集処理槽の下方に配設されている場合は、凝集処理槽内で生成され、凝集処理槽の下部に堆積した堆積物を自重により沈降分離槽に供給することができる。従って、ポンプを用いる必要がなく、凝集処理槽内で生成したフロックを破壊することがない。
【0016】
更に、加圧手段を設けた場合は、加圧手段によって沈降分離槽内を加圧し、沈降分離槽内の沈降物をフィルタープレスに圧送するので、ポンプを用いる必要がない。従って、フロックの破壊がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の最良の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態にかかる排出土処理車両の左側面図である。排出土処理車両110は排出土の脱水処理を行う排出土処理装置100を輸送用車両111の荷台112に搭載した構造を有する。輸送用車両111は大型、中型のトラック等に限定されず、2トントラック等の小型輸送用車両であってもよい。
【0018】
排出土処理装置100で処理される排出土は、掘削された玉石、砂礫、砂、シルト及び粘土等の混在している泥土等であり、建設作業現場で掘削された泥土、生活排水路の清掃作業で生じた汚泥、食品工場から排出された汚濁液の他、地震、大雨、土砂崩れ、洪水等の災害発生時に生じた撤去されるべき泥土等が含まれる。
【0019】
図2は、排出土処理装置100の構成概略図である。同図より、排出土処理装置100は、排出土に含まれる固形分を凝集させてフロックを生成する凝集処理槽1と、凝集処理槽1より供給されたフロックを沈降分離する沈降分離槽2と、沈降分離槽2において分離されたフロックを濾過体33,34により濾過して固液分離するフィルタープレス3と、沈降分離槽2から供給された上澄み液を濾過体55によって濾過する濾過槽4と、濾過槽4によって濾過された濾過液を貯留する濾過液貯留槽5により構成されている。
【0020】
凝集処理槽1は、脱水処理されるべき排出土が投入され、貯留される。約200L乃至300Lの容量を有し、凝集処理槽1内には、隣接する凝集剤槽6から配管87を介して供給された凝集剤と、貯留する排出土とを攪拌混合する攪拌手段7を備えている。攪拌手段7は、垂直に設けられた軸部7aと当該軸部7aの下端に取り付けられた回転翼7bとを備え、回転翼7bは図示しないモータにより軸部7aを中心として回転するよう構成されている。
【0021】
また、凝集処理槽1の下部は漏斗状に形成され、下端部は配管81によって沈降分離槽2の下部に接続されており、凝集処理槽1の上部には、凝集処理槽1の容量を超えて投入された排出土を濾過槽4へオーバーフローさせる配管89が接続されている。
【0022】
凝集処理槽1の内部には、フィルタープレス3において固形分と分離された液体分を配管83より流入させることによって、フィルタープレス3内に蓄積する固形分である脱水ケーキが所定量に至っていることを検出する脱水ケーキ検出手段70が設けられている。
【0023】
図3に、脱水ケーキ検出手段70の概略図を示す。脱水ケーキ検出手段70は、円筒状または角筒状の本体71を備え、本体71の上部には上開口部75を有し、本体71の下部には下開口部72を有している。上開口部75及び下開口部72は本体71の横断面積より小さい開口面積を有する。また、本体71の下部は漏斗状に形成され、バルブ98が取り付けられている。
【0024】
本体71の高さ方向中央部より上の位置、例えば、下開口部72から全高さの5分の3程度の位置に側面開口部73が形成されている。側面開口部73は本体71の上開口部72と略同じ開口面積を有する。また、本体71内の、側面開口部73より低い位置には液面センサ74を備えている。液面センサ74は本体71内に貯留する液体分の液面がこの液面センサ74の設けられた高さ位置に達したことを検知する。
【0025】
凝集剤槽6は、水に溶解された凝集剤を貯留している。凝集剤は無機系凝集剤及び有機系凝集剤のいずれであってもよく、無機系凝集剤としては、ポリ塩化アルミニウム、ポリ塩化鉄、硫酸第二鉄、硫酸アルミニウム、ベントナイト等が挙げられる。有機系凝集剤としては、ポリアクリル酸エステル系、ポリメタクリル酸エステル系、ポリアクリルアミド系、ポリアミン系、ポリジシアンジアミド系等のカチオン性高分子凝集剤、ポリアクリル酸ソーダ系、ポリアクリルアミド系等のアニオン性高分子凝集剤、ポリアクリルアミド系のノニオン性高分子凝集剤 、アミン系等の低分子有機凝集剤等が挙げられる。
【0026】
凝集剤溶液はポンプ9の駆動により配管87を通って凝集処理槽1に供給される。凝集剤槽6の内部には、凝集剤及び水を攪拌し溶解させる攪拌手段60を備えている。攪拌手段60は、凝集処理槽1の攪拌手段7と同様に、軸部60aと回転翼60bとを備えている。
【0027】
沈降分離槽2は凝集処理槽1の下方に配設されている。このため、凝集処理槽1内で生成され、凝集処理槽1の下部に堆積したフロック等の堆積物を自重により沈降分離槽2に供給することができる。沈降分離槽2は、円筒状、且つ、密閉式であるので、槽内を加圧することが可能であり、沈降分離槽2が直方体状である場合に比較して容易に槽内を加圧することができる。そして、沈降分離槽2内を加圧して沈降分離槽2内のフロック等の沈降物をフィルタープレス3へ圧送する加圧手段8を備えている。加圧手段8としては、バルブ15及び配管85により沈降分離槽2の上部に接続された空気圧縮機61等が挙げられる。
【0028】
沈降分離槽2内が所定値を上回る高圧状態に達した場合に、沈降分離槽2を大気に開放して槽内の圧力を低下させる安全弁21が沈降分離槽2の上部に設けられている。また、沈降分離槽2の内部には、例えば沈降分離槽2の全高さの3分の2程度といった所定の高さ位置に沈降物センサ24を備えている。沈降物センサ24は沈降分離槽2内に沈降したフロック等の沈降物がこの沈降物センサ24の設けられた高さ位置までに達したことを検知する。
【0029】
また、沈降分離槽2の上部には配管86が接続され、配管86は沈降分離槽2からオーバーフローした上澄み液を貯留する上澄み液貯留槽23に接続されている。この上済み液貯留槽23内に貯留する液体は、ポンプ91の駆動により配管88を通って濾過槽4に供給される。沈降分離槽2の下部は漏斗状に形成され、図示しないバイブレータを備えている。バイブレータは、フィルタープレス3にフロック等の沈降物を圧送する際、沈降分離槽2内に沈降物を残さないために設けられている。沈降分離槽2の下端部は配管82によってフィルタープレス3の上部に接続されている。
【0030】
図4に、フィルタープレス3の分解斜視図を示す。尚、フィルタープレス3は、排出土処理装置100に設置される際、傾斜した状態で設置されるが、図4においては、説明の都合上、傾斜させない状態で示している。同図より、フィルタープレス3は、背面開口部を有する直方体状の枠体31と、前面開口部を有する直方体状の枠体32と、枠体31の背面開口部に張設される濾過板33と、枠体32の前面開口部に張設される濾過板34と、濾過体33,34の間に挟まれる厚さ10mm〜20mm程度の軟弾性材からなる弾性パッキング40とを備えている。この濾過体33,34及び弾性パッキング40が互いに密接し、気密状にシールされ、フロック等の沈殿物の充填空間41を形成する。
【0031】
濾過体33,34はフロック等の沈殿物を濾過できる構造であれば特に限定されず、天然樹脂製または合成樹脂製の布等で構成してもよく、金属製等の針金を交差させたメッシュ状構造であってもよく、平板に多角形状又は円形状の貫通孔が多数形成された構造であってもよい。
【0032】
枠体31の前面及び濾過体33の、各々の上部には充填空間41にフロック等の沈殿物を圧送する充填ホース68を挿脱するための圧送口35がそれぞれ設けられており、また、枠体31の前面及び枠体32の背面の各々の下部には、ともに濾過体33,34によって濾過され、枠体31,32内に貯留している液体分を脱水ケーキ検出手段70へと送る配管83a,83bが接続されている。
【0033】
枠体31,32の上部にはヒンジ部38が設けられている。ヒンジ部38は、枠体31の上部に取り付けられ、長穴37の形成されたヒンジ軸受36aと、枠体32の上部に取り付けられ丸穴62の形成されたヒンジ軸受36bと、前記長穴37及び丸穴62によって回動自在に軸支されるヒンジ軸39と、ヒンジ軸39が外れるのを防止する止具63,63とから構成されている。
【0034】
枠体31の前面の高さ方向中央部に設けられた軸受48に水平軸43が回動自在に軸支されている。この水平軸43の左右端部には押さえアーム44,44が固着され、これらの押さえアーム44,44は水平軸43の軸心回りの回転に伴って揺動するようになっている。
【0035】
また、水平軸43の長手方向中央部には、クランクアーム94の一端部が固着されている。クランクアーム94の他端部は油圧シリンダー93(図1参照)のピストン軸95の下端部に回動自在に連結され、ピストン軸95の上下運動に伴ってクランクアーム94が揺動して水平軸43を回転させる。これにより、押さえアーム44,44が水平軸43の軸心回りに揺動するようになっている。
【0036】
枠体32の背面の高さ方向中央部には、枠体32の左右両側面から外方に突出した水平軸46が図示しない軸受によって回動自在に軸支されている。この水平軸46の左右両端部には連結アーム45,45が回動自在に軸支され、左右の押さえアーム44,44の自由端と、連結アーム45,45の自由端とは枢支部材64,64を介して揺動自在に連結されている。
【0037】
図5(a)に示すように、ピストン軸95を最も低い位置とし、押さえアーム44と連結アーム45とが一直線上に並んだ場合には、枠体31,32が濾過体33,34及び弾性パッキング40を挟んで接近することになる。この状態で充填空間41に沈降物を圧送し、濾過体33,34によって濾過し、固液分離する。これに対し、同図(b)に示すように、ピストン軸95を最も高い位置とし、押さえアーム44を揺動させると、押さえアーム44と連結アーム45とが一直線上にはなく、異なる角度で傾斜する。この場合には、枠体31,32の上部のみヒンジ部38により連結され、下部が離間した状態となる。枠体31,32の下部が離間した状態になると、充填空間41内で固形分として残っていた脱水ケーキが下方に落下して充填空間41から除去できる。
【0038】
押さえアーム44及び連結アーム45を一直線上にし、枠体31,32を接近させた状態から、枢支部材64を更に2〜3ミリメートル程度下方に下げると、充填空間41に沈降物を圧送した際、負荷のかかる方向である枠体31,32が離間しようとする方向と、押さえアーム44及び連結アーム45により接近させるよう押さえアーム44及び連結アーム45により負荷をかけている方向とが若干ずれるので、より強力に枠体31,32を押さえることができる。
【0039】
図1及び図6(a)〜(c)に示すように、フィルタープレス3は、排出土処理車両111に載置される際、所定の角度傾斜して載置されている。また、輸送用車両111の荷台112から左側面外方にフィルタープレス3を突出させることができるよう支柱58に回動自在に軸支されている。これにより、脱水ケーキの除去作業を荷台112上の狭い空間でなく、輸送用車両111の左側面外方の広い空間において行うことができる。
【0040】
濾過槽4には、上澄み液貯留槽23からの上澄み液中に混入しているフロック等を濾過できる濾過体55が張設されている。濾過体55の目の細かさはフィルタープレス3の濾過体33,34と同程度、または、濾過体33,34より細かいものを用いる。濾過体55の材質は、濾過体33,34と同様にフロック等の固形分を濾過できる構造であれば特に限定されず、天然樹脂製または合成樹脂製の布等で構成してもよく、金属製等の針金を交差させたメッシュ状構造であってもよく、平板に多角形状又は円形状の貫通孔が多数形成された構造であってもよい。濾過槽4の下部には配管84aが接続されている。
【0041】
濾過液貯留槽5は濾過体55により濾過された液体を貯留する。濾過液貯留槽5の下部には配管84bが接続されており、配管84a及び配管84bはともに三方バルブ14aを介して配管84cに切り替え可能に接続されている。配管84cにはポンプ10が設けられ、三方バルブ14bによって、配管84d及び配管84eに接続されている。配管84dは配管84b、三方バルブ14a、配管84cを通った濾過液貯留槽5からの液体を再び濾過液貯留槽5に戻すために設けられている。このように、濾過液貯留槽5内の液体分を循環させることにより、添加されたpH調整剤や水質改善剤を攪拌するようになっている。また、配管84eは濾過槽4内に残存している固形分、または、濾過液貯留槽5内の液体分を外部に取り出すために設けられている。
【0042】
配管81,82,83,85,86にはそれぞれバルブ11,12,13,15,16が設けられ、配管84には三方バルブ14a,14bが設けられている。各バルブの開閉は制御部90によって制御されている。また、発電機92により、攪拌手段7,60、加圧手段8、制御部90、バルブ11〜16、沈降物センサ24、液面センサ74及びポンプ9,10,91の動作に必要な電力を供給している。
【0043】
更に、図示しないが、排出土処理車両110は、乾燥麺やカンパンなどの非常食、照明器具、救急箱、ガスコンロ、消化器、ロープ、ポリ袋、シート、軍手、ハンマー、ドリルやディスクグラインダーなどの電動工具、タオル、食器、鋸、釘抜き、ホース、ホース自動巻き取り機、浮き輪等を搭載している。
【0044】
引続き、排出土水処理車両110の動作につき、以下に説明する。建設作業現場や災害発生地等の排出土を処理する現場に排出土処理車両110を乗り入れる。そして、バケツ等を用いて手動で、又は、ポンプ(図示しない)に接続された自動巻き取り機能付きのホース(図示しない)を用いるなどして自動で、凝集処理槽1に処理すべき排出土を投入する。
【0045】
そして、ポンプ9の駆動により、凝集剤槽6から凝集剤を凝集処理槽1に供給する。凝集処理槽1内で排出土と凝集剤とが攪拌手段7により攪拌混合され、排出土に含まれる固形分を凝集させてフロックを生成する。生成したフロックは、凝集処理槽1の下部に堆積する。
【0046】
フロックの堆積が開始した時点で、バルブ11を開放し、凝集処理槽1内のフロック及び液体分を沈降分離槽2に供給する。沈降分離槽2を凝集処理槽1の下部に設けたので、バルブ11を開放するだけで凝集処理槽1の下部に堆積したフロックを自重により沈降分離槽2に送ることができる。よって、ポンプを用いることがないので、ポンプを用いた場合に凝集処理槽1において生成したフロックを破壊してしまうといった問題が生じない。また、簡素な構造とすることができ、排出土処理装置100の占有空間を小さくでき、製造及び運転コストを抑えることができる。
【0047】
沈降分離槽2では、供給されたフロックを沈降分離する。ここで、凝集処理槽1からのフロック及び液体分は沈降分離槽2の下部より沈降分離槽2内に供給されるので、既に分離されている上澄み液中にフロックが混入し、上澄み液を再度濁らせるといったことがない。
【0048】
沈降分離槽2内の上澄み液が配管86の接続された位置まで達すると配管86からオーバーフローし、開放しているバルブ16を通って上澄み液貯留槽23に流出する。上澄み液貯留槽23内の上澄み液はポンプ91の駆動により配管88を通って濾過槽4に供給される。
【0049】
沈降分離槽2において分離され、下部に沈降したフロック等の沈降物が、沈降物センサ24の設けられている所定の高さまで達したことを沈降物センサ24が検出し、制御部90に伝達する。制御部90はこの沈降物センサ24からの伝達後、バルブ11,16を閉止し、バルブ12,15を開放する。そして、空気圧縮機61を作動させ、配管85より沈降分離槽2内に空気を供給する。この空気の供給によって沈降分離槽2内は加圧され、沈降分離槽2の下部に沈降したフロックをフィルタープレス3に圧送する。
【0050】
沈降分離槽2の下部に設けたバイブレータの振動により、フロック等の沈降物を沈降分離槽2内に残存させることなくフィルタープレス3に送ることができる。
【0051】
加圧手段8によって沈降分離槽2内を加圧し、沈降分離槽2内のフロックをフィルタープレス3に圧送するので、ポンプを用いる必要がない。よって、凝集処理槽1内に堆積したフロック等の堆積物をポンプを用いないで沈降分離槽2に供給する場合と同様に、フロックの破壊がなく、簡素な構造にでき、占有空間を小さくでき、製造及び運転コストを抑えることができる。
【0052】
沈降分離槽2からのフロック等の沈降物は配管82及び充填ホース68を通り、充填空間41に充填される。そして、空気圧縮機61からの空気を充填ホース68を介して充填空間41内に供給し、充填空間41を加圧してフロック等の沈降物を脱水し、脱水ケーキを生成する。フロック等の沈降物に含まれる液体分は濾過体33,34を通加し、枠体31,32を経て配管83a,83bに流入し、バルブ13を通って凝集処理槽1のケーキ検出手段70に流入する。
【0053】
脱水ケーキ検出手段70では、以下のようにして充填空間41で生成された脱水ケーキが所定量に達したことを検出する。即ち、本体71の上開口部75よりフィルタープレス3からの液体分が供給されると、一部の液体分のみ下開口部72から下方に流出し、残りの液体分は本体71内に貯留する。
【0054】
脱水ケーキがまだ少量である間は、濾過体33,34の目は詰まっておらず、本体71に供給される液体分の量は、目が詰まった場合に供給される液体分の量よりも多くなる。従って、本体71内に貯留する液体分は増量し、この結果、本体71内の液面が上昇し、側面開口部71から本体71内の液体分が流出することとなる。ここで、下開口部72及び側面開口部73から凝集処理槽1内に流出した液体分は再度、排出土の処理に利用される。
【0055】
その後、脱水ケーキの量が所定量に達し、濾過体33,34の目が詰まった場合、本体71に供給される液体分の量は、目が詰まっていない場合の液体分の量より少なくなる。このため、本体71内に貯留している液体分の液面が下がって側面開口部73から液体分は流出しなくなり、液体分の液面が液面センサ74の設けられた位置にまで達する。この時、液面センサ74が液面を検出し、制御部90に伝達する。
【0056】
制御部90では、液面センサ74からの出力を受信し、脱水ケーキが所定量に達したことを表示する。脱水ケーキが所定量に達すると、制御部90はバルブ12,15を閉止するとともに、加圧手段8の運転を停止する。そして、図6(a),(b)に示すように、フィルタープレス3を支柱58の軸心回りに回動させ、輸送用車両111の外方に突出させ、広い空間を確保した上で、脱水ケーキの除去作業を行う。尚、脱水ケーキの除去作業は、フィルタープレス3を支柱58の軸心回りに回動させることなく、運搬用車両111の荷台112上で、フィルタープレス3の下方に受皿を設置するなどして行ってもよい。
【0057】
脱水ケーキの除去の際、支柱58を軸心にフィルタープレス3を回動し、輸送用車両111の外方へ突出させた場合には、2トントラックの荷台112上等といった狭い空間ではなく、広い空間内でフロックの除去作業を行うことができる。更に、このようなフィルタープレス3を輸送用車両111の外方へ突出させた状態においては、脱水ケーキの除去作業だけでなく、濾過体の張り替えや各部品のメンテナンスといった作業を行う際の 作業性を飛躍的に向上させる。また、フィルタープレス3を斜めに傾斜して設置しているので、生成した脱水ケーキを充填空間41から非常に容易に取り出すことができる。
【0058】
脱水ケーキの除去作業は、図5(b)に示すように、ピストン軸95を上向きに駆動して、クランクアーム94を上方に揺動させ、水平軸43を回転させる。水平軸43の回転により押さえアーム44が上方に揺動し、枢支部材64の位置が上方に押し上げられる。これにより、連結アーム45が押さえアーム44と異なる角度で傾斜し、枠体31,32はヒンジ軸39の軸心回りに揺動し、枠体31,32の下部を開放する。これにより、充填空間41内の脱水ケーキを、フィルタープレス3の下方に予め用意した受皿上等(図示しない)に落下させる。
【0059】
フィルタープレス3は、並設された枠体31,32がヒンジ部38を介して揺動自在に連結されており、且つ、枠体31,32を連結して前記枠体31,32を相互に密着離間させる連結アーム45を備えているので、従来のフィルタープレスのように先端ヘッド及び押圧ヘッドを用いこれらに高い圧力をかけるといったことがない。よって、高圧をかけるための大掛かりな装置が不要となり、フィルタープレス3の占有面積を非常に小さくできる。またこのようなフィルタープレス3を用いることで排出土処理装置100を小さくすることが可能となるので、小型の輸送用車両111の荷台112に排出土処理装置100を搭載可能となり、使用面積が制限される工事現場や災害発生地等に容易に乗り入れることができる。
【0060】
また、ピストン軸95の上下運動によって枢支部材64を上下に揺動するだけで、押さえアーム44と連結アーム45とのリンク機構により枠体31,32を近接離間させることができる。従って、例えば2〜3tといった高い圧力で弾性パッキング40を介して枠体31,32を密着させることが可能である。
【0061】
また、従来のように、枠体31,32が離間しようとする方向に対向する向きに枠体31,32を押さえるのではなく、離間しようとする方向と直交する向きの力により、枠体31,32を近接させている。よって、離間しようとする方向に対向する向きに押さえる場合より少ない力で、枠体31,32を押さえることができ、容易に枠体31,32を接近させることができる。
【0062】
枠体31,32を連結するヒンジ部38は、長穴37と丸穴62とをヒンジ軸39によって軸支する構造を有するので、濾過体31,32を介して枠体31,32に挟まれる弾性パッキング40の損傷を軽減するこができる。
【0063】
従来のような充填空間が多数設けられた大型のフィルタープレスを用いた排出土処理装置は、一度に多量の排出土を処理することを目的としており、その処理時間は長時間を要していた。しかし、本実施形態に係る排出土処理装置100は、フィルタープレス3の充填空間が1室であり、少ないので、排出土を短時間のうちに処理することが可能である。特に少量の排出土を短時間で処理したいような場合に適している。
【0064】
上澄み液貯留槽23から濾過槽4へ流入した上澄み液は、濾過体55により濾過され、濾過液貯留槽5に貯留される。濾過槽4内に残存するフロック等の固形分は三方バルブ14aを配管84a側に切り替えることで、ポンプ10の駆動によって、配管84a、三方バルブ14a、配管84c、配管84e側に切り替えられた三方バルブ14b、配管84eを通って外部に取り出され、廃棄されるか、または、改質材等を添加され再利用される。
【0065】
濾過液貯留槽5に貯留する液体のpHが水質基準値を満たさない場合には、pH調整剤及び/または水質改善剤が添加される。そして、ポンプ10の駆動により、配管84b、配管84b側に切り替えられた三方バルブ14a、配管84c、配管84d側に切り替えられた三方バルブ14b、配管84dを通り、濾過液貯留槽5に戻される。このように、濾過液貯留槽5内の液体を循環させることにより、濾過液貯留槽5内の液体を攪拌し、pH調整剤や水質改善剤を均一に溶解することができる。
【0066】
水質改善処理のなされた液体を三方バルブ14bを切り替えることにより配管84eから取り出し、放流するか、または、図示しない浄水器に注入し、浄化処理し、生活用水又は飲料水に用いる。また、濾過液貯留槽5内の液体を水質改善処理することなく配管84eから取り出し、再度凝集処理槽1へ戻し、再度排出土の脱水処理に利用してもよい。
【0067】
排出土を凝集処理槽1の容量を超えて投入した場合は、凝集処理槽1からオーバーフローした排出土を配管89を介して濾過槽4へ流入させ、濾過槽4の下部に接続された配管84a、三方バルブ14a、配管84c、ポンプ10、三方バルブ14b、配管84eを通し、外部に取り出す。この取り出した排出土を、再度凝集処理槽1へ投入し、上記のような脱水処理を行う。当然ながら、配管84eから取り出した排出土の凝集処理槽1への投入は凝集処理槽1内に貯留する排出土をオーバーフローさせないタイミングで行う。
【0068】
災害発生時には、水道設備の破壊等により断水する場合もあり、このような断水地域において排出土処理車両110を使用すれば、生活用水や飲料水を提供することができる。災害発生時は停電する場合も多いが、本実施形態に係る排出土処理車両110は発電機92を搭載しているので、停電時にも排出土の処理が行え、且つ、搭載している照明器具や電動工具を使用することが可能である。また、排出土処理車両110に非常食や救急用品、救命作業用具、飲料水等搭載しているので、災害発生現場での救命活動に利用可能である。
【0069】
尚、上記の実施形態では、フィルタープレス3を、並設された複数の枠体31,32がヒンジ部38を介して揺動自在に連結されるとともに、枠体31,32を連結して枠体31,32を相互に密着離間させる連結アーム45を備え、ヒンジ部38は、枠体31,32の上部に形成された少なくとも1個の丸穴62,62と、前記丸穴62,62に回動自在に軸支されるヒンジ軸39とから構成されたが、本発明の排出土処理車両110はそれに限定されるものでなく、例えば、一方端に先端ヘッドを他方端に押圧ヘッドを配置して、その間に濾過体を両側に装備した中空濾枠を横方向に積層させ、排出土の充填空間を形成し、この充填空間に排出土を充填した後、脱水濾過することで脱水ケーキとして排出する従来のフィルタープレスを用いてもよい。
【0070】
また、沈降分離槽2内を加圧して沈降分離槽2内のフロック等の沈殿物をフィルタープレス3へ圧送する加圧手段8を備えていたが、これに限定されず、ポンプにより沈降分離槽内のフロック等の沈殿物をフィルタープレスへ圧送してもよい。また、排出土処理装置100を輸送用車両111の荷台に搭載したが、これに限定されず、排出土を処理する現場の地面の上に設置し使用する構造の排出土処理装置であってもよい。
【0071】
また、フィルタープレス3のヒンジ部38は、長穴37と丸穴62とを、ヒンジ軸39とによって軸支したが、これに限定されず、丸穴62を長穴とし、2個の長穴をヒンジ軸39によって軸支してもよい。また、長穴37を丸穴とし、2個の丸穴をヒンジ軸39によって軸支してもよい。
【0072】
沈降分離槽2内の上澄み液は上澄液貯留槽23を介して濾過槽4へ流入させたが、これに限定されず、凝集処理槽1に戻して、凝集処理に再度利用してもよい。
【0073】
また、充填空間41を1個にしたが、これに限定されず、2個としてもよい。即ち、図7(a),(b)に示すように、枠体31a,32aの間に新たにもう1個の直方体状の中空枠体66を挟み、枠体31aと枠体66との間及び枠体66と枠体32aとの間に夫々濾過体33a,67及び69,34aを弾性パッキング40a,65を介して挟んで、充填空間41a,78を備えた構造としてもよい。
【0074】
枠体66は、前面及び背面が、双方ともまたはいずれか一方のみ、開口しており、前面開口部及び/または背面開口部に夫々濾過体67,69が張設された構造を有する。枠体31a及び濾過体33a,67,69には充填ホース68aを挿脱するための圧送口35aが設けられている。尚、充填ホース68aは充填空間41a、78にフロック等の沈殿物を圧送する。
【0075】
枠体66の下部には、濾過体67,69によって濾過され、枠体66内に貯留している液体分を脱水ケーキ検出手段70へと送る配管83dが接続されている。
【0076】
枠体66の下部には、濾過体67,69によって濾過され、枠体66内に貯留している液体分を脱水ケーキ検出手段70へと送る配管83dが接続されている。
【0077】
枠体66は、枠体66の上部に設けられたヒンジ部77によって枠体32に揺動自在に連結されている。ヒンジ部77は、枠体66の上部に取り付けられ、長穴76の形成されたヒンジ軸受97と、枠体32aの上部に取り付けられ丸穴62aの形成されたヒンジ軸受36cと、前記長穴76及び丸穴62aによって回動自在に軸支されるヒンジ軸79と、ヒンジ軸39が外れるのを防止する止具63aから構成されている。
【0078】
この充填空間41a,78が2個有するフィルタープレス3aの動作は、まず、沈降分離僧2から圧送されたフロック等の沈降物を、圧送口35aに挿入された充填用ホース68aの先端、及び、充填空間41aに相当する位置に形成された貫通孔から、充填空間78、41a内に供給する。次いで、加圧手段によって充填空間41a,78を加圧し、固液分離する。
【0079】
脱水ケーキが所定量に達すると、ピストン軸95aを上向きに駆動して、枢支部材64aの位置を上方に押し上げ、連結アーム45aを押さえアーム44aと異なる角度で傾斜させる。そして、ヒンジ部77の作用により枠体31a,66,32aを揺動させ、枠体31a,66,32aの下部を開放し、充填空間41a、78内の脱水ケーキを落下させる。
【0080】
充填空間を2固にすることで、1個の時の2倍の処理が可能となる。また、ヒンジ部77に長穴76を備えているので、弾性パッキン具40a65の損傷が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の一実施形態に係る排出土処理車両の側面図である。
【図2】前記排出土処理車両の排出土処理装置の構成概略図である。
【図3】前記排出土処理車両の脱水ケーキ検出手段の概略図である。
【図4】前記排出土処理車両のフィルタープレスの分解斜視図である。
【図5】前記フィルタープレスの一の動作を示す図である。
【図6】前記フィルタープレスの他の動作を示す図である
【図7】本発明の他の実施形態に係る排出土処理車両のフィルタープレスの動作を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
1 凝集処理槽
2 沈降分離槽
3 フィルタープレス
4 濾過槽
5 濾過液貯留槽
8 加圧手段
31,32 枠体
33,34 濾過体
37 長孔
38 ヒンジ部
39 ヒンジ軸
40 弾性パッキング
41 充填空間
45 連結アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過体が張設された枠体が複数並設され、隣接する前記濾過体によって排出土の充填空間が形成され、前記充填空間に圧送された排出土を濾過して固液分離するフィルタープレスにおいて、前記並設された複数の枠体がヒンジ部を介して揺動自在に連結されるとともに、前記複数の枠体のうち少なくとも両端に位置する枠体を連結して前記複数の枠体を相互に近接離間させる連結アームを備えたことを特徴とするフィルタープレス。
【請求項2】
ヒンジ部は、枠体の上部に形成された少なくとも1個の長穴と、前記長穴に回動自在に軸支されるヒンジ軸とから構成されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルタープレス。
【請求項3】
排出土に含まれる固形分を凝集させてフロックを生成する凝集処理槽と、凝集処理槽より供給されたフロックを沈降分離する沈降分離槽と、沈降分離槽において分離されたフロックを濾過体により濾過して固液分離するフィルタープレスとを備え、前記沈降分離槽を凝集処理槽の下方に配設したことを特徴とする排出土処理装置。
【請求項4】
沈降分離槽内を加圧して沈降分離槽内のフロックをフィルタープレスへ圧送する加圧手段を備えていることを特徴とする請求項3に記載の排出土処理装置。
【請求項5】
フィルタープレスが請求項1または請求項2に記載のフィルタープレスであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の排出土処理装置。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5のうちいずれか一項に記載の排出土処理装置を輸送用車両の荷台に搭載したことを特徴とする排出土処理車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−207051(P2008−207051A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43422(P2007−43422)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(594016160)
【Fターム(参考)】