説明

フィルター成形体の製造方法

【課題】 フィルター成形体の上下で成形時にかかる圧力の差を小さなものに抑えて、成形体全体の密度のバラツキが少なく、水や空気の流量も十分得られフィルターとしての性能も均等なものが得られるフィルター成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】 浄化成分と高分子量で低メルトインデックスの重合体結合材からなる原料を金型内に充填し、加圧して所定形状に成形するフィルター成形体の製造方法であり、金型Mはフィルター側面を成形する側型7、上面を成形する上型8、下面を成形する下型9からなり、上型8と下型9はそれぞれ側型7に対して上下方向に移動可能に配置され、上型7と下型8と側型9とで形成されるキャビティ11内に原料を充填して0.5〜50kPaの力で原料を加圧しながら金型Mを加熱して、溶融した原料を加圧する工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の汚染物質を除去する水処理フィルターや大気中の汚染物質を除去する空気洗浄フィルターとして用いるフィルター成形体の製造方法に係わり、より詳しくは、活性体などの浄化成分をより効率よく固化することによって、寿命の長い水処理能力や製造時の寸法安定性に優れたフィルター成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般家庭などで使用される浄水器や清水器と呼ばれる水処理装置の交換カートリッジフィルターや空気清浄機として用いられるフィルターは、粒状もしくは繊維状の活性炭で水中の残留塩素や有機物を除去したり空気中の悪臭を取り除いたり、中空糸膜でミクロサイズの汚れ、赤サビや細菌などを取るなどの構造を有しているのが一般的である。
【0003】
例えば浄水器用フィルターの場合の具体的な構造としては、円筒形の容器からなるカートリッジ内に活性炭の部屋と中空糸膜の部屋とにそれぞれを収納配置し、水をカートリッジ内に導入して活性炭の部屋へ送ってカルキ臭やカビ臭などをとり、次いで中空糸の部屋へ送り、活性炭で取り除けなかったものを除去するというものが挙げられる(特許文献1)。
【0004】
また、中空糸膜からなるチューブを円筒形の容器からなるカートリッジの中心に配置してその外周側に活性炭を配置して、外周側から水を流し、活性炭の層を通過させた後、中空糸膜を通過させて処理済の水をカートリッジから出すという構造を有するものも使用されている(特許文献2)。
【0005】
いずれの構成においても活性炭は、活性炭が通過せず、水のみが通過するような小径の孔を有する膜に仕切られた部屋の中に粒状もしくは繊維状で単に蓄えられた状態で用いられるものであった。
【0006】
特許文献3には、多孔質プラスチック・マトリックス内に活性炭粒子をトラップした水の処理器が開示されている。多孔質プラスチック・マトリックス中に活性炭を分散させることによって小さな粒径の活性炭を使用できるようにしたものである。
【0007】
また、特許文献4にもポリマーで活性炭を固めたフィルターで、しかもそのポリマーとして1.0g/10min未満(ASTM D1238、190℃、15kg Load)である低メルトインデックスのポリマーを用いたものが開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平10−85729号公報
【特許文献2】特開平8―71541号公報
【特許文献3】特開平2−17989号公報
【特許文献4】米国特許第4753728号
【特許文献5】特開2001―187305号公報
【特許文献6】特開2003−266462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、まず特許文献1や特許文献2に開示されたような構造のフィルターにおいて、単に蓄えられた粒状もしくは繊維状活性炭では、細かな汚れや濁りなどは除去できず、従って活性炭を通過する際に細かな汚れがほとんど除去されないことから中空糸の目が詰まりやすく寿命が短いのが現状であった。
【0010】
更に粒状の活性炭を用いると、水が活性炭の層中を通過するときに、自然と水みちがついてしまうことが多く、いったん水みちがついてしまうと水の流れがその部分に集中し、活性炭を部分的にしか使うことができないので、塩素などを除去する性能の寿命が短くなってしまうことになる。
【0011】
特許文献3や特許文献4では多孔質プラスチック・マトリックス中に活性炭を分散させて固化したフィルターを用いている。このような構造にすることによって、より粒径の小さな活性炭を使うことができるので効率がよくなり、フィルター全体に水の流れるようにすることができることから、活性炭による塩素などの除去性能を長持ちさせることが可能である。
【0012】
このようなフィルターの製造方法としては例えば特許文献5に開示されているような筒状の金型内に活性炭などの浄化成分とバインダーとなる樹脂を充填して振動を加え、加熱して樹脂を融かすとともに上型を自重で加圧して所定の高さに調整するといった方法がある。
【0013】
しかし、金型に振動を加えることによって原料の充填密度を高めることはできるものの、複数の素材を配合した原料がそれぞれの素材の重さの差によって分離してしまうという問題があることと、片側加圧であるためにフィルターの上下で密度の差が発生しやすくなることからフィルターに水を流すための空孔の大きさにも差ができてしまう問題があった。
【0014】
また、フィルターの製造方法としては例えば特許文献6に開示されているような筒状の金型内に活性炭等の浄化成分とバインダーとなる樹脂を充填して上型もしくは下型のいずれか片方の型にて原料を加圧し、金型の温度を130〜300℃まで上げ、加熱状態で他方の型にて原料を加圧するといった方法がある。
【0015】
この方法では、上型と下型の両側からの加圧をすることになるが、原料を溶融後に加圧すると、原料全体が溶融しているため、その溶融粘度によりフィルター成形体の高さ全域にわたって製造時の加圧による圧力が伝わりきらず、特にフィルターの高さが長尺な製品の場合には、フィルターの上下で密度の差が発生し、その密度差から成形体の収縮率に差を生じ、製造時の仕上がり長さがばらつく状態にあった。
【0016】
特に1回の成形で多数個分の長さのフィルターを成形しカットして用いるような場合であると、1回の成形でできあがった複数個のフィルター同士の間で密度が異なり浄水時の流量が異なるものができてしまい、ひいては塩素除去能力などの性能にも差が出るという問題があった。
【0017】
そこで本発明は、長尺のフィルター成形体を製造したとしても、全体を均一に加圧することができて、部位による密度の差が少なく、金型内に充填されている複数の素材を配合した原料が分離を起こすことなく、寸法精度も高く、できあがったフィルターも全体に均等な空孔を有し、流量が変わってしまうといった問題を引き起こすことのないフィルター成形体の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記のような目的を達成するために本発明の請求項1では、水や大気などから汚染物質を除去するフィルターであって、少なくとも浄化成分と高分子量で低メルトインデックスの重合体結合材からなる原料を金型内に充填し、加熱加圧して所定形状を成形するフィルター成形体の製造方法において、金型はフィルター側面を成形する側型、上面を成形する上型、下面を成形する下型からなり、上型と下型はそれぞれ側型に対して上下方向に移動可能に配置され、上型と下型と側型とで形成されるキャビティ内に原料を充填して0.5〜50kPaの力で原料を加圧しながら金型を加熱して、更に溶融した原料を加圧する工程を有することを特徴とする。
【0019】
請求項2では、水や大気などから汚染物質を除去するフィルターであって、少なくとも浄化成分と高分子量で低メルトインデックスの重合体結合材からなる原料を金型内に充填し、加熱加圧して所定形状を成形するフィルター成形体の製造方法において、金型はフィルター側面を成形する側型、上面を成形する上型、下面を成形する下型からなり、上型と下型はそれぞれ側型に対して上下方向に移動可能に配置され、上型と下型と側型とで形成されるキャビティ内に原料を充填してフィルター成形体重量の1〜100倍の力で原料を加圧しながら金型を加熱して、更に溶融した原料を加圧する工程を有することを特徴とする。
【0020】
請求項3では、上型もしくは下型のいずれか片方の型にて原料を予備加圧し、その後他方の型にて原料を加圧しながら金型を加熱して、更に溶融した原料を加圧する工程を有するフィルター成形体の製造方法としている。
【0021】
請求項4では、上型もしくは下型の少なくとも一方の型にて原料を予備加圧した後に、原料を加熱加圧するのに先立って充填した原料に振動を加えて原料の充填密度を高めてなる請求項1〜3記載のフィルター成形体の製造方法としている。
【発明の効果】
【0022】
請求項1では金型内に充填した原料を比較的小さな力で徐々に加圧しており、加熱して溶融させた状態であっても成形体全体をより均等に加圧することができるので、上下方向で密度の差の少ない成形体を得ることができる。
【0023】
請求項2においては、請求項1と同様に金型に充填した原料を比較的小さな力で徐々に加圧しており、同様に成形体への加圧を全体でより均等なものとすることができ、更に加圧力は成形体重量を基準に決めているので、フィルター成形体のサイズによることなく適切な加圧力を与えることができる。
【0024】
請求項3においては、上下の両側から加圧するような構成を採ることによって、できあがったフィルター成形体の上下の密度差を更に小さなものに抑えることができるので、例えば長尺の成形体にして複数個を一度に成形したとしても密度が同じで、流量やフィルターとしての性能も均等なものを製造することができる。
【0025】
請求項4においては、原料の加熱前に振動を加えて原料の充填密度を高めているので成形品の上下方向の中央においても成形体の密度を高めることができ、より成形体全域にわたって密度の一定な製品を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は本発明の製造方法によって得られたフィルター成形体の例を示す斜視図、図2はフィルター成形体を用いた水処理器用フィルターの斜視図、図3は図2におけるA−A断面図、図4は水処理器の断面図である。
【0027】
本発明の製造方法によって得られるフィルター成形体1は、フィルターを構成する原料として浄化成分とそれを固化するための重合体結合材を用いている。浄化成分として例えば活性炭を用い、それを粉末状の高分子量で低メルトインデックスの重合体結合材と混合し重合体結合材をバインダーとして成形固化したものであり、使用例としては図4に示すような蛇口直結型の水処理器Sに水処理器用フィルター2のフィルターとして使用するものである。
【0028】
水処理器用フィルター2の構造としては、例えば図2、図3に示すようにφ25〜30mm×100〜120mm程度のサイズを有する円筒形のフィルター成形体1の外周に濾過層3を被覆して、円筒形のフィルター成形体1の頂面及び底面部分には、キャップ4を被せており、キャップ4は前記フィルター成形体1とは、汚れを含んだ水が通過しないように水密性をもって接続されている。
【0029】
また、円筒形のフィルター成形体1は円筒の中心軸位置にφ5〜10mm程度の孔5を有している。
【0030】
この水処理器用フィルター2を水処理機Sに取り付けたときの水の流れは。濾過層3側から、水を取り込み、濾過層3で大きなサイズのごみなどの汚れを取った後、浄化成分として活性炭を用いたフィルター成形体1を通過して残留塩素や有機物を吸着除去し、孔5内に湧き出して水処理器Sの浄水口Jから出されるという行程で処理が行われる。
【0031】
本発明の製造方法により得られるフィルター成形体1は、活性炭などの浄化成分と高分子量で低メルトインデックスの重合体結合材で固化した多孔質の固体活性炭成形体であり、このフィルター成形体1に水や空気を通すことによって水処理又は空気正常を行うように構成されたものであり、フィルター成形体1からなるフィルター単独でも水処理又は空気清浄機用フィルターとして用いることができるし、例えば中空糸膜などの他のフィルターと組み合わせて使用することも可能である。
【0032】
また、上記の例では円筒形状を有するフィルター成形体1の円筒の中央に孔5を有する形状を説明したが、孔5の無いもの、円筒以外の角柱形状など他の形状を採ったものでも構わない。
【0033】
図5は、本発明の製造方法において金型M内に浄化成分と重合体結合材の混合物である原料を充填後、上型で加圧して成形しているところの断面図、そして図6は上型の加圧が完了したところの断面図を示す。
【0034】
上記フィルター成形体1を製造する際に使用する金型Mは、図5に示すように、アルミニウム、鉄等からなる熱伝導率が高い円筒形状の円筒形状の側型7と、該側型7の内径とほぼ同じ外径を有する上型8と、同様の形状からなる下型9からなる。上型8と下型9はフランジ8a、9aを有している。この例では使用していないが、フィルター成形体1の円筒の中央に孔5を有する場合は別途中型を用いることにより孔5を形成することができる。
【0035】
この金型Mを用いた本発明のフィルター成形体1の製造方法について次に説明する。ここでは所定の密度、均一な粒度を有する円筒形状の成形体を成形する手順を例にあげて説明する。
【0036】
まず、活性炭などの浄化成分と粉末状の高分子量で低メルトインデックスの重合体結合材を所定比率で混合攪拌して両者が均質に分散した原料6とする。この時、フィルター成形体の全域に活性炭が分散して水処理の効果を十分に発揮できるように、活性炭は60メッシュより細かい粒状もしくは粉末ものを、重合体結合材は粒径が約100μm程度のものを用いる。
【0037】
側型7に下型9を、スペーサ10を介在して一部が挿入されるように配置する。次いで、側型7と下型9とで形成されたキャビティ11内に前記原料6を充填する。
【0038】
原料6の充填後、所定の圧力で上型を降下させて原料を予備加圧し、そして次にスペーサ10を取り外して下型9を側型7内に押し込むように再度予備加圧する。次いで金型を振動装置(図示しない)によって振動させて金型内の原料の充填密度を高める。そしてオーブン内で加圧しながら130〜300℃にて30〜120min程度加熱し、流動状態になった重合体結合材を含む原料を引き続き加圧する。重合体結合材が全て流動状態になったところで、金型Mをオーブンから取り出し、フランジ8aおよびフランジ9aが側型7に当接するまで更に押し込む。この状態で略成形後のフィルター成形体高さになるようになっている。
【0039】
脱型は、金型Mを十分に冷却した後に上型8、下型9を引き抜き、円筒状の脱型具(図示しない)にて押し抜きフィルター成形体1を脱型する。
【0040】
かくして金型Mに所定量の活性炭と重合体結合材を混合し、金型Mに充填し、上型8側で加圧し、下型9側で加圧しながら200℃前後の温度にて所定時間加熱した後に、圧縮量を調整、冷却、離型することによって密度が均一に調整されたフィルター成形体1を作成することができる。
【0041】
オーブンに入れていない加熱前の状態での予備加圧は0.005〜5MPaの力で行い、0.005MPa未満であると予備加圧による充填密度を高める効果が得られず、5MPaを超えると密度が高くなりすぎて成形体をフィルターに使用したときに水の流量が少なくなるので好ましくない。また、オーブン中で加熱しながらの加圧では、0.5〜50kPaの力、もしくはフィルター成形体重量の1〜100倍の力で原料を加圧する。このように原料を比較的小さな力で徐々に加圧し、加熱して溶融させるので成形体全体をより均等に加圧することができ、上下方向で密度の差の少ない成形体を得ることができる。
【0042】
請求項4においては上型8か下型9の少なくとも一方で金型内の原料を加熱前に予備加圧し、その後、振動を与えて金型内の原料の充填密度を高めた上で金型をオーブン内に入れて加熱・加圧する方法が挙げられている。原料に振動を与えて原料の充填密度を高めることによって、上下からの加圧では十分に加圧することが困難な、成形体の中央においても成形体の密度を上げることができ、成形体の高さがより高くても全体にわたってより均一にすることができる。
【0043】
金型内に原料を所定量投入すると成形後の成形体高さの120〜200%程度の高さになる。前記のように予備加圧後、振動を与えることによって、原料の充填密度を高めて成形後の成形体高さの105〜170%の高さにまで原料の嵩高さを減少させる。与える振動条件の例としては、振幅1〜3mm、振動数5〜10回/秒にて5〜10秒程度とする。成形体高さとは、フィルター成形体ができ上がった際の高さの目標値である。なお、この目標値は、成形後の冷却時に成形体が収縮することによる寸法の差を考慮にした目標値とする。
【0044】
また本発明の請求項4では、原料を予備加圧した後に振動を与えているので、複数配合した原料がそれぞれの重さによって分離してしまうのを防止することができる。
【0045】
もちろん本発明の製造方法は上記の説明に限定されるものではなく、請求項1に記載した構成を満たすものであれば本発明の範囲内に含まれるものである。前記の説明では最初に上型による原料の加圧を行い、下型による加圧の順序が後になっているが、その順序は入れ替わってもよく、上型による加圧と下型による加圧が同時におこなった状態で加熱してもよい。ただし、請求項3に記載するような、一方の型による加圧の後に他方の型で加圧しながら加熱するという方法で成形を行うことが、フィルター成形体の全体をより均一な密度で成形できることから好ましいといえる。
【0046】
また、上型8および下型9はそれぞれフランジ8a、9aを有しており、そのフランジ8a、9aが側型7に当接するまで押し込まない状態で加圧するという方法を採っているが、片方の加圧時に所定の圧力で加圧するのであれば側型7に当接するまで加圧しても構わない。
【0047】
オーブンによる加熱で金型は130〜300℃の範囲に昇温保持される。130℃未満であるとバインダーとして使用するポリマーの融点に達していないため、固体化することができず、300℃を超えるとポリマーが劣化してしまい、外観不良などの問題が発生することにもつながるので好ましくない。
【0048】
また前記の温度範囲で保持される時間は30〜120min程度である。30min未満であると成形体内部まで十分に加熱することができず、中心部分に固化できていないところが発生するという問題があり、120minを超えるとポリマーが劣化してしまい、外観不良などの問題が発生することになるので好ましくない。
【0049】
以下、本発明で用いる原料とその性質について詳細に説明する。本発明で得られるフィルター成形体は、活性炭などの浄化成分を重合体結合材で固化した多孔質体であり、重合体結合材としては低メルトインデックスの高分子量多孔質ポリマーを用いる。
【0050】
フィルターの原料のひとつである浄化成分としては、活性炭、ゼオライト、キレート繊維、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ウォラストナイト、ガラス繊維などを挙げることができる。浄化成分がフィルター中に均一に分散するように粉末の状態で配合する。
【0051】
低メルトインデックスの重合体結合材としては、水処理または空気清浄器のフィルターとしての用途として問題なく使用できるために無毒性であることが必要になるとともに、単体で成形した場合に多孔質体を形成しやすい樹脂であることが好ましい。具体的にはポリアミド、ポリエチレンなどの樹脂を用いることができるが、より好ましくは分子量が数十万〜数百万程度の超高分子量ポリエチレンで原料の粒子径が約100μm、カサ密度0.3g/cm3未満の樹脂であって、メルトインデックスが、1.1〜2.3g/10min(ASTM D1238、190℃、15kg Load)であるものが挙げられる。
【0052】
この重合体結合材を用いる場合、メルトインデックスが1.1g/10min(ASTM D1238、190℃、15kg Load)未満であると、フィルターとなる活性炭のブロック成形時の流れが悪く、活性炭を固めてブロックとするためには、重合体結合材の量を多くしなければならない。そうするとフィルター内に占める活性炭の量が少なくなるので、水を処理する性能としては低くなってしまう。
【0053】
また、逆にメルトインデックスが、2.3g/10min(ASTM D1238、190℃、15kg Load)をこえると、フィルターの成形時に溶融したポリマーが活性炭の細孔部を覆ってしまい、水が活性炭を通過できなくなるので好ましくない。
【0054】
重合体結合材が上記のようなメルトインデックスを有するポリマーであることによって高温において適度な粘度であるがゆえ、フィルターの成形時に溶融したポリマーが活性炭などの細孔部を覆ってしまうことがない。また多孔質体を形成することは浄化成分を固化したフィルターの機能を損なわない有効な結合材である。
【実施例】
【0055】
次に、本発明の製造方法にて製造した実施例となるフィルター成形体と従来法にて製造した比較例となるフィルター成形体とをそれぞれ製造し、密度と寸法を測定して本発明の効果を確認した。
【0056】
(実施例1)
浄化成分としては60−100メッシュパス粒状活性炭を用い、重合体結合材として1.5g/10min(ASTM D1238、190℃、15kgLoad)の高分子量多孔質ポリマー(Ticona Gmbh製、GUR2105)を15重量%配合した原料を準備し、図5に示すような金型を用いてキャビティ内に原料を充填した。下型はスペーサを介在して側型に嵌め込んでいる。そして次にスペーサを抜き取り、10kPaで上型、下型を側型内に押し込むように加圧しながらオーブンに投入して200℃で1時間加熱後、上型、下型を側型に当接するまで押し込んで加圧した。その後、室温まで冷却して脱型した。できあがった成形体は外径がφ25、高さが111mm、原料の充填量が31gの長尺のフィルター成形体であった。
【0057】
フィルター成形体の高さ寸法を測定後、フィルター成形体全体の中から高さ方向で上と中央と下に位置するサンプルを選び出して密度を測定した。その結果を表1に示す。
【0058】
(実施例2)
オーブンに投入する前に振動装置によって金型に振動を与えて、原料の嵩高さが成形体高さの150%であったのを120%に減少させた以外は、全て実施例1と同様の条件でフィルター成形体を製造した。
【0059】
フィルター成形体の高さ寸法を測定後、フィルター成形体全体の中から高さ方向で上と中央と下に位置するサンプルを選び出して密度を測定した。その結果を表1に示す。
【0060】
(実施例3)
上型を側型に当接するまで押し込んだ後、スペーサを抜き取り、オーブン内で下型を側型内に押し込むように加圧しながら加熱した以外は実施例1と同様にして充填量が30g、31g、32gである3種類の充填量のフィルター成形体を各5個製造した。
【0061】
それぞれ各5個の成形体の高さ寸法を測定した。その結果を図8に示す。
【0062】
(比較例)
キャビティ内に原料を充填した後、上型を側型に当接するまで押し込んだ後にオーブン内で加熱し、その後スペーサを抜き取り、下型による加圧をおこなった以外は実施例1と同様にして5個のフィルター成形体を製造した。
【0063】
それぞれ各5個の成形体の高さ寸法を測定した。その結果を図9に示す。なお実施例1と同様にうち1個のフィルター成形体の中から高さ方向で上と中央と下に位置するサンプルを選び出して密度を測定した。その結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
表1の結果からわかるように、実施例1、2において密度が揃っており、特に原料に振動をあたえた実施例2において密度がより均一になっていることが確認される。また図9の比較例ではフィルター成形体の重さが重くなるほどばらつきが大きくなるのに対して、図8の実施例3ではフィルター成形体の重さが異なってもその寸法のばらつきは小さくなっている。この結果により、上型、下型の両側からの加圧であっても加圧しながら加熱することが成形体寸法において、ばらつきの少ないフィルター成形を得ることができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、浄水成分をポリマーからなるバインダーで固めた水中の汚染物質を除去する水処理フィルターに用いるフィルター成形体の製造方法に係わり、より詳しくは、活性炭などの浄水成分を均一に分散させることができ、水処理能力や性能に優れたフィルター成形体の製造に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の製造法によって得られるフィルター成形体の斜視図である。
【図2】フィルター成形体を用いた水処理器用フィルターの斜視図である。
【図3】図2におけるA−A断面図である。
【図4】蛇口直結型水処理器の断面図である。
【図5】金型に原料を充填して上型側から加圧しているところの断面図である。
【図6】上型のフランジが側型に当接するまで押し込んだところの断面図である。
【図7】スペーサを取り除いて下型のフランジが側型に当接するまで押し込んだところの断面図である。
【図8】実施例3に係わる各充填量での成形品高さのばらつきを示すグラフである。
【図9】比較例に係わる各充填量での成形品高さのばらつきを示すグラフである。
【符号の説明】
【0068】
1 フィルター成形体
2 水処理器用フィルター
3 濾過層
4 キャップ
5 孔
6 原料
7 側型
8 上型
8a フランジ
9 下型
10 スペーサ
11 キャビティ
S 水処理器
M 金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水や大気などから汚染物質を除去するフィルターであって、少なくとも浄化成分と高分子量で低メルトインデックスの重合体結合材を配合してなる原料を金型内に充填し、加熱加圧して所定形状を成形するフィルター成形体の製造方法において、金型はフィルター側面を成形する側型、上面を成形する上型、下面を成形する下型からなり、上型と下型はそれぞれ側型に対して上下方向に移動可能に配置され、上型と下型と側型とで形成されるキャビティ内に原料を充填して0.5〜50kPaの力で原料を加圧しながら金型を加熱して、更に溶融した原料を加圧する工程を有することを特徴とするフィルター成形体の製造方法。
【請求項2】
水や大気などから汚染物質を除去するフィルターであって、少なくとも浄化成分と高分子量で低メルトインデックスの重合体結合材からなる原料を金型内に充填し、加熱加圧して所定形状を成形するフィルター成形体の製造方法において、金型はフィルター側面を成形する側型、上面を成形する上型、下面を成形する下型からなり、上型と下型はそれぞれ側型に対して上下方向に移動可能に配置され、上型と下型と側型とで形成されるキャビティ内に原料を充填してフィルター成形体重量の1〜100倍の力で原料を加圧しながら金型を加熱して、更に溶融した原料を加圧する工程を有することを特徴とするフィルター成形体の製造方法。
【請求項3】
上型もしくは下型のいずれか片方の型にて原料を予備加圧し、その後他方の型にて原料を加圧しながら金型を加熱して、更に溶融した原料を加圧する工程を有する請求項1〜2記載のフィルター成形体の製造方法。
【請求項4】
上型もしくは下型の少なくとも一方の型にて原料を予備加圧した後に、原料を加熱加圧するのに先立って充填した原料に振動を加えて原料の充填密度を高めてなる請求項1〜3記載のフィルター成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−6435(P2008−6435A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142455(P2007−142455)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】