説明

フィルター

【課題】
精密濾過に適した低圧損高捕集性エアフィルターならびに液体フィルターに好適なフィルターを提供する。
【解決手段】
繊維の分子構造が直鎖状の熱溶融性高分子化合物からなる繊維が数平均繊維直径0.01以上〜2μm以下に枝分かれした繊維からなる多孔質シートを用いてフィルターであって、枝分かれした繊維は、ポリマーアロイ製法を利用して作られ、多孔質シートは抄紙法により製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に高捕集フィルターとしてクリーンルームあるいは液体精密濾過等に好適に用いることができるフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、極細繊維を用いた濾材(フィルター)が提案されている。例えば、繊維径が0.1μmないし3μm、5μmないし15μm、および20μmないし50μmの繊維を、それぞれ20重量%以上で混合構成した高性能濾過材が提案されている(特許文献1参照)。この提案では、繊維径が0.1μmないし3μmの小繊維径の繊維として、フィブリル化していないガラスファイバーやフィブリル化し易い芳香族ポリエステル有機合成パルプが示されている。しかしながら、この提案の欠点は、芳香族ポリエステル有機合成パルプを使用するため、フィブリル化工程で強度に叩解する必要があり、結果として繊維が扁平化するため通気抵抗が高くなることが避けられなかった。
【0003】
また別に、繊維径が0.7μm以下の極細繊維として、一般のパルプや剛直鎖剛性高分子化合物のポリ(P−フェニレンテレフタルアミド)などからなる鎖長50オングストローム以上ある剛直鎖状高分子繊維が用いられ、繊維径0.4μmにフィブリル化した精密濾紙を作成することが提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、この提案の場合、天然繊維はフィブリル化に際し扁平化が起こり通気抵抗が高くなる。このため、扁平化しないフィブリル化繊維素材として剛直鎖状高分子繊維を選定しているが、特許文献1同様、繊維を縦に裂いてフィブリル化する従来方法では、繊維径の均一性に欠け、また扁平化も発生するため通気抵抗が高くなるという欠点があった。更に、繊維間の結合に水溶性樹脂を用いているため、通気抵抗が高くなることは避けられなかった。このように、剛直な太い繊維を裂いてフィブリル化する方法では、扁平化による圧損上昇と未フィブリル化繊維の残留による捕集性能の不均一性発生が避けられなかった。
【0004】
また、海島型繊維から海成分を除去する方法で得た繊維径が0.1μm以上と揃った極細繊維を用いることが提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、この提案では、繊維1本1本が分離しているため繊維間に拘束力がなく抄紙に際し抄紙用金網から流出し易く、流出した場所にはピンホールが形成されるため捕集性能の均一性が得られないという課題があった。
【0005】
このように、フィブリル化して極細繊維を得る手段では、繊維太さの不均一性が生じ、また扁平化により捕集性能の低下と圧損上昇は避けられなかった。また、繊維間に拘束力のない海島型極細繊維を用いる方法も、抄紙に際し極細繊維の少ない部分欠点が多数発生し捕集性能の均一性に欠ける方法であった。
【特許文献1】特開昭59−228918号公報
【特許文献2】特開昭63−232814号公報
【特許文献3】特開2000−336568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述した事情に鑑み、精密濾過に適した低圧力損失な高精密濾過フィルター等に好適なフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決せんとするものであって、本発明のフィルターは、熱溶融性高分子化合物からなる繊維が数平均繊維直径0.01〜2μmに枝分かれした繊維を含む多孔質シートを用いてなることを特徴とするフィルターである。
【0008】
本発明のフィルターの好ましい態様によれば、本発明のフィルターとして、前記の多孔質シート表面に、表面積0.01cm中に存在する平均繊維本数が1本以上である不織布が積層された不織布付き多孔質シートを用いることができる。
【0009】
本発明のフィルターの好ましい態様によれば、前記の枝分かれした繊維は、ポリマーアロイ製法を利用して作られた繊維である。
【0010】
本発明のフィルターの好ましい態様によれば、前記の不織布は、エレクトレット不織布である。
【0011】
本発明のフィルターの好ましい態様によれば、前記の枝分かれした繊維は、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンおよびポリ乳酸繊維からなる群から選ばれた少なくとも1種類の繊維である。
本発明のフィルターの好ましい態様によれば、前記の多孔質シートは、抄紙法により製造され、バインダー付着率5%以下または熱融着型繊維で繊維間が接着されシート化されてなる多孔質シートである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱溶融性で枝分かれした数平均繊維直径が0.01〜2μmの極細繊維が用いられているため、目付の均一性に優れ、低圧損高精密濾過用捕集フィルターを作ることが可能である。また、繊維径が細いため繊維間距離を短く仕切ることが可能なことから、粒子径0.1μmより小さな粒子の捕集に適する。さらに、濾材厚みを薄くすることが可能なことから、プリーツ加工された濾材をフィルターユニットに大面積収納することが可能なため、低圧損になり長寿命に使用することが可能である。
【0013】
また、濾材が有機繊維で構成されたものは、アウトガスの発生が少なくボロンも含まれないため、半導体工場で使用した場合は、半導体の生産収率を向上できる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
上記目的を達成するための本発明のフィルターは、熱溶融性高分子化合物からなる、好適には分子構造が直鎖状の繊維が数平均繊維直径0.01〜2μmに枝分かれした繊維を含む多孔質シートを用いてなることを特徴とするフィルターである。
【0015】
本発明で用いられる数平均繊維直径が0.01以上〜2μm以下に枝分かれした繊維は、特開2004−162244号公報に記載されているポリマーアロイ法により好適に製造することができる。
【0016】
ポリマーアロイ法において、ポリマーアロイとは、2種類以上の熱溶融性高分子化合物を溶かした状態で極限まで混合した状態を言うが、このように混じり合った溶融ポリマーを小さな孔から紡糸して延伸すると、1本の繊維の断面には2種類の熱溶融性高分子化合物が不定形の大きさで存在し、繊維の長手方向には2種類の熱溶融性高分子化合物が有限長の繊維形状で配列され、部分的に同じ素材同志の熱溶融性高分子化合物が融合して接着した部分を持って存在する。この繊維を、繊維の1成分だけが溶ける溶剤に浸けると、溶剤に溶けない方の繊維成分だけが極細繊維の状態で残り、部分的にくっつきあった繊維集合体として取り出すことができる。
【0017】
このように、ポリマーアロイ製造法で得られる極細繊維は、繊維間同志が部分的に融着した繊維集合体の状態を有するという特徴を持っている。極細繊維を製造する他の方法は、前記の特許文献3に示された海島型繊維から海成分を除去して得る方法があるが、この海島型繊維の製造方法では、2種類の熱溶融性高分子化合物が溶かした状態で混合しないようにして小さな孔に導き紡糸して延伸するため、得られる極細繊維が融合していないという点で、上記のポリマーアロイ方法とは本質的に全く異なる繊維形態となる。
【0018】
本発明で用いられる多孔質シートは、上記のようなポリマーアロイ方法で得られた、極細繊維の状態でくっつきあった繊維集合体を、数mm長さにカットしたカットファイバーとし、これを叩解機にかけて繊維をほぐし枝分かれした繊維とし、この繊維を含む分散液にして、この繊維分散液を抄紙してシート状にすることにより得ることができる。
【0019】
ポリマーアロイ製法で作成された繊維を用いた多孔質シートは、数平均繊維直径が0.01〜2μmの枝分かれ繊維であるが、繊維径が不揃いのため、粒子径分布の広い粒子捕集を目的とする大気塵濾過や液体濾過に適するのである。
【0020】
従来の海島型繊維から海成分を除去する方法で作成される極細繊維は、海島型繊維から海成分を除去すると1本1本が分離し結合力のない極細繊維であるため、抄紙に際し、抄紙用の網から流出が発生し易くシート化が難しい。また、数平均繊維直径が0.3μm以下の極細繊維を作ることは実質的に困難である。
【0021】
本発明で好適に用いられるポリマーアロイ法で作られた繊維は、海成分を除去することで1本1本の繊維は部分的に融合点を持って形成されているため、叩解機に掛けても1本1本の単繊維にバラバラになることはなく互いの繊維が繋がった有限長のネットワーク状に枝分かれした繊維として分離する。また、繊維を1本1本の繊維に裂くのではなく、既に1本1本の繊維になっている繊維集合体から繊維をほぐすということであり、過度な叩解を行わないでも繊維が分散する。過度な叩解を必要としないため、繊維が扁平化することもなく通気抵抗が低いものが得られる。
【0022】
ここで重要なことは、繊維集合体を完全に離解して1本1本の繊維にまで分散してはならないということである。枝分かれして繋がりをもたせることによって枝分かれ繊維間に絡みが生じ、抄紙に際し抄紙用の網から極細繊維が流出することを防止することができる。
【0023】
1本1本にまで離解すると、繊維が細く柔らかいため繊維間を通って流出する水に随伴されて流出してしまう。有限長のネットワーク状に枝分かれした繊維であれば、他の繊維に絡み易く流出を防止できるのである。その結果として、目付むらや孔のない多孔質シートを得ることができる。図1は、この状態を示すSEM写真である。図1において、多孔質シート1には枝分かれした繊維2が含まれており、数平均繊維径0.15μmの枝分かれした繊維が用いられ、短い空間距離で仕切られていることが認められる。
【0024】
また、この枝分かれした繊維を含む繊維分散液に、数平均繊維直径が0.1μmより太い極細繊維を、繊維径を変えて数種類を混合して抄紙すると、太い繊維が枝分かれした繊維の間に入り込み細い枝分かれした繊維同志の積層を防ぐため、かさ高となり低圧損性と高精密濾過性を同時に得ることが可能となる。混合する繊維の太さは枝分かれした繊維の好ましくは3倍から400倍の間で、好ましくは3種類位の太さの違う繊維を混合することが、低圧損性と高捕集性を実現する上で好ましい。
【0025】
ここで多孔質シートの繊維構成を詳しく記載すると、枝分かれした繊維の数平均繊維直径は主に0.01〜2μmのものが使用され、好適には0.01〜1μm前後のものが用いられる。
【0026】
この枝分かれした繊維だけで抄紙しても多孔質シートが得られるが、よりかさ高化して低圧損化するために、数平均繊維直径が0.15〜20μmの太さが異なる繊維を数種類混合して抄紙すると良い。ここで、低圧損でありながら高捕集性能の多孔質シートを得るために特に重要なことは、枝分かれの繊維の繊維長を好ましくは0.5〜10mm、より好ましくは2mm以上、更に好ましくは3mm以上7mm以下に長くして他の繊維と架橋し易いようにして流出を防ぐこと、更に枝分かれした繊維より太い極細繊維の繊維長も好ましくは5〜10mmとし、通常の抄紙法では用いられない長さのものを用いてかさ高に仕上げる。さらに、捲縮糸を用いてかさ高に仕上げることもできる。
【0027】
また、多孔質シートを抄紙する際は、繊維間を結合する樹脂バインダーの量は5%以下にすることが好ましい。これは、樹脂バインダーが枝分かれした繊維で形成される1μm程度の空間を埋めてしまうため、圧損が上がってしまうことによる。このため最適には、樹脂バインダーを用いないでシート化することが最ものぞましシート化することが最も望ましい態様である。また、繊維間を結合するため、熱融着性繊維を用いて行うことも有効な方法である。
【0028】
多孔質シートの重量に占める枝分かれした繊維の重量比率は、求める捕集性能によって決められるが、通気抵抗250Paのもので捕集効率99.99%以上を得るためには、目付70g/mで70%以下にすることが適当である。重量比率が70%を超えると、目詰まりが激しく寿命が短いものとなる。
【0029】
空気用フィルターとしては、例えば、目付30g/mのもので捕集効率99%以上のものを得る場合、配合比率(重量比率)は、数平均繊維直径0.12μmの枝分かれした繊維、数平均繊維直径0.6μm有機合成繊維、数平均繊維直径1.3μm有機合成繊維、および数平均繊維直径5μm有機合成繊維を、それぞれ10〜30%/20〜40%/20〜30%/20〜30%で構成すると良い。
【0030】
また、99.9%以上の捕集効率を得る場合には、この繊維構成で目付を増やすなど、配合率を変えない方が通気性と捕集効率のバランスの良いものが得られる。
【0031】
また、繊維表面が平滑な人工繊維は枝分かれした繊維を把持する力が弱いため、フィブリル化し易く且つ表面に凹凸のある天然パルプを少量配合すると、枝分かれした繊維が引掛かり易くなり流出がなくなる。
【0032】
枝分かれした繊維の素材は、ポリマーアロイ化が可能なポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、およびポリ乳酸などの直鎖状の分子構造を持った熱可塑性有機合成繊維などであれば良く、特に制限はない。
【0033】
次に、不織布付き多孔質シートについて説明すると、表面積0.01cm中に存在する繊維本数が好ましくは1本以上である不織布が多孔質シート表面に積層されたものである。不織布の積層の形態は、不織布が多孔質シートの片面または両面に積層される。枝分かれした繊維を用いた多孔質シートは、繊維間を結合する樹脂を殆ど用いることなく繊維の絡まりでシート化されるため、プリーツ加工装置やフィルター組立装置との擦過に弱く容易に極細繊維が剥離して濾過性能の低下を引き起こす。このため、保護層として不織布を使用することが好ましい。不織布はまた、プリーツ加工に必要な硬さを与える素材として使用される。
【0034】
機械との直接接触による毛羽立ち、欠点発生を防止する目的から、繊維本数が重要であり、本発明では表面積0.01cm中に存在する繊維本数が1本以上であることが好ましい。上記の繊維本数がこれより少ないと、保護効果が不足する。また、上限繊維本数については保護の目的からして、濾材の厚みや通気度の関係、硬さなどから決められるものである。好ましい厚みは0.05〜0.5mm、素材はポリエステル系、ポリオレフィン系の長繊維不織布が他のアクリルバインダー等のアウトガス成分を含まないので適する。この他に芯鞘構造の熱融着性短繊維または長繊維を繊維間接着したものも同様の理由から適する。
【0035】
次に、不織布としてエレクトレット化不織布を用いることにより、低圧損で捕集性能を上げることが可能である。不織布をフィルターの上流側に用いた場合には、不織布がプレフィルターとしての機能を果たすため、緻密な多孔質シートの目詰まりを防止でき長寿命化ができる。また、エレクトレット化不織布を緻密な多孔質シートの下流側に配置した場合には、塵埃付着に伴うエレクトレット捕集効率の低下が少なくなり、クリーンルーム用高性能フィルターとして使用が可能となる。もちろん、不織布を多孔質シートの両面に用いることにより、長寿命化と捕集効率の安定化同時に達成することができる。
【0036】
用いられる不織布は、薄く高捕集性が得られる点で、繊維径が好ましくは1〜6μmのもので構成されるメルトブロー不織布が好ましい。また、圧損と捕集効率の関係が、後述する式において求められるQF値が、0.15以上であるものが捕集性能の安定化を図る点でより最適である。QF値は、下記の式から求められる。
QF値=−Ln(1−捕集効率/100)/圧損(Pa)
式中、Lnとは、自然対数の演算記号であり、QF値とはQUALITY FACTORの頭文字を意味する。
【0037】
用いられる不織布はまた、短繊維樹脂加工不織布よりスパンボンド不織布や熱融着型繊維でできた不織布であることが好ましい。それは、含有アウトガス成分が少ないため半導体製造設備用フィルターとして最適なことによる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明のフィルターについて、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は、これらの内容に限定されるものではない。実施例中の特性値の測定方法は、次のとおりである。
【0039】
上記式の圧損は、濾過風速5.1cm/秒の条件で評価試料前後の差圧から求める。また、捕集効率は、粒子径0.3μmの大気塵を用いて、評価試料前後の粒子数をパーティクルカウンターを用いて測定し、下記の計算式から求める。
捕集効率=(1−下流側粒子数/上流側粒子数)×100%
数平均繊維直径の求め方は、SEMを用いて表面を観察し、少なくとも500本以上の繊維径を測定し、数平均として求める。
【0040】
(実施例1)
ポリアミド製繊維が枝分かれした繊維を、次の方法で製造した。溶融粘度53Pa・S(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点220℃のナイロン6(25重量%)と溶融粘度310Pa・S(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点225℃のイソフタル酸を8mol%、ビスフェノールAを4mol%共重合した融点225℃の共重合PET(75重量%)を、2軸押出し混練機で260℃の温度で混練してポリマーアロイチップを得た。
【0041】
このポリマーアロイチップを紡糸温度280℃のスピンブロックに導き、限界濾過計15μmの金属不織布でポリマーアロイ溶融対を濾過した後、口金温度を262℃とした口金(吐出孔径0.7mm)から溶融紡糸した。冷却を加え900m/分で巻き取った。このようにして得られた糸を2.9倍に延伸してポリマーアロイ繊維を得た(120dtex、12フィラメント)。この繊維を、3%のカセイソーダ液に2時間浸漬し共重合PETを溶出して除去後水洗乾燥した。この繊維を、5mm長さに切断してポリマーアロイ繊維を得た。このポリマーアロイ繊維20部と、アニオン界面活性剤1部と、水78.9部と、消泡剤0.1部とを混合して、叩解機に掛けてポリアミド製繊維が枝分かれした繊維を含む分散液を調整した。この枝分かれした繊維が分散された分散液に、他の繊維として、ボロンレスガラスマイクロファイバー繊維(数平均繊維直径:0.6μm、カット長:3mm)、ボロンレスガラスマイクロファイバー(数平均繊維直径:1μm、カット長:2mm)、ポリエステル繊維(数平均繊維直径:3.6μm、カット長:5mm)を配合し、これを抄紙して、繊維重量比率が、ポリアミド製繊維が枝分かれした繊維/ボロンレスガラスマイクロファイバー/ボロンレスガラスマイクロファイバー/ポリエステル繊維=25重量%/25重量%/25重量%/25重量%の割合で混合された、目付20g/mの多孔質シートを作成した。多孔質シートのSEM写真撮影から求めた数平均繊維直径は、0.095μmであった。
【0042】
捕集効率と圧損を先に記述した測定条件で測定した結果、捕集効率が99.8%で、圧損が85Paの高性能多孔質シートを得た。この多孔質シートの両面に、ポリエステルスパンボンド不織布(数平均繊維直径:60μm、目付:25g/m、繊維本数:3)を接合し、トータル厚みが0.4mmの不織布付き多孔質シートを得た。この不織布付き多孔質シートを用いて、濾材使用量2m/個のフィルターを作成し、風量3CMMのフィルター(フィルターサイズ=390w×310H×40D)を作成した。 ユニット圧損が80Paで、捕集効率が99.98%の低圧損超高性能フィルターを作ることができた。
【0043】
(実施例2)
ポリアミド製繊維が枝分かれした繊維を、次の方法で製造した。溶融粘度53Pa・S(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点220℃のナイロン6(20重量%)と溶融粘度310Pa・S(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点225℃のイソフタル酸を8mol%、ビスフェノールAを4mol%共重合した融点225℃の共重合PET(80重量%)を、2軸押出し混練機で260℃の温度で混練してポリマーアロイチップを得た。
【0044】
このポリマーアロイチップを紡糸温度280℃のスピンブロックに導き、限界濾過計15μmの金属不織布でポリマーアロイ溶融対を濾過した後、口金温度を262℃とした口金(吐出孔径0.7mm)から溶融紡糸した。冷却を加え900m/分で巻き取った。このようにして得られた糸を3.2倍に延伸してポリマーアロイ繊維を得た(120dtex、12フィラメント、)。この繊維を、3%のカセイソーダ液に2時間浸漬し共重合PETを溶出して水洗後乾燥して除去した。この繊維を、5mm長さに切断したポリマーアロイ繊維を得た。このポリマーアロイ繊維20部と、アニオン界面活性剤1部と、水78.9部と、消泡剤0.1部とを混合して、叩解機に掛けて枝分かれした繊維を含む分散液を調整した。この枝分かれした繊維が分散された分散液に、他の繊維として、叩解した数平均繊維直径1.5μm、カット長3mmのポリエステル繊維、数平均繊維直径6μm、カット長3mmの芯鞘型熱融着性ポリエステル繊維を配合し、これを抄紙後130℃の温度で熱処理を行って、繊維重量比率が、ポリアミド製繊維が枝分かれした繊維/ポリエステル繊維/芯鞘型熱融着性ポリエステル繊維=25重量%/25重量%/50重量%の割合で混合された、目付40g/mの多孔質シートを作成した。多孔質シートのSEM写真撮影から求めたポリアミド製の枝分かれした繊維の数平均繊維直径は、0.056μmであった。
【0045】
この多孔質シートには、鞘成分の融点が110℃の芯鞘型熱融着性ポリエステル繊維が用いれていたため、熱処理工程で溶け隣接する繊維が接合されたものであった。
【0046】
多孔質シートは、プリーツ加工ができる硬さを持ち、擦過による毛羽立ちの少ない厚み0.3mmのものであった。 捕集効率と圧損を測定した結果、捕集効率が57%で、圧損が55Paの高性能多孔質シートを得た。この多孔質シートを用いて、濾材使用量2m/個のフィルターを作成し、風量3CMMのフィルター(フィルターサイズ=390w×310H×40D)を作成した。 ユニット圧損が62Paで、捕集効率が70%の低圧損高性能フィルターを作ることができた。
【0047】
(実施例3)
ポリアミド製繊維が枝分かれした繊維を、次の方法で製造した。溶融粘度53Pa・S(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点220℃のナイロン6(25重量%)と溶融粘度310Pa・S(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点225℃のイソフタル酸を8mol%、ビスフェノールAを4mol%共重合した融点225℃の共重合PET(75重量%)を2軸押出し混練機で260℃の温度で混練してポリマーアロイチップを得た。
【0048】
このポリマーアロイチップを紡糸温度280℃のスピンブロックに導き、限界濾過計15μmの金属不織布でポリマーアロイ溶融対を濾過した後、口金温度を262℃とした口金(吐出孔径0.7mm)から溶融紡糸した。冷却を加え900m/分で巻き取った。このようにして得られた糸を2.5倍に延伸してポリマーアロイ繊維を得た(120dtex、12フィラメント、)。この繊維を、3%のカセイソーダ液に2時間浸漬し共重合PETを溶出して水洗乾燥して除去した。この繊維を、5mm長さに切断したポリマーアロイ繊維を得た。このポリマーアロイ繊維/ポリエステル繊維(数平均繊維直径:3.6μm、カット長:3mm)/ポリエステル繊維(数平均繊維直径:6μm、カット長:3mm)/天然パルプ=25%/35重量%/35重量%/5重量%の割合で繊維を混合し、抄紙して、目付20g/mの多孔質シートを作成した。
【0049】
多孔質シートのSEM写真撮影から求めたポリアミド製の枝分かれした繊維の数平均繊維直径は0.12μmであった。
【0050】
捕集効率と圧損を測定した結果、捕集効率が89%で、圧損が75Paの高性能フィルターを得た。この高性能フィルターの下流側に、エレクトレット化ポリプロピレンメルトブロー不織布シート(極細繊維糸径:2.4μm、目付:40g/m、捕集効率:99.998%、圧損:30Pa、QF値:0.36)を積層し、大気塵の長期捕集試験を行った。初期圧損105Paが、最終圧損240Paまでの捕集効率変化が初期捕集効率99.9986%から最低捕集効率99.9933%に低下したものの、99.97%を上回る結果を得た。クリーンルーム用低圧損超高性能フィルターとして使用できることを確認した。
【0051】
(比較例1)
海島型ポリアミド製繊維を、次の方法で製造した。融点225℃のイソフタル酸を8mol%、ビスフェノールAを4mol%共重合した融点225℃の共重合PETチップ(75重量%)と融点220℃のナイロン6(25重量%)ポリアミドチップを別々のエクスツルーダーで溶解し、共重合PET海成分中に島成分となるポリアミドが25個存在する
糸を紡糸して得た。これを3.2倍に延伸した海島型ポリアミド製繊維を得た。
【0052】
この繊維を、5mm長さにカットして3%のカセイソーダ液に2時間浸漬し、共重合PETを溶出して水洗乾燥して除去したポリアミド繊維(数平均繊維直径:0.3μm、カット長:5mm)を得た。このポリアミド繊維とポリエステル繊維(数平均繊維直径:3.6μmカット長:3mm)/ポリエステル繊維(数平均繊維直径:6μm、カット長:5mm)/天然パルプ=25重量%/35重量%/35重量%/5重量%の割合で繊維を混合し抄紙して、目付20g/mの多孔質シートを作成した。この多孔質シート表面を観察したところ、繊維の流出が起こり所々に孔が開いたシートになったため、捕集効率が48%と低く、精密濾過には適さないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のフィルターは、一般空調用からクリーンルーム用高性能フィルターとして使用でき、また液体用フィルターとしての使用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、本発明で用いられる多孔質シートを例示している、図面代用のSEM表面写真である。
【符号の説明】
【0055】
1:多孔質シート
2:枝分かれした繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱溶融性高分子化合物からなる繊維が数平均繊維直径0.01〜2μmに枝分かれした繊維を含む多孔質シートを用いてなることを特徴とするフィルター。
【請求項2】
多孔質シート表面に、表面積0.01cm中に存在する平均繊維本数が1本以上である不織布が積層された不織布付き多孔質シートを用いてなる請求項1記載のフィルター。
【請求項3】
枝分かれした繊維が、ポリマーアロイ製法を利用して作られた繊維であることを特徴とする請求項1または2記載のフィルター。
【請求項4】
不織布が、エレクトレット不織布である請求項2記載のフィルター。
【請求項5】
枝分かれした繊維が、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンおよびポリ乳酸繊維からなる群から選ばれた少なくとも1種類の繊維である請求項1〜4のいずれかに記載のフィルター。
【請求項6】
多孔質シートが抄紙法により製造され、バインダー付着率5%以下または熱融着型繊維で繊維間が接着されシート化されてなる請求項1〜5のいずれかに記載のフィルター。

【図1】
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【公開番号】特開2007−21400(P2007−21400A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208245(P2005−208245)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】