説明

フィルター

【課題】油が通過する際の油の圧力損失が大きくなってろ過速度が低下してしまったり、油ろ過用の容器の所定位置に嵌め込むのに高い嵌合性を要するものとなって油がリークしてしまったり、ろ材や吸着剤が充分に使用されていないまま交換されて廃棄されるといったことがないものでありながら、ろ過及び吸着による所定の浄化能力を具備するフィルターを提供する。
【解決手段】粉末状の吸着剤及び脱酸剤と、前記吸着剤及び脱酸剤を結合して保持するバインダー及びろ材としての繊維と、で主体が構成されるフィルターであって、繊維を、上方に開口し下方へ行く程小径となる袋状に形成すると共に該繊維に吸着剤及び脱酸剤を担持させて単位フィルターを形成し、該単位フィルター複数枚を上下に重ねて積層した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みの食用油をろ過して浄化するためのフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
使用済みの食用油をろ過して浄化するため、活性炭のような吸着剤を備えたフィルターが一般的に用いられている。吸着剤は、浄化対象となる前記汚染物資を含む液体や気体(単に浄化対象という)に含まれる汚染物質を吸着させてろ過するもので、粒状又は粉状の吸着剤をバインダーで結合して成形したものを配置したりしている(例えば特許文献1)。また、吸着剤とともに脱酸剤を備えることで、脱酸剤により酸化した油の脱酸化を行って油を再生することができる。
【0003】
従来のフィルターは、一般的には特許文献1に示されるように、繊維からなるろ材と、活性炭等の吸着剤とからなり、これらを強固に一体化して形成され、油ろ過用の容器内に設置されて油のろ過を行うものである。特許文献1に示されるフィルター2’は、図4に示すように、厚みが10〜50mm程度で、平面視円形状や矩形状やその他形状をした塊状に形成してあり、これを油ろ過用の容器3’の所定位置31’に嵌め込んで設置する。そして、使用済みの食用油を上方から通過させることで、繊維からなるろ材によって使用済みの食用油中の不純物をろ過して除去すると共に、前記ろ材で除去しきれなかった微細な粒子や臭い成分等を吸着剤にて吸着させて除去して、使用済みの食用油を浄化するものである。
【0004】
そしてフィルターは、上述したようにろ過及び吸着による所定の浄化能力を具備すべく、油が通過する部分の長さ、すなわち厚みを一定以上の厚みとする必要があるものであった。
【0005】
このような従来のフィルターは、上記のようにある程度以上の厚みを有する一体形状としているため、油が通過する際の油の圧力損失が大きくなってろ過速度が低下してしまい、また更に、ろ過させる油はフィルターを通過させる必要があるが、フィルターの通過面の面積すなわち平面視における面積は限られたものであるため、通過面積が狭くなって、これによってもろ過速度が低下してしまうという問題があった。
【0006】
また、フィルターをある程度以上の厚みを有する一体形状として、油ろ過用の容器3’の所定位置31’に嵌め込むものであるため、油ろ過用の容器3’の被嵌合部とフィルターとの嵌合性を要するものとなってしまい、嵌合性悪い場合には、油ろ過用の容器3’とフィルターとの間の隙間から油がリークしてろ過が行われない惧れがあるという問題があった。
【0007】
また、フィルターは、油の通過する上流側、すなわち上側程、使用済みの油からろ過された不純物や吸着された微細な粒子や臭い成分等がより多く蓄積され、この部分にて不純物のろ過や微細な粒子や臭い成分の吸着等がなされなくなる前に交換する必要がある。しかし、交換時にはフィルターの下流側の部分においては、不純物のろ過や微細な粒子や臭い成分の吸着等が限界まで行われておらず、この部分のろ材や吸着剤がまだ充分に使用されていないまま交換されて廃棄されることとなり、無駄が生じるという問題があった。
【特許文献1】特開2005−238094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、油が通過する際の油の圧力損失が大きくなってろ過速度が低下してしまったり、油ろ過用の容器の所定位置に嵌め込むのに高い嵌合性を要するものとなって油がリークしてしまったり、ろ材や吸着剤が充分に使用されていないまま交換されて廃棄されるといったことがないものでありながら、ろ過及び吸着による所定の浄化能力を具備するフィルターを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明は、粉末状の吸着剤及び脱酸剤と、前記吸着剤及び脱酸剤を結合して保持するバインダー及びろ材としての繊維1と、で主体が構成されるフィルター2であって、繊維1を、上方に開口し下方へ行く程小径となる袋状に形成すると共に、該繊維1に吸着剤及び脱酸剤を担持させて単位フィルター2aを形成し、前記単位フィルター2a複数枚を上下に重ねて積層して成ることを特徴とするものである。
【0010】
このような構成とすることで、各単位フィルター2aでの圧力損失が低減されてろ過速度が向上し、フィルター2を設置するのに従来のように油ろ過用の容器の所定位置に嵌め込む必要がないと共にろ過面積が広くて油がリークする惧れがなく、ろ材や吸着剤が充分に使用されていないまま交換されるといった無駄を無くすことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明にあっては、ろ過速度が向上し、油がリークする惧れがなく、ろ材や吸着剤が充分に使用されていないまま交換されるといった無駄を無くすことができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明について実施形態に基づいて説明する。本発明に係る重ねて積層することを前提とするスタック式油ろ過フィルター(以下、単にフィルター2という)は、粉末状の吸着剤及び脱酸剤と、前記吸着剤及び脱酸剤を結合して保持するバインダー及びろ材としての繊維1と、で主体が構成される。
【0013】
吸着剤としては、例えば、ゼオライト、アモルファスシリカ、ベントナイト、活性アルミナ、活性白土などが挙げられ、これらを使用用途に応じ、単独で又は二種以上組み合わせて使用可能である。油の脱色について好ましい吸着剤は活性炭である。
【0014】
活性炭としては、竹活性炭の他、例えば、他の植物系活性炭(例えばヤシ殻、木粉、素灰などを原料とする活性炭)、鉱物系活性炭(例えばピート炭、レキ炭、ピッチ、コークスなどを原料とする活性炭)、樹脂系活性炭(例えばフェノール樹脂、アクリル樹脂などを原料とする活性炭)などが挙げられ、これらを単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0015】
吸着剤の比表面積は、300〜3000m2/g(好ましくは700〜2500m2/g)程度で、その平均細孔径は、吸着させる汚染物質に応じて、1〜100Å(好ましくは5〜20Å)程度とする。なお1Å=0.1nmである。
【0016】
この吸着剤は、粉末状としたものを用い、その平均粒径は、5〜500μm(好ましくは30〜40μm)程度である。平均粒径が上記範囲を逸脱すると、吸着剤の均一分散性が低下し、吸着効率が低下し、上記範囲内であると、以下に述べるバインダー及びろ材としての繊維1に均一に絡まって保持され、吸着効率が高い。
【0017】
脱酸剤としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム(焼成貝)、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、苛性ソーダ、ソーダ灰のうちから1種類以上を添加して混合するのが好ましい。これにより、フィルター2に、脱酸剤による酸化した油の再生機能を付与することができる。またなお、その他の目的に応じて、他の添加物を適宜添加してもよいものである。
【0018】
繊維1としては、パルプをはじめ、種々の天然繊維1及び化学繊維1が挙げられる。天然繊維1としては、例えば羊毛、絹などの動物繊維1や、例えば木綿、麻、ヤシ殻繊維1などの植物のセルロース繊維1、岩綿などの鉱物繊維1でもよい。化学繊維1としては、ビスコース人造絹糸(例えばレーヨン)などの再生繊維1、アセテート人絹などの半合成繊維1、6−ナイロンなどポリアミド系繊維1、ポリエステル系繊維1、アクリル繊維1、ビニロンなどのポリビニルアルコール系繊維1などが挙げられる。さらに、金属繊維1、炭素繊維1などの無機繊維1であってもよく、これらの繊維1は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0019】
パルプとしては、例えば、木材パルプ、リンターパルプ、ワラパルプ、コウゾ、三椏などが挙げられ、これらのパルプは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。さらに、パルプと化学繊維1とを組み合わせると、フィルター2強度及び成形性を向上でき、その配合割合(重量比)は、例えば、パルプ:化学繊維1=100:0〜50:50(好ましくは100:0〜70:30)程度である。
【0020】
繊維1の平均径は、0.1〜20μm(好ましくは1〜10μm)程度で、平均長さは、100μm〜30mm(好ましくは500μm〜10mm)程度である。
【0021】
上記吸着剤及び脱酸剤を繊維1に絡ませたフィルター2は、従来からの圧縮成型や抄造、モールド成型といった製造法によってシート状に成形するもので、特に詳述しない。繊維1と吸着剤及び脱酸剤の配合比は、繊維1と吸着剤及び脱酸剤の種類にもより、後述するが、繊維1にパルプ、吸着剤に活性炭を用いる場合、パルプ:活性炭及び脱酸剤=9:1〜1:2、好ましくは4:1〜2:1とする。
【0022】
次に、繊維1の形状について説明する。本発明においては、繊維1を、上方に開口し下方へ行く程小径となる袋状に形成する。例えば、図1、図2に示すように円錐台を逆にして上方に開口する容器状とした形状が挙げられるが、図3に示すように四角錐台を逆にして上方に開口する容器状とした形状や、同様に三角錐台、五角錐台、六角錐台等の任意の角錐台を逆にして上方に開口する容器状とした形状、上方に開口し下方へ行く程小径となる球面状等、特に限定されない。そして、この繊維1を圧縮成形や抄造にて形成する際、該繊維1に吸着剤及び脱酸剤を担持させることで、前記形状をした単位フィルター2aを形成するものである。繊維1の成形については、モールド成型により直接所望の形状を得るものや、抄造等により一旦シート状に形成した後に、折り曲げたりすることで所望の形状を得るもの等、様々な方法が挙げられる。
【0023】
単位フィルター2aの厚さは、1mm〜10mm程度で任意に設定され、この厚さは、従来のフィルター2の厚みの数分の1に過ぎない。単位フィルター2aは、上述したように上方に開口すると共に下方へ行く程小径となる形状としているため、同じ大きさ・形状の単位フィルター2aを上下に重ねることができる。そして使用に際しては、単位フィルター2aを複数枚重ねたものをフィルター2として使用するものである。図1に示す例では三枚の単位フィルター2aを重ねたものをフィルター2として使用するが、枚数は特に限定されない。
【0024】
複数枚の単位フィルター2aを重ねてなるフィルター2は、油ろ過用の容器に設置したり、あるいは下方に油受けを配置した状態で支持手段にて支持させた状態で設置し、フィルター2の上方開口からろ過する使用済みの食用油oを注入する。すなわち、フィルター2は、繊維1にて成形してあって自己保形性を有するため、例えばペーパードリップ式コーヒーフィルターのように容器に沿わせて配置する必要がなく、フィルター2の外面に沿っていなくても支持する手段さえあればよく、様々なものに容易に使用することができ、フライヤーにも特に専用のフィルター2の支持手段を備えなくても使用することができる。油oは、最上位置の単位フィルター2aから順に下方に通過していき、最下位置の単位フィルター2aを通過した後、下方の油受けに落下する。油oは各単位フィルター2aを通過する際に、繊維1にて中の不純物がろ過されて除去され、これと同時に繊維1にてろ過しきれない微細な粒子や臭い等の汚染成分が吸着剤により吸着されると共に、脱酸剤によって酸化されている油oを中和して再生する。
【0025】
そして上述したようにフィルター2は複数枚の単位フィルター2aを重ねて形成してあるため、単位フィルター2aの厚さを1〜10mm程度として従来の10〜50mm程度のフィルター2よりも薄くすることができて、各単位フィルター2aでの圧力損失が従来のフィルター2よりも低減されて、単位フィルター2a複数枚を重ねたフィルター2を通過する時間が短縮されてろ過速度が向上するものである。
【0026】
またフィルター2は、ろ過する上流側程吸着量が多くて下流側程吸着量が少なく、一回の使用では単位フィルター2aの位置によって吸着量が異なる。すなわち、上流側(上側)の単位フィルター2a程、吸着量が多いため、従来のような一体のフィルター2では、フィルター2の厚み方向の下側の部分では、ろ材や吸着剤、脱酸剤がまだろ過能力、吸着能力及び脱酸化能力(以下、浄化能力という)を充分に残したまま廃棄されて無駄が生じていたが、本発明では複数枚の単位フィルター2aを重ねてフィルター2を構成しているため、単位フィルター2a毎に汚れ具合が異なっていても、汚れている単位フィルター2a(最上位置の単位フィルター2a)のみを廃棄することで、残りのろ過能力、浄化能力を充分に残した単位フィルター2aを廃棄することなく、次回のろ過で使用することができる。従って、好適な使用方法としては、図2に示すように、単位フィルター2aを所定枚数重ねたフィルター2で油oのろ過及び浄化を行い(図2(a))、その後最上位置の単位フィルター2aを離脱して廃棄し(図2(b))、最下位置に新しい単位フィルター2aを重ねて(図2(c))、交換前と同様のろ過能力及び浄化能力に富んだフィルター2を構成する。使用する度にこれを繰り返すことで、常に一定のろ過及び浄化能力をフィルター2に具備させることができ、これにあたり、廃棄するのは最も汚れてろ過能力及び浄化能力が無いか極めて低い単位フィルター2aのみで済み、ろ過能力及び浄化能力を充分に残したまま廃棄されて無駄が生じるのを抑えることが可能となる。
【0027】
また、フィルター2(単位フィルター2a)の形状を袋状にして、全体をろ過部及び浄化部とすることで、従来のフィルター2よりも広い面積をろ過部及び浄化部として機能させることができて、通過面積を広くして単位面積当たりの通過量を下げてろ過速度を向上させることが可能となる。また、ワンパスでは通過しない部分も数回使用されるうちに通過して使用される確率が高く、通過せずにろ過能力及び浄化能力を充分に残したまま廃棄されるのを一層抑えることが可能となっている。
【0028】
また、フィルター2(単位フィルター2a)の形状を袋状にしたことで、油oは必ずフィルター2を通過することとなり、従来のように油ろ過用の容器とフィルター2との間の隙間から油oがリークしてろ過が行われないといったことを防止することができる。
【0029】
なお、本実施形態ではろ過及び浄化する対象として使用済みの食用の例について説明したが、対象としては食用油に限定されず、機械油等の他の油やその他の液体が任意に挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のフィルターの一実施形態の斜視図である。
【図2】(a)〜(c)は同上のフィルターにおける単位フィルターの交換の説明図である。
【図3】フィルターの他例の斜視図である。
【図4】従来の油ろ過器の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 繊維
2 フィルター
2a 単位フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状の吸着剤及び脱酸剤と、前記吸着剤及び脱酸剤を結合して保持するバインダー及びろ材としての繊維と、で主体が構成されるフィルターであって、繊維を、上方に開口し下方へ行く程小径となる袋状に形成すると共に、該繊維に吸着剤及び脱酸剤を担持させて単位フィルターを形成し、前記単位フィルター複数枚を上下に重ねて積層して成ることを特徴とするフィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−272600(P2008−272600A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115428(P2007−115428)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(593196861)ヤマトヨ産業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】