フィルタ回路および通信装置
【課題】フライングキャパシタを備えるフィルタ回路において、急峻な減衰特性を備えることが可能なフィルタ回路を提供すること。
【解決手段】フライングキャパシタと、フライングキャパシタの入力端と出力端との間に、フライングキャパシタと並列に設けられるキャパシタと、を備えるフィルタ回路は提供される。フライングキャパシタの入力端と出力端との間に所定の容量を有するキャパシタを設けることで、フライングキャパシタを備えるフィルタ回路において、急峻な減衰特性を備えることが可能となる。
【解決手段】フライングキャパシタと、フライングキャパシタの入力端と出力端との間に、フライングキャパシタと並列に設けられるキャパシタと、を備えるフィルタ回路は提供される。フライングキャパシタの入力端と出力端との間に所定の容量を有するキャパシタを設けることで、フライングキャパシタを備えるフィルタ回路において、急峻な減衰特性を備えることが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ回路および通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)プロセスの微細化に伴い、RF(Radio Frequency)回路の電源電圧は低下する傾向にある。かかるCMOSプロセスの微細化により従来の回路手法でRF回路を実装しようとすると、電圧余裕が不足して信号振幅のダイナミックレンジが狭くなる問題がある。一方、CMOSプロセスの微細化によりトランジスタの遮断周波数は上昇するので、高速なスイッチング動作を時間に正確に行う動作に適しているという利点がある。また、リソグラフィーが高精度化するため、キャパシタの容量比が正確になる利点もある。
【0003】
CMOSプロセスの微細化で生じる問題点を回避して利点を享受するために、RF回路に離散時間信号処理の概念を取り入れた新しい技術が、デジタルRF技術である。そして、デジタルRF技術分野の主要な回路として、チャージドメインフィルタ(Charge Domain Filter)がある。チャージドメインフィルタは、トランスコンダクタンスアンプとスイッチとキャパシタから構成されるフィルタ回路である。チャージドメインフィルタは、クロックに同期して電荷の蓄積と放出を行うことでアナログ信号のサンプリングを行い、離散時間信号処理によるフィルタリングやデシメーションなどを行う回路である。
【0004】
チャージドメインフィルタの従来例として、非特許文献1で示されるような、チャージドメイン2次IIR−LPF(Infinite Impulse Response Low Pass Filter)がある。非特許文献1で示された、チャージドメイン2次IIR LPFは、簡単なチャージドメイン回路で実現できるという利点がある。
【0005】
【非特許文献1】S. Manetti and A. Liberatore,“Switched-capacitor lowpass filter without active components,”Electron. Lett.,1980, 16, pp. 883-885
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、非特許文献1で示される従来のチャージドメイン2次IIR−LPFは、カットオフ周波数の付近では減衰特性が緩やかであり、急峻な特性を備えるフィルタを構成することができないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、フライングキャパシタを備えるフィルタ回路において、急峻な減衰特性を備えることが可能な、新規かつ改良されたフィルタ回路およびフィルタ回路を備えた通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、入力端から出力端へ切り替わる場合には極性を維持し、出力端から入力端へ切り替わる場合には極性が反転するフライングキャパシタと、フライングキャパシタの入力端と出力端との間に、フライングキャパシタと並列に設けられるキャパシタと、を備えるフィルタ回路が提供される。
【0009】
かかる構成によれば、フライングキャパシタは入力端から出力端へ切り替わる場合には極性を維持し、出力端から入力端へ切り替わる場合には極性が反転し、キャパシタはフライングキャパシタの入力端と出力端との間に、フライングキャパシタと並列に設けられる。その結果、フライングキャパシタと並列に設けられるキャパシタにより、急峻な減衰特性を備えるフィルタ回路を提供することができる。
【0010】
フライングキャパシタは、出力端から入力端へ切り替わってからフライングキャパシタに入力されるクロック周期のJ(Jは1以上の自然数)クロック分遅延して入力端から出力端へ切り替わり、入力端から出力端へ切り替わってからクロック周期のK(Kは1以上の自然数)クロック分遅延して出力端から入力端へ切り替わるようにしてもよい。
【0011】
Jの値は可変であってもよい。また、Jの値は可変であり、JとKとの和は一定であってもよい。また、Jの値は可変であり、Kの値は一定であってもよい。
【0012】
フライングキャパシタおよびキャパシタの組を縦続接続してもよい。
【0013】
キャパシタの容量は、フライングキャパシタを構成するキャパシタの容量のM倍であってもよい。なお、Mは、M=exp(−j*2πf*Ts*J)/(exp(−j*2πf*Ts)−1)が実数となる場合の値である。また、Tsはクロック周期、fはノッチが生じる周波数である。また、Mの値が負の場合は、フライングキャパシタを差動構成にし、キャパシタをフライングキャパシタの正相側と逆相側との間に設けるようにしてもよい。
【0014】
キャパシタの容量は、フライングキャパシタを構成するキャパシタの容量のM倍であってもよい。なお、Mは、M=exp(−j*2πf*Ts*J)/(exp(−j*2πf*Ts)−1)が虚数となる場合の値である。また、Tsはクロック周期、fはノッチが生じる周波数である。また、差動構成にしたフライングキャパシタを2つ備え、一方のフライングキャパシタには複素電圧で表される電圧が供給されるようにしてもよい。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記フィルタ回路を備える、通信装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、急峻な減衰特性を備えることが可能な、新規かつ改良されたフィルタ回路および通信装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
また、以下の順序に従って本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
<1.従来のチャージドメイン2次IIR−LPF>
[1−1.従来のチャージドメイン2次IIR−LPFの構成]
[1−2.従来のチャージドメイン2次IIR−LPFの問題点]
<2.本発明の一実施形態にかかるLPF>
[2−1.本発明の一実施形態にかかるLPFの構成]
[2−2.本発明の一実施形態にかかるLPFの伝達関数]
[2−3.本発明の一実施形態にかかるLPFの周波数特性]
[2−4.本発明の一実施形態にかかるLPFの回路構成例]
[2−5.本発明の一実施形態にかかるLPFの変形例]
<3.本発明の一実施形態にかかるLPFを備えた通信装置>
<4.まとめ>
【0019】
<1.従来のチャージドメイン2次IIR−LPF>
まず、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する前に、従来のチャージドメイン2次IIR−LPFの説明およびその問題点について説明する。
【0020】
[1−1.従来のチャージドメイン2次IIR−LPFの構成]
図22は、非特許文献1で開示された、従来のチャージドメイン2次IIR−LPF10の構成について示す説明図である。以下、図22を用いて従来のチャージドメイン2次IIR−LPF10の構成について説明する。
【0021】
図22に示したように、従来のチャージドメイン2次IIR−LPF10は、電源11と、トランスコンダクタンスアンプgmと、キャパシタCh1、Ch2、Cr1、Cr2と、を含んで構成される。
【0022】
電源11は交流電源であり、入力電圧信号Vinを出力する。トランスコンダクタンスアンプgmは、電圧信号を電流信号に変換して出力するトランスコンダクタンスアンプであり、図22のA点に、電源11からの入力電圧信号Vinに比例した振幅の電流を出力し、キャパシタCh1を充電する。
【0023】
キャパシタCr1、Cr2は、LPF10に入力されるクロックに同期して、A点側とB点側とを交互に移動するように構成されている。キャパシタCr1、Cr2がA点側とB点側とを交互に移動することで、キャパシタCh1とキャパシタCh2との間で電荷の授受を行うことができる。その結果、キャパシタCh2が充電され、図22のB点に電圧が生じて、出力電圧信号Voutを出力することができる。
【0024】
ここで、キャパシタCr1、Cr2の移動の規則性について図23を用いて説明する。キャパシタCr1、Cr2は、図22のA点側からB点側に移動する場合には同じ極性で平行移動する。一方図22のB点側からA点側に移動する場合には、キャパシタCr1、Cr2は極性を反転させて移動する。図23はキャパシタCr1、Cr2の移動の様子を示したものであり、キャパシタCr1、Cr2には、それぞれ極性を示す正負の符号を付している。図23の(1)を説明の便宜上、第1の状態と称する。第1の状態では、キャパシタCr1は図22のA側、キャパシタCr2は図22のB側に、それぞれ正極性で位置していることを表している。
【0025】
続く図23の(2)を説明の便宜上、第2の状態と称する。第2の状態では、キャパシタCr1は図22のB側が正極性となるように移動しているが、キャパシタCr2は図22のA側が負極性となるように、すなわち極性が反転するように移動している。
【0026】
続く図23の(3)を説明の便宜上、第3の状態と称する。第3の状態では、第2の状態で極性が反転したキャパシタCr2は図22のB側が負極性となるように移動しているが、キャパシタCr1は図22のA側が負極性となるように、すなわち極性が反転するように移動している。
【0027】
続く図23の(4)を説明の便宜上、第4の状態と称する。第4の状態では、第3の状態で極性が反転したキャパシタCr1は図22のB側が負極性となるように移動しているが、キャパシタCr2は図22のA側が正極性となるように、すなわち極性が反転するように移動している。
【0028】
そして、第4の状態の次の状態では、キャパシタCr2は図22のB側が正極性となるように、キャパシタCr1は図22のA側が正極性となるように、すなわち極性が反転するように移動している。これは第1の状態と同じ状態である。このように、第1の状態から第4の状態をクロックに同期しながら繰り返すことでキャパシタCh1とキャパシタCh2との間で電荷の授受を行うことができる。
【0029】
図22に示したLPF10の伝達関数を求めるにあたり、LPF10をzドメイン等価回路に変換する。図24は、図22に示したLPF10をzドメイン等価回路に変換したものを示す説明図である。図24に示した図では、Tsはサンプリングクロックの周期、キャパシタCr1、Cr2の容量をいずれもCr、キャパシタCh1,Ch2の容量をいずれもCr(N−1)としている。また、図24に示した図で電流源として図示したものは、1サンプルあたり、矢印の方向に電荷が流れることを示しており、図24に示した図において、長方形で図示したものはコンダクタンスを示している。
【0030】
図24のA点の電圧V1及びB点の電圧V2を、キルヒホッフ第1の法則により求めると、下記の数式1、数式2の通りとなる。
【0031】
【数1】
・・・(数式1)
・・・(数式2)
【0032】
上記数式1、数式2から、V2/VINを求めると下記の数式3の通りとなる。
【0033】
【数2】
・・・(数式3)
【0034】
上記数式3において、N=10、Ts=1.0[ns]、Gm=1[mS]、Ch=4.5[pF]、Cr=0.5[pF]とし、さらにクロックによるチャージサンプリングが矩形の時間窓で行われることを考慮して、図24の等価回路の周波数特性を求める。図25は、上記数式3に上記の値を代入して得られる、図24の等価回路の周波数特性をグラフで示す説明図である。図25に示したように、図24の等価回路はおよそ18MHz付近から緩やかに減衰するLPFの特性を有していることが分かる。
【0035】
図26は、図22に示したLPF10の実際の回路構成を示す説明図である。また、図27は、図26に示したLPF10に入力されるクロックの波形を示す説明図である。図26に示した回路構成は、図22に示した構成からキャパシタ部分のみを抜き出して図示したものである。図27に示した各クロックは、図26に示した各スイッチに対応するものであり、図26の各スイッチは図27に示したクロックがHiレベルのときにオンになり、Lowレベルのときにオフになる。
【0036】
図26に示したLPF10の動作について説明する。クロックS1、クロックS1,2およびクロックS1,4がHiレベルの状態になると、図5のスイッチS1、スイッチS1,2およびスイッチS1,4がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCh1に蓄積された電荷がキャパシタCr1に移動し、キャパシタCr2に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。
【0037】
続いて、クロックS2、クロックS1,2およびクロックS2,3がHiレベルの状態になると、図26のスイッチS2、スイッチS1,2およびスイッチS2,3がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCr1に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。また、キャパシタCr2はGNDに接続される極が反転する。そして、キャパシタCh1に蓄積された電荷が、極が反転したキャパシタCr2に移動する。
【0038】
続いて、クロックS3、クロックS2,3およびクロックS3,4がHiレベルの状態になると、図26のスイッチS3、スイッチS2,3およびスイッチS3,4がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCr2に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。また、キャパシタCr1は、GNDに接続される極が反転し、キャパシタCh1に蓄積された電荷がキャパシタCr1に移動する。
【0039】
続いて、クロックS4、クロックS3,4およびクロックS1,4がHiレベルの状態になると、図26のスイッチS4、スイッチS3,4およびスイッチS1,4がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCr1に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。また、キャパシタCr2は、GNDに接続される極が反転し、キャパシタCh1に蓄積された電荷がキャパシタCr2に移動する。
【0040】
このようにクロックのHi・Lowレベルの切り替えに応じてスイッチのオン・オフを繰り返すことで、キャパシタCh1に蓄積された電荷がキャパシタCr1、Cr2を介してキャパシタCh2に移動する。結果として、LPF10は図25に示したような周波数通過特性を有するLPFとして動作する。図26に示したように、キャパシタCr1、Cr2の両端の極性を切り替えて移動する動作のことを、一般にフライングキャパシタ(Flying Capacitor)方式と呼ぶ。
【0041】
[1−2.従来のチャージドメイン2次IIR−LPFの問題点]
このように、非特許文献1で開示された、従来のチャージドメイン2次IIR−LPF10は、簡単なチャージドメイン回路で2次IIR−LPFが実現できるという利点がある。しかしながら、図25に示したように、カットオフ周波数(−3dBに相当する周波数)付近では減衰特性が緩やかで、急峻なフィルタが構成できないという問題点がある。
【0042】
そこで本発明では、周波数特性にノッチを付加することで急峻な減衰特性を有するチャージドメインLPF回路を実現することを目的とする。以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0043】
<2.本発明の一実施形態にかかるLPF>
[2−1.本発明の一実施形態にかかるLPFの構成]
図1は、本発明の一実施形態にかかるチャージドメインIIR−LPF100の構成について示す説明図である。以下、図1を用いて本発明の一実施形態にかかるチャージドメインIIR−LPF100(以下、単に「LPF100」とも称する)の構成について説明する。
【0044】
図1に示したように、本発明の一実施形態にかかるLPF100は、電源101と、トランスコンダクタンスアンプgmと、キャパシタCh1、Ch2、Cr1、Cr2、Cxと、を含んで構成される。
【0045】
電源101は交流電源であり、入力電圧信号Vinを出力する。トランスコンダクタンスアンプgmは、電圧信号を電流信号に変換して出力するトランスコンダクタンスアンプであり、図1のA点に、電源101からの入力電圧信号Vinに比例した振幅の電流を出力し、キャパシタCh1およびキャパシタCxを充電する。
【0046】
キャパシタCr1、Cr2は、LPF100に入力されるクロックに同期して、A点側とB点側とを交互に移動するように構成されている。キャパシタCr1、Cr2がA点側とB点側とを交互に移動することで、キャパシタCh1とキャパシタCh2との間で電荷の授受を行うことができる。その結果、キャパシタCh2が充電され、図1のB点に電圧が生じて、出力電圧信号Voutを出力することができる。
【0047】
図1に示したLPF100が図22に示した従来のLPF10と異なるのは、A点とB点との間にキャパシタCxを設けている点である。また、従来のLPF10と異なり、キャパシタCr1、Cr2がA点側からB点側に移動するときの遅延時間をJクロック、B点側からA点側に移動するときの遅延時間をKクロックとしている。なお、J、Kはともに1以上の自然数である。
【0048】
[2−2.本発明の一実施形態にかかるLPFの伝達関数]
以上、本発明の一実施形態にかかるチャージドメインIIR−LPF100の構成について説明した。ここで、図1に示したLPF100の伝達関数を求めるにあたり、LPF100をzドメイン等価回路に変換する。図2は、図1に示したLPF100をzドメイン等価回路に変換したものを示す説明図である。図2に示した図では、Tsはサンプリングクロックの周期、キャパシタCr1、Cr2の容量をいずれもCr、キャパシタCxの容量をCrのM倍のM・Cr、キャパシタCh1、Ch2の容量をいずれもCr(N−1)としている。また、図2に示した図で電流源として図示したものは、1サンプルあたり、矢印の方向に電荷が流れることを示しており、図2に示した図において、長方形で図示したものはコンダクタンスを示している。
【0049】
図2のA点の電圧V1及びB点の電圧V2を、キルヒホッフ第1の法則により求めると、下記の数式4、数式5の通りとなる。
【0050】
【数3】
・・・(数式4)
・・・(数式5)
【0051】
なお、上記数式4、数式5において、P(z)およびQ(z)はそれぞれ下記の数式6、数式7で示したものである。
【0052】
【数4】
・・・(数式6)
・・・(数式7)
【0053】
上記数式4〜数式7を用いて、V2/Vinを求めると、以下の数式8となる。
【0054】
【数5】
・・・(数式8)
【0055】
ただし、上記数式8において、W1(z)は下記の数式9で示したものである。
【0056】
【数6】
・・・(数式9)
【0057】
[2−3.本発明の一実施形態にかかるLPFの周波数特性]
このように、図1に示したLPF100の伝達関数が求まった。ここで、図2に示したLPF100の等価回路において、N=10、M=1.618、Ts=1.0[ns]、Gm=1[mS]、Cr=0.5[pF]と設定する。そして、J+K=4の範囲でさらにJとKの組合せをパラメータとして、上記数式8からLPF100の周波数特性を求めると、図3に示したような周波数特性となる。図3では、J=1,K=3の場合、J=2,K=2の場合、J=3,K=1の場合の3通りについてそれぞれ周波数特性を示している。
【0058】
図25に示した従来のLPF10の周波数特性と、図3に示した本発明の一実施形態にかかるLPF100の周波数特性とを比較すると、J=1,K=3の場合に、図25に示した従来のLPF10の周波数特性と同じ周波数特性になっていることが分かる。一方、J=3,K=1の場合は100[MHz]において−50[dB]の深いノッチが生じており、急峻な減衰特性になっていることが分かる。また、J=2,K=2の場合は150[MHz]付近におよそ−37[dB]の緩やかなノッチが生じていることが分かる。このようにパラメータを設定することで、決まった周波数にノッチを生じさせることができ、急峻な減衰特性を有するLPFを得ることができる。
【0059】
ここで、図3に示したように、本発明の一実施形態にかかるLPF100の周波数特性にノッチが生じる条件について説明する。ノッチが生じるということは、その周波数においては図2のA点の電圧V1とは無関係に、B点の電圧V2がゼロになるということである。従って上記数式5の分子にV2=0を代入して整理すると、以下の数式10を導くことが出来る。
【0060】
【数7】
・・・(数式10)
【0061】
この数式10のzにz=exp(j・2π・f・Ts)を代入してMについて解くと、下記の数式11が導かれる。
【0062】
【数8】
・・・(数式11)
【0063】
この数式11で求めたMの実部および虚部を、J=1,2,3の場合について、それぞれサンプリング周波数Tsで正規化した周波数を横軸にしてグラフ化することで、ノッチが生じる正規化周波数とMの値とを、Jをパラメータとして導くことができる。図4は、J=1の場合における正規化周波数とMの実部および虚部との関係をグラフで示す説明図であり、図5は、J=2の場合における正規化周波数とMの実部および虚部との関係をグラフ示す説明図である。そして、図6はJ=3の場合における正規化周波数とMの実部および虚部との関係をグラフ示す説明図である。
【0064】
数式11におけるMの実部は偶関数であり、虚部は奇関数である。従って、Mが実数になる場合は正と負の周波数でMの値が等しくなる。この条件から、ノッチの正規化周波数とMの値とを、Jをパラメータとして求めることができる。
【0065】
図4に示したJ=1の場合は、Mが実数となるのは虚部が0の場合、すなわち正規化周波数が1/2の場合で、図4のグラフから、正規化周波数が1/2の場合のMの値は0.5となる。なお、図4に示したように、J=1の場合はMの値は0.5で一定となる。
【0066】
図5で示したJ=2の場合は、Mが実数となるのは虚部が0の場合、すなわち正規化周波数が1/6、または3/6(=1/2)の場合である。図5のグラフから、正規化周波数が1/6の場合のMの値は1.0となり、正規化周波数が1/2の場合はMの値は−0.5となる。
【0067】
図6で示したJ=3の場合は、Mが実数となるのは虚部が0の場合、すなわち正規化周波数が1/10、3/10または5/10(=1/2)の場合である。図6のグラフから、正規化周波数が1/10の場合のMの値は1.618となり、正規化周波数が3/10の場合はMの値は−0.618となり、正規化周波数が1/2の場合はMの値が0.5となる。
【0068】
ここで、J=2,3の場合には、Mの値が負となることがある。これは、図1に示したキャパシタCxの容量が負になるということではない。例えば図7に示したように、IIR−LPFを差動構成にして、差動回路の正相側のA点と逆相側のBX点、および逆相側のAX点と正相側のB点を接続して、キャパシタCxを正相側と逆相側との間に交差接続することを意味する。
【0069】
続いてMの値が実部を含まずに純虚数となる場合を考える。図4に示したJ=1の場合は、Mの値は0.5で一定となるので、Mの値は実部を含まない純虚数にはならない。
【0070】
図5で示したJ=2の場合は、Mが実部を含まない純虚数となるのは実部が0の場合、すなわち正規化周波数が1/3、または−1/3の場合である。図5のグラフから、正規化周波数が−1/3の場合には、Mの値は−j*0.577となり、正規化周波数が1/3の場合には、Mの値はj*0.577となる。
【0071】
図6で示したJ=3の場合は、Mが実部を含まない純虚数となるのは実部が0の場合、すなわち正規化周波数が1/5、−1/5、2/5、−2/5の場合である。図6のグラフから、正規化周波数が−1/5の場合には、Mの値は−j*0.851となり、正規化周波数が1/5の場合には、Mの値はj*0.851となる。また正規化周波数が−2/5の場合には、Mの値は−j*0.526となり、正規化周波数が2/5の場合には、Mの値はj*0.526となる。
【0072】
ここで、J=2,3の場合には、Mの値が純虚数になることがある。これが、図1に示したキャパシタCxの容量が純虚数になるということではない。例えば図8に示したように、2組の差動回路を用いて複素電圧を扱えるようにすることを意味する。図8に示した差動回路では、虚数側のjA点と実数側のB点、および虚数側のjAX点と実数側のBX点、および実数側のA点と虚数側のjB点、および実数側のAX点と虚数側のjBX点を、それぞれCxで接続することを意味する。
【0073】
図3に示した本発明の一実施形態にかかるLPF100の周波数特性を、カットオフ周波数付近で拡大したものを図9に示す。図9に示したように、通過帯域内では10[MHz]程度まで3つの周波数特性が重なっている。従って、Jの値の変化によらずに周波数特性がほぼ等しいことがわかる。
【0074】
次に、N=10、M=1.618、Ts=1.0[ns]、Gm=1[mS]、Cr=0.5[pF]に設定し、さらにK=1で一定にしてJだけをパラメータとして上記数式8からLPF100の周波数特性を求めると、図10に示したような周波数特性となる。
【0075】
図3に示した周波数特性と図10に示した周波数特性とを比較すると、全般的にはほぼ同じ周波数特性と示しているように見える。ここで、図10に示した本発明の一実施形態にかかるLPF100の周波数特性を、カットオフ周波数付近で拡大したものを図11に示す。図11に示したグラフによれば、通過帯域内の10[MHz]では3本のグラフが異なっており、またカットオフ周波数の23[MHz]付近で3本のグラフが交わっていることが分かる。このように、Kの値、すなわちLPF100のB点側からA点側にキャパシタCr1,Cr2が移動する場合の遅延クロック数を固定にする。そして、LPF100のA点側からB点側にキャパシタCr1,Cr2が移動する場合の遅延クロック数Jを変化させることによって、LPF100の周波数特性を変化させることが出来る。
【0076】
[2−4.本発明の一実施形態にかかるLPFの回路構成例]
図12は、本発明の一実施形態にかかるLPF100において、J=3、K=1の回路構成例について示す説明図である。図13は、図12に示したLPF100に入力されるクロックの波形を示す説明図である。図12に示した回路構成は、図1に示した構成からキャパシタ部分のみを抜き出して図示したものである。図13の各クロックは、図12に示した各スイッチに対応するものであり、図12の各スイッチは図13に示すクロックがHiレベルのときにオンになり、Lowレベルのときにオフになる。
【0077】
図12に示したLPF100の動作について説明する。クロックS1、クロックS1,4およびクロックS6,1がHiレベルの状態になると、図12のスイッチS1、スイッチS1,4およびスイッチS6,1がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCh1に蓄積された電荷が、キャパシタCxおよびキャパシタCr1に移動し、キャパシタCr2に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。
【0078】
続いて、クロックS2、クロックS2,5およびクロックS7,2がHiレベルの状態になると、図12のスイッチS2、スイッチS2,5およびスイッチS7,2がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCr3に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。またキャパシタCr2はGNDに接続される極が反転する。そして、キャパシタCh1に蓄積された電荷が、キャパシタCxおよび極が反転したキャパシタCr2に移動する。すなわち、キャパシタCr2の電荷がキャパシタCh2に移動してから1クロック後に、キャパシタCr2の極が反転し、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr2に移動することになる。
【0079】
続いて、クロックS3、クロックS3,6およびクロックS8,3がHiレベルの状態になると、図12のスイッチS3、スイッチS3,6およびスイッチS8,3がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCr4に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。またキャパシタCr3はGNDに接続される極が反転する。そして、キャパシタCh1に蓄積された電荷が、キャパシタCxおよび極が反転したキャパシタCr3に移動する。すなわち、キャパシタCr3の電荷がキャパシタCh2に移動してから1クロック後に、キャパシタCr3の極が反転し、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr3に移動することになる。
【0080】
続いて、クロックS4、クロックS4,7およびクロックS1,4がHiレベルの状態になると、図12のスイッチS4、スイッチS4,7およびスイッチS1,4がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCr1に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。すなわち、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr1に蓄積されてから3クロック後に、キャパシタCr1の電荷がキャパシタCh2に移動することになる。またキャパシタCr4はGNDに接続される極が反転する。そして、キャパシタCh1に蓄積された電荷が、キャパシタCxおよび極が反転したキャパシタCr4に移動する。すなわち、キャパシタCr4の電荷がキャパシタCh2に移動してから1クロック後に、キャパシタCr4の極が反転し、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr4に移動することになる。
【0081】
続いて、クロックS5、クロックS2,5およびクロックS5,8がHiレベルの状態になると、図12のスイッチS5、スイッチS2,5およびスイッチS5,8がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCr2に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。すなわち、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr2に蓄積されてから3クロック後に、キャパシタCr2の電荷がキャパシタCh2に移動することになる。またキャパシタCr1はGNDに接続される極が反転する。そして、キャパシタCh1に蓄積された電荷が、キャパシタCxおよび極が反転したキャパシタCr1に移動する。すなわち、キャパシタCr1の電荷がキャパシタCh2に移動してから1クロック後に、キャパシタCr1の極が反転し、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr1に移動することになる。
【0082】
続いて、クロックS6、クロックS3,6およびクロックS6,1がHiレベルの状態になると、図12のスイッチS6、スイッチS3,6およびスイッチS6,1がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCr3に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。すなわち、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr3に蓄積されてから3クロック後に、キャパシタCr3の電荷がキャパシタCh2に移動することになる。またキャパシタCr2はGNDに接続される極が反転する。そして、キャパシタCh1に蓄積された電荷が、キャパシタCxおよび極が反転したキャパシタCr2に移動する。すなわち、キャパシタCr2の電荷がキャパシタCh2に移動してから1クロック後に、キャパシタCr2の極が反転し、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr2に移動することになる。
【0083】
続いて、クロックS7、クロックS4,7およびクロックS7,2がHiレベルの状態になると、図12のスイッチS7、スイッチS4,7およびスイッチS7,2がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCr4に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。すなわち、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr4に蓄積されてから3クロック後に、キャパシタCr4の電荷がキャパシタCh2に移動することになる。またキャパシタCr3はGNDに接続される極が反転する。そして、キャパシタCh1に蓄積された電荷が、キャパシタCxおよび極が反転したキャパシタCr3に移動する。すなわち、キャパシタCr3の電荷がキャパシタCh2に移動してから1クロック後に、キャパシタCr3の極が反転し、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr3に移動することになる。
【0084】
続いて、クロックS7、クロックS4,7およびクロックS7,2がHiレベルの状態になると、図12のスイッチS7、スイッチS4,7およびスイッチS7,2がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCr4に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。すなわち、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr4に蓄積されてから3クロック後に、キャパシタCr4の電荷がキャパシタCh2に移動することになる。またキャパシタCr3はGNDに接続される極が反転する。そして、キャパシタCh1に蓄積された電荷が、キャパシタCxおよび極が反転したキャパシタCr3に移動する。すなわち、キャパシタCr3の電荷がキャパシタCh2に移動してから1クロック後に、キャパシタCr3の極が反転し、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr3に移動することになる。
【0085】
続いて、クロックS8、クロックS5,8およびクロックS8,3がHiレベルの状態になると、図12のスイッチS8、スイッチS5,8およびスイッチS8,3がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCr1に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。すなわち、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr1に蓄積されてから3クロック後に、キャパシタCr1の電荷がキャパシタCh2に移動することになる。またキャパシタCr4はGNDに接続される極が反転する。そして、キャパシタCh1に蓄積された電荷が、キャパシタCxおよび極が反転したキャパシタCr4に移動する。すなわち、キャパシタCr4の電荷がキャパシタCh2に移動してから1クロック後に、キャパシタCr4の極が反転し、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr4に移動することになる。
【0086】
このようにクロックのHi・Low状態の変化に伴って各スイッチのオン・オフを切り替えることで、図1に示したLPF100を実現することができる。適切にキャパシタの容量とスイッチの切り替えタイミングを調整し、各スイッチのオン・オフを切り替えてキャパシタ間で電荷を授受することで、図3に示したような周波数特性を備えるLPFを実現することができる。また、キャパシタCr1、Cr2のA点側からB点側、またはB点側からA点側への移動のタイミング(遅延時間)を制御することで、周波数特性におけるノッチの深さを切り替えたり、またノッチを生じさせなくしたりすることができる。
【0087】
[2−5.本発明の一実施形態にかかるLPFの変形例]
次に、チャージドメインIIR−LPFを3段に縦続接続して、周波数特性にノッチが3箇所現れる急峻なLPFを構成した場合について説明する。図14は、本発明の一実施形態の変形例にかかるLPF200の構成について示す説明図である。
【0088】
図14に示したLPF200は、図1に示したLPF100におけるフライングキャパシタ部分を差動構成にしたものを3つ縦続接続した構成を有している。フライングキャパシタ210は、J=1、K=3に設定したフライングキャパシタであり、フライングキャパシタ220は、J=3、K=1に設定したフライングキャパシタである。そして、フライングキャパシタ230は、J=2、K=2に設定したフライングキャパシタである。また、フライングキャパシタ210の両端にはキャパシタCx1を、フライングキャパシタ220の両端にはキャパシタCx2を、フライングキャパシタ230の両端にはキャパシタCx3を、それぞれ設けている。
【0089】
フライングキャパシタ210、220、230には、それぞれ容量Crを有するキャパシタCrが備えられている。また、キャパシタCx1の容量は、CrのM1倍とし、キャパシタCx2の容量は、CrのM2倍とし、キャパシタCx3の容量は、CrのM3倍とする。
【0090】
また、キャパシタCx2は、差動構成にしたフライングキャパシタ220の、逆相側のV2X点と正相側のV3点との間、および正相側のV2点と逆相側のV3X点との間を接続するように設けられている。
【0091】
フライングキャパシタ210、220、230の回路構成例を、それぞれ図15、図16、図17に、LPF200に入力されるクロックの波形を図18に、それぞれ示す。図18の各クロックは、図15、図16、図17に示したフライングキャパシタ210、220、230の各スイッチに対応するものである。図15、図16、図17の各スイッチは、図18に示すクロックがHiレベルのときにオンになり、Lowレベルのときにオフになる。
【0092】
フライングキャパシタ210の動作について説明する。クロックS1がHiレベルの状態になるとスイッチS1がオンになり、スイッチS1によってV1点およびV1A点と接続されるキャパシタCrに、入力側のキャパシタChから電荷が送られる。スイッチS1によってV2点およびV2A点と接続されるキャパシタCrに蓄積されている電荷は、出力側のキャパシタChへ送られる。クロックS1がLowレベルになり、クロックS2がHiレベルの状態になると、スイッチS2がオンになり、クロックS1がHiレベルの期間で電荷が蓄積されたキャパシタCrから出力側のキャパシタChへ電荷が送られる。従って、入力側のキャパシタChの電荷がキャパシタCrに蓄積されてから1クロック後に、キャパシタCrの電荷が出力側のキャパシタChに移動することになる。
【0093】
そして、クロックS2がHiレベルの状態となってから3クロック周期後にクロックS5がHiレベルの状態となると、スイッチS1によってV1点と接続されたキャパシタCrは、逆相側のV1X点に接続される。同様に、スイッチS1によってV1X点と接続されたキャパシタCrは、逆相側のV1点に接続される。従って、出力側のキャパシタChへ電荷が移動してから3クロック後に、キャパシタCrは極性が反転した状態で入力側のキャパシタChに接続されることになる。
【0094】
その他のキャパシタCrについても、クロックのHi・Low状態の切り替わりによるスイッチのスイッチング動作によって、電荷の授受や極性の反転が行われる。
【0095】
なお、ここではフライングキャパシタ210を例に挙げて説明したが、フライングキャパシタ220、230についても同様にスイッチング動作が行われ、キャパシタCrの極性が切り替わりながら、入力側と出力側との間での電荷の移動が行われる。フライングキャパシタ220では、入力側のキャパシタChの電荷がキャパシタCrに蓄積されてから3クロック後に、キャパシタCrの電荷が出力側のキャパシタChに移動する。そして、出力側のキャパシタChへ電荷が移動してから1クロック後に、キャパシタCrは極性が反転した状態で入力側のキャパシタChに接続されることになる。同様に、フライングキャパシタ230では、入力側のキャパシタChの電荷がキャパシタCrに蓄積されてから2クロック後に、キャパシタCrの電荷が出力側のキャパシタChに移動する。そして、出力側のキャパシタChへ電荷が移動してから2クロック後に、キャパシタCrは極性が反転した状態で入力側のキャパシタChに接続されることになる。
【0096】
フライングキャパシタ210の各パラメータは、J=1、K=3、M1=0.5とする。このようにフライングキャパシタ210のパラメータを設定することで、LPF200の周波数特性において、サンプリング周波数の1/2の周波数にノッチを生成することができる。またフライングキャパシタ220の各パラメータは、J=3、K=1、M2=−0.618とする。このようにフライングキャパシタ220のパラメータを設定することで、LPF200の周波数特性において、サンプリング周波数の3/10の周波数にノッチを生成することができる。またフライングキャパシタ230の各パラメータは、J=2、K=2、M2=1.0とする。このようにフライングキャパシタ230のパラメータを設定することで、LPF200の周波数特性において、サンプリング周波数の1/6の周波数にノッチを生成することができる。
【0097】
図14に示したLPF200の周波数特性を図19に、群遅延特性を図20に、それぞれ示す。なお、サンプリング周波数=50[MHz]、Ts=20[ns]、Gm=1[mS]、Cr=2[pF]、Ch=7[pF]、Cx1=1.0[pF]、Cx2=1.236[pF]、Cx3=2.0[pF]とする。図19に示したように、図14に示したLPF200は、サンプリング周波数の1/6の周波数、3/10の周波数、および1/2の周波数にノッチが生じるような周波数特性を有する。
【0098】
そして、図20に示した、LPF200の群遅延特性によれば、周波数通過帯域(約2[MHz]以下)の群遅延時間の変動は約40[ns]程度であり、周波数通過帯域における群遅延特性は比較的平坦となっている。
【0099】
このように、パラメータを変化させた複数のチャージドメインIIR−LPFを縦続接続することで、複数の周波数にノッチを生じさせる周波数特性を有し、また群遅延特性も比較的良好なLPFを実現することができる。
【0100】
<3.本発明の一実施形態にかかるLPFを備えた通信装置>
次に、本発明の一実施形態にかかるLPFを備えた通信装置の構成について説明する説明図である。図21は、本発明の一実施形態にかかるLPFを備えた通信装置300の構成に付いて示す説明図である。
【0101】
図21に示したように、本発明の一実施形態にかかるLPFを備えた通信装置300は、データ生成部310と、信号処理回路320と、周波数変換器340と、ローカル信号発生器330と、電力増幅器350と、帯域制限用フィルタ360と、アンテナ370と、を含んで構成される。
【0102】
通信装置300から送信すべきデータはデータ生成部310で生成され、信号処理回路320に入力される。信号処理回路320では、D/A変換、符号化及び変調などの処理が施されることにより、ベースバンドまたはIF(Intermediate Frequency;中間周波数)帯の送信信号が生成される。信号処理回路320からの送信信号は周波数変換器(ミキサ)330に入力され、ローカル信号発生器340からのローカル信号と乗算される。送信信号がローカル信号と乗算されることによって、送信信号はRF(Radio Frequency;高周波)帯の信号に周波数変換、すなわちアップコンバートされる。
【0103】
周波数変換器330でアップコンバートされて得られるRF信号は、電力増幅器350によって増幅された後、帯域制限用フィルタ360に入力される。そしてRF信号は、帯域制限用フィルタ360で帯域制限を受けて不要な周波数成分が除去された後、アンテナ370に供給される。ここで、帯域制限用フィルタ360に、これまでに説明した種々のチャージドメイン2次IIR−LPF回路を用いることができる。
【0104】
<4.まとめ>
以上説明したように本発明の一実施形態によれば、フライングキャパシタを挟んでキャパシタCxを設け、さらにフライングキャパシタにおける2つのキャパシタCr1、Cr2の移動に遅延を設けた。このようにLPFを構成することで、周波数特性にノッチが生じるLPFを実現することが出来る。この際に、遅延時間やキャパシタCxの容量に関するパラメータを設定することで、決まった周波数にノッチを生じさせることができ、急峻な減衰特性を有するLPFを得ることができる。また、キャパシタCr1、Cr2が入力側から出力側に移動するときの遅延時間を変化させることで、ノッチの有無を切り替えることが可能となる。また、キャパシタCr1、Cr2が入力側から出力側に移動するときの遅延時間と出力側から入力側に移動するときの遅延時間との和を一定にした状態で、入力側から出力側に移動するときの遅延時間を変化させる。このように入力側から出力側に移動するときの遅延時間を変化させることで、通過帯域内の周波数特性を等しく保ちながら、ノッチの有無を切り替えることができる。さらに、キャパシタCr1、Cr2が出力側から入力側に移動するときの遅延時間を一定に保ちながら、入力側から出力側に移動するときの遅延時間を変化させることで、カットオフ周波数を等しく保ちながらノッチの有無を切り替えることができる。
【0105】
さらに、フライングキャパシタを差動構成にすることで、フィルタの周波数特性に複素ノッチを生成することが出来る。また、複数のフライングキャパシタを縦列接続することで、フィルタの周波数特性に複数のノッチを生成して急峻な減衰特性を得ることができる。
【0106】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、フィルタ回路および通信装置に適用可能であり、特にフライングキャパシタを用いたフィルタ回路およびフライングキャパシタを用いたフィルタ回路を備えた通信装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の一実施形態にかかるチャージドメインIIR−LPF100の構成について示す説明図である。
【図2】図1に示したLPF100をzドメイン等価回路に変換したものを示す説明図である。
【図3】LPF100の周波数特性の一例を示す説明図である。
【図4】正規化周波数とMの実部および虚部との関係をグラフで示す説明図である。
【図5】正規化周波数とMの実部および虚部との関係をグラフで示す説明図である。
【図6】正規化周波数とMの実部および虚部との関係をグラフで示す説明図である。
【図7】差動構成にしたチャージドメインIIR−LPFの構成例について示す説明図である。
【図8】差動構成にして複素電圧を扱えるようにしたチャージドメインIIR−LPFの構成例について示す説明図である。
【図9】図3に示した周波数特性をカットオフ周波数付近で拡大したものを示す説明図である。
【図10】LPF100の周波数特性の一例を示す説明図である。
【図11】図10に示した周波数特性をカットオフ周波数付近で拡大したものを示す説明図である。
【図12】本発明の一実施形態にかかるLPF100の回路構成例について示す説明図である。
【図13】図12に示したLPF100に入力されるクロックの波形を示す説明図である。
【図14】本発明の一実施形態の変形例にかかるLPF200の構成について示す説明図である。
【図15】フライングキャパシタの回路構成例を示す説明図である。
【図16】フライングキャパシタの回路構成例を示す説明図である。
【図17】フライングキャパシタの回路構成例を示す説明図である。
【図18】LPF200に入力されるクロックの波形を示す説明図である。
【図19】図14に示したLPF200の周波数特性を示す説明図である。
【図20】図14に示したLPF200の群遅延特性を示す説明図である。
【図21】本発明の一実施形態にかかるLPFを備えた通信装置の構成を示す説明図である。
【図22】従来のチャージドメイン2次IIR−LPF10の構成について示す説明図である。
【図23】キャパシタの移動の規則性について示す説明図である。
【図24】図22に示したLPF10をzドメイン等価回路に変換したものを示す説明図である。
【図25】図24の等価回路の周波数特性をグラフで示す説明図である。
【図26】図22に示したLPF10の実際の回路構成を示す説明図である。
【図27】図26に示したLPF10に入力されるクロックの波形を示す説明図である。
【符号の説明】
【0109】
10、100、200 LPF
210、220、230 フライングキャパシタ
300 通信装置
310 データ生成部
320 信号処理回路
330 周波数変換器
340 ローカル信号発生器
350 電力増幅器
360 帯域制限用フィルタ
370 アンテナ
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ回路および通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)プロセスの微細化に伴い、RF(Radio Frequency)回路の電源電圧は低下する傾向にある。かかるCMOSプロセスの微細化により従来の回路手法でRF回路を実装しようとすると、電圧余裕が不足して信号振幅のダイナミックレンジが狭くなる問題がある。一方、CMOSプロセスの微細化によりトランジスタの遮断周波数は上昇するので、高速なスイッチング動作を時間に正確に行う動作に適しているという利点がある。また、リソグラフィーが高精度化するため、キャパシタの容量比が正確になる利点もある。
【0003】
CMOSプロセスの微細化で生じる問題点を回避して利点を享受するために、RF回路に離散時間信号処理の概念を取り入れた新しい技術が、デジタルRF技術である。そして、デジタルRF技術分野の主要な回路として、チャージドメインフィルタ(Charge Domain Filter)がある。チャージドメインフィルタは、トランスコンダクタンスアンプとスイッチとキャパシタから構成されるフィルタ回路である。チャージドメインフィルタは、クロックに同期して電荷の蓄積と放出を行うことでアナログ信号のサンプリングを行い、離散時間信号処理によるフィルタリングやデシメーションなどを行う回路である。
【0004】
チャージドメインフィルタの従来例として、非特許文献1で示されるような、チャージドメイン2次IIR−LPF(Infinite Impulse Response Low Pass Filter)がある。非特許文献1で示された、チャージドメイン2次IIR LPFは、簡単なチャージドメイン回路で実現できるという利点がある。
【0005】
【非特許文献1】S. Manetti and A. Liberatore,“Switched-capacitor lowpass filter without active components,”Electron. Lett.,1980, 16, pp. 883-885
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、非特許文献1で示される従来のチャージドメイン2次IIR−LPFは、カットオフ周波数の付近では減衰特性が緩やかであり、急峻な特性を備えるフィルタを構成することができないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、フライングキャパシタを備えるフィルタ回路において、急峻な減衰特性を備えることが可能な、新規かつ改良されたフィルタ回路およびフィルタ回路を備えた通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、入力端から出力端へ切り替わる場合には極性を維持し、出力端から入力端へ切り替わる場合には極性が反転するフライングキャパシタと、フライングキャパシタの入力端と出力端との間に、フライングキャパシタと並列に設けられるキャパシタと、を備えるフィルタ回路が提供される。
【0009】
かかる構成によれば、フライングキャパシタは入力端から出力端へ切り替わる場合には極性を維持し、出力端から入力端へ切り替わる場合には極性が反転し、キャパシタはフライングキャパシタの入力端と出力端との間に、フライングキャパシタと並列に設けられる。その結果、フライングキャパシタと並列に設けられるキャパシタにより、急峻な減衰特性を備えるフィルタ回路を提供することができる。
【0010】
フライングキャパシタは、出力端から入力端へ切り替わってからフライングキャパシタに入力されるクロック周期のJ(Jは1以上の自然数)クロック分遅延して入力端から出力端へ切り替わり、入力端から出力端へ切り替わってからクロック周期のK(Kは1以上の自然数)クロック分遅延して出力端から入力端へ切り替わるようにしてもよい。
【0011】
Jの値は可変であってもよい。また、Jの値は可変であり、JとKとの和は一定であってもよい。また、Jの値は可変であり、Kの値は一定であってもよい。
【0012】
フライングキャパシタおよびキャパシタの組を縦続接続してもよい。
【0013】
キャパシタの容量は、フライングキャパシタを構成するキャパシタの容量のM倍であってもよい。なお、Mは、M=exp(−j*2πf*Ts*J)/(exp(−j*2πf*Ts)−1)が実数となる場合の値である。また、Tsはクロック周期、fはノッチが生じる周波数である。また、Mの値が負の場合は、フライングキャパシタを差動構成にし、キャパシタをフライングキャパシタの正相側と逆相側との間に設けるようにしてもよい。
【0014】
キャパシタの容量は、フライングキャパシタを構成するキャパシタの容量のM倍であってもよい。なお、Mは、M=exp(−j*2πf*Ts*J)/(exp(−j*2πf*Ts)−1)が虚数となる場合の値である。また、Tsはクロック周期、fはノッチが生じる周波数である。また、差動構成にしたフライングキャパシタを2つ備え、一方のフライングキャパシタには複素電圧で表される電圧が供給されるようにしてもよい。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記フィルタ回路を備える、通信装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、急峻な減衰特性を備えることが可能な、新規かつ改良されたフィルタ回路および通信装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
また、以下の順序に従って本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
<1.従来のチャージドメイン2次IIR−LPF>
[1−1.従来のチャージドメイン2次IIR−LPFの構成]
[1−2.従来のチャージドメイン2次IIR−LPFの問題点]
<2.本発明の一実施形態にかかるLPF>
[2−1.本発明の一実施形態にかかるLPFの構成]
[2−2.本発明の一実施形態にかかるLPFの伝達関数]
[2−3.本発明の一実施形態にかかるLPFの周波数特性]
[2−4.本発明の一実施形態にかかるLPFの回路構成例]
[2−5.本発明の一実施形態にかかるLPFの変形例]
<3.本発明の一実施形態にかかるLPFを備えた通信装置>
<4.まとめ>
【0019】
<1.従来のチャージドメイン2次IIR−LPF>
まず、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する前に、従来のチャージドメイン2次IIR−LPFの説明およびその問題点について説明する。
【0020】
[1−1.従来のチャージドメイン2次IIR−LPFの構成]
図22は、非特許文献1で開示された、従来のチャージドメイン2次IIR−LPF10の構成について示す説明図である。以下、図22を用いて従来のチャージドメイン2次IIR−LPF10の構成について説明する。
【0021】
図22に示したように、従来のチャージドメイン2次IIR−LPF10は、電源11と、トランスコンダクタンスアンプgmと、キャパシタCh1、Ch2、Cr1、Cr2と、を含んで構成される。
【0022】
電源11は交流電源であり、入力電圧信号Vinを出力する。トランスコンダクタンスアンプgmは、電圧信号を電流信号に変換して出力するトランスコンダクタンスアンプであり、図22のA点に、電源11からの入力電圧信号Vinに比例した振幅の電流を出力し、キャパシタCh1を充電する。
【0023】
キャパシタCr1、Cr2は、LPF10に入力されるクロックに同期して、A点側とB点側とを交互に移動するように構成されている。キャパシタCr1、Cr2がA点側とB点側とを交互に移動することで、キャパシタCh1とキャパシタCh2との間で電荷の授受を行うことができる。その結果、キャパシタCh2が充電され、図22のB点に電圧が生じて、出力電圧信号Voutを出力することができる。
【0024】
ここで、キャパシタCr1、Cr2の移動の規則性について図23を用いて説明する。キャパシタCr1、Cr2は、図22のA点側からB点側に移動する場合には同じ極性で平行移動する。一方図22のB点側からA点側に移動する場合には、キャパシタCr1、Cr2は極性を反転させて移動する。図23はキャパシタCr1、Cr2の移動の様子を示したものであり、キャパシタCr1、Cr2には、それぞれ極性を示す正負の符号を付している。図23の(1)を説明の便宜上、第1の状態と称する。第1の状態では、キャパシタCr1は図22のA側、キャパシタCr2は図22のB側に、それぞれ正極性で位置していることを表している。
【0025】
続く図23の(2)を説明の便宜上、第2の状態と称する。第2の状態では、キャパシタCr1は図22のB側が正極性となるように移動しているが、キャパシタCr2は図22のA側が負極性となるように、すなわち極性が反転するように移動している。
【0026】
続く図23の(3)を説明の便宜上、第3の状態と称する。第3の状態では、第2の状態で極性が反転したキャパシタCr2は図22のB側が負極性となるように移動しているが、キャパシタCr1は図22のA側が負極性となるように、すなわち極性が反転するように移動している。
【0027】
続く図23の(4)を説明の便宜上、第4の状態と称する。第4の状態では、第3の状態で極性が反転したキャパシタCr1は図22のB側が負極性となるように移動しているが、キャパシタCr2は図22のA側が正極性となるように、すなわち極性が反転するように移動している。
【0028】
そして、第4の状態の次の状態では、キャパシタCr2は図22のB側が正極性となるように、キャパシタCr1は図22のA側が正極性となるように、すなわち極性が反転するように移動している。これは第1の状態と同じ状態である。このように、第1の状態から第4の状態をクロックに同期しながら繰り返すことでキャパシタCh1とキャパシタCh2との間で電荷の授受を行うことができる。
【0029】
図22に示したLPF10の伝達関数を求めるにあたり、LPF10をzドメイン等価回路に変換する。図24は、図22に示したLPF10をzドメイン等価回路に変換したものを示す説明図である。図24に示した図では、Tsはサンプリングクロックの周期、キャパシタCr1、Cr2の容量をいずれもCr、キャパシタCh1,Ch2の容量をいずれもCr(N−1)としている。また、図24に示した図で電流源として図示したものは、1サンプルあたり、矢印の方向に電荷が流れることを示しており、図24に示した図において、長方形で図示したものはコンダクタンスを示している。
【0030】
図24のA点の電圧V1及びB点の電圧V2を、キルヒホッフ第1の法則により求めると、下記の数式1、数式2の通りとなる。
【0031】
【数1】
・・・(数式1)
・・・(数式2)
【0032】
上記数式1、数式2から、V2/VINを求めると下記の数式3の通りとなる。
【0033】
【数2】
・・・(数式3)
【0034】
上記数式3において、N=10、Ts=1.0[ns]、Gm=1[mS]、Ch=4.5[pF]、Cr=0.5[pF]とし、さらにクロックによるチャージサンプリングが矩形の時間窓で行われることを考慮して、図24の等価回路の周波数特性を求める。図25は、上記数式3に上記の値を代入して得られる、図24の等価回路の周波数特性をグラフで示す説明図である。図25に示したように、図24の等価回路はおよそ18MHz付近から緩やかに減衰するLPFの特性を有していることが分かる。
【0035】
図26は、図22に示したLPF10の実際の回路構成を示す説明図である。また、図27は、図26に示したLPF10に入力されるクロックの波形を示す説明図である。図26に示した回路構成は、図22に示した構成からキャパシタ部分のみを抜き出して図示したものである。図27に示した各クロックは、図26に示した各スイッチに対応するものであり、図26の各スイッチは図27に示したクロックがHiレベルのときにオンになり、Lowレベルのときにオフになる。
【0036】
図26に示したLPF10の動作について説明する。クロックS1、クロックS1,2およびクロックS1,4がHiレベルの状態になると、図5のスイッチS1、スイッチS1,2およびスイッチS1,4がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCh1に蓄積された電荷がキャパシタCr1に移動し、キャパシタCr2に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。
【0037】
続いて、クロックS2、クロックS1,2およびクロックS2,3がHiレベルの状態になると、図26のスイッチS2、スイッチS1,2およびスイッチS2,3がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCr1に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。また、キャパシタCr2はGNDに接続される極が反転する。そして、キャパシタCh1に蓄積された電荷が、極が反転したキャパシタCr2に移動する。
【0038】
続いて、クロックS3、クロックS2,3およびクロックS3,4がHiレベルの状態になると、図26のスイッチS3、スイッチS2,3およびスイッチS3,4がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCr2に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。また、キャパシタCr1は、GNDに接続される極が反転し、キャパシタCh1に蓄積された電荷がキャパシタCr1に移動する。
【0039】
続いて、クロックS4、クロックS3,4およびクロックS1,4がHiレベルの状態になると、図26のスイッチS4、スイッチS3,4およびスイッチS1,4がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCr1に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。また、キャパシタCr2は、GNDに接続される極が反転し、キャパシタCh1に蓄積された電荷がキャパシタCr2に移動する。
【0040】
このようにクロックのHi・Lowレベルの切り替えに応じてスイッチのオン・オフを繰り返すことで、キャパシタCh1に蓄積された電荷がキャパシタCr1、Cr2を介してキャパシタCh2に移動する。結果として、LPF10は図25に示したような周波数通過特性を有するLPFとして動作する。図26に示したように、キャパシタCr1、Cr2の両端の極性を切り替えて移動する動作のことを、一般にフライングキャパシタ(Flying Capacitor)方式と呼ぶ。
【0041】
[1−2.従来のチャージドメイン2次IIR−LPFの問題点]
このように、非特許文献1で開示された、従来のチャージドメイン2次IIR−LPF10は、簡単なチャージドメイン回路で2次IIR−LPFが実現できるという利点がある。しかしながら、図25に示したように、カットオフ周波数(−3dBに相当する周波数)付近では減衰特性が緩やかで、急峻なフィルタが構成できないという問題点がある。
【0042】
そこで本発明では、周波数特性にノッチを付加することで急峻な減衰特性を有するチャージドメインLPF回路を実現することを目的とする。以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0043】
<2.本発明の一実施形態にかかるLPF>
[2−1.本発明の一実施形態にかかるLPFの構成]
図1は、本発明の一実施形態にかかるチャージドメインIIR−LPF100の構成について示す説明図である。以下、図1を用いて本発明の一実施形態にかかるチャージドメインIIR−LPF100(以下、単に「LPF100」とも称する)の構成について説明する。
【0044】
図1に示したように、本発明の一実施形態にかかるLPF100は、電源101と、トランスコンダクタンスアンプgmと、キャパシタCh1、Ch2、Cr1、Cr2、Cxと、を含んで構成される。
【0045】
電源101は交流電源であり、入力電圧信号Vinを出力する。トランスコンダクタンスアンプgmは、電圧信号を電流信号に変換して出力するトランスコンダクタンスアンプであり、図1のA点に、電源101からの入力電圧信号Vinに比例した振幅の電流を出力し、キャパシタCh1およびキャパシタCxを充電する。
【0046】
キャパシタCr1、Cr2は、LPF100に入力されるクロックに同期して、A点側とB点側とを交互に移動するように構成されている。キャパシタCr1、Cr2がA点側とB点側とを交互に移動することで、キャパシタCh1とキャパシタCh2との間で電荷の授受を行うことができる。その結果、キャパシタCh2が充電され、図1のB点に電圧が生じて、出力電圧信号Voutを出力することができる。
【0047】
図1に示したLPF100が図22に示した従来のLPF10と異なるのは、A点とB点との間にキャパシタCxを設けている点である。また、従来のLPF10と異なり、キャパシタCr1、Cr2がA点側からB点側に移動するときの遅延時間をJクロック、B点側からA点側に移動するときの遅延時間をKクロックとしている。なお、J、Kはともに1以上の自然数である。
【0048】
[2−2.本発明の一実施形態にかかるLPFの伝達関数]
以上、本発明の一実施形態にかかるチャージドメインIIR−LPF100の構成について説明した。ここで、図1に示したLPF100の伝達関数を求めるにあたり、LPF100をzドメイン等価回路に変換する。図2は、図1に示したLPF100をzドメイン等価回路に変換したものを示す説明図である。図2に示した図では、Tsはサンプリングクロックの周期、キャパシタCr1、Cr2の容量をいずれもCr、キャパシタCxの容量をCrのM倍のM・Cr、キャパシタCh1、Ch2の容量をいずれもCr(N−1)としている。また、図2に示した図で電流源として図示したものは、1サンプルあたり、矢印の方向に電荷が流れることを示しており、図2に示した図において、長方形で図示したものはコンダクタンスを示している。
【0049】
図2のA点の電圧V1及びB点の電圧V2を、キルヒホッフ第1の法則により求めると、下記の数式4、数式5の通りとなる。
【0050】
【数3】
・・・(数式4)
・・・(数式5)
【0051】
なお、上記数式4、数式5において、P(z)およびQ(z)はそれぞれ下記の数式6、数式7で示したものである。
【0052】
【数4】
・・・(数式6)
・・・(数式7)
【0053】
上記数式4〜数式7を用いて、V2/Vinを求めると、以下の数式8となる。
【0054】
【数5】
・・・(数式8)
【0055】
ただし、上記数式8において、W1(z)は下記の数式9で示したものである。
【0056】
【数6】
・・・(数式9)
【0057】
[2−3.本発明の一実施形態にかかるLPFの周波数特性]
このように、図1に示したLPF100の伝達関数が求まった。ここで、図2に示したLPF100の等価回路において、N=10、M=1.618、Ts=1.0[ns]、Gm=1[mS]、Cr=0.5[pF]と設定する。そして、J+K=4の範囲でさらにJとKの組合せをパラメータとして、上記数式8からLPF100の周波数特性を求めると、図3に示したような周波数特性となる。図3では、J=1,K=3の場合、J=2,K=2の場合、J=3,K=1の場合の3通りについてそれぞれ周波数特性を示している。
【0058】
図25に示した従来のLPF10の周波数特性と、図3に示した本発明の一実施形態にかかるLPF100の周波数特性とを比較すると、J=1,K=3の場合に、図25に示した従来のLPF10の周波数特性と同じ周波数特性になっていることが分かる。一方、J=3,K=1の場合は100[MHz]において−50[dB]の深いノッチが生じており、急峻な減衰特性になっていることが分かる。また、J=2,K=2の場合は150[MHz]付近におよそ−37[dB]の緩やかなノッチが生じていることが分かる。このようにパラメータを設定することで、決まった周波数にノッチを生じさせることができ、急峻な減衰特性を有するLPFを得ることができる。
【0059】
ここで、図3に示したように、本発明の一実施形態にかかるLPF100の周波数特性にノッチが生じる条件について説明する。ノッチが生じるということは、その周波数においては図2のA点の電圧V1とは無関係に、B点の電圧V2がゼロになるということである。従って上記数式5の分子にV2=0を代入して整理すると、以下の数式10を導くことが出来る。
【0060】
【数7】
・・・(数式10)
【0061】
この数式10のzにz=exp(j・2π・f・Ts)を代入してMについて解くと、下記の数式11が導かれる。
【0062】
【数8】
・・・(数式11)
【0063】
この数式11で求めたMの実部および虚部を、J=1,2,3の場合について、それぞれサンプリング周波数Tsで正規化した周波数を横軸にしてグラフ化することで、ノッチが生じる正規化周波数とMの値とを、Jをパラメータとして導くことができる。図4は、J=1の場合における正規化周波数とMの実部および虚部との関係をグラフで示す説明図であり、図5は、J=2の場合における正規化周波数とMの実部および虚部との関係をグラフ示す説明図である。そして、図6はJ=3の場合における正規化周波数とMの実部および虚部との関係をグラフ示す説明図である。
【0064】
数式11におけるMの実部は偶関数であり、虚部は奇関数である。従って、Mが実数になる場合は正と負の周波数でMの値が等しくなる。この条件から、ノッチの正規化周波数とMの値とを、Jをパラメータとして求めることができる。
【0065】
図4に示したJ=1の場合は、Mが実数となるのは虚部が0の場合、すなわち正規化周波数が1/2の場合で、図4のグラフから、正規化周波数が1/2の場合のMの値は0.5となる。なお、図4に示したように、J=1の場合はMの値は0.5で一定となる。
【0066】
図5で示したJ=2の場合は、Mが実数となるのは虚部が0の場合、すなわち正規化周波数が1/6、または3/6(=1/2)の場合である。図5のグラフから、正規化周波数が1/6の場合のMの値は1.0となり、正規化周波数が1/2の場合はMの値は−0.5となる。
【0067】
図6で示したJ=3の場合は、Mが実数となるのは虚部が0の場合、すなわち正規化周波数が1/10、3/10または5/10(=1/2)の場合である。図6のグラフから、正規化周波数が1/10の場合のMの値は1.618となり、正規化周波数が3/10の場合はMの値は−0.618となり、正規化周波数が1/2の場合はMの値が0.5となる。
【0068】
ここで、J=2,3の場合には、Mの値が負となることがある。これは、図1に示したキャパシタCxの容量が負になるということではない。例えば図7に示したように、IIR−LPFを差動構成にして、差動回路の正相側のA点と逆相側のBX点、および逆相側のAX点と正相側のB点を接続して、キャパシタCxを正相側と逆相側との間に交差接続することを意味する。
【0069】
続いてMの値が実部を含まずに純虚数となる場合を考える。図4に示したJ=1の場合は、Mの値は0.5で一定となるので、Mの値は実部を含まない純虚数にはならない。
【0070】
図5で示したJ=2の場合は、Mが実部を含まない純虚数となるのは実部が0の場合、すなわち正規化周波数が1/3、または−1/3の場合である。図5のグラフから、正規化周波数が−1/3の場合には、Mの値は−j*0.577となり、正規化周波数が1/3の場合には、Mの値はj*0.577となる。
【0071】
図6で示したJ=3の場合は、Mが実部を含まない純虚数となるのは実部が0の場合、すなわち正規化周波数が1/5、−1/5、2/5、−2/5の場合である。図6のグラフから、正規化周波数が−1/5の場合には、Mの値は−j*0.851となり、正規化周波数が1/5の場合には、Mの値はj*0.851となる。また正規化周波数が−2/5の場合には、Mの値は−j*0.526となり、正規化周波数が2/5の場合には、Mの値はj*0.526となる。
【0072】
ここで、J=2,3の場合には、Mの値が純虚数になることがある。これが、図1に示したキャパシタCxの容量が純虚数になるということではない。例えば図8に示したように、2組の差動回路を用いて複素電圧を扱えるようにすることを意味する。図8に示した差動回路では、虚数側のjA点と実数側のB点、および虚数側のjAX点と実数側のBX点、および実数側のA点と虚数側のjB点、および実数側のAX点と虚数側のjBX点を、それぞれCxで接続することを意味する。
【0073】
図3に示した本発明の一実施形態にかかるLPF100の周波数特性を、カットオフ周波数付近で拡大したものを図9に示す。図9に示したように、通過帯域内では10[MHz]程度まで3つの周波数特性が重なっている。従って、Jの値の変化によらずに周波数特性がほぼ等しいことがわかる。
【0074】
次に、N=10、M=1.618、Ts=1.0[ns]、Gm=1[mS]、Cr=0.5[pF]に設定し、さらにK=1で一定にしてJだけをパラメータとして上記数式8からLPF100の周波数特性を求めると、図10に示したような周波数特性となる。
【0075】
図3に示した周波数特性と図10に示した周波数特性とを比較すると、全般的にはほぼ同じ周波数特性と示しているように見える。ここで、図10に示した本発明の一実施形態にかかるLPF100の周波数特性を、カットオフ周波数付近で拡大したものを図11に示す。図11に示したグラフによれば、通過帯域内の10[MHz]では3本のグラフが異なっており、またカットオフ周波数の23[MHz]付近で3本のグラフが交わっていることが分かる。このように、Kの値、すなわちLPF100のB点側からA点側にキャパシタCr1,Cr2が移動する場合の遅延クロック数を固定にする。そして、LPF100のA点側からB点側にキャパシタCr1,Cr2が移動する場合の遅延クロック数Jを変化させることによって、LPF100の周波数特性を変化させることが出来る。
【0076】
[2−4.本発明の一実施形態にかかるLPFの回路構成例]
図12は、本発明の一実施形態にかかるLPF100において、J=3、K=1の回路構成例について示す説明図である。図13は、図12に示したLPF100に入力されるクロックの波形を示す説明図である。図12に示した回路構成は、図1に示した構成からキャパシタ部分のみを抜き出して図示したものである。図13の各クロックは、図12に示した各スイッチに対応するものであり、図12の各スイッチは図13に示すクロックがHiレベルのときにオンになり、Lowレベルのときにオフになる。
【0077】
図12に示したLPF100の動作について説明する。クロックS1、クロックS1,4およびクロックS6,1がHiレベルの状態になると、図12のスイッチS1、スイッチS1,4およびスイッチS6,1がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCh1に蓄積された電荷が、キャパシタCxおよびキャパシタCr1に移動し、キャパシタCr2に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。
【0078】
続いて、クロックS2、クロックS2,5およびクロックS7,2がHiレベルの状態になると、図12のスイッチS2、スイッチS2,5およびスイッチS7,2がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCr3に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。またキャパシタCr2はGNDに接続される極が反転する。そして、キャパシタCh1に蓄積された電荷が、キャパシタCxおよび極が反転したキャパシタCr2に移動する。すなわち、キャパシタCr2の電荷がキャパシタCh2に移動してから1クロック後に、キャパシタCr2の極が反転し、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr2に移動することになる。
【0079】
続いて、クロックS3、クロックS3,6およびクロックS8,3がHiレベルの状態になると、図12のスイッチS3、スイッチS3,6およびスイッチS8,3がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCr4に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。またキャパシタCr3はGNDに接続される極が反転する。そして、キャパシタCh1に蓄積された電荷が、キャパシタCxおよび極が反転したキャパシタCr3に移動する。すなわち、キャパシタCr3の電荷がキャパシタCh2に移動してから1クロック後に、キャパシタCr3の極が反転し、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr3に移動することになる。
【0080】
続いて、クロックS4、クロックS4,7およびクロックS1,4がHiレベルの状態になると、図12のスイッチS4、スイッチS4,7およびスイッチS1,4がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCr1に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。すなわち、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr1に蓄積されてから3クロック後に、キャパシタCr1の電荷がキャパシタCh2に移動することになる。またキャパシタCr4はGNDに接続される極が反転する。そして、キャパシタCh1に蓄積された電荷が、キャパシタCxおよび極が反転したキャパシタCr4に移動する。すなわち、キャパシタCr4の電荷がキャパシタCh2に移動してから1クロック後に、キャパシタCr4の極が反転し、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr4に移動することになる。
【0081】
続いて、クロックS5、クロックS2,5およびクロックS5,8がHiレベルの状態になると、図12のスイッチS5、スイッチS2,5およびスイッチS5,8がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCr2に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。すなわち、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr2に蓄積されてから3クロック後に、キャパシタCr2の電荷がキャパシタCh2に移動することになる。またキャパシタCr1はGNDに接続される極が反転する。そして、キャパシタCh1に蓄積された電荷が、キャパシタCxおよび極が反転したキャパシタCr1に移動する。すなわち、キャパシタCr1の電荷がキャパシタCh2に移動してから1クロック後に、キャパシタCr1の極が反転し、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr1に移動することになる。
【0082】
続いて、クロックS6、クロックS3,6およびクロックS6,1がHiレベルの状態になると、図12のスイッチS6、スイッチS3,6およびスイッチS6,1がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCr3に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。すなわち、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr3に蓄積されてから3クロック後に、キャパシタCr3の電荷がキャパシタCh2に移動することになる。またキャパシタCr2はGNDに接続される極が反転する。そして、キャパシタCh1に蓄積された電荷が、キャパシタCxおよび極が反転したキャパシタCr2に移動する。すなわち、キャパシタCr2の電荷がキャパシタCh2に移動してから1クロック後に、キャパシタCr2の極が反転し、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr2に移動することになる。
【0083】
続いて、クロックS7、クロックS4,7およびクロックS7,2がHiレベルの状態になると、図12のスイッチS7、スイッチS4,7およびスイッチS7,2がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCr4に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。すなわち、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr4に蓄積されてから3クロック後に、キャパシタCr4の電荷がキャパシタCh2に移動することになる。またキャパシタCr3はGNDに接続される極が反転する。そして、キャパシタCh1に蓄積された電荷が、キャパシタCxおよび極が反転したキャパシタCr3に移動する。すなわち、キャパシタCr3の電荷がキャパシタCh2に移動してから1クロック後に、キャパシタCr3の極が反転し、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr3に移動することになる。
【0084】
続いて、クロックS7、クロックS4,7およびクロックS7,2がHiレベルの状態になると、図12のスイッチS7、スイッチS4,7およびスイッチS7,2がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCr4に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。すなわち、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr4に蓄積されてから3クロック後に、キャパシタCr4の電荷がキャパシタCh2に移動することになる。またキャパシタCr3はGNDに接続される極が反転する。そして、キャパシタCh1に蓄積された電荷が、キャパシタCxおよび極が反転したキャパシタCr3に移動する。すなわち、キャパシタCr3の電荷がキャパシタCh2に移動してから1クロック後に、キャパシタCr3の極が反転し、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr3に移動することになる。
【0085】
続いて、クロックS8、クロックS5,8およびクロックS8,3がHiレベルの状態になると、図12のスイッチS8、スイッチS5,8およびスイッチS8,3がオンになる。これらのスイッチがオンになると、キャパシタCr1に蓄積された電荷がキャパシタCh2に移動する。すなわち、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr1に蓄積されてから3クロック後に、キャパシタCr1の電荷がキャパシタCh2に移動することになる。またキャパシタCr4はGNDに接続される極が反転する。そして、キャパシタCh1に蓄積された電荷が、キャパシタCxおよび極が反転したキャパシタCr4に移動する。すなわち、キャパシタCr4の電荷がキャパシタCh2に移動してから1クロック後に、キャパシタCr4の極が反転し、キャパシタCh1の電荷がキャパシタCr4に移動することになる。
【0086】
このようにクロックのHi・Low状態の変化に伴って各スイッチのオン・オフを切り替えることで、図1に示したLPF100を実現することができる。適切にキャパシタの容量とスイッチの切り替えタイミングを調整し、各スイッチのオン・オフを切り替えてキャパシタ間で電荷を授受することで、図3に示したような周波数特性を備えるLPFを実現することができる。また、キャパシタCr1、Cr2のA点側からB点側、またはB点側からA点側への移動のタイミング(遅延時間)を制御することで、周波数特性におけるノッチの深さを切り替えたり、またノッチを生じさせなくしたりすることができる。
【0087】
[2−5.本発明の一実施形態にかかるLPFの変形例]
次に、チャージドメインIIR−LPFを3段に縦続接続して、周波数特性にノッチが3箇所現れる急峻なLPFを構成した場合について説明する。図14は、本発明の一実施形態の変形例にかかるLPF200の構成について示す説明図である。
【0088】
図14に示したLPF200は、図1に示したLPF100におけるフライングキャパシタ部分を差動構成にしたものを3つ縦続接続した構成を有している。フライングキャパシタ210は、J=1、K=3に設定したフライングキャパシタであり、フライングキャパシタ220は、J=3、K=1に設定したフライングキャパシタである。そして、フライングキャパシタ230は、J=2、K=2に設定したフライングキャパシタである。また、フライングキャパシタ210の両端にはキャパシタCx1を、フライングキャパシタ220の両端にはキャパシタCx2を、フライングキャパシタ230の両端にはキャパシタCx3を、それぞれ設けている。
【0089】
フライングキャパシタ210、220、230には、それぞれ容量Crを有するキャパシタCrが備えられている。また、キャパシタCx1の容量は、CrのM1倍とし、キャパシタCx2の容量は、CrのM2倍とし、キャパシタCx3の容量は、CrのM3倍とする。
【0090】
また、キャパシタCx2は、差動構成にしたフライングキャパシタ220の、逆相側のV2X点と正相側のV3点との間、および正相側のV2点と逆相側のV3X点との間を接続するように設けられている。
【0091】
フライングキャパシタ210、220、230の回路構成例を、それぞれ図15、図16、図17に、LPF200に入力されるクロックの波形を図18に、それぞれ示す。図18の各クロックは、図15、図16、図17に示したフライングキャパシタ210、220、230の各スイッチに対応するものである。図15、図16、図17の各スイッチは、図18に示すクロックがHiレベルのときにオンになり、Lowレベルのときにオフになる。
【0092】
フライングキャパシタ210の動作について説明する。クロックS1がHiレベルの状態になるとスイッチS1がオンになり、スイッチS1によってV1点およびV1A点と接続されるキャパシタCrに、入力側のキャパシタChから電荷が送られる。スイッチS1によってV2点およびV2A点と接続されるキャパシタCrに蓄積されている電荷は、出力側のキャパシタChへ送られる。クロックS1がLowレベルになり、クロックS2がHiレベルの状態になると、スイッチS2がオンになり、クロックS1がHiレベルの期間で電荷が蓄積されたキャパシタCrから出力側のキャパシタChへ電荷が送られる。従って、入力側のキャパシタChの電荷がキャパシタCrに蓄積されてから1クロック後に、キャパシタCrの電荷が出力側のキャパシタChに移動することになる。
【0093】
そして、クロックS2がHiレベルの状態となってから3クロック周期後にクロックS5がHiレベルの状態となると、スイッチS1によってV1点と接続されたキャパシタCrは、逆相側のV1X点に接続される。同様に、スイッチS1によってV1X点と接続されたキャパシタCrは、逆相側のV1点に接続される。従って、出力側のキャパシタChへ電荷が移動してから3クロック後に、キャパシタCrは極性が反転した状態で入力側のキャパシタChに接続されることになる。
【0094】
その他のキャパシタCrについても、クロックのHi・Low状態の切り替わりによるスイッチのスイッチング動作によって、電荷の授受や極性の反転が行われる。
【0095】
なお、ここではフライングキャパシタ210を例に挙げて説明したが、フライングキャパシタ220、230についても同様にスイッチング動作が行われ、キャパシタCrの極性が切り替わりながら、入力側と出力側との間での電荷の移動が行われる。フライングキャパシタ220では、入力側のキャパシタChの電荷がキャパシタCrに蓄積されてから3クロック後に、キャパシタCrの電荷が出力側のキャパシタChに移動する。そして、出力側のキャパシタChへ電荷が移動してから1クロック後に、キャパシタCrは極性が反転した状態で入力側のキャパシタChに接続されることになる。同様に、フライングキャパシタ230では、入力側のキャパシタChの電荷がキャパシタCrに蓄積されてから2クロック後に、キャパシタCrの電荷が出力側のキャパシタChに移動する。そして、出力側のキャパシタChへ電荷が移動してから2クロック後に、キャパシタCrは極性が反転した状態で入力側のキャパシタChに接続されることになる。
【0096】
フライングキャパシタ210の各パラメータは、J=1、K=3、M1=0.5とする。このようにフライングキャパシタ210のパラメータを設定することで、LPF200の周波数特性において、サンプリング周波数の1/2の周波数にノッチを生成することができる。またフライングキャパシタ220の各パラメータは、J=3、K=1、M2=−0.618とする。このようにフライングキャパシタ220のパラメータを設定することで、LPF200の周波数特性において、サンプリング周波数の3/10の周波数にノッチを生成することができる。またフライングキャパシタ230の各パラメータは、J=2、K=2、M2=1.0とする。このようにフライングキャパシタ230のパラメータを設定することで、LPF200の周波数特性において、サンプリング周波数の1/6の周波数にノッチを生成することができる。
【0097】
図14に示したLPF200の周波数特性を図19に、群遅延特性を図20に、それぞれ示す。なお、サンプリング周波数=50[MHz]、Ts=20[ns]、Gm=1[mS]、Cr=2[pF]、Ch=7[pF]、Cx1=1.0[pF]、Cx2=1.236[pF]、Cx3=2.0[pF]とする。図19に示したように、図14に示したLPF200は、サンプリング周波数の1/6の周波数、3/10の周波数、および1/2の周波数にノッチが生じるような周波数特性を有する。
【0098】
そして、図20に示した、LPF200の群遅延特性によれば、周波数通過帯域(約2[MHz]以下)の群遅延時間の変動は約40[ns]程度であり、周波数通過帯域における群遅延特性は比較的平坦となっている。
【0099】
このように、パラメータを変化させた複数のチャージドメインIIR−LPFを縦続接続することで、複数の周波数にノッチを生じさせる周波数特性を有し、また群遅延特性も比較的良好なLPFを実現することができる。
【0100】
<3.本発明の一実施形態にかかるLPFを備えた通信装置>
次に、本発明の一実施形態にかかるLPFを備えた通信装置の構成について説明する説明図である。図21は、本発明の一実施形態にかかるLPFを備えた通信装置300の構成に付いて示す説明図である。
【0101】
図21に示したように、本発明の一実施形態にかかるLPFを備えた通信装置300は、データ生成部310と、信号処理回路320と、周波数変換器340と、ローカル信号発生器330と、電力増幅器350と、帯域制限用フィルタ360と、アンテナ370と、を含んで構成される。
【0102】
通信装置300から送信すべきデータはデータ生成部310で生成され、信号処理回路320に入力される。信号処理回路320では、D/A変換、符号化及び変調などの処理が施されることにより、ベースバンドまたはIF(Intermediate Frequency;中間周波数)帯の送信信号が生成される。信号処理回路320からの送信信号は周波数変換器(ミキサ)330に入力され、ローカル信号発生器340からのローカル信号と乗算される。送信信号がローカル信号と乗算されることによって、送信信号はRF(Radio Frequency;高周波)帯の信号に周波数変換、すなわちアップコンバートされる。
【0103】
周波数変換器330でアップコンバートされて得られるRF信号は、電力増幅器350によって増幅された後、帯域制限用フィルタ360に入力される。そしてRF信号は、帯域制限用フィルタ360で帯域制限を受けて不要な周波数成分が除去された後、アンテナ370に供給される。ここで、帯域制限用フィルタ360に、これまでに説明した種々のチャージドメイン2次IIR−LPF回路を用いることができる。
【0104】
<4.まとめ>
以上説明したように本発明の一実施形態によれば、フライングキャパシタを挟んでキャパシタCxを設け、さらにフライングキャパシタにおける2つのキャパシタCr1、Cr2の移動に遅延を設けた。このようにLPFを構成することで、周波数特性にノッチが生じるLPFを実現することが出来る。この際に、遅延時間やキャパシタCxの容量に関するパラメータを設定することで、決まった周波数にノッチを生じさせることができ、急峻な減衰特性を有するLPFを得ることができる。また、キャパシタCr1、Cr2が入力側から出力側に移動するときの遅延時間を変化させることで、ノッチの有無を切り替えることが可能となる。また、キャパシタCr1、Cr2が入力側から出力側に移動するときの遅延時間と出力側から入力側に移動するときの遅延時間との和を一定にした状態で、入力側から出力側に移動するときの遅延時間を変化させる。このように入力側から出力側に移動するときの遅延時間を変化させることで、通過帯域内の周波数特性を等しく保ちながら、ノッチの有無を切り替えることができる。さらに、キャパシタCr1、Cr2が出力側から入力側に移動するときの遅延時間を一定に保ちながら、入力側から出力側に移動するときの遅延時間を変化させることで、カットオフ周波数を等しく保ちながらノッチの有無を切り替えることができる。
【0105】
さらに、フライングキャパシタを差動構成にすることで、フィルタの周波数特性に複素ノッチを生成することが出来る。また、複数のフライングキャパシタを縦列接続することで、フィルタの周波数特性に複数のノッチを生成して急峻な減衰特性を得ることができる。
【0106】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、フィルタ回路および通信装置に適用可能であり、特にフライングキャパシタを用いたフィルタ回路およびフライングキャパシタを用いたフィルタ回路を備えた通信装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の一実施形態にかかるチャージドメインIIR−LPF100の構成について示す説明図である。
【図2】図1に示したLPF100をzドメイン等価回路に変換したものを示す説明図である。
【図3】LPF100の周波数特性の一例を示す説明図である。
【図4】正規化周波数とMの実部および虚部との関係をグラフで示す説明図である。
【図5】正規化周波数とMの実部および虚部との関係をグラフで示す説明図である。
【図6】正規化周波数とMの実部および虚部との関係をグラフで示す説明図である。
【図7】差動構成にしたチャージドメインIIR−LPFの構成例について示す説明図である。
【図8】差動構成にして複素電圧を扱えるようにしたチャージドメインIIR−LPFの構成例について示す説明図である。
【図9】図3に示した周波数特性をカットオフ周波数付近で拡大したものを示す説明図である。
【図10】LPF100の周波数特性の一例を示す説明図である。
【図11】図10に示した周波数特性をカットオフ周波数付近で拡大したものを示す説明図である。
【図12】本発明の一実施形態にかかるLPF100の回路構成例について示す説明図である。
【図13】図12に示したLPF100に入力されるクロックの波形を示す説明図である。
【図14】本発明の一実施形態の変形例にかかるLPF200の構成について示す説明図である。
【図15】フライングキャパシタの回路構成例を示す説明図である。
【図16】フライングキャパシタの回路構成例を示す説明図である。
【図17】フライングキャパシタの回路構成例を示す説明図である。
【図18】LPF200に入力されるクロックの波形を示す説明図である。
【図19】図14に示したLPF200の周波数特性を示す説明図である。
【図20】図14に示したLPF200の群遅延特性を示す説明図である。
【図21】本発明の一実施形態にかかるLPFを備えた通信装置の構成を示す説明図である。
【図22】従来のチャージドメイン2次IIR−LPF10の構成について示す説明図である。
【図23】キャパシタの移動の規則性について示す説明図である。
【図24】図22に示したLPF10をzドメイン等価回路に変換したものを示す説明図である。
【図25】図24の等価回路の周波数特性をグラフで示す説明図である。
【図26】図22に示したLPF10の実際の回路構成を示す説明図である。
【図27】図26に示したLPF10に入力されるクロックの波形を示す説明図である。
【符号の説明】
【0109】
10、100、200 LPF
210、220、230 フライングキャパシタ
300 通信装置
310 データ生成部
320 信号処理回路
330 周波数変換器
340 ローカル信号発生器
350 電力増幅器
360 帯域制限用フィルタ
370 アンテナ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端から出力端へ切り替わる場合には極性を維持し、出力端から入力端へ切り替わる場合には極性が反転するフライングキャパシタと、
前記フライングキャパシタの入力端と出力端との間に、前記フライングキャパシタと並列に設けられるキャパシタと、
を備えるフィルタ回路。
【請求項2】
前記フライングキャパシタは、前記出力端から前記入力端へ切り替わってから前記フライングキャパシタに入力されるクロック周期のJ(Jは1以上の自然数)クロック分遅延して前記入力端から前記出力端へ切り替わり、前記入力端から前記出力端へ切り替わってから前記クロック周期のK(Kは1以上の自然数)クロック分遅延して前記出力端から前記入力端へ切り替わる、請求項1に記載のフィルタ回路。
【請求項3】
前記Jの値は可変である、請求項2に記載のフィルタ回路。
【請求項4】
前記Jの値は可変であり、前記Jと前記Kとの和は一定である、請求項2に記載のフィルタ回路。
【請求項5】
前記Jの値は可変であり、前記Kの値は一定である、請求項2に記載のフィルタ回路。
【請求項6】
前記フライングキャパシタおよび前記キャパシタの組を縦続接続した、請求項1に記載のフィルタ回路。
【請求項7】
前記キャパシタの容量は、前記フライングキャパシタを構成するキャパシタの容量のM倍である、請求項2に記載のフィルタ回路。
(Mは、M=exp(−j*2πf*Ts*J)/(exp(−j*2πf*Ts)−1)が実数となる場合の値である。なお、Tsはクロック周期、fはノッチが生じる周波数である。)
【請求項8】
前記Mの値が負の場合は、前記フライングキャパシタを差動構成にし、前記キャパシタを前記フライングキャパシタの前記正相側の入力端と逆相側の出力端、および前記正相側の出力端と逆相側の入力端との間に設ける、請求項7に記載のフィルタ回路。
【請求項9】
前記キャパシタの容量は、前記フライングキャパシタを構成するキャパシタの容量のM倍である、請求項2に記載のフィルタ回路。
(Mは、M=exp(−j*2πf*Ts*J)/(exp(−j*2πf*Ts)−1)が虚数となる場合の値である。なお、Tsはクロック周期、fはノッチが生じる周波数である。)
【請求項10】
差動構成にした前記フライングキャパシタを2つ備え、一方の前記フライングキャパシタには複素電圧で表される電圧が供給される、請求項9に記載のフィルタ回路。
【請求項11】
請求項1に記載のフィルタ回路を備える、通信装置。
【請求項1】
入力端から出力端へ切り替わる場合には極性を維持し、出力端から入力端へ切り替わる場合には極性が反転するフライングキャパシタと、
前記フライングキャパシタの入力端と出力端との間に、前記フライングキャパシタと並列に設けられるキャパシタと、
を備えるフィルタ回路。
【請求項2】
前記フライングキャパシタは、前記出力端から前記入力端へ切り替わってから前記フライングキャパシタに入力されるクロック周期のJ(Jは1以上の自然数)クロック分遅延して前記入力端から前記出力端へ切り替わり、前記入力端から前記出力端へ切り替わってから前記クロック周期のK(Kは1以上の自然数)クロック分遅延して前記出力端から前記入力端へ切り替わる、請求項1に記載のフィルタ回路。
【請求項3】
前記Jの値は可変である、請求項2に記載のフィルタ回路。
【請求項4】
前記Jの値は可変であり、前記Jと前記Kとの和は一定である、請求項2に記載のフィルタ回路。
【請求項5】
前記Jの値は可変であり、前記Kの値は一定である、請求項2に記載のフィルタ回路。
【請求項6】
前記フライングキャパシタおよび前記キャパシタの組を縦続接続した、請求項1に記載のフィルタ回路。
【請求項7】
前記キャパシタの容量は、前記フライングキャパシタを構成するキャパシタの容量のM倍である、請求項2に記載のフィルタ回路。
(Mは、M=exp(−j*2πf*Ts*J)/(exp(−j*2πf*Ts)−1)が実数となる場合の値である。なお、Tsはクロック周期、fはノッチが生じる周波数である。)
【請求項8】
前記Mの値が負の場合は、前記フライングキャパシタを差動構成にし、前記キャパシタを前記フライングキャパシタの前記正相側の入力端と逆相側の出力端、および前記正相側の出力端と逆相側の入力端との間に設ける、請求項7に記載のフィルタ回路。
【請求項9】
前記キャパシタの容量は、前記フライングキャパシタを構成するキャパシタの容量のM倍である、請求項2に記載のフィルタ回路。
(Mは、M=exp(−j*2πf*Ts*J)/(exp(−j*2πf*Ts)−1)が虚数となる場合の値である。なお、Tsはクロック周期、fはノッチが生じる周波数である。)
【請求項10】
差動構成にした前記フライングキャパシタを2つ備え、一方の前記フライングキャパシタには複素電圧で表される電圧が供給される、請求項9に記載のフィルタ回路。
【請求項11】
請求項1に記載のフィルタ回路を備える、通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2010−147944(P2010−147944A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324666(P2008−324666)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]