説明

フィルタ素子、フィルタユニット、およびプロジェクタ

【課題】本発明は、所定色の光を透過させるフィルタ素子、フィルタユニット、およびこのようなフィルタ素子を用いて画像を表示するプロジェクタに関し、高速な色の切り換えと静音性の確保とが両立可能なフィルタ素子、フィルタユニット、およびこのようなフィルタ素子を用いて画像を表示するプロジェクタを提供することを目的とする。
【解決手段】いずれか一方が有色の導電性液体および絶縁性液体の双方が収容された液体収容器と、その導電性液体に接触した第1の電極と、その導電性液体に対して絶縁された第2の電極とを複数組備え、各液体収容器に収容された液体の色は異なっており、それら各液体収容器が、所定の光軸方向についてはそれぞれが光を透過させる、その光軸方向に並んだものであって、第2の電極が光透過性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定色の光を透過させるフィルタ素子、フィルタユニット、およびこのようなフィルタ素子を用いて画像を表示するプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、1つ1つが独立して角度制御される、約50万個〜130万個の微小な鏡(以下、このような鏡の1つ1つをマイクロミラーと称する)が半導体上にマトリクス状に敷設されたDMD(Digital Micromirror Device:デジタル・マイクロミラー・デバイス)と称される光半導体が組み込まれたDLP(Digital Light Processing:デジタル・ライト・プロセッシング:登録商標)方式のプロジェクタが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この特許文献1に開示されたプロジェクタは、DMDを1枚用いる単板式のプロジェクタであって、このプロジェクタには、光源から出射された光の光路上に配備された、R(Red:赤)、G(Green:緑)、B(Blue:青)の3つのカラーフィルタが放射状に配列された1枚の円盤状のカラーホイールが備えられている。このカラーホイールは高速回転され、光源から出射された光がこのカラーホイールを透過することによってR、G、Bの各色に周期的に変化する光となる。この周期的に変化するR、G、Bの各色の光がDMDに順次入射される。ここで、このDMDに備えられた各マイクロミラーは、このプロジェクタによって投影される画像における画素の1つ1つに対応している。また、各マイクロミラーは、+12度に傾く状態(以下、このような状態を“オン状態”と称する)と、−12度に傾く状態(以下、このような状態を“オフ状態”と称する)とのいずれかの角度への切り換えが、各マイクロミラーごとに独立に、毎秒数千回という高速で可能である。DMDに画像データが入力されると、このプロジェクタによって投影される画像の光量が、入力された画像データに応じた光量となるように、この画像データにより表される画像における各画素に対応するマイクロミラーの1つ1つにおけるオン状態とオフ状態との割合が制御される。このように制御されるDMDに、R、G、Bの各色の光が入射されると、各マイクロミラーのうちのオン状態のマイクロミラーに反射した反射光は、投影レンズを介して拡大投射され、画像投影面に投影される。一方、オフ状態のマイクロミラーに反射した反射光は光吸収板に吸収される。この結果、画像投影面には、画像データにより表される画像がフルカラー表示される。また、画像投影面に投影される画像の階調は、上述した、各マイクロミラーにおけるオン状態とオフ状態との割合が制御されることによって表現される。例えば、オン状態の割合が多くなるように制御されたマイクロミラーに対応する画素は明るく表示され、オフ状態の割合が多くなるように制御されたマイクロミラーに対応する画素は暗く表示される。
【特許文献1】特開2003−307705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1に開示された単板式のプロジェクタでは、上述したように、光源から出射された光を、周期的に変化するR、G、Bの各色の光に切り換える手段としてカラーホイールが用いられていることから、画像投影面に投影される画像の1画面を構成するR、G、Bの各色の投射時間が長くなり、その結果、視聴者によっては、画像投影面に投影された画像がR、G、Bの3色に分離しているように知覚したり、視線を大きく移動させた際に目に焼きついた残像を知覚する、いわゆる「カラーブレーキング」と呼ばれる現象が生じて、視聴の快適感が損なわれてしまうといった問題がある。
【0005】
このような問題点に対しては、カラーホイールの回転速度を早めて色の切り換えを高速に行うことによってカラーブレーキング現象の発生を抑制する対処方法が知られている。例えば、R、G、Bの3つのカラーフィルタが放射状に配列された1枚のカラーホイールの回転速度を従来の回転速度の倍速にしたり、R、G、B、R、G、Bの6つのカラーフィルタが放射状に配列された1枚のカラーホイールの回転速度を従来の回転速度の倍速にすることで実質4倍速にすることによってカラーブレーキング現象の発生を抑制する方法が実用化されている。しかしながら、カラーホイールの回転速度を早めることは、カラーホイールを回転させる駆動部における駆動音が増大することとなり、例えば、静かなシアタールームにおいてはその駆動音が視聴の妨げとなってしまうおそれがある。また、カラーホイールの回転速度を早めることによって、駆動部の経年変化による劣化が早まることも危惧される。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、高速な色の切り換えと静音性の確保とが両立可能なフィルタ素子、フィルタユニット、およびこのようなフィルタ素子を用いて画像を表示するプロジェクタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のフィルタ素子は、
相互に不混和な、それぞれが光透過性を有する、いずれか一方が有色の導電性液体および絶縁性液体の双方が各々の内部に収容された、各々に収容された液体の色が異なる、少なくとも所定の光軸方向についてはそれぞれが光を透過させる、その光軸方向に並んだ複数の液体収容器と、
上記複数の液体収容器それぞれに付設された、それら複数の液体収容器それぞれの内部に収容された導電性液体に接触した複数の第1の電極と、
上記複数の液体収容器それぞれに、上記光軸方向と交わる位置に付設された、それら複数の液体収容器それぞれの内部に収容された導電性液体に対して絶縁された、光透過性を有する複数の第2の電極とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明のフィルタ素子は、いずれか一方が有色の導電性液体および絶縁性液体の双方が収容された液体収容器と、その導電性液体に接触した第1の電極と、その導電性液体に対して絶縁された第2の電極とを複数組備えているため、第1の電極および第2の電極に対して電圧が印加されると、有色の液体が液体集容器内を高速に移動して色が高速に切り換えられる。また、本発明のフィルタ素子は、色の切り替えにあたって駆動部が不要であるため、静音性も確保される。また、本発明のフィルタ素子を構成する各液体収容器が、所定の光軸方向についてはそれぞれが光を透過させる、その光軸方向に並んだものであって、第2の電極が光透過性を有するものであるため、このフィルタ素子を透過型のフィルタ素子として利用することができる。また、本発明のフィルタ素子を構成する各液体収容器に収容された液体の色は異なっているため、その透過型フィルタの色を切り換えることができる。
【0009】
ここで、上記本発明のフィルタ素子は、
「上記複数の液体収容器それぞれの内面の、上記第2の電極に沿った部分を覆う、光透過性を有する、上記導電性液体に対する濡れ性が上記絶縁性液体に対する濡れ性よりも低い被覆膜を備え、
上記導電性液体が無色透明の液体であって、上記絶縁性液体が有色透明の液体である」
ことが好ましい。
【0010】
このような被覆膜を備えたフィルタ素子によれば、上記第1の電極および上記第2の電極に対して電圧が印加されると、第1の電極から導電性水溶液中に電荷が放出され、放出された電荷が導電性水溶液中の、絶縁性オイルとの界面部分に溜まる現象が生じ、この界面部分に溜まった電荷と、この電荷とは逆極性の、第2の電極に集まった電荷とがクーロン力によって引き合って、導電性水溶液中の電荷が被覆膜付近に引き付けられる。その結果、導電性水溶液がその被覆膜を濡らし始めて、絶縁性液体が液体集容器内を高速に移動することによって色が高速に切り換えられる。
【0011】
また、上記目的を達成する本発明のフィルタユニットは、
相互に不混和な、それぞれが光透過性を有する、いずれか一方が有色の導電性液体および絶縁性液体の双方が各々の内部に収容された、各々に収容された液体の色が異なる、少なくとも所定の光軸方向についてはそれぞれが光を透過させる、該光軸方向に並んだ複数の液体収容器と、
上記複数の液体収容器それぞれに付設された、該複数の液体収容器それぞれの内部に収容された導電性液体に接触した複数の第1の電極と、
上記複数の液体収容器それぞれに、上記光軸方向と交わる位置に付設された、該複数の液体収容器それぞれの内部に収容された導電性液体に対して絶縁された、光透過性を有する複数の第2の電極とを備え、
上記第1の電極と上記第2の電極との間に印加される電圧に応じて、色が変わることを特徴とする。
【0012】
本発明のフィルタユニットによると、本発明のフィルタ素子と同様に、有色の液体が液体集容器内を高速に移動して色が高速に切り換えられる。
【0013】
なお、本発明にいうフィルタユニットについては、ここではその基本形態のみを示すのにとどめるが、これは単に重複を避けるためであり、本発明にいうフィルタユニットには、上記の基本形態のみではなく、上述したフィルタ素子の形態に対応する形態が含まれる。
【0014】
また、上記目的を達成する本発明のプロジェクタは、
光を出射する光源と、この光源から出射される光の光路上に配備された、所定色の光を透過させるフィルタと、このフィルタを透過した光を、入力された画像データに応じた光量となるように変調する変調素子と、この変調素子で変調された光を投射することにより、その画像データにより表される画像を表示する投射部とを有するプロジェクタにおいて、
上記フィルタが、
相互に不混和な、それぞれが光透過性を有する、いずれか一方が有色の導電性液体および絶縁性液体の双方が各々の内部に収容された、各々に収容された液体の色が異なる、少なくとも所定の光軸方向についてはそれぞれが光を透過させる、その光軸方向に並んだ複数の液体収容器と、
上記複数の液体収容器それぞれに付設された、それら複数の液体収容器それぞれの内部に収容された導電性液体に接触した複数の第1の電極と、
上記複数の液体収容器それぞれに、上記光軸方向と交わる位置に付設された、それら複数の液体収容器それぞれの内部に収容された導電性液体に対して絶縁された、光透過性を有する複数の第2の電極とを備えたフィルタ素子を有するものであり、
上記フィルタ素子の第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加してそのフィルタ素子の色を変える電圧制御部を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明のプロジェクタは、いずれか一方が有色の導電性液体および絶縁性液体の双方が収容された液体収容器と、その導電性液体に接触した第1の電極と、その導電性液体に対して絶縁された第2の電極とを複数組備えたフィルタ素子を有するものであるため、第1の電極および第2の電極に対して電圧が印加されると、有色の液体が液体集容器内を高速に移動することによって色が高速に切り換えられる。また、本発明のプロジェクタは、フィルタ素子における色の切り替えにあたって駆動部が不要であるため、静音性も確保される。また、上記フィルタ素子を構成する各液体収容器に収容された液体の色は異なっているため、そのフィルタ素子の色を切り換えることができる。
【0016】
ここで、上記本発明のプロジェクタは、
「このプロジェクタが、カラー画像を表示するカラーモードと、モノクロ画像を表示するモノクロモードとを有するものであって、
上記電圧印加系が、上記モノクロモードでは、上記カラーモードで印加する電圧よりも高い電圧を印加するものである」
ことが好ましい。
【0017】
このように、カラーモードで印加する電圧よりも高い電圧が印加されると、有色の液体が液体集容器内をより確実に移動し、モノクロモードで表示されるモノクロ画像の画質が向上する。
【0018】
また、上記本発明のプロジェクタは、
「このプロジェクタが、カラー画像を表示するカラーモードと、モノクロ画像を表示するモノクロモードとを有するものであって、
上記モノクロモードでは、上記フィルタを上記光路上から退避させるフィルタ退避機構を備えた」
ことも好ましい形態である。
【0019】
このようなフィルタ退避機構を備えたプロジェクタによれば、フィルタ素子を光が透過することによる、意図しない薄い着色が回避されるため、モノクロモードで表示されるモノクロ画像の画質がより一層向上する。
【0020】
また、上記本発明のプロジェクタは、
「上記電圧印加系で印加する電圧値を操作に応じて設定する電圧値設定部を備え、
上記電圧印加系が、上記電圧値設定部により設定された電圧値に応じた電圧を印加するものである」
ことが好ましい。
【0021】
ここで、本発明にいうフィルタ素子の経年変化によって、第1の電極および第2の電極に対して当初印加されていた電圧と同じ電圧が印加されても、そのフィルタ素子の液体集容器内に収容された有色の液体のうちの一部の液体が停滞して、色の切り換えが不完全になってしまうおそれがある。例えばこのような経年変化が生じたとしても、上記電圧値設定部を備えたプロジェクタによれば、色の切り換えが適正に行われる程度に電圧値を増加させて設定することができ、そのように設定された電圧値の電圧を印加することができる。
【0022】
また、上記本発明のプロジェクタは、
「入力された画像データに対するゲインパラメータを操作に応じて設定するゲインパラメータ設定部と、
上記画像データに対して、上記ゲインパラメータ設定部により設定されたゲインパラメータに応じた色補正を施す信号処理部とを備えた」
という形態も好ましい。
【0023】
ここで、本発明にいうフィルタ素子は、光源から出射される光の光路上に配備されるものであるため、このフィルタ素子の液体集容器内に収容された有色の液体は、経年変化によって褪色するおそれがある。例えばこのような褪色現象が生じたとしても、上記ゲインパラメータ設定部および上記信号処理部を備えたプロジェクタによれば、ゲインパラメータで画像データのゲインを増加させて、より濃い画像が表示されるようにゲインパラメータを設定することができ、入力された画像データに対して、そのように設定されたゲインパラメータに応じた色補正を施すことができる。
【0024】
さらに、上記本発明のプロジェクタは、
「このプロジェクタが、画像表示を行う表示モードと、上記フィルタ素子の機能を回復させるリフレッシュモードとを有するものであって、
上記電圧印加系が、上記リフレッシュモードでは、上記表示モードにおける電圧よりも低い電圧と高い電圧とを交互に印加するものである」
ことがさらに好ましい。
【0025】
ここで、本発明にいうフィルタ素子の経年変化によって、第1の電極および第2の電極に対して当初印加されていた電圧が印加されても、そのフィルタ素子の液体集容器内に収容された有色の液体のうちの一部の液体が停滞して、色の切り換えが不完全になってしまうおそれがある。例えばこのような経年変化が生じたとしても、上記リフレッシュモードを有するプロジェクタによれば、表示モードにおける電圧よりも低い電圧と高い電圧とが交互に印加されることによって、そのフィルタ素子の性能を回復させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、高速な色の切り換えと静音性の確保とが両立可能なフィルタ素子、フィルタユニット、およびこのようなフィルタ素子を用いて画像を表示するプロジェクタが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0028】
ここでは、本発明を、1つ1つが独立して角度制御される、約50万個〜130万個の微小な鏡(以下、このような鏡の1つ1つをマイクロミラーと称する)が半導体上にマトリクス状に敷設されたDMD(Digital Micromirror Device:デジタル・マイクロミラー・デバイス)と称される光半導体が組み込まれたDLP(Digital Light Processing:デジタル・ライト・プロセッシング:登録商標)方式のプロジェクタに適用した実施形態について説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に相当するプロジェクタの概略構成図である。
【0030】
図1に示すように、プロジェクタ100には、光源としての放電ランプ10、楕円鏡20、ライトトンネル30、フィルタ40、コンデンサレンズ50、一対の反射鏡61,62、DMD70、および投射光学系80が備えられている。
【0031】
プロジェクタ100の放電ランプ10は、楕円鏡20に一体に取り付けられていて、ここでは可視光を出射するキセノンアークショートランプが用いられている。尚、プロジェクタ100の光源としては、この放電ランプ10に替えて、例えば、メタルハライドランプや超高圧水銀ランプなどといった光源も採用可能である。但し、以下では、放電ランプ10が光源として採用されているものとして説明を続ける。
【0032】
楕円鏡20は、放電ランプ10から出射された可視光を反射するとともに、赤外光を透過するダイクロックミラーであって、この楕円鏡20から漏れた可視光の遮光およびこの楕円鏡20を透過した赤外光の吸収のために、この楕円鏡20の外側には黒色無機質顔料がコーティングされている。
【0033】
また、ライトトンネル30は、一定の長さを有する、断面が矩形状の光伝送媒体であって、均一な光強度分布をもった光線を出射する。楕円鏡20によって反射された可視光の収束光線が、このライトトンネル30の入り口から所定の入射角で入射し、入射した可視光がライトトンネル30内の屈折率の高い内壁を多重反射してその出口へ伝播される。また、このライトトンネル30から出射される可視光の出射口径は、長辺と短辺の比が4:3である。
【0034】
また、フィルタ40は、ライトトンネル30から出射した可視光が、フィルタ40の表面に対してほぼ垂直に入射するような光路上に配備されている。また、このフィルタ40は、その可視光が入射する面の1辺が500μmの、本発明にいうフィルタ素子の一例に相当するフィルタ素子が、その面上に100個×100個マトリクス状に敷設されて構成されている。このフィルタ40に入射した可視光がこのフィルタ40を透過すると、R(Red:赤)、G(Green:緑)、B(Blue:青)の各色の光となる。尚、このフィルタ40を構成するフィルタ素子の詳細な説明は後述するが、フィルタ40の色は、R、G、Bの各色に周期的に切り替わっており、フィルタ40を透過する光は、R、G、Bの各色に周期的に変化する。
【0035】
また、コンデンサレンズ50は、フィルタ40を透過することによって得られた、周期的に変化するR、G、Bの各色の光を平行光線に変換するものである。このコンデンサレンズ50によって平行光線に変換されたR、G、Bの各色の光は、一対の反射鏡61,62によってDMD70に導かれる。
【0036】
また、DMD70は、上述したように、約50万個〜130万個の微小なマイクロミラーが半導体上にマトリクス状に敷設されたものであって、このDMD70に備えられた各マイクロミラーは、このプロジェクタ100によって投影される画像における画素の1つ1つに対応している。また、各マイクロミラーは、+12度に傾く状態(以下、このような状態を“オン状態”と称する)と、−12度に傾く状態(以下、このような状態を“オフ状態”と称する)とのいずれかの角度への切り換えが、各マイクロミラーごとに独立に、毎秒数千回という高速で可能である。DMD70に画像データが入力されると、このプロジェクタ100によって投影される画像の光量が、入力された画像データに応じた光量となるように、この画像データにより表される画像における各画素に対応するマイクロミラーの1つ1つにおけるオン状態とオフ状態との割合が制御される。このように制御されるDMD70に、R、G、Bの各色の光が入射されると、各マイクロミラーのうちのオン状態のマイクロミラーに反射した反射光は、投射光学系80を介して拡大投射され、図示しない画像投影面に投影される。一方、オフ状態のマイクロミラーに反射した反射光は、図示しない光吸収板に吸収される。この結果、画像投影面には、画像データにより表される画像がフルカラー表示される。また、画像投影面に投影される画像の階調は、上述した、各マイクロミラーにおけるオン状態とオフ状態との割合が制御されることによって表現される。例えば、オン状態の割合が多くなるように制御されたマイクロミラーに対応する画素は明るく表示され、オフ状態の割合が多くなるように制御されたマイクロミラーに対応する画素は暗く表示される。
【0037】
ここで、この図1に示すプロジェクタにおける、本発明の一実施形態としての特徴は、このプロジェクタ100に備えられたフィルタ40に関連があり、以下、先ず、このフィルタ40について説明する。
【0038】
図2は、図1に示すプロジェクタに備えられたフィルタを構成するフィルタ素子の模式図であり、図3は、図2に示すフィルタ素子に対して電圧が印加された後の状態の模式図である。なお、図2,図3の左側から矢印Oの方向に光が入射し、光が入射する側(図2,図3の左側)を前側、光が出射する側(図2,図3の右側)を後側と称して説明を行う。
【0039】
図2に示すように、フィルタ素子400は、断面が四角形のチューブ411a,421a,431aの両端が、光透過性を有する透明なエンドキャップ411b,411c,421b,421c,431b,431cで塞がれた3つの液体収容器411,421,431で構成されていて、これら3つの液体収容器411,421,431が、ライトトンネル30(図1参照)から出射した可視光の光軸方向に並んで構成されている。これら各液体収容器411,421,431は、透明なガラスで構成されており、本発明にいう液体収容器の一例に相当する。
【0040】
3つの液体収容器411,421,431のうちの第1の液体収容器411の内部には、無色透明の導電性液体90と、導電性液体90とは不混和な、R色の油溶性染料が添加された有色透明の絶縁性液体91との双方が収容されている。また、第2の液体収容器421の内部には、無色透明の導電性液体90と、導電性液体90とは不混和な、G色の油溶性染料が添加された有色透明の絶縁性液体92との双方が収容されている。また、第3の液体収容器431の内部には、無色透明の導電性液体90と、導電性液体90とは不混和な、B色の油溶性染料が添加された有色透明の絶縁性液体93との双方が収容されている。本実施形態では、導電性液体90として、水に支持電解質(テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート)が加えられたものが適用され、絶縁性液体91,92,93の溶媒として有機溶媒(アイソパー:エクソン社製)が適用される。この導電性液体90は、本発明にいう導電性液体の一例にあたり、各絶縁性液体91,92,93は、本発明にいう絶縁性液体の一例に相当する。
【0041】
3つのチューブ411a,421a,431aそれぞれの後側を塞ぐ各エンドキャップ411c,421c,431c側の、液体と接触する面(内面)は、導電性液体90に対する濡れ性が絶縁性液体91,92,93に対する濡れ性よりも低い、いわゆる撥水性を有する絶縁膜412,422,432で覆われている。また、これら各絶縁膜412,422,432は光透過性を有するものであって、本実施形態では、絶縁膜412,422,432として、サイトップ(旭硝子社製)が適用される。これら各絶縁膜412,422,432は、本発明にいう被覆膜の一例に相当する。
【0042】
各液体収容器411,421,431には、それぞれのチューブ411a,421a,431aの液体と接触する面(内面)に埋め込まれた、液体と接触する第1電極413,423,433が備えられている。また、各エンドキャップ411c,421c,431cと絶縁膜412,422,432に挟まれた、絶縁膜412,422,432によって液体と絶縁された、光透過性を有する第2電極414,424,434も備えられている。これら各第1電極413,423,433、および各第2電極414,424,434は、後述するフィルタ制御部と接続されており、フィルタ制御部によって、これらの電極間に電圧が印加される。これら各第1電極413,423,433は、本発明にいう第1の電極の一例に相当し、各第2電極414,424,434は、本発明にいう第2の電極の一例に相当する。また、フィルタ制御部は、本発明にいう電圧制御部の一例に相当する。
【0043】
各第1電極413,423,433と各第2電極414,424,434との間に電圧が印加されていない状態では、導電性液体90が撥水性を有する絶縁膜412,422,432と反撥することによって、各絶縁膜412,422,432と各絶縁性液体91,92,93とが接触する。
【0044】
次に、図3を参照して、図2に示すフィルタ素子に対して電圧が印加された際の様態を説明する。
【0045】
この図3に示す例では、図2に示すフィルタ素子400のうちの、G色の絶縁性液体92が収容された液体収容器421、およびB色の絶縁性液体93が収容された液体収容器431それぞれに備えられた第1電極423,433および第2電極424,434に対して電圧が印加された後の状態のフィルタ素子が示されている。
【0046】
絶縁性液体92,93が収容された液体収容器421,431に備えられた第1電極423,433と第2電極424,434との相互間に電圧が印加されると、第1電極423,433から導電性液体90に電荷が放出され、第2電極424,434には、導電性液体90に放出された電荷とは逆極性の電荷が集まる。この導電性液体90に放出された電荷と、第2電極424,434の電荷とがクーロン力によって引き合い、導電性液体90中の電荷が撥水性を有する絶縁膜422,432付近に引き付けられる。その結果、導電性液体90が、絶縁膜422,432を濡らし始めて、絶縁性液体92,93が液体集容器421,431内を高速に移動して液体収容器421,431の一角に追いやられる。この結果、G色とB色の絶縁性液体92,93はほとんど光に作用しない状態となる。
【0047】
従って、図3に示す状態のフィルタ素子に、図1に示すライトトンネル30から出射した可視光が入射して透過すると、R色の光が出射することとなる。
【0048】
このように、本実施形態に適用されるフィルタ素子は、色の切り替えにあたって駆動部が不要であるため、静音性も確保される。
【0049】
図4は、図1に示すプロジェクタの機能ブロック図である。
【0050】
図4に示すように、プロジェクタ100には、ゲインパラメータ設定部1、信号処理部2、モード切替スイッチ3、電圧値設定部4、および制御部5が備えられている。さらに、このプロジェクタ100には、図1にも示すように、放電ランプ10、フィルタ40、コンデンサレンズ50、DMD70、および投射光学系80が備えられていて、放電ランプ10を駆動する放電ランプ駆動回路6、フィルタ40の駆動を制御するフィルタ制御部7も備えられている。
【0051】
ゲインパラメータ設定部1は、入力された画像データに対するゲインパラメータを操作に応じて設定するものであって、このゲインパラメータ設定部1は、本発明にいうゲインパラメータ設定部の一例に相当するものである。
【0052】
また、信号処理部2は、図示しないパーソナルコンピュータなどから画像データの入力を受けて、その画像データを、図1にも示すDMD70のマイクロミラーと同数の画素数のRGB画像データに変換するものである。また、この信号処理部2は、入力された画像データに対して、ゲインパラメータ設定部1により設定されたゲインパラメータに応じた色補正を施すものでもあって、この信号処理部2は、本発明にいう信号処理部の一例に相当するものである。
【0053】
ここで、図5を参照して、信号処理部2における色補正の手順を説明する。
【0054】
図5は、図4に示す信号処理部における色補正の機能ブロック図である。
【0055】
信号処理部2に、図示しないパーソナルコンピュータなどから画像データが入力されると、入力された画像データのRGB信号が画像信号処理部11でYC信号に変換される。YC信号に変換された画像データに対して、必要に応じて、ノイズ低減部12でノイズ低減処理が施され、エッジ強調部13でエッジ強調処理が施される。その後、画像データに対して、色強調部14で色強調処理が施され、その後の画像データのYC信号が画像信号処理部15でRGB信号に変換される。RGB信号に変換された画像データに対して、リニアマトリックス16で色補正処理が施され、その後に、ゲインパラメータ設定部1により設定されたゲインパラメータに応じた色補正が、ゲイン調整部17で施され、信号処理部2から出力される。
【0056】
図1に示すように、フィルタ40は、放電ランプ10から出射される光の光路上に配備されるものであるため、このフィルタ40を構成するフィルタ素子400の液体集容器411,421,431内に収容された有色の絶縁性液体91,92,93は、経年変化によって褪色するおそれがある。このような褪色現象が生じたとしても、ゲインパラメータ設定部1および信号処理部2を備えた本実施形態のプロジェクタ100によれば、ゲインパラメータで画像データのゲインを増加させて、より濃い画像が表示されるようにゲインパラメータを設定することができ、入力された画像データに対して、そのように設定されたゲインパラメータに応じた色補正を施すことができる。
【0057】
図4に戻って説明を続ける。
【0058】
モード切替スイッチ3は、カラー画像を表示するカラーモード、モノクロ画像を表示するモノクロモード、および図1〜図3にも示すフィルタ40の機能を回復させるリフレッシュモードのいずれかのモードを選択するものである。
【0059】
また、電圧値設定部4は、図1〜図3にも示すフィルタ40に対して印加する電圧値を操作に応じて設定するものであって、この電圧値設定部4は、本発明にいう電圧値設定部の一例に相当するものである。
【0060】
フィルタ40を構成するフィルタ素子400の経年変化によって、第1電極413,423,433と第2電極414,424,434との間に当初印加されていた電圧と同じ電圧が印加されても、そのフィルタ素子400の液体集容器411,421,431内に収容された有色の絶縁性液体91,92,93のうちの一部の絶縁性液体が停滞して、色の切り換えが不完全になってしまうおそれがある。このような経年変化が生じたとしても、電圧値設定部4を備えた本実施形態のプロジェクタ100によれば、色の切り換えが適正に行われる程度に電圧値を増加させて設定することができ、そのように設定された電圧値の電圧が印加される。
【0061】
また、制御部5は、信号処理部2で変換された、図1にも示すDMD70のマイクロミラーと同数の画素数のRGB画像データに基づいてDMD70の駆動を制御するとともに、後述する放電ランプ駆動回路6も制御する。また、この制御部5は、モード切替スイッチ3で選択されたモードや、電圧値設定部4で設定された電圧値に応じて、後述するフィルタ制御部7も制御する。
【0062】
放電ランプ駆動回路6は、放電ランプ10の起動、及び起動後の放電ランプ10のAC駆動を、制御部からの信号に応じて制御する。
【0063】
フィルタ制御部7は、制御部5からの信号に応じてフィルタ40に対して印加する電圧を制御する。このフィルタ制御部7は、本発明にいう電圧制御部の一例に相当するものである。モード切替スイッチ3でカラーモードが選択されている場合には、このフィルタ制御部7によって、フィルタ40を構成するフィルタ素子400の第1電極413,423,433と第2電極414,424,434との間に印加される電圧が制御され、3組の電極413,414;423,424;433,434のうちの2組づつに周期的に電圧が印加される。これによって,フィルタ40に入射した可視光は、このフィルタ40を透過することによって、R、G、Bの各色に周期的に変化する光となる。また、モード切替スイッチ3でモノクロモードが選択されている場合には、このフィルタ制御部7によって電圧が制御されて、フィルタ40を構成するフィルタ素子400の第1電極413,423,433と第2電極414,424,434との間には、カラーモードで印加される電圧よりも高い電圧が印加される。このように,高い電圧がフィルタ40に対して印加されると、図2,図3に示す有色の絶縁性液体91,92,93が液体集容器411,421,431内をより確実に移動するため、モノクロモードで表示されるモノクロ画像の画質が向上する。また、モード切替スイッチ3でリフレッシュモードが選択されている場合には、このフィルタ制御部7によってリフレッシュモード用に電圧が制御されて、フィルタ40を構成するフィルタ素子400の第1電極413,423,433と第2電極414,424,434との間に、カラーモードやモノクロモードで印加する電圧よりも低い電圧と高い電圧とが交互に印加される。
【0064】
ここで、図6を参照して、モード切替スイッチ3でリフレッシュモードが選択されている場合における、フィルタ制御部7での印加電圧の制御を説明する。
【0065】
図6は、モード切替スイッチでリフレッシュモードが選択されている場合における、フィルタに対して印加される電圧と時間の関係を示した図である。横軸は時間を示し、縦軸はフィルタ40に対する印加電圧を示す。また、V0はモード切替スイッチ3でカラーモードが選択されている場合におけるフィルタ40に対する印加電圧であり、V1はモード切替スイッチ3でモノクロモードが選択されている場合におけるフィルタ40に対する印加電圧である。
【0066】
図6に示すように、モード切替スイッチ3でリフレッシュモードが選択されている場合には、フィルタ40に対して電圧が印加されない状態と、カラーモードやモノクロモードで印加される電圧よりも高い電圧が印加される状態とが交互に実行される。
【0067】
フィルタ40を構成するフィルタ素子400の経年変化によって、第1電極413,423,433と第2電極414,424,434との間に当初印加されていた電圧と同じ電圧が印加されても、そのフィルタ素子400の液体集容器411,421,431内に収容された有色の絶縁性液体91,92,93のうちの一部の絶縁性液体が停滞して、色の切り換えが不完全になってしまうおそれがある。このような経年変化が生じたとしても、リフレッシュモードを有する本実施形態のプロジェクタ100によれば、この図6に示すような低い電圧と高い電圧とが交互に印加されることによって、そのフィルタ素子400の性能を回復させることができる。
【0068】
以上で、本発明の第1実施形態の説明を終了する。
【0069】
次に、第2実施形態では、モード切替スイッチ3でモノクロモードが選択されている場合に、上述した第1実施形態で説明したフィルタ40の動作とは異なる動作を行うプロジェクタについて説明する。
【0070】
尚、以下説明する第2実施形態では、第1実施形態で説明した装置構成とほぼ同じ装置構成を有するため、第1実施形態との相違点に注目し、同じ要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0071】
図7は、第2実施形態のプロジェクタの機能ブロック図である。
【0072】
図7に示すように、プロジェクタ200には、上述した第1実施形態のプロジェクタ100に備えられた構成要素に加えて、フィルタ退避制御部8と、駆動回路9が備えられている。また、フィルタ41にはラック42が設けられている。
【0073】
モード切替スイッチ3でモノクロモードが選択されている場合には、フィルタ退避制御部8によって駆動回路9が駆動されることによって、フィルタ41が光路上から退避されるように制御される。
【0074】
ここで、図8を参照して、フィルタ41が光路上から退避される機構を説明する。
【0075】
図8は、フィルタが光路上から退避される機構の説明図である。
【0076】
図8(A)には、図1にも示すライトトンネル30と、このライトトンネル30から出射した可視光が、フィルタ40の表面に対してほぼ垂直に入射するような光路上に配備されているフィルタ41が示されている。また、フィルタ41にはラック42が設けられている。また、この図8(A)には、図7に示す駆動回路9に接続されたモータ300と、モータの回転をラック42に伝達する歯車310,320が示されている。
【0077】
モード切替スイッチ3でモノクロモードが選択され、フィルタ退避制御部8によって駆動回路9が駆動されると、この駆動回路9に接続されたモータが回転し、歯車310,320を介してラック42に動力が伝達される。ラック42に動力が伝達されると、図8(B),図8(C)に示すように、フィルタ41が光路上から退避される。このようなフィルタ退避機構を備えた第2実施形態のプロジェクタ200によれば、フィルタ41を構成するフィルタ素子を光が透過することによる、意図しない薄い着色が回避されるため、モノクロモードで表示されるモノクロ画像の画質がより一層向上する。
【0078】
続いて、本発明を構成する各構成部分において採用可能な種々の形態について付記する。
<液体>
本発明にいう導電性液体、および絶縁性液体は、それぞれが光透過性を有し、互いに混合しない、いずれか一方が有色の液体であればよい。
【0079】
これらの液体の組み合わせとしては、いかなるものであってもよいが、好ましくは、水と有機溶媒の組み合わせである。有機溶媒としては、炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、オクタン、アイソパー(エクソン社製)など)、炭化水素系芳香族化合物(ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなど)、ハロゲン系炭化水素(ジフルオロプロパン、ジクロロエタン、クロロエタン、ブロモエタンなど)、ハロゲン系炭化水素系芳香族化合物(クロロベンゼンなど)、エーテル系化合物(ジブチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテルなど)が挙げられる。好ましくは、炭化水素、炭化水素系芳香族化合物、エーテル系化合物で、テトラリン、デイフノンが挙げられる。
【0080】
また、水には、電気伝導度を高める目的で、支持電解質を添加することが好ましい。支持電解質としては、テトラアルキルアンモニウム塩が好適に用いられる。具体的には、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどが挙げられる。
【0081】
ここで、上記では、本発明の概念を実現するための基本的な実施形態について説明したが、本発明に採用するフィルタ素子を実用化するにあたっては、光路上にゴミや水滴などが付着してフィルタ性能が劣化してしまう不具合を防止するための工夫を施すことが好ましい。
【0082】
例えば、液体が収容された容器の光路と交わる外面(以下では、この面を光透過面と称する)に撥水性膜を付設することが好ましい。光透過面に撥水性を付与することによって、ゴミや水滴の付着などが防止され、フィルタ素子の高い光透過性を維持することができる。この撥水性膜を構成する材料としては、シリコーン樹脂、オルガノポリシロキサンのブロック共重合体、フッ素系ポリマー、およびポリテトラフルオロエタンなどが好ましい。
【0083】
また、フィルタ素子を構成する容器の光透過面に、親水性膜を付設することも好ましい。光透過面に親水撥油性を付与することによっても、ゴミの付着を防止することができる。この親水性膜としては、アクリレート系ポリマーで構成されたものや、非イオン性オルガノシリコーン系界面活性剤などといった界面活性剤を塗布したものなどが好ましく、親水性膜の作製方法としては、シラン系モノマーのプラズマ重合や、イオンビーム処理などを適用することができる。
【0084】
また、フィルタ素子を構成する容器の光透過面に、酸化チタンなどといった光触媒を付設することも好ましい。光と反応した光触媒によって汚れなどが分解され、光透過面をきれいに保つことができる。
【0085】
また、フィルタ素子を構成する容器の光透過面に、帯電防止膜を付設することも好ましい。容器の光透過面に静電気が溜まったり、電極によって帯電してしまうと、光透過面にゴミや埃がくっついてしまう恐れがある。光透過面に帯電防止膜を付設することによって、このような不要物の付着を防止し、フィルタ素子の光透過性を維持することができる。この帯電防止膜は、ポリマーアロイ系の材料で構成されていることが好ましく、このポリマーアロイ系が、ポリエーテル系や、ポリエーテルエステルアミド系や、カチオン性基を有するものや、レオミックス(商品名、第一工業製薬株式会社)であることが特に好ましい。また、この帯電防止膜が、ミスト法によって作製されたものであることが好ましい。
【0086】
また、フィルタ素子を構成する容器に、防汚性素材を適用しても良い。防汚性素材としてはフッ素樹脂が好ましいが、具体的には、含フッ素アルキルアルコキシシラン化合物や、含フッ素アルキル基含有ポリマー、オリゴマー等が好ましく、上記硬化性樹脂と架橋可能な官能基を有するものが特に好ましい。また、防汚性素材の添加量は、防汚性を発現する必要最低量であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施形態に相当するプロジェクタの概略構成図である。
【図2】図1に示すプロジェクタに備えられたフィルタを構成するフィルタ素子の模式図である。
【図3】図2に示すフィルタ素子に対して電圧が印加された後の状態の模式図である。
【図4】図1に示すプロジェクタの機能ブロック図である。
【図5】図4に示す信号処理部における色補正の機能ブロック図である。
【図6】モード切替スイッチでリフレッシュモードが選択されている場合における、フィルタに対して印加する電圧と時間の関係を示した図である。
【図7】第2実施形態のプロジェクタの機能ブロック図である。
【図8】フィルタが光路上から退避される機構の説明図である。
【符号の説明】
【0088】
1 ゲインパラメータ設定部
2 信号処理部
3 モード切替スイッチ
4 電圧値設定部
5 制御部
6 放電ランプ駆動回路
7 フィルタ制御部
8 フィルタ退避制御部
9 駆動回路
11 画像信号処理部
12 ノイズ低減部
13 エッジ強調部
14 色強調部
15 画像信号処理部
16 リニアマトリックス
17 ゲイン調整部
10 放電ランプ
20 楕円鏡
30 ライトトンネル
40 フィルタ
41 フィルタ
42 ラック
50 コンデンサレンズ
61,62 反射鏡
70 DMD
80 投射光学系
100 プロジェクタ
200 プロジェクタ
300 モータ
310,320 歯車
400 フィルタ素子
411,421,431 液体収容器
411a,421a,431a チューブ
411b,411c,421b,421c,431b,431c エンドキャップ
412,422,432 絶縁膜
413,423,433 第1電極
414,424,434 第2電極
90 導電性液体
91,92,93 絶縁性液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に不混和な、それぞれが光透過性を有する、いずれか一方が有色の導電性液体および絶縁性液体の双方が各々の内部に収容された、各々に収容された液体の色が異なる、少なくとも所定の光軸方向についてはそれぞれが光を透過させる、該光軸方向に並んだ複数の液体収容器と、
前記複数の液体収容器それぞれに付設された、該複数の液体収容器それぞれの内部に収容された導電性液体に接触した複数の第1の電極と、
前記複数の液体収容器それぞれに、前記光軸方向と交わる位置に付設された、該複数の液体収容器それぞれの内部に収容された導電性液体に対して絶縁された、光透過性を有する複数の第2の電極とを備えたことを特徴とするフィルタ素子。
【請求項2】
前記複数の液体収容器それぞれの内面の、前記第2の電極に沿った部分を覆う、光透過性を有する、前記導電性液体に対する濡れ性が前記絶縁性液体に対する濡れ性よりも低い被覆膜を備え、
前記導電性液体が無色透明の液体であって、前記絶縁性液体が有色透明の液体であることを特徴とする請求項1記載のフィルタ素子。
【請求項3】
相互に不混和な、それぞれが光透過性を有する、いずれか一方が有色の導電性液体および絶縁性液体の双方が各々の内部に収容された、各々に収容された液体の色が異なる、少なくとも所定の光軸方向についてはそれぞれが光を透過させる、該光軸方向に並んだ複数の液体収容器と、
前記複数の液体収容器それぞれに付設された、該複数の液体収容器それぞれの内部に収容された導電性液体に接触した複数の第1の電極と、
前記複数の液体収容器それぞれに、前記光軸方向と交わる位置に付設された、該複数の液体収容器それぞれの内部に収容された導電性液体に対して絶縁された、光透過性を有する複数の第2の電極とを備え、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加される電圧に応じて、色が変わることを特徴とするフィルタユニット。
【請求項4】
光を出射する光源と、該光源から出射される光の光路上に配備された、所定色の光を透過させるフィルタと、該フィルタを透過した光を、入力された画像データに応じた光量となるように変調する変調素子と、該変調素子で変調された光を投射することにより、該画像データにより表される画像を表示する投射部とを有するプロジェクタにおいて、
前記フィルタが、
相互に不混和な、それぞれが光透過性を有する、いずれか一方が有色の導電性液体および絶縁性液体の双方が各々の内部に収容された、各々に収容された液体の色が異なる、少なくとも所定の光軸方向についてはそれぞれが光を透過させる、該光軸方向に並んだ複数の液体収容器と、
前記複数の液体収容器それぞれに付設された、該複数の液体収容器それぞれの内部に収容された導電性液体に接触した複数の第1の電極と、
前記複数の液体収容器それぞれに、前記光軸方向と交わる位置に付設された、該複数の液体収容器それぞれの内部に収容された導電性液体に対して絶縁された、光透過性を有する複数の第2の電極とを備えたフィルタ素子を有するものであり、
前記フィルタ素子の第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加して該フィルタ素子の色を変える電圧制御部を備えたことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項5】
このプロジェクタが、カラー画像を表示するカラーモードと、モノクロ画像を表示するモノクロモードとを有するものであって、
前記電圧印加系が、前記モノクロモードでは、前記カラーモードで印加する電圧よりも高い電圧を印加するものであることを特徴とする請求項4記載のプロジェクタ。
【請求項6】
このプロジェクタが、カラー画像を表示するカラーモードと、モノクロ画像を表示するモノクロモードとを有するものであって、
前記モノクロモードでは、前記フィルタを前記光路上から退避させるフィルタ退避機構を備えたことを特徴とする請求項4記載のプロジェクタ。
【請求項7】
前記電圧印加系で印加する電圧値を操作に応じて設定する電圧値設定部を備え、
前記電圧印加系が、前記電圧値設定部により設定された電圧値に応じた電圧を印加するものであることを特徴とする請求項4記載のプロジェクタ。
【請求項8】
入力された画像データに対するゲインパラメータを操作に応じて設定するゲインパラメータ設定部と、
前記画像データに対して、前記ゲインパラメータ設定部により設定されたゲインパラメータに応じた色補正を施す信号処理部とを備えたことを特徴とする請求項4記載のプロジェクタ。
【請求項9】
このプロジェクタが、画像表示を行う表示モードと、前記フィルタ素子の機能を回復させるリフレッシュモードとを有するものであって、
前記電圧印加系が、前記リフレッシュモードでは、前記表示モードにおける電圧よりも低い電圧と高い電圧とを交互に印加するものであることを特徴とする請求項4記載のプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−64872(P2006−64872A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245673(P2004−245673)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】