説明

フィルタ素子

【課題】部材点数を少なくすることができ、しかも、重量を軽減できるフィルタ素子を提供する。
【解決手段】フィルタ素子10を、波部11cが規則的に連続形成された濾過部10aと、この濾過部10aの波部11cの傾斜壁11dの両端に設けられるとともに、波列設方向に延びる側板部12とを有する濾過材11により構成する。この側板部12は、濾過材11から表裏方向の互いに離間する反対方向に折曲されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、波部を有する濾過部と、その濾過部の波延長方向の両端に設けられるとともに、波列設方向に延びる側板部とを有する濾過材からなり、側板部を濾過材に対して折曲したフィルタ素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフィルタ素子としては、例えば特許文献1〜3に開示されるものがある。
特許文献1,2に記載の構成においては、図12(a),(b)に示すように、1枚の濾過材50の各波部の両端に縁片51が一体形成され、この縁片51が折り曲げられて隣接する端縁同士が接合されることにより濾過材50の両側端に側板部52が形成されている。
【0003】
また、特許文献3に記載の構成においては、図13(a)〜(c)に示すように、1枚の濾過材60の波部の両端に切れ目61aが入れられて、波の形成ピッチに対応する縁片61が一体形成されている。そして、隣接する縁片61が折り曲げられて互いに重ね合わされることにより、濾過材60の両側端に側板部62が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−24546号公報(第6頁、第12,13図)
【特許文献2】特開平11−221417号公報(第3,4頁、第3図)
【特許文献3】特開2008−49300号公報(第5〜7頁、第2〜4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1〜3の構成では、濾過材50,60の表裏のいずれかの片面側のみに側板部52,62が設けられて、波列設方向において分断されているため、濾過材50,60は蛇腹が変形するように変形しやすく、その形状を自律的に維持できない。このため、フィルタ素子を空調回路等のエア流路にセットした場合に、風圧によって変形しないように濾過材50,60の変形を防止するための別部品が必要である。従って、部品点数が多くなるとともに、重量が増加する。
【0006】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、部材点数を少なくすることができるとともに、重量を軽減できるフィルタ素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、連続する波部を有する濾過部と、その濾過部の波延長方向の両端に設けられるとともに、波列設方向に延びる側板部とを有する濾過材からなり、前記側板部を各波部の傾斜壁に対して折曲された縁片により連続する板状に形成したフィルタ素子において、少なくとも側板部を表裏2枚構成にするとともに、表裏の縁片を互いに離間する反対方向に折曲したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記濾過材を、2枚の不織布を積層して構成したことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、前記各不織布の繊維密度を異ならせたことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記側板部を、前記縁片を重ね合わせて形成したことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、前記側板部を、前記縁片を突き合わせて形成したことを特徴とする。
【0010】
(作用)
この発明においては、濾過材の側板部が、少なくとも表裏2枚構成にされ、表裏の縁片を互いに離間する反対方向に、かつ、波列設方向に連続するように折曲して形成されるため、濾過材の変形が側板部により有効に防止される。このため、濾過材の形状維持のための別部材は不要となる。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、部材点数を少なくすることができ、しかも、重量を軽減できるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態のフィルタ素子を示す斜視図。
【図2】折りたたみ前の濾過材を示す斜視図。
【図3】折りたたみ前の濾過材を示す斜視図。
【図4】濾過材の縁辺を示す分解斜視図。
【図5】濾過材の縁辺を示す斜視図。
【図6】第2実施形態の濾過材を示す斜視図。
【図7】折りたたみ前の濾過材を示す平面図。
【図8】濾過材の縁辺を示す斜視図。
【図9】第3実施形態のフィルタ素子の縁辺を示す斜視図。
【図10】濾過材の縁辺を示す斜視図。
【図11】濾過材を示す展開図。
【図12】(a)は従来のフィルタ素子の展開状態を示す平面図、(b)はフィルタ素子を示す斜視図。
【図13】(a)は従来のフィルタ素子の濾過材の展開状態を示す平面図、(b)は同じく折りたたみ状態を示す側面図、(c)は同じく折りたたみ状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
次に、この発明を具体化した第1実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
始めに、フィルタ素子10の製造方法及び構成について説明する。
【0014】
まず、図2に示すように、互いに繊維密度が異なる2枚の不織布13a,13bを積層し、その積層体の両端縁の折り代11bを除いた部分を例えばニードルパンチにより接合して一体化させる。次に、図2及び図3に示すように、濾過材11の折り代11bを後述する波部11cの形成ピッチとそれぞれ対応するように、言い換えれば波部11cの後述の傾斜壁11dの両端に対応するように、三角形(実施例では正三角形)にカットして縁片11aとする。そして、縁片11aのカットと相前後して、上記積層体を所要の長さにカットし、四角形状の濾過材11を得る。
【0015】
次に、図4及び図5に示すように、濾過材11を波部11cが形成されるように襞折りするとともに、正方形の縁片11aをその全面において、互いの表裏逆方向に、かつ重ねるように折ってそれらを接着する。このようにすれば、濾過材11の表裏において、波部11c間の谷部の両端が閉鎖されるように、波部11cの列設方向において分断されることなく連続した側板部12が一体形成される。
【0016】
従って、以上の手順により構成されたフィルタ素子10は、図1に示すように、波部11cが規則的に連続形成された濾過部10aと、この濾過部10aの波部11cの傾斜壁11dの両端に設けられるとともに、波列設方向に延びる側板部12とを有する濾過材11とからなる。この側板部12は、表裏方向の互いに離間する反対方向に折曲されて形成されている。そして、前記縁片11aが正三角形状であるため、このフィルタ素子10の襞折り角θは60°である。
【0017】
以上のように構成されるフィルタ素子10は、例えば自動車における空気調和装置の空気導入路に、繊維密度の粗い不織布13a又は13bが上流側となるように配置され、車室内の空気を清浄化するために用いられる。
【0018】
従って、以上詳述したこの実施形態は、以下のような効果を発揮する。
(1)濾過材11の側板部12を、濾過材11の傾斜壁11dの両端の縁片11aを互いに離間する反対方向に折曲して形成した。従って、濾過材11とは別部材をその両側端に接合して側板部を形成する構成よりも部材点数を少なくすることができるとともに、全体の軽量化を図ることができる。
【0019】
(2)互いに離間する反対方向に濾過材11から折曲した側板部12が連続して形成されるため、その側板部12により濾過材11の形状が有効に保持される。ゆえに、フィルタ素子10が風圧によって変形することを防止できるとともに、フィルタ素子10の製造時において、製造途中の濾過材11を容易に取り扱うことができる。
【0020】
(3)濾過材11を構成する2枚の不織布13a,13bの繊維密度を異ならせた。従って、エア流の上流側に密度の粗い不織布13a(又は13b)が、下流側に密度の細かい不織布13b(又は13a)が位置するようにフィルタ素子10をセットすることにより、上流側の不織布13a(又は13b)で大きな塵埃等を下流側の不織布13b(又は13a)で小さな塵埃等を分担して濾過するようにすれば、フィルタ寿命と濾過能力とを共に向上させることができる。
【0021】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化した第2実施形態について、図6〜図8を参照して説明する。なお、この実施形態については、前記第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0022】
この第2実施形態においては、2枚の不織布13a,13bを積層する前に濾過材11の折り代11bを、図7及び図8に示すように、傾斜壁11dの両端を直角三角形状にカットして縁片11aとした後に、不織布13a,13bを積層する。縁片11aは、隣接する他の縁片11aに対して向きが反対になっている。また、表裏の縁片11aの三角形の向きが互いに逆となるようにする。この第2実施形態では、濾過材11の濾過部10a側の2つの角の角度がそれぞれ15°及び75°をなす直角三角形としている。
【0023】
次に、図6に示すように、濾過材11の両側端の一面側及び他面側において、それぞれ隣り合う両縁片11aの長辺同士を重ね合わせることなく突き合わせて接合する。この縁片11aの端面11e同士の接合により、接合された縁片11aからなる側板部12を濾過材11の両側端に形成する。なお、縁片11a同士の接合は、接着剤や熱溶着により行うことができる。
【0024】
以上の手順により形成されたフィルタ素子10の襞折り角θは30°である。
以上のように構成されるフィルタ素子10は、前記第1実施形態と同様の作用・効果に加えて、下記の効果を発揮する。
【0025】
(4)濾過材11の縁辺において隣り合う両縁片11aの長辺同士を重ね合わせることなく突き合わせて接合することにより側板部12を形成するようにしたので、第1実施形態のフィルタ素子10よりも軽量にすることができる。
【0026】
(第3実施形態)
次に、この発明を具体化した第3実施形態について、図9〜図11を参照して説明する。
【0027】
フィルタ素子10の製造方法及び構成について説明する。
先ず、第1実施形態と同様にして製造した四角形状の濾過材11の折り代11bに対し、図11に示すように、隣接する傾斜壁11dの両端間の位置にスリットを入れることにより、四角形状(実施形態では正方形)の縁片11aとする。
【0028】
次に、図10に示すように、濾過材11の両側端の一面側及び他面側において、縁片11aを表裏反対方向に折り曲げるとともに、それぞれ隣り合う両縁片11a同士を重ね合わせて接合する。この縁片11a同士の接合により、接合された縁片11aからなる側板部12を濾過材11の両側端に形成する。
【0029】
最後に、図10に一点鎖線で示す波部11cの頂点を結ぶラインで縁片11aを切断し、図9に示すように、フィルタ素子10として余分な部分を除去する。
以上の手順により形成されたフィルタ素子10の襞折り角θは90°である。
【0030】
この実施形態のフィルタ素子10は、前記第1実施形態と同様の効果を発揮する。
(他の実施形態)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0031】
・1枚の不織布よりなる濾過材11の両側端に縁片11aを形成することと前後して、濾過材11の折り代11bをその厚さ方向に2分割されるようにスライスして各縁片11aを表裏2層に分離させる。そして、2つに分離した各縁片11aを前記実施形態のように折曲及び接着して側板部12を形成する。このように構成した場合は、フィルタ素子10が1枚の不織布から構成される。
【0032】
・前記各実施形態において、隣り合う縁片11aの辺部側の一部同士を重ね合わせること。
【符号の説明】
【0033】
10…フィルタ素子、10a…濾過部、11…濾過材、11a…縁片、11c…波部、11d…傾斜壁、12…側板部、13a,13b…不織布。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続する波部を有する濾過部と、その濾過部の波延長方向の両端に設けられるとともに、波列設方向に延びる側板部とを有する濾過材からなり、
前記側板部を各波部の傾斜壁に対して折曲された縁片により連続する板状に形成したフィルタ素子において、
少なくとも側板部を表裏2枚構成にするとともに、表裏の縁片を互いに離間する反対方向に折曲したことを特徴とするフィルタ素子。
【請求項2】
前記濾過材を、2枚の不織布を積層して構成したことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ素子。
【請求項3】
前記各不織布の繊維密度を異ならせたことを特徴とする請求項2に記載のフィルタ素子。
【請求項4】
前記側板部を、前記縁片を重ね合わせて形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルタ素子。
【請求項5】
前記側板部を、前記縁片を突き合わせて形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルタ素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−260004(P2010−260004A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112868(P2009−112868)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】