説明

フィルタ装置

【課題】フィルタエレメントの目詰まりを抑制可能なフィルタ装置を提供する。
【解決手段】燃料タンク2から燃料を汲み上げる燃料ポンプ3の吸入口4側に設けられるサクションフィルタ10は、網状のスクリーン20、プロテクタ11および通路部材30を備える。スクリーン20は、燃料ポンプ3の吸入口4に吸入される吸入燃料に含まれる異物を捕獲する。燃料ポンプ3で汲み上げた燃料を内燃機関に供給する高圧ポンプ6、コモンレール7又はインジェクタ8から排出されるリターン燃料が流れるメイン流路31及び分岐流路32を形成する通路部材30およびプロテクタ11がスクリーン20に設けられる。このため、通路部材30は、メイン流路31及び分岐流路32を流れるリターン燃料とスクリーン20を通過する吸入燃料との間の熱交換を可能にしている。したがって、低温環境下でスクリーン20に付着したワックス状の燃料が融解される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関に燃料を供給する燃料供給系統において、燃料タンクの燃料を汲み上げる燃料ポンプの吸入口側に設けられ、燃料ポンプに吸入される燃料に含まれる異物を捕獲するサクションフィルタが公知である。
特許文献1では、燃料タンクの燃料をサクションフィルタを経由して燃料ポンプによって汲み上げ、その燃料ポンプから余剰燃料として排出されるリターン燃料を燃料タンク内に設けられたサブタンクに戻している。
一方、特許文献2−4では、内燃機関に供給する燃料を加圧する高圧ポンプから排出されるリターン燃料、又はインジェクタから排出されるリターン燃料をサブタンクに戻している。
【0003】
サブタンク内には隔壁が設けられることで、リターン燃料が流入する流入室とサクションフィルタが収容される収容室とが形成されている。高圧ポンプ又はインジェクタから戻されるリターン燃料は温度が高く、その温度に対応する飽和蒸気圧以下にリターン燃料の圧力が低下すると気泡が発生する。また、燃料タンク内の燃料にリターン燃料が噴射・衝突することにより、周りの空気と混じりあうことで気泡が発生する。さらに、軽油に溶け込んでいる空気や水分が気化して気泡になる。流入室の燃料に混入する気泡は、その燃料が隔壁を通過するときに消滅し、収容室には気泡をほとんど含まない燃料が流入する。このため、サクションフィルタから燃料ポンプに燃料と共に気泡が吸入されることが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−143378号公報
【特許文献2】特開2008−248805号公報
【特許文献3】特開2008−240697号公報
【特許文献4】特開平5−99090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、内燃機関に用いられる燃料のうち例えばディーゼル機関の燃料となる軽油等は、低温環境下でワックス状になることが知られている。内燃機関の運転時、ワックス状になった燃料がサクションフィルタのフィルタエレメントに付着すると、燃料ポンプに吸入される燃料の量が少なくなり、燃料ポンプのポンプ効率が悪化する。このため、燃料ポンプから内燃機関への燃料供給が阻害され、内燃機関の正常な運転が妨げられるおそれがある。
【0006】
特許文献1−4では、燃料ポンプ、高圧ポンプ又はインジェクタなどの燃料供給系統からサブタンクに戻されるリターン燃料によって、流入室の燃料を温めることが可能である。しかしながら、サブタンクに戻されるリターン燃料が少なくなると、流入室および収容室のワックス状の燃料が十分に融解されず、サクションフィルタのフィルタエレメントが目詰まりを起こすことが懸念される。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルタエレメントの目詰まりを抑制可能なフィルタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明によると、フィルタ装置は、吸出口、フィルタエレメント、通路部材、導入口及び導出口を備える。燃料タンクから燃料を汲み上げる燃料ポンプの吸入口側に吸出口は設けられることが可能である。その吸出口の入口側に設けられるフィルタエレメントは、燃料ポンプの吸入口に吸入される吸入燃料に含まれる異物を捕獲する。フィルタエレメントを流れる吸入燃料と熱交換可能なリターン燃料を流すリターン燃料流路を有する通路部材が、フィルタエレメントの内部または外部に設けられる。導入口はリターン燃料流路にリターン燃料を流入し、導出口はリターン燃料流路からリターン燃料をフィルタエレメントの外側へ流出する。
通路部材によってリターン燃料とフィルタエレメントを通る吸入燃料との間の熱交換が行われると、低温環境下でフィルタエレメントに付着したワックス状の吸入燃料が融解される。したがって、フィルタエレメントの目詰まりを抑制することができる。この結果、低温環境下における内燃機関への燃料供給が阻害されることなく、内燃機関の正常な運転を維持することができる。
【0008】
請求項2に係る発明によると、導入口は、燃料ポンプで汲み上げた燃料を内燃機関に供給する燃料供給系統から排出されるリターン燃料を流通する戻し通路に接続可能である。
燃料供給系統から排出されるリターン燃料は、高圧ポンプ及び内燃機関等から受熱することで高温になっている。このリターン燃料をリターン燃料流路に導入することで、フィルタエレメントに付着したワックス状の燃料を確実に融解することができる。
【0009】
請求項3に係る発明によると、フィルタ装置は、フィルタエレメントの形状を保持するプロテクタを備える。このプロテクタと通路部材とが接合されることで、プロテクタと通路部材との間にリターン燃料流路は形成される。リターン燃料流路を流れるリターン燃料の熱は、リターン燃料流路からプロテクタを経由し、フィルタエレメントへ直接伝熱する。このため、フィルタエレメントに付着したワックス状の燃料を高効率に融解することができる。
【0010】
請求項4に係る発明によると、通路部材とプロテクタとは、一体に形成される。これにより、フィルタ装置を構成する部品点数を削減し、製造コストを低減することができる。
【0011】
請求項5に係る発明によると、燃料ポンプの吸入時に負圧の大きくなる吸出口の近傍に導入口は設けられる。通路部材ではリターン燃料とフィルタエレメントとの間で熱交換が行われるので、リターン燃料流路の導入口側を流れるリターン燃料の温度は、リターン燃料流路からリターン燃料が流出する導出口側を流れるリターン燃料の温度よりも高い。このため、吸出口の近傍に導入口を設けることで、吸出口の近傍のフィルタエレメントに付着したワックス状の燃料が高効率に融解される。燃料ポンプの吸入口側に接続される吸出口の近傍は、吸出口から遠い位置に比べて負圧が大きいので、燃料ポンプに吸入される燃料が増加し、燃料ポンプのポンプ効率を高めることができる。
【0012】
請求項6に係る発明によると、フィルタ装置は、延長通路及びジェットノズルをさらに備える。延長通路は、導出口に接続され、燃料タンク内でフィルタエレメントを収容するサブタンクの内側からサブタンクの外側に延びる。ジェットノズルは、延長通路の通路部材と反対側に設けられ、サブタンクの開口に向けてリターン燃料を噴射する。これにより、リターン燃料をサブタンク内に入れることでサブタンク内の燃料を温めることができる。また、ジェットノズルの動力としてリターン燃料を使用することで、サブタンク内に燃料を導入することに他の動力源を使用することに比べ、コストを低減することができる。
【0013】
請求項7に係る発明によると、サブタンクは、サブタンクの内側にフィルタエレメントを収容する収容室と、ジェットノズルから噴射されたリターン燃料が流入する流入室とを形成する隔壁を有する。これにより、リターン燃料に混入する気泡を流入室で消滅させた後、気泡をほとんど含まない燃料を収容室に流入することで、フィルタ装置から燃料ポンプに気泡が吸い込まれることを抑制することができる。したがって、フィルタエレメントの目詰まりの防止と、燃料ポンプに流入する気泡の抑制とを両立させることができる。
【0014】
請求項8に係る発明によると、通路部材は、袋状に形成されたフィルタエレメントの内側に設けられ、フィルタエレメントの形状を保持する。これにより、燃料ポンプの吸入口に吸入される燃料の負圧によってフィルタエレメントが通路部材に密着するので、フィルタエレメントとリターン燃料との間の熱交換を高効率に行うことができる。また、通路部材にフィルタエレメントの形状を保持する機能を持たせることで、部品点数を削減し、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態によるサクションフィルタの用いられる燃料供給系統の構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるサクションフィルタの断面図である。
【図3】図2のIII方向の矢視図である。
【図4】本発明の第2実施形態によるサクションフィルタの用いられる内燃機関の供給系統の構成図である。
【図5】本発明の第3実施形態によるサクションフィルタの用いられる内燃機関の供給系統の構成図である。
【図6】本発明の第4実施形態によるサクションフィルタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるフィルタ装置としてのサクションフィルタの用いられる燃料供給系統の構成図を図1に示し、サクションフィルタを図2及び図3に示す。本実施形態のサクションフィルタ10は、ディーゼル機関に燃料を供給する燃料供給系統1において、燃料タンク2の燃料を汲み上げる燃料ポンプ3の吸入口4側に設けられ、燃料ポンプ3に吸入される吸入燃料に含まれる異物を捕獲する。
【0017】
燃料供給系統1では、燃料タンク2から燃料ポンプ3によって汲み上げられた燃料は、燃料フィルタ5を経由し、高圧ポンプ6に供給される。高圧ポンプ6で加圧された燃料はコモンレール7に蓄圧され、インジェクタ8から内燃機関本体9の各気筒内に噴射される。
高圧ポンプ6、コモンレール7及びインジェクタ8などから余剰燃料として排出されるリターン燃料は、戻し通路50を経由し、サクションフィルタ10に導入される。
なお、図1において、燃料の流れる通路に沿って記載された矢印は、燃料の流れる方向を示している。
燃料ポンプ3とサクションフィルタ10は、燃料タンク2内に設けられるサブタンク60に収容されている。サブタンク60の底側には開口61が設けられ、この開口61を経由してサブタンク60の外側の燃料がサブタンク60の内側に流入する。このため、サブタンク60の内側の燃料の液面は、サブタンク60の外側の燃料の液面と略同じ高さに維持される。したがって、重力方向に対して燃料タンク2が傾く場合など、サクションフィルタ10から燃料ポンプ3に確実に燃料が吸入される。
【0018】
サクションフィルタ10は、図2及び図3に示すように、プロテクタ11、スクリーン20及び通路部材30などを備えている。本実施形態における「スクリーン」は特許請求の範囲に記載の「フィルタエレメント」に相当する。
プロテクタ11は、例えば耐油性の樹脂から形成される。プロテクタ11は、略直方体状の外枠13、その直方体状の各面に格子状に設けられた補強壁14、この補強壁14から筒状に延びて燃料ポンプ3の吸入口4に接続する吸出口12などから構成されている。
【0019】
スクリーン20は、例えば耐油性の樹脂から網状に形成される。これにより、スクリーン20を通過する吸入燃料に含まれる異物が捕獲される。スクリーン20とプロテクタ11とは、接着又は熱溶着等により接合されている。なお、プロテクタ11とスクリーン20とは、一体に形成してもよい。
スクリーン20の内側には、吸入燃料が流れる燃料空間が形成されている。スクリーン20を通過した吸入燃料は、燃料空間を流れ、吸出口12の入口121から吸出口12の出口122を経由し、燃料ポンプ3の吸入口4から燃料ポンプ3に吸入される。
燃料ポンプ3が吸入燃料を吸入するとき、プロテクタ11がスクリーン20の形状を保持することで、その負圧によりスクリーン20が変形し、燃料空間が小さくなることが抑制される。
なお、図2において、スクリーン20内側の燃料空間、及びメイン流路31に記載された矢印は、吸入燃料またはリターン燃料の流れる方向を示している。
【0020】
通路部材30は、例えば耐油性の樹脂から、横断面がプロテクタ11の補強壁14側に開口するコの字状に形成され、プロテクタ11の補強壁14に接着又は熱溶着等により接合されている。これにより、通路部材30の内側にはリターン燃料が流れるメイン流路31及び分岐流路32が形成される。この「メイン流路」及び「分岐流路」が特許請求の範囲に記載の「リターン燃料流路」に相当する。なお、通路部材30、プロテクタ11及びスクリーン20は、一体に形成してもよい。
通路部材30に接続するプロテクタ11の補強壁14は、特許請求の範囲に記載の「通路部材」の一部とみなすことも可能である。
【0021】
メイン流路31は、戻し通路50に接続する導入口33から直方体の長手方向に延びている。メイン流路31から直方体の短手方向に分岐流路32が延びている。なお、通路部材30は、プロテクタ11の補強壁14又は外枠13と共に、スクリーン20に沿ってメイン流路31または分岐流路32を複数形成することが可能である。また、分岐流路32は、プロテクタ11の上面に限らず、側面又は底面に形成してもよい。
戻し通路50からメイン流路31にリターン燃料を導入する導入口33は、プロテクタ11の吸出口12の近傍に設けられている。導入口33から導入されたリターン燃料は、メイン流路31及び分岐流路32を通り、導出口34から延長通路へ流出する。
【0022】
図1に示すように、延長通路40は、一端が通路部材30の導出口34に接続され、サブタンク60の内側からサブタンク60の外側に延びている。延長通路40の他端には、ジェットノズル70が設けられている。ジェットノズル70は、サブタンク60の開口61に向けてリターン燃料を噴射する。これにより、ジェットノズル70から噴射されるリターン燃料の周囲に負圧が発生し、サブタンク60の外側の燃料がサブタンク60の内側へ流入する。
【0023】
本実施形態では、以下の作用効果を奏する。
(1)導入口33からメイン流路31及び分岐流路32へ導入されるリターン燃料は、高圧ポンプ及び内燃機関等から受熱することで高温になっている。このリターン燃料の熱は、メイン流路31及び分岐流路32を形成するプロテクタ11の補強壁14を経由し、スクリーン20へ伝熱する。これにより、リターン燃料の熱をスクリーン20に付着したワックス状の吸入燃料に直接伝熱させることが可能となる。このため、従来リターン燃料をサブタンク60に戻すことでサブタンク60内のワックス状の燃料を融解していたものに比べ、熱効率を高めることができる。したがって、高圧ポンプ6、コモンレール7及びインジェクタ8等から燃料タンク2へ戻されるリターン燃料が少ないときにも、スクリーン20に付着したワックス状の吸入燃料が融解され、スクリーン20の目詰まりを確実に抑制することができる。この結果、低温環境下における内燃機関への燃料供給が阻害されることなく、内燃機関の正常な運転を維持することができる。
【0024】
(2)通路部材30は、プロテクタ11の補強壁14の外側から接着又は熱溶着等により接合される。これにより、サクションフィルタ10にメイン流路31及び分岐流路32を容易に形成することが可能となり、製造コストを低減することができる。
(3)通路部材30、プロテクタ11及びスクリーン20は、樹脂により一体に形成することが可能である。これにより、サクションフィルタ10を構成する部品点数を削減し、製造コストを低減することができる。
【0025】
(4)通路部材30の導入口33は、プロテクタ11の吸出口12の近傍に設けられている。メイン流路31を流れるリターン燃料は、導入口33側の温度が導出口34側の温度よりも高いので、燃料ポンプ3の吸入口4の近傍のスクリーン20に付着したワックス状の吸入燃料が高効率に融解される。燃料ポンプの吸入時、燃料ポンプ3の吸入口4の近傍は、吸入口4から遠い位置に比べて負圧が大きいので、燃料ポンプ3に吸入される吸入燃料の量が増加する。このため、燃料ポンプ3のポンプ効率を高めることができる。
【0026】
(5)リターン燃料はジェットノズル70からサブタンク60内に噴射される。ジェットノズル70の動力としてリターン燃料を使用することで、ジェットノズル70の動力に他の装置を使用することに比べ、コストを低減することができる。また、リターン燃料をサブタンク60に入れることで、サブタンク60内の燃料を温め、サブタンク60内のワックス状の吸入燃料を融解することができる。
【0027】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態によるサクションフィルタの用いられる燃料供給系統の構成図を図4に示す。本実施形態では、サブタンク60に隔壁62が設けられている。この隔壁62により、サブタンク60内には、サクションフィルタが収容される収容室63と、ジェットノズル70から噴射されたリターン燃料が流入する流入室64が形成される。
【0028】
高圧ポンプ6、コモンレール7及びインジェクタ8から戻されるリターン燃料は温度が高く、その温度に対応する飽和蒸気圧以下にリターン燃料の圧力が低下することで気泡が発生する。また、燃料タンク内の燃料にリターン燃料が噴射・衝突することにより、周りの空気と混じりあうことで気泡が発生する。さらに、軽油に溶け込んでいる空気や水分が気化して気泡になる。このようにして発生した気泡が燃料ポンプ3に吸入されるとポンプ効率が低下するおそれがある。
そこで、本実施形態では、ジェットノズル70から噴射されたリターン燃料を流入室64に流入させている。流入室64と収容室63との間の隔壁62をリターン燃料が乗り越えるときに、気泡が消滅する。このため、収容室63には、気泡をほとんど含まない燃料が流入するので、燃料ポンプ3に吸入燃料と共に気泡が吸入されることを抑制することができる。
【0029】
ところで、本実施形態では、サブタンク60に隔壁62を設けることで、サクション
フィルタと、リターン燃料を噴射するジェットノズル70との距離が遠くなる。このため、高温のリターン燃料は収容室63に直接流入されない。
しかし、サクションフィルタのスクリーン20には、既に通路部材30によりリターン燃料の熱が伝熱されているので、ワックス状になった吸入燃料は高効率に融解される。したがって、スクリーン20の目詰まりの防止と、燃料ポンプ3に吸入される気泡の抑制とを両立させることができる。
【0030】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態によるサクションフィルタの用いられる燃料供給系統の構成図を図5に示す。本実施形態では、延長通路40の端部にジェットノズルが設けられていない。延長通路40はリターン燃料を流入室64に流出させている。
サブタンク60の開口61には、フラッパ弁65が設けられている。フラッパ弁65は、サブタンク60の外側の燃料がサブタンク60の内側へ流入することを許容し、サブタンク60の内側の燃料がサブタンク60の外側へ流出することを規制する。
【0031】
本実施形態においても、延長通路40から流入室64に流出したリターン燃料に含まれる気泡は、隔壁62を乗り越えるときに消滅する。このため、収容室63には、気泡をほとんど含まない燃料が流入するので、燃料ポンプ3に吸入燃料と共に気泡が吸入されることを抑制することができる。また、リターン燃料によりサブタンク60内の燃料を暖めることができる。したがって、スクリーン20の目詰まりの防止と、燃料ポンプ3に吸入される気泡の抑制とを両立させることができる。
【0032】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態によるサクションフィルタを図6に示す。本実施形態では、スクリーン21が袋状に形成されている。スクリーン21は、燃料ポンプ3の吸入口4に接続する筒状の吸出口15の入口151に接着又は熱溶着等により接合されている。
通路部材35は、管状に形成され、スクリーン21の内側に設けられている。通路部材35の内側には、リターン燃料が流れるメイン流路36と、このメイン流路36から分岐する分岐流路37が形成されている。分岐流路37は、メイン流路36と略垂直方向に延びている。
【0033】
通路部材35は、隣接して形成された導入口33と導出口34とがスクリーン21の外側に露出している。
通路部材35は、スクリーン21の内側の形状に沿うように形成されている。このため、燃料ポンプ3が燃料を吸入するとき、その負圧により、スクリーン21が内側へ変形し、スクリーン21の内側の燃料空間が小さくなることが規制される。したがって、燃料ポンプ3に吸入される吸入燃料の量が維持され、燃料ポンプ3のポンプ効率が維持される。
【0034】
本実施形態では、燃料ポンプ3の吸入口4に吸入される吸入燃料の負圧によってスクリーン21が通路部材35に当接すると、スクリーン21を通る吸入燃料とリターン燃料との間の熱交換を高効率に行うことができる。なお、通路部材35とスクリーン21の内側とが常に当接するように通路部材35を形成してもよい。
また、本実施形態では、スクリーン21の形状を保持するプロテクタの機能を通路部材35が兼ねているので、サクションフィルタを構成する部品点数を削減することができる。
【0035】
(他の実施形態)
上述した第1、第2実施形態では、プロテクタ11の補強壁14の外側に通路部材30を設けた。これに対し、本発明は、プロテクタの補強壁の内側に通路部材を設けてもよい。
上述した第1、第2実施形態では、通路部材30の横断面をコの字状に形成した。これに対し、本発明は、プロテクタの補強壁の横断面を外側に開口するコの字状に形成し、その補強壁の開口を塞ぐように通路部材を設けてもよい。
通路部材またはプロテクタの断面形状はコの字形に限らず、リターン燃料の流通可能な溝を有する形状であればよい。
上述した第1、第2実施形態では、プロテクタ11を略直方体形状に形成した。これに対し、本発明は、プロテクタの形状に制限はなく、例えば球状等であってもよい。
上述した第3実施形態では、フラッパ弁65によってサブタンク60の外側の燃料をサブタンク60の内側へ導入した。これに対し、本発明は、例えば燃料ポンプの余剰燃料をジェットポンプの動力に使用し、サブタンク内へ燃料を導入してもよい。
上述した第4実施形態では、スクリーン21の内側の形状に沿うように通路部材35を形成することで、スクリーン21の形状を保持するプロテクタの機能を通路部材35が兼ねるようにした。これに対し、本発明は、スクリーンの形状を保持するプロテクタを通路部材とは別に設けてもよい。また、第1、第2実施形態のようにリターン燃料の流通可能な溝を有する通路部材をそのプロテクタに接合することで、通路部材とプロテクタとの間にリターン燃料流路が形成されるようにしても良い。さらに、通路部材とプロテクタとを一体に形成してもよい。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
2 ・・・燃料タンク
3 ・・・燃料ポンプ
4 ・・・吸入口
6 ・・・高圧ポンプ(燃料供給系統)
7 ・・・コモンレール(燃料供給系統)
8 ・・・インジェクタ(燃料供給系統)
9 ・・・内燃機関本体
10 ・・・サクションフィルタ(フィルタ装置)
11 ・・・プロテクタ
12 ・・・吸出口
20、21・・・スクリーン(フィルタエレメント)
30、35・・・通路部材
31、36・・・メイン流路(リターン燃料流路)
32、37・・・分岐流路(リターン燃料流路)
33 ・・・導入口
34 ・・・導出口
50 ・・・戻し通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクから燃料を汲み上げる燃料ポンプの吸入口側に設けられることの可能な吸出口と、
前記吸出口の入口側に設けられ、前記燃料ポンプの前記吸入口に吸入される吸入燃料に含まれる異物を捕獲するフィルタエレメントと、
前記フィルタエレメントの内部または外部に設けられ、前記フィルタエレメントを流れる吸入燃料と熱交換可能なリターン燃料を流すリターン燃料流路を有する通路部材と、
前記リターン燃料流路にリターン燃料を流入する導入口と、
前記リターン燃料流路からリターン燃料を前記フィルタエレメントの外側へ流出する導出口と、を備えることを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記導入口は、前記燃料ポンプで汲み上げた燃料を内燃機関に供給する燃料供給系統から排出されるリターン燃料を流通する戻し通路に接続可能であることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記フィルタエレメントの形状を保持するプロテクタを備え、
前記通路部材と前記プロテクタとが接合されることで、前記通路部材と前記プロテクタとの間に前記リターン燃料流路が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記通路部材と前記プロテクタとは一体に形成されることを特徴とする請求項3に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記導入口は、前記燃料ポンプの吸入時に負圧の大きくなる前記吸出口の近傍に設けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記導出口に接続され、前記燃料タンク内で前記フィルタエレメントを収容するサブタンクの内側から前記サブタンクの外側に延びる延長通路と、
前記延長通路の前記通路部材と反対側に設けられ、前記サブタンクの開口に向けてリターン燃料を噴射するジェットノズルとを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
前記サブタンクは、前記フィルタエレメントを収容する収容室と、前記ジェットノズルから噴射されるリターン燃料が流入する流入室とを形成する隔壁を有することを特徴とする請求項6に記載のフィルタ装置。
【請求項8】
前記通路部材は、袋状に形成された前記フィルタエレメントの内側に設けられ、前記燃料ポンプが吸入燃料を吸入するとき、前記フィルタエレメントの内側への変形を規制することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載に記載のフィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−17691(P2012−17691A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155680(P2010−155680)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】