説明

フィルタ調整回路および無線通信システム

【課題】使用環境に応じたフィルタ調整を容易に行い、効果的なイメージ除去ができるフィルタ調整回路を提供する。
【解決手段】中央処理装置(CPU)112の制御により、模擬イメージ信号S102と模擬ローカル信号S103とを生成する模擬信号生成器100と、実際の信号である受信信号S101と模擬信号生成器100で生成された模擬イメージ信号S102とのいずれか一方を選択する第1の信号切り替え器102と、位相同期ループ(PLL)101で生成されたローカル信号S100と模擬信号生成器100で生成された模擬ローカル信号S103とのいずれか一方を選択する第2の信号切り替え器104とを備え、CPU112の制御により模擬イメージ信号S102と模擬ローカル信号S103とを選択し複素フィルタ108の調整を行うことで、イメージ除去効果の高いフィルタ調整を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関し、特にフィルタ回路およびその調整に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムにおいて、検波方式の1つであるスーパーヘテロダイン方式の受信機では、実際の信号である受信信号と、位相同期ループ(phase locked loop:PLL)で生成されたローカル信号とを直交復調器により周波数混合し、受信信号を中間周波数(intermediate frequency:IF)信号であるI信号とQ信号とに変換する。
【0003】
受信信号には、受信したい信号である希望波と、受信信号の周波数とPLLで生成されたローカル信号の周波数との差と同じ関係を持つ信号であるイメージ信号が混在しているため、直交復調器の出力であるIF信号にはイメージ信号が含まれる。そのため、複素フィルタにより不要な信号であるイメージ信号を除去する必要がある。
【0004】
イメージ信号を効果的に除去するためには、複素フィルタに入力されたI信号とQ信号との振幅が一致しており、かつI信号とQ信号との位相が90°ずれていることが求められる。しかし、直交復調器やミキサ、90°移相器はアナログ回路で構成されているため、アナログ回路素子のばらつきによりI信号とQ信号との間に振幅誤差が生じることが考えられる。このIQミスマッチを低減するためには、複素フィルタにおけるI信号処理系およびQ信号処理系の間で相対するアナログ回路素子のミスマッチを低減する必要がある。
【0005】
これまでのIQミスマッチの低減方法としては、直交復調器に入力されたローカル信号の位相誤差がI信号およびQ信号に現れるため、ローカル信号の位相誤差を低減するものであった。しかし、複素フィルタの低消費電力化および小面積化を図るには、複素フィルタを構成している素子値を小さくする必要があり、この影響によりIQミスマッチが増大し、複素フィルタのイメージ除去比が劣化する問題があった。そのため、ローカル信号の位相誤差だけでなく、素子誤差にも着目したIQミスマッチの低減が求められていた。
【0006】
上記課題に対し、イメージ信号を模擬した模擬イメージ信号を生成する模擬イメージ信号生成部と、素子値制御部とを備えることで、素子誤差に着目したIQミスマッチの低減により、イメージ除去比を向上させる受信回路が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、イメージ信号発生部とIF信号発生部とを備えることで、ミキサおよび90°移相器自身の素子ばらつきによる位相誤差を含まない信号を用いて、位相誤差の影響を受けずに振幅誤差を正確に検出し、イメージ除去比を向上させる受信機も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−157866号公報
【特許文献2】特開2009−118114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来技術では、模擬イメージ信号を生成するための模擬イメージ信号生成部を備える必要があるため、回路面積が増大するという課題があった。また、フィルタ調整を行うには、PLLを使用して局部発振信号を生成しなければならないため、PLLを使用する送信動作中にフィルタ調整を行うことができないという課題があった。
【0010】
上記特許文献2に記載の従来技術では、IF信号発生部をミキサ後にスイッチを介して入力することで振幅補正を行う。この方法では、スイッチ以降の振幅誤差の補正のみで、ミキサの出力信号およびPLLと90°移相器との出力信号の振幅誤差を補正することができないという課題があった。
【0011】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、模擬信号生成器で生成された模擬イメージ信号と模擬ローカル信号とを、直交復調器によって周波数混合することで生成されたI信号とQ信号との位相誤差や振幅誤差を補正し、イメージ除去を効果的に行うことができるフィルタ調整回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、第1の発明のフィルタ調整回路は、中央処理装置(central processing unit:CPU)を用いて制御するフィルタ調整回路であって、前記CPUの制御により、実際の信号である受信信号の周波数とPLLで生成されたローカル信号の周波数との差と同じ関係を持つ信号であるイメージ信号を模擬した模擬イメージ信号と、前記PLLで生成されたローカル信号を模擬した模擬ローカル信号とを生成し、かつ、前記イメージ信号と前記ローカル信号との周波数差と、前記模擬イメージ信号と前記模擬ローカル信号との周波数差とを等しくする模擬信号生成器と、前記CPUの制御により、前記受信信号と前記模擬イメージ信号とのいずれか一方を選択する第1の信号切り替え器と、前記第1の信号切り替え器から入力された信号を増幅する低雑音増幅器(low noise amplifier:LNA)と、前記CPUの制御により、前記PLLで生成されたローカル信号と前記模擬ローカル信号とのいずれか一方を選択する第2の信号切り替え器と、前記LNAの出力と、前記ローカル信号と前記模擬ローカル信号とのいずれか一方とを混合してIF信号であるI信号を出力する第1のミキサと、前記LNAの出力と、前記ローカル信号と前記模擬ローカル信号とのいずれか一方を90°移相器で振幅は変化させず位相のみを90°シフトさせた信号とを混合してIF信号であるQ信号を出力する第2のミキサと、前記I信号を増幅する第1の増幅器と、前記Q信号を増幅する第2の増幅器と、前記I信号およびQ信号からイメージ信号を除去する複素フィルタと、前記複素フィルタからの出力を増幅する第3の増幅器と、前記第3の増幅器で増幅された信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するADコンバータ(analog-to-digital converter:ADC)と、前記ADCによりデジタル信号に変換された信号をデジタル信号処理するデジタル信号処理回路とを備えたことを特徴とする。
【0013】
このような構成により、模擬信号生成器で模擬イメージ信号と模擬ローカル信号とを生成し、模擬イメージ信号と模擬ローカル信号とは、実信号であるイメージ信号とローカル信号よりも周波数の低い信号であり、模擬イメージ信号と模擬ローカル信号との周波数差が、直交復調器のミキサで生成されたIF信号と等しくなるようにする。
【0014】
これらの信号から直交復調器により生成されたI信号とQ信号との位相誤差や振幅誤差を補正するため、外部からの信号を入力することなく内部での信号生成によりイメージ除去効果の高いフィルタ調整を行うことができるという効果を有する。
【0015】
第2の発明のフィルタ調整回路は、第1の発明と違う点は、模擬信号生成器を分周器で構成するということである。
【0016】
このような構成により、分周器で模擬イメージ信号と模擬ローカル信号とを生成し、直交復調器により生成されたI信号とQ信号との位相誤差や振幅誤差を補正するため、外部からの信号を入力することなく内部での信号生成によりイメージ除去効果の高いフィルタ調整を行うことができる。
【0017】
また、分周数設定レジスタにより任意の周波数に設定ができることから、イメージ信号とローカル信号との周波数差と、模擬イメージ信号と模擬ローカル信号との周波数差とが等しくなるよう任意の周波数の信号を生成することができるという効果を有する。
【0018】
第3の発明のフィルタ調整回路は、第1の発明と違う点は、模擬信号生成器をタイマで構成するということである。
【0019】
このような構成により、タイマで模擬イメージ信号と模擬ローカル信号とを生成し、直交復調器により生成されたI信号とQ信号との位相誤差や振幅誤差を補正するため、外部からの信号を入力することなく内部での信号生成によりイメージ除去効果の高いフィルタ調整を行うことができるという効果を有する。
【0020】
また、周波数設定レジスタにより任意の周波数に設定ができることから、イメージ信号とローカル信号との周波数差と、模擬イメージ信号と模擬ローカル信号との周波数差とが等しくなるよう任意の周波数の信号を生成することができるという効果を有する。
【0021】
第4の発明のフィルタ調整回路は、第1から第3の発明に対して、前記複素フィルタを制御する機能を具備したCPUを備えることにより、前記デジタル信号処理回路から出力されたRSSI値(無線通信機器が受信する信号の強度を測定するための信号)を取り込み、前記RSSI値が最小となるまで位相補正および振幅補正を行うことで、イメージ信号を効果的に除去できる複素フィルタに調整することを特徴とする。
【0022】
このような構成によりCPUによって、RSSI値が最小になったときの補正結果により複素フィルタを調整することができ、イメージ除去効率の高い複素フィルタに調整することができる。
【0023】
また、模擬信号生成器を用いたフィルタ調整ではPLLを使用せずにフィルタ調整が可能であるため、送信動作中にフィルタ調整を行うことができるという効果を有する。
【0024】
第5の発明の無線通信システムは、上記のいずれかのフィルタ調整回路を搭載し、無線送信中や受信開始前のPLLの安定待ち等の期間にフィルタ調整を実施しておくことで、安定した無線受信を実現できるように構成されているものである。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明は、模擬信号生成器と信号切り替え器とCPUとを備え、実際の信号である受信信号およびPLLで生成されたローカル信号が通過する経路と同じ経路に、模擬信号生成器で生成された信号を入力することで、位相誤差および振幅誤差のない信号によりイメージ除去効果の高いフィルタ調整回路を実現するという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態1におけるフィルタ調整回路を示すブロック図である。
【図2】図1中の模擬信号生成器の構成要素である分周器を示すブロック図である。
【図3】図1中の模擬信号生成器の他の構成要素であるタイマを示すブロック図である。
【図4】図3におけるタイマのタイミング波形図である。
【図5】本発明の実施の形態2におけるフィルタ調整回路を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態3における無線通信システムを示すブロック図である。
【図7】図6における親機と子機の動作状態を表すタイミングチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0028】
《実施の形態1》
図1は、本発明の実施の形態1におけるフィルタ調整回路の構成図である。図1のフィルタ調整回路は、模擬信号生成器100と、PLL101と、第1および第2の信号切り替え器102,104と、LNA103と、第1および第2のミキサ105a,105bを含む直交復調器105と、90°移相器106と、第1、第2および第3の増幅器(AMP)107a,107b,109と、複素フィルタ108と、ADC110と、デジタル信号処理回路111と、CPU112とから構成されている。
【0029】
CPU112は、模擬信号生成器100と、第1および第2の信号切り替え器102,104とを制御する。
【0030】
模擬信号生成器100は、実際の信号である受信信号S101の周波数とPLL101で生成されたローカル信号S100の周波数との差と同じ関係を持つ信号であるイメージ信号を模擬した模擬イメージ信号S102と、PLL101で生成されたローカル信号S100を模擬した模擬ローカル信号S103とを生成する。ここで、模擬イメージ信号S102と模擬ローカル信号S103とは、イメージ信号およびローカル信号S100よりも周波数の低い信号であり、模擬イメージ信号S102と模擬ローカル信号S103との周波数差が、イメージ信号とローカル信号S100との周波数差と等しくなるようにする。
【0031】
第1の信号切り替え器102は、CPU112の制御により、受信信号S101と模擬信号生成器100で生成された模擬イメージ信号S102とのいずれか一方を選択する。LNA103は、第1の信号切り替え器102で選択された信号を増幅する。第2の信号切り替え器104は、CPU112の制御により、PLL101で生成されたローカル信号S100と模擬信号生成器100で生成された模擬ローカル信号S103とのいずれか一方を選択する。
【0032】
第1のミキサ105aは、LNA103の出力と、PLL101で生成されたローカル信号S100と模擬信号生成器100で生成された模擬ローカル信号S103とのいずれか一方とを混合し、IF信号であるI信号S104を出力する。第2のミキサ105bは、LNA103の出力と、PLL101で生成されたローカル信号S100と模擬信号生成器100で生成された模擬ローカル信号S103とのいずれか一方を90°移相器106で振幅は変化させず位相のみを90°シフトさせた信号とを混合してIF信号であるQ信号S105を出力する。
【0033】
第1および第2の増幅器107a,107bは、直交復調器105から出力されたI信号S104およびQ信号S105を増幅する。複素フィルタ108は、第1および第2の増幅器107a,107bでそれぞれ増幅したI信号とQ信号とによりイメージ除去を行う。第3の増幅器109は、複素フィルタ108の出力を増幅する。ADC110は、第3の増幅器109により増幅された信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。
【0034】
デジタル信号処理回路111は、デジタル信号に変換された信号を処理する。具体的には、イメージ除去効果の高い複素フィルタ108に調整するために、デジタル信号処理の結果として出力されたRSSI値が最小となるまで複素フィルタ108の位相補正を行う。RSSI値が最小となったとき、位相誤差の補正が完了する。次に、振幅誤差の補正を行う。位相補正と同様に、デジタル信号処理回路111から出力されたRSSI値が最小となるまで複素フィルタ108の振幅補正を行う。RSSI値が最小となったとき、振幅誤差の補正が完了する。RSSI値が最小になったときの補正結果により複素フィルタ108を調整することで、イメージ除去効果の高い複素フィルタ108に調整することができる。
【0035】
以上のように構成された実施の形態1のフィルタ調整回路にて、CPU112の制御によりフィルタ調整モードが選択されている場合に、第1の信号切り替え器102により模擬信号生成器100で生成された模擬イメージ信号S102を選択し、第2の信号切り替え器104により模擬信号生成器100で生成された模擬ローカル信号S103を選択しフィルタ調整を行う。
【0036】
本実施の形態によれば、模擬信号生成器100と信号切り替え器102,104とCPU112とを備え、CPU112の制御によりフィルタ調整モードを選択し、模擬イメージ信号S102と模擬ローカル信号S103とを用いることで、イメージ除去効果の高いフィルタ調整を行うことができる。
【0037】
以下に、イメージ除去効果が高くなる理由を説明する。まず、模擬信号生成器100で生成された模擬イメージ信号S102をLNA103の前に第1の信号切り替え器102を備え入力することで、直交復調器105、増幅器107a,107b,109、複素フィルタ108による位相誤差および振幅誤差を補正することができる。また、模擬信号生成器100で生成された模擬ローカル信号S103をPLL101の後に第2の信号切り替え器104を備え入力することで、直交復調器105、90°移相器106、増幅器107a,107b,109、複素フィルタ108による位相誤差および振幅誤差を補正することができる。
【0038】
つまり、模擬信号生成器100を用いてフィルタ調整を行うことで、位相誤差および振幅誤差のない信号を、実際の信号である受信信号S101およびPLL101で生成されたローカル信号S100が通過する経路と同じ経路に入力するため、受信信号S101やローカル信号S100の位相誤差および振幅誤差なしに各アナログ回路素子の誤差を補正することができる。
【0039】
また、模擬信号生成器100を用いることで内部での信号生成が可能であるため、外部からの信号を入力することなくフィルタ調整を行うことができることから、温度変化および電源電圧変化といった使用環境に応じたフィルタ調整を容易に行うことができる。
【0040】
また、模擬信号生成器100を用いたフィルタ調整モードでは、PLL101を使用せずにフィルタ調整が可能であるため、送信動作中にフィルタ調整を行うことが可能である。そのため、送信動作中にフィルタ調整を行うことで、常に最適な状態で受信を行うことができ、フィルタ調整に要する時間を考慮することなくシステム開発を行うことができる。
【0041】
さて、図1中の模擬信号生成器100は、分周器を用いて構成することができる。図2は、分周器の構成図である。分周器は、以下の説明のように任意の周波数信号を出力することができる。分周数設定レジスタ200は、任意の周波数信号を生成するための分周数を設定することができる。分周回路201は、分周数設定レジスタ200で設定した分周数により入力周波数を分周することができる。
【0042】
この機能を用いることで、実際の信号である受信信号S101の周波数とPLL101で生成されたローカル信号S100の周波数との差と同じ関係を持つ信号であるイメージ信号を模擬した模擬イメージ信号S102と、PLL101で生成されたローカル信号S100を模擬した模擬ローカル信号S103とを生成する。しかも、既に分周器を搭載している回路であれば、回路追加する必要がないため回路面積を圧迫することがない。
【0043】
図1中の模擬信号生成器100は、タイマを用いても構成することができる。図3はタイマの構成図、図4はタイマのタイミング波形図である。タイマは、以下の説明のように任意の周波数信号を出力することができる。周波数設定レジスタ300は、任意の周波数信号を生成するための設定値を設定することができる。カウンタ301は、周波数設定レジスタ300に設定した値までカウントアップし、設定値と一致したらクリアする動作を繰り返す。カウンタ301をクリアすると、タイマ出力が反転するため、周波数設定レジスタ300に設定した値の2倍の周期の信号を生成することができる。
【0044】
この機能を用いることで、実際の信号である受信信号S101の周波数とPLL101で生成されたローカル信号S100の周波数との差と同じ関係を持つ信号であるイメージ信号を模擬した模擬イメージ信号S102と、PLL101で生成されたローカル信号S100を模擬した模擬ローカル信号S103とを生成する。
【0045】
《実施の形態2》
図5は、本発明の実施の形態2におけるフィルタ調整回路の構成図である。実施の形態1の構成において、CPU112に複素フィルタ108を制御する機能を追加したものである。
【0046】
以上のように構成されたフィルタ調整回路では、CPU400の制御により、フィルタ調整モードが選択されている場合は、模擬信号生成器100で生成された模擬イメージ信号S102および模擬ローカル信号S103を用いてフィルタ調整を行う。
【0047】
イメージ除去効果の高い複素フィルタ108に調整するために、デジタル信号処理回路111から出力されたRSSI値(無線通信機器が受信する信号の強度を測定するための信号)をCPU400に取り込み、RSSI値が最小となるまで複素フィルタ108の位相補正を行う。RSSI値が最小となったとき、位相誤差の補正が完了する。
【0048】
次に、振幅誤差の補正を行う。位相補正と同様に、デジタル信号処理回路111から出力されたRSSI値をCPU400に取り込み、RSSI値が最小となるまで複素フィルタ108の振幅補正を行う。RSSI値が最小となったとき、振幅誤差の補正が完了する。
【0049】
CPU400の機能により、RSSI値が最小になったときの補正結果により複素フィルタ108を調整することができ、イメージ除去効率の高い複素フィルタ108に調整することができる。
【0050】
フィルタ調整モードにおいて調整された最適値は、CPU400の制御により通常モードに切り替えた後も複素フィルタ108内のレジスタに保持される。そして、フィルタ調整モード解除後、通常モードに切り替えた場合、模擬信号生成器100は非動作状態となる。
【0051】
なお、位相補正と振幅補正とを1回ずつ行ったが、補正が最適ではない場合、複数回実行してもよい。
【0052】
《実施の形態3》
図6は、本発明の実施の形態3における親機と複数の子機との間で通信を行う無線通信システムの構成図である。図6において、無線通信システム600の各通信機は、無線アンテナ500と、送信信号と受信信号とを切り替えるRFスイッチ501と、フィルタ調整回路を搭載した無線通信用マイコン502とから構成されている。
【0053】
本実施の形態で説明する無線通信システム600では、親機が一定時間間隔で子機に対して無線送信を実施し、子機は自らが受信すべき信号が送信されているか確認を行い、自らが受信すべき信号が送信されていることが確認できた場合において、データを受信するシステムとする。子機において、自らが受信すべき信号が送信されているかの確認は、RSSI値を取得し、規定した値以上のRSSI値であった場合に、受信すべき信号が送信されていると判定する。
【0054】
図7は、親機と子機の動作状態を表すタイミングチャート図である。自らに対する親機からの送信電波はシステムとして予め決められた間隔でのみ送信されるので、常に電波の確認を行う必要はないため、送信される間隔よりも短い間隔でスタンバイと電波確認とを繰り返すことで、消費電流を抑えるシステムが一般的な間欠通信システムに広く用いられている。
【0055】
電波確認および無線受信後には、スタンバイにしているため、電波確認する度に、受信に必要な各種設定の実施およびPLLの安定待ちを行う必要がある。
【0056】
そこで、PLLの安定待ち時間を利用して、無線通信用マイコン502に搭載しているフィルタ調整回路によってフィルタ調整を実施すれば、温度や動作電圧が変化していても、模擬イメージ信号および模擬ローカル信号を内部で生成でき、リアルタイムで調整できるため、フィルタを常に最適な状態で使用することができる。
【0057】
また、PLLの安定待ち時間を利用することから、システムとして新たにフィルタを調整する期間を設ける必要がなく、安定した無線通信を行うことができる。
【0058】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係るフィルタ調整回路は、例えば分周器により生成された模擬イメージ信号と模擬ローカル信号とを用いてフィルタ調整を行い、イメージ除去効率の高いフィルタを実現するものであり、無線通信用のフィルタ等において有用である。
【符号の説明】
【0060】
100 模擬信号生成器
101 位相同期ループ(PLL)
102,104 信号切り替え器
103 低雑音増幅器(LNA)
105 直交復調器
105a,105b ミキサ
106 90°位相器
107a,107b,109 増幅器
108 複素フィルタ
110 ADコンバータ(ADC)
111 デジタル信号処理回路
112,400 中央処理装置(CPU)
200 分周数設定レジスタ
201 分周回路
300 周波数設定レジスタ
301 カウンタ
500 無線アンテナ
501 RFスイッチ
502 無線通信用マイコン
600 無線通信システム
S100 ローカル信号
S101 受信信号
S102 模擬イメージ信号
S103 模擬ローカル信号
S104 I信号
S105 Q信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央処理装置を用いて制御するフィルタ調整回路であって、
前記中央処理装置の制御により、実際の信号である受信信号の周波数と位相同期ループで生成されたローカル信号の周波数との差と同じ関係を持つ信号であるイメージ信号を模擬し周波数を低減した模擬イメージ信号と、前記位相同期ループで生成されたローカル信号を模擬し周波数を低減した模擬ローカル信号とを生成し、かつ、前記イメージ信号と前記ローカル信号との周波数差と、前記模擬イメージ信号と前記模擬ローカル信号との周波数差とを等しくする模擬信号生成器と、
前記中央処理装置の制御により、前記受信信号と前記模擬イメージ信号とのいずれか一方を選択する第1の信号切り替え器と、
前記第1の信号切り替え器から入力された信号を増幅する低雑音増幅器と、
前記中央処理装置の制御により、前記位相同期ループで生成されたローカル信号と前記模擬ローカル信号とのいずれか一方を選択する第2の信号切り替え器と、
前記低雑音増幅器の出力と、前記ローカル信号と前記模擬ローカル信号とのいずれか一方とを混合して中間周波数信号であるI信号を出力する第1のミキサと、
前記低雑音増幅器の出力と、前記ローカル信号と前記模擬ローカル信号とのいずれか一方を90°移相器で振幅は変化させず位相のみを90°シフトさせた信号とを混合して中間周波数信号であるQ信号を出力する第2のミキサと、
前記I信号を増幅する第1の増幅器と、
前記Q信号を増幅する第2の増幅器と、
前記I信号およびQ信号からイメージ信号を除去する複素フィルタと、
前記複素フィルタからの出力を増幅する第3の増幅器と、
前記第3の増幅器で増幅された信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するADコンバータと、
前記ADコンバータによりデジタル信号に変換された信号をデジタル信号処理するデジタル信号処理回路とを備えたことを特徴とするフィルタ調整回路。
【請求項2】
請求項1記載のフィルタ調整回路において、
前記模擬信号生成器は、分周器を具備することを特徴とするフィルタ調整回路。
【請求項3】
請求項1記載のフィルタ調整回路において、
前記模擬信号生成器は、タイマを具備することを特徴とするフィルタ調整回路。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルタ調整回路において、
前記複素フィルタを制御する機能を前記中央処理装置に具備することにより、前記デジタル信号処理回路から出力されたRSSI値を取り込み、前記RSSI値が最小となるまで位相補正および振幅補正を行うことで、イメージ信号を効果的に除去できる複素フィルタに調整することを特徴とするフィルタ調整回路。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルタ調整回路を搭載し、フィルタ調整を実施することで、安定した無線受信を実現する無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−249905(P2011−249905A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118211(P2010−118211)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】