説明

フィルムに適するエチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体の組成物

少なくとも1つのエチレン/α−オレフィン共重合体を含むフィルムに適する組成物であり、ここで、前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、例えば、約1.7から約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(g/cm3)を有することができ、前記Tmおよびdの数値は以下の関係に相当する。
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体組成物およびそれらから製造されるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食料品目、例えば鶏肉、野菜、生鮮赤身肉およびチーズ、ならびに食品でない工業製品および小売品は、収縮、スキン、ストレッチおよび/または真空ラップ法によって包装される。収縮包装法は、熱収縮性フィルム材料から二次加工したバッグに品物(単数または複数)を入れること、次に、そのバックを閉じるまたはヒートシールすること、およびその後、そのバックを収縮させ、そのバッグとその品物とを密接させるために十分な熱にそのバッグを暴露することを含む。この熱は、従来の熱源、例えば、熱風、赤外線、熱水、急燃焼フレームまたはこれらに類するものによって生じさせることができる。食品の収縮ラッピングは、鮮度を保つために役立ち、魅力的であり、衛生的であり、そして包装された食品の品質のより詳細な検分を可能にする。工業製品および小売品の収縮ラッピングは、当分野および本明細書において代替的に工業用および小売用一括包装とも呼ばれ、これは、製品の清浄度を保ち、ならびに計算のための従来の括束手段でもある。
【0003】
収縮包装法は、一般には定着剤でコーティングされている多孔または穴あき板紙の上に包装すべき製品を置くこと、次に、その負荷された板紙をスキン包装機のプラテンに移動させ、そこでスキン包装用フィルムを、それが軟化して垂れ下がり、弛緩して、そしてその負荷された板紙の上に再び垂れ下がるまで加熱することを含む。その後、真空によりそのフィルムをその製品の周りに引き下ろして、「スキン」密着包装を生じさせる。スキン包装は、消費者向小売市場と輸送市場の両方に役立っている。輸送市場において、スキン包装は、輸送および配送中の工業製品を保護する。小売市場において、スキン包装は、消費財の損傷および盗難を防ぎ、ならびに包装製品の販売可能性を最大にする「ディスプレイアピール」をもたらす。すべてではないにせよ、大部分の非食品スキン包装用フィルムは単層であるが、多層スキン包装用フィルムは、真空包装による、特に真空スキン包装による食品の保護に有用である。
【0004】
食料品目は、ストレッチラッピング法によっても包装され、この方法は、食品を充填した製紙用パルプまたは発泡ポリスチレントレーの上にフィルムを手作業で引っ張ること(またはそのトレーを自動的に上向きに押してそのフィルムを引き伸ばすこと)、そしてその後、その引き伸ばされたフィルムの端を通常はそのトレーの裏面でヒートシールすること、およびそのフィルムを、その弾性によりピンと張られた状態にしておくことを含む。非食品用ストレッチラッピングにういては、ストレッチラップフィルムを製品の上および/または周りに手作業でまたは自動的に引っ張り、引き伸ばし、そしてその後、通常はラッピングされる製品または品物に向かって圧力を掛けることによって、そのフィルムの自由末端を、その製品に既に巻き付けられているフィルムのもう一方の部分にまたはその製品それ自体に粘着または付着させる。生鮮食品のストレッチラップ包装は消費者向小売市場に特有のものであり、所望の鮮明な赤色へと生鮮赤身肉をブルーム(bloom)させることができ、ならびに一部の野菜を適切に呼吸させることができる。非食料品目のストレッチラッピングは、輸送市場に対応し、これには、品物のパレットラッピング、ならびに酸性雨、道路の小片、破片、汚損などに起因する損傷から外部塗装仕上げを保護するための配送中の新車のラッピングが挙げられる。
【0005】
ストレッチラップ包装が、一般には遮断フィルム層を含まず、食料品目と非食料品目の両方に有用であるのに対し、真空包装は、ガスまたは酸素遮断フィルム層を含み、一般には赤身肉、加工肉およびチーズ用に指定されるが、臭いに敏感なまたは臭いを発生する非食料品目、例えばシーダー木片、を包装するために使用することもできる。当分野では真空成形包装とも呼ばれる真空スキン包装を含めて、真空包装には幾つかの方法および変型がある。1つの方法は、例えば、熱で軟化された上側フィルムウェブと下側フィルムウェブを真空下、チャンバの中で一緒にし、それらのウェブ間に製品を充填し;その後、それらのウェブの端を互いにヒートシールし、その後、製品を収容している空間を排気するか、ガスフラッシュすることを含む。真空包装では、典型的に、下側ウェブが、包装される食料品目の形を捕捉する。
【0006】
収縮ラッピング法は、選択されたフィルム材料の熱収縮特性に基づく一方で、ストレッチ上包み(stretch overwrapping)は、そのフィルム材料の弾性に基づく。逆に言えば、スキン包装の成功は、下塗りされた板紙へのフィルム材料の接着と、そのフィルムを2回垂れ下がらせるために必要な時間(サイクル時間)の量とに基づく。スキン包装と同様に、真空包装の成功は、包装すべき製品の周りに真空によって延伸する(または空気圧によって押す)前にフィルムウェブが十分に軟化するために必要な時間に依存する。Plastic Design and Processing, November 1980, page 4 に教示されているように、赤外熱吸収バンドが大きいおよび/またはVicat軟化点が低いフィルム材料ほど、昇温および軟化が速い傾向があり、その結果、スキンおよび真空包装におけるサイクル時間を速くすることができる。一般に、例えばエチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマー、エチレンアクリル酸(EAA)コポリマーおよびアイオノマーなどの極性ポリマーは、本発明の実質的に線状のエチレンポリマー(substantially linear ethylene polymers)または不均一LLDPE(heterogeneous LLDPE)などの非極性ポリマーより大きい赤外熱バンドを保有するであろう。さらに、アイオノマーは、アイオノマー化それ自体に起因して、それらそれぞれの基礎コポリマーより大きい赤外熱バンドを示す。
【0007】
4つすべての方法についての包装またはラッピングの成功は、配送、取り扱いおよび/または陳列中、包装製品の完全性を維持するようなフィルム材料それら自体の靭性および耐酷使または爆縮性に依存する。しかし、靭性および耐酷使性は、熱収縮もしくは真空成形操作中、またはその後の包装品の取り扱いおよび配送中にフィルムウェブまたは二次加工バッグに穴をあけることがある深い空洞および鋭い露出した骨ならびに露出した端を有する肉および他の食品の切り身の包装を必要とすることが多い、食品収縮ラッピングおよび真空包装において特に重要である。時期尚早の穴あきを回避するために、フィルム製造業者は、費用のかかる実施にたよって、例えば、より厚いフィルムおよびバッグを使用して、またはFregusonにより米国特許第4,755,403号に記載されているようにパッチのような様式でバッグの重要な接点に追加のフィルム層を使用して、またはクロスプライもしくは非平行層構造を使用することにより、包装を強化する。同様に、公知のフィルム材料の穴あきおよび他の酷使または爆縮に対する耐性の特性を「人工的に」強化するために、食品包装業者は、露出した骨端を布、成形プラスチック製品または他の材料で規定通りに包んでまたはキャップしている。
【0008】
特に、壊れやすい品目またはつぶれやすいもしくは曲がりやすい品目、例えば紙製品において、重要な収縮括束およびスキン包装の特性は、張力、すなわちフィルムが包装される物品および/または板紙に対して発揮する力である。この特質は、当分野では収縮張力として知られており、大き過ぎる収縮張力を有するフィルムは、ひどい場合には包装された品物をその所期の目的に使用できなくさせることがある見苦しい縮れまたは板紙の反りを伴う収縮またはスキン包装を一定して生じさる。美的に見苦しいことに加えて、縮んだまたは反った品物は、陳列棚に均一に積み重ねることが難しい。
【0009】
フィルムの光学特性は、小売品「購入時」収縮、スキン、ストレッチおよび真空ラップ包装において重要であることが多い。場合によっては、コンタクトクリア性および/または透視鮮明度が良好なほど、フィルムの内部曇りが低く、フィルムのつやまたは輝きが高く、その包装品が、購入する可能性のある人たちを、より詳細な検分のためにひきつける可能性が高くなる。さらに、一般に、一部の消費者は、包装用フィルムの光学特性に主として基づく包装の美しさを、購入することとなる品物の品質と直接結びつける。
【0010】
ストレッチラッピングに特有のもう1つの重要な小売品「購入時」要件は、購入する見込みのある人たちによる検分によって変形したときに、へこみやくぼみを残したままにするのではなく、「素早く回復する」フィルムの能力である。この特質は、フィルム材料の弾性回復に基づくものであり、弾性回復率が十分に高い場合、その後の購入する見込みのある人たちは、たとえそれが手を触れられ、繰り返し拒否されたものであったとしても、包装の外観によって不必要な偏見を持たない。
【0011】
4つすべての包装およびラッピング法の総合的成功に影響を及ぼし得るさらにもう1つの重要なフィルム材料特性は、周知のバブル、キャストまたはシート押出法によるフィルム加工中のそのフィルム樹脂の押出加工性である。良好な加工性は、比較的低い押出エネルギー使用量として、より平坦なフィルム表面として、ならびにより高いブローアップ比、延伸速度および/またはフィルム厚であっても安定なバブルまたはウェブとして証明される。より円滑で、より安定なフィルム製造操作の恩恵は非常に多数存在し、それらとしては、フィルムの幅および厚さが、一般に、より均一であること、耳切りの必要が低減されること(これは、廃棄物を減少させる)、巻取および巻出操作が、一般に、より円滑であること、フィルムのしわが、より少ないこと、ならびに最終包装の品質または外観が改善されることが挙げられる。
【0012】
高圧重合エチレンホモポリマーおよびコポリマー、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)およびエチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーは、一般に、比較的高い長鎖分枝度を有する結果として押出中に良好な加工性を示すが、線状オレフィンポリマー、例えば、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)および超超低密度ポリエチレン(ULDPE)[あるいは、当分野において超低密度ポリエチレン(VLDPE)として知られている線状オレフィンポリマー]は、ポリマー溶融物流をより良好に均質化するまたは安定させるため、ならびにより低いエネルギー使用量およびより平坦なポリマー表面を可能にするために相当複雑な押出スクリュー設計、例えば、バリアスクリュー、Maddock混合部を有するスクリューおよび他の同様の変型、を利用した場合でさえ、並から下限に近い(fair-to-marginal)加工性を示す。さらに、公知EVA、ULDPEおよびLLDPE材料の靭性の特性を最大にしようとする場合、非常に高分子量のグレード、例えば、0.5g/10分以下のメルトインデックス(I2、ASTM D-1238(190℃/2.16kg)に従って測定した場合のもの)を利用することが一般的であるが、これは、必然的に加工性の困難さを増す。
【0013】
4つすべての包装およびラッピング法に関係する多様な性能要件を満たすために、様々なフィルム材料が、単層包装と多層包装の両方のために単一成分としておよびブレンド併用物で使用されている。例えば、米国特許第5,032,463号において、Smithは、エチレン/1−ブテン超超低密度ポリエチレンとエチレン/1−ヘキセン超超低密度ポリエチレンのブレンドを含む二軸延伸単層および多層フィルムを開示している。
【0014】
もう1つの例として、米国特許第5,059,481号において、Lustigらは、遮断コア層、エチレン/酢酸ビニル共重合体中間層、および外層としてULDPE/EVAブレンドを有する、二軸延伸超超低密度ポリエチレン単層および多層包装用フィルムを記載している。米国特許第4,863,769号において、Lustigらは、冷凍鶏肉を包装するためのバッグとしてのこれらの二軸延伸超超低密度フィルムの使用を開示しており、米国特許第4,976,898号において、Lustigらは、「ダブルバブル」法を用いて二軸延伸超超低密度ポリエチレンフィルムを作製できることを開示している。
【0015】
もう1つの例では、欧州特許出願第0 243 510号および米国特許第4,963,427号において、Bottoらは、食品の真空スキン包装に特に有用である、アイオノマー、EVAおよびHDPEから成る多層スキン包装用フィルムを記載している。
【0016】
先行技術フィルム材料は、様々な度合いの靭性、耐爆縮性、低温収縮特性および製袋ヒートシール性能を有するが、環境資源低減を目的として、原価効率のためまたは他の考えでフィルム厚をダウンゲージしたとき、バッグの穴あきを減少させるためまたは穴あきに対する耐性レベルを維持するために、いっそう強靭なフィルム材料が、収縮、スキンおよび真空包装において望まれている。さらに、エチレンのフリーラジカル高圧重合により製造された低密度ポリエチレン(LDPE)は、工業用(輸送用)収縮およびスキン包装用途では十分に機能しているが、LDPEの光学特性は、一般に、消費者向小売品包装用途においては十分ではなく、小売品スキン包装の場合、包装業者は、所望の光学的アピールのために費用の嵩むフィルム材料、例えばE.I.Dupontにより供給されているSurlyn(商標)アイオノマー、に未だに頼っている。しかし、その費用の嵩むアイオノマー製品でさえ、スキン包装不良、例えば、劣った耐二軸引裂/切断性および不十分な延伸性を示し、これは、多数の品目を単一の板紙上に包装する場合、美的に快くないうねおよび/またはブリッジを生じさせることがある。
【0017】
縦方向においても横方向においても劣った耐引裂/切断性を有することは、明らかにアイオノマーの欠点であるが、一方の方向またはもう一方の方向における耐引裂/切断性低減には利点がある、すなわち、不正開封を防ぐための特質を維持しながらその包装品の容易な開封を助長する。
【0018】
食品をストレッチラッピングするためのポリ塩化ビニル(PVC)フィルムの代替品の探索は、費用の嵩むフィルム材料に頼らなければならない包装のもう1つの例である。こうした代替品は、一般にはオレフィン多層フィルムであった。しかし、一般に、PVCは望ましくない可塑剤移行の傾向を有するため、ならびに塩素化ポリマーに関して高まりつつある環境的関心のため、この探索は重要である。PVCと同様の素早い回復または弾性回復を有する様々な多層フィルムが(例えば、米国特許第5,112,647号および同第5,006,398号ならびにEPO 0 243 965、EPO 0 333 508およびEPO 0 404 969において)開示されているが、これらの溶液の多くは、エチレンコポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル(EVA)およびエチレンアクリル酸(EAA)コポリマー、との共押出を必要とする。これらの極性コポリマーの使用は、熱安定性とリサイクル/耳取りの不適合性をはじめとする加工制限をもたらす。
【0019】
公知のオレフィンポリマーに対する別の望ましい改善は、EPO 0 404 368に開示されており、これには、チーグラー触媒エチレン・α−オレフィンコポリマー、例えば、エチレン/1−ブテン、エチレン/1−ヘキサンおよびエチレン/1−オクテンコポリマーは、単純ブローフィルム押出により加工される場合、適切な(特に横方向の)収縮特性を有するフィルム材料を生じさせるためにLDPEとブレンドする必要があることが示されている。
【0020】
収縮包装用の改善された靭性および耐酷使または爆縮性を有するフィルム材料を生じさせるには、縦方向と横方向の両方における良好な低温熱収縮性能も生じさせなければならない。また、カールまたは反りが無い収縮およびスキン包装のためには、収縮張力を低レベルで維持しなければならず、所望の自由収縮特性を達成するためには、フィルム材料は、単純バブル押出プロセスにおいてまたはより複雑なプロセス、例えば米国特許第3,555,604号(この開示は、本明細書において参照によって援用される)においてPahlkeにより記載されているダブルバブルプロセスにおいてフィルムの二次加工中に発生する物理的二軸延伸に耐えるために十分な形態を保有しなければならず、耐えるために十分強くなければならない。改善されたフィルム材料は、公知のフィルム材料に相対して、特に、米国特許第5,059,481号、同第4,863,769号および同第4,976,898号においてLustigらが開示している超低密度ポリエチレン(VLDPE)材料およびフィルムに相対して、良好な加工性および光学特性も示さなければならない。
【0021】
三井石油化学工業株式会社(Mitsui Petrochemical(現、三井化学株式会社))は、超低弾性率VLDPE材料の1類であると考えられる、エチレンとより高級なα−オレフィンを重合させることにより製造した製品を、「Tafmer(商標)」という商標で、10年より長きにわたり販売している。Tafmer(商標)グレードの一部は、多層フィルム包装構造で使用するために市販されている。例えば、三井石油化学工業株式会社(Mitsui Petrochemical Industries(現、三井化学株式会社))に譲渡された米国特許第4,429,079号(Shibataら)(この開示は、本明細書において参照によって援用される)は、改善された特性、特に、取り扱い中にピンホール形成を阻止するための改善された低温ヒートシール適性および曲げ靭性、を有する組成物を開示しており、この場合、成分(A)として標識されたランダムエチレンコポリマー(115℃から130℃の、1つ、2つまたはそれ以上の融点を有する従来のLLDPE)を、成分(B)として標識されたもう1つのランダムエチレンコポリマー(40℃から100℃の単一の融点を有するもの)とブレンドして、成分(B)がその全組成物の60重量パーセントを超えない組成物を生じさせる。しかし、改善されたヒートシール適性および可撓性を有するにもかかわらず、Tafmer(商標)製品は、卓越した耐乱用性および収縮特性を有するものとしては一般に認知または市販されていない。単一融点を有するTafmer(商標)は、より以前に米国特許第3,645,992号においてElstonが記載した均一分枝線状ポリエチレン(homogeneously branched linear polyethylenes)であり、これらは、バナジウム触媒を使用する関連重合プロセスによって製造される。
【0022】
Exxon Chemical Companyは、三井石油化学工業株式会社のTafmer(商標)製品に類似した製品を最近紹介しており、Exxonは、シングルサイトメタロセン触媒の存在下でエチレンとα−オレフィン(例えば、1−ブテン n)−ヘキセン)を重合させることによりそれを作製した。1991年9月22〜27日のテキサス州ダラスにおけるthe 1991 IEEE Power Engineering Society Transmission and Distribution Conferenceにおいて提示された論文("New Specialty Linear Polymer (SLP) For Power Cables", printed in the proceeding on pp. 184-190)において、Exxon Chemical CompanyのMonica HendewerkおよびLawrence Spenadelは、シングルサイトメタロセン触媒技法を用いて製造したと言われているExxonのExact(商標)ポリオレフィンポリマーが、ワイヤーおよびケーブルコーティング用途において有用であることを報告した。また、the 1991 Polymers, Laminations & Coatings Conference Proceedings, pp. 289-296(Dirk G. F. Van der Saden and Richard W. Halle による "A New Family of Linear Ethylene Polymer Provides Enhanced Sealing performance(February 1992 TAPPI Journal においても公開))において、およびANTEC '92 Proceedings, pp. 154-158(D. Van der Sanden and R. W. Halle による "ExactTM Linear Ethylene Polymers for Enhanced Sealing Performance")において、Exxon Chemicalは、シングルサイトメタロセン触媒を使用して製造した彼らの新たな狭い分子量分布のポリマーを「官能基および長鎖分枝を含有しない線状骨格樹脂」と説明している。Exxonにより製造されたポリマーから作られたフィルムは、熱間粘着性およびヒートシール曲線により測定した場合、封止性に関する利点を有するとも言われているが、これらの出版物は、収縮特性を論じていない。この新規Exxonポリマーは、線状であると言われており、狭い分子量分布を有すると言われており、ならびにその狭い分子量分布のため、「メルトフラクチャーの可能性」を有するとも言われている。Exxon Chemicalは、「狭いMWDのポリマーの方が、多少、加工が難しい」ことを認知している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従って、多数の材料が、フィルム用途、例えば、可撓性包装またはラッピングのために利用されているが、例えば、米国特許第4,863,769号、同第4,976,898号および同第5,059,481号にLustigらによって記載されているものなどの線状骨格を有するVLDPEオレフィンポリマーに相対して、回復率、収縮特性、真空延伸性、耐酷使または爆縮性および加工性の点で必要とされる特定の改善を有する、包装用フィルムに適する組成物およびそれらから二次加工されるバッグまたはラップに対する要求は、いまだ存在する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、フィルム構造に適する多数の組成物に関する。本組成物は、1つまたはそれ以上のエチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体を含む。本組成物は、1つまたはそれ以上の他のポリマー、ならびに1つまたはそれ以上の添加剤をさらに含む。適するフィルム構造には、単層フィルムと多層フィルムの両方が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
一般定義
「ポリマー(polymer)」は、同じまたは異なるタイプにかかわらず、モノマーを重合することによって作製されたポリマー化合物を意味する。「ポリマー」という総称は、用語「ホモポリマー(homopolymer)」、「コポリマー(copolymer)」、「ターポリマー(terpolymer)」ならびに「共重合体(interpolymer)」も含む。
【0026】
「共重合体(interpolymer)」は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されたポリマーを意味する。「共重合体」という総称は、用語「コポリマー」(これは通常は、2つの異なるモノマーから調製されたポリマーを指すために利用される)、ならびに用語「ターポリマー」(これは通常は、3つの異なるモノマーから調製されたポリマーを指すために利用される)も含む。この「共重合体」は4つまたはそれ以上のタイプのモノマーを重合することによって作製したポリマーも含む。
【0027】
「エチレン/α−オレフィン共重合体(ethylene/α-olefin interpolymer)」という用語は一般に、エチレンおよび3個以上の炭素原子を有するα−オレフィンを含むポリマーを指す。好ましくは、エチレンはポリマー全体の大部分のモル画分を構成し、すなわちエチレンはポリマー全体の少なくとも約50モルパーセントを構成する。より好ましくは、エチレンは少なくとも約60モルパーセント、少なくとも約70モルパーセント、または少なくとも約80モルパーセントを構成し、ポリマー全体の実質的な残りは少なくとも1つの他のコモノマーを含み、このコモノマーは好ましくは3個以上の炭素原子を有するα−オレフィンである。多くのエチレン/オクテンコポリマーでは、好ましい組成物は、ポリマー全体の約80モルパーセントを超えるエチレン含量およびポリマー全体の約10〜約15モルパーセントの、好ましくは約15〜約20モルパーセントのオクテン含量を含む。ある実施形態では、エチレン/α−オレフィン共重合体は、低収量または微量で、あるいは化学工程の副生成物として生じた共重合体を含まない。エチレン/α−オレフィン共重合体は1つ以上のポリマーとブレンドできるが、このように製造されたエチレン/α−オレフィン共重合体は実質的に純粋であり、重合工程の反応生成物の主要な成分を構成することが多い。
【0028】
エチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレンおよび1つ以上の共重合性α−オレフィンコモノマーを重合化された形態で含み、化学的または物理的特性が異なる2つ以上の重合化されたモノマー単位の複数のブロックまたはセグメントによって特徴付けられる。すなわちエチレン/α−オレフィン共重合体は、ブロック共重合体、好ましくはマルチブロック(multi-block)共重合体またはマルチブロックコポリマーである。「共重合体」および「コポリマー」という用語は、本明細書では互換的に使用される。ある実施形態では、マルチブロックコポリマーは、以下の式によって表すことができる:
(AB)n
ここでnは少なくとも1、好ましくは1を超える整数、例えば2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100以上であり、「A」は、ハードなブロックまたはセグメントを示し、「B」はソフトなブロックまたはセグメントを示す。好ましくはAおよびBは、実質的に直鎖の様式で連結され、実質的に分枝した様式または実質的に星型の様式とは対照的である。他の実施形態では、AブロックおよびBブロックはポリマー鎖に沿ってランダムに分布される。言い換えれば、ブロックコポリマーは通常、以下のような構造を持たない。
【0029】
AAA−AA−BBB−BB
なお他の実施形態では、ブロックコポリマーは通常、異なるコモノマー(単数または複数)を含む第3のタイプのブロックを有さない。また他の実施形態では、ブロックAおよびブロックBのそれぞれが、ブロック内に実質的にランダムに分布されたモノマーまたはコモノマーを有する。言い換えれば、ブロックAもブロックBも、ブロックの残りとは実質的に異なる組成を有する、別個の組成の2つまたはそれ以上のサブセグメント(またはサブブロック)、例えばチップセグメントを含まない。
【0030】
一般に、マルチブロックポリマーは、様々な量の「ハード」セグメントおよび「ソフト」セグメントを含む。「ハード」セグメントは、そのポリマーの重量を基準にして約95重量パーセントより多い量、好ましくは約98重量パーセントより多い量でエチレンが存在する重合単位のブロックを指す。言い換えると、ハードセグメント中のコモノマー含量(エチレン以外のモノマーの含量)は、そのポリマーの重量を基準にして約5重量パーセント未満、好ましくは約2重量パーセント未満である。ある実施形態において、ハードセグメントは、すべてまたは実質的にすべてエチレンを含む。一方、「ソフト」セグメントは、そのコモノマー含量(エチレン以外のモノマーの含量)が、そのポリマーの重量を基準にして約5重量パーセントより大きい、好ましくは約8重量パーセントより大きい、約10重量パーセントより大きい、または約15重量パーセントより大きい、重合単位のブロックを指す。ある実施形態において、ソフトセグメント中のコモノマー含量は、約20重量パーセントより大きくてもよく、約25重量パーセントより大きくてもよく、約30重量パーセントより大きくてもよく、約35重量パーセントより大きくてもよく、約40重量パーセントより大きくてもよく、約45重量パーセントより大きくてもよく、約50重量パーセントより大きくてもよく、または約60重量パーセントより大きくてもよい。
【0031】
ソフトセグメントは多くの場合、ブロック共重合体の総重量の約1重量パーセント〜約99重量パーセント、好ましくはブロック共重合体の総重量の約5重量パーセント〜約95重量パーセント、約10重量パーセント〜約90重量パーセント、約15重量パーセントから約85重量パーセント、約20重量パーセント〜約80重量パーセント、約25重量パーセント〜約75重量パーセント、約30重量パーセント〜約70重量パーセント、約35重量パーセント〜約65重量パーセント、約40重量パーセント〜約60重量パーセント、または45重量パーセント〜約55重量パーセントでそのブロック共重合体中に存在できる。逆に、ハードセグメントは同様の範囲で存在し得る。ソフトセグメント重量パーセンテージおよびハードセグメント重量パーセンテージは、DSCまたはNMRから得たデータに基づいて計算できる。そのような方法および計算は、Colin L. P. Shan, Lonnie Hazlitt, et.al.の名前で2006年3月15日に出願され、Dow Global Technologies Inc.に譲渡された、「Ethylene/α-Olefin Block Interpolymers」という題名の、同時出願米国特許出願第______号(判明時に挿入)、出願人整理番号385063-999558に開示されており、その開示はその全体が参照によって本明細書に援用される。
【0032】
「結晶性(crystalline)」という用語を使用する場合、この用語は、示差走査熱量測定(DSC)または同等の技術によって決定される、一次転移または結晶融点(Tm)を保有するポリマーを指す。この用語は、「半結晶性(semicrystalline)」という用語と同義的に用いられ得る。「非結晶性、アモルファス(amorphous)」という用語は、示差走査熱量測定(DSC)または同等の技術によって決定される、結晶融点(Tm)を欠くポリマーを指す。
【0033】
「マルチブロックコポリマー」または「セグメント化コポリマー」という用語は、好ましくは直鎖方式で接合された2つまたはそれ以上の化学的に異なる領域またはセグメント(「ブロック」と呼ばれる)を含むポリマー、すなわちペンダント方式またはグラフト方式ではなく、重合エチレン官能基に関して末端間接合される化学的に識別された単位を含むポリマーを指す。好ましい実施形態では、ブロックは、それに包含されるコモノマーの量またはタイプ、そのような組成のポリマーに起因する密度、結晶化度の量、晶子サイズ、立体規則性のタイプまたは程度(アイソタクチックまたはシンジオタクチック)、位置規則性または位置不規則性、長鎖分枝または過剰分枝を含む分枝の量、均質性、または他のいずれかの化学的もしくは物理的特性が異なる。マルチブロックコポリマーは、コポリマーを作製する独自の工程による、両方の多分散インデックス(PDIまたはMw/Mn)の独自の分布、ブロック長分布および/またはブロック数分布によって特徴付けられる。さらに詳細には、連続工程で製造されるとき、ポリマーは望ましくは1.7〜2.9の、好ましくは1.8〜2.5の、より好ましくは1.8〜2.2の、最も好ましくは1.8〜2.1のPDIを有する。バッチまたはセミバッチ工程で製造されるとき、ポリマーは1.0〜2.9の、好ましくは1.3〜2.5の、より好ましくは1.4〜2.0の、最も好ましくは1.4〜1.8のPDIを有する。
【0034】
以下の説明では、本明細書で開示されるすべての数字は、「約(about)」または「おおよそ(approximate)」という単語がそれに関連して使用されるかどうかにかかわらず、おおよその値である。それらは1パーセント、2パーセント、5パーセント、または場合により10〜20パーセント変わることがある。下限RLおよび上限RUのある数値範囲が開示されるときは必ず、その範囲に当てはまるいずれかの数が詳細に開示される。詳細には、範囲内の次の数が詳細に開示される:R=RL+k*(RU−RL)、式中、kは1パーセントの増分で1パーセントから100パーセントまでの範囲で変化する変数であり、すなわちkは、1パーセント、2パーセント、3パーセント、4パーセント、5パーセント、…、50パーセント、51パーセント、52パーセント、・・・、95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセント、99パーセント、または100パーセントである。さらに上で定義した2個のR数によって定義されたいずれの数値範囲も、詳細に開示される。
【0035】
エチレン/α−オレフィン共重合体
本発明の実施形態において用いられるエチレン/α−オレフィン共重合体(「本発明の共重合体(inventive interpolymer)」、「本発明のポリマー(inventive polymer)」とも呼ばれる)は、エチレンおよび1以上の共重合可能なα−オレフィンコモノマーを重合化された形態で含み、化学的または物理的な特性が異なる2つ以上の重合化されたモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロック共重合体)、好ましくはマルチブロックコポリマーによって特徴付けられる。このエチレン/α−オレフィン共重合体は、下に記載されるような1つまたはそれ以上の態様によって特徴付けられる。
【0036】
一態様では、本発明の実施形態で用いられるエチレン/α−オレフィン共重合体は、約1.7〜約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(グラム/立方センチメートル)を有し、この変数の数値は:
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2、そして好ましくは、
Tm≧−6288.1+13141(d)−6720.3(d)2、そして好ましくは、
Tm≧858.91−1825.3(d)+1112.8(d)2
の関係に相当する。
【0037】
このような融点/密度の関係は、図1に図示される。融点が密度とともに低下するエチレン/α−オレフィンの従来のランダムコポリマーとは異なり、特に密度が約0.87g/cc〜約0.95g/ccである場合、本発明の共重合体(ひし形で示す)は、密度とは実質的に独立した融点を示す。例えば、このようなポリマーの融点は、密度が約0.875g/cc〜約0.945g/ccにわたる場合、約110℃〜約130℃の範囲である。ある実施形態では、このようなポリマーの融点は、密度が約0.875g/cc〜約0.945g/ccにわたる場合、約115℃〜約125℃の範囲である。
【0038】
別の態様では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、重合化された形態で、エチレンおよび1以上のα−オレフィンを含み、そして最高の示差走査熱量測定(「DSC」)ピーク温度から最高の結晶分析分別(Crystallization Analysis Fractionation)(「CRYSTAF」)ピークの温度を減算した温度として規定されるΔT(℃)および融解熱ΔH(J/g)によって特徴付けられ、そしてΔTおよびΔHの数値が、ΔHが130J/g以下の場合、以下の関係:
ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、そして好ましくは、
ΔT≧−0.1299(ΔH)+64.38、そしてより好ましくは、
ΔT≧−0.1299(ΔH)+65.95
を満たす。さらに、ΔTは、ΔHが130J/gより大きい場合、48℃以上である。CRYSTAFピークは、累積ポリマーのうちの少なくとも5%を用いて決定され(すなわち、このピークは、累積ポリマーの少なくとも5%に相当するはずである)、そしてこのポリマーの5パーセント未満が同定可能なCRYSTAFピークを有するならば、CRYSTAF温度が30℃であり、そしてΔHは、J/gである融解熱の数値である。より好ましくは、最高のCRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも10パーセントを含む。図2は、本発明のポリマーのプロットされたデータ、および比較例を示す。積分されたピーク面積およびピーク温度は、機器製造業者によって供給されるコンピュータ図形作成プログラムによって算出される。ランダムエチレン・オクテン比較例について示される対角線は、方程式ΔT=−0.1299(ΔH)+62.81に相当する。
【0039】
さらに別の態様では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、昇温溶離分別法(Temperature Rising Elution Fractionation)(「TREF」)を用いて分画される場合に40℃と130℃との間で溶離する分子画分を有し、この同じ温度の間で溶離する比較対象となるランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量よりも好ましくは少なくとも5パーセント高い、より好ましくは少なくとも10パーセント高いコモノマーモル含量を有するという点で特徴付けられ、ここで、この比較対象となるランダムエチレン共重合体は、同じコモノマー(単数または複数)を有し、かつメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)をそのブロック共重合体のものから10パーセント以内に有する。好ましくは、この比較対象となる共重合体のMw/Mnはまた、そのブロック共重合体のMw/Mnから10パーセント以内にあり、そして/またはこの比較対象となる共重合体は、そのブロック共重合体のMw/Mnから10パーセント以内にMw/Mnを有する。
【0040】
さらに別の態様では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムで測定された、300パーセントのひずみかつ1サイクルでの弾性回復率Re(パーセント)によって特徴付けられ、かつ密度d(グラム/立方センチメートル)を有し、このReおよびdの数値は、エチレン/α−オレフィン共重合体が実質的に架橋相を有さない場合、以下の関係、
Re>1481−1629(d);そして好ましくは、
Re≧1491−1629(d);そしてさらに好ましくは、
Re≧1501−1629(d);そしてよれより好ましくは、
Re≧1511−1629(d)
を満たす。
【0041】
図3は、特定の本発明の共重合体および従来のランダムコポリマーから作製された未延伸フィルムについての弾性回復率に対する密度の効果を示す。同じ密度について、本発明の共重合体は、実質的により高い弾性回復率を有する。
【0042】
ある実施形態では、エチレン/α−オレフィン共重合体は、10MPaを超える引張強度、好ましくは11MPa以上の引張強度、より好ましくは13Mpa以上の引張強度、および/または、11cm/分のクロスヘッド分離速度で、少なくとも600パーセント、より好ましくは少なくとも700パーセント、特に好ましくは少なくとも800パーセント、そして最も高度に好ましくは少なくとも900パーセントの破断点伸度を有する。
【0043】
他の実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、(1)1〜50、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10という貯蔵弾性率G’(25℃)/G’(100℃);および/または(2)80パーセント未満、好ましくは70パーセント未満、特に60パーセント未満、50パーセント未満、または40パーセント未満という70℃圧縮永久ひずみを、0パーセントの圧縮永久ひずみまで下がって、有する。
【0044】
さらに他の実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、80パーセント未満、70パーセント未満、60パーセント未満、または50パーセント未満、という70℃圧縮永久ひずみを有する。好ましくは、共重合体の70℃圧縮永久ひずみは、40パーセント未満、30パーセント未満、20パーセント未満であり、そして約0パーセントまで下がってもよい。
【0045】
ある実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、85J/g未満の融解熱、および/または100ポンド/フィート2(4800Pa)以下、好ましくは50ポンド/フィート2(2400Pa)以下、特に、5ポンド/フィート2(240Pa)以下、そして0ポンド/フィート2(0Pa)程度のペレットブロッキング強度を有する。
【0046】
他の実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、重合型で、少なくとも50モルパーセントのエチレンを含み、そして80パーセント未満、好ましくは70パーセント未満、または60パーセント未満、最も好ましくは40〜50パーセント、そしてゼロパーセント近くまで下がるという70℃圧縮永久ひずみを有する。
【0047】
ある実施形態では、このマルチブロックコポリマーは、ポアソン分布よりもシュルツ・フローリー分布にあてはまるPDIを保有する。このコポリマーはさらに、多分散性ブロック分布と多分散性ブロックサイズ分布との両方を有し、かつブロック長の最確分布を保有すると特徴付けられる。好ましいマルチブロックコポリマーは、末端ブロックを含めて、4以上のブロックまたはセグメントを含むものである。さらに好ましくは、このコポリマーは、末端ブロックを含めて、少なくとも5、10もしくは20のブロックまたはセグメントを含む。
【0048】
コモノマー含量は、任意の適切な技術を用いて測定され得、好ましくは核磁気共鳴(「NMR」)分光法に基づく技術による。さらに、比較的広範なTREF曲線を有するポリマーまたはポリマーの混合物については、ポリマーは望ましくは、TREFを用いて、各々が10℃以下の溶離温度範囲を有する画分に最初に分画される。すなわち、各々の溶離画分は、10℃以下という収集温度領域(ウィンドウ)を有する。この技術を用いて、このようなブロック共重合体は、比較対象となる共重合体の対応する画分よりも高モルのコモノマー含量を有する画分を、少なくとも1つ有する。
【0049】
別の態様では、本発明のポリマーはオレフィン共重合体であって、好ましくは、重合化された形態でエチレンおよび1以上の共重合性コモノマーを含み、化学的または物理的な特性が異なる2以上の重合化されたモノマー単位の複数のブロック(すなわち、少なくとも2つのブロック)またはセグメント(ブロック化された共重合体)によって特徴付けられ、最も好ましくはマルチブロックコポリマーである。このブロック共重合体は、40℃〜130℃間に溶離するピーク(ただし単なる分子画分ではない)を有し(しかし、個々の画分を収集および/または単離しない)、このピークが、半値全幅(full width/half maximum)(FWHM)面積計算を用いて展開される場合に赤外線分光法によって評価されるコモノマー含量を有し、同じ溶離温度において半値全幅(FWHM)面積計算を用いて展開された比較対象となるランダムエチレン共重合体のピークのコモノマー含量よりも高いコモノマー平均モル含量、好ましくは少なくとも5パーセント高い、より好ましくは少なくとも10パーセント高いコモノマー平均モル含量を有する点で特徴づけられる。ここで、この比較対象となるランダムエチレン共重合体は、同じコモノマー(単数または複数)を有し、かつメルトインデックス、密度、およびコモノマーのモル含量(ポリマー全体に基づく)をそのブロック化共重合体のものから10パーセント以内に有する。好ましくは、この比較対象となる共重合体のMw/Mnはまた、ブロック化共重合体のMw/Mnから10パーセント以内にあるか、そして/またはこの比較対象となる共重合体は、ブロック化共重合体の総コモノマー含量から10重量パーセント以内に総コモノマー含量を有する。半値全幅(FWHM)計算は、ATREF赤外検出器由来のメチレンに対するメチルの応答面積の比[CH3/CH2]に基づき、ここで、最も高(最高)のピークがベースラインから特定され、次いでこのFWHM面積が決定される。ATREFピークを用いて測定された分布については、FWHM面積は、T1とT2との間の曲線下面積として規定され、このT1とT2は、ピーク高さを2で割ること、次にATREF曲線の左部分および右部分を横切る、ベースラインに対して水平な線を引くことによって、ATREFピークの左右に対してポイント決定される。コモノマー含量についての検量線は、ランダムエチレン/α−オレフィンコポリマーを用い、TREFのピークのNMR対FWHM面積の比からコモノマー含量をプロットして作成される。この赤外方法については、この検量線は、目的の同じコモノマータイプについて作成される。本発明のポリマーのTREFピークのコモノマー含量は、TREFピークのFWHMのメチル:メチレン面積比[CH3/CH2]を用いてこの検量線を参照することによって決定され得る。
【0050】
コモノマー含量は、任意の適切な技術を用いて測定され得、好ましくは核磁気共鳴(「NMR」)分光法に基づく技術による。この技術を用いて、このブロック化共重合体は、対応する比較対象となる共重合体よりも高モルのコモノマー含量を有する。
【0051】
好ましくは、エチレンおよび1−オクテンの共重合体について、このブロック共重合体は、40℃と130℃の間で溶離するTREF画分のコモノマー含量を量(−0.2013)T+20.07以上、より好ましくは量(−0.2013)T+21.07以上有し、このTとは、℃で測定した、比較されているTREF画分のピーク溶離温度の数値である。
【0052】
図4はエチレンおよび1−オクテンのブロック共重合体の実施形態をグラフ表示しており、ここではいくつかの比較対象となるエチレン/1−オクテン共重合体(ランダムコポリマー)についてのコモノマー含量対TREF溶離温度のプロットが、(−0.2013)T+20.07(実線)に相当する線に適合する。この式(−0.2013)T+21.07についての線は、破線で示される。本発明のいくつかのブロックエチレン/1−オクテン共重合体(マルチブロックコポリマー)の画分のコモノマー含量も示される。ブロック共重合体画分の全てが、同等の溶離温度でいずれの線より有意に高い1−オクテン含量を有する。この結果は、本発明の共重合体の特徴であって、結晶性および非晶質の両方の性質を有する、ポリマー鎖内の分化型のブロックの存在に起因すると考えられる。
【0053】
図5は、実施例5および下で考察される比較例F*についてのポリマー画分のTREF曲線およびコモノマー含量をグラフ表示する。両方のポリマーについて40〜130℃、好ましくは60℃〜95℃で溶離するピークを、各々の部分が10℃未満の温度範囲にわたって溶離する3つの部分に分画する。実施例5についての実際のデータは三角で示す。異なるコモノマーを含有する共重合体について適切な検量線を作成することができ、それが、同じモノマーの比較の共重合体、好ましくはメタロセンまたは他の均一系触媒組成物を用いて製造されるランダムコポリマーから得られたTREF値とフィッティングさせる比較として用いられる線であり得ることは、当業者には理解され得る。本発明の共重合体は、同じTREF溶離温度で検量線から決定された値より大きい、好ましくは、少なくとも5パーセント大きい、より好ましくは少なくとも10パーセント大きい、コモノマーのモル含量で特徴付けられる。
【0054】
上記の態様および本明細書に記載される特性に加えて、本発明のポリマーは、1以上のさらなる特徴によって特徴付けられ得る。一態様では、本発明のポリマーは、オレフィン共重合体であり、好ましくは、エチレンおよび1以上の共重合性コモノマーを重合化された形態で含み、化学的または物理的な特性において異なる2またはそれ以上の重合モノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロック化された共重合体)によって特徴付けられ、最も好ましくはマルチブロックコポリマーである。このブロック共重合体は、TREF増分を用いて分画した場合に40℃〜130℃で溶離する分子画分を有し、この画分が、同じ温度の間に溶離する比較対象となるランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量よりも高いコモノマーモル含量、好ましくは少なくとも5パーセント高い、より好ましくは少なくとも10、15または25パーセント高いコモノマーモル含量を有するという点で特徴づけられる。ここで、この比較対象となるランダムエチレン共重合体は、同じコモノマー(単数または複数)(好ましくは、これは同じコモノマー(単数または複数)である)およびメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)をそのブロック化された共重合体のものから10パーセント以内に含む。好ましくは、この比較対象となる共重合体のMw/Mnはまた、ブロック化された共重合体のMw/Mnから10パーセント以内であるか、そして/またはこの比較対象となる共重合体は、ブロック化された共重合体の総コモノマー含量から10パーセント以内の総コモノマー含量を有する。
【0055】
好ましくは、上記の共重合体は、エチレンおよび少なくとも1つのα−オレフィンの共重合体であり、特に、それらの共重合体は、約0.855〜約0.935g/cm3の全体ポリマー密度を有し、そしてより詳細には、約1モルパーセントを超えるコモノマーを有するポリマーについては、このブロック化された共重合体は、40〜130℃間に溶離するTREF画分のコモノマー含量を、量(−0.1356)T+13.89以上、より好ましくは量(−0.1356)T+14.93以上、そして最も好ましくは、量(−0.2013)T+21.07以上有し、ここでTは、℃で測定した、比較されているTREF画分のピークATREF溶離温度の数値である。
【0056】
好ましくは、エチレンおよび少なくとも1つのα−オレフィンの上記の共重合体、特に、0.855〜約0.935g/cm3というポリマー全体密度を有する共重合体について、そしてさらに詳細には、約1モルパーセントを超えるコモノマーを有するポリマーについて、ブロック化された共重合体は、40℃〜130℃間に溶離するTREF画分のコモノマー含量を、量(−0.2013)T+20.07以上、より好ましくは量(−0.2013)T+21.07以上有し、ここでTは、℃で測定した、比較されているTREF画分のピーク溶離温度の数値である。
【0057】
さらに別の態様では、本発明のポリマーは、オレフィン共重合体であり、好ましくは重合化された形態でエチレンおよび1以上の共重合性コモノマーを含み、化学的または物理的な特性が異なる2以上の重合化されたモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロック化された共重合体)によって特徴付けられ、最も好ましくはマルチブロックコポリマーである。このブロック共重合体は、TREF増分を用いて分画した場合に40℃〜130℃間に溶離する分子画分を有し、少なくとも約6モルパーセントのコモノマー含量を有するあらゆる画分が約100℃より大きい融点を有するという点で特徴付けられる。約3モルパーセント〜約6モルパーセントのコモノマー含量を有する画分については、あらゆる画分が約110℃以上というDSC融点を有する。より好ましくは、このポリマー画分は、少なくとも1モルパーセントのコモノマーを有し、式:
Tm≧(−5.5926)(画分中のコモノマーのモルパーセント)+135.90
に相当するDSC融点を有する。
【0058】
さらに別の態様では、本発明のポリマーは、オレフィン共重合体であり、好ましくは、重合化された形態でエチレンおよび1以上の共重合性コモノマーを含み、化学的または物理的な特性が異なる2以上の重合化されたモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロック化された共重合体)によって特徴付けられ、最も好ましくはマルチブロックコポリマーである。このブロック共重合体は、TREF増分を用いて分画した場合に40℃〜130℃間に溶離する分子画分を有し、約76℃以上のATREF溶離温度を有するあらゆる画分が、式:
融解熱(J/gm)≦(3.1718)(ATREF溶離温度(℃))−136.58
に相当する、DSCによって測定された融解エンタルピー(融解熱)を有するという点で、特徴付けられる。
【0059】
本発明のブロック共重合体は、TREF増分を用いて分画された場合に40℃〜130℃間に溶離する分子画分を有し、40℃と約76℃未満との間のATREF溶離温度を有するあらゆる画分が、式:
融解熱(J/gm)≦(1.1312)(ATREF溶離温度(℃))+22.97
に相当する、DSCによって測定された融解エンタルピー(融解熱)を有するという点で特徴付けられる。
【0060】
赤外線検出器によるATREFピークのコモノマー組成測定
TREFピークのコモノマー組成は、Polymer Char, Valencia, Spain (http://www.polymerchar.com/)から入手可能なIR4赤外検出器を用いて測定され得る。
【0061】
検出器の「組成モード」は、測定センサー(CH2)および組成センサー(CH3)を装備しており、これは2800〜3000cm-1の領域における狭帯域固定型赤外線フィルタである。この測定センサーは、ポリマー上のメチレン(CH2)カーボン(これは、溶液中のポリマー濃度に直接関係する)を検出するが、組成センサーは、ポリマーのメチル(CH3)基を検出する。組成シグナル(CH3)を測定シグナル(CH2)によって除算した算術比は、溶液中の測定されるポリマーのコモノマー含量の影響を受けやすく、その応答は、公知のエチレンα−オレフィンコポリマー標準を用いて較正される。
【0062】
ATREF装置を用いる場合、検出器によって、TREFプロセスの間に溶離されたポリマーの濃度(CH2)および組成(CH3)シグナルの応答の両方が得られる。ポリマー特異的な較正は、コモノマー含量が分かっている(好ましくはNMRによって測定される)を有するポリマーについてCH3対CH2の面積比を測定することによって作成され得る。ポリマーのATREFピークのコモノマー含量は、個々のCH3およびCH2応答に対して面積比の比較較正を適用すること(すなわち、面積比CH3/CH2 対 コモノマー含量)によって推定され得る。
【0063】
ピーク面積は、適切なベースラインを適用してTREFクロマトグラムからの個々のシグナル応答を積分した後、半値全幅(FWHM)計算を用いて算出することができる。この半値全幅算出は、ATREF赤外検出器からのメチル対メチレンの応答面積比[CH3/CH2]の比に基づき、この最も高い(最高の)ピークはベースラインから特定され、次いでFWHM面積が決定される。ATREFピークを用いて測定される分布については、FWHM面積は、T1とT2との間の曲線下面積として規定され、ここでT1およびT2は、ピーク高さを2で割ること、次にATREF曲線の左部分および右部分を横切る、ベースラインに対して水平な線を引くことによって、ATREFピークの左右に対してポイント測定される。
【0064】
このATREF赤外方法においてポリマーのコモノマー含量を測定するための赤外線分光法の適用は、原理的には、以下の引用文献:Markovich,Ronald P.;Hazlitt,Lonnie G.;Smith,Linley;「Development of gel-permeation chromatography-Fourier transform infrared spectroscopy for characterization of ethylene-based polyolefin copolymers」.Polymeric Materials Science and Engineering(1991),65,98-100;およびDeslauriers,P.J.;Rohlfing,D.C.;Shieh,E.T.;「Quantifying short chain branching microstructures in ethylene-1-olefin copolymers using size exclusion chromatography and Fourier transform infrared spectroscopy(SEC-FTIR)」,Polymer(2002),43,59-170、に記載されるようなGPC/FTIRシステムのものと同様であり、その両方の引用文献とも、その全体が本明細書において参照によって援用される。
【0065】
他の実施形態では、本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体は、ゼロより大きくかつ約1.0までである平均ブロックインデックス、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnによって特徴付けられる。この平均ブロックインデックスABIは、5℃の増分で、20℃〜110℃の分取TREFで得られたポリマー画分の各々についてのブロックインデックス(「BI」)の重量平均であり:
ABI=Σ(wiBIi
ここでBIiは、分取TREFで得られた本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体のi番目の画分についてのブロックインデックスであり、そしてwiは、i番目の画分の重量パーセンテージである。
【0066】
各々のポリマー画分について、BIは、以下の2つの式(その両方とも同じBI値を与える)のうちの1つによって規定され:
BI=(1/TX−1/TXO)/(1/TA−1/TAB)または、
BI=−(LnPX−LnPXO)/(LnPA−LnPAB
ここでTxはi番目の画分についての分取ATREF溶離温度(好ましくはケルビン温度で表される)であり、Pxは、i番目の画分のエチレンモル画分であって、上記のようなNMRまたはIRによって測定され得る。PABは、エチレン/α−オレフィン共重合体全体のエチレンモル分率(前の画分)であり、これもNMRまたはIRによって測定され得る。TAおよびPAは、純粋な「ハードセグメント(hard segments)」(これは共重合体の結晶セグメントをいう)についてのATREF溶離温度およびエチレンモル画分である。一次の近似として、このTAおよびPAの値は、この「ハードセグメント」についての実測値を得ることができない場合、高密度ポリエチレン・ホモポリマーについての値に設定される。本明細書において行われる計算については、TAは372°Kであって、PAは1である。
【0067】
ABは、同じ組成であって、PABというエチレンモル画分を有するランダムコポリマーについてのATREF温度である。TABは、以下の式:
LnPAB=α/TAB+β
から計算されてもよく、
ここでαおよびβは多数の公知のランダムエチレンコポリマーを用いる検量によって決定され得る2つの定数である。αおよびβは、装置間で変化し得ることに注意すべきである。さらに、目的のポリマー組成を用いて、そしてそれらの画分と同様の分子量範囲に関しても、それら自体の検量線を作成する必要がある。わずかな分子量効果がある。この検量線が、類似の分子量範囲から得られる場合、このような効果は、本質的に無視できる。ある実施形態では、ランダムエチレンコポリマーは、以下の関係:
LnP=-237.83/TATREF+0.639
を満たし、
xoは、同じ組成であって、PXというエチレンモル画分を有するランダムコポリマーについてのATREF温度である。TXOは、LnPX=α/TXO+βから算出されてもよい。逆に、PXOは、同じ組成であって、LnPXO=α/TX+βから算出され得る、TXというATREF温度を有するランダムコポリマーについてのエチレンモル画分である。
【0068】
一旦、各々の分取TREF画分についてブロックインデックス(BI)が得られれば、ポリマー全体についての重量平均ブロックインデックスABIが算出され得る。ある実施形態では、ABIは、ゼロより大きいが、約0.3未満、または約0.1〜約0.3である。他の実施形態では、ABIは、約0.3より大きく約1.0までである。好ましくは、ABIは、約0.4〜約0.7、約0.5〜約0.7、約0.6〜約0.9の範囲であるべきである。ある実施形態では、ABIは、約0.3〜約0.9、約0.3〜約0.8、または約0.3〜約0.7、約0.3〜約0.6、約0.3〜約0.5、または約0.3〜約0.4の範囲である。他の実施形態では、ABIは、約0.4〜約1.0、約0.5〜約1.0、または約0.6〜約1.0、約0.7〜約1.0、約0.8〜約1.0、または約0.9〜約1.0の範囲である。
【0069】
本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体の別の特徴は、この本発明のエチレン/α−オレフィン共重合体が、分取TREFによって得られ得る少なくとも1つのポリマー画分を含み、この画分は約0.1より大きくかつ約1.0までのブロックインデックス、約1.3より大きい分子量分布MW/Mnを有する。ある実施形態では、このポリマー画分は、約0.6より大きくかつ約1.0まで、約0.7より大きくかつ約1.0まで、約0.8より大きくかつ約1.0まで、または約0.9より大きくかつ約1.0までのブロックインデックスを有する。他の実施形態では、このポリマー画分は、約0.1より大きくかつ約1.0まで、約0.2より大きくかつ約1.0まで、約0.3より大きくかつ約1.0まで、約0.4より大きくかつ約1.0まで、または約0.4より大きくかつ約1.0までのブロックインデックスを有する。さらに他の実施形態では、このポリマー画分は、約0.1より大きくかつ約0.5まで、約0.2より大きくかつ約0.5まで、約0.3より大きくかつ約0.5まで、または約0.4より大きくかつ約0.5までのブロックインデックスを有する。さらに他の実施形態では、このポリマー画分は、約0.2より大きくかつ約0.9まで、約0.3より大きくかつ約0.8まで、約0.4より大きくかつ約0.7まで、または約0.5より大きくかつ約0.6までのブロックインデックスを有する。
【0070】
エチレンおよびα−オレフィンのコポリマーについては、本発明のポリマーは好ましくは、
(1)少なくとも1.3、より好ましくは少なくとも1.5、少なくとも1.7、または少なくとも2.0、そして最も好ましくは少なくとも2.6、5.0という最大値まで、より好ましくは3.5の最大値まで、そして特に2.7という最大値までのPDI;
(2)80J/g以下の融解熱;
(3)少なくとも50重量パーセントのエチレン含量;
(4)−25℃未満、より好ましくは−30℃未満というガラス転移温度Tg、および/または
(5)唯一のTm
を保有する。
【0071】
さらに、本発明のポリマーは、log(G’)が100℃の温度で400kPa以上、好ましくは1.0MPa以上であるような貯蔵弾性率G’を単独で、または本明細書に開示される任意の他の特性と組み合わせて有することができる。さらに、本発明のポリマーは、0〜100℃の範囲で温度の関数として比較的平坦な貯蔵弾性率を保有し(図6に図示される)、これは、ブロックコポリマーの特徴であるが、オレフィンコポリマー、特に、エチレンおよび1またはそれ以上のC3-8脂肪族α−オレフィンのコポリマーについては今まで知られていない。((この文脈での「比較的平坦な」という用語は、50と100℃の間、好ましくは0℃と100℃の間でのlogG’(パスカル)の減少が、1ケタ未満であることを意味する)。)。
【0072】
本発明の共重合体は、少なくとも90℃の温度で1mmという熱機械分析針入深度、および3kpsi(20MPa)〜13kpsi(90MPa)という曲げ弾性率によってさらに特徴付けられ得る。あるいは、本発明の共重合体は、少なくとも104℃の温度で1mmという熱機械分析針入深度、そして少なくとも3kpsi(20MPa)という曲げ弾性率を有し得る。それらは、90mm3未満という耐摩耗性(または容積減少)を有することで特徴づけられ得る。図7は、他の公知のポリマーと比較した場合の、本発明のポリマーについてのTMA(1mm)対屈曲弾性率を示す。本発明のポリマーは有意に、他のポリマーよりもずっとよい可撓性−耐熱性のバランスを有する。
【0073】
さらに、エチレン/α−オレフィン共重合体は、0.01〜2000g/10分、好ましくは0.01〜1000g/10分、さらに好ましくは0.01〜500g/10分、そして特に0.01〜100g/10分というメルトインデックスI2を有し得る。特定の実施形態では、このエチレン/α−オレフィン共重合体は、0.01〜10g/10分、0.5〜50g/10分、1〜30g/10分、1〜6g/10分または0.3〜10g/10分というメルトインデックスI2を有する。特定の実施形態では、このエチレン/α−オレフィン・ポリマーのメルトインデックスは、1g/10分、3g/10分または5g/10分である。
【0074】
このポリマーは、1,000g/モル〜5,000,000g/モル、好ましくは1,000g/モル〜1,000,000g/モル、より好ましくは10,000g/モル〜500,000g/モル、そして特に10,000g/モル〜300,000g/モルの分子量MWを有し得る。本発明のポリマーの密度は、0.80〜0.99g/cm3であり得、そして好ましくは、エチレン含有ポリマーについては0.85g/cm3〜0.97g/cm3であり得る。特定の実施形態では、このエチレン/α−オレフィンポリマーの密度は、0.860〜0.925g/cm3または0.867g/cm3〜0.910g/cm3におよぶ。
【0075】
このポリマーを作製するプロセスは、以下の特許出願に開示されている:2004年3月17日出願の米国仮出願第60/553,906号;2005年3月17日出願の米国仮出願第60/662,937号;2005年3月17日出願の米国仮出願第60/662,939号;2005年3月17日出願の米国仮出願第60/5662938号;2005年3月17日出願のPCT出願第PCT/US2005/008916号;2005年3月17日出願のPCT出願第2005/008915号;および2005年3月17日出願のPCT出願第PCT/US2005/008917号;これらの全てはその全体が本明細書において参照によって援用される。例えば、1つのこうした方法は、エチレンおよび場合によっては1つまたはそれ以上のエチレン以外の付加重合可能なモノマーを付加重合条件下で触媒組成物と接触させることを含み:
この触媒組成物は、
(A)高いコモノマー組み込みインデックスを有する第一のオレフィン重合触媒、
(B)触媒(A)のコモノマー組み込みインデックスの90パーセント未満、好ましくは50パーセント未満、最も好ましくは5パーセント未満のコモノマー組み込みインデックスを有する第二のオレフィン重合触媒、および
(C)可逆的連鎖移動剤(chain shuttling agent)
を併せることによって得られる混合物または反応生成物を含有する。
【0076】
代表的な触媒および可逆的連鎖移動剤は以下のとおりである。
【0077】
触媒(A1)は、WO03/40195、2003US0204017、USSN10/429,024(2003年5月2日出願)、およびWO04/24740の教示に従って調製した、[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−イソプロピルフェニル)(α−ナフタレン−2−ジイル(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルである。
【0078】
【化1】

触媒(A2)は、WO03/40195、2003US0204017、USSN10/429,024(2003年5月2日出願)、およびWO04/24740の教示に従って調製した、[N−2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−メチルフェニル)(1,2−フェニレン−(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルである。
【0079】
【化2】

触媒(A3)は、ビス[N,N’’’−(2,4,6−トリ(メチルフェニル)アミド)エチレンジアミン]ハフニウムジベンジルである。
【0080】
【化3】

触媒(A4)は、US-A-2004/0010103の教示に実質的に従って調製された、ビス((2−オキソイル−3−(ジベンゾ−1H−ピロール−1−イル)−5−(メチル)フェニル)−2−フェノキシメチル)シクロヘキサン−1,2−ジイルジルコニウム(IV)ジベンジルである。
【0081】
【化4】

触媒(B1)は、1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(1−メチルエチル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジルである。
【0082】
【化5】

触媒(B2)は、1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(2−メチルシクロヘキシル)−イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジルである。
【0083】
【化6】

触媒(C1)は、米国特許第6,268,444号の教示に実質的に従って調製された、(t−ブチルアミド)ジメチル(3−N−ピロリル−1,2,3,3a,7a−η−インデン−1−イル)シランチタニウムジメチルである。
【0084】
【化7】

触媒(C2)は、US-A-2003/004286の教示に実質的に従って調製された、(t−ブチルアミド)ジ(4−メチルフェニル)(2−メチル−1,2,3,3a,7a−η−インデン−1−イル)シランチタニウムジメチルである。
【0085】
【化8】

触媒(C3)は、US-A-2003/004286の教示に実質的に従って調製された、(t−ブチルアミド)ジ(4−メチルフェニル)(2−メチル−1,2,3,3a,8a−η−s−インダセン−1−イル)シランチタニウムジメチルである。
【0086】
【化9】

触媒(D1)は、Sigma-Aldrichから入手可能なビス(ジメチルジシロキサン)(インデン−1−イル)塩化ジルコニウムである。
【0087】
【化10】

可逆的移動剤(shuttling agent)
使用される可逆的移動剤としては、ジエチル亜鉛、ジ(i−ブチル)亜鉛、ジ(n−ヘキシル)亜鉛、トリエチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリエチルガリウム、i−ブチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキサン)、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(トリメチルシリル)アミド)、n−オクチルアルミニウムジ(ピリジン−2−メトキシド)、ビス(n−オクタデシル)i−ブチルアルミニウム、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(n−ペンチル)アミド)、n−オクチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド、n−オクチルアルミニウムジ(エチル(1−ナフチル)アミド)、エチルアルミニウムビス(t−ブチルジメチルシロキシド)、エチルアルミニウム(ジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)、エチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)、n−オクチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)、n−オクチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキシド、エチル亜鉛(2,6−ジフェニルフェノキシド)およびエチル亜鉛(t−ブトキシド)が挙げられる。
【0088】
好ましくは、前述のプロセスは、相互に交換できない複数の触媒を用いる、ブロックコポリマー、特にマルチブロックコポリマー、好ましくは2以上のモノマーの線状マルチブロックコポリマー、さらに詳細にはエチレンおよびC3-20オレフィンまたはシクロオレフィンの線状マルチブロックコポリマー、そして最も詳細にはエチレンおよびC4-20α−オレフィンの線状マルチブロックコポリマーを形成するための連続溶液プロセスの形態をとる。すなわち、これらの触媒は化学的に別個である。連続的な溶液重合条件のもとで、このプロセスは理想的には、高いモノマー変換でのモノマーの混合物の重合に適している。これらの重合条件のもとで、可逆的連鎖移動剤(chain shuttling agent)から触媒への可逆的移動(shuttling)は、鎖成長に比較して有利になり、そしてマルチブロックコポリマー、詳細には線状マルチブロックコポリマーが高い効率で形成される。
【0089】
本発明の共重合体は、逐次的モノマー付加、流動触媒、アニオンリビング重合技術またはカチオンリビング重合技術により調製された、従来のランダムコポリマー、ポリマーの物理的混合物、およびブロックコポリマーとは区別することができる。詳細には、同等の結晶性または弾性率で同じモノマーおよびモノマー含量のランダムコポリマーと比較して、本発明の共重合体は、融点で測定した場合にはより優れた(より高い)耐熱性を、動的機械分析によって判定した場合にはより高いTMA針入温度、より高い高温引張強度、および/またはより高い高温ねじり貯蔵弾性率(torsion storage modulus)を有する。同じモノマーおよびモノマー含量を含有するランダムコポリマーと比較して、本発明の共重合体は、より低い圧縮永久ひずみ(特に、高温で)、より低い応力緩和、より高い耐クリープ性、より高い引裂強度、より高い耐ブロッキング性、より高い結晶化(固化)温度に起因する迅速な硬化、より高い回復(特に高温で)、より良好な耐摩耗性、より高い収縮力、ならびにより良好なオイル許容性およびフィラー(充填剤)許容性を有する。
【0090】
本発明の共重合体はまた、固有の結晶化および分枝分布関係を示す。すなわち、本発明の共重合体は、特に、同じモノマーおよびモノマーレベルを含むランダムコポリマーまたは等価の総合密度でのポリマーの物理的ブレンド、例えば、高密度ポリマーと低密度コポリマーとのブレンドと比較して、CRYSTAFおよびDSCを用いて測定した融解熱の関数として最高のピーク温度の間に比較的大きな差を有する。本発明の共重合体のこの固有の特徴は、ポリマーの主鎖内のブロックにおけるコモノマーの独特の分布に起因すると考えられる。詳細には、本発明の共重合体は、異なるコモノマー含量(ホモポリマーブロックを含む)の交互のブロックを含んでもよい。本発明の共重合体はまた、異なる密度またはコモノマー含量のポリマーブロックの数および/またはブロックサイズの分布を含んでもよく、これは、シュルツ−フローリー(Schultz-Flory)型の分布である。さらに、本発明の共重合体はまた、固有のピーク融点および結晶化温度プロフィールを有し、これは実質的には、ポリマーの密度、弾性率(modulus)および形態とは独立している。好ましい実施形態では、ポリマーの微結晶性秩序は、特徴的な球晶およびラメラを示し、これは1.7未満、または1.5未満、1.3未満までのPDI値においてでさえ、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーとは区別できる。
【0091】
さらに、本発明の共重合体は、ブロッキネス(blockiness)の程度またはレベルに影響する技術を用いて調製され得る。すなわち、コモノマーの量および各々のポリマーブロックまたはセグメントの長さは、触媒および可逆的移動剤の比およびタイプ、ならびに重合の温度および他の重合の変数を制御することによって変更され得る。この現象の驚くべき利点は、ブロッキネスの程度が増大されるほど、得られたポリマーの光学的特性、引裂強度および高温回復の特性が改善されるという発見である。詳細には、ポリマーにおけるブロックの平均数の増大につれて、曇りは減少するが、透明度、引裂強度および高温回復の特性は増大する。所望の連鎖移送能力(高い可逆的移動(shuttling)速度、低レベルの連鎖停止を伴う)を有する可逆的移動剤および触媒の組み合わせを選択することによって、他の形態のポリマー停止は効率的に抑制される。従って、β水素化物脱離が、本発明の実施形態によるエチレン/α−オレフィンコモノマー混合物の重合でほとんど観察されず、そして得られた結晶ブロックは高度に、または実質的に完全に、線状であり、長鎖分枝をほとんどまたはまったく保有しない。
【0092】
高結晶性連鎖末端を有するポリマーは、本発明に実施形態によって選択的に調製され得る。弾性用途では、非結晶性のブロックで終わるポリマーの相対量を減少させることによって、結晶性領域に対する分子間希薄化効果が減少される。この結果は、水素または他の可逆的連鎖停止因子に対して適切な応答を有する可逆的連鎖移動剤および触媒を選択することによって得ることができる。詳細には、高結晶性ポリマーを生成する触媒が、(例えば、より高いコモノマー組み込み、レジオ−エラー(regio-error)、またはアタクチックポリマー形成によって)より少ない結晶性ポリマーセグメントを生成する原因となる触媒よりも、(例えば、水素の使用により)連鎖停止を受けやすい場合には、高結晶性ポリマーセグメントが、そのポリマーの末端部分を優先的に占める。得られる末端基が結晶性であるだけでなく、高結晶性のポリマー形成触媒部位は、停止の際にポリマー形成の再開始にもう一度利用可能である。従って、最初に形成されたポリマーは、別の高結晶性のポリマーセグメントである。従って、得られたマルチブロックコポリマーの両方の末端は優先的に高度に結晶性である。
【0093】
本発明の実施形態で用いられるエチレンα−オレフィン共重合体は好ましくは、少なくとも1つのC3−C20α−オレフィンを有するエチレンの共重合体である。エチレンおよびC3−C20α−オレフィンのコポリマーが特に好ましい。この共重合体はさらに、C4−C18ジオレフィンおよび/またはアルケニルベンゼンを含んでもよい。エチレンとの重合のために有用な適切な不飽和コモノマーとしては、例えば、エチレン性不飽和モノマー、共役または非共役ジエン、ポリエン、アルケニルベンゼンなどが挙げられる。このようなコモノマーの例としては、C3−C20α−オレフィン、例えば、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどが挙げられる。1−ブテンおよび1−オクテンが特に好ましい。他の適切なモノマーとしては、スチレン、ハロ−またはアルキル−置換スチレン、ビニルベンゾシクロブタン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、およびナフテン類(naphthenics)(例えば、シクロペンテン、シクロヘキセンおよびシクロオクテン)が挙げられる。
【0094】
エチレン/α−オレフィン共重合体が好ましいポリマーであるが、他のエチレン/オレフィンポリマーも用いられ得る。本明細書において用いられるオレフィンとは、少なくとも1つの炭素間二重結合を有する不飽和の炭化水素系化合物のファミリーをいう。触媒の選択に依存して、オレフィンは、本発明の実施形態で用いられ得る。好ましくは、適切なオレフィンは、ビニル不飽和を含むC3−C20脂肪族および芳香族化合物、ならびに環状化合物、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、およびノルボルネンであって、これには、限定はしないが、C1−C20ヒドロカルビル基またはシクロヒドロカルビル基で5位および6位で置換されたノルボルネンが挙げられる。このようなオレフィンの混合物、およびこのようなオレフィンとC4−C40ジオレフィン化合物との混合物も挙げられる。
【0095】
オレフィンモノマーの例としては、限定はしないが、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンおよび1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン、4−ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、エチルイデンノルボルネン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、C4−C40ジエンが挙げられ、これには限定はしないが、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、他のC4−C40α−オレフィンなどが挙げられる。特定の実施形態では、α−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンまたはそれらの組み合わせである。ビニル基を含む任意の炭化水素が本発明の実施形態で用いられてもよいが、実際的な問題、例えば、モノマーの有効性、コスト、および得られたポリマーから未反応のモノマーを都合よく除去する能力は、このモノマーの分子量が大きくなり過ぎると、さらに問題となり得る。
【0096】
本明細書に記載される重合プロセスは、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレンなどのモノビニリデン芳香族モノマーを含むオレフィンポリマーの生成に十分適している。詳細には、エチレンおよびスチレンを含む共重合体は、本明細書の教示に従うことによって調製され得る。必要に応じて、エチレン、スチレンおよびC3−C20αオレフィンを含み、必要に応じてC4−C20ジエンを含み、改善された特性を有するコポリマーが調製され得る。
【0097】
適切な非共役ジエンモノマーは、6〜15個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖または環状炭化水素ジエンであり得る。適切な非共役ジエンの例としては、限定はしないが、直鎖非環式ジエン、例えば、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、分枝鎖非環式ジエン(例えば、5−メチル−1,4−ヘキサジエン;3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン;3,7−ジメチル−1,7−オクタジエンならびにジヒドロミリセンおよびジヒドロオシネンの混合異性体)、単環脂環式ジエン(例えば、1,3−シクロペンタジエン;1,4−シクロヘキサジエン;1,5−シクロオクタジエンおよび1,5−シクロドデカジエン)、ならびに多環脂環式縮合および架橋環ジエン、例えば、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ−(2,2,1)−ヘプタ−2,5−ジエン;アルケニルノルボルネン、アルキリデンノルボルネン、シクロアルケニルノルボルネンおよびシクロアルキリデンノルボルネン(例えば、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB);5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(4−シクロペンテニル)−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネンおよびノルボルナジエン)が挙げられる。EPDMを調製するために代表的に用いられるジエンのうち、特に好ましいジエンは1,4−ヘキサジエン(HD)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ビニリデン−2−ノルボルネン(VNB)、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)およびジシクロペンタジエン(DCPD)である。特に好ましいジエンは、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)および1,4−ヘキサジエン(HD)である。
【0098】
本発明の実施形態に従って作製され得る所望のポリマーの1クラスは、エチレン、C3−C20α−オレフィン(特にプロピレン)および必要に応じて1またはそれ以上のジエンモノマーのエラストマー系共重合体である。本発明の実施形態で用いるための好ましいα−オレフィンは、式CH2=CHR*で示され、R*は、1〜12個の炭素原子の直鎖状または分枝したアルキル基である。適切なα−オレフィンの例としては、限定はしないが、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテンが挙げられる。特に好ましいα−オレフィンは、プロピレンである。プロピレン系ポリマーは一般に、当分野では、EPポリマーまたはEPDMポリマーと呼ばれる。このようなポリマーを調製する際に使用する適切なジエン、特にマルチブロックEPDM型のポリマーとしては、4〜20個の炭素を含む、共役または非共役の、直鎖または分枝鎖の、環状または多環式のジエンが挙げられる。好ましいジエンとしては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエンおよび5−ブチリデン−2−ノルボルネンが挙げられる。特に好ましいジエンは5−エチリデン−2−ノルボルネンである。
【0099】
ジエン含有ポリマーは交互のセグメントまたはブロックであって、より大量もしくは少量のジエン(なしも含む)およびα−オレフィン(なしも含む)を含むセグメントまたはブロックを含むので、ジエンおよびα−オレフィンの総量は、その後にポリマーの特性を失うことなく軽減され得る。すなわち、ジエンおよびα−オレフィンのモノマーは、ポリマー全体にわたって均一でもまたはランダムに組み込まれるよりもむしろ、ポリマーのブロックの1タイプに優先的に組み込まれるので、それらは、より効率的に利用され、そして引き続きこのポリマーの架橋密度は、さらに良好に制御され得る。このような架橋可能な弾性および硬化した生成物は、より高い引張強度およびより良好な弾性回復率が挙げられる有利な特性を有する。
【0100】
ある実施形態では、種々の量のコモノマーを組み込んでいる2つの触媒で作製された本発明の共重合体は、それによって形成されたブロックの重量比95:5〜5:95を有する。所望の弾性ポリマーは、ポリマーの総重量に基づいて、20〜90パーセントのエチレン含量、0.1〜10パーセントのジエン含量、そして10〜80パーセントのα−オレフィン含量を有する。さらに好ましくは、マルチブロック弾性ポリマーは、ポリマーの総重量に対して、60〜90パーセントのエチレン含量、0.1〜10パーセントのジエン含量、そして10〜40パーセントのα−オレフィン含量を有する。好ましいポリマーは、高分子量のポリマーであって、これは、10,000〜約2,500,000、好ましくは、20,000〜500,000、より好ましくは20,000〜350,000という平均分子量(Mw)、および3.5未満、より好ましくは3.0未満という多分散性、そして1〜250のムーニー粘度(ML(1+4)125℃)を有する高分子量ポリマーである。さらに好ましくは、このようなポリマーは、65〜75パーセントのエチレン含量、0〜6パーセントのジエン含量、および20〜35パーセントのα−オレフィン含量を有する。
【0101】
エチレン/α−オレフィン共重合体は、そのポリマー構造中に少なくとも1つの官能基を組み込むことによって官能化され得る。例示的な官能基としては、例えば、エチレン不飽和単官能性および二官能性のカルボン酸、エチレン不飽和単官能性および二官能性のカルボン酸無水物、その塩およびそのエステルが挙げられ得る。このような官能基は、エチレン/α−オレフィン共重合体にグラフトされてもよいし、またはこれは、エチレンおよび任意のさらなるコモノマーと共重合されて、エチレンの共重合体、官能コモノマーおよび必要に応じて他のコモノマー(単数または複数)を形成してもよい。ポリエチレンに官能基をグラフトする手段は、例えば、それらの特許の開示がその全体が参照によって本明細書に援用される、米国特許第4,762,890号、同第4,927,888号および同第4,950,541号に記載される。特に有用な官能基の1つは、リンゴ酸無水物である。
【0102】
官能性共重合体に存在する官能基の量は、変化し得る。官能基は代表的には、少なくとも約1.0重量パーセント、好ましくは少なくとも約5重量パーセント、そしてさらに好ましくは少なくとも約7重量パーセントの量でコポリマー型官能化共重合体に存在し得る。この官能基は代表的には、コポリマー型官能化共重合体中に、約40重量パーセント未満、好ましくは約30重量パーセント未満、そして最も好ましくは約25重量パーセント未満の量で存在する。
【実施例】
【0103】
試験方法
以下の実施例では、以下の分析技術が使用される:
サンプル1〜4およびA〜CについてGPC法
160℃に設定された加熱針を装備した自動化液体処理ロボットを用いて、各々の乾燥ポリマーサンプルに対して300ppmのIonolで安定化した十分な1,2,4−トリクロロベンゼンを添加して、30mg/mLという最終濃度を得る。小さいガラス撹拌ロッドを各々のチューブに入れて、そのサンプルを、250rpmで回転する加熱式旋回シェーカーを用いて160℃で2時間加熱する。次いで濃縮されたポリマー溶液を、自動化液体処理ロボットおよび160℃に設定された加熱針を用いて1mg/mlに希釈する。
【0104】
Symyx Rapid GPCシステムを用いて各々のサンプルについての分子量データを決定する。2.0ml/分の流量に設定したGilson 350ポンプを用いて、直列に配置され、160℃に加熱された3つのPlgel 10マイクロメーター(μm)Mixed B 300mm×7.5mmカラムを通して300ppmのIonolで安定化させヘリウムでパージした1,2−ジクロロベンゼンを移動相としてポンプで送る。エバポレーターを250℃に設定し、ネブライザーを165℃に設定し、および窒素流量を60〜80psi(400〜600kPa)N2の圧で1.8SLMに設定したPolymer Labs ELS 1000 Detectorを用いる。ポリマーサンプルを160℃に加熱して、各々のサンプルを、液体処理ロボットおよび加熱ニードルを用いて250μlのループに注入した。2つの切り替えループおよび重複注入を用いるポリマーサンプルの連続的分析を用いる。このサンプルデータを収集して、Symyx Epoch(商標)ソフトウェアを用いて分析する。ピークを手技的に積分するが、報告された分子量情報は、ポリスチレン標準検量線に対して未補正である。
【0105】
標準的なCRYSTAF方法
分枝分布は、PolymerChar, Valencia, Spainから市販されているCRYSTAF 200ユニットを用いて結晶分析分画(crystallization analysis fractionation:CRYSTAF)によって決定する。このサンプルは、160℃で1,2,4トリクロロベンゼン(0.66mg/mL)に1時間溶解させ、そして95℃で45分間安定化させる。サンプリング温度は、0.2℃/分の冷却速度で95〜30℃におよぶ。赤外線検出器を用いて、ポリマー溶液の濃度を測定する。累積溶解濃度は、温度の低下と同時にポリマーが結晶化する間に測定する。累積されたプロフィールの分析導関数は、そのポリマーの短鎖分枝分布を反映する。
【0106】
CRYSTAFのピーク温度および面積は、CRYSTAFソフトウェア(Version 2001.b, PolymerChar, Valencia, Spain)に含まれるピーク分析モジュールによって特定される。CRYSTAFピーク検出ルーチン(finding routine)は、ピーク温度をdW/dT曲線の最大値として特定し、そしてこの微分曲線におけるその特定したピークの片側の正の最大変曲間の面積を特定する。CRYSTAF曲線を算出するために、好ましい処理パラメーターは、70℃の温度限界を有し、ならびにその温度限界より上では0.1の、およびその温度限界より下では0.3の平滑化パラメーターを有するものである。
【0107】
DSC標準法(サンプル1〜4およびA〜Cを除く)
示差走査熱量測定法(Differential Scanning Calorimetry)の結果は、RCS冷却アクセサリおよびオートサンプラーを装備したTAIモデルQ1000 DSCを用いて決定する。50ml/分という窒素パージガス流を用いる。このサンプルを、薄膜にプレスして、約175℃でプレス内で溶融し、次いで室温(25℃)まで空冷する。次いで3〜10mgの物質を6mmの直径のディスクに切断し、正確に秤量し、軽量アルミのパンに入れ(約50mg)、次いで圧着する。サンプルの熱挙動は、以下の温度プロフィールで検討する。このサンプルを180℃まで急速に加熱して、3分間恒温に保持して、以前の熱履歴を除く。次いで、このサンプルを10℃/分の冷却速度で−40℃まで冷却し、−40℃で3分間保持する。次いで、このサンプルを10℃/分の加熱速度で150℃まで加熱する。その冷却および第二の加熱曲線を記録する。
【0108】
DSC融解ピークは、−30℃と融解終点との間にひいた直線のベースラインに関する熱流量(W/g)における最大として測定される。融解熱は直線のベースラインを用いて−30℃と融解終点との間の融解曲線の下の面積として測定される。
【0109】
GPC法(サンプル1〜4およびA〜Cを除く)
このゲル浸透クロマトグラフィーシステムは、Polymer Laboratories Model PL-210またはPolymer Laboratories Model PL-220のいずれかの装置から構成される。このカラムおよびカルーセルの区画は、140℃で操作される。3つのPolymer Laboratories 10ミクロン Mixed-Bカラムを用いる。この溶媒は、1,2,4トリクロロベンゼンである。サンプルは、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する50ミリリットルの溶媒中に0.1グラムというポリマー濃度で調製する。サンプルは、160℃で2時間、軽く撹拌することによって調製する。用いられる注入容積は、100μlであり、そして流量は1.0ml/分である。
【0110】
GPCカラムセットの較正は、個々の分子量の間の少なくとも10の隔たりがある6つの「カクテル(cocktail)」混合物で準備した、580〜8,400,000におよぶ分子量を有する、21個の狭い分子量分布のポリスチレン標準物質で行われる。この標準物質は、Polymer Laboratories(Shropshire,UK)から購入する。ポリスチレン標準物質は、分子量1,000,000以上については、50ミリリットルの溶媒中に0.025グラムで、そして分子量1,000,000未満については50ミリリットル中に0.05グラムで調製する。このポリスチレン標準物質は、穏やかに撹拌しながら80℃で30分間溶解する。狭い標準物質混合物を最初にランし、そして分解を最小にするために最も高い分子量の成分から低いものへと順番にランする。ポリスチレン標準物質ピーク分子量を、以下の式を用いてポリスチレン分子量に変換する(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載のとおり):Mホ゜リエチレン=0.431(Mホ゜リスチレン)。
【0111】
ポリエチレン等量分子量の計算は、Viscotek TriSECソフトウェアのVersion3.0を用いて行う。
【0112】
圧縮永久ひずみ(Compression Set)
圧縮永久ひずみは、ASTMD 395に従って測定する。このサンプルは、総厚みが12.7mmに達するまで、3.2mm、2.0mmおよび0.25mmという厚みの25.4mmの直径の丸いディスクを重ねることによって調製する。このディスクは、以下の条件下においてホットプレスで成形した12.7cm×12.7cmの圧縮成形プラックから切り出す:190℃で3分間ゼロ圧、続いて190℃で2分間86MPa、続いてプレス内部で冷水を流しながら86MPaで冷却。
【0113】
密度
密度測定のためのサンプルは、ASTMD 1928に従って調製する。測定は、ASTMD792、方法Bを用いて1時間内のサンプルプレスで行う。
【0114】
屈曲/割線弾性率/貯蔵弾性率
サンプルは、ASTMD 1928を用いて圧縮成形する。曲げ弾性率および2%の割線弾性率を、ASTM D-790に従って測定する。貯蔵弾性率はASTM D5026-01または等価な技術に従って測定する。
【0115】
光学的特性
0.4mmの厚みのフィルムを、ホットプレス(Carver Model#4095-4PR1001R)を用いて圧縮成形する。このペレットは、ポリテトラフルオロエチレンシートの間に置いて、190℃で55psi(380kPa)で3分間、続いて1.3MPaで3分間、次いで2.6MPaで3分間加熱する。次いで、このフィルムを、1.3Mpaで1分間、冷水を流しながらプレス中で冷却する。この圧縮成形フィルムを、光学測定、引張挙動、回復および応力緩和のために用いる。
【0116】
透明度は、ASTM D1746で特定されたようにBYK Gardner Haze-gardを用いて測定する。
【0117】
45°光沢(gloss)は、ASTM D-2457に特定されたように、BYK Gardner Glossmeter Microgloss45°を用いて測定する。
【0118】
内部の曇り(internal haze)は、ASTMD 1003手順Aに基づいてBYK Gardner Haze-gardを用いて測定する。鉱油をこのフィルムの表面に塗布して、表面のスクラッチを除去する。
【0119】
機械的特性−引張、ヒステリシス(履歴現象)および引裂
短軸引張における応力−ひずみ挙動を、ASTM D1708微小引張試験片(microtensile specimens)を用いて測定する。サンプルは、21℃で1分あたり500%でInstronを用いて延伸する。引張強度および破断点伸度は、5つの試験片の平均から報告される。
【0120】
100%および300%のヒステリシスは、Instron(商標)装置でASTM D1708微小引張試験片を用いて100%ひずみおよび300%ひずみまでの循環荷重から決定される。サンプルに、21℃で3サイクル、1分あたり267%で荷重を負荷し、除荷する。300%および80℃でのサイクル実験は、環境チャンバを用いて行う。80℃の実験では、サンプルは、試験の前に試験温度で45分間、平衡化させる。21℃、300%ひずみのサイクル実験では、第一の除荷のサイクルからの150%のひずみでの収縮性応力を記録する。全ての実験についての回復パーセントは、荷重がベースラインに戻るひずみを用いて第一の除荷サイクルから算出する。回復パーセントは以下に規定される:
回復%={(εf−εs)/εf}×100
ここでεfは、循環荷重に対してとったひずみであり、εsは、1回目の除荷サイクルの間に荷重がベースラインに戻る場合のひずみである。
【0121】
応力緩和を、環境チャンバを装備したInstron(商標)装置を用いて、50%のひずみおよび37℃で12時間、測定する。ゲージの形状は76mm×25mm×0.4mmであった。環境チャンバ中で37℃で45分間の平衡させた後、サンプルを1分あたり333%で50%ひずみまで延伸した。応力は、時間の関数として12時間記録した。12時間後の応力緩和パーセントは式:
応力緩和%={(L0−L12)/L0}×100
を用いて算出した。
【0122】
ここでL0は、0時点での50%ひずみの荷重であり、そしてL12は、12時間後時点の50%ひずみの荷重である。
【0123】
引張ノッチ付引裂実験(tensile notched tear experiments)を、Instron(商標)装置を用いて0.88g/cc以下の密度を有するサンプルで行う。この形状は、76mm×13mm×0.4mmのゲージ部分からなり、このサンプルにはその試験片の長さの半分の位置に2mmの切込みが入っている。そのサンプルが壊れるまで、21℃で1分あたり508mmで延伸させる。この引裂エネルギーは、最大荷重でのひずみまでの応力−伸長曲線下面積として算出する。少なくとも3つの試験片の平均が報告される。
【0124】
TMA
熱機械的分析(Thermal Mechanical Analysis)(針入温度)は、180℃および10MPa成形圧で5分間形成され、次いで風で急速冷却された、30mm直径×3.3mm厚みの圧縮成形ディスクで行う。用いた装置は、Perkin-Elmerから入手可能なブランド、TMA7である。この試験では、1.5mmの半径の先端を有するプローブ(P/N N519-0416)を、1Nの力を用いてサンプルディスクの表面に適用する。その温度を25℃から1分あたり5℃上昇させる。このプローブ針入距離は、温度の関数として測定される。このプローブがサンプルに1mm針入した時、実験が終わる。
【0125】
DMA
動的機械分析(Dynamic Mechanical Analysis)(DMA)は、180℃で10MPaの圧力で5分間、ホットプレス中において成形され、次いで1分あたり90℃でこのプレス中で水冷された圧縮成形ディスクで測定する。試験は、ねじり試験のための二重カンチレバー固定具を装備したARES制御ひずみレオメーター(TA instrument)を用いて行う。
【0126】
1.5mmのプラックをプレスして、32×12mmの寸法のバーに切断する。そのサンプルを10mm(グリップ間隔ΔL)ずつ隔てた固定具の間において両端でクランプして、−100℃〜200℃の逐次的温度段階(1段階あたり5℃)に供する。各々の温度でねじり弾性率G’を、10rad/sの角周波数で測定し、このひずみ振幅は、トルクが十分であること、そして測定値が直線状態のままあることを保証するために0.1パーセント〜4パーセントの間で維持される。
【0127】
10gという最初の静止力を維持して(自動引っ張り方式)、熱膨張が生じる時のサンプル中のゆるみを防ぐ。結果として、グリップ間隔ΔLは、温度とともに、特に、ポリマーサンプルの融点または軟化点より上で、増大する。試験は、最大温度か、または固定具の間の隙間が65mmに達した時に終わる。
【0128】
メルトインデックス
メルトインデックスI2は、ASTM D1238、条件190℃/2.16kgに従って測定する。メルトインデックスI10はまた、ASTM D1238、条件190℃/10kgに従って測定する。
【0129】
ATREF
分析的昇温溶離分画(analytical temperature rising elution fractionation)(ATREF)分析を、その全体が参照によって本明細書に援用される、米国特許第4,798,081号およびWilde,L.;Ryle,T.R.;Knobeloch,D.C.;Peat,I.R.;Determination of Branching Distributions in Polyethylene and Ethylene Copolymer,J.Polym.Sci.,20,441〜455(1982)に記載された方法に従って行う。分析されるべき組成物を、トリクロロベンゼンに溶解して、1分あたり0.1℃の冷却速度で20℃までゆっくり温度を下げることによって、不活性支持体(ステンレス鋼ショット)を含むカラム中で結晶させる。このカラムには、赤外線検出器が装備されている。次いで、1分あたり1.5℃の速度で20から120℃へ溶離溶媒(トリクロロベンゼン)の温度をゆっくり上昇させることによりカラムから結晶化ポリマーサンプルを溶離することによって、ATREFのクロマトグラフィー曲線を作成する。
【0130】
13C NMR分析
サンプルを、10mmのNMRチューブ中で0.4gのサンプルに対してテトラクロロエタン−d2/オルトジクロロベンゼンの50/50の混合物の約3gを添加することによって調製する。そのサンプルを、このチューブおよびその内容物を150℃に加熱することによって溶解して、均質化する。100.5MHzという13Cの共鳴周波数に相当する、JEOL ECLIPSE(商標)400MHz分光計、またはVarian Unity PLUS(商標)400MHz分光計を用いてデータを収集する。そのデータを、6秒のパルス繰り返し時間遅延により1データ・ファイルについて4000の減衰シグナルを用いて得る。定量的分析のための最小のシグナル対ノイズ比を達成するために、複数のデータファイルを一緒に加える。スペクトルの幅は25,000Hzであり、最小のファイルサイズは32Kのデータ・ポイントである。このサンプルは、10mmの広帯域プローブ中で130℃で分析する。コモノマーの取り込みは、Randallのトライアッド法(Randall, J.C.; JMS-Rev. Macromol. Chem. Phy., C29, 201-317 (1989)、その全てが参照され、本明細書に引用される)を用いて決定される。
【0131】
TREFによるポリマー分画
大規模なTREF分画は、160℃で4時間撹拌することによって2リットルの1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)中に15〜20gのポリマーを溶解することによって行う。このポリマー溶液は、30−40メッシュ(600〜425μm)球状の、技術的品質のガラスビーズ(Potters Industries, HC30 Box20, Brownwood, TX, 76801から入手可能)およびステンレス鋼、0.028”(0.7mm)の直径のカット・ワイア・ショット(Pellets, Inc. 63 Industrial Drive, North Tonawanda, NY, 14120から入手可能)の60:40(v:v)混合物をパックした3インチ×4フィート(7.6cm×12cm)のスチール・カラム上に15psig(100kPa)窒素によって圧入する。このカラムを、160℃に最初に設定した、熱制御されたオイルジャケットに浸す。このカラムを125℃に弾道的に最初に冷却し、次いで1分あたり0.04℃で20℃までゆっくり冷却して、1時間保持する。温度を1分あたり0.167℃で上昇させながら、新鮮なTCBを1分あたり約65mlで導入する。
【0132】
分取TREFカラムからの約2000mL分の溶離液を、16のステーションの加熱されたフラクションコレクターに収集する。このポリマーを、約50〜100mlのポリマー溶液が残るまで、ロータリーエバポレーターを用いて各々の画分中で濃縮させる。この濃縮溶液を、一晩静置させて、その後に、過剰のメタノールを添加し、濾過して、洗浄する(最終の洗浄を含む約300〜500mlのメタノール)。濾過工程を、5.0μmのポリテトラフルオロエチレンコーティング濾紙(Osmonics Inc.から入手可能、カタログ番号Z50WP04750)を用いて、3位置の真空利用濾過ステーションで行う。濾過された画分を、60℃で真空オーブン中において一晩乾燥させて、さらなる試験の前に化学天秤で秤量する。
【0133】
溶融強度
溶融強度(MS)を、2.1mmの直径、約45度の入口角を有する20:1のダイと適合されたキャピラリー・レオメータを用いることによって測定する。190℃で10分間サンプルを平衡化した後、このピストンを1分あたり1インチ(2.54cm/分)の速度で動かす。標準試験温度は190℃である。サンプルを2.4mm/秒2の加速を有するダイの100mm下に配置される1セットの加速ニップに一軸に圧伸する。必要な張力を、ニップ・ロールの巻き取り速度の関数として記録する。試験の間に到達する最大張力が、溶融強度として規定される。引取共振を示すポリマー溶融の場合、引取共振の発生の前の張力を溶融強度とした。溶融強度は、センチニュートン(centiNewton)(「cN」)で記録される。
【0134】
触媒
「一晩(overnight)」という用語を用いる場合、約16〜18時間の時間をいい、「室温(room temperature)」とは、20〜25℃の温度をいい、そして「混合アルカン(mixed alkanes)」という用語は、Exxon Mobil Chemical Companyから、Isopar(登録商標)Eという商品名で利用可能なC6-9脂肪族炭化水素の商業的に得られる混合物を指す。本明細書において化合物の名称がその構造図に従わない場合には、構造図が優先するものとする。全ての金属錯体の合成および全てのスクリーニング実験の準備を、ドライ・ボックス技術を用いて乾燥窒素雰囲気で行った。用いた全ての溶媒は、HPLC等級であって、その使用前に乾燥させた。
【0135】
MMAOとは、Akzo-Noble Corporationから市販されている、修飾メチルアルモキサン、トリイソブチルアルミニウム修飾メチルアルモキサンをいう。
【0136】
触媒(B1)の調製は、以下のとおり行う。
【0137】
a) (1−メチルエチル)(2−ヒドロキシ−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)メチルイミンの調製
3,5−ジ−t−ブチルサリチルアルデヒド(3.00g)を10mLのイソプロピルアミンに添加する。この溶液は急速に鮮黄色に変わる。周囲温度での3時間の撹拌後、揮発性物質を減圧下で除去して、鮮黄色の結晶性固体を得る(97パーセント収率)。
【0138】
b) 1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(1−メチルエチル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジルの調製
(1−メチルエチル)(2−ヒドロキシ−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミン(605mg、2.2ミリモル)を5mLのトルエンに含有する溶液を、50mLのトルエンにZr(CH2Ph)4(500mg、1.1mmol)を含む溶液にゆっくり添加する。得られた濃黄色の溶液を30分間撹拌する。溶媒を減圧下で除去して、所望の生成物を赤褐色固体として得る。
【0139】
触媒(B2)の調製は以下のとおり行う。
【0140】
a) (1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)(2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミンの調製
2−メチルシクロヘキシルアミン(8.44mL、64.0mmol)をメタノール(90mL)に溶解して、ジ−t−ブチルサリチルアルデヒド(10.00g、42.67mmol)を添加する。その反応混合物を3時間撹拌し、次いで−25℃で12時間冷却する。得られた黄色固体沈殿物を濾過によって収集して、冷メタノール(2×15mL)で洗浄し、次いで、減圧下で乾燥させる。収量は、11.17gの黄色固体である。1H NMRは、異性体の混合物として所望の生成物と一致する。
【0141】
b) ビス−(1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)(2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミノ)ジルコニウムジベンジルの調製
(1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミン(7.63g、23.2mmol)を含有する200mLのトルエンの溶液を、600mLのトルエンに含有されるZr(CH2Ph)4(5.28g、11.6mmol)の溶液にゆっくり添加する。得られた濃黄色の溶液を25℃で1時間撹拌する。その溶液を680mLのトルエンでさらに希釈して、0.00783Mの濃度を有する溶液を得る。
【0142】
共触媒1
実質的に米国特許第5,919,9883号、実施例2に開示されるように、長鎖トリアルキルアミン(Armeen(商標)M2HT、Akzo-Nobel,Incから入手可能)、HClおよびLi[B(C654]の反応によって調製される、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(本明細書において以降ではホウ酸アーメーニウム(armeenium))のメチルジ(C14-18アルキル)アンモニウム塩の混合物。
【0143】
共触媒2
米国特許第6,395,671号、実施例16に従って調製された、ビス(トリス(ペンタフルオロフェニル)−アルマネ)−2−ウンデシルイミダゾリドの混合C14-18アルキルジメチルアンモニウム塩。
【0144】
可逆的移動剤
使用される可逆的移動剤としては、ジエチル亜鉛(DEZ、SA1)、ジ(i−ブチル)亜鉛(SA2)、ジ(n−ヘキシル)亜鉛(SA3)、トリエチルアルミニウム(TEA,SA4)、トリオクチルアルミニウム(SA5)、トリエチルガリウム(SA6)、i−ブチルアルミニウム ビス(ジメチル(t−ブチル)シロキサン)(SA7)、i−ブチルアルミニウム ビス(ジ(トリメチルシリル)アミド)(SA8)、n−オクチルアルミニウム ジ(ピリジン−2−メトキシド)(SA9)、ビス(n−オクタデシル)i−ブチルアルミニウム(SA10)、i−ブチルアルミニウム ビス(ジ(n−ペンチル)アミド)(SA11)、n−オクチルアルミニウム ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド)(SA12)、n−オクチルアルミニウム ジ(エチル(1−ナフチル)アミド)(SA13)、エチルアルミニウム ビス(t−ブチルジメチルシロキシド)(SA14)、エチルアルミニウム ジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)(SA15)、エチルアルミニウム ビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)(SA16)、n−オクチルアルミニウム ビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)(SA17)、n−オクチルアルミニウム ビス(ジメチル(t−ブチル)シロキシド(SA18)、エチル亜鉛(2,6−ジフェニルフェノキシド)(SA19)およびエチル亜鉛(t−ブトキシド)(SA20)が挙げられる。
【0145】
実施例1−4、比較例A*−C*
一般的なハイスループット並列重合条件
重合を、Symyx technologies, Inc.から入手可能なハイスループットの並列式重合反応装置(parallel polymerization reactor)(PPR)を用いて行い、そして米国特許の6,248,540号、同第6,030,917号、同第6,362,309号、同第6,306,658号および同第6,316,663号に実質的に従って操作する。エチレン共重合を、用いた総触媒に基づいて共触媒1の1.2当量(MMAOが存在する場合1.1当量)を用いて、必要時にエチレンを用いて130℃かつ200psi(1.4MPa)で行う。一連の重合を、予め秤量したガラスチューブが取り付けられている48の個々の反応セルを6×8配列で備えている並列式耐圧反応装置(PPR)で行う。各々の反応装置セル中の作業容積は6000μLである。各々のセルは、個々の撹拌パドルによって撹拌されながら、温度および圧力が制御される。モノマーのガスおよびクエンチガスをPPRユニットに直接配管して、自動バルブで制御する。液体試薬を、シリンジによって各々の反応装置セルにロボット制御により添加して、そのリザーバー溶媒は混合アルカンである。添加の順序は、混合アルカン溶媒(4ml)、エチレン、1−オクテンコモノマー(1ml)、共触媒1または共触媒1/MMAO混合物、可逆的移動剤、および触媒または触媒混合物である。共触媒1およびMMAOの混合物、または2つの触媒の混合物を用いる場合、それらの試薬を、反応装置への添加の直前に小さいバイアル中で事前に混合する。実験で試薬が省略される場合、その他は上記の順序の添加が維持される。重合を、所定のエチレン消費に到達するまで、約1〜2分間行う。COでのクエンチング後、その反応装置を冷却して、ガラスチューブを取り外す。そのチューブを遠心分離/真空乾燥ユニットに移して、60℃で12時間乾燥する。乾燥されたポリマーを含むチューブを秤量して、その重量と風袋重量との間の差違で、ポリマーの正味の収量が得られる。結果は表1に含まれる。表1で、そして本出願のどこかでは、比較化合物は、星印(*)によって示される。
【0146】
実施例1〜4は、極めて狭いMWDの形成によって証明される、本発明による線状ブロックコポリマー、特にDEZが存在する場合は単頂性のコポリマー、そしてDEZの非存在下における二頂性の広い分子量分布の生成物(別々に生成されたポリマーの混合物)の合成を実証する。触媒(A1)が触媒(B1)よりもオクテンを多く組み込むことが公知であるという事実に起因して、本発明の得られたコポリマーの種々のブロックまたはセグメントは、分枝または密度に基づいて識別可能である。
【0147】
【表1】

本発明に従って生成されるポリマーは、可逆的移動剤の非存在下で調製したポリマーよりも比較的狭い多分散性(Mw/Mn)および比較的大きいブロック−コポリマー含量(三量体、四量体またはそれ以上)を有することが示され得る。
【0148】
さらなる特性付けのために、図を参照して、表1のポリマーについてのデータを判定する。さらに詳細にはDSCおよびATREFの結果によって、以下が示される:
実施例1のポリマーについてのDSC曲線は、158.1J/gという融解熱で115.7℃の融点(Tm)を示す。対応するCRYSTAF曲線は、34.5℃で最高のピークを示し、52.9パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間の相違は81.2℃である。
【0149】
実施例2のポリマーのDSC曲線は、214.0J/gの融解熱で109.7℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、46.2℃で最高のピークを示し、57.0パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間の相違は63.5℃である。
【0150】
実施例3のポリマーのDSC曲線は、160.1J/gの融解熱で120.7℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、66.1℃で最高のピークを示し、71.8パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間の相違は54.6℃である。
【0151】
実施例4のポリマーのDSC曲線は、170.7J/gの融解熱で104.5℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、30℃で最高のピークを示し、18.2パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間の相違は74.5℃である。
【0152】
比較例A*のDSC曲線は、86.7J/gの融解熱で90.0℃の融点(Tm)を示す。対応するCRYSTAF曲線は、48.5℃で最高のピークを示し、29.4パーセントのピーク面積である。これらの値の両方とも、密度が低い樹脂と一致する。DSC TmとTcrystafとの間の相違は41.8℃である。
【0153】
比較例B*のDSC曲線は、237.0J/gの融解熱で129.8℃の融点(Tm)を示す。対応するCRYSTAF曲線は、82.4℃で最高のピークを示し、83.7パーセントのピーク面積である。これらの値の両方とも、密度が高い樹脂と一致する。DSC TmとTcrystafとの間の相違は47.4℃である。
【0154】
比較例C*のDSC曲線は、143.0J/gの融解熱で125.3℃の融点(Tm)を示す。対応するCRYSTAF曲線は、34.7パーセントのピーク面積で81.8℃で最高のピークを、そして52.4℃でより低い結晶ピークを示す。この2つのピークの間の分離は、高結晶性および低結晶性のポリマーの存在と一致する。DSC TmとTcrystafとの間の相違は43.5℃である。
【0155】
実施例5−19、比較例D*−F*、連続的溶液重合、触媒A1/B2+DEZ
連続溶液重合は、内部スターラーを装備したコンピュータ制御のオートクレーブ反応装置で行う。精製された混合アルカン溶媒(Exxon Mobil Chemical Companyから入手可能なIsopar(商標)E)、エチレン2.70lbs/時間(1.22kg/時間)、1−オクテンおよび水素(用いる場合)を、温度制御のためのジャケットおよび内部熱電対を装備した3.8Lの反応装置に供給する。この反応装置へ供給された溶媒は、マスフローコントローラーによって測定する。変速ダイヤフラムポンプが、溶媒流量および反応装置に対する圧を制御する。ポンプの排出の際に、側流をとって触媒および共触媒1注入ラインのためのフラッシュフローならびに反応装置撹拌を設ける。これらのフローは、Micro−Motionマスフローメーターによって測定して、制御バルブによって、またはニードルバルブの手動調節によって制御する。得られた溶媒を、1−オクテン、エチレンおよび水素(用いる場合)と合わせて、反応装置に供給する。マスフローコントローラーを用いて、必要な場合反応装置に水素を供給する。溶媒/モノマー溶液の温度は、反応装置に入れる前、熱交換器の使用によって制御する。この流れを反応装置の底に入れる。触媒成分溶液を、ポンプおよびマスフロー計を用いて測定して、触媒フラッシュ溶媒とあわせ、そして反応装置の底に入れる。その反応装置を激しく撹拌しながら500psig(3.45MPa)で液体を満たして反応させる。生成物を反応装置の頂部の出口ラインから取り出す。反応装置からの全ての出口ラインは蒸気トレースおよび絶縁が施されている。重合を、任意の安定化剤または他の添加物とともに出口ラインに少量の水を添加すること、および静的ミキサーを通じた混合物の通過によって、停止させる。次いで、この生成物の流れを、揮発分除去(devolatilization)の前に熱交換器を通過させることによって加熱する。ポリマー生成物は、揮発分除去押出機および水冷ペレタイザーを用いる押出によって回収する。プロセスの詳細および結果は表2に含まれる。選択されたポリマーの特性を表3に提供する。
【0156】
【表2】

【0157】
【表3】

得られたポリマーは、前の実施例と同様に、DSCおよびATREFによって試験される。結果は以下のとおりである:
実施例5のポリマーのDSC曲線は、60.0J/gの融解熱で119.6℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、47.6℃で最高のピークを示し、59.5パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは72.0℃である。
【0158】
実施例6のポリマーのDSC曲線は、60.4J/gの融解熱で115.2℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、44.2℃で最高のピークを示し、62.7パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは71.0℃である。
【0159】
実施例7のポリマーのDSC曲線は、69.1J/gの融解熱で121.3℃の融点を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、49.2℃で最高のピークを示し、29.4パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは72.1℃である。
【0160】
実施例8のポリマーのDSC曲線は、67.9J/gの融解熱で123.5℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、80.1℃で最高のピークを示し、12.7パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは43.4℃である。
【0161】
実施例9のポリマーのDSC曲線は、73.5J/gの融解熱で124.6℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、80.8℃で最高のピークを示し、16.0パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは43.8℃である。
【0162】
実施例10のポリマーのDSC曲線は、60.7J/gの融解熱で115.6℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、40.9℃で最高のピークを示し、52.4パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは74.7℃である。
【0163】
実施例11のポリマーについてのDSC曲線は、70.4J/gの融解熱で113.6℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、25.2パーセントのピーク面積で39.6℃で最高のピークを示す。DSC TmとTcrystafとの間のΔは74.1℃である。
【0164】
実施例12のポリマーについてのDSC曲線は、48.9J/gという融解熱で113.2℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、30℃以上のピークを示さない。(従って、さらなる計算の目的のためのTcystafは30℃に設定する)。DSC TmとTcrystafとの間のΔは83.2℃である。
【0165】
実施例13のポリマーのDSC曲線は、49.4J/gの融解熱で114.4℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、33.8℃で最高のピークを示し、7.7パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは84.4℃である。
【0166】
実施例14のポリマーのDSC曲線は、127.9J/gの融解熱で120.8℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、72.9℃で最高のピークを示し、92.2パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは47.9℃である。
【0167】
実施例15のポリマーのDSC曲線は、36.2J/gの融解熱で114.3℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、32.3℃で最高のピークを示し、9.8パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは82.0℃である。
【0168】
実施例16のポリマーのDSC曲線は、44.9J/gの融解熱で116.6℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、48.0℃で最高のピークを示し、65.0パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは68.6℃である。
【0169】
実施例17のポリマーについてのDSC曲線は、47.0J/gの融解熱で116.0℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、56.8パーセントのピーク面積で43.1℃で最高のピークを示す。DSC TmとTcrystafとの間のΔは72.9℃である。
【0170】
実施例18のポリマーについてのDSC曲線は、141.8J/gという融解熱で120.5℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、70.0℃で最高のピークを示し、94.0パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは50.5℃である。
【0171】
実施例19のポリマーのDSC曲線は、174.8J/gの融解熱で124.8℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、79.9℃で最高のピークを示し、87.9パーセントのピーク面積である。DSC TmとTcrystafとの間のΔは45.0℃である。
【0172】
比較例D*のポリマーについてのDSC曲線は、31.6J/gの融解熱で37.3℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、30℃以上のピークを示さない。これらの値の両方とも、低密度である樹脂と一致する。DSC TmとTcrystafとの間のΔは7.3℃である。
【0173】
比較例E*のポリマーについてのDSC曲線は、179.3J/gの融解熱で124.0℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、79.3℃で最高のピークを示し、94.6パーセントのピーク面積である。これらの値の両方とも、高密度である樹脂と一致する。DSC TmとTcrystafとの間のΔは44.6℃である。
【0174】
比較例F*のポリマーについてのDSC曲線は、90.4J/gの融解熱で124.8℃の融点(Tm)を有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、77.6℃で最高のピークを示し、19.5パーセントのピーク面積である。2つのピークの間の隔たりは、高結晶性ポリマーと低結晶性ポリマーの両方の存在と一致する。DSC TmとTcrystafとの間のΔは47.2℃である。
【0175】
物理的特性試験
ポリマーサンプルは、物理的特性、例えば、TMA温度試験によって証明されるような高温耐性の特性、ペレットブロックキング強度、高温回復、高温圧縮永久ひずみ、および貯蔵弾性率G’(25℃)/G’(100℃)について評価される。いくつかの市販のポリマーが、試験に含まれる:比較例G*は実質的に線状のエチレン/1−オクテンコポリマー(AFFINITY(登録商標)、The Dow Chemical Companyから入手可能)であり、比較例H*は、弾性の実質的に線状のエチレン/1−オクテンコポリマー(AFFINITY(登録商標)EG8100、The Dow Chemical Companyから入手可能)であり、比較例I*は、実質的に線状のエチレン/1−オクテンコポリマー(AFFINITY(登録商標)PL1840、The Dow Chemical Companyから入手可能)であり、比較例J*は、水素化スチレン/ブタジエン/スチレントリブロックコポリマー(KRATON(商標)G1652、KRATON Polymersから入手可能)であり、比較例K*は、熱可塑性加硫物(TPV,架橋されたエラストマーをその中に分散して含むポリオレフィンブレンド)である。結果は表4に示す。
【0176】
【表4】

表4では、比較例F*(触媒A1およびB1を用いる同時の重合から生じる2つのポリマーの物理的な混合物である)は、約70℃という1mm針入温度であるが、実施例5〜9は、100℃以上の1mm針入温度を有する。さらに実施例10〜19は全てが、85℃より大きい1mm針入温度を有し、ほとんどが、90℃を超えるかまたはさらには100℃より大きい1mmのTMA温度を有する。これによって、新規なポリマーは、物理的な混合物に比較して、より高い温度でより良好な寸法安定性を有することが示される。比較例J*(市販のSEBS)は、約107℃という良好な1mmのTMA温度を有し、ただし、これは約100パーセントという極めて乏しい(高温70℃)圧縮永久ひずみを有し、そしてまた高温(80℃)300パーセントひずみ回復の間に回復できない(サンプルが壊れた)。従って、例示されたポリマーは、いくつかの市販の高性能の熱可塑性エラストマーにおいてでさえ得ることができない特性の固有の組み合わせを有する。
【0177】
同様に、表4は、本発明のポリマーについて、6以下という低い(良好な)貯蔵弾性率G’(25℃)/G’(100℃)を示すが、物理的混合物(比較例F*)は、9という貯蔵弾性率比を有し、そして同様の密度のランダムなエチレン/オクテンコポリマー(比較例G*)は、1桁大きい貯蔵弾性率比を有する(89)。ポリマーの貯蔵弾性率比はできるだけ1に近いことが所望される。このようなポリマーは比較的温度によって影響されないし、このようなポリマーから作製される二次加工品は、広範な温度範囲にわたって有用に使用され得る。低い貯蔵弾性率比および温度独立性のこの特徴は、弾性用途において、例えば、感圧粘着剤配合物において、特に有用である。
【0178】
表4のデータによってまた、本発明のポリマーが改善されたペレットブロッキング強度を保有することが実証される。詳細には、実施例5は、0MPaというペレットブロッキング強度を有し、このことは、このポリマーが、かなりのブロッキングを示す比較例F*および比較例G*に比較して、試験された条件下で自由流動することを意味する。ブロッキング強度は、重要である。なぜなら、大きいブロッキング強度を有するポリマーの貨物輸送は、貯蔵または出荷(shipping)の際に製品同上のくっつきまたは粘着を生じ、取り扱いの特性が劣る。
【0179】
本発明のポリマーの高温(70℃)圧縮永久ひずみは一般に良好であって、このことは一般に約80パーセント未満、好ましくは約70%未満、そして特に約60パーセント未満を意味する。対照的に、比較例F*、G*、H*およびJ*は全てが、100パーセントという70℃圧縮永久ひずみを有する(最大可能値、回復がないことを示す)。ガスケット(gaskets)、窓枠、O−リングなどのような用途には、良好な高温圧縮永久ひずみ(低い数値)が特に必要である。
【0180】
【表5】

表5は、新規なポリマーについての機械的特性について、そして周囲温度での種々の比較ポリマーについての結果を示す。本発明のポリマーは、ISO4649に従って試験した場合、極めて良好な耐磨耗性を有することが示され得、これは一般に、約90mm3未満、好ましくは約80mm3未満、そして特に、約50mm3未満という容積減少を示す。この試験では、数が大きいほど、大きい容積減少を示し、そして結果として低い耐磨耗性を示す。
【0181】
本発明のポリマーの引張ノッチ付引裂強度によって測定した引裂強度は一般に、表5に示されるように、1000mJ以上である。本発明のポリマーの引裂強度は、3000mJ程度の高さ、または5000mJ程度の高さであってさえよい。比較ポリマーは一般に、750mJ以下の引裂強度を有する。
【0182】
表5によってまた、本発明のポリマーが、いくつかの比較例よりも150パーセントひずみでより良好な収縮応力を有する(より高い収縮応力値によって実証される)ことが示される。比較例F*、G*およびH*は、400kPa以下という150パーセントひずみでの収縮応力値を有するが、本発明のポリマーは、500kPa(実施例11)から約1100kPa(実施例17)程度の高さという150パーセントひずみでの収縮応力値を有する。150パーセント収縮応力値よりも高い値を有するポリマーは、弾性を有する用途、例えば、弾性の繊維および織物、特に不織物にかなり有用である。他の用途としては、オムツ(diaper)、衛生および医療用衣類ウエストバンドの用途、例えば、タブおよび弾性バンドが挙げられる。
【0183】
表5によってまた、応力緩和(50パーセントひずみ)がまた、例えば、比較例G*に対して比較した場合、本発明のポリマーについて改善される(少ない)ことが示される。応力緩和が低いとは、ポリマーがその力を、長期間にわたって体温における弾性特性の保持が所望されるオムツおよび他の衣類のような用途において、より良好に保持しているということを意味する。
【0184】
光学的試験
【0185】
【表6】

表6に報告される光学的特性は、実質的に配向性を欠く圧縮成形フィルムに基づく。ポリマーの光学的な特性は、重合において使用される可逆的連鎖移動剤の量の変動から生じる、結晶化サイズにおけるバリエーションに起因して広範な範囲で変化し得る。
【0186】
マルチブロックコポリマーの抽出
実施例5、7のポリマーおよび比較例E*のポリマーの抽出研究を行う。この実験では、ポリマーサンプルは、ガラス円筒濾紙(glass fritted extraction thimble)に秤量して、Kumagawa型の抽出機(extractor)に取り付ける。サンプルを含む抽出機を窒素でパージして、500mLの丸底フラスコに350mLのジエチルエーテルを充填する。次いでフラスコをこの抽出機に取付ける。エーテルを撹拌しながら加熱する。エーテルが円筒濾紙に凝縮し始める時点を書き留めて、抽出を窒素下で24時間進行させる。この時点で、加熱を停止して、溶液を冷却させる。抽出機中に残っている全てのエーテルをフラスコに戻す。フラスコ中のエーテルを周囲温度で減圧下でエバポレートして、得られた固体を窒素でパージ乾燥(purged dry)させる。残渣をヘキサンの連続的な洗浄を用いて秤量ボトルに移す。次いで、合わせたヘキサン洗浄液を別の窒素パージしながらエバポレートさせて、残渣を40℃において減圧下で一晩乾燥させる。抽出機中に残留するエーテルを窒素でパージ乾燥させる。
【0187】
次いで350mLのヘキサンを充填した第二の清浄な丸底フラスコを、この抽出機に接続する。円筒濾紙中でヘキサンの凝縮に最初に気付いた後、ヘキサンを撹拌しながら加熱還流して、還流下で24時間維持する。次いで加熱を停止して、フラスコを冷却させる。抽出機中に残っているヘキサンをフラスコに戻す。そのヘキサンを周囲温度で減圧下でのエバポレーションによって除去して、フラスコ中に残っている残渣を連続的なヘキサン洗浄を用いて秤量ボトルに移す。フラスコ中のヘキサンを窒素パージによってエバポレートして、その残渣を40℃で一晩減圧下で乾燥させる。
【0188】
抽出後に円筒濾紙中に残っているポリマーサンプルを、円筒濾紙から秤量ボトルに移して、40℃で一晩減圧乾燥する。結果は表7に含まれる。
【0189】
【表7】

追加のポリマー実施例19A〜J、連続溶液重合、触媒A1/B2+DEZ
実施例19A−Iについて
連続溶液重合は、コンピュータ制御完全混合反応装置で行う。精製された混合アルカン溶媒(Exxon Mobil Chemical Companyから入手可能なIsopar(商標)E)、エチレン、1−オクテンおよび水素(用いる場合)を合わせ、27ガロンの反応装置に供給する。この反応装置への供給物は、マスフローコントローラーによって測定する。供給流の温度は、反応装置に入れる前、グリコール冷却熱交換器の使用によって制御する。触媒成分溶液を、ポンプおよびマスフローメーターを用いて測定する。反応装置を圧力約550psigで液体を満たして反応させる。反応装置を出るときに、水および添加剤をポリマー溶液に注入する。水は触媒を加水分解して、重合反応を停止させる。反応装置後溶液を次いで加熱し、2段階の揮発物除去に備える。溶媒および未反応モノマーは、揮発物除去工程中に除去される。ポリマー溶融物は水中ペレット切断のために、ダイへポンプ送りされる。
【0190】
実施例19Jについて
内臓型攪拌機を装備したコンピュータ制御オートクレーブ反応装置において連続溶液重合を行う。精製混合アルカン溶媒(Exxon Mobile Chemical Companyから購入できるIsopar(商標));2.70ポンド/時(1.22kg/時)でエチレン;1−オクテン;および(使用する場合には)水素を、温度制御用のジャケットおよび内臓型熱電対を備えた3.8L反応装置に供給する。反応装置への溶媒供給量は、マスフローコントローラーによって測定する。変速ダイヤフラムポンプにより、反応装置への溶媒流量および圧力を制御する。そのポンプの排出時に、側流を使って、触媒および共触媒注入ラインおよび反応装置攪拌機にフラッシュフローをもたらす。これらのフローは、Mico-Motionマスフローメーターによって測定し、また、制御バルブによってまたはニードルバルブの手動調整によって制御する。残りの溶媒を1−オクテン、エチレンおよび(使用する場合には)水素と併せ、反応装置に供給する。必要に応じて、マスフローコントローラーを使用して反応装置に水素を送達する。溶媒/モノマー溶液の温度は、反応装置に入る前に熱交換器の使用により調節する。この流れが、反応装置の底部に入る。ポンプおよびマスフローメーターを使用して触媒成分溶液を計量し、触媒フラッシュ溶媒と併せ、反応装置の底部に導入する。その反応装置を、満液で、激しく攪拌しながら、500psig(3.45MPa)でランする。生成物は、その反応装置の頂部の出口ラインから取り出す。その反応装置のすべての出口ラインは、蒸気トレースおよび絶縁が施されている。任意の安定剤または他の添加剤とともにその出口ラインに沿って少量の水を添加し、その混合物をスタティックミキサーに通すことによって、重合を停止させる。その後、その生成物流を熱交換器に通すことによって加熱した後、脱揮する。脱揮押出機および水冷式ペレット製造機を使用する押出しにより、ポリマー生成物を回収する。
【0191】
プロセスの詳細および結果は、表8に含める。選択したポリマーの特性を表9A〜Cに提供する。
【0192】
表9Bにおいて、本発明の実施例19Fおよび19Gは、500%伸長後、約65〜70%の低い直後残留ひずみを示している。
【0193】
【表8】

【0194】
【表9A】

【0195】
【表9BC】

フィルム組成物に特に有用なエチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体成分(単数又は複数)
一部のエチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体が、フィルムに適する組成物において特に有益であることを発見した。例えば、特に有用なエチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体は、(ASTM D-792に従って測定されたとき)一般に約0.89g/cc、特に約0.89g/ccから約0.94g/cc、さらに好ましくは約0.91g/ccから約0.93g/ccの密度を有するものである。これらの密度の共重合体を単独で使用して、または他のポリマーと混合して、有益な特性を有するフィルムに適する組成物を製造することができる。
【0196】
同様に、上述のエチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体の分子量は、所与のフィルム用途のために前記共重合体を選択するとき、通常は考慮しなければならない。本共重合体の分子量は、ASTM D-1238、条件190℃/2.16kg(以前は「条件E」として知られており、I2としても知られている)に準じるメルトインデックス測定を用いて適便に示される。メルトインデックスは、ポリマーの分子量に反比例する。従って、この関係は線形ではないが、分子量が高くなるほど、メルトインデックスは低くなる。フィルム組成物に特に有用であり得る上記共重合体についてのメルトインデックスは、一般に、約0.1g/10分から約1.0g/10分、好ましくは約0.2g/10分から約0.8g/10分、および特に約0.3g/10分から約0.6g/10分である。これらのメルトインデックスの共重合体を単独で使用して、または他のポリマーと混合して、有益な特性を有するフィルムに適する組成物を製造することができる。
【0197】
それらの有益な共重合体の分子量を特性付けする際に有用な他の測定は、より高い分子量でのメルトインデックス測定、例えば、一般的な例として、ASTM D-1238、条件190℃/10kg(以前は「条件N」として知られており、I10としても知られている)を含む。高い重量のメルトインデックス測定値の低い重量の測定値に対する比は、メルトフロー比として知られており、測定されたI10およびそのI2メルトインデックス値についてのメルトフロー比は、適便にI10/I2と表される。本発明において特に有用な共重合体についてのメルトフロー比は、多くの場合、少なくとも約4、好ましくは約4から約10、およびさらに好ましくは約6から約8である。これらのメルトフロー比の共重合体を単独で使用して、または他のポリマーと混合して、有益な特性を有するフィルムに適する組成物を製造することができる。
【0198】
エチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体成分(単数または複数)を含む組成物
所与のフィルムのために選択される具体的な組成物は、フィルムのタイプ、層の数、その所望される用途および所望される特性に依存する。こうした特性としては、例えば、加工性、強度、ヒートシールまたは接着特性が挙げられる。適切なブレンドを使用することにより、フィルムの向上した性能または所望される特性の改善された兼備を達成することができる。
【0199】
1つの実施形態では、上で説明したエチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体を1つだけ含む組成物を使用することができる。あるいは、2つまたはそれ以上の上で説明したエチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体(各々が、1つまたはそれ以上の異なる特性を有するもの)を含む組成物を使用することができる。さらにもう1つの代替は、1つまたはそれ以上の他のポリマー[例えば、実質的に線状のエチレン共重合体またはホモポリマー(SLEP)、高圧低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン/酢酸ビニルコポリマー(EVA)、エチレン/カルボン酸コポリマーおよびそれらのアイオノマー、ポリブチレン(PB)、ならびにα−オレフィンポリマー、例えば高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)および超超低密度ポリエチレン、ならびにグラフト変性ポリマー、ならびに例えば、米国特許第5,032,463号(これは、本明細書において参照によって援用される)においてSmithにより開示されたものなどの密度、MWDおよび/またはコモノマーの組み合わせを含むそれらの組み合わせ]とブレンドされた1つまたはそれ以上の上で説明したエチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体を含む組成物の使用を含む。多層フィルムについては、外側のフィルム層(あるいは、当分野において「スキン層」または「表層」と呼ばれるもの)および/またはシーラント層が、エチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体、実質的に線状のエチレン共重合体および/もしくはホモポリマーまたはこれらの混合物を含むことが、一部の状況では好ましいこともある。
【0200】
多くの場合、所望される特性に依存するが、フィルムに好ましい組成物は、多くの場合、その組成物の総重量を基準にして少なくとも約20、さらに好ましくは少なくとも約30、さらにいっそう混合物少なくとも約50重量パーセントのエチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体を含む。多くの場合、チーグラー触媒、幾何形状拘束触媒、またはこれらの組み合わせを用いて製造された第2のポリマーまたはポリマーブレンドを含めることが望ましい。特に有用な第2ポリマーとしては、例えば、SLEP、LLDPE、LDPEおよびこれらのブレンド、例えば、米国特許第5,844,045号、同第5,847,053号および同第6,111,023号に記載されているものなどが挙げられる。こうしたポリマーは、例えば、The Dow Chemical CompanyおよびExxonからAFFINITY(登録商標)、Elite(商標)、Dowlex(商標)およびExact(商標)という名で市販されている。
【0201】
上記組成物は、任意の適便な方法によって形成することができる。例えば、これらのブレンドは、1つまたはそれ以上の成分の融点温度付近またはそれより上の温度でそれぞれの成分を混合または混練することにより作製することができる。大部分のエチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体組成物について、この温度は、130℃より上、最も一般的には145℃より上、および最も好ましくは150℃より上であり得る。所望の温度に達することができ、その混合物を溶融可塑化することが可能である典型的なポリマー混合または混練装置を利用することができる。これらとしては、ミル、混練機、押出機(一軸スクリューと二軸スクリューの両方)、バンバリーミキサー、カレンダーなどが挙げられる。混合の順序および方法は、最終組成物に依存し得る。バンバリーバッチミキサーと連続ミキサーの併用、例えば、バンバリーミキサー、続いてミルミキサー、続いて押出機、を利用することもできる。
【0202】
上記組成物を形成するためのもう1つの方法は、Brian W.S.KolthammerおよびRovert S.Cardewellの名で米国特許第5,844,045号において開示されているようなインサイチュー重合を含む。前記特許の開示は、その全体が本明細書において参照によって援用される。なかでも、米国特許第5,844,045には、少なくとも1つのの反応装置において少なくとも1つの均一系触媒を使用し、少なくとも1つの他の反応装置において少なくとも1つの不均一系触媒を使用する、エチレンとC3〜C20α−オレフィンの共重合が記載されている。多数の反応装置を直列でもしくは並列でまたはそれらの任意の組み合わせで運転し、少なくとも1つの反応装置を用いて、上で説明したようなエチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体を製造することができる。このように、幾何形状拘束触媒、チーグラー触媒およびこれらの組み合わせを含む溶液プロセスにおいて、ブレンドを製造することができる。こうしたブレンドは、例えば、1つもしくはそれ以上のエチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体(上で説明したようなもの、および2004年3月17日出願のPCT/US2005/008917におけるもの)、広い分子量分布の1つもしくはそれ以上のポリマー(例えば、米国特許第5,874,953号に例えば記載されているような不均一分枝エチレンポリマー)、および/または狭い分子量分布の1つもしくはそれ以上のポリマー(例えば、米国特許第3,645,992号(Elston)もしくは同第5,272,236号に記載されているような均一ポリマー)を含む。
【0203】
溶液重合反応装置を直列で使用するインサイチュー重合は、狭い分子量分布の少なくとも1つの高分子量ポリマーと、チーグラー触媒を用いて製造された広い分子量分布の少なくとも1つのポリマーとを含むブレンドを製造するときに特に好ましい。これは、それが、高分子量ポリマーを製造するために、多くの場合、実質的な溶媒を必要とし、そしてチーグラー触媒の使用が、多くの場合、均一系触媒より高い温度を必要とするためである。従って、後続の反応装置におけるチーグラー触媒でのより高い温度の使用は、過剰な溶媒の蒸発を助長するであろう。加えて、本発明の生成物を製造するために直列溶液反応装置を使用することのもう1つの利点は、たとえ、多くの場合、超高分子量生成物が、破局的反応装置汚損を伴わずに物理的に単離できないとしても、超高分子量生成物(例えば、0.05g/10分またはそれ以下のI2)を製造することができ、最終生成物に組み込むことができることである。このため、非常に分子量が高い成分が組み込まれている「ブレンド」については、第1成分を単離することができないので、別個または物理的ブレンドは、実際可能ではないことが多い。
【0204】
場合により他のポリマーとブレンドされた上述のエチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体を含む一部の組成物がフィルムに特に適することを発見した。従って、本エチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体は、単独で使用することができ、別のエチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体とブレンドすることができ、または一部の他のポリマーとブレンドすることができるが、多くの場合、その全体組成物が一定の特性を有することが好ましい。例えば、特に有用な組成物は、(ASTM D-792に従って測定された場合)一般には約0.89g/cc、特に約0.89g/ccから約0.95g/cc、さらに好ましくは約0.91g/ccから約0.93g/cc、およびさらにいっそう好ましくは約0.915g/ccから約0.927g/ccの総合密度を有するものである。
【0205】
同様に、全体組成物の分子量を通常は考慮しなければならない。全体組成物の分子量は、ASTM D-1238、条件190℃/2.16kg(以前は「条件E」として知られており、I2としても知られている)に準じるメルトインデックス測定を用いて適便に示される。メルトインデックスは、ポリマーの分子量に反比例する。従って、この関係は線形ではないが、分子量が高くなるほど、メルトインデックスは低くなる。フィルム組成物に特に有用であり得る組成物についてのメルトインデックスは、一般に、約0.1g/10分から約1.5g/10分、好ましくは約0.2g/10分から約1.2g/10分、および特に約0.4g/10分から約1.1g/10分である。
【0206】
有益な組成物の分子量を特性付けする際に有用な他の測定は、より高い分子量でのメルトインデックス測定、例えば、一般的な例として、ASTM D-1238、条件190℃/10kg(以前は「条件N」として知られており、I10としても知られている)を含む。高い重量のメルトインデックス測定値の低い重量の測定値に対する比は、メルトフロー比として知られており、測定されたI10およびそのI2メルトインデックス値についてのメルトフロー比は、適便にI10/I2と表される。本発明において特に有用な組成物についてのメルトフロー比は、多くの場合、少なくとも約4、好ましくは約5から約11、およびさらに好ましくは約6から約10である。
【0207】
フィルムに特に好ましい組成物は、多くの場合、約110℃と約140℃の間、さらに好ましくは約115℃と約130℃の間、および最も好ましくは約119℃と約126℃の間の最高のDSCピークを有する。これらの好ましい組成物は、多くの場合、約55℃と約95℃の間、さらに好ましくは約60℃と約90℃の間、および最も好ましくは約65℃と約85℃の間の最高のCrystafピークも示す。フィルム用の組成物の多分散性が、約1から約4.5、さらに好ましくは約1.25と約4.25の間、および最も好ましくは約1.5と約3.75の間であると有利であることも判明した。
【0208】
本発明の組成物から製造されるフィルムは、多くの場合、少なくとも約185、好ましくは少なくとも約250、さらに好ましくは少なくとも約400、さらにいっそう好ましくは少なくとも約450g/ミル、MD(縦方向(machine direction))の平均エルメンドルフ引裂強度(ASTM 1922)を示す。本発明の組成物から製造されるフィルムは、多くの場合、少なくとも約40、好ましくは少なくとも約150、さらに好ましくは少なくとも約200、さらに好ましくは少なくとも約250、さらに好ましくは少なくとも約300、さらに好ましくは少なくとも約400g/ミルの正規化DART(ASTM D1709)も示す。本発明の組成物から製造したフィルムの透明度(ASTM D1746)は、約5から約40、さらに好ましくは約10から約30にわたり得る一方で、曇り度(ASTM D1003)は、約5から約40、さらに好ましくは10から約35にわたり得る。
【0209】
本発明の組成物は、結果として生じるフィルムが望ましい特性をもう1つ有するように最適化することができる。良好な靭性、例えば引裂強度を有するフィルムが所望される場合、特に望ましい組成物は、TREFを用いて分画される場合、約60℃より上で溶出するポリマー画分を含み、および/またはTREFを用いて分画される場合、約30℃から約55℃で溶出する実質的なポリマー画分を含まず、好ましくは約40℃から約50℃で溶出される実質的なポリマー画分を含まない。いずれの特定の理論にも拘束されることを望まないが、約30℃から約55℃で溶出するポリマー画分は、フィルムのマトリックスに寄与せず、実際にフィルムのマトリックスを弱めることがあると考えられる。上述のTREF特性を有する組成物は、本明細書の恩恵がある通常の当業者が常用の実験法を用いて製造し、選択することができる。
【0210】
エチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体を製造するために利用される可逆的連鎖移動剤の量およびタイプに依存して、本発明の組成物は、利用された可逆的連鎖移動剤(単数または複数)の残分をさらに含むことがある。残分とは、分析により検出可能な量の原可逆的連鎖移動剤、またはその誘導体、例えば亜鉛もしくはアルミニウム化合物、のいずれかを意味する。
【0211】
本発明のマルチブロック組成物(ブレンドと純粋なポリマーの両方)としては、(30℃より上で溶出する全体組成物の)約48%未満、好ましくは約46%未満、さらに好ましくは約45%未満、さらに好ましくは約38%未満、さらに好ましくは約30%未満、さらに好ましくは約25%未満、さらに好ましくは約18%未満、さらに好ましくは約13%未満、さらに好ましくは約8%未満だが、少なくとも約7%が、多くの場合、前に述べたATREF法を用いて30℃と85℃の間で溶出する、約0.915から約0.922g/ccの密度範囲で、約95%未満のCDBI(例えば、この用語は、米国特許第5,844,045号および1993年3月4日に発行されたWO93/04486において用いられており、前記文献は、両方とも、本明細書において参照によって援用される)を有する組成物が挙げられる。
【0212】
約0.922から約0.927g/ccの密度範囲で約95%未満のCDBI(例えば、この用語は、米国特許第5,844,045号および1993年3月4日に発行されたWO93/04486において用いられており、前記文献は、両方とも、本明細書において参照によって援用される)を有する本発明の組成物(ブレンドと純粋なポリマーの両方)は、(30℃より上で溶出する全体組成物の)約33%未満、好ましくは約28%未満、さらに好ましくは約24%未満、さらに好ましくは約20%未満、さらに好ましくは約14%未満、さらに好ましくは約11%未満、さらに好ましくは約10%未満だが、少なくとも約9%が、多くの場合、前に述べたATREF法を用いて30℃と85℃の間で溶出することも発見した。
【0213】
有用な添加剤
添加剤、例えば、酸化防止剤[例えば、ヒンダードフェノール樹脂(例えば、Irganox(登録商標)1010またはIrganox(登録商標)1076)、ホスフィット(例えば、Irgafos(登録商標)168)すべてCiba Geigyの商標]、粘着剤(例えば、PIB)、PEPQ(商標)(Sandoz Chemicalの商標;この主成分は、ビフェニルホスホナイトであると考えられている)、顔料、着色剤、充填剤およびこれらに類するものも、所望される特性に干渉しない程度に、本共重合体およびコポリマーに含めることができる。上記二次加工フィルムは、粘着防止特性および摩擦係数特性を強化するために、未処理および処理済二酸化ケイ素、タルク、炭酸カルシウムおよびクレー、ならびに第一および第二脂肪酸アミド、シリコーン塗料などをはじめとする(しかし、これらに限定されない)添加剤も含有することがある。例えば、米国特許第4,486,552号(Niemann)(この開示は、本明細書において参照によって援用される)に記載されているような、フィルムの防曇特性を強化するための他の添加剤も、添加されることがある。さらに他の添加剤、例えば単独でのまたはEAAもしくは他の官能性ポリマーと併用での第四アンモニウム化合物、を添加して、フィルムの静電防止特性を強化し、電子的に高感度の品物を包装することができる。
【0214】
適するフィルム構造
本発明の組成物から製造されるフィルム構造は、従来の単純バブルまたはキャスト押出技術を用いて、ならびにより複雑な技術、例えば「テンターフレーミング」または「ダブルバブル」または「トラップドバブル(trapped bubble)」プロセスを用いることにより、製造することができる。
【0215】
延伸(orientation)は、実際は、例えば管を押す内部空気圧によりまたはフィルムの端を引っ張るテンターフレームにより、フィルムが延伸された(stretched)結果であるが、当分野および本明細書において、「stretched:延伸された」と「oriented:延伸された」は、同義で用いられている。
【0216】
単純ブローバブルフィルムプロセスは、例えば、The Encyclopedia of Chemical Thechnology, Kirk-Othmer, Third Edition, John Wiley & Sons, New York, 1981, Vol.16, pp. 416-417およびVol. 18, pp. 191-192に記載されており、この開示は、本明細書において参照によって援用される。「ダブルバブル」プロセスなどの二軸延伸フィルムを製造するための方法は、米国特許第3,456,044号(Pahlke)に記載されており、ならびに二軸延伸フィルム(biaxially stretched or oriented film)を作製するための他の適するプロセスは、米国特許第4,865,902号(Golikeら)、同第4,352,849号(Mueller)、同第4,820,557号(Warren)、同第4,927,708号(Herranら)、同第4,963,419号(Lustigら)および同第4,952,451号(Mueller)に記載されており、これらの各々の開示が、本明細書において参照によって援用される。本フィルム構造は、延伸ポリプロピレンのために使用されるものなどのテンター−フレーム技術に関して説明されているように製造することもできる。
【0217】
食品包装用途のための他の多層フィルム製造技術は、Packaging Foods With Plastics, by Wilmer A. Jenkins and James P. Harrington (1991), pp. 19-27および "Coextrusion Basics" by Tomas I. Butler, Film Extrusion Manual: Process, Materials, Properties pp. 31-80(TAPPI Pressにより出版されたもの(1992))に記載されている。前記参考文献の開示は、本明細書において参照によって援用される。
【0218】
Pahlkeにより米国特許第3,456,044号において単純バブル法と比較して開示されているように、「ダブルバブル」または「トラップドバブル」フィルム加工は、縦方向と横方向、両方のフィルムの延伸を有意に増大させることができる。増大された延伸は、そのフィルムを後に加熱したとき、より高い自由収縮値を生じさせる。また、Pahlkeは米国特許第3,456,044号においておよびLustigらは米国特許第5,059,481号(本明細書において参照によって援用される)において、低密度ポリエチレンおよび超超低密度ポリエチレン材料が、単純バブル法によって二次加工されたとき、劣った縦および横収縮特性、例えば両方向において約3%の自由収縮、をそれぞれ示すことを開示している。しかし、公知のフィルム材料とは対照的に、特に、Lustigらが米国特許第5,059,481号、同第4,976,898号および同第4,863,769号において開示しているものとは対照的に、ならびにSmithが米国特許第5,032,463号において開示しているものとは対照的に(これらの開示は、本明細書において参照によって援用される)、本発明のユニークな共重合体組成物は、縦方向と横方向の両方において有意に改善された単純バブル収縮特性を示すことができる。加えて、このユニークな共重合体を、高いブローアップ比で、例えば2.5:1もしくはそれ以上で単純バブルにより、またはさらに好ましくは、Pahlkeによって米国特許第3,456,044号においておよびLustigらによって米国特許第4,976,898号において開示されている「ダブルバブル」法により、二次加工することができたとき、結果として得られるフィルムを収縮ラップ包装に適するものにする良好な縦および横方向収縮特性を達成することができる。ブローアップ比は、本明細書では「BUR」と略記され、これは、式:
BUR=バブル直径/ダイ直径
によって計算される。
【0219】
本発明の組成物から製造されるオレフィン包装およびラッピングフィルムは、単層である場合もあり、多層である場合もある。本新規組成物から製造されるフィルムは、他の層(単数または複数)と共に共押出することもでき、またはそのフィルムを二次操作、例えば、Packaging Food With Plastics, by Wilmer A. Jenkins and James P. Harrington (1991)に記載されているものまたは"Coextrusion For Barrier Packaging" by W. J. Schrenk and C. R. Finch, Society of Plastics Engineers RETEC Proceedings, Jun. 15-17 (1981), pp. 211-229 に記載されているもので、別の層(単数または複数)の上に積層することができる。前記参考文献の開示は、本明細書において参照によって援用される。K. R. OsbornおよびW. A. Jenkinsによって "Plastic Films, Technology and Packaging Applications" (Technomic Publishing Co., Inc. (1992))(この開示は、本明細書において参照によって援用される)に記載されているようなチューブラフィルム(すなわち、インフレートフィルム技術)またはフラットダイ(すなわち、キャストフィルム)により単層フィルムを製造する場合には、フィルムは、多層構造を形成するために他の包装材料層に接着または押出ラミネートする追加の押出成形後段階を経なければならない。フィルムが、2つまたはそれ以上の層の共押出物(OsbornおよびJenkinsによっても記載されているもの)である場合、そのフィルムは、最終フィルムの他の物理的要件に依存して、追加の包装材料層にさらに積層されることがある。D.Dumbletonによる"Lamination Vs. Coextrusion" (Converting Magazine (September 1992)(この開示は、本明細書において参照によって援用されている)も、ラミネーション 対 共押出を論じしている。単層および共押出フィルムが、二軸延伸プロセスなどの他の押出成形後技法を経ることもある。
【0220】
押出コーティングは、本明細書に記載する新規組成物を使用して多層フィルム構造を製造するためのさらにもう1つの技法である。本新規組成物は、そのフィルム構造の少なくとも1つの層を構成する。キャストフィルムと同様に、押出コーティングは、フラットダイ技法である。単層押出物または共押出しされた押出物のいずれの形態の支持体上にもシーラントを押出コーティングすることができる。
【0221】
一般に、多層フィルム構造については、本明細書に記載の新規組成物は、その全多層フィルム構造の少なくとも1つの層を構成する。その多層構造の他の層としては、遮断層、および/またはタイ層、および/または構造層が挙げられるが、これらに限定されない。これらの層には様々な材料を使用することができ、それらのうちの幾つかは、その同じフィルム構造において1つより多くの層として使用されることがある。これらの材料のうちの幾つかとしては、フォイル、ナイロン、エチレン/ビニルアルコール(EVOH)コポリマー、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、延伸ポリプロピレン(OPP)、エチレン/酢酸ビニル(EVA)コポリマー、エチレン/アクリル酸(EAA)コポリマー、エチレン/メタクリル酸(EMAA)コポリマー、LLDPE、HDPE、LDPE、ナイロン、グラフト接着ポリマー(例えば、無水マレイン酸グラフトポリエチレン)、および紙が挙げられる。一般に、多層フィルム構造は、2層から約7層を含む。
【0222】
フィルムの所与の層を構成するために使用される具体的な組成物は、そのフィルムに望まれる特性、ならびに加工への考慮に依存する。それらの様々な特性に依存して、上述の4つの様々な包装法のいずれかおいても単層を使用することができるが、実際的な問題として、単層フィルムは、酸素透過性が重要であり得るストレッチ上包みおよびスキン包装法での使用に最も良く適応する。酸素透過性は、赤身肉の個々の切り身(すなわち、食料品雑貨商人/肉屋が、個々の販売のために、最初の肉を小さな切り身に実際に切断する「店内」ラッピング肉)のストレッチラップ包装に特に有益であり、この場合、酸素透過性により、生鮮赤身肉を望ましい鮮明な赤色へと「ブルーム」させることができる。赤身肉の個々の切り身を包装する際に有用なフィルムは、通常、最小の収縮および良好なストレッチ性を有する。このフィルムは、好ましくは、酸素透過性であり、ならびに消費者が、その肉を、フィルムを永久に変型させそれを魅力のないものにすることなく、試験することができるように、良好な弾性回復率を有する。赤身肉の個々の部分を包装する際に使用されるフィルムを熱収縮性フィルムとして作製することもできるが、現在の技法は、収縮特性を利用していない。他のフィルム用途としては、例えば、フィルムを引っ張って品物をラップまたは包囲し、その後、そのフィルムを元通りに縮ませるようなストレッチフーダー(hooder)用途が挙げられる。これらのフィルムは、強力な輸送袋用途、消費者および工業製品ライナー、シートおよびチューブ、ジオメンブレーン・ライニング(geomembrane lining)、農業用フィルム、温室用フィルム、建築用フィルムにも有用であり得る。
【0223】
特に望ましい場合もあるストレッチ上包み法において使用するための1つの単層は、エチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体と、エチレン/α,β−不飽和カルボニルコポリマー、例えばEVA、EAA、エチレン/メタクリル酸(EMAA)、およびそれらのアルカリ金属塩(アイオノマー)、エステルおよび他の誘導体とのブレンドである。
【0224】
共押出または積層多層フィルム構造(例えば、3および5層フィルム構造)については、本明細書に記載のエチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体組成物を、その構造のコア層、外面層、中間層および/または内部シーラント層として使用することができる。一般に、多層フィルム構造については、本エチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体は、その全多層フィルム構造の少なくとも10パーセントを構成する。その多層構造の他の層としては、遮断層、および/またはタイ層、および/または構造層が挙げられるが、これらに限定されない。これらの層には様々な材料を使用することができ、それらのうちの幾つかは、その同じフィルム構造において1つより多くの層として使用されることがある。これらの材料のうちの幾つかとしては、フォイル、ナイロン、エチレン/ビニルアルコール(EVOH)コポリマー、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、延伸ポリプロピレン(OPP)、エチレン/酢酸ビニル(EVA)コポリマー、エチレン/アクリル酸(EAA)コポリマー、エチレン/メタクリル酸(EMAA)コポリマー、ULDPE、LLDPE、HDPE、MDPE、LMDPE、LDPE、アイオノマー、グラフト変性ポリマー(例えば、無水マレイン酸グラフトポリエチレン)、および紙が挙げられる。一般に、多層フィルム構造は、2層から約7層を含む。
【0225】
本明細書において開示する1つの実施形態における多層フィルム構造は、少なくとも3つの層を含み(例えば、「A/B/A」構造)、この場合、各外層は、少なくとも1つのエチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体を含み、ならびに少なくとも1つのコアまたは隠れた層は、高圧分枝低密度ポリエチレン(LDPE)を含む。この多層フィルム構造は、多くの場合、驚くべきことに、良好な総合フィルム強度特性を維持しながら良好な光学特性を有する。一般に、フィルム構造層の比は、そのコア層が、全構造に対するそのパーセンテージの点から見て、そのフィルム構造を支配するような比である。そのコア層は、その全フィルム構造の少なくとも33%であるべきである(例えば、3層フィルム構造では、各「A」外層が全フィルム構造の33重量%を構成し、同時にコアLLDPE層(「B」層)が全フィルム構造の33%を構成する)。3層フィルム構造において、好ましくは、コアLDPE層は、全フィルム構造の少なくとも約70%を構成する。追加の隠れた層も、その光学特性を実質的に損なわせることなく、そのフィルム構造に組み込むことができる。例えば、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレンアクリル酸コポリマーもしくは無水物グラフト変性ポリエチレンを例えば含むタイ層または中間層を使用することができ、または塩化ビニリデン/塩化ビニルコポリマーもしくはエチレンビニルアルコールコポリマーを例えば含む遮断層を使用することができる。さらに好ましい3層フィルム構造において、各「A」外層は、全フィルム構造の15重量%の少なくとも1つのエチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体を含み、ならびに「B」コア層は、全フィルム構造の70重量%のLDPEを含む。多層フィルム構造を(任意の順序で)延伸および/または照射して、直線引裂性が制御された多層収縮フィルム構造またはスキン包装物を生じさせることができる。改善された光学的透明度を有する本明細書に開示する多層フィルム構造については、一般に、LDPEが、約0.915g/ccから約0.935g/ccの密度;約0.1g/10分から約10g/10分のメルトインデックス(I2);および少なくとも約1グラムの溶融張力を有する。改善された光学的透明度のために、本エチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体は、一般に、約0.85g/ccから約0.96g/cc、好ましくは約0.9g/ccから約0.92g/ccの密度;約0.2g/10分から約10g/10分、好ましくは約0.5g/10分から約2g/10分のメルトインデックス(I2);約3以下の分子量分布(Mw/Mn);およびDSCを用いて判定した場合に実質的に単一の融解ピークを有する。
【0226】
多層フィルム構造は、そのフィルムにおいて本エチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体を、単独で使用、または例えば、エチレン/酢酸ビニル(EVA)および/もしくはエチレンアクリル酸(EAA)などの他の酸素透過性フィルム層と併用することにより、酸素透過性となる場合もある。例えば、エチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体/EAA/エチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体およびLLDPE/エチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体/LLDPEフィルム構造は、特に興味深く、これらは、PVCの代わりに使用することができ、ならびに様々な生鮮食品、例えば、小売用に切られた赤身肉、魚、鶏肉、野菜、果物、チーズおよび他の食品(小売陳列用であり、環境酸素の出入りによる恩恵を受けるもの)のストレッチ上包みによく適する。好ましくは、これらのフィルムを、良好な酸素透過性、ストレッチ性、弾性回復率およびヒートシール特性を有する(例えば、ダブルバブル加工により誘導される二軸延伸を伴わない)非収縮フィルムとして作製し、任意の従来的形態、例えばストックロールで卸し業者および小売店が入手できるようにすることができ、ならびに従来の包装装置で使用することができる。
【0227】
もう1つの態様において、多層フィルム構造は、酸素遮断フィルム(例えば、SARAN(商標)、The Dow Chemical Company製のポリ塩化ビニルポリマーから製造されたフィルム;またはEVAL(商標)樹脂、これは、株式会社クラレ(Kuraray Ltd.)の完全所有子会社、クラレ・アメリカ(Kuraray of America)の一部門であるEval Company of America製のエチレン/ビニルアルコールコポリマーである)を含むことができる。酸素遮断特性は、部分肉(primal cuts of meat)(すなわち、特定の消費者消費用にさらに切るための、特定の商店に出荷される肉の大きな塊)の包装などのフィルム用途において重要である。米国特許第4,886,690号にDavisらが記載しているように、酸素遮断層は、包装された部分肉が肉屋/食品雑貨商店に届いたら取り除くことができるために「剥離性(peelable)」と呼ぶこともできる。剥離性構造または設計は、個々の部分の「ケースレディー(case-ready)」真空スキン包装に特に有用であり、ならびに鮮明な赤色へとブルームさせるために酸素透過性包装に包装し直す必要を無くす。
【0228】
本明細書に記載の両方の共重合体で製造されるフィルム構造は、包装すべき製品の形状および輪郭に関連して、任意の公知の方法により、例えば押出熱成形などにより、予備成形することもできる。予備成形フィルム構造を利用する利点は、延伸性を増大させるなどの所与の特定の包装操作を補足または回避すること、所与の延伸要件のためのフィルム厚低下、ならびに昇温およびサイクル時間減少などである。
【0229】
単層または多層フィルム構造の厚さは、様々であり得る。しかし、本明細書に記載の単層と多層、両方のフィルム構造について、その厚さは、約0.1ミル(2.5マイクロメートル)から約50ミル(1270マイクロメートル)、好ましくは約0.4ミル(10マイクロメートル)から約15ミル(381マイクロメートル)、および特に約0.6ミル(15マイクロメートルから約4ミル(102マイクロメートル)である。
【0230】
本明細書に記載の両方のエチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体から製造されるフィルム構造は、比較対象となる従来のチーグラー重合線状エチレン/α−オレフィンポリマーと比較した場合、驚くべきことに、より効率的な照射架橋を示すことができる。本発明の1つの態様として、これらのユニークなポリマーの効率的な照射を利用することにより、特異的または選択的に架橋されたフィルム層を有するフィルム構造を作製することができる。この発見をさらに利用して、本エチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体を含む特定のフィルム層材料を、プロ−ラド(pro-rad)剤、例えば、Warrenにより米国特許第4,957,790号に記載されているようなトリアリルシアヌレートと、および/または酸化防止剤架橋抑制物質、例えば、Evertらにより米国特許第5,055,328号に記載されているようなブチル化ヒドロキシトルエンと配合することができる。
【0231】
照射架橋は、これらのフィルム構造の収縮温度範囲およびヒートシール範囲を増大させることにも有用である。例えば、本明細書において参照によって援用される米国特許第5,089,321号には、良好な照射架橋性能を有する、少なくとも1つのヒートシール可能な外層および少なくとも1つのコア層を含む多層フィルム構造が開示されている。照射架橋技術の中でも、電子ビーム源によるβ線照射、およびコバルト60などの放射性元素によるγ線照射は、フィルム材料の最も一般的な架橋方法である。
【0232】
照射架橋プロセスでは、熱可塑性フィルムをブローンフィルムプロセスにより加工し、その後、20Mrad以下の照射線量で照射源(βまたはγ)に暴露して、そのポリマーフィルムを架橋させる。照射架橋は、最終フィルム延伸の前にまたは後に、収縮およびスキン包装のためなど延伸フィルムが望まれるときにはいつでも、導入することができるが、好ましくは、照射架橋は、最終延伸の前に導入される。熱収縮性およびスキン包装フィルムが、パレットまたはフィルム照射を最終フィルム延伸より先に行うプロセスによって作製された場合、それらのフィルムは、より高い収縮張力を決まって示し、そして、より高度の包装材料の反りおよび板紙のカールを生じさせる傾向があるだろう。逆に、延伸が照射より先である場合、結果として生じるフィルムは、より低い収縮張力を示すであろう。収縮張力とは異なり、本発明のエチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体の自由収縮特性は、照射が最終延伸より先であろうと、後であろうと、本質的には影響を受けないと考えられる。
【0233】
本明細書に記載のフィルム構造の処理に有用な照射技術としては、当業者に公知の技術が挙げられる。好ましくは、この照射は、電子ビーム(β線)照射装置を約0.5メガラド(Mrad)から約20Mradの線量レベルで使用することによって遂行される。本明細書に記載するようなエチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体から二次加工される収縮フィルム構造は、照射処理の結果として発生する鎖の切断の程度が低いため、改善された物理的特性を示すことも期待される。
【0234】
本発明の共重合体、ブレンドおよびフィルム、ならびにそれらを作製する方法は、以下の実施例でさらに詳細に説明する。一般に、本新規配合エチレン/α−オレフィンマルチブロック共重合体から製造されるフィルムは、多くの場合、良好な耐衝撃性および引張特性、ならびに特に、引張強度、降伏歪および靭性(例えば、靭性およびダート衝撃性)の良好な組み合わせを示す。さらに、これらのフィルムは、多数の重要な特性、例えば、ダート衝撃、MD引張強度、CD引張強度、MD靭性、CD靭性、MD ppt引裂強度、CD ppt引裂強度、CDエルメンドルフ引裂強度B、穴あきおよび有意に低いブロックに関して、他の樹脂から製造されたフィルムと同様のまたはそれらより改善された特性を、多くの場合、示した。
【0235】
本発明の実施例
以下の実施例は、フィルムを製造するために使用する組成物のパラメータを変えることにより得ることができる特性の範囲を証明するためのものである。下で説明する実施例において利用した試験方法は、次の通りであった:
密 度−−ASTM D−792
分子量−−ASTM D−1238、条件190℃/2.16kg(以前は「条件E」として知られており、I2としても知られている)
ASTM D−1238、条件190℃/10kg(以前は「条件N」として知られており、I10としても知られている)
表Aは、本発明の様々な実施例および比較例の組成物の特性付けデータを含む。一般に、これらの組成物は、「%主(% primary)」と示されている100%以下の主共重合体および「%副(% secondary)」と示されている63%以下の副ポリマーを含有する。全体組成物、主共重合体および副ポリマーについてのI2(g/10分)、I10/I2、および密度(g/cm3)を得、該当する場合にはそれらを与える。これらの組成物は、溶液重合を用いて製造した。各反応装置において利用した触媒を示す。
【0236】
【表10】

【0237】
【表11】

【0238】
【表12】

【0239】
【表13】

【0240】
【表14】

【0241】
【表15】

【0242】
【表16】

24:1のL/D比を有する3つのDavis-Standard Model DS075HM 直径0.75インチ押出機を装備し、0.033インチのダイギャップを有する直径2インチのブローンフィルムダイに送り込むミニブローンラインを、実施例4〜23のフィルムを製造するために使用した。このラインは、350°Fで7 lb/時を生産する能力を有する。押出機「A」は、内側バブル層を供給し、0.0224 lb/時/rpmの効率を有し、押出機「B」は、コア層を供給し、0.0272 lb/時/rpmの効率を有し、および押出機「C」は、バブル外層を供給し、0.020 lb/時/rpmの効率を有する。
【0243】
【表17】

より大きなフィルムラインを用いて実施例1〜3のフィルムを製造した。押出機のプロフィールを下に添付する:
【0244】
【表18】

限られた数の実施形態に関して本発明を説明したが、1つの実施形態の特定の特徴が、本発明の他の実施形態に帰することはない。単一の実施形態が、本発明のすべての態様の代表ではない。ある実施形態における組成物または方法は、本明細書において言及されていない多数の化合物または段階を含むことがある。他の実施形態における組成物または方法は、本明細書に列挙されていない任意の化合物または段階を含まない、または実質的に有さない。記載されている実施形態からの変形および変更が存在する。最後に、本明細書に開示されている任意の数は、その数の説明に「約」または「おおよそ」という語が用いられているかどうかにかかわらず、近似値を意味すると解釈しなければならない。添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲内に入るすべての変更および変形を包含すると考える。
【図面の簡単な説明】
【0245】
【図1】図1は、従来のランダムコポリマー(丸で示す)およびチーグラー・ナッタコポリマー(三角で示す)と比較した、本発明のポリマー(ひし形で示す)の融点/密度関係を示す。
【図2】図2は、各種ポリマーのDSC溶融エンタルピーの関数としてのデルタDSC−CRYSTAFのプロットを示す。ひし形は、ランダムエチレン/オクテンコポリマーを示す;四角は、ポリマー実施例1〜4を示す;三角は、ポリマー実施例5〜9を示す;そして丸は、ポリマー実施例10〜19を示す。記号「X」は、ポリマー実施例A*〜F*を示す。
【図3】図3は、本発明の共重合体(四角および丸によって示す)および従来のコポリマー(三角形によって示す。これらは、Dow AFFINITY(登録商標)ポリマーである。)から作製された未延伸フィルムについての弾性回復率に対する密度の効果を示す。四角は、本発明のエチレン/ブテンコポリマーを示す;そして丸は、本発明のエチレン/オクテンコポリマーを示す。
【図4】図4は、実施例5のポリマー(丸によって示す)、ならびに比較例E*およびF*(記号「X」によって示す)のポリマーの、画分のTREF溶離温度に対する、TREF分画エチレン/1−オクテンコポリマー画分のオクテン含量のプロットである。ひし形は、従来のエチレン/オクテンコポリマーを示す。
【図5】図5は、実施例5のポリマー(曲線1)および比較例F*のポリマー(曲線2)の画分のTREF溶離温度に対する、TREF分画エチレン/1−オクテンコポリマー画分のオクテン含量のプロットである。四角は、比較例F*を示す;そして三角は、実施例5を示す。
【図6】図6は、比較のエチレン/1−オクテンコポリマー(曲線2)およびエチレンコ/プロピレンポリマー(曲線3)についての、ならびに異なる量の可逆的連鎖移動剤を用いて作製した本発明の2つのエチレン/1−オクテンブロックコポリマー(曲線1)についての、温度の関数としての貯蔵弾性率の対数のグラフである。
【図7】図7は、ある公知のポリマーと比較した場合の、ある本発明のポリマー(ひし形によって示す)のTMA(1mm) 対 屈曲弾性率のプロットを示す。三角は、Dow VERSIFY(登録商標)ポリマーを示す;丸は、種々のランダムエチレン/スチレンコポリマーを示す;そして四角は、Dow AFFINITY(登録商標)ポリマーを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのエチレン/α−オレフィン共重合体を含むフィルムであって、
前記エチレン/α−オレフィン共重合体が、
(a)約1.7〜約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(℃)、および密度d(g/cm3)を有し、ここで、このTmおよびdの数値が以下の関係に相当する:
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2;または、
(b)約1.7〜約3.5のMw/Mnを有し、かつ融解熱ΔH(J/g)、および最高のDSCピークと最高のCRYSTAFピークとの間の温度差として定義される、デルタ量ΔT(℃)によって特徴付けられ、ここで、このΔTおよびΔHの数値が以下の関係を有し、
ΔHがゼロより大きくかつ最大130J/gまでの場合、
ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81
ΔHが130J/gより大きい場合、
ΔT≧48℃
ここで前記CRYSTAFピークが累積ポリマーの少なくとも5パーセントを用いて決定され、かつ前記ポリマーの5パーセント未満が特定可能なCRYSTAFピークを有するならば、前記CRYSTAF温度は30℃である;または、
(c)前記エチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムで測定された、300パーセントのひずみかつ1サイクルでの弾性回復率Re(パーセント)によって特徴付けられ、かつ密度d(g/cm3)を有し、ここで、前記エチレン/α−オレフィン共重合体が実質的に架橋相を有さない場合、前記Reおよびdの数値が以下の関係を満たす:
Re>1481−1629(d);または、
(d)TREFを用いて分画される場合、40℃と130℃との間で溶出する分子画分であって、前記同じ温度の間で溶出する比較対象となるランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量よりも少なくとも5パーセント高いコモノマーモル含量を有することを特徴とする分子画分を有し、ここで、前記比較対象となるランダムエチレン共重合体が同じコモノマー(単数または複数)を有し、かつメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)を前記エチレン/α−オレフィン共重合体のものの10パーセント内で有する、
フィルム。
【請求項2】
第2ポリマーをさらに含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
請求項2に記載のフィルムであって、前記第2ポリマーが、不均一分枝ポリエチレン(heterogeneously branched polyethylene)を含む、フィルム。
【請求項4】
少なくとも20重量パーセントの少なくとも1つのエチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーを含むフィルムに適する組成物であって、
前記組成物が、
a.少なくとも約0.89g/ccの密度;
b.約0.1から約1.5g/10分のメルトインデックス(I2);
c.少なくとも約7のメルトフロー比I10/I2;
d.約110から140℃の最高のDSCピーク;
e.約55から95℃の最高のCrystafピーク;および
f.約1から約4.5の多分散性Mw/Mn
によって特徴付けられる組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の組成物であって、前記組成物は、TREFを用いて分画される場合、約60℃より上で溶出するポリマー画分を含み、かつ約40から約50℃の間で溶出する実質的なポリマー画分がない、組成物。
【請求項6】
請求項4または5に記載の組成物であって、前記組成物から製造されたフィルムが、少なくとも約250g/ミル、MD(縦方向:machine direction)の平均エルメンドルフ引裂を示す、組成物。
【請求項7】
請求項4または5に記載の組成物であって、前記組成物から製造されたフィルムが、少なくとも約150グラム/ミルの正規化DARTを示す、組成物。
【請求項8】
請求項4に記載の組成物であって、
前記エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーが、
a.少なくとも約0.89g/ccの密度;
b.約0.1から約1.0g/10分のメルトインデックス(I2);
c.少なくとも約7のメルトフロー比I10/I2;および
d.TREFを用いて分画される場合、40℃と130℃の間で溶出する分子画分であって、前記同じ温度の間で溶出する比較対象となるランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量より少なくとも5パーセント高いコモノマーモル含量を有することを特徴とする分子画分[ここで、前記比較対象となるランダムエチレン共重合体が同じコモノマー(単数または複数)を有し、かつメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)を前記エチレン/α−オレフィン共重合体のものの10パーセント内で有する]
によって特徴付けられる、組成物。
【請求項9】
少なくとも20重量パーセントの少なくとも1つのエチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーを含むフィルムに適する組成物であって、
前記エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーが、
a.少なくとも約0.89g/ccの密度;
b.約0.1から約1.0g/10分のメルトインデックス(I2);
c.少なくとも約7のメルトフロー比I10/I2;および
d.TREFを用いて分画される場合、40℃と130℃の間で溶出する分子画分であって、前記同じ温度の間で溶出する比較対象となるランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量より少なくとも5パーセント高いコモノマーモル含量を有することを特徴とする分子画分[ここで、前記比較対象となるランダムエチレン共重合体が同じコモノマー(単数または複数)を有し、かつメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)を前記エチレン/α−オレフィン共重合体のものの10パーセント内で有する]
によって特徴付けられる、組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の組成物であって、前記組成物は、TREFを用いて分画される場合、約60℃より上で溶出するポリマー画分を含み、かつ約40から約50℃の間で溶出する実質的なポリマー画分がない、組成物。
【請求項11】
請求項9または10に記載の組成物であって、前記組成物から製造されたフィルムが、少なくとも約250g/ミル、MD(縦方向)の平均エルメンドルフ引裂を示す、組成物。
【請求項12】
請求項9または10に記載の組成物であって、前記組成物から製造されたフィルムが、少なくとも約150グラム/ミルの正規化DARTを示す、組成物。
【請求項13】
可逆的連鎖移動剤(a chain shuttling agent)の残分をさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
ジエチル亜鉛の残分をさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
請求項9に記載の組成物であって、前記組成物は、TREFを用いて分画される場合、少なくとも2つの異なる溶出ピークを有することによって特徴付けることができ、その最大ピークが約95℃より上で溶出する、組成物。
【請求項16】
(その全組成物に対して重量で)少なくとも約20パーセントから(その全組成物に対して重量で)約90パーセントの少なくとも1つの不均一エチレンポリマーをさらに含み、前記不均一エチレンポリマーが、約0.93g/cm3から約0.965g/cm3の密度を有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項17】
フィルムに適する組成物であって、下記(1)及び(2)を含み、
(1)約30から約60重量パーセントの少なくとも1つのエチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマー、
ここで、前記エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーは、
a.約0.89から約0.91g/ccの密度;
b.約0.1から約0.3g/10分のメルトインデックス(I2);
c.TREFを用いて分画される場合、40℃と130℃の間で溶出する分子画分であって、前記同じ温度の間で溶出する比較対象となるランダムエチレン共重合体画分のコモノマーモル含量より少なくとも5パーセント高いコモノマーモル含量を有することを特徴とする分子画分[ここで、前記比較対象となるランダムエチレン共重合体が同じコモノマー(単数または複数)を有し、かつメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)を前記エチレン/α−オレフィン共重合体のものの10パーセント内で有する]によって特徴付けられる;
(2)約40から約70重量パーセントの不均一エチレンポリマー
ここで、前記組成物は、TREFを用いて分画される場合、約60℃より上で溶出するポリマー画分を含み、かつ約40から約50℃の間で溶出する実質的なポリマー画分がない、組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の組成物であって、前記不均一エチレンポリマーが、約1.2から約2g/10分のメルトインデックス(I2)を有する、組成物。
【請求項19】
請求項17または18に記載の組成物であって、前記不均一エチレンポリマーが、約0.92から約0.94g/cm3の密度を有する、組成物。
【請求項20】
請求項17または18に記載の組成物であって、前記組成物が、約0.7から約0.9g/10分のメルトインデックス(I2)および約0.91から約0.93g/cm3の密度を有する、組成物。
【請求項21】
少なくとも20重量パーセントの少なくとも1つのエチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーを含むフィルムに適する組成物であって、
前記エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーが、
a.少なくとも約0.89g/ccの密度;
b.約0.1から約1.0g/10分のメルトインデックス(I2);
c.少なくとも約7のメルトフロー比I10/I2;および
d.約1.3より大きい分子量分布Mw/Mn
によって特徴付けられ;かつ前記コポリマーが、
(1)TREFを用いて分画される場合、40℃と130℃の間で溶出する分子画分であって、少なくとも0.5でかつ約1までのブロックインデックスを有する点で特徴付けられる分子画分を有すること;または
(2)ゼロより大きく、かつ約1.0までの平均ブロックインデックスを有すること;または
(3) (1)と(2)の両方
によってさらに特徴付けられる、組成物。
【請求項22】
請求項21に記載の組成物であって、前記組成物が、TREFを用いて分画される場合、約60℃より上で溶出するポリマー画分を含み、かつ約40から約50℃の間で溶出する実質的なポリマー画分がない、組成物。
【請求項23】
請求項21または22に記載の組成物であって、前記組成物から製造されたフィルムが、少なくとも約250g/ミル、MD(縦方向)の平均エルメンドルフ引裂強度を示す、組成物。
【請求項24】
請求項21または22に記載の組成物であって、前記組成物から製造されたフィルムが、少なくとも約150グラム/ミルの正規化DARTを示す、組成物。
【請求項25】
可逆的連鎖移動剤の残分をさらに含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項26】
ジエチル亜鉛の残分をさらに含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項27】
請求項21または22に記載の組成物であって、前記組成物が、TREFを用いて分画される場合、少なくとも2つの異なる溶出ピークを有することによって特徴付けることができ、その最大ピークが約95℃より上で溶出する、組成物。
【請求項28】
(その全組成物に対して重量で)少なくとも約20パーセントから(その全組成物に対して重量で)約90パーセントの少なくとも1つの不均一エチレンポリマーをさらに含み、前記不均一エチレンポリマーが、約0.93g/cm3から約0.965g/cm3の密度を有する、請求項21または22に記載の組成物。
【請求項29】
フィルムに適する組成物であって、下記(1)及び(2)を含み、
(1)約30から約60重量パーセントの少なくとも1つのエチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマー、
ここで、前記エチレン/α−オレフィンマルチブロックコポリマーは、
a.約0.89から約0.91g/ccの密度;
b.約0.1から約0.3g/10分のメルトインデックス(I2);及び
c.約1.3より大きい分子量分布Mw/Mn
によって特徴付けられ;かつ前記コポリマーが、
(i)TREFを用いて分画される場合、40℃と130℃の間で溶出する分子画分であって、少なくとも0.5でかつ約1までのブロックインデックスを有する点で特徴付けられる分子画分を有すること;または
(ii)ゼロより大きく、かつ約1.0までの平均ブロックインデックスを有すること;または
(iii) (i)と(ii)の両方
によってさらに特徴付けられる;
(2)約40から約70重量パーセントの不均一エチレンポリマー
ここで、前記組成物は、TREFを用いて分画される場合、約60℃より上で溶出するポリマー画分を含み、かつ約40から約50℃の間で溶出する実質的なポリマー画分がない、組成物。
【請求項30】
請求項29に記載の組成物であって、前記不均一エチレンポリマーが、約1.2から約2g/10分のメルトインデックス(I2)を有する、組成物。
【請求項31】
請求項29または30に記載の組成物であって、前記不均一エチレンポリマーが、約0.92から約0.94g/cm3の密度を有する、組成物。
【請求項32】
請求項29または30に記載の組成物であって、約0.7から約0.9g/10分のメルトインデックス(I2)および約0.91から約0.93g/cm3の密度を有する、組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−545015(P2008−545015A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502021(P2008−502021)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/009408
【国際公開番号】WO2006/101930
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】