説明

フィルムの製造方法およびフィルム

【課題】生産性の有利な溶融製膜で製造可能で、かつ高温で各種機能層を形成可能な耐熱性を有するフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス転移温度が250℃以上のポリマーと硬化性可塑剤との混合物を溶融製膜して塗膜を形成し、溶融製膜した前記塗膜を硬化してガラス転移温度が250℃以上のフィルムを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱性に優れたフィルムの製造方法および該製造方法により製造されたフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
有機ポリマーからなるフィルムを成形する場合、一般にその熱変形温度や融点以上の温度を与えることにより溶融状態とし、それを口金から溶融膜として吐出してフィルムを成形する。これに対し、熱変形温度や融点と分解温度とが近い、または熱変形温度や融点が分解温度よりも高いポリマーは、溶融と同時に分解が開始または進行するため、適当な溶剤にポリマーを溶かし、得られた溶液を支持体上にキャストして、その後溶剤を除去する溶液製膜法によりフィルムに成形される。このようなポリマーとしては、例えば、セルローストリアセテート、芳香族ポリアミド、または、芳香族ポリイミドなどが挙げられる。しかし、溶液製膜法により得られるフィルムは、溶融製膜により得られるフィルムに較べ、表面平滑性等のフィルム特性が有利な場合もあるが、溶剤の除去に時間がかかるなど生産性上不利となる場合が多い。
【0003】
近年、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下「有機EL素子」という)等のフラットパネルディスプレイ分野において、耐破損性の向上、軽量化、薄型化の要望から、基板をガラスからプラスチックに置き換えることが検討されている。特に、携帯電話や、電子手帳、ラップトップ型パソコンなど携帯情報端末などの移動型情報通信機器用表示装置では、プラスチック基板に対する強い要望がある。
【0004】
前記プラスチック基板に導電性を付与するために、酸化インジウム、酸化スズもしくはスズ−インジウム合金の酸化物等の半導体膜;金、銀、パラジウム合金の酸化膜等の金属膜;または前記半導体膜と前記金属膜とを組み合わせた透明導電層をプラスチック基板上に形成する検討がなされている。また、液晶配向層やTFT設置など各種機能化が検討されているが、いずれの場合も高い耐熱性と透明性とがプラスチック基板に求められている。
【0005】
特許文献1および2には、脂環構造を有するポリイミドを用いた透明導電性フィルムおよび薄膜トランジスタ基板に関する記載がある。前記ポリイミドは、透明性に優れ、ガラス転移温度が250℃以上と高い耐熱性を示す。また、一般的な全芳香族ポリイミドに対して有機溶剤に対する溶解性に優れ、溶液製膜に適している。
【0006】
特許文献3には、6,6’−ジヒドロキシ−4,4,4’,4’,7,7’−ヘキサメチル−2,2’−スピロビクロマン(以下、「スピロビクロマンジオール」とも称する)とイソフタル酸およびテレフタル酸とから誘導されるポリエステルフィルムに関する記載がある。前記ポリエステルは、透明性に優れ、柔軟性に富んだ優れた力学特性を有するフィルムを形成することができ、該フィルムはガラス転移温度が250℃以上と高い耐熱性を示す。また、前記フィルムはジクロロメタンなど低沸点溶剤に対する溶解性にも優れ、溶液製膜に適している。
【0007】
特許文献4には、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(以下「ビスフェノールフルオレン」とも称する)とイソフタル酸およびテレフタル酸とから誘導されるポリエステルフィルムに関する記載がある。また、特許文献5には、アルキル置換されたビスフェノールフルオレンとイソフタル酸およびテレフタル酸とから誘導されるポリエステルフィルムに関する記載がある。さらに、特許文献6には、フェノールのオルト位をハロゲン等で置換したビスフェノールフルオレンから誘導されるポリエステルフィルムの記載がある。これらの置換または無置換のビスフェノールフルオレンとイソフタル酸およびテレフタル酸とから誘導されるポリエステルは、いずれもガラス転移温度(Tg)が300℃付近またはそれ以上であり、透明性、破断伸びに優れた柔軟なフィルムが作製される。また、ジクロロメタンなど低沸点溶剤に対する溶解性にも優れ、溶液製膜に適している。
【0008】
前記のように透明性、耐熱性に優れるポリマーを用いたフィルムをプラスチック基板として用いる検討が多数行われているが、いずれも溶液製膜により製膜されており、溶融製膜法については知られていない。
【特許文献1】特開2003−141936号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2003−168800号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平11−302364号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平3−28222号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】国際公開WO99/18141号公報(クレーム)
【特許文献6】特開2002−145998号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、生産性有利な溶融製膜で製造可能で、かつ高温で各種機能層を形成可能な耐熱性を有するフィルムの製造方法、および、該製造方法により製造されたフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討した結果、高温で各種機能層を形成可能な耐熱性を有するフィルムを生産性良く溶融製膜法を用いて製造できる製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の前記課題は以下の手段によって達成される。
【0011】
(1) ガラス転移温度が250℃以上のポリマーと硬化性可塑剤との混合物を溶融製膜して塗膜を形成し、溶融製膜した前記塗膜を硬化してガラス転移温度が250℃以上のフィルムを製造する工程を含むことを特徴とするフィルムの製造方法。
【0012】
(2) 前記ポリマーが下記一般式(1)で表されるスピロ構造または下記一般式(2)で表されるカルド構造を含む繰り返し単位、或いは、下記一般式(8)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする(1)に記載のフィルムの製造方法。
【0013】
【化1】

[一般式(1)中、環αは単環式または多環式の環を表し、2つの環αはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。2つの環αは、スピロ結合により連結されている。]
【0014】
【化2】

[一般式(2)中、環βおよび環γは、単環式または多環式の環を表し、2つの環γはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。2つの環γは、環β上の1つの4級炭素に連結されている。]
【0015】
【化3】

[式中、Yは単環式もしくは縮合多環式の4価の脂肪族基を表し、Xは単環式もしくは縮合多環式の芳香族基、または、単環式もしくは縮合多環式の脂肪族基を含有し、構成する炭素原子数が4〜30である2価の連結基を表す。]
【0016】
(3) 前記硬化性可塑剤が下記構造で表されるシアネート基、マレイミド基、アクリロイル基のいずれかを分子内に2つ以上有する化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムの製造方法。
【0017】
【化4】

【0018】
(4) 前記フィルムの全光線透過率が70%以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載のフィルムの製造方法。
【0019】
(5) (1)〜(4)のいずれか1つに記載の製造方法により製造されたことを特徴とするフィルム。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ガラス転移温度が250℃以上のポリマーと硬化性可塑剤との混合物を用いることで、ガラス転移温度が250℃以上のフィルムを生産性に優れる溶融製膜法で製造可能なフィルムの製造方法および該製造方法によって得られたフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明のフィルムの製造方法およびフィルムについて詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味として使用される。
【0022】
本発明のフィルムの製造方法は、ガラス転移温度が250℃以上のポリマーと硬化性可塑剤との混合物を溶融製膜して塗膜を形成し、溶融製膜した前記塗膜を硬化してガラス転移温度が250℃以上のフィルムを製造する工程を含むことを特徴とする。
本発明に用いることのできるガラス転移温度が250℃以上のポリマー(以降、「本発明におけるポリマー」とも称する)は、熱可塑性樹脂でも硬化性樹脂でもよく、ガラス転移温度が250℃以上であれば特に制限はない。一方で本発明のフィルムの態様としては全光線透過率が70%以上であることが好ましい。この場合、本発明におけるポリマー自身が実質的に無色透明であるものが好ましい。本発明におけるポリマーの好ましい例としては、含フッ素ポリイミド、脂環構造を含むポリイミド、剛直な連結基を含むポリアリレートやポリアミドなどが挙げられ、特に好ましくは、下記一般式(1)で表されるスピロ構造または一般式(2)で表されるカルド構造を含む繰り返し単位、或いは、下記一般式(8)で表される繰り返し単位を有するポリマーが挙げられる。
【0023】
【化5】

[一般式(1)中、環αは単環式または多環式の環を表し、2つの環αはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。2つの環αは、スピロ結合により連結されている。]
【0024】
【化6】

[一般式(2)中、環βおよび環γは、単環式または多環式の環を表し、2つの環γはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。2つの環γは、環β上の1つの4級炭素に連結されている。]
【0025】
前記一般式(1)における環αは単環式または多環式の環を表し、例えば、インダン環、クロマン環、2,3−ジヒドロベンゾフラン環、インドリン環、テトラヒドロピラン環、テトラヒドロフラン環、ジオキサン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環等が挙げられる。2つの環αはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
また、2つの環αはスピロ結合によって連結される。前記一般式(1)で表されるスピロ構造を含む繰り返し単位を有するポリマーの好ましい例としては、下記一般式(3)で表されるスピロビクロマン構造を含む繰り返し単位を有するポリマーを挙げることができる。
【0026】
また、前記一般式(2)における環βは、単環式または多環式の環を表し、例えば、フルオレン環、1,4−ビベンゾシクロヘキサン環、インダンジオン環、インダノン環、インデン環、インダン環、テトラロン環、アントロン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環が挙げられる。
一般式(2)における環γは、単環式または多環式の環を表し、例えば、フェニレン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、ピリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾチアゾール環、インダン環、クロマン環、インドール環、α−ピロン環が挙げられる。
また、環βは4級炭素原子を含むものであり、係る4級炭素原子によって環βおよび2つの環γは連結される。2つの環γはそれぞれ同一もしくは異なっていてもよい。また、一般式(2)で表されるカルド構造を含む繰り返し単位を有するポリマーの好ましい例としては、下記一般式(4)で表されるフルオレン構造を含む繰り返し単位を有するポリマーを挙げることができる。
【0027】
【化7】

【0028】
一般式(3)中、R41は水素原子または置換基を表す。R42は置換基を表す。また、それぞれが連結して環を形成してもよい。mおよびnは1〜3の整数を表す。好ましい前記置換基の例は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基である。R41のより好ましい例は水素原子、メチル基、フェニル基であり、R42のより好ましい例は、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、フェニル基である。
【0029】
【化8】

【0030】
一般式(4)中、R61は水素原子または置換基を表す。R62は置換基を表す。また、それぞれが連結して環を形成してもよい。jおよびkは1〜4の整数を表す。好ましい置換基の例は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基である。R61およびR62のより好ましい例は、水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、フェニル基である。
【0031】
一般式(1)〜(4)で表される構造を繰り返し単位中に含むポリマーは、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタンなど種々の結合方式で連結されたポリマーであってもよいが、一般式(1)〜(4)で表される構造を有するビスフェノール化合物から誘導されるポリエステルが耐熱性、透明性の観点で好ましい。
【0032】
一般式(1)〜(4)で表される構造を有するビスフェノール化合物から誘導されるポリエステル(以下「本発明におけるポリエステル」とも称する)の好ましい例としては、下記一般式(5)または(6)で表される繰り返し単位を有するポリエステルを挙げることができる。
【0033】
【化9】

【0034】
一般式(5)中、環βは単環式または多環式の置換基を有していてもよい環を表す。好ましい環βは、少なくとも1つの芳香環を含む多環式の環である。前記単環式または多環式の環としては、一般式(2)の環βとして例示した環が挙げられる。環β上の好ましい置換基はアルキル基、アリール基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、フェニル基が挙げられる。
一般式(5)中、Lは置換基を有していてもよい炭化水素からなる2価の連結基を表す。好ましいLは、アルキレン、アリーレンである。アルキレンの好ましい例としては、脂環構造を含むアルキレンが挙げられる。この中でも前記Lとしては、アリーレン連結が特に好ましい。前記アリーレンとしては、フェニレン、ナフタレン、ビフェニレンなどを挙げることができる。また、前記アリーレン連結の好ましい置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子が挙げられ、より好ましくは、メチル基、塩素原子、臭素原子である。
【0035】
また、一般式(5)で表される繰り返し単位を有するポリエステルは、Lの異なる2種以上の繰り返し単位の共重合体とすることで透明性が向上するため、特に好ましい。異なるLの好ましい組み合わせとしては、パラフェニレンとメタフェニレンとの組み合わせ;パラフェニレン、2,6−ナフタレン、4,4'−ビフェニレンの3種の中から2種以上選択する組み合わせを挙げることができる。
また、一般式(5)中、R1、R2はそれぞれ置換基を表し、好ましい置換基としてはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子が挙げられ、より好ましくは、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、フェニル基が挙げられる。また、一般式(5)中、lおよびmは0〜4の整数を表す。
【0036】
【化10】

【0037】
一般式(6)中、環αは単環式または多環式の置換基を有していてもよい環を表し、2つの環はスピロ結合によって連結される。環αとして表される単環式または多環式の環は、上述の一般式(1)の環αとして例示した環が挙げられる。一般式(6)中、Lは置換基を有していてもよい炭化水素からなる2価の連結基を表す。好ましいLは、アルキレン、アリーレンである。アルキレンの好ましい例としては、脂環構造を含むアルキレンが挙げられる。この中でも前記Lとしては、アリーレン連結が特に好ましい。前記アリーレンとしては、フェニレン、ナフタレン、ビフェニレンなどを挙げることができる。また、アリーレン連結の好ましい置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子が挙げられ、より好ましくは、メチル基、塩素原子、臭素原子である。
【0038】
また、一般式(6)で表される繰り返し単位を有するポリエステルは、Lの異なる2種以上の繰り返し単位の共重合体とすることで透明性が向上するため、特に好ましい。異なるLの好ましい組み合わせとして、パラフェニレンとメタフェニレンとの組み合わせ;パラフェニレン、2,6−ナフタレン、4,4'−ビフェニレンの3種の中から2種以上選択する組み合わせを挙げることができる。
また、一般式(6)中、R1、R2はそれぞれ置換基を表し、好ましい置換基はアルキル基、アリール基、ハロゲン原子が挙げられ、より好ましくは、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、フェニル基が挙げられる。また、一般式(6)中、lおよびmは0〜3の整数を表す。
【0039】
さらに、一般式(5)で表される繰り返し単位の好ましい例としては、下記一般式(7)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0040】
【化11】

【0041】
一般式(7)中、R3、R4はそれぞれ置換基を表し、好ましい置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子が挙げられる。前記置換基として、より好ましくは、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、フェニル基が挙げられる。一般式(7)中、jおよびkは0〜4の整数を表す。
また、一般式(7)中Lは置換基を有していてもよい炭化水素からなる2価の連結基を表す。好ましいLは、アルキレン、アリーレンである。アルキレンの好ましい例としては、脂環構造を含むアルキレンが挙げられる。この中でも前記Lとしては、アリーレン連結が特に好ましい。前記アリーレンとしては、フェニレン、ナフタレン、ビフェニレンなどを挙げることができる。また、前記アリーレン連結の好ましい置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子が挙げられ、より好ましくは、メチル基、塩素原子、臭素原子である。
【0042】
また、一般式(7)で表される繰り返し単位を有するポリエステルは、Lの異なる2種以上の繰り返し単位の共重合体とすることで透明性が向上するため、特に好ましい。異なるLの好ましい組み合わせとして、パラフェニレンとメタフェニレンとの組み合わせ;パラフェニレン、2,6−ナフタレン、4,4'−ビフェニレンの3種の中から2種以上選択する組み合わせを挙げることができる。
また、一般式(7)中、R1、R2はそれぞれ置換基を表し、好ましい置換基としてはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子が挙げられ、より好ましくは、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、フェニル基が挙げられる。また、一般式(7)中、lおよびmは0〜4の整数を表す。
【0043】
以下に本発明におけるポリエステルの好ましい具体例(PC−1)〜(PS−8)を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、繰り返し単位の数字は共重合比(mol%)を表し、ホモポリマーは100と記載する。
【0044】
【化12】

【0045】
【化13】

【0046】
【化14】

【0047】
【化15】

【0048】
【化16】

【0049】
【化17】

【0050】
【化18】

【0051】
【化19】

【0052】
【化20】

【0053】
【化21】

【0054】
また、本発明におけるポリマーの特に好ましい例としては、一般式(8)で表される繰り返し単位を有する脂環構造を含むポリイミド(以降、「本発明におけるポリイミドとも称する)も挙げられる。
【0055】
【化22】

[式中、Yは単環式もしくは縮合多環式の4価の脂肪族基を表し、Xは単環式もしくは縮合多環式の芳香族基、または、単環式もしくは縮合多環式の脂肪族基を含有し、構成する炭素原子数が4〜30である2価の連結基を表す。]
【0056】
前記Yとしては、構成する炭素原子数が4〜30である単環式もしくは縮合多環式の4価の脂肪族基が好ましく、さらに好ましくは、構成する炭素原子数が6〜20である単環式もしくは縮合多環式の4価の脂肪族基である。
前記Xとしては、芳香族基を含有し構成する炭素原子数が6〜28である2価の連結基、あるいは、単環式もしくは縮合多環式の脂肪族基を含有し構成する炭素原子数が4〜20である2価の連結基が好ましい。さらに好ましくは、芳香族基を含有し構成する炭素原子数が7〜28である2価の連結基、単環式脂肪族基を含有し構成する炭素原子数が4〜12である2価の連結基、あるいは、縮合多環式脂肪族基を含有し構成する炭素原子数が7〜20である2価の連結基である。特に好ましくは、芳香族基を含有し構成する炭素原子数が12〜28である2価の連結基である。
【0057】
前記単環式もしくは縮合多環式の芳香族基の環構造の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピリジン環、ピラジン環、ベンゾフラン環、カルバゾール環などが挙げられ、中でもベンゼン環、ナフタレン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。また、前記単環式もしくは縮合多環式の脂肪族基の環構造の例としては、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ビシクロヘプタン環、ビシクロオクタン環、テトラシクロドデカン環、アダマンタン環、ジアマンタン環、モルホリン環などが挙げられ、中でもシクロペンタン環、シクロヘキサン環、ビシクロヘプタン環、ビシクロオクタン環が好ましい。
【0058】
一般式(8)中、Y、Xは前記の環構造1つから構成されていてもよいし、複数の環構造を有するものでもよい。複数の環構造を有する場合、該複数の環構造は単結合で結合されていてもよいし、環を連結する基(カルボニルやメチレン、エーテルなど)で連結されていてもよい。高いTgを有し、かつ、フィルムとしての良好な特性を有するポリイミドを得るためには、2つ以上のベンゼン環が直接結合したビフェニルあるいはターフェニルが特に好ましい。
【0059】
Yの具体例をテトラカルボン酸二無水物として挙げる。
例えば、(トリフルオロメチル)ピロメリット酸、ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸、ジ(フェニル)ピロメリット酸、ペンタフルオロエチルピロメリット酸、ビス〔3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェノキシ〕ピロメリット酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルエーテル、2,3’,3,4’−テトラカルボキシジフェニルエーテル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルメタン、3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルスルホン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−テトラカルボキシビフェニル、2,2’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3’、4,4’−テトラカルボキシビフェニル、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’、4,4’−テトラカルボキシジフェニルエーテル、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−テトラカルボキシベンゾフェノン、ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン、シクロブタンテトラカルボン酸、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)テトラメチルジシロキサン、ジフルオロピロメリット酸、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,3,5,6−テトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタ−2,3,5,6−テトラカルボン酸、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4,5,9,10−テトラカルボン酸などが挙げられる。
【0060】
Xの具体例をジアミンとして挙げる。
芳香族ジアミンの例としては、p−フェニレンジアミン、ベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、オクタフルオロベンジジン、3,3'−ジヒドロキシ−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジクロル−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジフルオロ−4,4'−ジアミノビフェニル、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフロオロプロパン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノ−ジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノ−ビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等が挙げられる。また、脂肪族ジアミンの例としては、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、2,2−ジメチル−プロピレンジアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、3(4),8(9)−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.0]デカン等が挙げられる。
【0061】
本発明におけるポリイミドはガラス転移温度(Tg)を向上させる観点からジアミン成分に、剛直性芳香族ジアミンを用いることが特に好ましい。
【0062】
ここで「剛直性芳香族ジアミン」とは、エーテル基、メチレン基、2,2−プロピリデン基、ヘキサフルオロプロピリデン基、シクロへキシリデン基、カルボニル基等の屈曲基を主鎖中に含まず、主鎖の結合角が変化しないので、運動性の低いジアミンを意味する。剛直性芳香族ジアミンの例としては、p−フェニレンジアミン、ベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、オクタフルオロベンジジン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジクロル−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジフルオロ−4,4'−ジアミノビフェニル、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノ−ビフェニル等を挙げることができる。これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
一方、前記剛直性芳香族ジアミン以外のジアミンとして、柔軟性芳香族ジアミンが挙げられる。「柔軟性芳香族ジアミン」とは、エーテル基、メチレン基、2,2−プロピリデン基、ヘキサフルオロプロピリデン基、シクロへキシリデン基、カルボニル基等の運動性をもたらし得る屈曲基を主鎖中に含むジアミンのことを意味する。柔軟性芳香族ジアミンの例としては、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフロオロプロパン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン等を挙げることができる。これらの柔軟性芳香族ジアミンを用いれば、本発明におけるポリイミドのTgは低下する傾向にあるが、透明性に有利となる場合があり、必要に応じてこれらを少量組み合わせて用いてもよい。
【0064】
以下に本発明におけるポリイミドの好ましい具体例(P−01)〜(P−15)を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0065】
【化23】

【0066】
【化24】

【0067】
【化25】

【0068】
本発明におけるポリマーの分子量は、重量平均分子量で10,000以上であることが好ましい。より好ましくは重量平均分子量で20,000〜300,000であり、特に好ましくは30,000〜150,000である。分子量が10,000以上の場合、フィルムなどの成形品に応用する場合、得られる成形品の力学特性が有利となる。一方、分子量が300,000以下の場合、合成上の分子量コントロールの点で有利であり、さらに溶液の粘度も高すぎず、取り扱い上有利である。なお、分子量の代わりに対応する粘度を目安にすることもできる。
【0069】
本発明におけるポリマーは、一般式(1)〜(8)で表される構造を含む繰り返し単位を複数種有するコポリマーであってもよい。また、一般式(1)〜(8)で表される構造を含む繰り返し単位以外の公知の繰り返し単位を本発明の効果を損ねない範囲で共重合してもよい。
【0070】
本発明におけるポリマー中における一般式(1)〜(8)で表される構造を含む繰り返し単位の合計のモル百分率は、40〜100モル%であることが好ましく、60〜100モル%であることがより好ましく、80〜100モル%であることがさらに好ましい。本発明におけるポリマーが一般式(1)〜(8)で表される構造を含む繰り返し単位を複数種有する場合、透明性が向上する場合があり、好ましい。この場合、いずれか1種の割合が5〜95mol%であることが好ましく、20〜80mol%であることがより好ましく、特に好ましくは30〜70mol%である。本発明におけるポリマー中における一般式(1)〜(8)で表される構造を含む繰り返し単位の割合が前記の場合、透明性に加え、耐熱性、溶解性の観点で有利である。
【0071】
本発明におけるポリマーの耐熱温度は高い方が好ましく、DSC測定によるガラス転移温度を目安にすることができる。本発明におけるポリマーのガラス転移温度は250℃以上であるが、より好ましくは300℃以上、特に好ましくは350℃以上である。また、測定範囲内(例えば420℃以下)で実質的にガラス転移温度が観測されない場合も本発明におけるポリマーとして好ましい。本発明におけるポリマーのガラス転移温度の上限は特に限定されないが、測定範囲内で観測可能な場合は測定上限温度と同一であり、測定上限温度はサンプル容器の変形など装置上のトラブルを避けるために500℃以下に設定することが好ましく420℃以下が好ましい。
本発明におけるポリマーに含まれる一般式(1)〜(8)で表される構造を含む繰り返し単位を有するポリマーのうち一般式(4)、(7)、(8)で表される構造を含む繰り返し単位を少なくとも1種有するポリマーが、耐熱性が高くより好ましい。
【0072】
本発明においては前記で挙げたポリマーを硬化性可塑剤と混合し溶融製膜して塗膜を形成した後、該塗膜を硬化することによりガラス転移温度が250℃以上のフィルムを製造することができる。ここで硬化とは硬化性可塑剤中に含まれる架橋性官能基の架橋反応を進行させることを意味する。
【0073】
ここで「硬化性可塑剤」とは、架橋性官能基を有する化合物であって、本発明におけるポリマーと混合した場合に可塑化効果を有すれば特に制限なく使用できる。ここで「可塑化効果」とは本発明におけるポリマーに対し、そのポリマーのガラス転移温度(Tg)を10℃以上低下させることを意味する。このような硬化性可塑剤の種類としては、用いるポリマーの種類により可塑化効果が異なるが、汎用の架橋樹脂から選択することができる。
【0074】
前記架橋樹脂の種類としては熱硬化性樹脂および放射線硬化樹脂のいずれも種々の公知のものを特に制限なく用いることができる。
【0075】
前記熱硬化性樹脂の例としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネート樹脂などが挙げられる。その他、熱硬化性樹脂の架橋方法としては、共有結合を形成する反応であれば特に制限なく用いることができ、例えば、ポリアルコール化合物とポリイソシアネート化合物とを用いて、ウレタン結合を形成するような室温で反応が進行する系も特に制限なく使用できる。但し、このような系は製膜前のポットライフが問題になる場合が多く、通常、製膜直前にポリイソシアネート化合物を添加するような2液混合型として用いることが好ましい。
【0076】
一方、室温で反応が進行する系を1液型として用いる場合、架橋反応に携わる官能基を保護しておくことが有効であり、ブロックタイプ硬化剤として市販もされている。市販されているブロックタイプ硬化剤としては、三井武田ケミカル(株)製「B−882N」、日本ポリアリレート工業(株)製「コロネ−ト2513」(以上、ブロックポリイソシアネート)、三井サイテック(株)製「サイメル303」(メチル化メラミン樹脂)などが知られている。また、エポキシ樹脂の硬化剤として用いることのできるポリカルボン酸を保護した下記B−1のようなブロック化カルボン酸も知られている。
【0077】
【化26】

【0078】
前記放射線硬化樹脂としては、ラジカル硬化性樹脂とカチオン硬化性樹脂とに大別できる。
前記ラジカル硬化性樹脂の硬化性成分としては、分子内に複数個のラジカル重合性基を有する化合物が用いられる。代表的な例としては、分子内に2〜6個のアクリル酸エステル基を有する多官能アクリレートモノマーと称される化合物やウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートと称される分子内に複数個のアクリル酸エステル基を有する化合物が用いられる。
【0079】
ラジカル硬化性樹脂の代表的な硬化方法としては、電子線を照射する方法、紫外線を照射する方法が挙げられる。通常、紫外線を照射する方法においては紫外線照射によりラジカルを発生する重合開始剤を添加する。なお、加熱によりラジカルを発生する重合開始剤を添加すれば、熱硬化性樹脂として用いることもできる。
【0080】
前記カチオン硬化性樹脂の硬化性成分としては、分子内に複数個のカチオン重合性基を有する化合物が用いられる。代表的な硬化方法として紫外線の照射により酸を発生する光酸発生剤を添加し、紫外線を照射して硬化する方法が挙げられる。カチオン重合性化合物の例としては、エポキシ基などの開環重合性基を含む化合物やビニルエーテル基を含む化合物が挙げられる。なお、加熱により酸を発生する酸発生剤を添加すれば、熱硬化性樹脂として用いることもできる。
【0081】
本発明のフィルムにおいて、前記で挙げた熱硬化性樹脂および放射線硬化樹脂のそれぞれ複数種を混合して用いてもよく、熱硬化性樹脂と放射線硬化樹脂を併用してもよい。なお、本発明のフィルムの膜厚が40μmを超える場合、放射線による効果が進行しにくくなる場合がある。この場合、放射線硬化樹脂よりも熱硬化性樹脂を好ましく使用できる。
【0082】
本発明に用いることのできる硬化性可塑剤は架橋性官能基を有する化合物であって本発明におけるポリマーと混合した場合に可塑化効果を有すれば特に制限はないが、1)可塑化効果がより大きいこと、2)本発明におけるポリマーとの相溶性に優れること、3)硬化後のTgが高いことが好ましい。
1)可塑化効果としては、本発明におけるポリマーと後述する混合割合で混合した場合、本発明におけるポリマーに対しTgを10℃以上低下させることができればよいが、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは100℃以上、特に好ましくは150℃以上が好ましい。
2)本発明におけるポリマーとの相溶性は本発明におけるポリマーと混合した場合に顕著な相分離に伴う白濁等が観察されず、実質的に透明となることが好ましい。
3)硬化後のTgとしては250℃以上が好ましく、より好ましくは300℃以上、特に好ましくは350℃以上である。また、測定範囲内(例えば420℃以下)で実質的にガラス転移温度が観測されない場合も好ましい。
【0083】
前記のような観点から本発明に用いられる硬化性可塑剤としては、下記構造で表されるシアネート基、マレイミド基、アクリロイル基のいずれかを分子内に2つ以上有する化合物がより好ましい。また、分子内に1つ以上の芳香環を有することがさらに好ましい。この中でアクリロイル基を分子内に2つ以上有する化合物はラジカル重合可能であり、ラジカル発生剤を必要に応じて添加して硬化することにより無色透明な硬化物が得られ特に好ましい。
【0084】
【化27】

【0085】
以下に本発明の硬化性可塑剤の好ましい具体例(BA−1)〜(LC−9)を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0086】
【化28】

【0087】
【化29】

【0088】
【化30】

【0089】
本発明のフィルムの製造方法においては前記で挙げたポリマーと硬化性可塑剤と混合し溶融製膜して塗膜を形成し、その後、該塗膜を硬化することによりガラス転移温度が250℃以上のフィルムを製造することができる。本発明におけるポリマーと硬化性可塑剤との混合物(以下、「本発明における混合物」とも称する)は本発明におけるポリマーおよび硬化性可塑剤以外にフィルムの特性を改善する為に種々の公知の添加剤を併用することができる。例えば、金属の酸化物および/または金属の複合酸化物、およびゾルゲル反応により得られた金属酸化物を含有させた場合、前記で挙げた耐熱性、耐溶剤性、フィルムの力学強度を向上させることができる。さらに必要により本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤、染顔料、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、無機微粒子、剥離促進剤、レベリング剤、および潤滑剤などの樹脂改質剤を添加してもよい。
【0090】
本発明における混合物中に含まれる本発明におけるポリマーの割合は30〜99質量%であり、好ましくは50〜97質量%、より好ましくは60〜95質量%、さらに好ましくは70〜93質量%、特に好ましくは80〜90質量%である。また、本発明における混合物中に含まれる硬化性可塑剤の割合は1〜70質量%であり、好ましくは3〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは7〜30質量%、特に好ましくは10〜20質量%である。前記の割合にすることにより、脆くない良好な力学特性を有する本発明のフィルムを得ることができる。
【0091】
次に本発明の溶融製膜工程とその条件などについて記載する。
溶融製膜工程は本発明におけるポリマーと硬化性可塑剤を予め所定の温度に予熱し、必要に応じて添加する添加物などを混合する混練・押し出し工程、キャスト工程、剥ぎ取り工程、延伸工程、緩和工程、硬化工程、冷却工程、巻き取り工程、加工工程等を通じて、本発明のフィルムを得るものである。以下にそれらについて、本発明の溶融製膜技術を説明する。
【0092】
1)本発明におけるポリマーと硬化性可塑剤の予熱
本発明におけるポリマーは予め十分に乾燥した後に、溶融押出し機のホッパーに投入される。好ましい乾燥条件としては、本発明におけるポリマー中の水分量が0.5質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%であり、特には0.1質量%以下である。これにより溶融中に発現する本発明におけるポリマーの加水分解を抑制し、これに伴う異物の発生を抑止できる。このような乾燥は、本発明におけるポリマーを好ましくは80℃〜180℃および好ましくは0.1時間〜100時間乾燥することで達成できる。なお、この乾燥処理は、空気雰囲気下で行っても、不活性気体(例えば窒素)雰囲気下で行っても、真空中で行ってもよい。
【0093】
また、硬化性可塑剤は本発明におけるポリマーと同時にホッパーに投入されてもよく、遅れて投入されてもよい。また、本発明におけるポリマーと硬化性可塑剤との混合物をあらかじめ作製しておき、その混合物をホッパーに投入してもよい。
ホッパー投入前に混合物を別途作製する方法としては、本発明におけるポリマーと硬化性可塑剤を溶媒に溶解しその後溶媒を除去する方法を用いることができる。これにより低温で混合物を作製することができ、硬化工程以前に硬化性可塑剤が硬化するのを回避することができ、ゲル化物発生を抑制するのに有利である。また、硬化性可塑剤を高濃度で含む本発明におけるポリマーとの混合物(以下、「マスターバッチ」とも称する)をあらかじめ作製しておきその後、本発明におけるポリマーとマスターバッチをホッパーに投入する方法も好ましく用いることができる。この場合、マスターバッチの作製方法として溶媒を用いて行ってもよいが、本発明におけるポリマーと硬化性可塑剤を直接混合するよりも低温で溶融混練が可能であるため、溶融混練機や溶融押し出し機を用いて作製することもできる。本発明で好ましく使用されるホッパーの加熱温度は、本発明におけるポリマーおよびマスターバッチや本発明における混合物のガラス転移温度(Tg)を目安にすることができる。好ましくは使用するポリマーのTgに対し、(Tg−50℃)〜(Tg+30℃)、より好ましくは(Tg−40℃)〜(Tg+10℃)、さらに好ましくは(Tg−30℃)〜Tgに加熱しておくことが推奨される。
【0094】
2)混練・押出し工程
溶融押し出し機に設置されている2〜15の圧縮比を有する混練スクリューを用い、予熱過程で加熱された本発明におけるポリマーおよびマスターバッチや本発明における混合物、硬化性可塑剤などを所望の溶融温度で混練する。混練工程での溶融温度は十分に混練可能な温度を任意に選択する必要があるが、硬化性可塑剤の硬化が進行しない範囲で選択する必要がある。また本発明では、混練性高める目的で、高圧縮比のスクリューを用いることも推奨される。好ましい圧縮比は3〜15、より好ましくは4〜12、より好ましくは5〜10である。通常は3未満の圧縮比で溶融するのが一般的である。
【0095】
混練・押出し工程での溶融温度は一定温度で行ってもよく、いくつかに分割して制御して得られた溶融温度で実施してもよい。より好ましくは上流側(ホッパー側)の温度を下流側(T−ダイ側)の温度より1℃〜50℃、より好ましくは2℃〜30℃、さらに好ましくは3℃〜20℃高くするほうが、本発明におけるポリマーの分解やゲル化物の発生をより抑制できて好ましい。好ましくは溶融を効率よく実施するために送液上流部をより高温にし、溶融された後は本発明におけるポリマーの分解を抑制するために、温度を低めにするものである。好ましい混練時間は2分〜60分であり、より好ましくは3分〜40分であり、さらに好ましくは4分〜30分である。さらに、溶融押出し機内を不活性(窒素等)気流中で実施するのも好ましい。
【0096】
3)キャスト工程
溶融、混練した本発明における混合物は、ギヤポンプに通して押し出し機の脈動を除去される。その後に続いて、金属メッシュフィルター等でろ過を行うことが好ましい。メッシュの目の大きさは2〜30μmが好ましく、より好ましくは2〜20μm、さらに好ましくは2〜10μmである。この時、加圧を行い、ろ過に要する時間をできるだけ短縮することが好ましい。ろ過圧は、0.5MPa〜15MPaが好ましく、2Pa〜15MPaがさらに好ましく、10Pa〜15MPaが特に好ましい。ろ過圧は、高いほうが濾過時間を短くすることができるので好ましいが、フィルターの破損が起こらない範囲の高圧を用いることが好ましい。ろ過に要する時間はできるだけ短くことが好ましく。フィルター1cm2当たり1分間のろ過量は、0.05〜100cm3が好ましく、0.1〜100cm3がさらに好ましく、0.5〜100cm3が特に好ましい。
【0097】
次に、製膜ダイ(T型)から搬送する冷却ドラム上にシート状に押し出すが、前述のように溶融温度より低い温度に制御したT−ダイから押出すことが好ましい。なお、溶融温度が溶融押出し機内で複数に分割し異なる温度にすることも可能であるが、その場合はT−ダイに最も近いところの溶融温度を基準にする。この後、上述のようにT−ダイとキャスティングドラムの間を一定の距離(1〜50cmが好ましい)に保つ。この時、この間の温度変動が少ないよう、ケーシング内に入れることが好ましい。さらに本発明では、T−ダイの温度を溶融温度より5℃〜30℃低くすることが好ましい。これは、T−ダイ上で滞留し本発明におけるポリマーが分解し焦げつき、これがダイラインを引き起こすのを防ぐためである。通常の製膜では溶融混練機からT−ダイまで同じ温度あるいはそれ以上にし、溶融粘度を低くすることで、発生したダイラインをレベリング化するのが一般的であるが、熱硬化によるゲル化が発生しやすい本発明における混合物を溶融製膜する場合は前記のように温度を下げることが有効である。
【0098】
また、本発明のフィルムの横ダン(幅方向に発生する段々状のムラ)を解消するために、本発明ではT−ダイとキャスティングドラムとの間を2cm〜50cm離すことが好ましい。より好ましくは5cm〜40cm、さらに好ましくは7cm〜35cmである。一方でネックインを防ぐためにT−ダイとキャスティングドラムとの間はなるべく近づけるのが好ましく、必要に応じて調整することが可能である。キャスティングドラムの温度は本発明における混合物のTgを目安に設定することが可能である。具体的には、本発明における混合物のTgに対し、(Tg−30℃)〜Tgが好ましく、より好ましくは(Tg−20℃)〜(Tg−1℃)、さらに好ましくは(Tg−15℃)〜(Tg−2℃)である。
【0099】
また、押出しは単層で行ってもよく、マルチマニホールドダイやフィールドブロックダイを用いて複数層押出してもよい。この後、適宜選ばれた直径(10〜200cmが好ましい)、本数(2〜20本が好ましい)、温度(Tg−30℃が好ましい)のキャスティングドラム上に押出す。この時、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法、タッチロール法等の方法を用い、キャスティングドラムと溶融押出ししたシートの密着を上げることが好ましい。このような密着向上法は、溶融押出しシートの前面に実施してもよく、一部に実施してもよい。
【0100】
次にT−ダイから押出された溶融された本発明における混合物(塗膜)は、キャスティングドラムで搬送される。本発明における混合物(塗膜)は加熱により硬化が進行し本発明のフィルムとなる。熱による硬化を進行させる場合、キャスティングドラム上の温度を調整し、所望の時間加熱することで硬化させることができる。また、硬化前に延伸する場合にはキャスティングドラム上から剥ぎ取りテンターで固定し、延伸を行ったのちに熱風や赤外線ヒーターなどを用いて硬化させてもよい。放射線により硬化させる場合もキャスティングドラム上で放射線を照射してもよく、剥ぎ取り後照射させてもよい。
【0101】
本発明では、好ましいキャスティングドラムの本数は2本〜10本であり、より好ましくは2本〜6本であり、さらに好ましくは3本〜5本である。これらのキャスティングドラムの温度は同じであってもよく、異なっていてもよい。これらのキャスティングドラムの直径は通常20cm〜200cmである。また、これらの製膜速度は、15m/分〜300m/分の速度で製膜することが好ましく、より好ましくは20m/分〜200m/分であり、さらに好ましくは30m/分〜100m/分である。
【0102】
硬化した後、本発明のフィルムは、キャスティングドラムから剥ぎ取られ、ニップロールを経て、ニップロールで張力カットした後、巻き取り時の張力が0.01kg/cm2〜10kg/cm2で巻き取るのが好ましく、より好ましくは0.10kg/cm2〜9kg/cm2、さらに好ましくは0.10kg/cm2〜9kg/cm2である。巻き取り速度は10m/分〜100m/分が好ましく、より好ましくは15m/分〜80m/分、さらに好ましくは20m/分〜70m/分である。
【0103】
このようにして得たシートは両端をトリミングし、巻き取ることが好ましい。トリミングされた部分は、粉砕処理された後、或いは必要に応じて造粒処理や解重合・再重合等の処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料としてまたは異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。また、巻き取り前に、少なくとも片面にラミネートフィルムを付けることも、傷防止の観点から好ましい。
【0104】
4)延伸工程
延伸は本発明のフィルムのTgに対し、(Tg−50℃)〜(Tg+50℃)で実施するのがよい。好ましい延伸倍率は1%〜500%、より好ましくは3%〜400%、さらに好ましくは5%〜300%である。これらの延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。ここで云う延伸倍率は、以下の式を用いて求めたものである。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
このような延伸は出口側の周速を速くした2対以上のニップロールを用いて、長手方向に延伸してもよく(縦延伸)、フィルムの両端をチャック(テンター)で把持しこれを直交方向(長手方向と直角方向)に広げてもよい(横延伸)。一般にいずれの場合も、延伸倍率を大きくすると、光学異方性が高くなり、線熱膨張係数が低下したりする為、必要に応じて延伸を行う。
【0105】
前記で記載したように本発明のフィルムは搬送しながら連続的に製造されることが生産性高く、好ましい。一方で小スケールのフィルムを得る為にはバッチ製造を行うことも可能である。バッチ製造の場合、あらかじめ作製した混合物をプレス成形することで硬化前のフィルムを得て、その後硬化させる方法が簡便で好ましい。なお、プレス成形は本発明のフィルムの平面性を高める目的や延伸する目的で前記した連続製膜でも併用してもよい。
【0106】
本発明のフィルムの厚みは、特に規定されないが30〜700μmであることが好ましく、40〜200μmであることがより好ましく、50〜150μmであることがさらに好ましい。また、いずれの場合もヘイズは3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。また、全光線透過率は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。
【0107】
本発明のフィルムの耐熱温度は高い方が好ましく、DSC測定によるTgを目安にすることができる。本発明のフィルムのTgは250℃以上であり、好ましいTgは300℃以上、より好ましくは350℃以上、特に好ましくは400℃以上である。なお、DSCによりTgを検出しにくい場合は、TMAを用いた熱変形温度をガラス転移温度として取り扱うこともできる。
【0108】
本発明のフィルムの表面には用途に応じて他の層、あるいは部品との密着性を高めるためにフィルム基板表面上にケン化、コロナ処理、火炎処理、グロー放電処理等の処理を行うことができる。さらに、フィルム表面に接着層、アンカー層を設けてもよい。また、表面平滑化のため平滑化層、耐傷性付与のためのハードコート層、耐光性を高めるための紫外線吸収層、フィルムの搬送性を改良させるための表面粗面化層など目的に応じて種々の公知の機能性層を付与することができる。
【0109】
(透明導電層)
本発明のフィルムは、透明導電層を設けることができる。透明導電層としては、公知の金属膜、金属酸化物膜等が適用できるが、中でも、透明性、導電性、機械的特性の点から、金属酸化物膜が好ましい。例えば、不純物としてスズ、テルル、カドミウム、モリブテン、タングステン、フッ素、亜鉛、ゲルマニウム等を添加した酸化インジウム、酸化カドミウムおよび酸化スズ、不純物としてアルミニウムを添加した酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物膜が挙げられる。中でも酸化スズから主としてなり、酸化亜鉛を2〜15質量%含有した酸化インジウムの薄膜が、透明性、導電性が優れており、好ましく用いられる。
【0110】
これら透明導電層の成膜方法は、目的の薄膜を形成できる方法であれば、いかなる方法でもよいが、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等の気相中より材料を堆積させて膜形成する気相堆積法などが適しており、特許第3400324号公報、特開2002−322561号公報、特開2002−361774号公報に記載の方法で成膜することができる。中でも、特に優れた導電性・透明性が得られるという観点からは、スパッタリング法が好ましい。
【0111】
スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法の好ましい真空度は0.133mPa〜6.65Pa、より好ましくは0.665mPa〜1.33Paである。このような透明導電層を設ける前に、プラズマ処理(逆スパッタ)、コロナ処理のように基材フィルムに表面処理を加えることが好ましい。また透明導電層を設けている間に50〜200℃に昇温してもよい。
【0112】
透明導電層の膜厚は20〜500nmであることが好ましく、50〜300nmであることがさらに好ましい。
【0113】
また、透明導電層の25℃、相対湿度60%で測定した表面電気抵抗は0.1〜200Ω/□であることが好ましく、0.1〜100Ω/□であることがより好ましく、0.5〜60Ω/□であることがさらに好ましい。また透明導電層の光透過性は80%以上、より好ましくは83%以上、さらに好ましくは85%以上である。
【0114】
(ガスバリア層)
本発明のフィルムは、ガス透過性を抑制するために、ガスバリア層を設けることも好ましい。好ましいガスバリア層としては、例えば珪素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ジルコニウム、チタン、イットリウム、タンタルからなる群から選ばれる1種または2種以上の金属を主成分とする金属酸化物、珪素、アルミニウム、ホウ素の金属窒化物またはこれらの混合物を挙げることができる。この中でも、ガスバリア性、透明性、表面平滑性、屈曲性、膜応力、コスト等の点から珪素原子数に対する酸素原子数の割合が1.5〜2.0の珪素酸化物を主成分とする金属酸化物が良好である。
【0115】
これら無機のガスバリア層は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等の気相中より材料を堆積させて膜形成する気相堆積法により作製できる。中でも、特に優れたガスバリア性が得られるという観点から、スパッタリング法が好ましい。また、ガスバリア層を設けている間に50〜200℃に昇温してもよい。
【0116】
ガスバリア層の膜厚は、10〜300nmであることが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。
【0117】
ガスバリア層は、透明導電層と同じ側または反対側いずれに設けてもよいが、反対側に設けることが好ましい。
【0118】
ガスバリア層を設けたフィルムのガスバリア性は、40℃、相対湿度100%で測定した水蒸気透過度が0〜5g/m2・dayであることが好ましく、0〜1g/m2・dayであることがより好ましく、0〜0.5g/m2・dayであることがさらに好ましい。また、40℃、相対湿度90%で測定した酸素透過度は0〜1ml/m2・day・atm(0〜1×105ml/m2・day・Pa)であることが好ましく、0〜0.7ml/m2・day・atm(0〜0.7×105ml/m2・day・Pa)であることがより好ましく、0〜0.5ml/m2・day・atm(0〜0.5×105ml/m2・day・Pa)であることがさらに好ましい。
【0119】
(欠陥補償層)
本発明のフィルムは、バリア性を向上させる目的で、ガスバリア層と隣接して欠陥補償層を設けることが好ましい。欠陥補償層は、(1)米国特許第6171663号明細書、特開2003−94572号公報記載のようにゾルゲル法を用いて作製した無機酸化物層を利用する方法、(2)米国特許第6413645号明細書、同64163645号明細書記載のように有機物層を利用する方法で作製できる。また、欠陥補償層は、前記文献に記載されているように、真空下で蒸着後、紫外線もしくは電子線で硬化させる方法、または塗布した後、加熱、電子線、紫外線等で硬化させる方法で作製することが好ましい。塗布方式で作製する場合には、従来用いられる種々の塗布方法、例えば、スプレーコート、スピンコート、バーコート等の方法を用いることができる。
【0120】
[画像表示素子]
本発明のフィルムは、薄膜トランジスタ(TFT)表示素子用基板として用いることができる。TFTアレイの作製方法は、特表平10−512104号公報に記載された方法等が挙げられる。さらに、これらの基板はカラー表示のためのカラーフィルターを有していてもよい。カラーフィルターはいかなる方法を用いて作製してもよいが、好ましくはフォトリソグラフィー手法で作製することが好ましい。
【0121】
本発明のフィルムは、必要に応じて各種機能層を設けた上で画像表示素子に用いることができる。ここで、画像表示素子としては特に限定されず、従来知られているものを用いることができる。また、本発明のフィルムを用いて表示品質に優れたフラットパネルディスプレイを作製できる。フラットパネルディスプレイとしては液晶、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンス(EL)、蛍光表示管、発光ダイオードなどが挙げられ、これら以外にも従来ガラス基板が用いられてきたディスプレイ方式のガラス基板に代替する基板として用いることができる。さらに、本発明のフィルムは太陽電池、タッチパネルなどの用途にも利用可能である。太陽電池は、特開平9−148606号公報、特開平11−288745号公報、新しい有機太陽電池のオールプラスチック化への課題と対応策(2004年、技術情報協会出版)などに記載のものに応用できる。タッチパネルは、特開平5−127822号公報、特開2002−48913号公報等に記載のものに応用できる。
【0122】
本発明のフィルムを液晶表示用途などに使用する場合には、光学的均一性を達成するために非晶性ポリマーであることが好ましい。また、複屈折は小さい方が好ましく、特に面内レタデ−ション(Re)は50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることがさらに好ましい。複屈折の小さいフィルムを得るためには、製膜時の冷却温度を適宜調節し、または必要に応じて延伸して調節することもできる。さらに、レタデーション(Re)およびその波長分散を制御する目的で、固有複屈折の符号が異なる樹脂や添加剤を組み合わせたり、波長分散の大きい(あるいは小さい)樹脂や添加剤を組み合わせたりすることもできる。また、本発明のフィルムはレターデーション(Re)の制御を行ったり、ガス透過性や力学特性の改良を行ったりする目的で、異種樹脂の積層等を好適に用いることができる。また、公知の位相差板を併用して位相差補償を行うこともできる。
【0123】
一方、光学異方性をコントロールすることで、本発明のフィルムを位相差板として用いることもできる。この場合、必ずしも複屈折が小さい必要はなく、所望の複屈折を有していればよい。所望の複屈折を得る方法としては、本発明のフィルムを延伸したり、複屈折を有する化合物を混合したり、塗設したり公知のあらゆる方法を用いることができる。
【0124】
反射型液晶表示装置に用いる場合は、下から順に、下基板、反射電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、透明電極、上基板、λ/4板、そして偏光膜からなる。このうち本発明のフィルムは光学特性の調節によりλ/4板、偏光膜用保護フィルム、他の位相差板(例えば視野角補償フィルム)として用いてもよい。その耐熱性の観点からは、基板としての利用が好ましく、さらには透明性の観点から透明電極および配向膜付上基板として使用することが好ましい。また、必要に応じてガスバリア層、TFTなどを設けることもできる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を反射電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。
【0125】
透過型液晶表示装置に用いる場合は、下から順に、バックライト、偏光板、λ/4板、下透明電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、上透明電極、上基板、λ/4板、そして偏光膜からなる。このうち本発明のフィルムは、光学特性の調節によりλ/4板、偏光膜用保護フィルム、他の位相差板(例えば視野角補償フィルム)として用いてもよいが、その耐熱性の観点から基板としての利用が好ましく、透明電極および配向膜付基板として使用することが好ましい。また、必要に応じてガスバリア層、TFTなどを設けることもできる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を下透明電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。
【0126】
液晶セルは特に限定されないが、TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti-ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、前記表示モ−ドを配向分割した表示モードも提案されている。本発明のフィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
【0127】
これらは特開平2−176625号公報、特公平7−69536号公報、MVA(SID97,Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845)、SID99, Digest of tech. Papers (予稿集)30(1999)206、特開平11−258605号公報、SURVAIVAL(月刊ディスプレイ、第6巻、第3号(1999)14)、PVA(Asia Display 98,Proc. of the-18th-Inter. Display res. Conf.(予稿集)(1998)383)、Para−A(LCD/PDP Iternational`99)、DDVA(SID98, Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)838)、EOC(SID98, Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)319)、PSHA(SID98, Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)1081)、RFFMH(Asia Display 98, Proc. of the-18th-Inter. Display res. Conf. (予稿集)(1998)375)、HMD(SID98, Digest of tech. Papers (予稿集)29(1998)702)、特開平10−123478号公報、国際公開W098/48320号公報、特許第3022477号公報、および国際公開WO00/65384号公報等に記載されている。
【0128】
本発明のフィルムは、必要に応じてガスバリア層、TFTを設け、透明電極付基板として有機EL表示用途に使用できる。
有機EL表示素子としての具体的な層構成としては、陽極/発光層/透明陰極、陽極/発光層/電子輸送層/透明陰極、陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/透明陰極、陽極/正孔輸送層/発光層/透明陰極、陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/透明陰極、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/透明陰極等が挙げられる。
【0129】
本発明のフィルムが使用できる有機EL素子は、前記陽極と前記陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜40ボルト)、または直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
【0130】
これら有機EL素子の駆動については、特開平2−148687号、特開平6−301355号、特開平5−29080号、特開平7−134558号、特開平8−234685号、特開平8−241047号の各公報、米国特許第5828429号、同6023308号各明細書、日本特許第2784615号公報等に記載された方法を利用できる。
【実施例】
【0131】
以下に実施例と比較例とを挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0132】
[特性値の測定方法]
(1)重量平均分子量
東ソー(株)製の「HLC−8120GPC」を用いて、テトラヒドロフランを溶媒とするポリスチレン換算GPC測定によりポリスチレンの分子量標準品と比較して重量平均分子量を求めた。
【0133】
(2)ガラス転移温度(Tg)
セイコー(株)製「DSC6200」を用いて、DSC法(窒素中、昇温温度10℃/分)により以下のようにしてポリマーのTgを測定した。
まず、フィルムサンプル(0.5cm×2.0cm片)を作製し、引張荷重100mNの条件下、TMA(リガク(株)製、TMA8310)の引張荷重法にて得られる熱変形開始温度をフィルムのガラス転移温度として測定した。
【0134】
(3)フィルムの厚さ
アンリツ(株)製「K402B」を用いて、ダイヤル式厚さゲージによりフィルムの厚さを測定した。
【0135】
(4)フィルムの全光線透過率
スガ試験機製、直読式ヘイズコンピューター「HGM−2DP」を用いてフィルムの全光線透過率を測定した。
【0136】
[比較例1]
<BisA−I/T溶融製膜>
比較ポリマーである下記「BisA−I/T」(重量平均分子量73000、Tg206℃、白色粉体)を加熱プレス機(東洋精機(株)製、ミニテストプレス)を用いて以下の手順で溶融製膜を行った。得られたフィルムは厚さ98μm、Tg208℃、全光線透過率85%、無色透明で、直径3mmの円筒に巻きつけても破断しない良好なフィルムであった。
【0137】
<加熱プレス機を用いた溶融製膜手順>
あらかじめ製膜温度(270℃)に加熱しておいた加熱プレス機(東洋精機(株)製、ミニテストプレス)の基板面に市販ポリイミドフィルム(商品名:ユーピレックス75S、宇部興産(株)製)を敷き、100μm厚さの銅板を2枚、約5cm間隔を空けて設置した。その中央部に「BisA−I/T」粉を約1g山積みにし、その上に市販ポリイミドフィルムをかぶせプレスし3分間その状態を保った。その後、2分かけて30MPaまで加圧し3分間その状態を保った。その後圧力を開放しポリイミドフィルムに挟まれた「BisA−I/T」フィルムを2枚の銅板で急冷した。30分放置後、ポリイミドフィルムを剥がし、BisA−I/Tフィルムを得た。
【0138】
【化31】

【0139】
[実施例1]
<PF−7/BA−1溶融製膜>
本発明におけるポリマーである上述の具体例(PF−7)(重量平均分子量55000、Tg350℃、白色粉体)と硬化性可塑剤として下記「BA−1」とを75/25の質量比で具体例(PF−7)の4倍質量のジクロロメタンに溶解した。その溶液をガラス基板上にキャストし、溶媒を乾燥除去することでPF−7/BA−1混合物をフィルム形態で得た。
TMAを用いて測定した前記より得られた混合物フィルムのTgは220℃であった。該混合物フィルムを粉砕した白色粉体を比較例1の「BisA−I/T」の代わりに用い、製膜温度を220℃に変更すること以外は、全て比較例1と同じ手順で溶融製膜を実施した。得られた混合物フィルムを窒素気流下1h、300℃加熱することで本発明のPF−7/BA−1溶融硬化フィルムを得た。得られたフィルムは厚さ99μm、Tg342℃、全光線透過率78%、薄黄色透明で、直径3mmの円筒に巻きつけても破断しない良好なフィルムであった。
【0140】
【化32】

【0141】
[実施例2]
<PF−7/BM−1溶融製膜>
本発明におけるポリマーである上述の具体例(PF−7)(重量平均分子量55000、Tg350℃、白色粉体)と硬化性可塑剤として下記「BM−1」とを80/20の質量比で「PF−7」の7倍質量のN,N−ジメチルアセトアミドに溶解した。その溶液をガラス基板上にキャストし、溶媒を乾燥除去することでPF−7/BM−1混合物をフィルム形態で得た。TMAを用いて測定したPF−7/BM−1混合物フィルムのTgは208℃であった。
前記より得られた混合物フィルムを粉砕した薄黄色粉体を比較例1の「BisA−I/T」の代わりに用い、製膜温度を200℃に変更すること以外は、全て比較例1と同じ手順で溶融製膜を実施した。得られた混合物フィルムを窒素気流下1h、250℃加熱することで本発明のPF−7/BM−1溶融硬化フィルムを得た。得られたフィルムは厚さ98μm、Tg347℃、全光線透過率74%、薄黄色透明で、直径3mmの円筒に巻きつけても破断しない良好なフィルムであった。
【0142】
【化33】

【0143】
[実施例3]
<P−01/BM−1溶融製膜>
本発明におけるポリマーである上述の具体例(P−01)(重量平均分子量64000、Tg390℃、白色粉体)と硬化性可塑剤として前記「BM−1」とを80/20の質量比で具体例(P−01)の7倍質量のN,N−ジメチルアセトアミドに溶解した。その溶液をガラス基板上にキャストし、溶媒を乾燥除去することでP−01/BM−1混合物をフィルム形態で得た。
TMAを用いて測定したP−01/BM−1混合物フィルムのTgは201℃であった。該混合物フィルムを粉砕した薄黄色粉体を比較例1の「BisA−I/T」の代わりに用い、製膜温度を200℃に変更すること以外は、全て比較例1と同じ手順で溶融製膜を実施した。得られた混合物フィルムを窒素気流下1h、250℃加熱することで本発明のPF−7/BM−1溶融硬化フィルムを得た。得られたフィルムは厚さ99μm、Tg372℃、全光線透過率72%、薄黄色透明で、直径3mmの円筒に巻きつけても破断しない良好なフィルムであった。
【0144】
[実施例4]
<PF−7/LC−1溶融製膜>
本発明におけるポリマーである上述の具体例(PF−7)(重量平均分子量55000、Tg350℃、白色粉体)と硬化性可塑剤として下記「LC−1」を80/20の質量比で具体例(PF−7)の3質量%の下記開始剤NBCとともに具体例(PF−7)の4倍質量のジクロロメタンに溶解した。その溶液をガラス基板上にキャストし、溶媒を乾燥除去することでPF−7/LC−1混合物をフィルム形態で得た。
TMAを用いて測定したPF−7/LC−1混合物フィルムのTgは180℃であった。該混合物フィルムを粉砕した白色粉体を比較例1の「BisA−I/T」の代わりに用い、製膜温度を190℃に変更すること以外は、全て比較例1と同じ手順で溶融製膜を実施した。得られた混合物フィルムを窒素気流下3h、240℃加熱することで本発明のPF−7/LC−1溶融硬化フィルムを得た。得られたフィルムは厚さ97μm、Tg338℃、全光線透過率84%、無色透明で、直径3mmの円筒に巻きつけても破断しない良好なフィルムであった。
【0145】
【化34】

【0146】
【化35】

【0147】
[実施例5]
<P−01/LC−1溶融製膜>
本発明におけるポリマーとして上述の具体例(P−01)(重量平均分子量64000、Tg390℃、白色粉体)と硬化性可塑剤として前記「LC−1」とを80/20の質量比で具体例(P−01)の3質量%の前記開始剤NBCとともに具体例(P−01)の4倍質量の2−ブタノンに溶解した。その溶液をガラス基板上にキャストし、溶媒を乾燥除去することでP−01/LC−1混合物をフィルム形態で得た。
TMAを用いて測定したP−01/LC−1混合物フィルムのTgは180℃であった。該混合物フィルムを粉砕した白色粉体を比較例1の「BisA−I/T」の代わりに用い、製膜温度を190℃に変更すること以外は、全て比較例1と同じ手順で溶融製膜を実施した。得られた混合物フィルムを窒素気流下3h、240℃加熱することで本発明のP−01/LC−1溶融硬化フィルムを得た。得られたフィルムは厚さ99μm、Tg360℃、全光線透過率80%、淡黄色透明で、直径3mmの円筒に巻きつけても破断しない良好なフィルムであった。
【0148】
[比較例2]
<PF−7単独溶融製膜>
本発明におけるポリマーとして上述の具体例(PF−7)(重量平均分子量55000、Tg350℃、白色粉体)を比較例1の「BisA−I/T」の代わりに用い、製膜温度を390℃に変更し、加圧保持時間を30分に延長すること以外は、全て比較例1と同じ手順で溶融製膜を実施した。得られたPF−7フィルムは、ところどころ透明部分もあるが白濁部と茶褐色部とが混ざった状態となり、良好なフィルムが得られなかった。膜厚ムラも大きく、脆く裁断も困難なためフィルムの評価は行わなかった。
【0149】
[比較例3]
<P−01単独溶融製膜>
本発明におけるポリマーとして上述の具体例(P−01)(重量平均分子量64000、Tg390℃、白色粉体)を比較例1の「BisA−I/T」の代わりに用い、製膜温度を390℃に変更し、加圧保持時間を30分に延長すること以外は、全て比較例1と同じ手順で溶融製膜を実施した。得られたP−01フィルムは、透明部分のない白濁部と茶褐色部が混ざった状態となり、良好なフィルムが得られなかった。膜厚ムラも大きく、脆く裁断も困難なためフィルムの評価は行わなかった。
【0150】
以上の結果より本発明におけるポリマーと硬化性可塑剤の混合物を用いた本発明のフィルムの製造方法は、ガラス転移温度が高いフィルムを溶融製膜法で製造することができる。さらに連続溶融製膜を実施することでディスプレイ基板用途など各種機能層設置可能な耐熱性を有する透明フィルムを生産性よく製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度が250℃以上のポリマーと硬化性可塑剤との混合物を溶融製膜して塗膜を形成し、溶融製膜した前記塗膜を硬化してガラス転移温度が250℃以上のフィルムを製造する工程を含むことを特徴とするフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記ポリマーが下記一般式(1)で表されるスピロ構造または下記一般式(2)で表されるカルド構造を含む繰り返し単位、或いは、下記一般式(8)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1に記載のフィルムの製造方法。
【化1】

[一般式(1)中、環αは単環式または多環式の環を表し、2つの環αはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。2つの環αは、スピロ結合により連結されている。]
【化2】

[一般式(2)中、環βおよび環γは、単環式または多環式の環を表し、2つの環γはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。2つの環γは、環β上の1つの4級炭素に連結されている。]
【化3】

[式中、Yは単環式もしくは縮合多環式の4価の脂肪族基を表し、Xは単環式もしくは縮合多環式の芳香族基、または、単環式もしくは縮合多環式の脂肪族基を含有し、構成する炭素原子数が4〜30である2価の連結基を表す。]
【請求項3】
前記硬化性可塑剤が下記構造で表されるシアネート基、マレイミド基、アクリロイル基のいずれかを分子内に2つ以上有する化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムの製造方法。
【化4】

【請求項4】
前記フィルムの全光線透過率が70%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたことを特徴とするフィルム。

【公開番号】特開2007−197590(P2007−197590A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18706(P2006−18706)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】