説明

フィルムの製造方法

【課題】
本発明の目的は、溶液製膜法で必然的に発生する製品化できない部分を有効利用してコストを低下させ、かつ品質のよいフィルムを安定して提供できる手段を提供する。
【解決手段】
上記課題は、ポリマーを溶剤に溶解してポリマー溶液とし、該ポリマー溶液を流延してフィルムを製造する方法において、製造されたフィルムから製品フィルムを取得し、残余を前記ポリマー溶液の調製に使用されるポリマーの一部もしくは全部として使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーフィルムを、溶液製膜法により製造する、新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、溶液製膜法では、膜ポリマーを溶剤に溶解してポリマー溶液とし、ダイから該ポリマー溶液を枠型に流延してフィルムを製造している。
得られたフィルムの端部はネックイン等の影響により均一の厚みに成形することが困難である。このため、必要な均一厚さのフィルムとするためには、厚みの不均一なフィルム端部を切除されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この切除されたフィルム端部は、通常廃棄物として廃棄されている。しかしながら、製品端部の切除部分は定常的に発生し、量的にも問題である。これらを有効に活用しなければ原料費が増加し、生産コストが増大してしまうという問題点があった。さらには資源の有効利用の観点からも廃棄物を低減することが望まれている。
【0004】
また、廃棄量を減らす目的で、ぎりぎりまでフィルム端部の切除率を小さくしても、製品フィルムの膜厚バラツキにより品質を低下させ、不良率が高くなる虞れがあると同時に、例えば、ロールとして巻きずれを発生したり、巻きシワを発生させたりすることがあった。
【0005】
なお、端部の切除率を大きくしすぎると、当然のこととして製品の得率が低下し、生産性の低下を招いてしまい、歩留まりが悪いという問題点があった。
このため、溶液製膜法で必然的に発生する製品化できない部分を有効利用してコストを低下させ、かつ品質のよいフィルムを安定して提供できる手段を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の条件を満足する残渣(切削くず)を使用し、該残渣を溶剤に溶解して、ポリマーの一部として使用すれば、通常廃棄されていたフィルム端部を有効利用できるとともに、バージン材料を用いて使用したフィルムと品質的に同等のものが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)すなわち、本発明に係るフィルムの製造方法は、
ポリマーを溶剤に溶解してポリマー溶液とし、該ポリマー溶液を枠型に流延してフィルムを製造する方法において、
製造されたフィルムを所定形状に切り出して製品フィルムを取得し、残渣(切削くず)を前記ポリマー溶液の調製に使用されるポリマーの一部もしくは全部として再使用することを特徴としている。
(2)前記ポリマーが、
芳香族系ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルホキシド、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミドからなる群から選択される少なくとも1種の芳香族高分子化合物であり、かつ
プロトン伝導性置換基を有するものである。
(3)前記ポリマーとして再使用される残渣中の総不純物金属量が1000ppm以下に管理されている。
(4)前記ポリマーとして再使用される残渣中の水分量が30質量%以下に管理されている。
(5)前記ポリマーとして再使用される残渣中の総不純物金属量が、1000ppmより多い場合、残渣を硫酸水溶液に浸漬し、必要に応じて洗浄・乾燥することで、総不純物金属量が1000ppm以下に低減する。
(6)前記ポリマーとして再使用される残渣中の水分量が、30質量%より多い場合、残渣を
加熱して、水分を除去して、水分量を30質量%以下に低減する。
(7)残渣をカッターブロワー、クラッシャー、またはシュレッダーで裁断して、平均粒径2〜30mmのチップとして再使用する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、溶液製膜法において必然的に発生するフィルムの非製品化部分を有効利用してフィルムの製造コストを下げるとともに製品フィルムの品質を安定して良好にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、ポリマーを溶剤に溶解してポリマー溶液とし、該ポリマー溶液を枠型に流延してフィルムを製造する方法において、
製造されたフィルムを所定形状に切り出して製品フィルムを取得し、残渣(切削くず)を前記ポリマー溶液の調製に使用されるポリマーの一部もしくは全部として再使用することを特徴としている。
【0009】
ポリマー
本発明において使用されるポリマーとしては、揮発性の溶媒に溶解しうるものであれば特に制限されるものではない。なお、本発明の方法はプロトン伝導膜を製造する際に好適に採用されるので、通常、プロトン伝導性置換基を有する芳香族高分子化合物がポリマーとして使用される。
【0010】
プロトン伝導性置換基を有する芳香族高分子化合物としては、分子内にスルホン酸基、リン酸基、カルボン酸基などのプロトン伝導性置換基を有する芳香族ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルホキシド、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミドから選択される少なくとも1種の芳香族高分子化合物が好適である。これらは単独重合体であっても、他のコモノマーが共重合された共重合体であってもよく、さらには、2種以上の芳香族高分子化合物を混合して使用してもよい。
【0011】
これらの中でも、プロトン伝導性置換基を有するポリアリーレンが、製造の制御のしやすさ、再利用という点で好適であり、特にスルホン酸基を有するポリアリーレンが好ましい。
【0012】
本発明に使用されるスルホン酸基を有するポリアリーレンは、下記一般式(A)で表される繰り返し構成単位と、下記一般式(B)で表される繰り返し構成単位とを含んでおり、下記一般式(C)で表される単位を有する重合体である。
【0013】
【化1】

【0014】
式中、Aは2価の電子吸引性基を示し、電子吸引性基としては、具体的に−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2l−(ここで、lは1〜1
0の整数である)、−C(CF32−などが挙げられる。Bは2価の電子供与基または直接結合を示し、電子供与基の具体例としては、−(CH2)−、−C(CH32−、−O
−、−S−、−CH=CH−、−C≡C―および
【0015】
【化2】

【0016】
などが挙げられる。なお、電子吸引性基とは、ハメット(Hammett)置換基常数がフェニ
ル基のm位の場合、0.06以上、p位の場合、0.01以上の値となる基をいう。
Arは−SO3Hで表される置換基を有する芳香族基を示し、芳香族基として具体的に
はフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナンチル基などが挙げられる。これらの基のうち、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
【0017】
mは0〜10、好ましくは0〜2の整数、nは0〜10、好ましくは0〜2の整数を示し、kは1〜4の整数を示す。
【0018】
【化3】

【0019】
式(B)中、R1〜R8は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリル基、アリール基およびシアノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示す。
【0020】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基などが挙げられ、メチル基、エチル基などが好ましい。
フッ素置換アルキル基としては、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基などが挙げられ、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基などが好ましい。
【0021】
アリル基としては、プロペニル基などが挙げられ、
アリール基としては、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
Wは単結合または2価の電子吸引性基を示し、Tは単結合または2価の有機基を示す。
【0022】
式(B)において、pは0または正の整数であり、上限は通常100、好ましくは5〜80である。
【0023】
【化4】

【0024】
(式(C)中、W、T、A、B、Ar、m、n、k、pおよびR1〜R8は、それぞれ上記一般式(A)および(B)中のW、T、A,B、Ar、m、n、k、pおよびR1〜R8と同義である。
【0025】
x、yはx+y=100モル%とした場合のモル比を示す。)
本発明で用いられるスルホン酸基を有するポリアリーレンは、式(A)で表される繰り返し構成単位を0.5〜100モル%、好ましくは10〜99.999モル%の割合で、式(B)で表される繰り返し構成単位を99.5〜0モル%、好ましくは90〜0.001モル%の割合で含有している。
【0026】
このような重合体は、公知の方法で製造することが可能である。
有機溶媒
本発明に使用されるポリマーを溶解する有機溶剤としては、上記したポリマーを溶解し、しかも、揮発性に高いものが好ましく使用される。
【0027】
たとえば、炭化水素(例:ベンゼン、トルエンなど)、アルコール(例:メタノール、エタノール、ジエチレングリコールなど)、ケトン(例:アセトンなど)および非プロトン性極性溶媒(例:N-メチルピロリドン、γ-ブチルラクトンなど)があげられる。
【0028】
製膜
上述したポリマーは、溶剤に溶解して溶液とした後、基材上に流延し、フィルム状に成形する方法(溶剤キャスト法)などにより、フィルム状に成形される。
【0029】
基材としては、通常の溶液キャスト法に用いられる基材であれば特に限定されず、プラスチック製、金属製などの基体が用いられ、たとえば上記のスルホン酸基を有するポリアリーレン共重合体の場合には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの熱可塑性樹脂からなる基材が用いられる。
【0030】
ポリマーを溶解させた溶液のポリマー濃度は、ポリマーの種類・分子量にもよるが、通
常、5〜40質量%、好ましくは7〜25質量%である。5質量%未満では、厚膜化し難く、また、ピンホールが生成しやすい。一方、40重量%を超えると、溶液粘度が高すぎてフィルム化し難かしい。
【0031】
なお、溶液粘度は、ポリマーの分子量、ポリマー濃度にもよるが、通常、2,000〜
100,000mPa・s、好ましくは3,000〜50,000mPa・sである。2,000mPa・s未満では、製膜中の溶液の滞留性が悪く、基体から流れてしまうことがある。一方、100,000mPa・sを超えると、粘度が高過ぎて、ダイからの押し出し
ができず、流延法によるフィルム化が困難となることがある。
【0032】
本発明では、以上のようなポリマー溶液を流延してフィルムを製造する方法において、製造されたフィルムを所定形状に切り出して製品フィルムを取得し、残渣(切削くず)を前記ポリマー溶液の調製に使用されるポリマーの一部もしくは全部として使用するものである。
【0033】
残渣(切削くず)
溶液流延させて得られたフィルムの端部はネックイン等の影響により均一の厚みに成形することが困難である。このため、必要な均一厚さのフィルムとするために、厚みの不均一なフィルム端部が切除される。
【0034】
本発明はこの切除されたフィルム端部(残渣、または切削くずともいう)を再利用するものである。
フィルム端部の切除は、フィルム内の揮発成分量が乾量基準で30質量%以下になってから行うことが好ましく、特に1質量%以下になってから行うことがより好ましい。揮発成分量が乾量基準で30質量%を超えると、フィルム剛性が低下するために、切除が難しい。また、切除できたとしても、切除した残渣を再利用するための、後述する粉砕が効率よくできないことがあるとともに、切り出し面がぎざぎざになることがある。また、乾燥に伴ってカールが生じて風送工程での搬送不良を生じさせることがある。
【0035】
また、切除された残渣は、カッターブロワー、クラッシャーまたはシュレッダーにて粉砕してフィルムチップとする。
フィルムチップの形状としては特に制限されるものではないが、ハンドリングおよび再利用する際の溶解性などの点から、通常2〜30mmの大きさ、好ましくは5〜15mmの大きさのものが望ましい。
【0036】
再使用される残渣中の総不純物金属量は、1000ppm以下に管理されていることが望まし
い。総不純物金属量は、蛍光X線評価装置などにより評価される。そして総不純物金属量が所定の基準値、例えば1000ppmを超える場合は、残渣を硫酸水溶液に浸漬し、必要に応
じて洗浄・乾燥することで、総不純物金属量が1000ppm以下に低減してもよい。
【0037】
前記ポリマーとして再使用される残渣中の水分量が30質量%以下に管理されていることが好ましい。水分は、残渣中に本来含まれているもの(製造時に混入したもの)もあるが、保存中に吸湿したものも含まれる。
【0038】
残渣中の含水量は、カールフィッシャー法などで評価される。水分量が所定の基準値、例えば30質量%を超える場合は真空乾燥機で、残渣を加熱して、水分を除去して、水分量を30質量%以下に低減してもよい。
【0039】
また、シート状の製品を製造する場合、ロール状のフィルムをシートカッターなどで裁断した後、製品形態になるが、そこで発生した不良品・規格外品も上記の再生原料として
用いてもよい。さらに、一旦、市場にして使用されたものを回収し、必要に応じて洗浄し、同様に裁断して、切削くずとして使用することも可能である。
【0040】
回収残渣を、ポリマー原料の一部または全部として用いて、上記の溶剤を用いてポリマー溶液を作製する。すなわち、回収残渣と未使用のバージン材料とを混合して使用してもよく、バージン材料の代わりに回収残渣を使用してもよい。溶液粘度としては、上記したとおりである。
【0041】
回収残渣とバージン材料との混合比は、1:99〜100:0、好ましくは30:70〜100:0[回収残渣:バージン材料重量比]であることが望ましい。
回収残渣とバージン材料は同じプロトン伝導性置換基を有するポリマーの組み合わせが望ましいが、プロトン伝導性置換基量、ポリマー分子量が異なるもの同士を組み合わせてもよい。さらに、相分離しないものであれば、異なるポリマー同士を組み合わせてもよい。
【0042】
そして前記した製膜方法と同様に、残渣および必要に応じてバージン材料が溶解したポリマー溶液を基材上に流延し、フィルム状に成形する。
ポリマー溶液中には、硫酸、リン酸などの無機酸、カルボン酸を含む有機酸、適量の水などが含まれていてもよい。
【0043】
上記のようにして製膜した後、得られた未乾燥フィルムを水に浸漬することにより、未乾燥フィルム中の有機溶剤が水と置換され、得られるフィルムの残留溶媒量を低減することができる。
【0044】
なお、製膜後に未乾燥フィルムを水へ浸漬する前に、未乾燥フィルムを予備乾燥してもよい。予備乾燥は、未乾燥フィルムを通常50〜150℃の温度で、0.1〜10時間保持することにより行われる。
【0045】
未乾燥フィルムを水に浸漬する際には、例えば、枚葉を水に浸漬するバッチ方式が採用される。あるいは、PETなどの基板フィルム上に製膜された状態で、この積層フィルムごと水に浸漬させるか、または基板から分離した膜を水に浸漬させて巻き取っていく連続方式が採用される。
【0046】
バッチ方式の場合には、処理フィルムを枠に嵌める方式が、処理されたフィルムの表面における皺形成が抑制される点で好ましい。
未乾燥フィルムを水に浸漬する際には、未乾燥フィルム1質量部に対し、水が10質量部以上、好ましくは30質量部以上の接触比となるようにすることが好ましい。また、フィルム中の残存溶媒量をできるだけ少なくするためには、できるだけ大きな接触比を維持するのが好ましい。さらに、浸漬に使用する水を交換したり、オーバーフローさせたりして、常に水中の有機溶媒濃度を一定濃度以下に維持しておくことも、残存溶媒量の低減に有効である。
【0047】
未乾燥フィルムを水に浸漬する際の水の温度は、好ましくは5〜80℃である。
このように、未乾燥フィルムを水に浸漬してから乾燥すると、残存溶媒量が低減されたフィルムが得られる。
【0048】
以上説明したように未乾燥フィルムを水に浸漬した後、フィルムを30〜100℃、好ましくは50〜80℃で、10〜180分、好ましくは15〜60分乾燥し、次いで、50〜150℃で、0.5〜24時間乾燥する。
【0049】
以上のような本発明によれば、溶液製膜法において必然的に発生するフィルムの非製品化部分を有効利用してフィルムの製造コストを下げるとともに製品フィルムの品質を安定して良好にすることができる。このため、廃棄物量が低減されるとともに、製品歩留まりを高めることが可能であり(ぎりぎりで切り出して、不良率が高くなることもないので)、製造コストを抑制することができる。さらに、一旦市場にでた製品をリサイクル使用することもできるので、資源の有効利用という点でも非常の好適である。
【0050】
なお、得られたフィルムの特性は、バージン材料を使用した場合と何らかわるところはない。
さらに、ポリマーが、前記したプロトン伝導性置換基を有するポリアリーレンの場合、得られたプロトン伝導膜は、高いプロトン伝導度を保持しつつ、優れた耐メタノール透過性、耐熱性、耐酸化性、靭性を示し、バージン材料を使用した場合と全く同等の特性を有している。家庭用電源向け燃料電池、燃料電池自動車、携帯電話用燃料電池、パソコン用燃料電池、携帯端末用燃料電池、デジタルカメラ用燃料電池、ポータブルCD、MD用燃料電池、ヘッドホンステレオ用燃料電池、ペットロボット用燃料電池、電動アシスト自転車用燃料電池、電動スクーター用燃料電池等の用途に好適に使用することができる。
【0051】
実施例
以下、本発明の実施例により説明するが本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0052】
合成例1
ネオペンチル基を保護基としたポリアリーレン共重合体(PolyAB−SO3 neo-Pe)の調製
撹拌機、温度計、冷却管、Dean-Stark管、窒素導入の三方コックを取り付けた1Lの三つ口のフラスコに、4−[4−(2,5−ジクロロベンゾイル)フェノキシ]ベンゼンス
ルホン酸neo-ペンチル(A−SO3 neo-Pe)39.58g(98.64ミリモル)とBCPAFオリゴマー(Mn=11200)15.23g(1.36ミリモル)、Ni(PPh32Cl2 1.67g(2.55ミリモル)、PPh3 10.49g(40ミリモル)、NaI 0.45g(3ミリモル)、亜鉛末 15.69g(240ミリモル)、乾燥NMP 390mLを窒素下で加えた。反応系を攪拌下に加熱し(最終的には75℃まで
加温)、3時間反応させた。重合反応液をTHF 250mLで希釈し、30分攪拌し、
セライトをろ過助剤に用い、ろ過紙、ろ液を大過剰のメタノール1500mLに注ぎ、凝固させた。凝固物を濾集、風乾し、さらにTHF/NMP(それぞれ200/300mL)に再溶解し、大過剰のメタノール1500mLで凝固析出させた。風乾後、加熱乾燥により目的の黄色繊維状のネオペンチル基で保護されたスルホン酸誘導体からなる共重合体(PolyAB-SO3neo-Pe)47.0g(収率99%)を得た。GPCによる分子量は数平均分子量Mn=47,600、重量平均分子量Mw=159,000であった。
【0053】
こうして得られたPolyAB-SO3neo-Pe 5.1gをNMP60mLに溶解し、90℃に加
温した。反応系にメタノール50mLと濃塩酸8mLの混合物を一時に加えた。懸濁状態となりながら、還流条件で10時間反応させた。蒸留装置を設置し、過剰のメタノールを溜去させ、淡緑色の透明溶液を得た。この溶液を大量の水/メタノール(1:1重量比)中に注いで、ポリマーを凝固させた後、洗浄水のPHが6以上となるまで、イオン交換水でポリマーを洗浄した。こうして得られたポリマーのIRスペクトルおよびイオン交換容量の定量分析から、スルホン酸エステル基(−SO3a)は定量的にスルホン酸基(−SO3H)に転換していることがわかった。
得られたスルホン酸基を有するポリアリーレン共重合体はのGPCによる分子量は、Mn=53,200、Mw=185,000であり、スルホン酸等量は1.9meq/gであった。
[実施例1]
合成例1で得られたスルホン酸基を含有するポリマー240gをN-メチルピロリドン1160
g、メタノール600gをディゾルバー型分散機に投入し、3時間攪拌を行い、粘度5000c
pの均一なポリマー溶液を得た。
上記の溶液をPETフィルム上にコンマコーター法によりキャストし、80℃で30分間、150℃で60分間、乾燥することで、膜厚40μmの均一且つ透明な固体電解質フィルムを得た。
【0054】
流延ベースの幅が400mm、フィルム端部切除幅を10mmずつ切除した残渣と不良品の製品シートをシュレッダーで裁断して作製したフィルムチップ(大きさ5mm)を、原
料ポリマー(バージン材料)に20質量%混合し、ポリマー溶液を調整後、製膜したフィルムの発電特性を測定した。
[実施例2]
流延ベースの幅が400mm、フィルム端部切除幅を10mmずつ切除した残渣と不良品の製品シートをシュレッダーで裁断して作製したフィルムチップ(大きさ5mm)を原料
ポリマーとし、ポリマー溶液を調整後、製膜したフィルムの発電特性を測定した。
[比較例1]
再生ポリマーを混合させずに、バージン材料でポリマー溶液を調整後、製膜したフィルムの発電特性を測定した。
【0055】
発電特性の評価
発電特性は東陽テクニカ製燃料電池評価装置を用いて、セル温度80℃の条件で評価した。
【0056】
結果を図1に示す。
図1に示す通り、実施例1、実施例2および比較例1の発電特性に有意な差は無く、再生ポリマーをポリマー溶液の調製に使用されるポリマーの一部もしくは全部として使用しても問題が生じないことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の方法が適用されたフィルムの発電特性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーを溶剤に溶解してポリマー溶液とし、該ポリマー溶液を枠型に流延してフィルムを製造する方法において、
製造されたフィルムを所定形状に切り出して製品フィルムを取得し、残渣(切削くず)を前記ポリマー溶液の調製に使用されるポリマーの一部もしくは全部として再使用することを特徴とするフィルムの製造方法。
【請求項2】
ポリマーが、芳香族系ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルホキシド、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミドからなる群から選択される少なくとも1種の芳香族高分子化合物であり、かつ
プロトン伝導性置換基を有するものであることを特徴とする請求項1に記載のフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記ポリマーとして再使用される残渣中の総不純物金属量が1000ppm以下に管理されて
いることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記ポリマーとして再使用される残渣中の水分量が30質量%以下に管理されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のフィルムの製造方法
【請求項5】
前記ポリマーとして再使用される残渣中の総不純物金属量が1000ppmより多い場合、残
渣を硫酸水溶液に浸漬し、必要に応じて洗浄・乾燥することで、総不純物金属量が1000ppm以下に低減することを特徴とする請求項3に記載のフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記ポリマーとして再使用される残渣中の水分量が30質量%より多い場合、残渣を加熱して、水分を除去して、水分量を30質量%以下に低減することを特徴とする請求項4に記載のフィルムの製造方法。
【請求項7】
残渣をカッターブロワー、クラッシャー、またはシュレッダーで裁断して、平均粒径2
〜30mmのチップとして再使用することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフィルムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−35600(P2006−35600A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217809(P2004−217809)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】