フィルムの露光装置
【課題】搬送時及び露光時のフィルムの傷つき及び振動を防止することができると共に、連続的に搬送中に露光処理することを可能とし、生産性を向上させることができるフィルムの露光装置を提供する。
【解決手段】フィルムの露光装置1は、感光性材料が塗布されたフィルム2aをその長手方向に搬送する1対の搬送ローラ11と、搬送ローラ11間のフィルム2aの下方に配置されフィルムを支持するステージ10と、ステージ10上のフィルム2aに対して露光光を照射して露光する光源13と、を有する。ステージ10は、多孔質材料からなる板状の基板10fと、基板10fの多孔質部から空気を上方に吹き上げてフィルムを基板に非接触で支持する噴気部材10a、10dと、基板10fに設けられた吸気孔10eを介して基板10fの表面から空気を吸引する吸気部材と、を有する。
【解決手段】フィルムの露光装置1は、感光性材料が塗布されたフィルム2aをその長手方向に搬送する1対の搬送ローラ11と、搬送ローラ11間のフィルム2aの下方に配置されフィルムを支持するステージ10と、ステージ10上のフィルム2aに対して露光光を照射して露光する光源13と、を有する。ステージ10は、多孔質材料からなる板状の基板10fと、基板10fの多孔質部から空気を上方に吹き上げてフィルムを基板に非接触で支持する噴気部材10a、10dと、基板10fに設けられた吸気孔10eを介して基板10fの表面から空気を吸引する吸気部材と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの露光装置に関し、特に、露光時のフィルムの振動を抑制し、生産性を向上させたフィルムの露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロールトゥロール方式のフィルム製造ラインにおいては、例えば図14に示すような工程で感光膜が形成されたフィルムが製造される(例えば、特許文献1)。即ち、図14に示すように、ロールトゥロール方式のフィルム製造ラインにおいては、フィルム2aがロール2から巻き解かれてラインに供給され、前処理部3においてフィルム2aにドライ洗浄及び表面改質等の前処理が施され、スリットコーター4にてフィルム2aの表面に所定の感光性材料が塗工された後、塗工された感光性材料が乾燥装置5にて乾燥される。表面上に感光膜が形成されたフィルム2aは、露光装置1に供給され、感光膜が露光装置1にて露光され、温度調節部6及び後処理部7を経て、露光後のフィルム2aが再びロール8に巻き取られる。このとき、フィルム2aは、各装置間をローラ9上に支持されて、その回転により搬送される。
【0003】
上記フィルム製造ラインにおいては、露光装置内に搬送されてくるフィルム上の感光性材料は、乾燥処理が施されただけの状態であり、従って、例えばコーティング処理を施されるまでは表面に例えば搬送ロール等を接触させることができない。即ち、乾燥処理後の感光性材料に搬送ロールを接触させると、例えば搬送ロールによる押圧力及び摩擦力により、感光性材料が剥がれてしまうという問題点がある。
【0004】
よって、従来のロールトゥロール方式のフィルム製造ラインにおいては、露光装置内に搬送されるフィルムは、図14に示すように、露光装置の前後にてフィルムの裏面側だけに設けられた1対のローラ9のみにより支持されている。このローラ9間の距離が長いために、ローラ間を搬送されるフィルムには、露光装置の内部で波打ちが生じてしまうという問題点がある。露光装置の内部には、フィルム上の感光性材料を露光するための光源が設置されており、露光光はフィルム表面の感光性材料上に焦点が合うように設定され、フィルムの表面上には、所定の光量でレーザ光が照射されるように構成されている。従って、露光装置内でフィルムの波打ちが発生した場合、露光光の焦点がフィルム面に一致しなくなり、感光性材料に所定の露光処理を行うことができなかったり、露光量がフィルムの表面上でばらつき、安定して露光処理を行うことができないという問題点がある。
【0005】
そこで、搬送ロールによるフィルムの搬送を一旦停止し、露光処理後に搬送ロールによるフィルムの搬送を再開するという間欠的動作により、フィルムを露光することが行われている。しかし、この方法は、生産性が低いという問題点がある。
【0006】
そこで、特許文献2のフィルムの露光装置においては、フィルムの下方にステージが設置され、ステージによりフィルムを支持するように構成されている。これにより、連続的にフィルムを送給しつつ、露光処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−229001号公報
【特許文献2】特開2010−85830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術においては、以下のような問題点がある。特許文献2の従来技術においては、フィルムは、ステージ上を摺擦するように移動するため、フィルムの下面が傷ついてしまう。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、搬送時及び露光時のフィルムの傷つき及び振動を防止することができると共に、連続的に搬送中に露光処理することを可能とし、生産性を向上させることができるフィルムの露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るフィルムの露光装置は、感光性材料が塗布されたフィルムをその長手方向に搬送する1対の搬送ローラと、この搬送ローラ間の前記フィルムの下方に配置され前記フィルムを支持するステージと、このステージ上の前記フィルムに対して露光光を照射して露光する光源と、を有し、前記ステージは、多孔質材料からなる板状の基板と、この基板の多孔質部から空気を上方に吹き上げて前記フィルムを前記基板に非接触で支持する噴気部材と、前記基板に設けられた吸気孔を介して前記基板の表面から空気を吸引する吸気部材と、を有することを特徴とする。
【0011】
このフィルムの搬送装置において、例えば前記ステージは、前記フィルムが前記基板上で前記搬送ローラの上方共通接線より下方に位置するように配置されていることが好ましい。
【0012】
本発明のフィルムの露光装置は、例えば前記ステージの上方にマスクが配置されており、前記光源からの露光光がマスクを透過して前記フィルムに照射される。
【0013】
前記ステージは、例えば前記フィルムを前記基板の表面から30乃至40μm浮かび上がった位置で支持する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るフィルムの露光装置は、搬送ローラ間でフィルムを下方から支持するステージが、多孔質材料からなる板状の基板を有し、噴気部材により、基板の多孔質部から空気を上方に吹き上げると共に、吸気部材が、基板の吸気孔を介して基板の表面から空気を吸引するため、フィルムを非接触状態でステージ上に安定的に保持することができる。よって、フィルムの下面がステージに接触して傷つくことを防止することができる。
【0015】
また、搬送時及び露光時におけるフィルムの振動を防止することができ、露光処理を連続的に搬送中に安定して行うことができるため、生産性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係るフィルムの露光装置を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るフィルムの露光装置において、搬送ローラ及びステージを示す拡大図である。
【図3】本発明の実施形態に係るフィルムの露光装置において、ステージを示す分解斜視図である。
【図4】図3に示すステージの断面Aにおける断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るフィルムの露光装置において、ステージを示す斜視図である。
【図6】フィルムを連続露光する機構を一例として示す図である。
【図7】マスクの一例を示す上面図である
【図8】フィルム位置の制御部を一例として示す図である。
【図9】フィルムの位置ずれの補正工程を示すブロック図である。
【図10】パターンが形成されたフィルムを示す上面図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係るフィルムの露光装置を示す図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係るフィルムの露光装置において、搬送ローラ及びステージを示す拡大図である。
【図13】搬送ローラがステージの上面よりも下方に配置された状態を示す図である。
【図14】ロールトゥロール方式のフィルム製造ラインの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。先ず、本発明の第1実施形態に係るフィルムの露光装置の構成について説明する。図1は本発明の第1実施形態に係るフィルムの露光装置を示す図、図2は本発明の第1実施形態に係るフィルムの露光装置において、搬送ローラ及びステージを示す拡大図、図3は本発明の実施形態に係るフィルムの露光装置において、ステージを示す分解斜視図、図4は図3に示すステージの断面Aにおける断面図、図5は本発明の実施形態に係るフィルムの露光装置において、ステージを示す斜視図である。本発明のフィルムの露光装置1は、図14に示すようなロールトゥロール方式のフィルム製造ラインにおいて、スリットコーター4にてフィルムの表面に塗工され、乾燥装置5にて乾燥処理された感光性材料を所定のパターンに露光処理するものである。図1に示すように、本実施形態のフィルムの露光装置1は、フィルム2aをその長手方向に搬送する1対の搬送ローラ11と、搬送ローラ11間のフィルム2aの下方に配置されてフィルム2aを支持するステージ10と、ステージ10上のフィルム2aに対して露光光を照射して露光する露光光源13とにより構成されており、例えば露光光源13からの露光光、例えばレーザ光を、マスクステージ12により支持され所定のパターンが形成されたマスク12aに透過させてフィルム2a上に照射して、感光性材料を露光して感光させる。
【0018】
搬送ローラ11は、感光性材料が塗工されたフィルム2aを下方(感光性材料が塗布されていない側の面)で支持するものであり、回転により、フィルム2aとの間に若干の押圧力及び摩擦力を発生させて、フィルム2aを搬送するものである。本実施形態においては、搬送ローラ11は、ステージ上に非接触状態で支持されたフィルムとほぼ同一の高さにてフィルム2aを支持するように配置されている。
【0019】
図3に示すように、ステージ10は、例えばフィルムの搬送方向に垂直な方向に複数個が並置されており、複数個のステージ10上に跨がるようにフィルムWが支持される。夫々のステージ10は、多孔質材料により構成され例えば表面が保護膜10gでコーティングされた基板10fが枠体100の上に載置されて構成されている。
【0020】
図3に示すように、支持台100の上面には例えば格子状に溝10cが設けられている。また、図4に示すように、支持台100の内部には中空部が設けられており、この中空部は例えばコンプレッサー(又は給気ポンプ等)に接続されて昇圧されるように構成されている。上記格子溝10cには、空間10aに接続されるように複数個の孔10dが設けられており、これにより、空間(噴気室)10aから、(噴気)孔10dを介して格子溝10cの内部に昇圧した空気を噴気することができるように構成されている。
【0021】
図3に示すように、支持台100の上面の格子溝10cが設けられていない部分には、例えば数cm間隔で孔10eが設けられており、図1、2及び図4に示すように、例えば配管又はチューブ等により排気ポンプ等の吸気装置に接続されている。
【0022】
支持台100上に載置された基板10fは、例えば多孔質グラファイト、多孔質セラミックス、多孔質樹脂、又は焼結金属等により形成されており、これにより、基板10fは、内部の隙間を介して上面側と下面側とが連通し、基板10fの上面には、格子溝10c内の正圧に対応した空気が例えば基板10fの面上に均一に噴気されるように構成されている。また、基板10fには上記吸気孔10eに対応する位置にて貫通して孔が設けられており、これにより、吸気孔10eを介して基板10fの上面を吸気できるように構成されている。吸気孔10eが例えば基板10fの全面に均等に設けられていることにより、基板10fの表面を均一に吸気することができる。
【0023】
基板10fの表面は例えば保護膜10gにより覆われている。この場合には、保護膜は、例えば金属、金属化合物、ガラス状炭素、ダイヤモンドライクカーボン、又はエポキシ樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、フッ素樹脂、若しくはフェノール樹脂等の樹脂材料により構成されており、例えば振動等により剥がれにくい材質により構成されていることが好ましい。そして、基板10fと同様に、保護膜10gも上面と下面とが連通するように構成されている。これにより、格子溝10cと保護膜10gの上面とが連通し、保護膜10gの上面には、格子溝10c内の正圧に対応した空気が保護膜10gの面上に均一に噴気されるように構成されている。保護膜10gには、前記吸気孔10eに対応する位置にて貫通するように数cm間隔で孔が設けられている。これにより、保護膜10gが設けられている場合においては、吸気孔10eを介して、保護膜10gの上面を吸気できるように構成されている。
【0024】
上記のようにステージ10を構成することにより、本実施形態においては、図5に示すように、ステージ10の上面は、多孔質部材による噴気と、吸気孔10eによる吸気が全面に均一に分布した状態となる。これにより、本実施形態においては、噴気孔10dから噴気した空気により、フィルム2aをステージ10上に浮かせながら、吸気孔10eによる吸気により、フィルム2aをステージ10側に吸引して、フィルム2aの上下方向の振動を抑制し、フィルム2aを非接触状態で安定的に支持することができる。
【0025】
そして、噴気孔10fから噴き出す空気の圧力及び吸気孔10eから吸気する空気の圧力を夫々調整することにより、フィルム2aは、例えばステージ10の上面から30乃至40μm浮かび上がった位置で安定的に支持される。フィルム2aは、ステージ10の上面から例えば30μm浮かび上がった位置で支持された場合においては、その浮上量の変動量は、例えば上下方向に夫々10μmであり、フィルム2aは、露光時においても、ステージ10に接触することはない。このフィルム2aの位置は、例えば、露光光源13からの照射光の焦点の位置とフィルムの上面に塗布された感光性材料の位置とが一致するように調整され、これにより、感光性材料に露光光が所定の光量で照射され、感光性材料を効果的に露光し、感光させることができるように構成されている。
【0026】
露光光源13は、例えば水銀ランプ光源であり、コリメータレンズを介して紫外光を出射するものである。これにより、マスク12aに形成された所定のパターンを透過した紫外光をフィルム2a上の感光性材料に照射(露光)し、感光性材料を感光させて、フィルム2a上に所定のパターンを形成する。なお、露光光源13としては、水銀ランプ光源の他に、例えばエキシマレーザ光源等のガスレーザ光源、YAGレーザ等の固体レーザ光源等、種々の光源を使用することができる。
【0027】
マスクステージ12により支持されたマスク12aとしては、例えばガラス又は合成石英からなる基板上にクロムからなる遮光膜を設置し、遮光膜が形成されていない部分を所定形状のパターンとしたもの、又は柔軟性がある透明の高分子フィルム上にパターンを反転させた形状で遮光性材料を塗布したエマルジョンマスク等、種々のマスクを使用することができる。
【0028】
本実施形態のフィルムの露光装置は、噴気孔10dからの噴気により、多孔質部材の孔から空気を上方に吹き上げてフィルム2aをステージ10の上方に浮かび上がらせると共に、吸気孔10eからの吸気により、フィルム2aをステージ10側に吸引して、フィルム2aを非接触状態でステージ10上に安定的に保持することができる。よって、フィルム2aが搬送時及び露光時にステージ10に接触することはなく、フィルム2aの傷つきを防止することができる。
【0029】
また、搬送時及び露光時におけるフィルム2aの振動を防止することができ、露光処理を連続的に搬送中に安定して行うことができ、生産性が高い。例えば、露光処理時にフィルムの搬送を停止する必要がない。
【0030】
以上説明したフィルム露光装置において、フィルムを連続露光する機構の構成について、詳細に説明する。図6はフィルムを連続露光する機構を一例として示す図、図7はマスクの一例を示す上面図、図8はフィルム位置の制御部を一例として示す図である。図6に示すように、フィルム露光装置1には、例えば露光光源13から出射した露光光の光路上に介在するようにカップリング光学部材13aが設けられており、露光光の光束径を拡大できるように構成されている。また、フィルム露光装置1には、フィルム位置制御部14が設けられており、例えばフィルム2a上に形成されたアライメントマークを、例えば平面反射ミラー21を介して、CCDカメラ等の撮像装置15aにより検出することにより、フィルム2aの位置ずれを検出し、所定の制御を行うことにより、位置ずれを補正できるように構成されている。
【0031】
図6に示すフィルム供給用のロール2には、例えばその回転軸にブレーキ等が設置されており、これにより、フィルム2aに一定の張力(バックテンション)を印加させながらフィルム2aを供給できるように構成されている。また、巻き取り側のロール8は、例えばモータにより駆動され、前記フィルム位置制御部14により、その駆動若しくは停止、又は駆動されている際の回転速度が制御されるように構成されている。
【0032】
露光光源13の光軸上に配置されたマスク12aは、図7に示すように、例えば露光光が照射される露光光照射領域20の中央部に、所定の露光パターンが形成されたマスクパターン領域19が設けられており、露光光照射領域20内のマスクパターン領域19の外方には、例えばフィルムの搬送方向に平行な方向(図7のX方向)におけるマスクパターン領域の中心線上に1対の開口17が設けられており、この開口17に集光レンズ16が嵌めこまれている。そして、この集光レンズ16を透過してフィルム2a上に集光した露光光により、フィルム2aに所定形状のアライメントマークを形成できるように構成されている。マスク12aには、フィルム搬送方向(図7のX方向)における開口17の下流側の例えば距離Dだけ離隔した位置に、所定形状、例えば矩形のアライメント用窓18が設けられており、フィルム2aの表面上に形成したアライメントマークを観察できるように構成されている。例えば、開口17とアライメント用窓18との距離Dは、マスクパターン領域19のフィルム搬送方向における長さW以下であり、これにより、露光パターンをフィルム搬送方向に連続的に形成することができる。
【0033】
露光装置には、撮像装置15a及びマスクステージ駆動部15bにより構成されたアライメント部15が設けられている。撮像装置15aは、例えばCCDカメラ等であり、前記マスク12aのアライメント用窓18を介して、フィルム表面上のアライメントマークの像を平面反射鏡により反射させて撮像装置15aに結像し、アライメントマークの検出信号をフィルム位置制御部14に送信するように構成されている。そして、例えばアライメントマークの位置が所定の位置から例えばフィルムの幅方向にずれている場合には、フィルム位置制御部14は、マスクの位置を例えばフィルムの幅方向に補正する信号を、マスクステージ駆動部15bに送信する。マスク12aを支持しているマスクステージ12は、フィルムの幅方向(図7におけるY方向)に移動可能に構成されており、例えばステッピングモータとギアとを組み合わせて構成されたマスクステージ駆動部15bにより駆動されて、フィルムの幅方向に位置調整できるように構成されている。よって、アライメント部15により、フィルムの幅方向の位置ずれが検出され、これに合わせて露光領域が補正されることにより、フィルム上には一定のパターンが位置ずれすることなく形成されるように構成されている。
【0034】
フィルム位置制御部14は、例えば後述するマスクステージ駆動部15b、露光光源13及びフィルム巻き取り用のローラ8に設けられたモータの制御部に接続されている。図8に示すように、フィルム位置制御部14は、画像処理部22と、演算部23と、メモリ24と、モータ駆動制御部25と、光源駆動部26と、マスクステージ駆動制御部27と、制御部28とを備えている。
【0035】
画像処理部22は、前記撮像手段15aにより撮像されたアライメントマークの画像処理を行い、例えば十字状に形成されたアライメントマークの中心位置を検出するものである。演算部23は、例えばアライメント用窓18の中心位置とアライメントマークの中心位置とのずれを演算する。メモリ24は、例えば画像処理部22が検出したアライメントマークの中心位置及び演算部23が演算したずれ量を記憶する。モータ駆動制御部25は、例えばフィルム巻き取り用ロール8のモータの駆動若しくは停止、又は駆動されている際の回転速度を制御する。
【0036】
光源駆動部26は、露光光源13の点灯若しくは消灯、出力、又は発振周波数を制御するものである。マスクステージ駆動制御部27は、マスクステージ駆動部15bの駆動を制御するものであり、例えばマスクステージ12の移動方向及び移動量を制御する。制御部28は、これらの画像処理部22、演算部23、メモリ24、モータ駆動制御部25、光源駆動部26及びマスクステージ駆動制御部27の駆動を制御する。これにより、フィルム露光装置は、例えばマスク12aの位置を調整したり、露光光源13による露光光の照射のオンオフを切り替えたり、又はフィルム2aを巻き取るロール8に設けられたモータの回転速度等を制御できるように構成されている。
【0037】
次に、本実施形態のフィルムの露光装置の動作について説明する。図14に示すように、フィルム2aは、ロール状に巻き取られたローラ2より供給され、例えば前処理部3において、フィルム2aの表面に保護膜が貼着されている場合には、この保護膜が巻き取られ、ドライ洗浄及び表面改質等の前処理を施された後、搬送ローラ9によりスリットコーター4に搬送される。そして、スリットコーター4にて、フィルム2aの片面には、液状又はペースト状の感光性材料が塗布される。そして、感光性材料塗布後のフィルム2aは乾燥装置5へと搬送され、感光性材料が乾燥される。これにより、フィルム2aの表面には、感光性材料の乾燥薄膜が形成される。そして、感光性材料が膜状に形成されたフィルム2aは、ローラ9により露光装置1内に供給される。
【0038】
露光装置1内に供給されたフィルム2aは、図12に示すように、先ず、搬送ローラ11へと送られる。そして、フィルム2aは、搬送ローラ11により下方から適度に押圧された状態で、搬送ロール11の接触面との間に適度な大きさの摩擦力を発生させた状態で、搬送ローラ11の回転により、ステージ10へと供給される。
【0039】
ステージ10へのフィルム2aの供給は、図2に示すように、所定のフィルム支持位置と同一の高さ又はそれよりも上方から行われることが好ましい。フィルム2aは全面に噴気孔10dからの噴気が均一に噴気されたステージ10上に到達する。噴気により、フィルム2aは、ステージ10の上面に所定間隔で浮かび上がった状態で支持される。また、噴気孔10dからの噴気により支持されたフィルム2aは、同時に、ステージ10の上面に設けられた吸気孔10eによる吸引により、ステージ側に吸引される。これにより、フィルム2aは上下方向に振動することなく支持される。
【0040】
その後、フィルム2aは、搬送ローラ11による搬送により、図1に示すように、マスク12aの下方に到達する。この位置には、露光光源13から出射された露光光がマスク12aを透過して所定のパターンで照射されている。噴気孔10dからの噴気圧と吸気孔10eによる吸気圧を調整してフィルム2aの支持位置を調整することにより、露光光源13からの露光光はフィルム2aの表面上の感光性材料の上に所定の光量で照射される。例えば、感光性材料の高さが露光光の焦点の位置となるように、フィルム2aの支持高さが調整される。露光により、感光性材料は感光し、フィルム2a上から取り除かれる。
【0041】
本実施形態においては、ステージ10による非接触支持により、フィルム2aを所定の高さに安定的に支持しており、フィルム2aが、搬送時に振動することを抑制することができる。従って、露光処理時においても、フィルム2aは、振動によりステージ10に接触することはなく、フィルム2aの傷つきを防止することができる。また、露光処理時にフィルム2aの搬送を停止する必要がなく、フィルム2a上の感光性材料を連続的に搬送中に露光することができるため、生産性が極めて高い。
【0042】
フィルム2aは、搬送ローラ11による搬送により、やがて、下流側の搬送ローラ11に到達し、搬送ローラ11により下方から適度に押圧されて支持された状態で、搬送ローラ11の接触面との間に適度な大きさの摩擦力を発生させた状態で、搬送ローラ11の回転により、露光装置1から排出される。
【0043】
露光装置1から排出されたフィルム2aは、その後、例えば温度調節部6により、温度が調整された後、後処理部7にて所定の後処理、例えば保護膜の貼着が施された後、再度ローラ8に巻き取られる。
【0044】
このように、本実施形態のフィルムの露光装置においては、噴気孔10dからの噴気により、多孔質部材の孔から空気を上方に吹き上げてフィルム2aをステージ10の上方に浮かび上がらせると共に、吸気孔10eからの吸気により、フィルム2aをステージ10側に吸引して、フィルム2aを非接触状態でステージ10上に安定的に保持することができる。よって、フィルム2aの下面がステージに接触して傷つくことを防止することができる。また、搬送時及び露光処理時におけるフィルム2aの振動を抑制することができ、フィルム2a上の感光性材料を安定的に且つ連続的に搬送中に露光することができる。従って、本実施形態の露光装置は、生産性が高い。
【0045】
なお、本実施形態においては、吸気孔10eは、例えば配管又はチューブ等により例えば排気ポンプ等の吸気装置に接続されているが、この構成は一例である。即ち、本発明においては、ステージは、多孔質材料の上面から空気を上方に吹き上げてフィルムを浮かせて支持する構成と、基板の表面から空気を吸引してフィルムを基板側へと引き寄せる構成を有していればよい。
【0046】
次に、本実施形態のフィルムの露光装置において、フィルムを連続露光する際の位置ずれの補正工程について、詳細に説明する。図9はフィルムの位置ずれの補正工程を示すブロック図、図10はパターンが形成されたフィルムを示す上面図である。図9に示すように、先ず、例えば巻き取り側ロール8のモータを駆動することにより、フィルムの搬送を開始する(ステップS1)。
【0047】
次に、フィルム2aの露光対象部位がステージ10上におけるマスク12aの下方に到達したら、フィルム位置制御部14内の光源駆動部26により露光光源13を所定の露光時間だけ点灯させ、マスク12a上に露光光を照射する。これにより、マスク12aを透過した露光光は、マスクパターンに対応して、フィルム2a上に照射され、フィルム2a上における露光光が照射された領域が露光される。また、マスク12aには、露光光照射領域20内の開口17に集光レンズ16が設けられているため、集光レンズ16を透過した露光光も、フィルム2a上に照射される。これにより、図10に示すように、フィルム2aが所定のパターン2cに露光された部分の両側には、所定形状のアライメントマーク2bが、例えば十字形状に形成される(ステップS2)。
【0048】
そして、フィルム2aの搬送により、アライメントマーク2bがマスク12aのアライメント用窓18の下方に到達したときに、アライメントマーク2bの像が、アライメント用窓18を介して、平面反射鏡21により反射されて撮像装置15aに結像され、撮像装置15aは、アライメントマークの検出信号をフィルム位置制御部14の画像処理部22に送信する。そして、演算部23は、例えば、アライメント用窓18の中心位置とアライメントマーク2bの中心位置とのずれ量を演算することにより、アライメントマーク2bのY方向(フィルム2aの幅方向)のずれ量を算出する(ステップS3)。このとき、必要に応じて、メモリ24は、例えば画像処理部22が検出したアライメントマーク2bの中心位置及び演算部23が演算したずれ量を記憶する。
【0049】
次に、マスクステージ駆動制御部27は、演算部23が算出したアライメントマークのY方向の位置ずれ量がゼロになるように、マスクステージ駆動部15bを駆動して、マスクステージ12をフィルム2aの幅方向に移動させ、マスク12aの位置を所定の位置に補正する(ステップS4)。
【0050】
位置ずれによる露光領域の補正が終了したら、制御部28は、フィルム2aの露光が終了したか否かを判定し(ステップS5)、露光が終了したと判定した場合には、位置ずれの補正を終了し、露光が終了していない場合においては、再度ステップS2に戻って、連続的に露光を行う。よって、フィルム2a上には、図10に示すように幅方向にずれのないパターン2cがフィルム2aの長手方向に連続的に形成されていく。
【0051】
なお、本実施形態においては、フィルム2aを連続的に搬送しながら露光する場合について説明したが、フィルム2aを例えば図7に示す距離Dだけ搬送するごとに、例えばフィルム2aの搬送を一旦停止させ、停止状態で位置ずれの補正及び露光を行うようなステップ露光を行ってもよい。この場合においても、パターン2cをフィルム2aの幅方向にずれることなく、連続的に形成することができる。
【0052】
また、本実施形態においては、マスク12aにおける開口17、集光レンズ16及びアライメント用窓18の位置は一例であり、露光を阻害することなく、また、位置ずれの補正を行うことができる限り、開口17、集光レンズ16及びアライメント用窓18は、マスク12a上のいずれの場所に設けられていてもよい。更に、これらの開口17、集光レンズ16及びアライメント用窓18は、マスク12a上に限らず、例えばマスクステージ12上に設置してもよい。この場合においては、露光光源13からの露光光の照射領域をマスクステージ12上まで拡張するか、又は別途、アライメントマークの形成用に光源を設ける。アライメントマークの形成用に別途、光源を設ける場合においては、アライメントマークを形成できれば、例えば集光レンズ16を設置しなくてもよい。又は、アライメントマーク2bをフィルム2aの下面側に設け、CCDカメラ等の撮像装置15a等により、フィルム2aの下面側のアライメントマーク2bを検出するように構成してもよい。
【0053】
更にまた、本実施形態においては、フィルム2a上のアライメントマーク2bの位置ずれを検出することにより、マスク12aの位置を補正したが、例えば位置ずれは、フィルム2aをその幅方向に移動させることによって補正してもよく、マスク12a及びフィルム2aの両者を移動させることによって位置ずれを補正してもよい。
【0054】
更にまた、本実施形態においては、図6に示すように、マスク12aを1カ所だけに設けた場合の位置ずれの補正について説明したが、上記露光位置のずれを補正する構成は、例えば図1に示すように、マスク12aをフィルム2aの長手方向に複数箇所(図1においては2カ所)並置した場合、又は例えばフィルム2aの幅方向に複数箇所のマスク12aを並置した場合においても適用することができる。
【0055】
次に、本発明の第2実施形態に係るフィルムの露光装置について説明する。図11は本発明の第2実施形態に係るフィルムの露光装置を示す図、図12は本発明の第2実施形態に係るフィルムの露光装置において、搬送ローラ及びステージを示す拡大図である。本実施形態においては、図11に示すように、ステージ10は、フィルム2aを支持する位置が搬送ローラ11の上方共通接線より下方に位置するように配置されている。その他の構成については、第1実施形態と同一である。
【0056】
このステージ10の配置により、本実施形態においては、露光処理前のフィルム2aは、ステージ10上に支持される位置よりも高い位置からステージ10上に供給され(図12)、露光処理後に、フィルム2aは、ステージ10上で支持されていた位置よりも高い位置へと排出される。これにより、本実施形態においては、例えば、ステージ10が、その縁部にて噴気及び吸気によるフィルムの支持ができないように構成されていた場合においても、フィルム2aは、ステージ10への供給時及びステージ10からの排出時に、ステージ10の角部の上方を通過するように搬送されるため、例えば、図13に示すように、ステージの角部Bにフィルムの裏面が接触してフィルムが傷つくことを防止することができる。
【0057】
また、本実施形態においても、噴気孔10dからの噴気により、多孔質部材の孔から空気を上方に吹き上げてフィルム2aをステージ10の上方に浮かび上がらせると共に、吸気孔10eからの吸気により、フィルム2aをステージ10側に吸引して、フィルム2aを非接触状態でステージ10上に安定的に保持することができる。よって、フィルム2aの傷つきを防止することができる。
【0058】
更に、搬送時及び露光時におけるフィルム2aの振動を防止することができ、露光処理を連続的に搬送中に安定して行うことができ、生産性が高い。例えば、露光処理時にフィルムの搬送を停止する必要もない。
【0059】
更にまた、本実施形態においては、ステージ10を1対の搬送ローラ11の上方共通接線よりも下方に配置することにより、前工程から搬送されてくるフィルム2aの振動を搬送ローラ11により吸収することができる。即ち、図12に示すように、前工程から露光装置内に搬送されたフィルム2aは、搬送ローラ11により、その進行方向を例えば水平方向から斜め下方へと転換され、ステージ10へと搬送される。このとき、図12に示すように、搬送ローラ11には、フィルム2aとの接触位置にて、その回転軸に向かう方向にフィルム2aからの押圧力が作用し、フィルム2aには、前記押圧力と釣り合う大きさの反発力が搬送ローラ11から印加される。そして、搬送ローラ11及びフィルム2aが、相互に押圧し合うことにより、双方が振動することなく、安定的にフィルム2aの搬送を行うことができる。
【符号の説明】
【0060】
1:露光装置、10:ステージ、100:支持台、10a:噴気室、10b:吸気室、10c:格子溝、10d:噴気孔、10e:吸気孔、10f:基板、10g:保護膜、11:搬送ローラ、12:マスクステージ、12a:マスク、13:露光光源、13a:カップリング光学部材、14:フィルム位置制御部、15:アライメント部、15a:撮像装置、15b:マスクステージ駆動部、16:集光レンズ、17:開口、18:アライメント用窓、19:マスクパターン領域、20:露光光照射領域、2:ロール、2a:フィルム、2b:アライメントマーク、2c:パターン、3:前処理部、4:スリットコーター、5:乾燥部、6:温度調節部、7:後処理部、8:ロール、9:(搬送)ローラ、W:ワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの露光装置に関し、特に、露光時のフィルムの振動を抑制し、生産性を向上させたフィルムの露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロールトゥロール方式のフィルム製造ラインにおいては、例えば図14に示すような工程で感光膜が形成されたフィルムが製造される(例えば、特許文献1)。即ち、図14に示すように、ロールトゥロール方式のフィルム製造ラインにおいては、フィルム2aがロール2から巻き解かれてラインに供給され、前処理部3においてフィルム2aにドライ洗浄及び表面改質等の前処理が施され、スリットコーター4にてフィルム2aの表面に所定の感光性材料が塗工された後、塗工された感光性材料が乾燥装置5にて乾燥される。表面上に感光膜が形成されたフィルム2aは、露光装置1に供給され、感光膜が露光装置1にて露光され、温度調節部6及び後処理部7を経て、露光後のフィルム2aが再びロール8に巻き取られる。このとき、フィルム2aは、各装置間をローラ9上に支持されて、その回転により搬送される。
【0003】
上記フィルム製造ラインにおいては、露光装置内に搬送されてくるフィルム上の感光性材料は、乾燥処理が施されただけの状態であり、従って、例えばコーティング処理を施されるまでは表面に例えば搬送ロール等を接触させることができない。即ち、乾燥処理後の感光性材料に搬送ロールを接触させると、例えば搬送ロールによる押圧力及び摩擦力により、感光性材料が剥がれてしまうという問題点がある。
【0004】
よって、従来のロールトゥロール方式のフィルム製造ラインにおいては、露光装置内に搬送されるフィルムは、図14に示すように、露光装置の前後にてフィルムの裏面側だけに設けられた1対のローラ9のみにより支持されている。このローラ9間の距離が長いために、ローラ間を搬送されるフィルムには、露光装置の内部で波打ちが生じてしまうという問題点がある。露光装置の内部には、フィルム上の感光性材料を露光するための光源が設置されており、露光光はフィルム表面の感光性材料上に焦点が合うように設定され、フィルムの表面上には、所定の光量でレーザ光が照射されるように構成されている。従って、露光装置内でフィルムの波打ちが発生した場合、露光光の焦点がフィルム面に一致しなくなり、感光性材料に所定の露光処理を行うことができなかったり、露光量がフィルムの表面上でばらつき、安定して露光処理を行うことができないという問題点がある。
【0005】
そこで、搬送ロールによるフィルムの搬送を一旦停止し、露光処理後に搬送ロールによるフィルムの搬送を再開するという間欠的動作により、フィルムを露光することが行われている。しかし、この方法は、生産性が低いという問題点がある。
【0006】
そこで、特許文献2のフィルムの露光装置においては、フィルムの下方にステージが設置され、ステージによりフィルムを支持するように構成されている。これにより、連続的にフィルムを送給しつつ、露光処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−229001号公報
【特許文献2】特開2010−85830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術においては、以下のような問題点がある。特許文献2の従来技術においては、フィルムは、ステージ上を摺擦するように移動するため、フィルムの下面が傷ついてしまう。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、搬送時及び露光時のフィルムの傷つき及び振動を防止することができると共に、連続的に搬送中に露光処理することを可能とし、生産性を向上させることができるフィルムの露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るフィルムの露光装置は、感光性材料が塗布されたフィルムをその長手方向に搬送する1対の搬送ローラと、この搬送ローラ間の前記フィルムの下方に配置され前記フィルムを支持するステージと、このステージ上の前記フィルムに対して露光光を照射して露光する光源と、を有し、前記ステージは、多孔質材料からなる板状の基板と、この基板の多孔質部から空気を上方に吹き上げて前記フィルムを前記基板に非接触で支持する噴気部材と、前記基板に設けられた吸気孔を介して前記基板の表面から空気を吸引する吸気部材と、を有することを特徴とする。
【0011】
このフィルムの搬送装置において、例えば前記ステージは、前記フィルムが前記基板上で前記搬送ローラの上方共通接線より下方に位置するように配置されていることが好ましい。
【0012】
本発明のフィルムの露光装置は、例えば前記ステージの上方にマスクが配置されており、前記光源からの露光光がマスクを透過して前記フィルムに照射される。
【0013】
前記ステージは、例えば前記フィルムを前記基板の表面から30乃至40μm浮かび上がった位置で支持する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るフィルムの露光装置は、搬送ローラ間でフィルムを下方から支持するステージが、多孔質材料からなる板状の基板を有し、噴気部材により、基板の多孔質部から空気を上方に吹き上げると共に、吸気部材が、基板の吸気孔を介して基板の表面から空気を吸引するため、フィルムを非接触状態でステージ上に安定的に保持することができる。よって、フィルムの下面がステージに接触して傷つくことを防止することができる。
【0015】
また、搬送時及び露光時におけるフィルムの振動を防止することができ、露光処理を連続的に搬送中に安定して行うことができるため、生産性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係るフィルムの露光装置を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るフィルムの露光装置において、搬送ローラ及びステージを示す拡大図である。
【図3】本発明の実施形態に係るフィルムの露光装置において、ステージを示す分解斜視図である。
【図4】図3に示すステージの断面Aにおける断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るフィルムの露光装置において、ステージを示す斜視図である。
【図6】フィルムを連続露光する機構を一例として示す図である。
【図7】マスクの一例を示す上面図である
【図8】フィルム位置の制御部を一例として示す図である。
【図9】フィルムの位置ずれの補正工程を示すブロック図である。
【図10】パターンが形成されたフィルムを示す上面図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係るフィルムの露光装置を示す図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係るフィルムの露光装置において、搬送ローラ及びステージを示す拡大図である。
【図13】搬送ローラがステージの上面よりも下方に配置された状態を示す図である。
【図14】ロールトゥロール方式のフィルム製造ラインの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。先ず、本発明の第1実施形態に係るフィルムの露光装置の構成について説明する。図1は本発明の第1実施形態に係るフィルムの露光装置を示す図、図2は本発明の第1実施形態に係るフィルムの露光装置において、搬送ローラ及びステージを示す拡大図、図3は本発明の実施形態に係るフィルムの露光装置において、ステージを示す分解斜視図、図4は図3に示すステージの断面Aにおける断面図、図5は本発明の実施形態に係るフィルムの露光装置において、ステージを示す斜視図である。本発明のフィルムの露光装置1は、図14に示すようなロールトゥロール方式のフィルム製造ラインにおいて、スリットコーター4にてフィルムの表面に塗工され、乾燥装置5にて乾燥処理された感光性材料を所定のパターンに露光処理するものである。図1に示すように、本実施形態のフィルムの露光装置1は、フィルム2aをその長手方向に搬送する1対の搬送ローラ11と、搬送ローラ11間のフィルム2aの下方に配置されてフィルム2aを支持するステージ10と、ステージ10上のフィルム2aに対して露光光を照射して露光する露光光源13とにより構成されており、例えば露光光源13からの露光光、例えばレーザ光を、マスクステージ12により支持され所定のパターンが形成されたマスク12aに透過させてフィルム2a上に照射して、感光性材料を露光して感光させる。
【0018】
搬送ローラ11は、感光性材料が塗工されたフィルム2aを下方(感光性材料が塗布されていない側の面)で支持するものであり、回転により、フィルム2aとの間に若干の押圧力及び摩擦力を発生させて、フィルム2aを搬送するものである。本実施形態においては、搬送ローラ11は、ステージ上に非接触状態で支持されたフィルムとほぼ同一の高さにてフィルム2aを支持するように配置されている。
【0019】
図3に示すように、ステージ10は、例えばフィルムの搬送方向に垂直な方向に複数個が並置されており、複数個のステージ10上に跨がるようにフィルムWが支持される。夫々のステージ10は、多孔質材料により構成され例えば表面が保護膜10gでコーティングされた基板10fが枠体100の上に載置されて構成されている。
【0020】
図3に示すように、支持台100の上面には例えば格子状に溝10cが設けられている。また、図4に示すように、支持台100の内部には中空部が設けられており、この中空部は例えばコンプレッサー(又は給気ポンプ等)に接続されて昇圧されるように構成されている。上記格子溝10cには、空間10aに接続されるように複数個の孔10dが設けられており、これにより、空間(噴気室)10aから、(噴気)孔10dを介して格子溝10cの内部に昇圧した空気を噴気することができるように構成されている。
【0021】
図3に示すように、支持台100の上面の格子溝10cが設けられていない部分には、例えば数cm間隔で孔10eが設けられており、図1、2及び図4に示すように、例えば配管又はチューブ等により排気ポンプ等の吸気装置に接続されている。
【0022】
支持台100上に載置された基板10fは、例えば多孔質グラファイト、多孔質セラミックス、多孔質樹脂、又は焼結金属等により形成されており、これにより、基板10fは、内部の隙間を介して上面側と下面側とが連通し、基板10fの上面には、格子溝10c内の正圧に対応した空気が例えば基板10fの面上に均一に噴気されるように構成されている。また、基板10fには上記吸気孔10eに対応する位置にて貫通して孔が設けられており、これにより、吸気孔10eを介して基板10fの上面を吸気できるように構成されている。吸気孔10eが例えば基板10fの全面に均等に設けられていることにより、基板10fの表面を均一に吸気することができる。
【0023】
基板10fの表面は例えば保護膜10gにより覆われている。この場合には、保護膜は、例えば金属、金属化合物、ガラス状炭素、ダイヤモンドライクカーボン、又はエポキシ樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、フッ素樹脂、若しくはフェノール樹脂等の樹脂材料により構成されており、例えば振動等により剥がれにくい材質により構成されていることが好ましい。そして、基板10fと同様に、保護膜10gも上面と下面とが連通するように構成されている。これにより、格子溝10cと保護膜10gの上面とが連通し、保護膜10gの上面には、格子溝10c内の正圧に対応した空気が保護膜10gの面上に均一に噴気されるように構成されている。保護膜10gには、前記吸気孔10eに対応する位置にて貫通するように数cm間隔で孔が設けられている。これにより、保護膜10gが設けられている場合においては、吸気孔10eを介して、保護膜10gの上面を吸気できるように構成されている。
【0024】
上記のようにステージ10を構成することにより、本実施形態においては、図5に示すように、ステージ10の上面は、多孔質部材による噴気と、吸気孔10eによる吸気が全面に均一に分布した状態となる。これにより、本実施形態においては、噴気孔10dから噴気した空気により、フィルム2aをステージ10上に浮かせながら、吸気孔10eによる吸気により、フィルム2aをステージ10側に吸引して、フィルム2aの上下方向の振動を抑制し、フィルム2aを非接触状態で安定的に支持することができる。
【0025】
そして、噴気孔10fから噴き出す空気の圧力及び吸気孔10eから吸気する空気の圧力を夫々調整することにより、フィルム2aは、例えばステージ10の上面から30乃至40μm浮かび上がった位置で安定的に支持される。フィルム2aは、ステージ10の上面から例えば30μm浮かび上がった位置で支持された場合においては、その浮上量の変動量は、例えば上下方向に夫々10μmであり、フィルム2aは、露光時においても、ステージ10に接触することはない。このフィルム2aの位置は、例えば、露光光源13からの照射光の焦点の位置とフィルムの上面に塗布された感光性材料の位置とが一致するように調整され、これにより、感光性材料に露光光が所定の光量で照射され、感光性材料を効果的に露光し、感光させることができるように構成されている。
【0026】
露光光源13は、例えば水銀ランプ光源であり、コリメータレンズを介して紫外光を出射するものである。これにより、マスク12aに形成された所定のパターンを透過した紫外光をフィルム2a上の感光性材料に照射(露光)し、感光性材料を感光させて、フィルム2a上に所定のパターンを形成する。なお、露光光源13としては、水銀ランプ光源の他に、例えばエキシマレーザ光源等のガスレーザ光源、YAGレーザ等の固体レーザ光源等、種々の光源を使用することができる。
【0027】
マスクステージ12により支持されたマスク12aとしては、例えばガラス又は合成石英からなる基板上にクロムからなる遮光膜を設置し、遮光膜が形成されていない部分を所定形状のパターンとしたもの、又は柔軟性がある透明の高分子フィルム上にパターンを反転させた形状で遮光性材料を塗布したエマルジョンマスク等、種々のマスクを使用することができる。
【0028】
本実施形態のフィルムの露光装置は、噴気孔10dからの噴気により、多孔質部材の孔から空気を上方に吹き上げてフィルム2aをステージ10の上方に浮かび上がらせると共に、吸気孔10eからの吸気により、フィルム2aをステージ10側に吸引して、フィルム2aを非接触状態でステージ10上に安定的に保持することができる。よって、フィルム2aが搬送時及び露光時にステージ10に接触することはなく、フィルム2aの傷つきを防止することができる。
【0029】
また、搬送時及び露光時におけるフィルム2aの振動を防止することができ、露光処理を連続的に搬送中に安定して行うことができ、生産性が高い。例えば、露光処理時にフィルムの搬送を停止する必要がない。
【0030】
以上説明したフィルム露光装置において、フィルムを連続露光する機構の構成について、詳細に説明する。図6はフィルムを連続露光する機構を一例として示す図、図7はマスクの一例を示す上面図、図8はフィルム位置の制御部を一例として示す図である。図6に示すように、フィルム露光装置1には、例えば露光光源13から出射した露光光の光路上に介在するようにカップリング光学部材13aが設けられており、露光光の光束径を拡大できるように構成されている。また、フィルム露光装置1には、フィルム位置制御部14が設けられており、例えばフィルム2a上に形成されたアライメントマークを、例えば平面反射ミラー21を介して、CCDカメラ等の撮像装置15aにより検出することにより、フィルム2aの位置ずれを検出し、所定の制御を行うことにより、位置ずれを補正できるように構成されている。
【0031】
図6に示すフィルム供給用のロール2には、例えばその回転軸にブレーキ等が設置されており、これにより、フィルム2aに一定の張力(バックテンション)を印加させながらフィルム2aを供給できるように構成されている。また、巻き取り側のロール8は、例えばモータにより駆動され、前記フィルム位置制御部14により、その駆動若しくは停止、又は駆動されている際の回転速度が制御されるように構成されている。
【0032】
露光光源13の光軸上に配置されたマスク12aは、図7に示すように、例えば露光光が照射される露光光照射領域20の中央部に、所定の露光パターンが形成されたマスクパターン領域19が設けられており、露光光照射領域20内のマスクパターン領域19の外方には、例えばフィルムの搬送方向に平行な方向(図7のX方向)におけるマスクパターン領域の中心線上に1対の開口17が設けられており、この開口17に集光レンズ16が嵌めこまれている。そして、この集光レンズ16を透過してフィルム2a上に集光した露光光により、フィルム2aに所定形状のアライメントマークを形成できるように構成されている。マスク12aには、フィルム搬送方向(図7のX方向)における開口17の下流側の例えば距離Dだけ離隔した位置に、所定形状、例えば矩形のアライメント用窓18が設けられており、フィルム2aの表面上に形成したアライメントマークを観察できるように構成されている。例えば、開口17とアライメント用窓18との距離Dは、マスクパターン領域19のフィルム搬送方向における長さW以下であり、これにより、露光パターンをフィルム搬送方向に連続的に形成することができる。
【0033】
露光装置には、撮像装置15a及びマスクステージ駆動部15bにより構成されたアライメント部15が設けられている。撮像装置15aは、例えばCCDカメラ等であり、前記マスク12aのアライメント用窓18を介して、フィルム表面上のアライメントマークの像を平面反射鏡により反射させて撮像装置15aに結像し、アライメントマークの検出信号をフィルム位置制御部14に送信するように構成されている。そして、例えばアライメントマークの位置が所定の位置から例えばフィルムの幅方向にずれている場合には、フィルム位置制御部14は、マスクの位置を例えばフィルムの幅方向に補正する信号を、マスクステージ駆動部15bに送信する。マスク12aを支持しているマスクステージ12は、フィルムの幅方向(図7におけるY方向)に移動可能に構成されており、例えばステッピングモータとギアとを組み合わせて構成されたマスクステージ駆動部15bにより駆動されて、フィルムの幅方向に位置調整できるように構成されている。よって、アライメント部15により、フィルムの幅方向の位置ずれが検出され、これに合わせて露光領域が補正されることにより、フィルム上には一定のパターンが位置ずれすることなく形成されるように構成されている。
【0034】
フィルム位置制御部14は、例えば後述するマスクステージ駆動部15b、露光光源13及びフィルム巻き取り用のローラ8に設けられたモータの制御部に接続されている。図8に示すように、フィルム位置制御部14は、画像処理部22と、演算部23と、メモリ24と、モータ駆動制御部25と、光源駆動部26と、マスクステージ駆動制御部27と、制御部28とを備えている。
【0035】
画像処理部22は、前記撮像手段15aにより撮像されたアライメントマークの画像処理を行い、例えば十字状に形成されたアライメントマークの中心位置を検出するものである。演算部23は、例えばアライメント用窓18の中心位置とアライメントマークの中心位置とのずれを演算する。メモリ24は、例えば画像処理部22が検出したアライメントマークの中心位置及び演算部23が演算したずれ量を記憶する。モータ駆動制御部25は、例えばフィルム巻き取り用ロール8のモータの駆動若しくは停止、又は駆動されている際の回転速度を制御する。
【0036】
光源駆動部26は、露光光源13の点灯若しくは消灯、出力、又は発振周波数を制御するものである。マスクステージ駆動制御部27は、マスクステージ駆動部15bの駆動を制御するものであり、例えばマスクステージ12の移動方向及び移動量を制御する。制御部28は、これらの画像処理部22、演算部23、メモリ24、モータ駆動制御部25、光源駆動部26及びマスクステージ駆動制御部27の駆動を制御する。これにより、フィルム露光装置は、例えばマスク12aの位置を調整したり、露光光源13による露光光の照射のオンオフを切り替えたり、又はフィルム2aを巻き取るロール8に設けられたモータの回転速度等を制御できるように構成されている。
【0037】
次に、本実施形態のフィルムの露光装置の動作について説明する。図14に示すように、フィルム2aは、ロール状に巻き取られたローラ2より供給され、例えば前処理部3において、フィルム2aの表面に保護膜が貼着されている場合には、この保護膜が巻き取られ、ドライ洗浄及び表面改質等の前処理を施された後、搬送ローラ9によりスリットコーター4に搬送される。そして、スリットコーター4にて、フィルム2aの片面には、液状又はペースト状の感光性材料が塗布される。そして、感光性材料塗布後のフィルム2aは乾燥装置5へと搬送され、感光性材料が乾燥される。これにより、フィルム2aの表面には、感光性材料の乾燥薄膜が形成される。そして、感光性材料が膜状に形成されたフィルム2aは、ローラ9により露光装置1内に供給される。
【0038】
露光装置1内に供給されたフィルム2aは、図12に示すように、先ず、搬送ローラ11へと送られる。そして、フィルム2aは、搬送ローラ11により下方から適度に押圧された状態で、搬送ロール11の接触面との間に適度な大きさの摩擦力を発生させた状態で、搬送ローラ11の回転により、ステージ10へと供給される。
【0039】
ステージ10へのフィルム2aの供給は、図2に示すように、所定のフィルム支持位置と同一の高さ又はそれよりも上方から行われることが好ましい。フィルム2aは全面に噴気孔10dからの噴気が均一に噴気されたステージ10上に到達する。噴気により、フィルム2aは、ステージ10の上面に所定間隔で浮かび上がった状態で支持される。また、噴気孔10dからの噴気により支持されたフィルム2aは、同時に、ステージ10の上面に設けられた吸気孔10eによる吸引により、ステージ側に吸引される。これにより、フィルム2aは上下方向に振動することなく支持される。
【0040】
その後、フィルム2aは、搬送ローラ11による搬送により、図1に示すように、マスク12aの下方に到達する。この位置には、露光光源13から出射された露光光がマスク12aを透過して所定のパターンで照射されている。噴気孔10dからの噴気圧と吸気孔10eによる吸気圧を調整してフィルム2aの支持位置を調整することにより、露光光源13からの露光光はフィルム2aの表面上の感光性材料の上に所定の光量で照射される。例えば、感光性材料の高さが露光光の焦点の位置となるように、フィルム2aの支持高さが調整される。露光により、感光性材料は感光し、フィルム2a上から取り除かれる。
【0041】
本実施形態においては、ステージ10による非接触支持により、フィルム2aを所定の高さに安定的に支持しており、フィルム2aが、搬送時に振動することを抑制することができる。従って、露光処理時においても、フィルム2aは、振動によりステージ10に接触することはなく、フィルム2aの傷つきを防止することができる。また、露光処理時にフィルム2aの搬送を停止する必要がなく、フィルム2a上の感光性材料を連続的に搬送中に露光することができるため、生産性が極めて高い。
【0042】
フィルム2aは、搬送ローラ11による搬送により、やがて、下流側の搬送ローラ11に到達し、搬送ローラ11により下方から適度に押圧されて支持された状態で、搬送ローラ11の接触面との間に適度な大きさの摩擦力を発生させた状態で、搬送ローラ11の回転により、露光装置1から排出される。
【0043】
露光装置1から排出されたフィルム2aは、その後、例えば温度調節部6により、温度が調整された後、後処理部7にて所定の後処理、例えば保護膜の貼着が施された後、再度ローラ8に巻き取られる。
【0044】
このように、本実施形態のフィルムの露光装置においては、噴気孔10dからの噴気により、多孔質部材の孔から空気を上方に吹き上げてフィルム2aをステージ10の上方に浮かび上がらせると共に、吸気孔10eからの吸気により、フィルム2aをステージ10側に吸引して、フィルム2aを非接触状態でステージ10上に安定的に保持することができる。よって、フィルム2aの下面がステージに接触して傷つくことを防止することができる。また、搬送時及び露光処理時におけるフィルム2aの振動を抑制することができ、フィルム2a上の感光性材料を安定的に且つ連続的に搬送中に露光することができる。従って、本実施形態の露光装置は、生産性が高い。
【0045】
なお、本実施形態においては、吸気孔10eは、例えば配管又はチューブ等により例えば排気ポンプ等の吸気装置に接続されているが、この構成は一例である。即ち、本発明においては、ステージは、多孔質材料の上面から空気を上方に吹き上げてフィルムを浮かせて支持する構成と、基板の表面から空気を吸引してフィルムを基板側へと引き寄せる構成を有していればよい。
【0046】
次に、本実施形態のフィルムの露光装置において、フィルムを連続露光する際の位置ずれの補正工程について、詳細に説明する。図9はフィルムの位置ずれの補正工程を示すブロック図、図10はパターンが形成されたフィルムを示す上面図である。図9に示すように、先ず、例えば巻き取り側ロール8のモータを駆動することにより、フィルムの搬送を開始する(ステップS1)。
【0047】
次に、フィルム2aの露光対象部位がステージ10上におけるマスク12aの下方に到達したら、フィルム位置制御部14内の光源駆動部26により露光光源13を所定の露光時間だけ点灯させ、マスク12a上に露光光を照射する。これにより、マスク12aを透過した露光光は、マスクパターンに対応して、フィルム2a上に照射され、フィルム2a上における露光光が照射された領域が露光される。また、マスク12aには、露光光照射領域20内の開口17に集光レンズ16が設けられているため、集光レンズ16を透過した露光光も、フィルム2a上に照射される。これにより、図10に示すように、フィルム2aが所定のパターン2cに露光された部分の両側には、所定形状のアライメントマーク2bが、例えば十字形状に形成される(ステップS2)。
【0048】
そして、フィルム2aの搬送により、アライメントマーク2bがマスク12aのアライメント用窓18の下方に到達したときに、アライメントマーク2bの像が、アライメント用窓18を介して、平面反射鏡21により反射されて撮像装置15aに結像され、撮像装置15aは、アライメントマークの検出信号をフィルム位置制御部14の画像処理部22に送信する。そして、演算部23は、例えば、アライメント用窓18の中心位置とアライメントマーク2bの中心位置とのずれ量を演算することにより、アライメントマーク2bのY方向(フィルム2aの幅方向)のずれ量を算出する(ステップS3)。このとき、必要に応じて、メモリ24は、例えば画像処理部22が検出したアライメントマーク2bの中心位置及び演算部23が演算したずれ量を記憶する。
【0049】
次に、マスクステージ駆動制御部27は、演算部23が算出したアライメントマークのY方向の位置ずれ量がゼロになるように、マスクステージ駆動部15bを駆動して、マスクステージ12をフィルム2aの幅方向に移動させ、マスク12aの位置を所定の位置に補正する(ステップS4)。
【0050】
位置ずれによる露光領域の補正が終了したら、制御部28は、フィルム2aの露光が終了したか否かを判定し(ステップS5)、露光が終了したと判定した場合には、位置ずれの補正を終了し、露光が終了していない場合においては、再度ステップS2に戻って、連続的に露光を行う。よって、フィルム2a上には、図10に示すように幅方向にずれのないパターン2cがフィルム2aの長手方向に連続的に形成されていく。
【0051】
なお、本実施形態においては、フィルム2aを連続的に搬送しながら露光する場合について説明したが、フィルム2aを例えば図7に示す距離Dだけ搬送するごとに、例えばフィルム2aの搬送を一旦停止させ、停止状態で位置ずれの補正及び露光を行うようなステップ露光を行ってもよい。この場合においても、パターン2cをフィルム2aの幅方向にずれることなく、連続的に形成することができる。
【0052】
また、本実施形態においては、マスク12aにおける開口17、集光レンズ16及びアライメント用窓18の位置は一例であり、露光を阻害することなく、また、位置ずれの補正を行うことができる限り、開口17、集光レンズ16及びアライメント用窓18は、マスク12a上のいずれの場所に設けられていてもよい。更に、これらの開口17、集光レンズ16及びアライメント用窓18は、マスク12a上に限らず、例えばマスクステージ12上に設置してもよい。この場合においては、露光光源13からの露光光の照射領域をマスクステージ12上まで拡張するか、又は別途、アライメントマークの形成用に光源を設ける。アライメントマークの形成用に別途、光源を設ける場合においては、アライメントマークを形成できれば、例えば集光レンズ16を設置しなくてもよい。又は、アライメントマーク2bをフィルム2aの下面側に設け、CCDカメラ等の撮像装置15a等により、フィルム2aの下面側のアライメントマーク2bを検出するように構成してもよい。
【0053】
更にまた、本実施形態においては、フィルム2a上のアライメントマーク2bの位置ずれを検出することにより、マスク12aの位置を補正したが、例えば位置ずれは、フィルム2aをその幅方向に移動させることによって補正してもよく、マスク12a及びフィルム2aの両者を移動させることによって位置ずれを補正してもよい。
【0054】
更にまた、本実施形態においては、図6に示すように、マスク12aを1カ所だけに設けた場合の位置ずれの補正について説明したが、上記露光位置のずれを補正する構成は、例えば図1に示すように、マスク12aをフィルム2aの長手方向に複数箇所(図1においては2カ所)並置した場合、又は例えばフィルム2aの幅方向に複数箇所のマスク12aを並置した場合においても適用することができる。
【0055】
次に、本発明の第2実施形態に係るフィルムの露光装置について説明する。図11は本発明の第2実施形態に係るフィルムの露光装置を示す図、図12は本発明の第2実施形態に係るフィルムの露光装置において、搬送ローラ及びステージを示す拡大図である。本実施形態においては、図11に示すように、ステージ10は、フィルム2aを支持する位置が搬送ローラ11の上方共通接線より下方に位置するように配置されている。その他の構成については、第1実施形態と同一である。
【0056】
このステージ10の配置により、本実施形態においては、露光処理前のフィルム2aは、ステージ10上に支持される位置よりも高い位置からステージ10上に供給され(図12)、露光処理後に、フィルム2aは、ステージ10上で支持されていた位置よりも高い位置へと排出される。これにより、本実施形態においては、例えば、ステージ10が、その縁部にて噴気及び吸気によるフィルムの支持ができないように構成されていた場合においても、フィルム2aは、ステージ10への供給時及びステージ10からの排出時に、ステージ10の角部の上方を通過するように搬送されるため、例えば、図13に示すように、ステージの角部Bにフィルムの裏面が接触してフィルムが傷つくことを防止することができる。
【0057】
また、本実施形態においても、噴気孔10dからの噴気により、多孔質部材の孔から空気を上方に吹き上げてフィルム2aをステージ10の上方に浮かび上がらせると共に、吸気孔10eからの吸気により、フィルム2aをステージ10側に吸引して、フィルム2aを非接触状態でステージ10上に安定的に保持することができる。よって、フィルム2aの傷つきを防止することができる。
【0058】
更に、搬送時及び露光時におけるフィルム2aの振動を防止することができ、露光処理を連続的に搬送中に安定して行うことができ、生産性が高い。例えば、露光処理時にフィルムの搬送を停止する必要もない。
【0059】
更にまた、本実施形態においては、ステージ10を1対の搬送ローラ11の上方共通接線よりも下方に配置することにより、前工程から搬送されてくるフィルム2aの振動を搬送ローラ11により吸収することができる。即ち、図12に示すように、前工程から露光装置内に搬送されたフィルム2aは、搬送ローラ11により、その進行方向を例えば水平方向から斜め下方へと転換され、ステージ10へと搬送される。このとき、図12に示すように、搬送ローラ11には、フィルム2aとの接触位置にて、その回転軸に向かう方向にフィルム2aからの押圧力が作用し、フィルム2aには、前記押圧力と釣り合う大きさの反発力が搬送ローラ11から印加される。そして、搬送ローラ11及びフィルム2aが、相互に押圧し合うことにより、双方が振動することなく、安定的にフィルム2aの搬送を行うことができる。
【符号の説明】
【0060】
1:露光装置、10:ステージ、100:支持台、10a:噴気室、10b:吸気室、10c:格子溝、10d:噴気孔、10e:吸気孔、10f:基板、10g:保護膜、11:搬送ローラ、12:マスクステージ、12a:マスク、13:露光光源、13a:カップリング光学部材、14:フィルム位置制御部、15:アライメント部、15a:撮像装置、15b:マスクステージ駆動部、16:集光レンズ、17:開口、18:アライメント用窓、19:マスクパターン領域、20:露光光照射領域、2:ロール、2a:フィルム、2b:アライメントマーク、2c:パターン、3:前処理部、4:スリットコーター、5:乾燥部、6:温度調節部、7:後処理部、8:ロール、9:(搬送)ローラ、W:ワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性材料が塗布されたフィルムをその長手方向に搬送する1対の搬送ローラと、
この搬送ローラ間の前記フィルムの下方に配置され前記フィルムを支持するステージと、
このステージ上の前記フィルムに対して露光光を照射して露光する光源と、を有し、
前記ステージは、多孔質材料からなる板状の基板と、この基板の多孔質部から空気を上方に吹き上げて前記フィルムを前記基板に非接触で支持する噴気部材と、前記基板に設けられた吸気孔を介して前記基板の表面から空気を吸引する吸気部材と、を有することを特徴とするフィルムの露光装置。
【請求項2】
前記ステージは、前記フィルムが前記基板上で前記搬送ローラの上方共通接線より下方に位置するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルムの露光装置。
【請求項3】
前記ステージの上方にマスクが配置されており、前記光源からの露光光がマスクを透過して前記フィルムに照射されることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルムの露光装置。
【請求項4】
前記ステージは、前記フィルムを前記基板の表面から30乃至40μm浮かび上がった位置で支持することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のフィルムの露光装置。
【請求項1】
感光性材料が塗布されたフィルムをその長手方向に搬送する1対の搬送ローラと、
この搬送ローラ間の前記フィルムの下方に配置され前記フィルムを支持するステージと、
このステージ上の前記フィルムに対して露光光を照射して露光する光源と、を有し、
前記ステージは、多孔質材料からなる板状の基板と、この基板の多孔質部から空気を上方に吹き上げて前記フィルムを前記基板に非接触で支持する噴気部材と、前記基板に設けられた吸気孔を介して前記基板の表面から空気を吸引する吸気部材と、を有することを特徴とするフィルムの露光装置。
【請求項2】
前記ステージは、前記フィルムが前記基板上で前記搬送ローラの上方共通接線より下方に位置するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルムの露光装置。
【請求項3】
前記ステージの上方にマスクが配置されており、前記光源からの露光光がマスクを透過して前記フィルムに照射されることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルムの露光装置。
【請求項4】
前記ステージは、前記フィルムを前記基板の表面から30乃至40μm浮かび上がった位置で支持することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のフィルムの露光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−22161(P2012−22161A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160169(P2010−160169)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】
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