説明

フィルムコンデンサ

【課題】フィルムコンデンサの放熱量を効果的に向上する。
【解決手段】両端が開口する筒状の巻芯(21)には、冷凍装置(10)の吐出管(12b)と繋がる冷却管(17)が接続される。冷凍装置(10)の運転時には、圧縮機(12)で圧縮された高圧冷媒が、冷却管(17)を介して巻芯(21)の内部を流通する。その結果、コンデンサ素子(30)は、その内側から効果的に冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻芯に金属化フィルムが巻回されたフィルムコンデンサに関し、特にフィルムコンデンサの放熱対策に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属化フィルムを巻芯に巻回して構成されるフィルムコンデンサが知られている。この種のフィルムコンデンサは、電子機器や電気機器等において、特に安定した電気特性を要する回路に多く用いられている。また、近年のフィルムコンデンサは、電解コンデンサと比較して低損失であり、信頼性にも優れているため、空調機やハイブリッド自動車等のインバータ回路の平滑コンデンサとしても利用されている。
【0003】
特許文献1や2には、この種のフィルムコンデンサが開示されている。このフィルムコンデンサは、巻芯と、該巻芯に巻回される金属化フィルムとを備えている。金属化フィルムには、その端部の金属を溶射して形成される溶射金属(メタリコン電極)が形成されている。この溶射金属には、該溶射金属と電気的に接続するようにリード線(外部端子)が溶接されている。更に、フィルムコンデンサには、金属化フィルム及び溶射金属を外側から覆うように封止樹脂が設けられる。
【特許文献1】特開2005−093516号公報
【特許文献2】特開昭62−60215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のようなフィルムコンデンサでは、通電時において金属化フィルムが発熱して不具合を招くことがある。
【0005】
具体的に、例えばフィルムコンデンサの小型化を図るためにフィルムの薄型化、ひいては蒸着金属(溶射金属)の薄型化を図ると、蒸着金属を流れる電流により発熱が大きくなり、金属化フィルム自体の発熱も大きくなる。また、例えばフィルム基材として誘電損失が比較的大きな材料を用いる場合にも、金属化フィルムの発熱が大きくなる。
【0006】
上述の例にも挙げるように、フィルムコンデンサでは、その仕様によって金属化フィルムの発熱が大きくなり、金属化フィルムの温度が上昇してしまうことがある。その結果、金属化フィルムの熱収縮やコンデンサの耐電圧特性の低下等の不具合を招く虞がある。
【0007】
そこで、例えば特許文献2のフィルムコンデンサは、両端が開口する筒状の巻芯を封止樹脂の外部へ露出させている。これにより、このフィルムコンデンサでは、巻芯の内部を空気で冷却可能としている。
【0008】
しかしながら、上記特許文献2に係るフィルムコンデンサでは、巻芯の放熱効果に限界があり、フィルムコンデンサの発熱を充分に抑えることができない。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルムコンデンサの放熱量を効果的に向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、両端が開口する筒状の巻芯(21)と、該巻芯(21)に巻回される金属化フィルム(31)とを備えたフィルムコンデンサを前提としている。そして、このフィルムコンデンサは、上記巻芯(21)が、その内部に液体又は冷媒から成る冷却用熱媒体が流通するように構成されていることを特徴とするものである。なお、ここでいう冷却用熱媒体は、空気を除く流体であって、水等の液体や冷凍サイクル等に用いられる液冷媒、気液二相冷媒、ガス冷媒を含むものを意味する。
【0011】
第1の発明では、金属化フィルム(31)が巻回される巻芯(21)が筒状に形成され、その内部に冷却用熱媒体が流通する。通電状態の金属化フィルム(31)から発生する熱は、巻芯(21)を介してその内部の冷却用熱媒体へ放出される。つまり、金属化フィルム(31)は、その内側から液体や冷媒によって冷却される。
【0012】
第2の発明は、巻芯(21)と、該巻芯(21)に巻回される金属化フィルム(31)とを備えたフィルムコンデンサを前提としている。そして、このフィルムコンデンサは、上記巻芯(21)が、液体又は冷媒から成る冷却用熱媒体が流通する配管(17b)に連結されることを特徴とするものである。なお、ここでいう冷却用熱媒体は、空気を除く流体であって、水等の液体や冷凍サイクル等に用いられる液冷媒、気液二相冷媒、ガス冷媒を含むものを意味する。
【0013】
第2の発明では、金属化フィルム(31)が巻回される巻芯(21)が、配管(17b)に連結される。配管(17b)には、冷却用熱媒体が流通している。通電状態の金属化フィルム(31)から発生する熱は、巻芯(21)及び配管(17b)を介して配管(17b)内の液体や冷媒へ放出される。つまり、金属化フィルム(31)は、その内側で放熱する巻芯(21)によって冷却される。
【0014】
第3の発明は、第1又は第2の発明のフィルムコンデンサにおいて、上記冷却用熱媒体は、冷媒を循環させて冷凍サイクルを行う冷凍装置(10)の低圧冷媒であることを特徴とするものである。
【0015】
第3の発明では、巻芯(21)の内部、あるいは巻芯(21)と結合する配管(17b)内を冷凍装置(10)の低圧冷媒が流通する。従って、巻芯(21)が低圧冷媒によって効率良く冷却され、金属化フィルム(31)の放熱効果が促進される。
【0016】
第4の発明は、第1又は第2の発明のフィルムコンデンサにおいて、上記冷却用熱媒体は、冷媒を循環させて冷凍サイクルを行う冷凍装置(10)の高圧冷媒であることを特徴とするものである。
【0017】
第4の発明では、巻芯(21)の内部、あるいは巻芯(21)と結合する配管(17b)内を冷凍装置(10)の高圧冷媒が流通する。従って、巻芯(21)が高圧冷媒によって冷却され、金属化フィルム(31)の放熱効果が促進される。また、このようにして高圧冷媒で金属化フィルム(31)を冷却すると、金属化フィルム(31)の熱が高圧冷媒に回収されるので、例えばこの冷凍装置(10)の暖房能力を向上できる。
【0018】
第5の発明は、第1又は第2の発明のフィルムコンデンサにおいて、上記冷却用熱媒体は、車両(80)のエンジン(81,82)の冷却水であることを特徴とするものである。なお、ここでいうエンジンは、車両を走行させるための駆動源となるものであって、内燃機関や電気モータを含むものを意味する。
【0019】
第5の発明では、巻芯(21)の内部、あるいは巻芯(21)と結合する配管(17b)内をエンジン(81,82)の冷却水が流通する。従って、巻芯(21)が冷却水によって効率良く冷却され、金属化フィルム(31)の放熱効果が促進される。
【0020】
第6の発明は、圧縮機(12)と放熱器(15)と蒸発器(13)とが接続されると共に、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)と、フィルムコンデンサ(20)が搭載される回路基板(X)とを備える冷凍装置を前提としている。そして、この冷凍装置は、上記フィルムコンデンサが、第1又は第2の発明のフィルムコンデンサ(20)で構成され、上記冷却用熱媒体は、上記圧縮機(12)と放熱器(15)との間を流れる高圧冷媒であることを特徴とするものである。
【0021】
第6の発明では、冷凍装置(10)の冷媒回路(11)で冷凍サイクルが行われる。即ち、圧縮機(12)で圧縮された高圧冷媒は、放熱器(15)で放熱してから膨張弁等で減圧されて低圧冷媒となった後、蒸発器(13)で蒸発してから圧縮機(12)へ吸入される。
【0022】
ここで、本発明では、フィルムコンデンサ(20)の巻芯(21)の内部、あるいは巻芯(21)と結合する配管(17b)の内部を圧縮機(12)の吐出側の高圧冷媒が流れる。通電状態のフィルムコンデンサ(20)の金属化フィルム(31)から発生する熱は、巻芯(17b)を介して高圧冷媒へ付与される。その結果、金属化フィルム(31)は、その内側から冷却される。以上のようにして、金属化フィルム(31)の熱を回収した高圧冷媒は、放熱器(15)による空気等の加熱に利用される。
【0023】
第7の発明は、圧縮機(12)と放熱器(15)と蒸発器(13)とが接続されると共に、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う一次側回路(11)と、上記放熱器(15)を介して該一次側回路(11)と接続されると共に放熱器(15)で加熱される熱媒体が流れる二次側回路(70)と、フィルムコンデンサ(20)が搭載される回路基板(X)とを備える冷凍装置を前提としている。そして、この冷凍装置は、上記フィルムコンデンサが、第1又は第2の発明のフィルムコンデンサで構成され、上記冷却用熱媒体は、上記二次側回路(70)を流れる熱媒体であることを特徴とするものである。
【0024】
第7の発明では、冷凍サイクルを行う一次側回路(11)と熱媒体が循環する二次側回路(70)とが、放熱器(15)を介して互いに接続される。放熱器(15)では、一次側回路(11)の高圧冷媒の熱が、二次側回路(70)を流れる熱媒体へ放出される。放熱器(15)で加熱された熱媒体は、例えば給湯の熱源として利用される。
【0025】
ここで、本発明では、フィルムコンデンサ(20)の巻芯(21)の内部、あるいは巻芯(21)と結合する配管(17b)の内部を二次側回路(70)の熱媒体が流れる。通電状態のフィルムコンデンサ(20)の金属化フィルム(31)から発生する熱は、巻芯(21)を介して二次側回路(70)の熱媒体へ付与される。その結果、金属化フィルム(31)は、その内側から冷却される。以上のようにして、金属化フィルム(31)の熱を回収した熱媒体は、例えば温水等の熱源として利用される。
【発明の効果】
【0026】
第1の発明では、筒状の巻芯(21)の内部に液体又は冷媒から成る冷却用熱媒体を流通させるようにしているので、金属化フィルム(31)を内側から冷却することができる。また、第2の発明では、液体又は冷媒から成る冷却用熱媒体が流通する配管(17b)に巻芯(21)を結合しているので、配管(17b)側へ放熱する巻芯(21)によって金属化フィルム(31)を内側から冷却することができる。
【0027】
ここで、冷却用熱媒体は、空気と比較して熱伝導率が高いため、金属化フィルム(31)を充分に冷却することができる。従って、金属化フィルム(31)の温度上昇に起因して、金属化フィルムが熱収縮したり、フィルムコンデンサの耐電圧特性が低下したりすることを未然に防止できる。
【0028】
また、金属化フィルム(31)の放熱効果を促進させることで、金属化フィルム(31)のフィルム基材として、より誘電率が高いものを用いることができる。即ち、誘電率が比較的高いフィルム基材を用いると、誘電損失も高くなるため金属化フィルムが発熱し易くなるが、このような発熱を本発明によって効果的に抑えることができる。従って、誘電率の高いフィルム基材を用いることで、フィルムコンデンサを小型化でき、且つ発熱に伴う不具合も回避できる。更に、金属化フィルムの発熱は、その表面に形成される蒸着膜を薄型化することで大きくなるが、このような発熱も冷却用熱媒体で効果的に抑えることができる。
【0029】
特に、第3の発明では、冷却用熱媒体として冷凍装置(10)の低圧冷媒を利用するようにしたので、冷却用熱媒体による金属化フィルム(31)の冷却効果を更に高めることができる。また、第4の発明では、冷媒用熱媒体として冷凍装置(10)の高圧冷媒を利用するようにしたので、金属化フィルム(31)を効果的に冷却でき、且つ金属化フィルム(31)から放出される熱を冷凍装置(10)の熱源として利用することができる。更に、第5の発明では、冷却用熱媒体として車両(80)のエンジン(81,82)の冷却水を利用するようにしたので、金属化フィルム(31)の冷却効果を高めることができる。
【0030】
第6の発明によれば、冷凍装置(10)において、圧縮機(12)と放熱器(15)との間を流れる高圧冷媒によって金属化フィルム(31)を効率良く冷却でき、且つ金属化フィルム(31)から回収した熱を放熱器(15)で放熱させることができる。従って、この冷凍装置(10)の放熱器(15)の加熱能力を向上できる。また、第7の発明によれば、冷凍装置(10)の二次側回路(70)を流れる熱媒体によって金属化フィルム(31)を効率良く冷却でき、且つ金属化フィルム(31)から回収した熱を給湯の熱源等として利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0032】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1に係るフィルムコンデンサ(20)は、冷凍装置(10)に搭載されるものである。実施形態1に係る冷凍装置は、室内の冷房や暖房を行う空気調和装置(10)を構成している。
【0033】
〈空気調和装置の構成〉
図1に示すように、空気調和装置(10)は、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)を備えている。空気調和装置(10)には、圧縮機(12)と室外熱交換器(13)と膨張弁(14)と室内熱交換器(15)と四路切換弁(16)とが接続されている。
【0034】
圧縮機(12)は、スクロール型、ロータリー型、スイング型等の回転式の圧縮機で構成されている。圧縮機(12)には、冷媒の吸入側に吸入管(12a)が接続され、冷媒の吐出側に吐出管(12b)が接続されている。圧縮機(12)は、インバータ回路の出力周波数を変更することで、駆動軸の回転数が可変となっている。つまり、圧縮機(12)は、容量が可変なインバータ式の圧縮機で構成されている。圧縮機(12)のインバータ回路には、詳細は後述するフィルムコンデンサ(20)が搭載されている。
【0035】
室外熱交換器(13)は、室外に設置されており、室内熱交換器(15)は、室内に設置されている。室外熱交換器(13)及び室内熱交換器(15)は、それぞれフィン・アンド・チューブ式のクロスフィン型の熱交換器で構成されている。室外熱交換器(13)の近傍には室外ファンが設置され、室内熱交換器(15)の近傍には室内ファンが設置されている(図示省略)。室外熱交換器(13)では、冷媒と室外空気との間で熱交換が行われ、室内熱交換器(15)では、冷媒と室内空気との間で熱交換が行われる。
【0036】
膨張弁(14)は、開度が調節自在な電子膨張弁で構成されている。四路切換弁(16)は、第1から第4までのポートを有している。四路切換弁(16)では、第1のポートが圧縮機(12)の吐出管(12b)と繋がり、第2のポートが室内熱交換器(15)と繋がり、第3のポートが圧縮機(12)の吸入管(12a)と繋がり、第4のポートが室外熱交換器(13)と繋がっている。四路切換弁(16)は、第1のポートと第4のポートとを連通させると同時に第2のポートと第3のポートを連通させる状態(図1の実線で示す状態)と、第1のポートと第2のポートとを連通させると同時に第3のポートと第4のポートとを連通させる状態とに、設定が切換可能となっている。
【0037】
実施形態1の冷媒回路(11)では、圧縮機(12)の吐出管(12b)に冷却管(17)が接続されている。冷却管(17)は、一端が吐出管(12b)の上流側に接続され、他端が該吐出管(12b)の下流側に接続されている。そして、この冷却管(17)には、上記フィルムコンデンサ(20)が接続されている。
【0038】
〈フィルムコンデンサの構成〉
図2に示すように、フィルムコンデンサ(20)は、上記圧縮機(12)のインバータ回路の回路基板(X)に搭載されている。フィルムコンデンサ(20)は、巻芯(21)、コンデンサ素子(30)、2つのメタリコン電極(41,42)、2つの外部端子(43,44)、及び封止樹脂(60)を備えている。
【0039】
コンデンサ素子(30)は、巻芯(21)に巻回される金属化フィルム(31)によって構成されている。これにより、コンデンサ素子(30)の外形は略円柱状となっている。金属化フィルム(31)は、フィルム基材と、フィルム基材の片側の面に蒸着される蒸着電極(蒸着膜)とで構成されている(図示省略)。フィルム基材は、ポリフッ化ビリニデン(PVDF)で構成されている。また、蒸着膜は、例えばアルミニウムで構成されている。
【0040】
コンデンサ素子(30)では、蒸着膜のパターンが互いに異なる2枚の金属化フィルム(31)が重ね合わされた状態で巻芯(21)に巻回されている。これら2枚の金属化フィルム(31)は、巻芯(21)の軸線方向に互いに若干ずれている。つまり、2枚の金属化フィルム(31)では、一方の金属化フィルム(31)が巻芯(21)の一端側にはみ出し、他方の金属化フィルム(31)は巻芯(21)の他端側にはみ出している(図示省略)。
【0041】
2つのメタリコン電極(41,42)は、コンデンサ素子(30)の軸方向両端部にそれぞれ設けられている。具体的に、各メタリコン電極(41,42)は、コンデンサ素子(30)の両端部に金属を溶射することで形成されている。各メタリコン電極(41,42)は、コンデンサ素子(30)の両端部からそれぞれはみ出した上記各金属化フィルム(31,31)と電気的に接続している。
【0042】
2つの外部端子(43,44)は、2つのメタリコン電極(41,42)とそれぞれ電気的に接続するリード線を構成している。各外部端子(43,44)は、一端がメタリコン電極(41,42)と繋がり、他端が回路基板(X)の所定の配線パターン(51,52)と繋がっている。
【0043】
封止樹脂(60)は、コンデンサ素子(30)、各メタリコン電極(41,42)、及び各外部端子(43,44)の一端側を外側から覆うものである。封止樹脂(60)は、例えばエポキシ樹脂で構成されている。
【0044】
巻芯(21)は、樹脂製で細長の筒状に形成されている。巻芯(21)は、その軸線方向の両端にそれぞれ開口部(21a,21a)が形成されている。巻芯(21)は、封止樹脂(60)を貫通しており、両開口部(21a,21a)が封止樹脂(60)の外側にそれぞれ臨んでいる。そして、巻芯(21)の両開口部(21a,21a)には、上述した冷却管(17)が接続されている。即ち、図3に示すように、巻芯(21)には、その一端に流入側の冷却管(17a)が接続され、その他端に流出側の冷却管(17b)が接続されている。これにより、巻芯(21)の内部には、吐出管(12b)を流れる高圧冷媒(冷却用熱媒体)の一部が流通可能となっている。
【0045】
〈フィルムコンデンサの製造例〉
次にフィルムコンデンサ(20)の製造方法の一例を説明する。まず、巻芯(21)に金属化フィルム(31,31)を巻回する。なお、この際には、巻回用の器具である巻軸(巻機)を巻芯(21)の開口部(21a)に挿入する。この巻軸を回転駆動させることで、巻芯(21)に金属化フィルム(31,31)が自動的に巻回される。巻回後には、巻芯(21)の両端部に蓋を接着する、あるいは詰め物を充填して開口部(21a)を閉塞する。これにより、後述のメタリコンや封止用の樹脂が巻芯(21)の内部に入り込んでしまうことが禁止される。
【0046】
次に、コンデンサ素子(30)の両端部に金属を溶射してメタリコン電極(41,42)を形成する。次いで、メタリコン電極(41,42)に外部端子(43,44)を半田付けする。その後、コンデンサ素子(30)、メタリコン電極(41,42)、及び外部電子(43,44)の一端部を覆うように封止用の樹脂(エポキシ樹脂)をディップ成形する。ディップ成形時には、巻芯(21)の両端部を外側に露出させるようにする。その後、巻芯(21)の両端の閉塞部を切断する、あるいは蓋を外すことで図2に示すようなフィルムコンデンサ(20)が製造される。なお、巻芯(21)の両端部は、図2に示すように封止樹脂(60)の端面から若干飛び出していても良いし、封止樹脂(60)の端面と略一致していても良い。
【0047】
−運転動作−
次に、実施形態1に係る空気調和装置(10)の運転動作について説明する。この空気調和装置(10)では、四路切換弁(16)の設定に応じて、冷房運転と暖房運転とが切り換えて行われる。
【0048】
〈冷房運転〉
冷房運転では、四路切換弁(16)が図1の実線で示す状態に設定される。圧縮機(12)が運転されると、冷媒回路(11)では、室外熱交換器(13)が放熱器(凝縮器)となり、室内熱交換器(15)が蒸発器となる蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。
【0049】
圧縮機(12)で圧縮された冷媒は、吐出管(12b)へ吐出される。ここで、圧縮機(12)の吐出冷媒(高圧冷媒)の温度は、例えば60℃となる。吐出管(12b)を流れる冷媒は、その一部が冷却管(17)へ分流する。
【0050】
冷却管(17)へ分流した高圧冷媒は、図3に示すフィルムコンデンサ(20)の巻芯(21)の内部を流入する。ここで、フィルムコンデンサ(20)では、コンデンサ素子(30)が通電状態となって発熱している。このため、コンデンサ素子(30)の温度は、例えば90℃となっている。従って、コンデンサ素子(30)の熱は、巻芯(21)を伝熱してその内部を流れる冷媒へ放出される。その結果、コンデンサ素子(30)が内側から冷却される。以上のようにしてコンデンサ素子(30)の冷却に利用された冷媒は、冷却管(17)から吐出管(12b)へ流出する。
【0051】
吐出管(12b)の高圧冷媒は、四路切換弁(16)を通過した後、室外熱交換器(13)を流れる。室外熱交換器(13)では、冷媒が室外空気へ放熱する。室外熱交換器(13)で放熱した冷媒は、膨張弁(14)で減圧された後、室内熱交換器(15)を流れる。室内熱交換器(15)では、冷媒が室内空気から吸熱して蒸発する。その結果、室内空気が冷却され、室内の冷房が行われる。室内熱交換器(15)で蒸発した冷媒は、四路切換弁(16)を通過した後、圧縮機(12)へ吸入されて再び圧縮される。
【0052】
〈暖房運転〉
暖房運転では、四路切換弁(16)が図1の破線で示す状態に設定される。圧縮機(12)が運転されると、冷媒回路(11)では、室内熱交換器(15)が放熱器(凝縮器)となり、室外熱交換器(13)が蒸発器となる蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。
【0053】
圧縮機(12)で圧縮された冷媒は、吐出管(12b)へ吐出される。ここで、圧縮機(12)の吐出冷媒(高圧冷媒)の温度は、例えば60℃となる。吐出管(12b)を流れる冷媒は、その一部が冷却管(17)へ分流する。
【0054】
冷却管(17)へ分流した冷媒は、上記冷房運転と同様にして、巻芯(21)を内側から冷却する。一方、冷却管(17)を流れる冷媒には、コンデンサ素子(30)の熱が付与される。コンデンサ素子(30)を冷却して加熱された冷媒は、吐出管(12b)へ流出して室内熱交換器(15)を流れる。
【0055】
室内熱交換器(15)では、冷媒が室内空気へ放熱する。その結果、室内空気が加熱され、室内の暖房が行われる。また、室内熱交換器(15)では、高圧冷媒がコンデンサ素子(30)から回収した熱も、室内へ放出される。従って、この空気調和装置(10)の暖房能力が向上する。室内熱交換器(15)で放熱した冷媒は、膨張弁(14)で減圧された後、室外熱交換器(13)で蒸発し、圧縮機(12)で再び圧縮される。
【0056】
−実施形態1の効果−
上記実施形態1では、巻芯(21)を筒状に形成し、その内部へ高圧冷媒を流通させるようにしている。このため、空気調和装置(10)の冷房運転や暖房運転において、高圧冷媒で巻芯(21)を内側から冷却して、コンデンサ素子(30)を効果的に冷却することができる。具体的に、高圧冷媒の温度はおおよそ40〜80℃であり、コンデンサ素子をその温度範囲まで冷却することができる。特に、暖房運転時には、コンデンサ素子(30)の熱を回収した冷媒を室内熱交換器(15)で放熱させるので、室内熱交換器(15)による空気の加熱能力が増大し、ひいては空気調和装置(10)の暖房能力を向上させることができる。
【0057】
更に、上記実施形態1では、金属化フィルム(31)のフィルム基材としてポリフッ化ビリニデン(PVDF)を用いるようにしている。ポリフッ化ビリニデンは、その誘電率が比較的高いため、コンデンサ素子(30)の小型化、ひいてはフィルムコンデンサ(20)の小型化を図ることができる。一方、ポリフッ化ビリニデンは、誘電損失が比較的大きくなるため、コンデンサ素子(30)からの発熱量が増大してしまう。しかしながら、本実施形態によれば、このような発熱を巻芯(21)の内部を流れる冷媒によって効果的に抑えることができる。
【0058】
〈実施形態1の変形例〉
図4に示すように、冷媒回路(11)の吸入管(12a)に冷却管(17)を設け、この冷却管(17)に巻芯(21)を接続するようにしても良い。この例では、冷房運転や暖房運転において、蒸発後の低圧冷媒が冷却管(17)を流通する。ここで、低圧冷媒は、上記実施形態1のような高圧冷媒と比較すると低温であるので、この冷媒を巻芯(21)に流通させることでコンデンサ素子(30)の冷却効果を向上させることができる。
【0059】
なお、上記冷却管(17)及びフィルムコンデンサ(20)を冷媒回路(11)の他の箇所に設けるようにしても良い。具体的には、冷却管(17)及びフィルムコンデンサ(20)を、例えば室内熱交換器(15)と膨張弁(14)との間に設けたり、膨張弁(14)と室外熱交換器(13)との間に設けたりしても良い。
【0060】
《発明の実施形態2》
実施形態2に係るフィルムコンデンサ(20)は、巻芯(21)が配管に連結されるものである。具体的に、実施形態2のフィルムコンデンサ(20)は、図5及び図6に示すように、巻芯(21)が吐出管(17b)の周囲に連結されている。
【0061】
図6に示すフィルムコンデンサ(20)は、上記実施形態1と異なり、巻芯(21)が筒状となっておらず、その内部が中実となっている。つまり、実施形態2の巻芯(21)は、その本体が円柱状に形成されている。また、巻芯(21)の一端部には、2手に分岐する把持部(22,22)が形成されている。把持部(22,22)は、円弧状に湾曲した棒状ないし板状に形成されている。そして、両把持部(22,22)の間に吐出管(17b)が介在するようにして、両把持部(22,22)と吐出管(17b)とが密着している。吐出管(17b)には、このような状態の把持部(22,22)の外側に環状の固定部材(18)が取り付けられている。つまり、固定部材(18)は、吐出管(17b)と把持部(22,22)の周囲を囲むようにして、吐出管(17b)に巻芯(21)を固定している。以上のようにして、フィルムコンデンサ(20)は吐出管(17b)に支持される一方、巻芯(21)と吐出管(17b)とが熱的に接続される。
【0062】
実施形態2の空気調和装置(10)では、例えば冷房運転時において、コンデンサ素子(30)が発熱すると、この熱は巻芯(21)の把持部(22,22)を介して吐出管(17b)へ伝熱し、更に吐出管(17b)の内部を流れる高圧冷媒へ放出される。その結果、コンデンサ素子(30)は、上記実施形態1と同様、その内側から冷却される。
【0063】
また、暖房運転時においても、コンデンサ素子(30)の熱は、巻芯(21)及び吐出管(17b)を介して高圧冷媒へ放出され、コンデンサ素子(30)が冷却される。また、コンデンサ素子(30)の熱を奪った高圧冷媒は、室内熱交換器(15)での空気の加熱に利用されるので、暖房能力が向上する。
【0064】
−実施形態2の効果−
上記実施形態2では、高圧冷媒が流通する吐出管(17b)にコンデンサ素子(30)の巻芯(21)を接続するようにしている。このため、空気調和装置(10)の冷房運転や暖房運転において、コンデンサ素子(30)の熱を巻芯(21)及び吐出管(17b)を介して高圧冷媒へ放出させることができ、コンデンサ素子(30)を効果的に冷却することができる。特に、暖房運転時には、コンデンサ素子(30)の熱を回収した冷媒を室内熱交換器(15)で放熱させるので、空気調和装置(10)の暖房能力を向上させることができる。
【0065】
〈実施形態2の変形例〉
上記実施形態2においても、上記実施形態1の変形例と同様にして、フィルムコンデンサ(20)を他の冷媒配管に接続するようにしても良い。具体的に、フィルムコンデンサ(20)の巻芯(21)を吸入管(12a)に接続するようにしても良いし、室内熱交換器(15)と膨張弁(14)との間や、膨張弁(14)と室外熱交換器(13)との間の冷媒配管に接続しても良い。
【0066】
《発明の実施形態3》
実施形態3では、フィルムコンデンサ(20)が上記実施形態1や2と異なる冷凍装置(10)に搭載されている。図7に示すように、実施形態3の冷凍装置は、いわゆるヒートポンプ給湯器(10)を構成している。ヒートポンプ給湯器(10)は、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)と、水(温水)が循環する温水回路(70)とを備えている。
【0067】
冷媒回路(11)は、一次側回路を構成しており、上記実施形態1と同様に圧縮機(12)と室外熱交換器(13)と膨張弁(14)とを有している。また、冷媒回路(11)には、上記実施形態1の室内熱交換器に代わって、放熱器としての加熱用熱交換器(15)が設けられている。
【0068】
温水回路(70)は、二次側回路を構成しており、上記加熱用熱交換器(15)を介して冷媒回路(11)と接続している。即ち、加熱用熱交換器(15)には、冷媒回路(11)を流れる冷媒の流路と、温水回路(70)を流れる水(温水)の流路とが形成されている。そして、加熱用熱交換器(15)では、冷媒回路(11)の冷媒と、温水回路(70)を流れる水との間で熱交換が行われる。
【0069】
温水回路(70)には、循環ポンプ(71)、三方弁(73)、及び給湯タンク(75)が接続されている。三方弁(73)は、第1から第3までのポートを備えている。三方弁(73)は、第1ポートと第3ポートとを連通させる状態(図7の実線で示す状態)と、第2ポートと第3ポートとを連通させる状態(図7の破線で示す状態)とに設定が切換可能に構成されている。
【0070】
温水回路(70)には、返送管(70a)、主供給管(70b)、第1分岐管(70c)、及び第2分岐管(70d)が設けられている。返送管(70a)は、一端が給湯タンク(75)の底部と接続し、他端が加熱用熱交換器(15)の流入端と接続している。返送管(70a)には、上記循環ポンプ(71)が設けられている。
【0071】
主供給管(70b)は、一端が加熱用熱交換器(15)の流出端と接続し、他端が三方弁(73)の第3ポートと接続している。第1分岐管(70c)は、一端が三方弁(73)の第1ポートと接続し、他端が給湯タンク(75)の頂部と接続している。第2分岐管(70d)は、一端が三方弁(73)の第2ポートと接続し、他端が給湯タンク(75)の底部と接続している。
【0072】
ヒートポンプ給湯器(10)は、給湯タンク側給水管(76a)、水道側給水管(76b)、水道側給温水管(76c)、浴槽側給温水管(76d)、浴槽側給水管(76e)を有している。給湯タンク側給水管(76a)は、給湯タンク(75)へ水を供給するものである。水道側給水管(76b)は、水道蛇口(77)側へ水を供給するものである。水道側給温水管(76c)は、給湯タンク(75)内の温水を水道蛇口(77)側へ供給するものである。浴槽側給温水管(76d)は、給湯タンク(75)内の温水を浴槽(78)側へ供給するものである。浴槽側給水管(76e)は、水を浴槽(78)側へ供給するものである。
【0073】
ヒートポンプ給湯器(10)は、給湯混合弁(90)と湯はり混合弁(91)とを備えている。給湯混合弁(90)は、水道側給水管(76b)から供給される水と、水道側給温水管(76c)から供給される温水との混合比率を調節するための制御弁を構成している。湯はり混合弁(91)は、浴槽側給温水管(76d)から供給される温水と、浴槽側給水管(76e)から供給される水との混合比率を調節するための制御弁を構成している。
【0074】
ヒートポンプ給湯器(10)には、流入端が給湯タンク(75)の頂部と接続し、流出端が給湯タンク(75)の底部と接続する浴槽側一次回路(92)が設けられている。浴槽側一次側回路(92)には、第1ポンプ(93)と浴槽側加熱熱交換器(94)とが設けられている。浴槽側一次回路(92)には、浴槽側加熱用熱交換器(94)を介して浴槽側二次回路(95)が接続している。浴槽側二次回路(95)には、第2ポンプ(96)と上記浴槽(78)とが接続している。浴槽側加熱用熱交換器(94)では、浴槽側一次回路(92)を循環する水と浴槽側二次回路(95)を循環する水との間で熱交換が行われる。
【0075】
温水回路(70)には、上記実施形態1と同様の冷却管(17)が接続されている。具体的に、この例では、冷却管(17)が主供給管(70b)に接続されている。そして、冷却管(17)には、上記実施形態1と同様、図3に示すようにフィルムコンデンサ(20)の巻芯(21)が接続されている。
【0076】
ヒートポンプ給湯器(10)の運転時には、圧縮機(12)及び循環ポンプ(71)が運転状態となる。冷媒回路(11)では、加熱用熱交換器(15)が放熱器となり、室外熱交換器(13)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。具体的に、圧縮機(12)の吐出冷媒は、加熱用熱交換器(15)で放熱し、温水回路(70)を循環する水を加熱する。加熱用熱交換器(15)で放熱した冷媒は、膨張弁(14)で減圧された後、室外熱交換器(13)で蒸発し、圧縮機(12)に吸入される。
【0077】
一方、温水回路(70)では、給湯タンク(75)内の水(温水)の温度に応じて三方弁(73)の設定が適宜切り換えられる。給湯タンク(75)内の水は、返送管(70a)を流出して加熱用熱交換器(15)で加熱される。加熱用熱交換器(15)で加熱された水は、その一部が冷却用熱媒体として冷却管(17)へ分流する。ここで、フィルムコンデンサ(20)では、コンデンサ素子(30)が通電状態となっている。このため、コンデンサ素子(30)の熱は、巻芯(21)を伝熱してその内部を流れる水へ放出される。その結果、コンデンサ素子(30)が内側から冷却される。以上のようにしてコンデンサ素子(30)の冷却に利用された水は、冷却管(17)を流出する。コンデンサ素子(30)から吸熱した水は、再び給湯タンク(75)に供給される。これにより、コンデンサ素子(30)の熱が給湯タンク(75)内の湯沸かしの熱源として利用される。
【0078】
−実施形態3の効果−
上記実施形態3では、給湯用の水が循環する温水回路(70)に冷却管(17)を接続し、この冷却管(17)にフィルムコンデンサ(20)の巻芯(21)を接続するようにしている。このため、ヒートポンプ給湯器(10)の運転時において、温水回路(70)の水を利用してコンデンサ素子(30)を内側から冷却することができる。ここで、加熱用熱交換器(15)では、コンデンサ素子(30)から吸熱する前の水が流れるので、加熱用熱交換器(15)の放熱効果が促進され、冷媒回路(11)でのCOPが向上する。また、コンデンサ素子(30)から吸熱した水は、再び給湯タンク(75)内に戻されるので、ヒートポンプ給湯器(10)の給湯能力を効果的に向上できる。
【0079】
〈実施形態3の変形例1〉
上記実施形態3のヒートポンプ給湯器(10)において、図6に示す実施形態2のフィルムコンデンサ(20)を温水回路(70)の配管に繋ぐようにしても良い。この場合、コンデンサ素子(30)の熱は、巻芯(21)及び温水回路(70)の配管を介して、配管内の水へ放出されることになる。
【0080】
また、上記実施形態3において、フィルムコンデンサ(20)を他の箇所に設けるようにしても良い。具体的には、温水回路(70)において、冷却管(17)を返送管(70a)に設けても良い。この場合には、循環ポンプ(71)と加熱用熱交換器(15)との間に冷却管(17)を接続して良いし、循環ポンプ(71)と給湯タンク(75)との間に冷却管(17)を接続しても良い。更に、冷却管(17)を上記浴槽側一次回路(92)や浴槽側二次回路(95)の所定の箇所、あるいはその他の配管に設けるようにしても良い。
【0081】
〈実施形態3の変形例2〉
実施形態3の変形例2のヒートポンプ給湯器(10)は、図8に示すように、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)と、水(温水)が循環する温水回路(70)とを備えている。冷媒回路(11)は、一次側回路を構成しており、上記実施形態3と同様に圧縮機(12)と室外熱交換器(13)と膨張弁(14)と加熱用熱交換器(15)が設けられている。
【0082】
温水回路(70)は、二次側回路を構成しており、上記加熱用熱交換器(15)を介して冷媒回路(11)と接続している。即ち、加熱用熱交換器(15)には、冷媒回路(11)を流れる冷媒の流路と、温水回路(70)を流れる水の流路とが形成されている。そして、加熱用熱交換器(15)では、冷媒回路(11)の冷媒と、温水回路(70)を流れる水との間で熱交換が行われる。
【0083】
また、温水回路(70)には、循環ポンプ(71)と利用側熱交換器(72)とが設けられている。循環ポンプ(71)は、温水回路(70)内の水を図8に示す矢印方向に循環させるものである。利用側熱交換器(72)は、例えば給湯タンク(図示省略)の内部に設けられている。利用側熱交換器(72)では、その内部を流れる温水から給湯タンク内の水へ熱を放出する。
【0084】
更に、温水回路(70)には、上記実施形態1と同様の冷却管(17)が接続されている。具体的に、この例では、冷却管(17)が利用側熱交換器(72)の流出側と加熱用熱交換器(15)の流入側との間に接続されている。そして、冷却管(17)には、上記実施形態1と同様、図3に示すようにフィルムコンデンサ(20)の巻芯(21)が接続されている。
【0085】
ヒートポンプ給湯器(10)の運転時には、圧縮機(12)及び循環ポンプ(71)が運転状態となる。冷媒回路(11)では、加熱用熱交換器(15)が放熱器となり、室外熱交換器(13)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。具体的に、圧縮機(12)の吐出冷媒は、加熱用熱交換器(15)で放熱し、温水回路(70)を循環する水を加熱する。加熱用熱交換器(15)で放熱した冷媒は、膨張弁(14)で減圧された後、室外熱交換器(13)で蒸発し、圧縮機(12)に吸入される。
【0086】
一方、温水回路(70)では、加熱用熱交換器(15)で加熱された水が、循環ポンプ(71)を通じて利用側熱交換器(72)へ送られる。利用側熱交換器(72)では、温水回路(70)側の水(温水)から給湯タンク内の水へ熱が放出される。その結果、給湯タンク内では、お湯が沸かされる。
【0087】
利用側熱交換器(72)で放熱した水は、その一部が冷却用熱媒体として冷却管(17)へ分流する。ここで、フィルムコンデンサ(20)では、コンデンサ素子(30)が通電状態となっている。このため、コンデンサ素子(30)の熱は、巻芯(21)を伝熱してその内部を流れる水へ放出される。その結果、コンデンサ素子(30)が内側から冷却される。以上のようにしてコンデンサ素子(30)の冷却に利用された水は、冷却管(17)を流出して加熱用熱交換器(15)へ送られる。以上のように、温水回路(70)を循環する水には、コンデンサ素子(30)の熱が適宜放出されて熱回収が行われる。従って、利用側熱交換器(72)による給湯能力が向上する。
【0088】
上記実施形態3では、給湯用の水が循環する温水回路(70)に冷却管(17)を接続し、この冷却管(17)にフィルムコンデンサ(20)の巻芯(21)を接続するようにしている。このため、ヒートポンプ給湯器(10)の運転時において、温水回路(70)の水を利用してコンデンサ素子(30)を内側から冷却することができる。ここで、フィルムコンデンサ(20)の巻芯(21)には、利用側熱交換器(72)で放熱した後の水が流通するので、コンデンサ素子(30)と水の温度差が大きくなり、コンデンサ素子(30)の冷却効果が向上する。ここで、利用側熱交換器(72)で放熱した後の水の温度は90℃以下であるので、コンデンサ素子(30)が90℃以上になることはない。また、このように温度差が大きくなると、コンデンサ素子(30)から温水回路(70)の水へ回収される熱量も多くなるので、加熱用熱交換器(15)の給湯能力を効果的に向上できる。
【0089】
なお、変形例2のヒートポンプ給湯器(10)において、図6に示す実施形態2のフィルムコンデンサ(20)を温水回路(70)の配管に繋ぐようにしても良い。この場合、コンデンサ素子(30)の熱は、巻芯(21)及び温水回路(70)の配管を介して、配管内の水へ放出されることになる。
【0090】
また、変形例2において、フィルムコンデンサ(20)を他の箇所に設けるようにしても良い。具体的には、温水回路(70)において、加熱用熱交換器(15)の流出側と循環ポンプ(71)との間や、循環ポンプ(71)と利用側熱交換器(72)の流入側との間に冷却管(17)及びフィルムコンデンサ(20)を設けても良い。また、上記実施形態1と同様にして、冷媒回路(11)の高圧側や低圧側に冷却管(17)及びフィルムコンデンサ(20)を設けても良い。
【0091】
〈実施形態3の変形例3〉
実施形態3の変形例3のヒートポンプ給湯器(10)は、図9に示すように、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)と、水(温水)が循環する温水回路(70)とを備えている。冷媒回路(11)は、一次側回路を構成しており、上記実施形態3と同様に圧縮機(12)と室外熱交換器(13)と膨張弁(14)と加熱用熱交換器(15)が設けられている。
【0092】
温水回路(70)は、二次側回路を構成しており、上記加熱用熱交換器(15)を介して冷媒回路(11)と接続している。即ち、加熱用熱交換器(15)には、冷媒回路(11)を流れる冷媒の流路と、温水回路(70)を流れる水の流路とが形成されている。そして、加熱用熱交換器(15)では、冷媒回路(11)の冷媒と、温水回路(70)を流れる水との間で熱交換が行われる。
【0093】
また、温水回路(70)には、循環ポンプ(71)が設けられている。循環ポンプ(71)は、温水回路(70)内の水を図9に示す矢印方向に流すものである。また、温水回路(70)の流出端には、加熱用熱交換器(15)で加熱された水が蓄えられる給湯タンク(75)が設けられている。
【0094】
更に、温水回路(70)には、上記実施形態1と同様の冷却管(17)が接続されている。具体的に、この例では、冷却管(17)がポンプ(71)と加熱用熱交換器(15)の流入側との間に接続されている。そして、冷却管(17)には、上記実施形態1と同様、図3に示すようにフィルムコンデンサ(20)の巻芯(21)が接続されている。
【0095】
ヒートポンプ給湯器(10)の運転時には、圧縮機(12)及び循環ポンプ(71)が運転状態となる。冷媒回路(11)では、加熱用熱交換器(15)が放熱器となり、室外熱交換器(13)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。具体的に、圧縮機(12)の吐出冷媒は、加熱用熱交換器(15)で放熱し、温水回路(70)を流れる水を加熱する。加熱用熱交換器(15)で放熱した冷媒は、膨張弁(14)で減圧された後、室外熱交換器(13)で蒸発し、圧縮機(12)に吸入される。
【0096】
温水回路(70)では、加熱用熱交換器(15)で加熱される前の水の一部が冷却用熱媒体として冷却管(17)へ分流する。ここで、フィルムコンデンサ(20)では、コンデンサ素子(30)が通電状態となっている。このため、コンデンサ素子(30)の熱は、巻芯(21)を伝熱してその内部を流れる水へ放出される。その結果、コンデンサ素子(30)が内側から冷却される。以上のようにしてコンデンサ素子(30)の冷却に利用された水は、冷却管(17)を流出して加熱用熱交換器(15)へ送られる。以上のように、温水回路(70)を流れる水には、コンデンサ素子(30)の熱が適宜放出されて熱回収が行われる。従って、加熱用熱交換器(15)による給湯能力が向上する。
【0097】
この変形例3では、給湯用の水が流れる温水回路(70)に冷却管(17)を接続し、この冷却管(17)にフィルムコンデンサ(20)の巻芯(21)を接続するようにしている。このため、ヒートポンプ給湯器(10)の運転時において、温水回路(70)の水を利用してコンデンサ素子(30)を内側から冷却することができる。ここで、フィルムコンデンサ(20)の巻芯(21)には、加熱用熱交換器(15)で加熱する前の常温に近い水が流通するので、コンデンサ素子(30)と水の温度差が大きくなり、コンデンサ素子(30)の冷却効果が向上する。また、このように温度差が大きくなると、コンデンサ素子(30)から温水回路(70)の水へ回収される熱量も多くなるので、加熱用熱交換器(15)の給湯能力を効果的に向上できる。
【0098】
《発明の実施形態4》
実施形態4では、フィルムコンデンサ(20)が自動車等の車両(80)に搭載されている。図10に示すように、車両(80)には、そのエンジン(発動機)として、内燃機関(81)及び電気モータ(82)とが設けられている。つまり、車両(80)は、内燃機関(81)で発生する動力と、電気モータ(82)の動力とを駆動源とする、いわゆるハイブリッド車両で構成されている。
【0099】
図11に示すように、車両(80)には、前側のエンジンルーム内に、上記内燃機関(81)及び電気モータ(82)と、ラジエター(83)とが設けられている。そして、エンジンルームでは、図11に示すように、内燃機関(81)を冷却するための第1冷却回路(81a)と、電気モータ(82)を冷却するための第2冷却回路(82a)とが設けられている。第1冷却回路(81a)及び第2冷却回路(82a)には、冷却用熱媒体としての冷却水が充填されている。
【0100】
第1冷却回路(81a)には、ラジエター(83)の第1放熱部(83a)と内燃機関(81)と第1ウオータポンプ(84)とが接続されている。第1冷却回路(81a)では、第1ウォータポンプ(84)によって冷却水が循環され、内燃機関(81)の冷却が行われる。具体的に、第1ウォータポンプ(84)に搬送される冷却水は、内燃機関(81)のシリンダブロックやシリンダヘッドの冷却に利用される。内熱機関(81)から熱を奪った冷却水は、ラジエター(83)によって空冷された後、第1ウォータポンプ(84)の流入側へ送られる。
【0101】
第2冷却回路(82a)には、ラジエター(83)の第2放熱部(83b)と電気モータ(82)と第2ウォータポンプ(85)とが接続されている。また、第2冷却回路(82a)には、上記実施形態1と同様にして、冷却管(17)及びフィルムコンデンサ(20)が設けられている。ここで、実施形態4のフィルムコンデンサ(20)は、電気モータ(82)のインバータ回路の回路基板(X)に搭載されているものである。
【0102】
第2冷却回路(82a)では、第2ウォータポンプ(85)で搬送される冷却水が、電気モータ(82)の冷却に利用される。電気モータ(82)から熱を奪った冷却水は、ラジエター(83)によって空冷された後、一部が冷却管(17)へ分流する。ここで、フィルムコンデンサ(20)では、コンデンサ素子(30)が通電状態となっている。このため、コンデンサ素子(30)の熱は、巻芯(21)を伝熱してその内部を流れる冷却水へ放出される。その結果、コンデンサ素子(30)が内側から冷却される。以上のようにしてコンデンサ素子(30)の冷却に利用された水は、冷却管(17)を流出して第2ウォータポンプ(85)の流入側へ送られる。
【0103】
−実施形態4の効果−
上記実施形態4では、エンジンの冷却水が循環する冷却回路(82a)に冷却管(17)を接続し、この冷却管(17)に電気モータ(82)のフィルムコンデンサ(20)の巻芯(21)を接続するようにしている。このため、冷却回路(82a)の冷却水を利用してコンデンサ素子(21)を内側から冷却することができる。ここで、フィルムコンデンサ(20)の巻芯(21)には、ラジエター(83)で冷却された直後の冷却水が流通するので、コンデンサ素子(30)を効果的に冷却することができる。
【0104】
〈実施形態4の変形例〉
上記実施形態4の車両(80)において、図6に示す実施形態2のフィルムコンデンサ(20)を第2冷却回路(82a)に繋ぐようにしても良い。この場合、コンデンサ素子(30)の熱は、巻芯(21)及び第2冷却回路(82a)の配管を介して、冷却水へ放出されることになる。
【0105】
また、上記実施形態4においても、フィルムコンデンサ(20)を他の箇所に設けるようにしても良い。具体的には、第2冷却回路(82a)において、第2ウォータポンプ(85)と電気モータ(82)の流入側との間や、電気モータ(82)の流出側とラジエター(83)の流入側との間に冷却管(17)及びフィルムコンデンサ(20)を設けても良い。更に、これらの冷却管(17)及びフィルムコンデンサ(20)を第1冷却回路(81a)の任意の箇所に設けるようにしても良い。
【0106】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0107】
上記各実施形態では、コンデンサ素子(30)を1つだけ備えているが、これに限られるものではない。例えば、複数のコンデンサ素子を備え、各コンデンサ素子を並設して封止樹脂で一体的に構成したフィルムコンデンサであってもよい。また、フィルムコンデンサは上記の構成に限られるものではなく、巻芯に金属化フィルムを巻回して構成されるフィルムコンデンサであれば、任意の構成のフィルムコンデンサを採用することができる。更に、金属化フィルムのフィルム基材として他の材料を用いるようにしても良い。
【0108】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0109】
以上説明したように、本発明は、巻芯に金属化フィルムが巻回されたフィルムコンデンサについて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】実施形態1に係る空気調和装置の概略構成図である。
【図2】実施形態1に係るフィルムコンデンサの構成を示す縦断面図である。
【図3】実施形態1のフィルムコンデンサの斜視図である。
【図4】実施形態1の変形例に係る空気調和装置の概略構成図である。
【図5】実施形態2に係る空気調和装置の概略構成図である。
【図6】実施形態2に係るフィルムコンデンサを側方から視た図である。
【図7】実施形態3に係るヒートポンプ給湯器の概略構成図である。
【図8】実施形態3の変形例2に係るヒートポンプ給湯器の概略構成図である。
【図9】実施形態3の変形例3に係るヒートポンプ給湯器の概略構成図である。
【図10】実施形態4に係る車両の概略構成図である。
【図11】実施形態4に係る車両のエンジンの冷却回路の概略構成図である。
【符号の説明】
【0111】
10 冷凍装置
11 一次側回路
12 圧縮機
13 室外熱交換器(蒸発器)
15 室内熱交換器(放熱器)
17b 吐出管(配管)
20 フィルムコンデンサ
21 巻芯
31 金属過フィルム
70 二次側回路
80 車両
81,82 エンジン
X 回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が開口する筒状の巻芯(21)と、該巻芯(21)に巻回される金属化フィルム(31)とを備えたフィルムコンデンサであって、
上記巻芯(21)は、その内部に液体又は冷媒から成る冷却用熱媒体が流通するように構成されていることを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項2】
巻芯(21)と、該巻芯(21)に巻回される金属化フィルム(31)とを備えたフィルムコンデンサであって、
上記巻芯(21)は、液体又は冷媒から成る冷却用熱媒体が流通する配管(17b)に連結されることを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記冷却用熱媒体は、冷媒を循環させて冷凍サイクルを行う冷凍装置(10)の低圧冷媒であることを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項4】
請求項1又は2において、
上記冷却用熱媒体は、冷媒を循環させて冷凍サイクルを行う冷凍装置(10)の高圧冷媒であることを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項5】
請求項1又は2において、
上記冷却用熱媒体は、車両(80)のエンジン(81,82)の冷却水であることを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項6】
圧縮機(12)と放熱器(15)と蒸発器(13)とが接続されると共に、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)と、フィルムコンデンサ(20)が搭載される回路基板(X)とを備える冷凍装置であって、
上記フィルムコンデンサは、請求項1又は2のフィルムコンデンサ(20)で構成され、
上記冷却用熱媒体は、上記圧縮機(12)と放熱器(15)との間を流れる高圧冷媒であることを特徴とする冷凍装置。
【請求項7】
圧縮機(12)と放熱器(15)と蒸発器(13)とが接続されると共に、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う一次側回路(11)と、上記放熱器(15)を介して該一次側回路(11)と接続されると共に放熱器(15)で加熱される熱媒体が流れる二次側回路(70)と、フィルムコンデンサ(20)が搭載される回路基板(X)とを備える冷凍装置であって、
上記フィルムコンデンサは、請求項1又は2のフィルムコンデンサで構成され、
上記冷却用熱媒体は、上記二次側回路(70)を流れる熱媒体であることを特徴とするフィルムコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−300600(P2008−300600A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144690(P2007−144690)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】