説明

フィルムコンデンサ

【課題】コンデンサの小型化及び軽量化を図りながらも放熱性が良好で且つ容易に製造可能なフィルムコンデンサを提供する。
【解決手段】放熱性材料2で形成された巻芯と、この巻芯に巻回された先巻フィルム3と、この先巻フィルム3に巻回されたコンデンサフィルム4と、このコンデンサフィルム4に巻回された保護巻フィルム5とを有する扁平状の巻回体6を具備し、この巻回体6にメタリコン電極7を形成してなるフィルムコンデンサであって、扁平状の巻芯をメタリコン電極面から突出させたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フィルムを巻回してコンデンサ素子を形成したフィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
電鉄車輌用や自動車用の電力変換装置では、近年、小型化のニーズが高まっており、装置に使用されるフィルムコンデンサに対しても小型化が求められている。
【0003】
しかしながら、フィルムコンデンサを小型化すると、電極と誘電体とを密に配置することとなるため、単位体積当たりの電流量が増加してしまう。また、近年、扱われる電流量が増加傾向にあることから、小型化による電流量の増加と相まって、単位体積当たりの発熱量が増加し、コンデンサの劣化を早めることとなっていた。
【0004】
ところで、フィルムコンデンサは、通常、先巻フィルム、コンデンサフィルム、保護巻フィルムを順に巻回することで略円柱状に形成される。従って、素子表面では放熱性が良好であるが、素子中心部に近づくにつれて放熱性が低くなり、素子中心部に熱がこもり易い構造となっている。
【0005】
そこで、巻芯として金属製の心棒や中空パイプを使用し、素子中央部からの放熱の促進を図ることが行われていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−59890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記構成のフィルムコンデンサは、金属製の心棒や中空パイプ等を巻芯として使用しているため、異極間の電気的絶縁の確保を考慮せねばならず、例えば、巻芯と電極との間に絶縁体を介在させたり、精度良く電極を形成する必要がある等、製造が煩雑なものとなっていた。
【0008】
また、近年、収納効率の向上を図るために、断面円形のものに代えて、断面略小判状の扁平なフィルムコンデンサが用いられることが多いが、上記構成のフィルムコンデンサの場合、金属製の巻芯を用いているため、扁平化には強大なプレス圧力が必要となる。また、巻芯分の重量が加算されるため、軽量化を図ることができなかった。
【0009】
そこで、この発明は、上記の不具合を解消して、コンデンサの小型化及び軽量化を図りながらも放熱性が良好で且つ容易に製造可能なフィルムコンデンサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のフィルムコンデンサは、放熱性材料2で形成された巻芯と、この巻芯に巻回された先巻フィルム3と、この先巻フィルム3に巻回されたコンデンサフィルム4と、このコンデンサフィルム4に巻回された保護巻フィルム5とを有する扁平状の巻回体6を具備し、この巻回体6にメタリコン電極7を形成してなるフィルムコンデンサであって、扁平状の巻芯をメタリコン電極面から突出させたことを特徴としている。
【0011】
また、別の発明に係るフィルムコンデンサは、先巻フィルム3で形成された巻芯と、この巻芯に巻回されたコンデンサフィルム4と、このコンデンサフィルム4に巻回された保護巻フィルム5とを有する扁平状の巻回体8を具備し、この巻回体8の巻芯内に放熱性部材9を挿入するとともにメタリコン電極7を形成してなるフィルムコンデンサであって、扁平状の放熱性部材9をメタリコン電極面から突出させたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
この発明のフィルムコンデンサによれば、巻芯として放熱性材料を使用し、扁平状の巻芯をメタリコン電極面から突出させているため、放熱性材料を通じて、コンデンサ中央部の熱を良好に放熱することができる。そのため、コンデンサの小型化を図った場合でも、熱による劣化を抑制することができる。
【0013】
また、別の発明のフィルムコンデンサにおいては、巻芯内に放熱性部材を挿入し、扁平状の放熱性部材をメタリコン電極面から突出させているため、放熱性部材を通じて、コンデンサ中央部の熱を良好に放熱することができる。そのため、コンデンサの小型化を図った場合でも、熱による劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るフィルムコンデンサを示す断面図である。
【図2】同じくそのフィルムコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
【図3】本発明の異なる実施形態に係るフィルムコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明のフィルムコンデンサの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明のフィルムコンデンサ1は、図1及び図2に示すように、巻取軸10に放熱性材料2を巻回してなる巻芯と、この巻芯の外周に巻回される先巻フィルム3と、この先巻フィルム3に巻回されるコンデンサフィルム4と、このコンデンサフィルム4に巻回される保護巻フィルム5とを備え、これらを巻回して巻回体6を形成した後、この巻回体6を扁平状に形成し、さらにコンデンサフィルム4の軸方向両端部にメタリコン電極7、7を形成することで構成されている。
【0016】
放熱性材料2としては、例えば、無機フィラー含有ポリマー、セラミックシート、あるいはポリマーラミネートされた金属箔等、少なくとも表面が電気的に絶縁されており、且つ扁平形状への加工の際に、過大な圧力が不必要な軟らかさを有するものが使用される。なお、軽量化を図る場合には、金属に比べて比重の小さな材質のものを使用することが好ましいが、絶縁を確保できる場合は、金属箔であっても良い。
【0017】
先巻フィルム3は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のフィルムであって、図1や図2(b)に示すように、放熱性材料2の幅より狭幅とされている。なお、先巻フィルム3は、図1に示すように、放熱性材料2の陰となってメタリコン電極7を形成しにくい部分(放熱性材料2に近接する部分11)を補充する目的で巻回されるものであるため、コンデンサフィルム4を巻き取り易い材質のものであれば、上記材質に限らず、適宜使用可能である。
【0018】
コンデンサフィルム4は、例えば、PET、PP、PPS、PEN等からなるフィルム上にアルミニウムや亜鉛等の蒸着電極を形成することで構成されている。また、その幅は、放熱性材料2よりも狭幅で、先巻フィルム3と略同幅に形成されている。なお、コンデンサフィルム4は、上記材質に限らず、公知の種々の材質を用いて構成しても良い。
【0019】
保護巻フィルム5は、例えば、PET、PP、PPS、PEN等からなるフィルムから構成され、コンデンサフィルム4を覆い、コンデンサフィルム4を保護するものである。また、その幅は、放熱性材料2よりも狭幅で、先巻フィルム3やコンデンサフィルム4と略同幅に形成されている。なお、保護巻フィルム5は、コンデンサフィルム4を保護できるものであれば、上記材質に限らず、適宜使用可能である。また、先巻フィルム3と、コンデンサフィルム4と、保護巻フィルム5とは、それぞれ別々のフィルムで構成されても、連続する一連のフィルムで構成されても良い。連続する一連のフィルムで構成する場合には、先巻フィルム3と保護巻フィルム5に該当する部分に電極を設けなければ良い。
【0020】
次に、この発明のフィルムコンデンサ1の製造過程について図に基づいて詳細に説明する。このフィルムコンデンサ1の製造にあたっては、まず、図2(a)に示すように、巻取軸10に放熱性材料2を巻回する。そして、この巻回された放熱性材料2を巻芯として、その外周に先巻フィルム3を巻回していく。先巻フィルム3は、図2(b)に示すように、放熱性材料2より狭幅とされており、放熱性材料2の幅方向の中心と、先巻フィルム3の幅方向の中心とがほぼ一致するようにする、すなわち、先巻フィルム3の両端側から放熱性材料2が突出するようにして、先巻フィルム3を巻回する。先巻フィルム3を巻回した後、次に、図2(c)に示すように、先巻フィルム3の外周にコンデンサフィルム4を巻回する。コンデンサフィルム4を巻回した後、次に、図2(d)に示すように、コンデンサフィルム4の外周に保護巻フィルム5を巻回する。そして、保護巻フィルム5を巻回して巻回体6を形成した後、この巻回体6を図2(e)に示すように巻取軸10から抜き取り、図において上下方向からプレスすることで、図2(f)のように扁平状に形成する。巻回体6を扁平状に形成した後、コンデンサフィルム4の軸方向両端部に金属溶射してメタリコン電極7、7を形成し、フィルムコンデンサ1の製造を完了する。
【0021】
このように構成されたフィルムコンデンサ1は、巻芯として放熱性材料2が使用され、この巻芯がメタリコン電極面から突出しているため、コンデンサ中央部の熱を良好に放熱することができる。従って、コンデンサの小型化を図った場合でも、熱による劣化を抑制することができる。また、放熱性材料2として、無機フィラー含有ポリマー、セラミックシート、あるいはポリマーラミネートされた金属箔等、少なくとも表面が電気的に絶縁されており、且つ扁平形状への加工の際に、過大な圧力が不必要な軟らかさを有するものを使用しているため、何らの作業を行うことなく異極間の絶縁を確保することができるとともに、扁平状に形成する場合に、過大な圧力を加えなくて済み、製造が容易となる。また、金属に比べて軽量な材質のものを使用しているため、コンデンサの軽量化にも繋がる。
【0022】
次に、異なる実施形態のフィルムコンデンサ1について図に基づいて詳細に説明する。この異なる実施形態のフィルムコンデンサ1は、図3に示すように、巻取軸10に先巻フィルム3を巻回してなる巻芯と、この巻芯の外周に巻回されるコンデンサフィルム4と、このコンデンサフィルム4に巻回される保護巻フィルム5とを備え、これらを巻回して巻回体8を形成した後、放熱性部材9を巻芯内に挿入するとともに、巻回体8を扁平状に形成し、さらにコンデンサフィルム4の軸方向両端部にメタリコン電極7、7を形成することで構成されている。
【0023】
この異なる実施形態のフィルムコンデンサ1の製造過程は、まず、図3(a)に示すように、巻取軸10に先巻フィルム3を巻回する。そして、この巻回された先巻フィルム3を巻芯として、図3(b)に示すように、その外周にコンデンサフィルム4を巻回していく。コンデンサフィルム4を巻回した後、次に、図3(c)に示すように、コンデンサフィルム4の外周に保護巻フィルム5を巻回する。そして、保護巻フィルム5を巻回して巻回体8を形成した後、巻回体8を、図3(d)に示すように巻取軸10から抜き取り、図において上下方向からプレスすることで、図3(e)のように扁平状に形成する。この際、断面円形から断面略小判状に変形された巻芯内に放熱性部材9を挿入する。放熱性部材9は、上記実施例の放熱性材料2と同材質で、その幅が先巻フィルム3の幅より大とされた略板状に形成されており、先巻フィルム3の両端からそれぞれ先端が突出するようにして挿入される。そして、放熱性部材9を巻芯内に挿入した後、巻回体8とともに押圧して、図3(f)に示すように巻回体8と放熱性部材9とを一体化する。扁平状に形成した後、コンデンサフィルム4の軸方向両端部に金属溶射してメタリコン電極7、7を形成し、フィルムコンデンサ1の製造を完了する。
【0024】
このように構成されたフィルムコンデンサ1は、上記実施形態のフィルムコンデンサ1と同様の効果を有するとともに、予め略板状に形成された放熱性部材9を使用するため、より小さな圧力で扁平状に形成することができるといった効果を有する。
【0025】
以上に、この発明の具体的な実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施例においては、先巻フィルム3の両端側から放熱性材料2や放熱性部材9の先端が突出するように形成されていたが、いずれか一方の側からのみ、放熱性材料2や放熱性部材9を突出させても良い。この場合、両側から突出させる場合に比べて、放熱性は劣るものの、コンデンサの小型化を図ることができる。また、突出した放熱性材料2や放熱性部材9のみを、さらにプレス加工する等して表面積を大きくすることで放熱性の向上を図っても良い。
【0026】
また、先巻フィルム3から突出した放熱性材料2や放熱性部材9を、冷媒や外気に晒したり、あるいはヒートシンク等を取り付けることで放熱性の向上を図っても良い。特に、コンデンサの扁平度が高く、平坦部の面積が大きなコンデンサの場合、コンデンサが他の部材や隣接するコンデンサに接する面積が広くなり、十分に放熱を行えない場合があるが、上記に示した方法等によって、コンデンサの中心に位置する放熱性材料2や放熱性部材9を積極的に冷却することにより、良好に放熱することができる。
【0027】
また、上記実施例では、断面円形の巻回体6、8をプレス加工することで、断面略小判状に形成していたが、断面略小判状の巻取軸10を用いることで、プレス加工することなく、断面略小判状の巻回体6、8を得るようにしても良い。
【符号の説明】
【0028】
1・・フィルムコンデンサ、2・・放熱性材料、3・・先巻フィルム、4・・コンデンサフィルム、5・・保護巻フィルム、6、8・・巻回体、7・・メタリコン電極、9・・放熱性部材、10・・巻取軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱性材料(2)で形成された巻芯と、この巻芯に巻回された先巻フィルム(3)と、この先巻フィルム(3)に巻回されたコンデンサフィルム(4)と、このコンデンサフィルム(4)に巻回された保護巻フィルム(5)とを有する扁平状の巻回体(6)を具備し、この巻回体(6)にメタリコン電極(7)を形成してなるフィルムコンデンサであって、扁平状の巻芯をメタリコン電極面から突出させたことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項2】
先巻フィルム(3)で形成された巻芯と、この巻芯に巻回されたコンデンサフィルム(4)と、このコンデンサフィルム(4)に巻回された保護巻フィルム(5)とを有する扁平状の巻回体(8)を具備し、この巻回体(8)の巻芯内に放熱性部材(9)を挿入するとともにメタリコン電極(7)を形成してなるフィルムコンデンサであって、扁平状の放熱性部材(9)をメタリコン電極面から突出させたことを特徴とするフィルムコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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