説明

フィルムロール梱包用折畳式通い箱

【課題】 本発明は、紙粉発生による被包装物の汚染や水に濡れによる強度低下がなく、軽量であっても強度に優れ、食品用シュリンクフィルムなどの包装、運搬用に繰り返して使用可能なフィルムロール梱包用折畳式通い箱を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明のフィルムロール梱包用折畳式通い箱は、板状に折りたたみ可能である角筒状の筒状体と、該筒状体の側面の上端に折り目を介して連接されてなる蓋板、該側面の下端に折り目を介して連接されてなる底板からなり、最大曲げ強さが3〜15MPaの帯電防止機能を有する合成樹脂板製の折畳式の箱本体と、特定の上面中蓋および下面中蓋とからなり、前記箱本体の相対する側面には、平面視において、中心線上から前後方向にずれた位置に箱本体内部と箱本体外部とが連通しない構造の把持部が設けられ、前記蓋板および底板には面ファスナーが設けられてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムロール梱包用折畳式通い箱に関し、詳しくはフィルムロールを収納して搬送するために繰り返して使用可能な合成樹脂板製のフィルムロール梱包用折畳式通い箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品用シュリンクフィルム等のフィルムロールを包装し、搬送するために紙段ボール製の折畳箱が使用されてきた。かかる紙段ボール製の折畳箱としては、例えば、特開2001−80689号公報(特許文献1)に開示されたものがある。
【0003】
上記紙段ボール製の折畳箱は、軽くて安価であることから広く使用されてきたが、紙粉発生による被包装物の汚染の課題や水に濡れると壊れやすいという欠点がある。また、安価であるとはいっても、1回の使用での強度低下が大きかったり、汚れが付着しても洗浄できない等の理由で、繰り返して使用することが困難であるという欠点もある。
【0004】
従って、上記の課題や欠点を解決することができ、フィルムロールの包装、運搬用に繰り返して使用可能な通い箱の開発が期待されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−80689号公報
【特許文献2】特開2002−68166号公報
【特許文献3】特開平10−45163号公報
【特許文献4】特開2000−142616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、紙粉発生による被包装物の汚染が改善され、水に濡れによる強度低下がなく、軽量であっても強度に優れ、食品用シュリンクフィルムの包装、運搬用に繰り返して使用可能なフィルムロール梱包用折畳式通い箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下に示すフィルムロール梱包用折畳式通い箱が提供される。
〔1〕 上部および下部に開口部を有し、板状に折りたたみ可能である角筒状の筒状体と、
該筒状体の側面の上端に折り目を介して連接されてなる蓋板と、
該側面の下端に折り目を介して連接されてなる底板からなり、
縦方向および/または横方向の最大曲げ強さが3〜15MPaの帯電防止機能を有する合成樹脂板製の折畳式の箱本体と、
前記箱本体の内部に装着され、フィルムロール支持部材が挿入される孔が設けられた上面中蓋および下面中蓋とからなり、
前記箱本体の相対する側面には、平面視において、中心線上から前後方向にずれた位置に箱本体内部と箱本体外部とが連通しない構造の把持部が設けられ、
前記蓋板および底板には面ファスナーが設けられてなることを特徴とするフィルムロール梱包用折畳式通い箱。
〔2〕 上面中蓋および下面中蓋に切欠き部および/または穴部が形成されていることを特徴とする前記〔1〕に記載のフィルムロール梱包用折畳式通い箱。
〔3〕 箱本体の側面または蓋板に、凹凸表面を有するラベル貼り付け部が設けられていることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載のフィルムロール梱包用折畳式通い箱。
〔4〕 箱本体の側面、蓋板および/または底板の少なくとも何れかに滑り止め材が設けられていることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のフィルムロール梱包用折畳式通い箱。
〔5〕 合成樹脂板がポリオレフィン系樹脂発泡板であることを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のフィルムロール梱包用折畳式通い箱。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に係わる発明によれば、角筒状の筒状体、該筒状体に連接されてなる蓋板と底板により構成された折畳式の箱本体と、フィルムロール支持部材が取り付けられる特定の上面中蓋および下面中蓋とからなり、特定の把持部と面ファスナーが設けられているので、フィルムロールを箱本体の内部にしっかりと固定することができると共に、塵や埃等の汚染物質がフィルムロールに付着することを改善できる、持ち運び性に優れたフィルムロール梱包用折畳式通い箱が提供される。しかも、箱本体が特定の合成樹脂板からなるので、水に濡れても損傷することがなく、強度に優れ、数十回の使用に耐える折畳式通い箱が提供される。
本発明の請求項2に係わる発明によれば、上面中蓋および下面中蓋に切欠き部および/または穴部を形成することにより、上面中蓋、下面中蓋の取付や取り外しが容易な折畳式通い箱が提供される。
本発明の請求項3に係わる発明によれば、特定箇所に凹凸表面を有するラベル貼り付け部が設けられているので、それまで貼り付けられていたラベルを容易に剥がして、新たなラベルを貼り付けることができる。
本発明の請求項4に係わる発明によれば、特定の場所に滑り止め材が設けられているので、合成樹脂板製通い箱の滑り性が低下し荷崩れ防止性能に優れたものとなる。
本発明の請求項5に係わる発明によれば、合成樹脂板がポリオレフィン系樹脂発泡板からなるので、耐久性、機械的強度、加工性、洗浄性、取扱い時の安全性に優れる折畳式通い箱が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のフィルムロール梱包用折畳式通い箱について、図面を用いて詳細に説明する。
本発明のフィルムロール梱包用折畳式通い箱(以下、単に通い箱ともいう。)は、合成樹脂板製の折畳式の箱本体と、上面中蓋と、下面中蓋とからなる。該箱本体はフィルムロールを収納し、塵や埃等の汚染物質からフィルムロールを保護する機能を果たし、上面中蓋と下面中蓋はフィルムロールを固定する機能を果すと共に汚染物質の箱本体への浸入を防ぐ機能も期待できる。なお、該上面中蓋と下面中蓋は箱本体と同様に合成樹脂製であることが好ましい。
【0010】
本発明の折畳式通い箱を構成する箱本体の一例を図1、図2に示す。図1は本発明の箱本体の一例を示す斜視図であり、図2は箱本体の一例を示す展開平面図である。但し、本発明はこれらの図面に限定されるものではない。
【0011】
該箱本体1は、上部および下部に開口部2を有し、板状に折りたたみ可能である角筒状の筒状体3と、該筒状体の側面4の上端に折り目5を介して連接されてなる蓋板6と、該側面4の下端に折り目5を介して連接されてなる底板7からなる。該箱本体を構成する筒状体3は板状に折りたたみ可能なので、フィルムロールを搬送し終わった後は、板状に折り畳むことにより容易に運ぶことができるので、通い箱として取り扱い易いものである。
なお、フィルムロールの水平断面が円形であることから、筒状体3の水平断面は正方形が好ましいが、本発明においては複数のフィルムロールを梱包する場合なども想定されるため長方形であってもよい。
【0012】
筒状体3を板状に折りたたみ可能に構成するには、図2に示すように、筒状体の隣り合う各側面の間に折り目5を形成すればよい。また、4枚の筒状体の側面4a、4b、4c、4dを角筒状の筒状体として構成するには、例えば筒状体の側面4dの外側の側端に折り目5を介して綴じ代8を設け、該綴じ代8の位置と対応する筒状体の側面4aの裏側の位置とを熱接着、或いは接着剤により接合すればよい。このようにすれば、4枚の筒状体の側面4a〜4dと綴じ代8を折り目5ごとに折り曲げて、綴じ代8にて、側面4aと側面4dとが折り目5を介して連接され、折りたたみ可能な角筒状の筒状体3を形成することができる。また、図2に示すように、筒状体の側面4dの外側の側端に折り目5を介して綴じ代8を設け、該綴じ代8の表側に面ファスナー9aを設け、面ファスナー9aが取り付けられた位置と対応する、筒状体の側面4aの裏側の位置に面ファスナー9bを設けてもよい。
【0013】
前記筒状体の側面4の上端には、折り目5を介して蓋板6が設けられており、側面4の下端には、折り目5を介して底板7が設けられている。具体的には、例えば図2に示すように、4枚の筒状体の側面4a、4b、4c、4dの各々に折り目5を介して、同一形状の蓋板6a、6b、6c、6dが設けられていることが好ましく、蓋板6aと蓋板6cを倒すと筒状体の上面が覆われ、蓋板6bと蓋板6dを倒すと筒状体の上面が重畳して覆われるように構成されていることが好ましい。底板7a、7b、7c、7dについても同様である。
但し、本発明は図2に限定されるものではなく、筒状体の上面、下面を閉鎖することができさえすれば、4枚の筒状体の側面の各々に蓋板が設けれれていなければならないということはなく、各蓋板の形状は異なっていてもよい。
【0014】
本発明の箱本体に形成されている折り目は、V字、U字などの凹溝を形成するために熱刃による溶融加工、切削刃による切削加工、押込み刃による押圧成形など周知の方法により設けることができる。また、合成樹脂板素材が特に発泡板からなる場合には、折り目形成方法の好ましい態様として、例えば、折り目形成押込み刃の両側部に、押込み刃に密着してゴム弾性体が配置されたものを使用することにより、折り目形成に伴う周囲の発泡板の引き込みが抑制され仕上りが良好な折り目が形成される。尚、折れ目が複数条からなる場合には、最も外側に位置する折り目形成押込み刃の両外側にゴム弾性体を押込み刃に密着して配置すれば、各押込み刃間にはゴム弾性体を配置しなくても差し支えない。また、折り目は、例えば、折り目が三条の凹溝からなる場合には、真中の凹溝を最も深くすることが好ましい。そのように形成することにより、真中の凹溝を中心として真っ直ぐに折り込むことができ、仕上りの良好な折り曲げが容易となる。折り目の深さは、使用される合成樹脂板の厚みとの関係で決められるが、一般的には、深さが深いほど折り曲げは容易である一方で折り目の引裂強度が低下し、折り目の残存厚みが0.7mmを下回ると、折り目凹溝部の引裂強度が大きく低下する虞がある。上記の折り目は、筒状体の各側面同士の連接部、蓋板と側面との連接部、更に底板と側面との連接部に形成される。このような折り目は、箱本体を合成樹脂板から抜き加工すると同時に押込み刃を使用した押圧成形などにより所定の位置に形成することができる。また、上記折り目は一条の凹溝でもよいが、箱本体の大きさ、使用される合成樹脂板の厚みなどにもよるが、近接する複数条の凹溝、一般的には二乃至五条で構成されていることが、折込みを容易にし、折り目に歪が発生し難いので凹溝の耐久性を向上することができるので好ましい。
【0015】
前記蓋板6と底板7の各々には、面ファスナー10が設けられており、蓋板6同士、底板7同士を互いに重畳させ面ファスナー10同士を圧接し固着させることにより、筒状体3の上面、下面をそれぞれ閉鎖することができる。
具体的には、例えば図2に示すように、蓋板6bの表側に面ファスナー10aを設け、該面ファスナー10aが蓋板6bに設けられた位置に対応させて、蓋板6aと蓋板6cの裏側に面ファスナー10bを設け、蓋板6dの表側に面ファスナー10cを設け、該面ファスナー10cが蓋板6dに設けられた位置に対応させて、蓋板6aと蓋板6cの裏側に面ファスナー10dを設けることが好ましい。底板7a、7b、7c、7dについても同様に、面ファスナー10a、10b、10c、10dを設けることが好ましい。
但し、本発明は図2の面ファスナーの取付け方に限定されるものではなく、蓋板6、底板7を閉じて面ファスナー同士を固着させることさえできれば、面ファスナーはどのように設けられていてもよい。
【0016】
本発明の箱本体3の相対する側面4bと側面4dには、図1に示すように、箱本体内部と箱本体外部とが連通しない構造の把持部11が設けられており、該把持部11は、平面視において、中心線L−L上から前後方向にずれた位置に設けられている。かかる把持部が設けられていると、フィルムロールを梱包した場合に、対向する側面に設けられた一対の把持部において、一方の把持部が中心線L−L上よりも後方に位置し、他方の把持部を中心線L−L上よりも前方に位置させる形態となるため、箱本体を持ち運ぶのに便宜である。また、把持部は中心線上から前後方向にずれた位置に設けられているので、把持部内面がフィルムロール強く接触することがなく、フィルムロールを損傷する虞がない。また、把持部11は箱本体内部と箱本体外部とが連通しない構造、即ち、把持部には指を挿入する貫通穴がないので、塵や埃等の汚染物質が把持部11を通って箱本体内部に侵入することがない。
【0017】
把持部の好ましい一例としては、図2に示すように、側面4bと側面4dの上方部に適当な大きさの取付孔12を開け、図3に示すような把持具13の外側部13aを、孔12の内側から外側に出して、把持具13の外側部13aと内側部13bを折り曲げ部14から折り曲げて、嵌め合せ部15aと嵌め合せ部15bを嵌め合わせることが挙げられる。
但し、本発明の把持部は箱本体内部と箱本体外部とが連通しない構造のものであれば図3に示す把持具13に限定されるものではない。
【0018】
前記箱本体3の側面4または蓋板6に、凹凸表面を有するラベル貼り付け部21が設けられていることが好ましい。かかるラベル貼り付け部が設けられていると、それまで貼り付けられていたラベルを容易に剥がして、新たに収納するフィルムロールの品番号、規格、製造年月日等を記載したラベルを貼り付けることができる。該ラベル貼り付け部としては、エンボス加工を施したポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂シートを使用することができる。また、通い箱を構成する合成樹脂板を押圧することなどにより直接合成樹脂板の表面を凹凸表面としラベル貼り付け部を設けることもできる。
尚、図1、図2に示す例では、側面4cの左上方部にラベル貼り付け部が設けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、蓋板6を閉じた状態で、ラベルの表示を確認することさえできれば、側面4または蓋板6のいずれかの位置に適当な大きさで設けられていればよい。
【0019】
前記箱本体3の側面4、蓋板6および/または底板7の少なくとも何れかに滑り止め材22が設けられていることが好ましい。滑り止め材22が設けられていると、折畳式通い箱を段積みした際に、上段の折畳式通い箱が滑り落ちることを防止することができ荷崩れ防止性能が高まる。該滑り止め材は、ゴム、合成樹脂などの弾性材料を所定の位置に点着する方法、或いは、所定の位置にコーティングする方法により設けることができる。また、滑り止め材として弾性材料からなる発泡体を採用することもできる。
【0020】
本発明で用いられる箱本体は、縦方向および/または横方向の最大曲げ強さが3〜15MPaの合成樹脂板からなる。該合成樹脂板としては、合成樹脂製段ボールや合成樹脂発泡板が挙げられる。最大曲げ強さが3MPa未満の場合は、機械的強度が不足するために、フィルムロール用の通い箱として使用することができない虞がある。一方、15MPa超の場合は、合成樹脂発泡板や該段ボールを構成する樹脂量が多くなるため軽量性が不十分なものとなる虞があるため、縦方向または横方向のどちらか一方の最大曲げ強さが3〜15MPaで他方の最大曲げ強さが15MPaを超えないもの、或いは、縦方向および横方向の最大曲げ強さが3〜15MPaであるものが好ましい。かかる観点から、該合成樹脂板の縦方向および/または横方向の最大曲げ強さは3〜13MPaが好ましく、3〜10MPaがより好ましい。
【0021】
本明細書において、最大曲げ強さとは、試験片寸法を長さ100mm、幅25mm、厚みを合成樹脂板全厚みとし、支点間距離を50mm、試験速度を10mm/分、加圧くさび半径及び支持台半径を5mmとした以外は、JIS K7203(1982)の硬質プラスチックの曲げ試験方法に準拠して最大荷重に基づき算出される最大曲げ強さである。
【0022】
箱本体を構成する合成樹脂板としては、従来公知の合成樹脂製段ボールや押出発泡法により得られる合成樹脂発泡板が挙げられる。また、該合成樹脂板には、単層のものに限らず、合成樹脂製段ボールや合成樹脂発泡板の両面や片面に合成樹脂からなる樹脂層が積層されたものも包含される。なお、合成樹脂板としては、合成樹脂製段ボールに比べて、洗浄性、縦方向と横方向の最大曲げ強さの均一性、通い箱の蓋板の開け閉め時の蓋板端部での指先の切傷防止性等の点において優れる合成樹脂発泡板がより好ましい。
【0023】
また、上記合成樹脂板の両面又は片面に必要に応じて設けられる樹脂層は、従来公知の方法により積層一体化できる。具体的には、熱融着あるいは接着剤などを用いて樹脂層を積層する方法、共押出法にて樹脂層を積層することもできる。該樹脂層を構成する樹脂は種々の合成樹脂が使用し得るが、合成樹脂板を構成する樹脂と同質の樹脂を使用することが好ましい。例えば、箱本体がポリプロピレン系樹脂からなる場合、樹脂層もポリプロピレン系樹脂からなることが好ましい。
【0024】
本発明において前記合成樹脂板は、重量物であるフィルムロールを梱包するための基本性能を確保すると共に複数回の使用、好ましくは10回以上のリユース性能を確保する上で、縦方向および/または横方向の最大曲げ強さが3〜15MPaのものでなければならない。なお、上記複数回の使用の上限回数は多ければ多いほうが好ましいが概ね30回程度である。
該合成樹脂板の最大曲げ強さの調整は、合成樹脂板の基材樹脂の選択、合成樹脂板が合成樹脂製段ボールの場合はリブの形状,厚み,該段ボールを構成している合成樹脂面材の厚み,樹脂層の積層厚み、合成樹脂板が合成樹脂発泡板の場合は発泡倍率、厚み、気泡径、樹脂層の積層厚み等により調整することができる。
【0025】
前記合成樹脂板を構成する基材樹脂としては、本発明の目的効果が達成できる範囲のものであれば如何なるものでも良いが、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂が加工性等から好ましい。
特に、耐久性、機械的強度、加工性に優れることから、プロピレン単独重合体、プロピレン共重合体、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンおよび/または直鎖状低密度ポリエチレンとの混合物等のポリオレフィン系樹脂が特に好ましい。なお、上記プロピレン共重合体としては、プロピレンと共重合可能な他のオレフィンとの共重合体で、このようなオレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ブテン、3−メチル−1−ヘキセンなどの炭素数2〜10のオレフィンが例示される。また、これらの共重合体はランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよく、さらには二元共重合体のみならず三元共重合体であってもよい。また、これらの重合体は単独で、または2種以上の混合物として使用することができる。
【0026】
また、上記合成樹脂板を構成する基材樹脂にエラストマーを混合することにより脆さを改善することができる。上記エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合ゴム、水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合ゴム、スチレン−エチレン−プロピレン共重合ゴム、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合ゴム等のスチレン系エラストマー、エチレン−プロピレンランダム共重合ゴム、エチレン−ブチレンブロック共重合ゴム、エチレン−オクテンランダム共重合ゴム等のエチレンと他のオレフィンとの共重合ゴム等のオレフィン系エラストマーが挙げられる。これらのエラストマーのうち、オレフィン系エラストマーが耐折性や低温耐衝撃性などの点から好ましい。なお、該エラストマーの含有量は、好ましくは1〜30重量%である。
【0027】
また、上記合成樹脂板を構成する基材樹脂にタルク、シリカ等の無機充填剤、酸化防止剤、滑剤、紫外線防止剤、難燃剤、抗菌剤等を添加することもできる。
なお、中蓋が合成樹脂製の場合には、上記の合成樹脂板を構成する基材樹脂と同様のものを使用することができる。
【0028】
前記箱本体を構成する合成樹脂板の厚さは、通常、厚さ2〜10mmであり、折り目のヒンジ特性、箱本体の機械的強度等を考慮し、3〜8mmが好ましく、3〜6mmがより好ましい。
また、合成樹脂板の坪量は、軽量性、機械的強度を考慮し、400〜2000g/mが好ましく、500〜1800g/mが更に好ましく、700〜1500g/mが特により好ましい。特に、合成樹脂板が発泡板の場合の見かけ密度は、通常0.07〜0.60g/cm、好ましくは0.09〜0.45g/cmのものが使用される。
【0029】
本発明で用いられる箱本体は、塵や埃等の汚染物質の付着を防ぐために、帯電防止機能が付与されている。帯電防止機能の付与方法としては、帯電防止剤を合成樹脂板に塗布する方法、帯電防止剤を合成樹脂板を構成する基材樹脂に練り込む方法等が挙げられる。また、帯電防止剤が含有されている樹脂層を積層する方法が合成樹脂板の機械的強度向上効果や折れ目耐折強度、折り曲げ易さなどのヒンジ特性向上効果も同時に期待できることから特に好ましい。また、本発明の折畳式通い箱は、洗浄して再利用する場合も想定されること、帯電防止剤のブリードアウトにより被包装物を汚染することは好ましくないことから、帯電防止剤の種類としては、永久帯電防止剤と称されるポリマー型の帯電防止剤を使用することが好ましい。該ポリマー型の帯電防止剤としては、金属イオンとしてカリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群より選ばれたアルカリ金属を含むアイオノマー樹脂、ポリエーテルエステルアミドやポリエーテルを主成分とする親水性樹脂等が好ましく例示される。なお、上記帯電防止機能を有するとは、JIS K6911(1995)にて測定される合成樹脂板の表面固有抵抗率が、1.0×1013(Ω/□)以下の値、好ましくは1.0×10〜8.0×1012(Ω/□)の値を示すことを意味する。上記表面固有抵抗率は具体的には、合成樹脂板から切り出した試験片(縦100mm、横100mm、厚み:合成樹脂板の厚み)を23℃、湿度50%の雰囲気下に24時間放置して状態調整をした後に、タケダ理研工業(株)製「TR8601 HIGH MEGOHM METER」等を使用して印加電圧500Vの条件で電圧印加を開始してから1分後の表面固有抵抗率として測定される値である。
【0030】
本発明の折畳式通い箱は、前述した箱本体と、該箱本体の内部に装着され、フィルムロール支持部材が挿入される孔が設けられた上面中蓋、およびフィルムロール支持部材が挿入される孔が設けられた下面中蓋とからなる。上面中蓋と下面中蓋は、製造が容易であることを考慮すると同一形状であることが好ましい。但し、異なる形状であってもよい。上面中蓋、下面中蓋の好ましい例を図4、図5に示す。
なお、図4、図5は上面中蓋(下面中蓋)の平面図であり、図3において、31は上面中蓋を、32は下面中蓋を、33は中央部に設けられた孔をそれぞれ示す。
【0031】
上記上面中蓋、下面中蓋は、支持部材と共にフィルムロールを固定するという機能を有することから、箱本体を構成する筒状体の横断面と同一形状で、筒状体に嵌め込むように装着できる形状であることが好ましい。該上面中蓋、下面中蓋は合成樹脂からなることが好ましく、前述した箱本体と同一の合成樹脂板であることが更に好ましいが、異なる素材で構成されていても良い。
【0032】
図4、図5において、上面中蓋31(下面中蓋32)の中央には、孔33が設けられており、この孔33にフィルムロール支持部材35(以下、単に支持部材ともいう。)が挿入され、さらに該支持部材35はフィルムロールの巻き芯の孔に嵌入される。支持部材35の形状は、フィルムロールの巻き芯の孔に嵌入させることさえできれば特に制限はないが、図6に示すように、つば部36が設けられていることが好ましい。つば部36が設けられている支持部材35は、上面中蓋31(下面中蓋32)をフィルムロールに容易に固定することができる。
【0033】
上面中蓋31(下面中蓋32)には、図4に示すように、切欠き部37が設けられていることが好ましく、また図5に示すように、穴部38が設けられていることが好ましい。切欠き部37及び/又は穴部38が設けられていると、フィルムロールを箱本体に収納する際に、上面中蓋31(下面中蓋32)を容易に嵌め込むことができ、フィルムロールを箱本体から取り出す際に、上面中蓋31(下面中蓋32)を容易に取り外すことができる。特に、穴部38が設けられていると、中蓋をフックにかけて保管することができるため梱包、開梱時の作業性を高めることができる。
フィルムロールを箱本体に1本梱包する場合は、図4、図5に示した通り上面中蓋および下面中蓋の中央部に孔が設けられていることが好ましいが、複数本のフィルムロールを箱本体に梱包する場合は、収納効率、安定性、安全性を顧慮して上面中蓋および下面中蓋に設けられている孔の位置を調整する必要がある。
【0034】
次に、本発明の折畳式通い箱を用いて、フィルムロールを包装する方法の一例を図7を用いて説明する。図7は、前記箱本体3、上面中蓋31、下面中蓋32、フィルムロール支持部材35、更に包装袋39を用いてフィルムロール40を包装した一例を示す縦断面図である。
【0035】
フィルムロール40はポリエチレン製の包装袋39で覆われており、塵や埃等の汚染物質から保護されている。下面中蓋32は下面中蓋の孔33の中心とフィルムロール3の中心が略一致するように、フィルムロール40の下面に宛がわれており、その下から支持部材35が下面中蓋の孔33に挿入され、更にフィルムロール40の巻き芯の孔41に嵌入されている。このように、フィルムロール40の下部は、支持部材35と下面中蓋32で固定されており、箱本体3の下部は、底板7を閉じることにより閉鎖されている。
上面中蓋31は、上面中蓋の孔33の中心とフィルムロール3の中心が略一致するように、フィルムロール37の上面に宛がわれて、その上から支持部材35が上面中蓋の孔33に挿入され、更にフィルムロール40の巻き芯の孔41に嵌入されている。このように、フィルムロール40の上部は、支持部材35と上面中蓋31で固定されており、箱本体3の上部は、蓋板6を閉じることにより閉鎖されている。
【0036】
本発明の折畳式通い箱によれば、上述したように、フィルムロールに汚染物質が付着することを防止することができ、さらに上面中蓋、下面中蓋、持部材を用いることによりしっかりと固定することができる。しかも、箱本体が丈夫な合成樹脂板で構成されており、容易には損傷することがないので、複数回にわたり通い箱として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の箱本体の一例を示す斜視図である。
【図2】箱本体の一例を示す展開平面図である。
【図3】(a)把持具を内側から見た斜視図である。(b)把持具を外側から見た斜視図である。
【図4】上面中蓋(下面中蓋)の好ましい例を示す平面図である。
【図5】上面中蓋(下面中蓋)の好ましい他の例を示す平面図である。
【図6】支持部材の好ましい一例を示す斜視図である。
【図7】本発明の折畳式通い箱によりフィルムロールが包装された一例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 箱本体
2 開口部
3 筒状体
4 側面
4a、4b、4c、4d 各々の側面
5 折り目
6 蓋板
6a、6b、6c、6d 各々の蓋板
7 底板
7a、7b、7c、7d 各々の底板
8 綴じ代
9a、9b 面ファスナー
10 面ファスナー
10a、10b、10c、10d 各々の面ファスナー
11 把持部
12 取付孔
13 把持具
13a 把持具の外側部
13b 把持具の内側部
14 折り曲げ部
15a、15b 嵌め合せ部
21 ラベル貼り付け部
22 滑り止め材
31 上面中蓋
32 下面中蓋
33 中央部に設けられた孔
35 フィルムロール支持部材
36 つば部
37 切欠き部
38 穴部
39 包装袋
40 フィルムロール
41 フィルムロールの巻き芯の孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部および下部に開口部を有し、板状に折りたたみ可能である角筒状の筒状体と、
該筒状体の側面の上端に折り目を介して連接されてなる蓋板と、
該側面の下端に折り目を介して連接されてなる底板からなり、
縦方向および/または横方向の最大曲げ強さが3〜15MPaの帯電防止機能を有する合成樹脂板製の折畳式の箱本体と、
前記箱本体の内部に装着され、フィルムロール支持部材が挿入される孔が設けられた上面中蓋および下面中蓋とからなり、
前記箱本体の相対する側面には、平面視において、中心線上から前後方向にずれた位置に箱本体内部と箱本体外部とが連通しない構造の把持部が設けられ、
前記蓋板および底板には面ファスナーが設けられてなることを特徴とするフィルムロール梱包用折畳式通い箱。
【請求項2】
上面中蓋および下面中蓋に切欠き部および/または穴部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルムロール梱包用折畳式通い箱。
【請求項3】
箱本体の側面または蓋板に、凹凸表面を有するラベル貼り付け部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルムロール梱包用折畳式通い箱。
【請求項4】
箱本体の側面、蓋板および/または底板の少なくとも何れかに滑り止め材が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムロール梱包用折畳式通い箱。
【請求項5】
合成樹脂板がポリオレフィン系樹脂発泡板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフィルムロール梱包用折畳式通い箱。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−36288(P2006−36288A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220314(P2004−220314)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【Fターム(参考)】