説明

フィルム剥離装置

【課題】 フィルム剥離中に基板の端部の折れ曲がりが発生しないフィルム剥離装置を提供する。
【解決手段】 補助剥離装置4での補助剥離後に、クランプ部10の先端に露出部91が到来した時に、プリント配線基板90の送りを停止し、露出部91をクランプ部10によりクランプし、クランプ部10を保持しているスライド部11を搬送方向にスライドさせ、粘着ローラ2を回転させてフィルム93を貼り付かせて、フィルム93の先端部分を剥離する。そして露出部91の把持を解放し、搬送ローラ55を駆動し、粘着ローラ2も回転駆動して、フィルム93の剥離を継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プリント配線基板等のドライフィルムフォトレジスト等の表面に装着されているポリエステルカバーフィルム等のフィルムを剥離するためのフィルム剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板などに回路を形成する際に、IC製造技術に用いられているリソグラフィ法が近年用いられるようになってきている。その際に基板上に塗布されるフォトレジストとしてドライフィルムフォトレジストが使用されるようになってきている。そして、該フォトレジストの上にポリエステル製の保護用のカバーフィルムが貼着されるのが普通である。
このフィルムは、フォトレジスト上に回路パターンを焼き付ける露光工程の後に剥す必要があり、従来からこの種のフィルムを自動的に効率よく剥離する装置の開発が試みられている。
その中の1つに本願出願人により提案された特開2002−211836号に開示されたものが知られている。この発明では、表面に凹凸が設けられたローレットローラによりフィルム端部を引っかけて部分的に剥離部を形成し、ここから基板を搬送ローラにより搬送しつつ粘着ローラにより剥離を行う構成になっている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−211836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、近年プリント配線基板の厚さが減少する傾向があり、また粘着ローラの粘着力にバラツキがあることから、フィルム剥離中に基板の端部が折れ曲がったり、装置内に巻き込まれたりする事故が発生する問題があった。
本発明は上記従来技術の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも一面にフィルムが貼着され、該フィルム貼着面の少なくとも一端部にはフィルムが貼着されていない露出部を有する対象物の該フィルムを剥離するためのフィルム剥離装置であって、前記露出部を掴むクランプ機構と、前記フィルムを粘着する粘着体と、前記クランプ機構を移動させ、前記粘着体に粘着するフィルムを対象物から剥がす、移動装置と、 を備えたことを特徴とする。
クランプ機構により対象物を引っ張るため、対象物の折れ曲がり等を防止でき、安定したフィルム剥離が可能である。
また請求項2の発明は、少なくとも一面にフィルムが貼着され、該フィルム貼着面の少なくとも一端部にはフィルムが貼着されていない露出部を有する板状体の該フィルムを剥離するためのフィルム剥離装置であって、前記板状体を搬送する搬送装置と、該搬送装置により搬送される板状体の前記フィルムに粘着する回転可能な粘着ローラと、該搬送装置により搬送される板状体の前記露出部を掴むクランプ機構と、前記クランプ機構を前記搬送方向に移動させる移動装置と、を備え、前記移動装置によるクランプ機構の移動により、前記粘着ローラの回転と共に該粘着ローラに粘着するフィルムを対象物から剥がす、ことを特徴とする。
上記構成の場合も同様に、クランプ機構により板状体を引っ張るため、板状体の折れ曲がり等を防止でき、安定したフィルム剥離が可能である。
前記対象物及び板状体として、プリント配線基板を最も典型的なものとして挙げることができる。
また前記クランプ機構の移動による前記フィルムの剥離は、その端部から所定長さのみ剥がせば良く、全てをクランプ機構による剥離とする必要はない。
【発明の効果】
【0006】
本発明のフィルム剥離装置によれば、対象物の折れ曲がり等を防止できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2において、プリント配線基板90は搬入コンベア50により装置本体Aに搬入され、ここでフィルム93の剥離が行われ、搬出コンベア51により搬出されて、次工程に送られるように構成されている。
搬入コンベア50と搬出コンベア51は複数の搬送ローラ55を備えており、搬送ローラ55を回転駆動して、その上に載置されたプリント配線基板90を搬送するように構成されている。
【0008】
装置本体Aの搬入コンベア50側には補助剥離装置4が設けられており、フィルム端部94の表面にローレットローラなどにより凹凸を形成し、剥離し易い剥離開始部を形成するようになっている。この補助剥離装置4としては、例えば特開2002−211836号公報に開示されたローレットローラなどの構成を採用することが可能である。
【0009】
装置本体Aは粘着ローラ2を備えており、この粘着ローラ2によりフィルム93を剥がすように構成されている。粘着ローラ2はプリント配線基板90の表裏に対向するように1対設けられており、プリント配線基板90の表裏に貼着されたフィルム93を剥がすことが可能になっている。剥がされたフィルム93は平ベルト装置3により排出される。
粘着ローラ2は図2に示すように、プリント配線基板90の幅方向に4個設けられており、表裏で合計8個設けられている。
【0010】
平ベルト装置3は、粘着ローラ2に同軸に設けられた平ベルトプーリ31を有し、この平ベルトプーリ31と上方に設けられた他の平ベルトプーリ31との間に平ベルト33が巻き掛けられている。また粘着ローラ2の搬出コンベア51側に平ベルトプーリ32が設けられ、同様に上方に設けられた平ベルトプーリ32との間に平ベルト34が巻き掛けられている。この平ベルト33と平ベルト34により粘着ローラ2で剥がされたフィルム93を挟んで、排出するようになっている。平ベルト33と平ベルト34は幅方向に複数本設けられている。
上記構成の平ベルト装置3は同様にプリント配線基板90の表裏に設けられている。
【0011】
粘着ローラ2の搬出コンベア51側にクランプ装置1が設けられている。クランプ装置1は装置本体Aに装着され、装置本体Aに対して上下方向に昇降可能な基台12を有している。そして基台12にはプリント配線基板90搬送方向にスライド可能にスライド部11が設けられ、このスライド部11の先端にクランプ部10が設けられている。
基台12は図3に示すように幅方向の両端に一対設けられ、この基台12、12間にスライド部11がプリント配線基板90の搬送方向及び逆方向にスライド可能に設けられている。スライド部11の幅方向に複数のクランプ部10(この実施形態では5個)が設けられ、スライド部11と共にスライド可能になっている。
粘着ローラ2とクランプ部10の幅方向位置は互いに干渉しない位置に配置されており、5個のクランプ部10の間に4個の粘着ローラ2が位置するようになっている。
【0012】
クランプ部10は図4乃至図7に示すように、粘着ローラ2の搬出コンベア51側に位置するように設けられており、プリント配線基板90の先端の露出部91を把持するようになっている。クランプ部10の掴み動作を行うための機構は、種々のものが可能であり、この実施形態ではペンチ形状の一対の回動片19により露出部91を表裏から挟んで把持するようになっている。
【0013】
図4に示すように、プリント配線基板90にはフォトレジスト92が被覆され、更にその上にフィルム93が貼着されているが、プリント配線基板90の先端部にはフォトレジスト92とフィルム93がない露出部91が形成される。クランプ部10はこの露出部91を掴むため、プリント配線基板90に損傷などを与える危険がない。
【0014】
クランプ部10により露出部91を掴んだら、スライド部11を搬送方向にスライドさせてプリント配線基板90を引っ張って、移動させる。これにより、図7に示すようにフィルム93は粘着ローラ2に張り付いてプリント配線基板90から剥がされる。
また、プリント配線基板90はクランプ部10により引っ張られるから、プリント配線基板90が薄くても、また粘着ローラ2の粘着力にバラツキがあっても、フィルム剥離中にプリント配線基板90の端部が折れ曲がることがなく、プリント配線基板90が装置内に巻き込まれたりする事故の発生を防止することが可能である。
クランプ装置1のスライド長さは150mm程度又はそれ以上で良い。0.05mm未満の薄いプリント配線基板90であっても、150〜180mm程度引っ張れば、その後は搬送ローラ55の送りのみで安定した剥離が行える。
クランプ部10とスライド部11は所定距離スライド後、基台12の上昇により上方に待避するように構成されている。
【0015】
剥がされたフィルム93は、平ベルト装置3により排出される。プリント配線基板90の表面側(上側)のフィルム93は、図2に示すように平ベルト33、34により上方のフィルム収納ダクト61に運搬され、送風装置(図示せず)による送風によりフィルム収納ダクト61内を移動してフィルム収納カゴ60に回収される。
一方、プリント配線基板90の裏側(下側)のフィルム93は、平ベルト装置3によりフィルム収納カゴ60に落とされて回収される。
【0016】
なお、搬入コンベア50と搬出コンベア51の搬送ローラ55と粘着ローラ2、は駆動装置(図示せず)により駆動されるようになっており、その周速は同じになっている。またクランプ装置1のスライド速度もこの周速と同一に調整されている。
また、上記実施形態ではクランプ装置1は幅方向に5つ設けてあり、プリント配線基板90の幅に合わせて使用するクランプ装置1の数を増減するように構成しているが、その設置数の増減は適宜可能である。また、クランプ装置1の幅を広くすることも可能であり、プリント配線基板90の折れ曲がり防止の点ではプリント配線基板90と同幅とすることが好ましい。上記実施例では、粘着ローラ2との干渉を避けるために、分割して5個設けている。
【0017】
次に動作を説明する。
搬入コンベア50によりプリント配線基板90を搬送し、図1に示す補助剥離装置4で一度停止し、補助的な剥離を実行する。この動作の詳細は例えば特開2002−211836号公報に開示されている。
補助剥離後に、図5に示すように搬入コンベア50で更にプリント配線基板90を送り、クランプ部10の先端に露出部91が到来した時に、プリント配線基板90の送りを停止し、露出部91をクランプ部10によりクランプする(図6)。そして、クランプ部10を保持しているスライド部11を搬送方向に150〜180mm程度スライドさせ、同時に粘着ローラ2を回転させ、粘着ローラ2にフィルム93を貼り付かせて、フィルム93の先端部分を剥離する。
【0018】
所定距離スライドさせたら、クランプ部10をアンクランプして、露出部91の把持を解放し、基台12を上昇させてクランプ部10を待避させる。そして、搬入コンベア50と搬出コンベア51の搬送ローラ55を駆動し、粘着ローラ2も回転駆動して、フィルム93の剥離を継続する。
プリント配線基板90が粘着ローラ2を通過した時点で、フィルム93の剥離は完了し、プリント配線基板90はそのまま搬送ローラ55により搬送されて次工程に送られる。
剥離したフィルム93は平ベルト装置3により排出される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態を示す正面図。
【図2】本発明の一実施形態を示す右側面図。
【図3】本発明の一実施形態を示す平面図。
【図4】本発明の一実施形態におけるクランプ装置1の拡大図。
【図5】本発明の一実施形態の動作説明図。
【図6】本発明の一実施形態の動作説明図。
【図7】本発明の一実施形態の動作説明図。
【符号の説明】
【0020】
1:クランプ装置、2:粘着ローラ、3:平ベルト装置、4:補助剥離装置、9:制御装置、10:クランプ部、11:スライド部、12:基台、19:回動片、31:平ベルトプーリ、32:平ベルトプーリ、33:平ベルト、34:平ベルト、50:搬入コンベア、51:搬出コンベア、55:搬送ローラ、60:フィルム収納カゴ、61:フィルム収納ダクト、90:プリント配線基板、91:露出部、92:フォトレジスト、93:フィルム、94:フィルム端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一面にフィルムが貼着され、該フィルム貼着面の少なくとも一端部にはフィルムが貼着されていない露出部を有する対象物の該フィルムを剥離するためのフィルム剥離装置であって、
前記露出部を掴むクランプ機構と、
前記フィルムを粘着する粘着体と、
前記クランプ機構を移動させ、前記粘着体に粘着するフィルムを対象物から剥がす、移動装置と、
を備えたことを特徴とするフィルム剥離装置。
【請求項2】
少なくとも一面にフィルムが貼着され、該フィルム貼着面の少なくとも一端部にはフィルムが貼着されていない露出部を有する板状体の該フィルムを剥離するためのフィルム剥離装置であって、
前記板状体を搬送する搬送装置と、
該搬送装置により搬送される板状体の前記フィルムに粘着する回転可能な粘着ローラと、
該搬送装置により搬送される板状体の前記露出部を掴むクランプ機構と、
前記クランプ機構を前記搬送方向に移動させる移動装置と、を備え、
前記移動装置によるクランプ機構の移動により、前記粘着ローラの回転と共に該粘着ローラに粘着するフィルムを対象物から剥がす、
ことを特徴とするフィルム剥離装置。
【請求項3】
前記対象物が、プリント配線基板である、
請求項1のフィルム剥離装置。
【請求項4】
前記板状体が、プリント配線基板である、
請求項2のフィルム剥離装置。
【請求項5】
前記クランプ機構の移動により、前記フィルムがその端部から所定長さのみ剥がされる、
請求項1又は2又は3又は4のフィルム剥離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−254030(P2007−254030A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76622(P2006−76622)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(300091670)株式会社アドテックエンジニアリング (23)
【Fターム(参考)】