説明

フィルム包装弁当

【課題】ご飯とおかずをファストフード感覚で食することができる新感覚の弁当であって、簡易な包装で環境にも優しい弁当を提供する。
【解決手段】
成形されたご飯の表面に、おかずが当接された状態で、フィルム包装材に入れて、真空包装してフィルム包装弁当を得る。前記おかずが、澱粉、増粘剤、ゲル化剤から選ばれた少なくとも1種を添加されて、汁分の流動性を低減されたものであることが好ましい。また、前記おかずが、フライ、天ぷら、唐揚げ、ハンバーグ、牛丼の具、親子丼の具、カツ丼の具、中華丼の具、焼肉、及びシチューから選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。また、前記おかずが、肉味噌、カレー、半熟たまごから選ばれた1種のソースを付与されたものであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易な包装で環境に優しいフィルム包装弁当に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スーパーやコンビニなどで販売されている弁当や惣菜は、合成樹脂製のトレイにご飯やおかずを収めて、その上から透明な蓋やラップフィルムにより包装して、外部から商品が見えるようにして陳列して販売されている。消費者は、中身を見ながら好みのものを購入して、家庭に持ち帰って電子レンジであたためるなどしてすぐに食することができるので、便利であり、弁当や惣菜の包装形態、販売方法としてよく利用されている。
【0003】
しかしながら、このように販売されている弁当や惣菜では蓋やトレイがゴミとなって環境を汚すという問題があった。それに対して、下記特許文献1には、惣菜等の食品の包装としてノートレイタイプの包装体を利用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−301341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1は、さまざまな惣菜のために利用できる包装体を提供するものではあるが、中身とされる惣菜としては従来のものが提供されるに過ぎなかった。また、惣菜としてご飯をおかずとを含むものに利用することは記載されていない。
【0006】
本発明の目的は、ご飯とおかずをファストフード感覚で食することができる新感覚の弁当であって、簡易な包装で環境にも優しい弁当を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、成形されたご飯の表面に、おかずが当接された状態で、フィルム包装材に入れられて、真空包装されていることを特徴とするフィルム包装弁当を提供するものである。
【0008】
上記発明によれば、真空包装されることによって、ご飯とおかずとが密着し、1つの固まりとなって包装され、搬送中に崩れることもない。そして、包装材を開封して、その開口部から、固まったご飯とおかずを少しずつ押し出しながら、箸なしで、おにぎりのように手で持って食べることができる。また、おかずに汁分があっても、フィルム包装材で包装されているので、汁分がたれることがない。更に、食べ終わった後の廃材がフィルム包装材だけとなり、弁当箱等のかさばる廃材が発生しないので、環境を汚しにくくなる。
【0009】
本発明のフィルム包装弁当においては、前記おかずが、澱粉、増粘剤、ゲル化剤から選ばれた少なくとも1種を添加されて、汁分の流動性を低減されたものであることが好ましい。
【0010】
これによれば、澱粉、増粘剤、ゲル化剤から選ばれた少なくとも1種により汁分の流動性が低減されているので、おかずの汁分がご飯の内部までしみこんでしまうことを軽減でき、包装材から取り出して食べるときに、汁分によってご飯やおかずがばらけやすくなるのを防止できる。
【0011】
本発明のフィルム包装弁当においては、前記ご飯の表面に、細片状の具材を挟んで、固まり状の具材が当接された状態で、フィルム包装材に入れられて、真空包装されていることが好ましい。
【0012】
これによれば、細片状の具材が、成形されたご飯と、固まり状の具材との間に挟まれて保持されるので、細片状の具材であっても、ばらけることなく食することができる。
【0013】
本発明のフィルム包装弁当においては、前記ご飯が、小判状、円盤状、俵状、又はおむすび形状に成形されたものであることが好ましい。
【0014】
これによれば、ごはんの形状を特定の形状にすることにより、製品形状を一定化して、食べやすくすることができると共に、外観を良好にすることができる。
【0015】
本発明のフィルム包装弁当においては、前記おかずが、フライ、天ぷら、唐揚げ、ハンバーグ、牛丼の具、親子丼の具、カツ丼の具、中華丼の具、焼肉、及びシチューから選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0016】
これによれば、従来は箱に入った弁当として販売されている、各種の具材を乗せたご飯を、おにぎりのように手軽に食べることができる。
【0017】
本発明のフィルム包装弁当においては、前記おかずが、肉味噌、カレー、半熟たまごから選ばれた1種のソースを付与されたものであることが好ましい。
【0018】
これによれば、ソースを付与することにより具材の食味を向上させることができると共に、包装材で真空パックしたことによりソースがたれることがないので、包装材を開封して少しずつ出しながらソース付きの具材を食べることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のフィルム包装弁当によれば、成形されたご飯の表面に、おかずが当接された状態で、フィルム包装材に入れられて、真空包装されているので、ご飯とおかずとが密着し、1つの固まりとなって包装され、搬送中に崩れることもない。そして、包装材を開封して、その開口部から、固まったご飯とおかずを少しずつ押し出しながら、箸なしで、おにぎりのように手で持って食べることができる。また、おかずに汁分があっても、フィルム包装材で包装されているので、汁分がたれることがない。更に、食べ終わった後の廃材がフィルム包装材だけとなり、弁当箱等のかさばる廃材が発生しないので、環境を汚しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のフィルム包装弁当の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】同フィルム包装弁当を図1の背後側から見た斜視図である。
【図3】同フィルム包装弁当のご飯とおかずの配置を示す斜視図である。
【図4】同フィルム包装弁当の封を開けて中身を取り出す状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明において用いられるご飯としては、具材を混ぜ入れたかやくご飯や、麦などを配合した五穀ごはんなどであってもよいが、白米のご飯を炊いてそのままのものを主体に用いることが好ましい。これによれば、ごはん粒の粘着性によってご飯が成形しやすく、真空包装したときには、おかずとも密着して1つの固まりとなって、搬送中や包装から取り出して食するときにも崩れにくい。
【0022】
上記ご飯の形状としては、特に制限はないが、小判状、円盤状、俵状、又はおむすび形状等の特定の形状に成形することが好ましい。これによれば、製品形状を一定化して、食べやすくすることができると共に、外観を良好にすることができる。これらの形状のご飯は一般的な成形機を用いて工業的に製造することが可能である。
【0023】
本発明において用いられるおかずとしては、フィルム包装材に入れられて、真空包装されたときに、上記ご飯と密着して1つの固まりとなって包装されるものであれば特に制限はなく、フライ、天ぷら、唐揚げ、ハンバーグ、牛丼の具、親子丼の具、カツ丼の具、中華丼の具、焼肉、シチュー等が挙げられる。これらのおかずには、食味を向上させるために、例えば、肉味噌、カレー、半熟たまご(例えば「とろ〜り半熟たまご」(商品名)キユーピー株式会社)等のソースを付与してもよい。
【0024】
また、1包装あたり複数のおかずを包装してもよい。例えば、おかずとして、きんぴら等の細片状の具材と、チキンカツ等の固まり状の具材とからなるものを用いてもよい。この場合、上記ご飯の表面に、細片状の具材を挟んで、固まり状の具材が当接された状態で、フィルム包装材に入れられて、真空包装されていることが好ましい。これによれば、きんぴら等の細片状の具材が、成形されたご飯と、チキンカツ等の固まり状の具材との間に挟まれて保持されるので、細片状の具材であっても、ばらけることなく食することができる。
【0025】
本発明のフィルム包装弁当においては、上記おかずの汁分の流動性を低減するために、片栗粉、くず粉、じゃがいも澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉及びこれらの加工澱粉等の澱粉、ローカストビーンガムやグアガム等の増粘剤、ジェランガムやカラギーナン等のゲル化剤などを添加してもよい。これによれば、おかずの汁分がご飯の内部までしみこんでしまうことを軽減でき、包装材から取り出して食べるときに、汁分によってご飯やおかずがばらけやすくなるのを防止できる。
【0026】
本発明において用いられるフィルム包装材としては、通常の食品の真空包装に用いられる耐水性、耐油性、透明性を備えるものであれば特に制限なく用いることができる。例えば、ポリエチレンフイルム(PE)、ポリエステルフイルム(PET)、ポリプロピレンフイルム(0PP)等のフィルム包装材が挙げられる。ガスバリア性、耐ピンホール性などは、所望する商品に応じて適宜選択すればよい。
【0027】
本発明のフィルム包装弁当は、上記に説明したご飯とおかずとを、上記フィルム包装材で包装してなる弁当であり、そのご飯の表面におかずを当接した状態で、フィルム包装材に入れられて、真空包装されていることを特徴とする。このようにご飯とおかずをフィルム包装材に入れて、真空包装の状態にすると、外気圧によりご飯やおかずが互いに凝着する圧力がかかるので、開封して取り出すときには、ご飯とおかずが密着して1つの固まりとなっている。そして、その開口部から、固まったご飯とおかずを少しずつ押し出しながら、箸なしで、おにぎりのように手で持って食べることができる。
【0028】
したがって、従来は箱に入った弁当として販売されている、各種の具材を乗せたご飯を、おにぎりのように手軽に食べることができる。
【0029】
以下、図1〜4を参照して、本発明のフィルム包装弁当について更に具体的に説明する。
【0030】
図1,2に示されるように、このフィルム包装弁当では、ご飯1と、おかずとしてチキンカツ2が、フィルム包装材3で真空包装されている。フィルム包装材3の上部両側部には、そこから手で引き裂いて開口することができるように切り欠き4が設けられている。また、図1,2には隠れて表われていないが、図3に示されるように、おかずとして更にきんぴら5が、ご飯1とチキンカツ2との間に挟んである。更に、チキンカツ2には図示しない肉みそソースがかけられている。この肉みそソースは、澱粉、増粘剤、ゲル化剤から選ばれた1種を添加されて、汁分の流動性を低減されている。
【0031】
そして、食するときには、好みによって電子レンジであたためた後、図4に示されるように、切り欠き4から引き裂いた開口部6から、中身を取り出すことができる。このとき、ご飯1とチキンカツ2とが密着し、1つの固まりとなっている。また、これらに挟まれてきんぴら5も一体になっている。更に、上記図示されない肉みそソースも、チキンカツの衣にしみ込んで一体となっている。したがって、その開口部6から、フィルム包装材3の部分で固まったご飯とおかずを手で持つようにして、少しずつ押し出しながら、箸なしでも、手を汚さずに食べることができる。また、食べたあとには廃材としてフィルム包装材3が残るのみであるので、環境にも優しい。
【実施例】
【0032】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0033】
(実施例1)
以下のようにしてフィルム包装入り肉みそチキンカツ弁当を製造した。
【0034】
[チキンカツの調製]
皮を取った鶏むね肉を、みそ、砂糖、醤油、酒を1:1:0.5:3.5で合わせた調味液に入れて、10分漬けた。このむね肉に小麦粉と卵を混ぜた衣を付けてから、パン粉を全体にまぶし、これをフライパンに熱したサラダ油で、160℃1.5分間、その後180℃で1.5分間程度揚げてチキンカツを調製した。
【0035】
[肉みそソースの調製]
胡麻油500g、サラダ油50g、水400g、醤油40g、カルピス40g、酢40g、味噌40g、砂糖40g、豆板醤10g、一味唐辛子10g、オイスターソース10g、パプリカ10g、豚挽肉150g、鶏挽肉150g、ネギ150g、筍150gを、調理鍋に入れ、攪拌しながら120℃で20分間加熱した。次いで、加熱を停止し、20gの水に溶いたタピオカ澱粉20gを攪拌しながら添加し、あんかけ状になった肉みそ部分を油と分離して、肉みそソースを調製した。
【0036】
[きんぴらの調製]
ゴボウは、およそ0.4mm×0.4mm×1〜2.5cmの大きさの短冊切りにして水に10分さらしてあくを抜いた。ニンジンは皮をむき、約0.4mm角のさいの目切りにした。フライパンに大さじ1のゴマ油を強火で熱し、水切りしたゴボウ100gを加え、ゴボウがしんなりしたところでニンジン30gを加えて炒めあわせた。調味料として、酒小さじ2、砂糖大さじ1、しょうゆ大さじ1、刻み赤唐辛子1個分を加え、汁気がほとんどなくなるまで炒めあわせてきんぴらを調製した。
【0037】
[真空包装]
チキンカツ80g分の片面に肉みそソースを30gかけ、一方で小判形に成形したご飯80gにきんぴらを30g載せ、その上から、肉みそソースをかけたほうを上にしてチキンカツを載せた。これを真空包装フィルムで覆い、真空包装装置の真空チャンバーに入れて、真空状態にしてフィルムの端部を熱溶着で封止した。
【0038】
上記のようにして製造したフィルム包装入り肉みそチキンカツ弁当を、電子レンジで30秒あたためて開封して食したところ、ご飯とチキンカツが密着して1つの固まりとなっていたので、真空包装フィルムの部分で固まったご飯とおかずを手で持つようにして、少しずつ押し出しながら、箸なしでも、手を汚さずに食べることができた。また、ご飯とチキンカツの間に挟まれたきんぴらも、ご飯とチキンカツの衣に密着して1つの固まりとなっていたので、こぼさずに食べることが容易であった。
【0039】
(実施例2)
以下のようにしてフィルム包装入りチキンカツカレー弁当を製造した。
【0040】
[チキンカツの調製]
実施例1と同様にしてチキンカツを調製した。
【0041】
[カレーソースの調製]
フライパンにバターをひきみじん切りにした玉ねぎ100gを炒めた。カレー粉小さじ1とマッシュルーム100gを加え更に1分間炒めた。生クリーム0.5カップを加えてひと煮立ちさせてカレーソースを調製した。
【0042】
[真空包装]
チキンカツ80g分の片面にカレーソースを30gかけ、小判形に成形したご飯80gの上から、カレーソースをかけたほうを上にしてチキンカツを載せた。これを真空包装フィルムで覆い、真空包装装置の真空チャンバーに入れて、真空状態にしてフィルムの端部を熱溶着で封止した。
【0043】
上記のようにして製造したフィルム包装入りチキンカツカレー弁当を、電子レンジで30秒あたためて開封して食したところ、ご飯とチキンカツが密着して1つの固まりとなっていたので、真空包装フィルムの部分で固まったご飯とおかずを手で持つようにして、少しずつ押し出しながら、箸なしでも、手を汚さずに食べることができた。また、カレーソースの汁分や具材はチキンカツの衣やご飯にうまく絡まっていたので、こぼさずに食べることが容易であった。
【0044】
(実施例3)
以下のようにしてフィルム包装入りカツ丼弁当を製造した。
【0045】
[チキンカツの調製]
実施例1と同様にしてチキンカツを調製した。
【0046】
[カツ丼の具の調製]
親子鍋に鰹だし汁35ccと薄切りにしたたまねぎ1/5個を入れ弱火で2分程煮た。醤油とみりんをそれぞれ大さじ1/2加え30秒ほど煮てアルコール分を飛ばした。チキンカツ80g分を入れ溶き卵(1/2個分)でとじた。
【0047】
[真空包装]
上記カツ丼の具を、小判形に成形したご飯80gの上に載せた。これを真空包装フィルムで覆い、真空包装装置の真空チャンバーに入れて、真空状態にしてフィルムの端部を熱溶着で封止した。
【0048】
上記のようにして製造したフィルム包装入りカツ丼弁当を、電子レンジで30秒あたためて開封して食したところ、ご飯とチキンカツが密着して1つの固まりとなっていたので、真空包装フィルムの部分で固まったご飯とおかずを手で持つようにして、少しずつ押し出しながら、箸なしでも、手を汚さずに食べることができた。また、カツ丼の汁分や具材はチキンカツの衣やご飯にうまく絡まっていたので、こぼさずに食べることが容易であった。
【符号の説明】
【0049】
1 ご飯
2 チキンカツ
3 フィルム包装材
4 切り欠き
5 きんぴら
6 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形されたご飯の表面に、おかずが当接された状態で、フィルム包装材に入れられて、真空包装されていることを特徴とするフィルム包装弁当。
【請求項2】
前記おかずが、澱粉、増粘剤、ゲル化剤から選ばれた少なくとも1種を添加されて、汁分の流動性を低減されたものである請求項1記載のフィルム包装弁当。
【請求項3】
前記ご飯の表面に、細片状の具材を挟んで、固まり状の具材が当接された状態で、フィルム包装材に入れられて、真空包装されている請求項1又は2記載のフィルム包装弁当。
【請求項4】
前記ご飯が、小判状、円盤状、俵状、又はおむすび形状に成形されたものである請求項1〜3のいずれか1つに記載のフィルム包装弁当。
【請求項5】
前記おかずが、フライ、天ぷら、唐揚げ、ハンバーグ、牛丼の具、親子丼の具、カツ丼の具、中華丼の具、焼肉、及びシチューから選ばれた少なくとも1種を含む請求項1〜4のいずれか1つに記載のフィルム包装弁当。
【請求項6】
前記おかずが、肉味噌、カレー、半熟たまごから選ばれた1種のソースを付与されたものである請求項1〜5のいずれか1つに記載のフィルム包装弁当。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−62075(P2012−62075A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206189(P2010−206189)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(500465488)株式会社有明のり (8)
【Fターム(参考)】