説明

フィルム製造設備及び溶剤回収方法

【課題】フィルム製造部で気体となった溶剤から添加剤を効果的かつ効率的に除去する。
【解決手段】フィルム製造部27の乾燥室27の空気を第2溶剤回収部19の添加剤除去装置41に送る。添加剤除去装置41に送り込むときの空気の温度は、溶剤12の沸点よりも高く添加剤13の沸点以下の範囲である。添加剤除去装置41では、添加剤13を選択的に吸着する吸着剤と、乾燥室27からの空気とが接触する。添加剤13が除かれた空気は溶剤12を吸着して脱着する吸着ユニット47に送られ、ここで溶剤12が空気から分けられて凝縮器48で液体となり回収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム製造設備と溶液製膜で蒸発させた溶剤を回収する溶剤回収方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースアシレートフィルムは、その強靭性と難燃性とから写真感光材料の支持体として広く利用されてきた。セルロースアシレートフィルムの中でも、57.5〜62.5%の平均酢化度を有するセルローストリアセテート(TAC)から製造されるTACフィルムは、特に光学的等方性に優れていることから、近年では、液晶表示装置の偏光板の保護フィルムとして、あるいは光学補償フィルムとして需要が急速に大きくなっている。
【0003】
TACフィルムは、一般には溶液製膜方法により製造される。溶液製膜方法は、溶融製膜方法と比較して、光学的性質や物性がより優れたフィルムを製造することができるからである。溶液製膜方法は、周知のように、ポリマーが溶剤に溶解したドープを支持体に流延して剥がし、乾燥してフィルムを製造する方法である。なお、乾燥工程で蒸発させた溶剤は、環境保護、人体保護、資源の有効利用、経済性の観点から回収され、ドープの原料として再利用される。
【0004】
溶液製膜の乾燥工程では、フィルムをより完全に乾燥させるために、数百℃以上もの高い温度にフィルム近傍の雰囲気温度を上げる。これにより、溶剤の蒸発量をより多く、かつ蒸発速度をより大きくすることができるが、その一方で、フィルムに含有させるためにドープの成分とされる添加剤も溶剤と一緒に一部が蒸発してしまう。添加剤は、フィルムの性能の向上には欠くことができないものであり、用途あるいはポリマーの種類に応じてドープの中に種々加えられる。
【0005】
蒸発した溶剤は、凝縮器、蒸留装置等により回収されるが、添加剤の中には、溶剤の凝縮工程で溶剤の凝縮とともに液体または固体となってしまい、後工程の蒸留でも溶剤からの除去が困難なものが多くある。混合物を、蒸留によって複数の物質に分けるいわゆる分留装置は、分留性能を高くするほど段数を多くする必要があるため、その構造が複雑になってメンテナンスに手間がかかり、かつ、制御がより困難になってしまうという問題があるため、安易には適用することができない。
【0006】
そこで、溶剤から添加剤を除去するために種々の方法が提案されている。例えば、凝縮の前に、溶剤と添加剤とが含まれている空気を他の物質との間で熱交換させることにより、この空気の温度を添加剤の飽和温度よりも低くして添加剤のみを凝縮させて液体とし、回収する方法(例えば、特許文献1参照)や、この方法に加えて、あるいは代えて、液体とした添加剤をさらに冷却して固体としてフィルタでトラップして回収する方法等がある。
【特許文献1】特開2005−793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、熱交換器を用いる方法は、溶剤と添加剤との分離は概ね可能であるものの、熱交換器の内部に添加剤が付着して固体となってしまい、熱交換器の性能が経時的に低下すること、付着した添加剤の回収は困難を極めること、という問題がある。また、ガス分離膜は、特定の物質を効果的かつ効率的に分けるには、フィルタの素材を含めて十分とはいえず、溶液製膜のように大量の溶剤を処理する必要がある場合には適用することができない。たとえ十分な処理速度をもつフィルタが提案されていても、フィルタを使う以上はその目詰まりにより経時的に分離性能が低下していくという問題は残る。そして、上記いずれの方法においても、添加剤と溶剤とを含む空気の温度をある程度下げてからでなくては、溶剤と添加剤とを分離することはできない。したがって、空気の温度を下げることで添加剤が分離手段やその他の機器類等に付着してこれらを汚染してしまう。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、溶液製膜工程で添加剤を伴って蒸発した溶剤から、添加剤を効果的かつ効率的に除去するとともに、添加剤による装置の汚染を防止するフィルム製造設備と溶剤回収方法とを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリマーと溶剤と添加剤とを含むドープを支持体上に流延して、前記支持体から剥がすことにより前記溶剤を含む湿潤フィルムとし、この湿潤フィルムを乾燥させてフィルムとするフィルム製造部と、前記湿潤フィルムの乾燥により蒸発した前記溶剤を回収する溶剤回収部とを備えるフィルム製造設備において、前記溶剤回収部は、蒸発した前記溶剤が含まれる空気を、前記溶剤の沸点よりも高く前記添加剤の沸点以下の温度に保持した状態で、前記添加剤を吸着する吸着剤と接触させ、前記空気から前記添加剤を除去する添加剤除去装置と、前記添加剤除去装置を経た前記空気から前記溶剤を回収して精製する溶剤回収精製装置と、を備えることを特徴として構成されている。
【0010】
さらに、本発明は、ポリマーと溶剤と添加剤とを含むドープを流延した後に乾燥させてフィルムとするフィルム製造部から、乾燥により気体となった溶剤を回収する溶剤回収方法において、気体になった前記溶剤が含まれる空気を、溶剤の沸点よりも高く前記添加剤の沸点以下の温度範囲に保持した状態で、前記添加剤を吸着する第1吸着剤と接触させる第1接触工程と、この第1接触工程の後で、前記溶剤を吸着する第2吸着剤に前記空気を接触させる第2接触させる第2接触工程と、前記第2吸着剤に蒸気を接触させて、第2吸着剤に吸着した前記溶剤を気体の状態で脱着させる脱着工程と、脱着された前記溶剤を凝縮する凝縮工程とを有することを特徴として構成されている。
【0011】
添加剤がトリフェニルホスフェートである場合に特に効果は大きい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、溶液製膜工程で添加剤を伴って蒸発した溶剤から、添加剤を効果的かつ効率的に除去することができる。さらに、添加剤による装置の汚染を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明について、以下に実施様態を示し詳細に説明する。ただし、本発明はここに挙げる様態に限定されるものではない。図1は本発明の一実施様態としての溶液製膜設備を示す概略図である。溶液製膜設備10は、ポリマー11と溶剤12と添加剤13とを含むドープ14を流延してフィルム16とするためのフィルム製造部17と、このフィルム製造部17の内部で気体となった溶剤(以下、溶剤ガスと称する)12を、再びドープ14の製造へ供するために回収する第1及び第2の溶剤回収部18,19とを備える。
【0014】
フィルム製造部17は、連続走行する支持体21にドープ14を流延して流延膜14aを形成するための流延ダイ22と、支持体21からローラ等により剥がされたフィルム16を、延伸しながら乾燥するテンタ23と、テンタ23の下流に備えられ、フィルム16をローラ26等により搬送しながら乾燥を進める乾燥室27と、乾燥したフィルム16を巻き取る巻取室28とを備える。
【0015】
[ポリマー]
本発明に用いられるポリマー11は特に限定されず、溶液製膜方法によりフィルムとすることができる公知のものでよい。本実施形態においては、偏光板用保護フィルムや光学補償フィルム等の光学用途に広く用いられるセルロースアシレートを用いる場合を例にして説明する。セルロースアシレートの中では、セルロースアセテート、特にアセチル化度の平均値が57.5%〜62.5%のセルローストリアセテートが光学特性に優れたフィルムをつくる上で好ましい。なお、アセチル化度とは、セルロース単位重量当りの結合酢酸量を意味し、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度の測定および計算に従って求めることができる。本実施形態では、粒子状のセルローストリアセテートを使用しており、セルローストリアセテートの90重量%以上は0.1〜4mmの粒子径、好ましくは1〜4mmの粒子径を有する。
【0016】
[溶剤]
溶剤としては、ハロゲン化炭化水素、エステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類などがあるが、特に限定されない。溶剤としては、1種類の化合物であってもよいし、複数の化合物の混合物でもよい。溶剤の具体例には、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタンなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、メチルホルメート、エチルアセテート、アミルアセテート、ブチルアセテートなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル,メチル−t−ブチルエーテルなど)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノールなど)などが挙げられる。
【0017】
[添加剤]
ドープに含ませる添加剤としては可塑剤がある。可塑剤としては、リン酸エステル系(例えば、トリフェニルホスフェート(以下、TPPと称する)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェートなど)、フタル酸エステル系(例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレートなど)、グリコール酸エステル系(例えば、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレートなど)及びその他の可塑剤を用いることができる。この中で、透明度の高いセルロースアシレートフィルムを製造するために特に好ましいものとしてはTPPが挙げられる。
【0018】
ドープには、可塑剤以外の添加剤を各種含ませてもよい。他の添加剤としては、紫外線吸収剤、離型剤、剥離促進剤、フッ素系界面活性剤等がある。紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物が好ましく、中でも、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物が特に好ましい。
【0019】
[溶剤の回収工程]
流延ダイ22と支持体21とテンタ23とを含む流延エリア29では、ドープ14と流延膜14aとフィルム16とから大量の溶剤12が蒸発する。このように生じた溶剤ガスは、流延エリア29の内部の空気に含まれた状態で、流延エリア29に接続する第1溶剤回収部18へ送られる。
【0020】
第1溶剤回収部18は、流延エリア29から送られてきた空気を冷却してこの空気中に含まれる溶剤ガスを凝縮させる凝縮器(コンデンサ)31と、凝縮されずに凝縮器31を通過し冷たくなった空気を温める加熱器32とを備える。凝縮器31で回収される溶剤12はフィルム製造部17に送られ、ドープ14の原料として再利用される。また、加熱器32で温められた空気は、流延エリア29に戻され、例えば、流延膜14aやテンタ23の内部のフィルム16を乾燥させるための乾燥風として利用される。なお、流延エリア29と凝縮器31との間、かつ凝縮器31と加熱器32との間に熱交換器35を配し、凝縮器31からの低温の空気と流延エリア29からの高温の空気とで熱交換をさせることが好ましい。熱交換器35の使用により、凝縮器31におけるエネルギー消費量と加熱器32におけるエネルギー消費量とを低減させることができる。
【0021】
乾燥室27では、フィルム16をできるだけ完全に乾燥させるために、フィルム16の搬送路近傍は100℃以上もの高温とされる。このために、乾燥室27の内部の空気には、フィルム16から蒸発した溶剤12と、溶剤12の蒸発に伴って気体となった添加剤も含まれてしまう。ただし、空気中に含まれる溶剤ガスの量は流延エリア29で生じる溶剤ガスの量に比べて少ない。そこで、この空気を、乾燥室27に接続する第2溶剤回収設備19へ送る。
【0022】
第2溶剤回収部19には、送られてきた空気から添加剤13を選択的に除去する添加剤除去装置41と、添加剤13が取り除かれた空気から溶剤12を除去して溶剤12を精製するための回収精製装置43とが備えてある。さらに、添加剤除去装置41と回収精製装置43との間及び回収精製装置43と乾燥室27との間には、添加剤除去装置41を経た空気と回収精製装置43から送られてくる空気との間で熱交換をするための熱交換器44が備えられる。
【0023】
添加剤除去装置41には、100℃以上の高温の空気が、溶剤ガスと気体となった添加剤13とを含んだ状態で送られる。添加剤除去装置41には、添加剤13を吸着する吸着剤が備えられる。空気は、温度を100℃以上、具体的には溶剤の沸点よりも高く添加剤の沸点以下の温度に保持された状態で吸着剤と接触する。これにより、空気中の添加剤のみが吸着剤に吸着される。このように、乾燥室27の空気から、まず添加剤を除去することにより、下流側に備えられる溶剤回収のための機器や配管等に添加剤が付着することを防止することができる。そして、この方法によると、空気の温度を下げることなく添加剤を除去することができるため、添加剤の除去が簡易であるとともに、冷却による回収に比べて省エネとなり、さらに設備費用も安く抑えることができる。また、従来は、空気を冷却する必要が生じていた下流側の熱交換器44や回収精製装置43等で多くの添加剤が析出してしまい、その洗浄等のメンテナンスの手間やコストがかかっていたが、本発明によるとこれらの手間やコストを抑えることができるようになる。なお、添加剤除去装置41の詳細については別の図面を参照して後述する。
【0024】
添加剤を除去された空気は、回収精製装置43に送られて溶剤を除去された後、加熱手段により温められて乾燥室26に戻される。これにより、乾燥室26の空気は常に溶剤ガスと添加剤との濃度が所定値以下に保持されるので、フィルム16の乾燥効率の低下が防止されるとともに、添加剤が乾燥室26の内部の機器類やフィルム16を汚染することがない。
【0025】
添加剤除去装置41を経た空気の温度は100℃以上の高温であるが、回収精製装置43に送り込むときには30℃程度にまで冷却しておくことが好ましい。これは、回収精製装置43に収容されてある吸着剤による吸着効率のアップ及び吸着剤の活性維持のためである。そこで、添加剤除去装置41と回収精製装置43との間には空気を冷却する冷却手段を設けることが好ましい。一方、回収精製装置43から出る約30℃の空気は、乾燥室27に送り込むときには100℃以上に温度を高められる。これは、乾燥室27での乾燥効率を向上させるためである。そこで、回収精製装置43と乾燥室27との間には空気を加熱する加熱手段を設けることが好ましい。本実施形態では、これら冷却手段と加熱手段との両方の機能をもつ熱交換器44を用いる。この熱交換器44により、添加剤除去装置41を経た空気と回収精製装置43を経た空気との間で熱交換が行われるので、冷却手段と加熱手段との両温度制御手段を用いて各空気をそれぞれ冷却、加熱するよりも、省エネ効果がある。
【0026】
なお、熱交換器44に加えて冷却手段と加熱手段とを用いてもよい。この場合には、添加剤除去装置41から冷却手段に送られる空気と、回収精製装置43から加熱手段に送られる空気との間で熱交換器44により熱交換させることが好ましい。これにより冷却手段と加熱手段との両方のサイズダウンを図ることができる。本実施形態では熱交換器44に加えて用いる冷却手段として冷却器45を用いる。なお、この冷却器45の設置位置は回収精製装置43の中であってもよいし、あるいは外であってもよい。
【0027】
熱交換器44に加えて冷却器45を用いる場合には、空気が送られる配管に対して冷却器45を複数台並列に接続し、これを切り換えて使用することが好ましい。これは、添加剤除去装置41で添加剤が完全には回収しきれずに冷却装置41の内部で添加剤が析出してしまった場合や、他の物質が析出した場合に、冷却装置41のひとつを洗浄しても、他のひとつを空気冷却に用いることができ、空気冷却を連続して実施することができるためである。
【0028】
回収精製装置43は、溶剤ガスを冷却して凝縮する冷却器45と、この冷却器45で液体にならなかった溶剤ガスを吸着剤に吸着させて脱着用気体46で脱着する吸着ユニット47と、脱着に使用された後の脱着用気体46を凝縮する凝縮器(コンデンサ)48と、この凝縮器48で液体となった溶剤を精製する精製ユニット51とを備える。脱着用気体46としては水蒸気等の高温気体を用いることができる。
【0029】
冷却器45は、吸着ユニット47における溶剤回収の負荷を低減させるために用いることが好ましいが、乾燥室27での溶剤ガスの発生量が極めて少ない場合には使用しない場合もある。この冷却器45の構成は、後述の凝縮器48と基本的に同じである。
【0030】
吸着ユニット47には、後述のように吸着剤が収容された複数の吸着槽が備えられ、空気の中の溶剤ガスを吸着剤に接触させて空気から溶剤を除去する。吸着を終了させてから脱着用気体46が送られてきて、吸着剤に吸着されている溶剤を脱着する。
【0031】
凝縮器48は、脱着に使用された脱着用気体46が滞留するための凝縮器本体(図示せず)と、この凝縮器本体の内部に連続して送り込まれ、脱着用気体を冷却するための流体(図示せず)と、凝縮器本体の外部に備えられ、凝縮器本体で温度が上がった流体を凝縮器本体の外部で冷却し、再び凝縮器本体へと送り込む循環ユニット(図示せず)と、流体が流れる管とを備える。流体は、溶剤の沸点よりも低い温度で安定な液体が好ましく、ハンドリング、入手のし易さ及びコストの点を考慮すると水が好ましい。脱着用気体46は、凝縮器本体へ送り込まれると、管内を流れる流体により沸点以下に温度が下げられて凝縮し、液体となって精製ユニット51へ送られる。
【0032】
精製ユニット51は、液体とされた溶剤を蒸留により精製する。ドープ14の溶剤12として混合物を用いる場合には、精製ユニット51に送られる液体も混合物であるので、分留によりそれぞれの成分毎に回収することができる。
【0033】
精製ユニット51と凝縮器31とによりそれぞれ得られた溶剤12は、混合してあるいは単独で再利用される。
【0034】
図2は、添加剤除去装置41の概略図である。添加剤除去装置41は、添加剤の吸着及び脱着を行う第1,第2吸着塔71,72を備え、これら第1,第2吸着塔71,72は、乾燥室27からの配管と熱交換器44への配管に、並列に接続されてあり、切り換えていずれか一方を使用することができる。また、第1,2吸着塔71,72には、内部の温度を調整する温度コントローラ71a,72aが備えられる。なお、並列に接続する吸着塔の数は2には限定されず、また、吸着塔は固定床式吸着塔と流動床式吸着塔とのいずれであってもよい。
【0035】
第1,2吸着塔71,72には吸着剤が収容され、この吸着剤は、吸着すべき添加剤及び溶剤の種類に応じて決定される。本発明では、溶剤の沸点よりも高く添加剤の沸点以下の温度で添加剤を吸着剤に吸着させるため、例えば添加剤がTPPであり溶剤がジクロロメタン等のケトン系化合物である場合には、吸着剤としてシリカゲル、ゼオライト等の不燃物質を用いる。吸着剤として一般的な活性炭を用いると、溶剤を含む空気が発火する恐れがあるからである。吸着に際しての空気の温度は、温度コントローラ71a,72aにより溶剤の沸点よりも高い温度に保持され、これにより、空気における添加剤の濃度を飽和濃度よりも低く保つ。この温度条件での吸着により、第1,2吸着塔71,72は、溶剤を吸着することなく、添加剤は気体のままで吸着剤と接触して吸着剤のみを吸着することができるとともに、添加剤が吸着剤の粒子の微細孔にトラップされるので固体として第1,2吸着塔71,72内部で析出することを防ぐことができる。
【0036】
第1,第2吸着塔71,72のいずれか一方での吸着が終わると、他方での吸着を始める。他方での吸着の間に、先に吸着を終えた吸着塔の吸着剤は、新たな吸着剤と交換される。吸着後の吸着剤は、賦活により再生される。TPP等の高沸点化合物は蒸気での脱着が不可能であるからである。
【0037】
図3は、吸着ユニット47の概略図である。吸着ユニット47は、溶剤ガスの吸着及び脱着を行う第1〜第3吸着塔91〜93を備える。第1〜第3吸着塔91〜93には、溶剤ガスを吸着する吸着剤、例えば活性炭がそれぞれ収容されてあり、脱着用気体46を内部に入れるための供給口と、脱着用気体46を外部へ出すための排出口とがある。内部に入った脱着用気体46が活性炭に接してから排出されるように、供給口と排出口とは設けられてある。なお、図3では吸着塔の数を3とするが、吸着塔の数はこれに限定されない。
【0038】
第1〜第3吸着塔91〜93では、それぞれ、冷却器45を経た空気から溶剤ガスを選択的に吸着剤に吸着する吸着工程と溶剤ガスを吸着剤から脱着する脱着工程とが交互に繰り返し実施される。そして、吸着工程は、第1〜第3吸着塔91〜93を切り換えて使用することにより実施される。つまり、吸着工程は、第1吸着塔91で実施した後は、第2吸着塔92、第3吸着塔93で順次実施し、次いでまた第1吸着塔91で実施される。そして、吸着工程が終わった吸着塔では脱着工程が実施される。吸着工程では、溶剤ガスを含む空気が吸着剤のエリアを通過し、これにより、溶剤ガスが吸着剤に吸着し、溶剤ガスを除かれた空気が第1,第2,第3の各吸着塔91〜93から熱交換器44を経て乾燥室27(図1参照)へと戻される。脱着工程では、約100℃の脱着用気体46が第1〜第3吸着塔56〜58に送られて、溶剤ガスを脱着する。約100℃の脱着用気体46は、第1〜第3吸着塔56〜58から凝縮器48に送られて溶剤ガスが凝縮される。
【0039】
第1〜第3吸着塔91〜93には、それぞれ吸着剤を再生する再生部材91a〜93aが備えられる。これらの再生部材91a〜93aは、吸着工程を終えた吸着剤が送られてくると、脱着用気体46等の高温の気体で脱着処理することにより吸着剤を再生する。
【0040】
以上のように、本発明によると、フィルム製造部で蒸発した溶剤を連続的に回収することができるとともに、フィルムから溶剤とともに蒸発して空気中に含まれた添加剤を効果的かつ効率的に除去することができるので、溶剤の再利用率が向上するとともに、添加剤によるフィルム製造部や溶剤回収部の汚染、フィルムの汚染を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】溶液製膜設備の概略図である。
【図2】本発明の添加剤除去装置の一例を示す概略図である。
【図3】吸着ユニットの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0042】
10 溶液製膜設備
14 ドープ
18,19 第1,第2溶剤回収部
27 乾燥室
41 添加剤除去装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーと溶剤と添加剤とを含むドープを支持体上に流延して、前記支持体から剥がすことにより前記溶剤を含む湿潤フィルムとし、この湿潤フィルムを乾燥させてフィルムとするフィルム製造部と、前記湿潤フィルムの乾燥により蒸発した前記溶剤を回収する溶剤回収部とを備えるフィルム製造設備において、
前記溶剤回収部は、
蒸発した前記溶剤が含まれる空気を、前記溶剤の沸点よりも高く前記添加剤の沸点以下の温度に保持した状態で、前記添加剤を吸着する吸着剤と接触させ、前記空気から前記添加剤を除去する添加剤除去装置と、
前記添加剤除去装置を経た前記空気から前記溶剤を回収して精製する溶剤回収精製装置と、
を備えることを特徴とするフィルム製造設備。
【請求項2】
ポリマーと溶剤と添加剤とを含むドープを流延した後に乾燥させてフィルムとするフィルム製造部から、前記乾燥により気体となった前記溶剤を回収する溶剤回収方法において、
気体になった前記溶剤が含まれる空気を、前記溶剤の沸点よりも高く前記添加剤の沸点以下の温度範囲に保持した状態で、前記添加剤を吸着する第1吸着剤と接触させる第1接触工程と、
この第1接触工程の後で、前記溶剤を吸着する第2吸着剤に前記空気を接触させる第2接触させる第2接触工程と、
前記第2吸着剤に蒸気を接触させて、第2吸着剤に吸着した前記溶剤を気体の状態で脱着させる脱着工程と、
脱着された前記溶剤を凝縮する凝縮工程と、
を有することを特徴とする溶剤回収方法。
【請求項3】
前記添加剤はトリフェニルホスフェートであることを特徴とする請求項2記載の溶剤回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−213412(P2008−213412A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57417(P2007−57417)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】