説明

フィルム貼付方法及びフィルム貼付装置

【課題】
微小な磨耗粉や塵埃が基板表面に落下することがなく、歩留まりが低下しないフィルム貼り付け方法を実現する。
【解決手段】
フィルムの先端部に対応する先端吸着プレートと、先端以外のフィルムの領域に対応する吸着プレートとを備え、フィルムを吸着した吸着プレートを鉛直方向に起立させ、基板を鉛直方向且つ吸着プレート側に所定量傾斜保持し、フィルム先端位置に圧着ロールを押付けた状態で圧着ロールを鉛直方向下側に移動させることにより、フィルムと基板の角度がフィルムの先端から終端まで一定に保たれた状態で圧着ロールによりフィルムを基板に貼り付けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼り合せる基板に見合う大きさのシート状のフィルムを基板に貼り付けるフィルム貼付方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルやプラズマ表示パネルなどの製作工程においては明暗コントラストや色再現性の向上,パネルから放出される電磁波や赤外線のカット,周辺映像の画面への映り込み防止,パネルの破損防止など様々な機能を併せ持つ機能性フィルム(以下、フィルムと略記)を2枚のガラス板を貼り付けた状態の液晶表示パネルやプラズマ表示パネルなど
(以下、基板と略称)の表面に貼り付けることにより良好な画像品質を実現している。
【0003】
フィルム貼り付けには、基板の表示面を上向きとし、基板の上方から貼り合せる基板に見合う大きさとしたシート状のフィルムを供給して貼り付けるフィルム貼付装置が使用されている。
【0004】
フィルムには粘着材が塗布されているため、使用前に異物付着防止のため、あるいは粘着材の変形防止、あるいはフィルム同士を重ねることが出来るように、粘着材表面を保護フィルムで覆っている。
【0005】
このようなフィルムは、粘着材保護フィルムを上面向きに吸着保持テーブルにセット
(装着)し、貼付直前に粘着材保護フィルムを剥離し、吸着保持テーブルを反転させフィルムの粘着材が露出した状態で基板上方に配置する。
【0006】
フィルムは貼り付ける一端を基板に近づけるため傾斜させ、圧着ロールで押付け先端貼り付けを行い、基板をフィルムを引き出す方向に移動させることにより貼り付けを行う。
【0007】
このときフィルムは圧着ロールで順次貼り付けられる前に基板上面に落下しないように、吸着保持テーブル面に吸着保持された状態で吸着保持テーブル面を滑るようにしている。
【0008】
このような技術を示すものとして、下記特許文献1〜3に記載されたものがある。
【0009】
【特許文献1】特開2003−276091号公報
【特許文献2】特開平11−170470号公報
【特許文献3】特開2004−144913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
フィルムを基板に貼り付けるには、基板を平面状に配置させた状態で、基板上方でフィルムを保持する必要がある。
【0011】
フィルムの貼り付けは、保持されたフィルムと基板を圧着ロールにより挟み込み、圧着ロールが回転することにより貼り付けを行うため、フィルムは吸着保持と吸着保持状態で吸着部材面を滑る必要があった。
【0012】
平面状に配置された基板上方でフィルムを吸着部材面が滑ることにより微小な磨耗粉が発生する。また、平面状に配置された基板上方でフィルムを吸着部材を稼動する機構部から塵埃が発生する。
【0013】
微小な磨耗粉や塵埃は平面状に配置された基板表面に落下しフィルムと基板間に残存してしまう。この場合、磨耗粉や塵埃とその周囲に出来る気泡により透過する光の遮光や散乱を招き、所望の画像品質を得ることが出来ず画像品質の低下や歩留まり低下の原因となる。
【0014】
かかる問題は、特に液晶表示パネルやプラズマ表示パネルなどの製作工程に限られたことではなく、各種シート状のフィルムを貼り付ける場合に注意を要することである。
【0015】
それゆえ本発明の目的は、フィルムの貼り付けにおいて、微小な磨耗粉や塵埃が基板表面に落下することがなく、歩留まりが低下しないフィルム貼り付け方法とその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成する本発明フィルム貼付方法の特徴とするところは、基板と該基板に見合う大きさとしたシート状のフィルムを、フィルムの粘着面に設けた保護フィルムを剥離して基板に貼り付ける場合に、基板を保持して鉛直方向へ起こす基板起立手段と、フィルムの先端部に対応する先端吸着プレートと、先端部以外のフィルムの領域に対応する吸着プレートで保護フィルムとは反対側面を吸着保持し、保護フィルムを剥離し、フィルムの先端部に対応する先端吸着プレートと吸着プレートとでフィルムを保持した状態で鉛直方向に起立させ、鉛直に保持した基板のフィルムの先端部に対応する箇所にフィルムの先端部を合わせて、この箇所を吸着プレートに設けられた圧着ローラで加圧接着し、圧着ローラによる加圧を保持した状態で吸着プレートを鉛直方向下側に移動させて基板にフィルムを貼り付けることにある。
【0017】
また、上記目的を達成する本発明フィルム貼付装置の特徴とするところは、フィルムの先端部に対応する先端吸着プレートと先端以外のフィルムの領域に対応する吸着プレートでフィルムを鉛直方向に起立させ、基板を鉛直方向且つ吸着プレート側に所定量傾斜保持し、フィルム先端位置に圧着ロールを押付けた状態で圧着ロールを鉛直方向下側に移動させることにより、圧着ロールは基板の傾斜に沿って移動し、フィルムと基板の角度がフィルムの先端から終端まで一定に保たれた状態で圧着ロールにより基板にフィルムを貼り付けることにある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基板とフィルムを鉛直状態に起立させた状態で貼り付けを行うため、フィルムを吸着部材面が滑ることにより発生する微小な磨耗粉やフィルム吸着部材を稼動する機構部から発生する塵埃がフィルム表面や表示パネル表面に落下し、磨耗粉や塵埃の巻き込みや塵挨周囲の気泡が発生することなく、フィルムを基板に歩留まりよく貼り付けることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図1から図7を参照して詳細に説明する。なお、全図面において、同一物には、同一引用符号を付けている。
【0020】
図3は本発明を適用して構成した光学フィルム貼付装置の平面概略図である。Aはパネル投入コンベア部、Bは光学フィルム貼付部、Cはパネル排出コンベア部である。
【0021】
光学フィルム1を表示パネル(基板)2への貼り付けは、表示パネル2を予めパネル搬送治具15に装着し、パネル投入コンベア部Aから光学フィルム貼付部Bに移動させ、光学フィルム貼付部Bで行われる。貼付完了後パネル排出コンベア部Cに払い出される。
【0022】
図1は、本発明を適用して構成した光学フィルム貼付装置の要部(光学フィルム貼付部B)概略図である。
【0023】
光学フィルム貼付装置は光学フィルム(フィルム)1を表示パネル(基板)2の画像表示面に貼り付ける装置である。大別してパネル保持起立機構B1と、吸着プレート22と先端吸着プレート39および吸着プレート起立機構と先端吸着プレート解除離脱手段と吸着プレート解除手段を含む光学フィルム吸着搬送機構B2と、圧着ロールと加圧機構を含む加圧ロール機構と加圧ロールのたわみを抑制する押付けロールと加圧機構を含む押付けロール機構などにより構成されている。以下、順に各部の構成を説明する。
【0024】
ここで光学フィルム貼付装置は、表示パネル2の種別や構造,厚さは特に限定されるものではなく、例えばPDP(プラズマディスプレイパネル)における画像を表示するPDP表示パネルや表示パネルと独立したフィルタ用単板ガラス基板やLCD(液晶ディスプレイ)の表示パネルの製造に用いることが出来る。
【0025】
先ず、光学フィルム1について説明する。光学フィルム1は明暗コントラストや色再現性の向上,パネルから放出される電磁波や近赤外線遮断,周辺映像の画面への映り込み防止,パネルの破損防止など様々な機能を併せ持っている。
【0026】
このような光学フィルム1は、図2に示すように、反射防止フィルム3,着色フィルム4,電磁波遮断フィルム5で構成されている。また、電磁波遮断フィルム5面には表示パネル2に貼り付けるための粘着材6が塗布されており、さらに粘着材6を保護するための保護フィルム7が貼り付けられ、程よい剛性を備えている。各層フィルム3〜5の厚さ,材質,組み合わせ等は特に限定されるものではない。
【0027】
このように構成された光学フィルム1は、表示パネル2に貼り付ける際に保護フィルム7を剥離して粘着材6を露出させる(図6(1)参照)。そして、光学フィルム1と表示パネル2とを正確に位置合わせし、粘着材6を表示パネル2に接触させることにより貼り付けられる。
【0028】
先ず、パネル保持起立機構について説明する。
【0029】
パネル保持起立機構は、図1に示すように、ベースフレーム8上面にコンベア支持フレーム9,旋回軸10,レベルジャッキ11,コンベア12,エアシリンダ13を備えている。ベースフレーム8は、光学フィルム貼付装置のベースとなるものであり、平板状とされている。ベースフレーム8の上にはコンベア12の高さ位置確保とコンベア12を起立させるエアシリンダ13を配するために必要なスペースを確保するためのコンベア支持フレーム9が配されている。エアシリンダ13は、ベースフレーム8とコンベア12とを連結するように配置されている。
【0030】
コンベア支持フレーム9の上面にはコンベア12が起立動作するときの旋回中心となる旋回軸10とコンベア12が水平状態のときの水平位置を決めるレベルジャッキ11が配されている。この旋回軸10とレベルジャッキ11により、コンベア12の起立動作位置と水平状態位置とが正確に再現できるようになっている。
【0031】
コンベア12は表示パネル2を固定装着したパネル搬送治具15をパネル搬送治具搬送モータ(図示せず)で図1の紙面の奥側から手前側に移動させる。そして、コンベア12に設けられた搬送ローラ16で受取り、所定位置まで移動後、コンベア12の四方向に配置したパネルロック機構14によりパネル搬送治具15を固定するようになっている。
【0032】
パネル搬送治具15は上面側に表示パネル2を装着する際、表示パネル2の裏面側にパネル表示用プリント基板2a等が取付けられた状態でも装着できるよう、パネル表示用プリント基板2aが取付けられていない位置にパネル支持部材15aが設けられている。また、パネル搬送治具15には、種々の形状,大きさの表示パネル2に対応可能とするため、パネル支持部材15a用の取付け穴を設けることで、本光学フィルム貼付装置の適用の自由度が大きくなる。
【0033】
また、図3に示すように、表示パネル2を固定装着したパネル搬送治具15を図3の紙面の右側位置からコンベア12で受取る位置に移動させる投入口に、パネル表面を清掃するためのパネルクリーナ17を備えている。
【0034】
パネルクリーナ17は回転ブラシ方式で、図3においてはブラシの回転方向は表示パネル2が右から左に進行することに対し逆方向になるようにしてある。これにより、表示パネル2表面の塵埃を掻き揚げ、パネルクリーナに接続されている集塵機で吸引除去することができる。
【0035】
ここで使用される回転ブラシは、表示パネル2表面を擦るため、導電性の材質のものを使用することにより、表示パネル2が帯電することを防ぐことができる。パネルクリーナ17は回転ブラシ方式に特に限定されるものではなく、表示パネル2表面の塵埃の大きさ,付着状態を考慮して任意の方式を選択することができる。例えば粘着ロール方式や超音波ドライクリーニング方式を採用することができる。
【0036】
続いて、光学フィルム吸着搬送機構について説明する。
【0037】
光学フィルム吸着搬送機構は、図1に示すように、上述したパネル保持起立機構の左側に配されている。
【0038】
光学フィルム吸着搬送機構は図1に示すように、ベースフレーム8上面に上面フレーム18,昇降ガイド19,昇降プレート20,ボールネジ21,吸着プレート22,吸着プレート移動フレーム23を備えて構成されている。昇降ガイド19は4箇所設けられており、ベースフレーム8と上面フレーム18により支持され、昇降プレート20を水平に保持することができるようになっている。
【0039】
昇降プレート20は平板状で、ベースフレーム8と上面フレーム18に支持されたボールネジ21のボールネジナット24が取付けられている。サーボモータ26を回転駆動することでギヤボックス25を介してボールねじ21が回転することで、昇降プレート20は昇降ガイド19に沿って上下方向に移動することができ、移動後の停止位置を正確に再現できるようになっている。
【0040】
昇降プレート20には図1の左右方向に設けられた直線ガイド27が設けてあり、吸着プレート移動フレーム23が昇降プレート20に設けられたシリンダ46を動作させることにより、図1の左右方向に移動するようになっている。
【0041】
吸着プレート移動フレーム23には旋回軸28を介して吸着プレート22が設けられている。また、吸着プレート22には光学フィルム1を表示パネル2に押付けて貼り付ける加圧ロール機構29と押付ロール機構30とが設けられている。なお、加圧ロール機構
29と押付ロール機構30については後述する。
【0042】
また、吸着プレート移動フレーム23にはシリンダ31を自由に回転できるように設けてある。このシリンダ31の軸端は吸着プレート22に回転可能に接続されている。シリンダ31を動作させることにより吸着プレート22が旋回軸28を中心として鉛直方向に起立できるようになっている。
【0043】
図4を用いて吸着プレート22へ光学フィルム1を吸着,固定する方法を説明する。
【0044】
吸着プレート22には吸着プレート22を貫通するように吸着穴32が複数列設けてある。この吸着穴32の列は光学フィルタ1の幅方向に複数の吸着ゾーン33に分割されており、各ゾーン毎に吸引配管34が接続されている。この吸引配管34には夫々開閉弁
35が設けてある。開閉弁35を出た吸引配管は1つにまとめられ光学フィルタ固定用ブロア36に接続されている。この光学フィルタ固定用ブロア36を回転駆動することで各ゾーンに設けた吸着穴32に負圧を供給することでフィルムを吸着保持する。
【0045】
吸着プレート22は貼り合わせに用いる光学フィルム1のサイズに応じて使用する吸着ゾーンを選択することにより、吸着穴32からのリークを防ぎ、複数の光学フィルタサイズに適用できるようになっている。また、光学フィルム吸着固定用ブロア36はインバータ37が設けられており、回転数を制御することにより、吸着ゾーン33の吸引力増減を任意に変更することができる。このような構成とすることで光学フィルム1を吸着保持した状態で保護フィルム7(図2に図示)を剥離する際に光学フィルム1が吸着プレート
22から持ち上がらないように高真空吸引の吸引力を作用させることができる。また、光学フィルム1を表示パネル2に貼り付ける動作時には光学フィルム1に低真空吸引の吸引力を作用させることで、光学フィルム1を吸着プレート22に保持した状態で吸着プレート22を移動することができる。
【0046】
図1に示す吸着プレート22において、光学フィルム1の貼付先端(フィルムの一辺先端部)側に旋回軸38を介して先端吸着プレート39が設けられている。先端吸着プレート39は吸着プレート22と同一の吸着保持機構を設けてある。また、先端吸着プレート39が吸着プレート22上に載置された光学フィルム1を吸着保持する場合は、吸着プレート22と面一となる位置に位置決めされ、光学フィルム1の先端部側を吸引により吸着保持する。なお、光学フィルム1の先端部以外の領域は吸着プレート22により吸引により吸着保持される。
【0047】
また、後述するように、吸着保持された光学フィルム1に貼り付けられた保護フィルム剥離後に、表示パネル2に光学フィルム1の先端を加圧ロール機構29で貼り付ける。この際、加圧ロール機構29の押付スペースを確保するために、先端吸着プレート39の吸着保持が解除される。先端吸着プレート39の吸着解除は、図4に示す光学フィルム吸着固定用ブロア36からの吸引配管34の途中に設けた開閉弁35を閉めることで負圧の供給を停止することにより解除する。その後、シリンダ(図示せず)により旋回軸38を中心として旋回退避して光学フィルム1から離脱することができるようになっている。この旋回軸やシリンダ等で、先端吸着プレート解除離脱手段を構成している。
【0048】
さらに、先端吸着プレート39には光学フィルムサイズに応じた位置決めマーク55が設けられている。この位置決めマーク位置55に光学フィルム1を載置することにより、表示パネル2の所望の位置に光学フィルム1を貼り付けることができる。
【0049】
図5(a)により、加圧ロール機構29と押付けロール機構30を説明する。
【0050】
加圧ロール機構29は吸着プレート22に設けられたベース43に取付けられ、吸着プレート22と共に垂直方向に起立移動し、圧着ロール40と直線ガイド41とシリンダ
42で構成されている。
【0051】
まず、先端吸着プレート39をシリンダ(図示せず)により旋回軸38を中心として旋回させ光学フィルム1から離脱・退避させる。
【0052】
圧着ロール40はシリンダ42の作用により、直線ガイド41を介して図5(a)において上下方向の移動が可能となっている。圧着ロール40は回転駆動機構を持たず、光学フィルム1と表示パネル2を挟み込んだ後で、吸着プレート22が移動することにより圧着ロール40が連れ回りする構造となっている。圧着ロール40の大きさは限定されるものではなく、表示パネル2の強度や光学フィルム1の必要押付け力を考慮して設定することができる。
【0053】
押付けロール機構30は、吸着プレート22に設けられたベース43に取付けられ、吸着プレート22と共に垂直方向に起立移動し、押付けロール44とガイド付シリンダ45で構成されている。
【0054】
表示パネル2の幅が広い場合や高押付力が必要な場合、圧着ロール40が長くなり中央部のたわみが大きくなり、幅方向で均等な押付力を維持できなくなる。そこで、このたわみを抑制するため、図5(b)に示すように、圧着ロール40と光学フィルム1が接した状態で、押付けロール44を圧着ロール40にバックアップロールとして押付けることができる。
【0055】
圧着ロール40の表面は弾性ゴム層で形成しているが、その材質は特に限定されるものではなく、光学フィルム1により適宜に選択することができる。PETフィルムと離形性の良いシリコンや導電性ゴムが好適である。また、ゴム硬度は、表示パネル2の反りを吸収するためにも柔らかい硬度が好ましい。
【0056】
次に、光学フィルム1を表示パネル2に貼り付ける上記構成の光学フィルム貼付装置の運転準備動作について図3により説明する。
【0057】
まず、光学フィルム1を表示パネル2に貼り付けるため、表示パネル2を予めパネル搬送治具15に装着し、パネル投入コンベア部A内で待機させる。次に、パネル投入ボタンの操作によりパネル搬送治具15は光学フィルム貼付部B位置に移動を開始する。そして、光学フィルム貼付部Bの所定位置で停止後パネルロック機構14(図1参照)により位置決めされる。このとき表示パネル2は光学フィルム貼付部Bの投入側に設けられたパネルクリーナ17により、パネル表面のクリーニングが施される。
【0058】
次に、光学フィルム貼付部Bにおいて光学フィルム1を吸着プレート22と先端吸着プレート39に載せる。この時、先端吸着プレートに設けてある位置決めマーク55に光学フィルム1の4角の内2ヶ所を正確に位置合わせを行う。その後、吸着プレート22と先端吸着プレート39の吸着開始釦を操作することにより光学フィルタ1を吸着保持する。
【0059】
次に、光学フィルム1を吸着保持した状態で、図示しない保護フィルム剥離手段にて光学フィルム1を構成する保護フィルム7(図2に図示)を剥がし、粘着材6を露出させる。以上により光学フィルム1貼り付けのための運転準備が完了したことになる。
【0060】
次に、上記構成の光学フィルム貼付装置を用いて、光学フィルム1を表示パネル2へ貼り付ける貼付方法について、図6を用いて説明する。
【0061】
光学フィルム1と表示パネル2の運転準備完了状態を図6(1)に示す。この状態から、自動運転起動釦を操作することで貼り付け動作が開始される。
【0062】
光学フィルム1を表示パネル2に貼り付けるには、まず、吸着プレート22と先端吸着プレート39とに光学フィルム1を吸着した状態で、シリンダ31により旋回軸28を中心として垂直状態になるまで回転移動させる。
【0063】
次に、パネル搬送治具15に取付けられた表示パネル2は、パネル搬送治具15とコンベア12がパネルロック機構14に固定された状態でエアシリンダ13により旋回軸10を中心として垂直方向に回転移動させる。表示パネル2はエアシリンダ13とストッパ
(図示せず)により垂直位置より前傾方向の所定の角度で斜めの状態に保持される。このとき図6(2)に示すような光学フィルム1と表示パネル2のなす角度θは例えば10°前後とすることが望ましい。光学フィルム1と表示パネル2との角度θが小さい場合は、光学フィルム1を貼り付ける際に圧着ロール40が光学フィルム1を押付ける前に表示パネル2と接触し、気泡やしわが発生してしまう。また、角度が大きすぎる場合には、光学フィルム1の剛性により吸着プレート22表面から離反する力が作用し、吸着破壊が発生することで光学フィルム1と表示パネル2が接触し、気泡やしわが発生してしまう。
【0064】
次に、光学フィルム1を表示パネル2へ貼り付ける位置に合せるため、吸着プレート
22を支持する吸着プレート22を昇降させ、光学フィルム1の先端が表示パネル2の貼り合わせ位置に来るように位置決めする。このとき昇降プレート20はサーボモータ26とボールネジ21により移動され良好な貼付位置精度を実現できる。また、複数のサイズの表示パネル2に対応する場合、光学フィルム1の先端位置を簡便且つ正確に位置合わせすることができる。
【0065】
次に、先端吸着プレート39の光学フィルム1の吸着保持を開放し、エアシリンダ(図示せず)により旋回軸38を中心として回転移動し、光学フィルム1より離脱させる。これにより、光学フィルム1を表示パネル2に貼り付けるための圧着ロール40の押付け空間を確保する。
【0066】
次に、圧着ロール40を光学フィルム1側に前進移動させ、吸着プレート22の吸着面と面一の位置で停止させる。これにより、光学フィルム1の吸着面側と面一となる。また、押付けロール44を圧着ロール40の背面側に前進移動させ、圧着ロール40に接触する位置に位置決めする。これにより、光学フィルム1を表示パネル2に貼り付けるために圧着ロール40を押付ける際に発生する圧着ロールのたわみを抑制することができる。また、表示パネルと光学フィルム間の気泡の発生を防止することができる。
【0067】
次に、図7(1)に示すように、昇降プレート20に直線ガイド27を介して設けられた吸着プレート移動フレーム23を、シリンダ46で表示パネル2側に移動させる。これにより、圧着ロール40が光学フィルム1の先端を介して表示パネル2に押付けられ、光学フィルム1が表示パネル2に接着する。
【0068】
この状態から図7(2)に示すように、昇降プレート20をサーボモータ26でボールネジ21を回転させることにより下降移動させる。昇降プレート20を下降移動させる際に圧着ロール40は光学フィルム1を表示パネル2に押付けた状態を保持しながら移動する。これにより、光学フィルム1の粘着材6(図2参照)と表示パネル2とが密着する。そして、後述する吸着プレート22の光学フィルム1の保持機構による吸着力に打ち勝って光学フィルムは引き出される。これにより、吸着プレートから光学フィルム1を引き出しつつ表示パネル2に貼り付けを完了する。
【0069】
光学フィルム1を引き出しつつ表示パネル2に貼り付けを行う際、圧着ロール40は光学フィルム1を表示パネル2に押付けた状態を保持している。このため、光学フィルム1は表示パネル2の傾斜に沿って下降移動する。これにより光学フィルム1と表示パネル2の角度θは先端から終端まで同一角度が保たれることから、貼り付け条件の変動によるムラのない良好な貼り付けを行うことができる。図7(3)は光学フィルム1を表示パネル2に貼り付けを完了した状態を示す。
【0070】
光学フィルム1を引き出され下降移動を完了した吸着プレート22は水平状態に戻される。その後、所定高さ位置に上昇させ、次の光学フィルムを載せるための初期位置に戻る。また、光学フィルム1を貼り付けた表示パネル2はエアシリンダ13により水平状態に戻される。その後、パネルロック機構14によるパネル搬送治具15の固定を解除し、コンベア12によりパネル排出コンベア部C(図3参照)に払い出し、一連の貼り付け運転動作を完了する。
【0071】
以上の一連の運転動作で述べた光学フィルム1の吸着プレート22への供給方法や表示パネル2を供給,排出するパネルコンベア部は特に限定されるものではなく、光学フィルム1を自動供給機を使用することや供給,排出コンベア部に搬送台車を使用することも可能である。
【0072】
次に、吸着プレート22による光学フィルム1の保持機構を説明する。
【0073】
図8(1)に示すように、光学フィルム1の先端を表示パネル2に貼り付けた状態のときは、吸着プレート22に設けられた全ての吸着穴32の表面は光学フィルム1により覆われているため吸着力が作用している。
【0074】
次に、図8(2)に示すように光学フィルム1を表示パネル2に貼り付けるため吸着プレート22が下降する。これにより光学フィルム1は表示パネル2に密着し、吸着プレート22表面を摺動する。このとき、光学フィルム1が表示パネル2側に移動して開放状態となる吸着穴32に接続されている配管の開閉弁35を閉切る。これにより、吸着穴32からの空気漏れによる残りの光学フィルム1を吸着保持している吸着穴32の吸着力の低下を防ぐことができる。開閉弁35の開閉制御タイミングは吸着プレート22の下降量により決定される。移動機構にサーボモータ26とボールネジ21を採用していることから高精度の位置情報から正確な開閉制御を行うことができる。
【0075】
また、光学フィルム1の表示パネル2への貼り付けが先端から終端に近づくにつれて、光学フィルム1に吸着力を作用させる吸着穴32の数が少なくなる。このため、吸着保持力を一定に保つため吸着穴に供給する負圧力を大きくして吸着力を順次上昇させることができる。すなわち、吸着力増減は前述のサーボモータ26とボールネジ21による吸着プレート22の位置情報を用いて、光学フィルム吸着固定用ブロア36の回転数をインバータ37により自動制御する。これにより、光学フィルム1を先端から終端まで同一貼り付け条件を保ち、たるみや気泡のない貼り付けを行うことができる。
【0076】
また、光学フィルム1の吸着保持力をインバータ37により任意に選択できるため、光学フィルム1が吸着プレート22表面を摺動するとき傷がつくことを防止できる。まお、吸着プレートの材質は特に規定するものではないが、光学フィルム1と接触する面に硬質クロムメッキ処理を施すと光学フィルム1の傷発生防止に有効である。
【0077】
以上により、光学フィルム1を表示パネル2に先端から終端までたるみや気泡の混入がなく表面に擦り傷などのない高品位な貼り付け完成品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明に係る光学フィルム貼付装置の腰部概略図である。
【図2】本発明に係る光学フィルムの側面図である。
【図3】本発明に係る光学フィルム貼付装置の平面図である。
【図4】本発明に係る光学フィルム貼付装置の光学フィルム吸着プレートと吸着力発生機構を示す平面図である。
【図5】本発明に係る光学フィルム加圧ロール機構を示す概略図である。
【図6】光学フィルムの貼付工程における先端から後端までの貼付方法を説明する断面図である。
【図7】図6のフィルムの貼付工程の続きを示す図である。
【図8】光学フィルムの貼付工程における光学フィルム保持方法を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0079】
1 光学フィルム
2 表示パネル
7 保護フィルム
15 パネル搬送治具
22 吸着プレート
32 吸着穴
39 先端吸着プレート
40 圧着ロール
44 押付けロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板に見合う大きさで一方の面を粘着面としたシート状のフィルムとを有し、前記フィルムの粘着面に設けられた保護フィルムを剥離して前記基板に貼り付けるフィルム貼付方法において、
前記基板を保持して略鉛直方向に載置し、
前記フィルムを先端部吸着プレートと吸着プレートで保持して、前記基板に対向させて、先端部を位置合せ後、前記吸着プレート側に設けた圧着ローラで加圧接着し、前記圧着ローラによる加圧を保持した状態で前記吸着プレートを鉛直方向下側に移動することで前記基板に前記フィルムを貼り付けることを特徴とするフィルム貼付方法。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルム貼付方法において、前記フィルムの先端部に対応する先端吸着プレートと先端以外のフィルムの領域に対応する吸着プレートで保持したフィルムを鉛直方向に起立させ、前記基板を前記吸着プレート側に所定量傾斜保持し、前記フィルムの先端位置に圧着ロールを押付けた状態で前記圧着ロールを鉛直方向下側に移動させて、前記フィルムの先端から終端まで一定に保たれた状態で圧着ロールによる前記フィルムの貼り付けを行うことを特徴とするフィルム貼付方法。
【請求項3】
請求項2に記載のフィルム貼付方法において、前記圧着ローラには前記圧着ローラの背面側から前記圧着ローラを押付ける複数の押付けローラにより前記フィルムを前記基板に押付ける際に発生するたわみを抑制することを特徴とするフィルム貼付方法。
【請求項4】
基板と、前記基板に見合う大きさとしたシート状のフィルムを、前記フィルムの粘着面に設けられた保護フィルムを剥離して前記基板に貼り付けるフィルム貼付方法において、
前記フィルムの先端部を先端吸着プレートで保持し、前記先端部以外のフィルムの領域を吸着プレートで保持して、前記フィルムを前記基板に貼り付けながら前記フィルムが前記吸着プレート面から剥され移動する際、前記吸着プレートに設けられた吸着穴列に送る負圧を前記フィルムの移動量により制御することを特徴とするフィルム貼付方法。
【請求項5】
基板と、前記基板に見合う大きさとしたシート状のフィルムを、前記フィルムの粘着面に設けられた保護フィルムを剥離して前記基板に貼り付けるフィルム貼付装置において、
前記基板を保持して鉛直方向であって、前記フィルムに対して所定量傾斜させて保持する基板起立機構と、
前記フィルムを前記保護フィルムとは反対面側で前記基板の一辺側に対応する前記フィルムの先端部を吸着保持する先端吸着プレートと前記先端部以外のフィルムの領域を吸着保持する吸着プレートと、前記先端吸着プレートと前記吸着プレートを鉛直方向に起立させる吸着プレート起立機構と、前記先端吸着プレートをフィルムの先端部側から離脱させる先端吸着プレート解除離脱手段とを備えたことを特徴とするフィルム貼付装置。
【請求項6】
請求項5に記載のフィルム貼付装置において、
前記フィルムを吸着保持する前記吸着プレートには、複数の吸着穴列を設けてあり、吸着穴列が複数のゾーンに区分され、前記ゾーン毎に負圧を供給する吸引配管が接続され、それぞれの吸引配管には開閉弁が設けてあることを特徴とするフィルム貼付装置。
【請求項7】
請求項6に記載のフィルム貼付装置において、
前記吸着プレートに吸着保持されている前記フィルムの位置に応じて前記開閉弁の開閉及び吸着穴に供給する負圧力を可変する制御手段を備えたことを特徴とするフィルム貼付装置。
【請求項8】
請求項5に記載のフィルム貼付装置において、
前記フィルムを加圧して基板に圧着する圧着ローラの背面に前記圧着ローラを押付ける複数の押付けローラを設けたことを特徴とするフィルム貼付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−162230(P2008−162230A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26(P2007−26)
【出願日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【出願人】(596143200)株式会社サンキテクノス (5)
【Fターム(参考)】