説明

フィルム貼着金属缶及びその製造方法

【課題】新規な視覚的効果を有する美観・装飾性に優れたフィルム貼着金属缶を提供する。
【解決手段】缶胴体外面となる金属板の表面に接着剤を介して樹脂フィルムが貼着されたフィルム貼着金属缶において、金属板表面側から順に、(A)熱硬化性接着剤層、(B)グラビア印刷インキ層、(C)ポリエステル樹脂フィルム層、(D)オフセット印刷インキ層、及び(E)熱硬化性クリヤー塗膜層が形成されていることを特徴とするフィルム貼着金属缶。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルム貼着金属缶及びその製造方法、特にその美観・装飾性を向上させたフィルム貼着金属缶及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲食品等の缶詰容器として使用する金属製缶の外面には、単なる内容物の表示に留まらず、外観によって商品の差別化を図り、さらには商品イメージの増進を図る目的で、多様な装飾が施されている。また、近年では、デザイン面での優位を確保するために、金属缶に特殊な視覚上の効果を付与することが望まれており、例えば、金属缶の外面に直接印刷するのではなく、予め印刷されたポリエステル樹脂フィルムを貼着することで、美観・装飾性の向上を図る試みが広く行われている。このような印刷フィルムを用いた場合には、従来の缶体外面に直接印刷する方法と比較して、多様な印刷方法を選択することが可能となるため、装飾効果が高く、加えて良好な印刷品質が得られるという利点がある。
【0003】
また、以上のような印刷フィルムにおいて、グラビア印刷インキ中にパール顔料やシルバー顔料と呼ばれる顔料を添加することによって、真珠光沢あるいは鏡面光沢(メタリック感)といった特殊な視覚的効果を付与することができ、優れた美観・装飾性を有する金属缶が得られることが知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。しかしながら、これらの金属缶においては、パール顔料やシルバー顔料特有の真珠光沢や鏡面光沢により、角度によって色調が異なる等の優れた視覚的効果が得られる反面、ギラギラした感じがする等、その外観が必ずしも需要者に好まれない場合もあった。このため、多様な需要者の要求に応えるべく、従来以上のさらなる美観・装飾性の向上が求められていた。
【0004】
【特許文献1】特開平8−198272号公報
【特許文献2】特開2003−200521号公報
【特許文献3】特開2003−200522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みて行われたものであり、その目的は、新規な視覚的効果を有する美観・装飾性に優れたフィルム貼着金属缶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明者らが鋭意検討を行った結果、特定組成の樹脂成分を含む熱硬化性接着剤を用いることによって、パール顔料又はシルバー顔料を添加したグラビア印刷インキ層と、発泡インキを添加したオフセット印刷インキ層とを、ポリエステル樹脂フィルムの両面に設けることが可能となり、従来の印刷方法と比較して製缶コストが低減されることを見出した。そして、これにより得られたフィルム貼着金属缶においては、従来にない新規な視覚的効果、すなわち、(発泡インキを添加したオフセット印刷インキ層がない)従来のグラビア印刷インキ層を有する印刷フィルムの光沢感が約半分程度抑えられたマット調(艶消し状態)の外観が得られ、美観、装飾性に非常に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明にかかるフィルム貼着金属缶は、缶胴体外面となる金属板の表面に接着剤を介して樹脂フィルムが貼着されたフィルム貼着金属缶において、金属板表面側から順に、(A)熱硬化性接着剤層、(B)グラビア印刷インキ層、(C)ポリエステル樹脂フィルム層、(D)オフセット印刷インキ層、及び(E)熱硬化性クリヤー塗膜層が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
また、前記貼着金属缶において、(A)熱硬化性接着剤層に含まれるポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgが20〜45℃であることが好適である。
また、前記フィルム貼着金属缶において、(A)熱硬化性接着剤層に含まれる樹脂成分が、樹脂成分全量中、ポリエステル樹脂80〜97質量%、ウレタン樹脂2〜10質量%、ポリエステルアクリレート1〜10質量%を含む樹脂成分であることが好適である。
【0009】
また、前記フィルム貼着金属缶において、(B)グラビア印刷インキ層が、パール顔料又はシルバー顔料を含むことが好適である。
また、前記フィルム貼着金属缶において、(D)オフセット印刷インキ層が、発泡インキを含むことが好適である。
また、前記フィルム貼着金属缶において、発泡インキに含まれる膨張前のマイクロカプセル粒子径が5〜15μmであることが好適である。
【0010】
また、本発明にかかる第一のフィルム貼着金属缶の製造方法は、缶胴体外面となる金属板の表面に接着剤を介して樹脂フィルムが貼着されたフィルム貼着金属缶の製造方法において、帯状のポリエステル樹脂フィルムにグラビア印刷を行うグラビア印刷工程と、前記工程により得られた帯状のフィルムのグラビア印刷がなされた表面の上に熱硬化性接着剤を塗布する熱硬化性接着剤塗布工程と、前記工程により得られたフィルムを金属板に積層するフィルム積層工程と、前記工程により得られた帯状のフィルム積層金属板をその長手方向で複数缶分となる長さのシート毎に切断するせん断工程と、前記工程により得られたフィルム積層金属板の金属板が積層された面と反対側のフィルム表面にオフセット印刷を行うオフセット印刷工程と、前記工程により得られたフィルム積層金属板のオフセット印刷がなされた表面の上に熱硬化性クリヤー塗膜を塗布する熱硬化性クリヤー塗膜塗布工程と、前記工程により得られたフィルム積層金属板から一缶分に相当する寸法のブランクを切り出し、円筒状の缶体を製造する工程とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明にかかる第二のフィルム貼着金属缶の製造方法は、缶胴体外面となる金属板の表面に接着剤を介して樹脂フィルムが貼着されたフィルム貼着金属缶の製造方法において、帯状のポリエステル樹脂フィルムにグラビア印刷を行うグラビア印刷工程と、前記工程により得られたフィルムのグラビア印刷がなされた表面の上に熱硬化性接着剤を塗布する熱硬化性接着剤塗布工程と、前記工程により得られた帯状フィルムをリールから巻解きながら一缶分毎の大きさのフィルムシートに切断して、このフィルムシートを別途製造した有底円筒状缶体に向けて送り込み、各缶体で胴部外面を略一周するようにフィルムシートを貼着するフィルム貼着工程と、前記工程により得られたフィルム貼着金属缶の金属缶が貼着された面と反対側のフィルム表面にオフセット印刷を行うオフセット印刷工程と、前記工程により得られたフィルム貼着金属缶のオフセット印刷がなされた表面の上に熱硬化性クリヤー塗膜を塗布する熱硬化性クリヤー塗膜塗布工程とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特定組成の樹脂成分を含む熱硬化性接着剤を用いることによって、(パール顔料又はシルバー顔料を添加した)グラビア印刷インキ層と、(発泡インキを添加した)オフセット印刷インキ層とを、ポリエステル樹脂フィルムの両面に設けることが可能となり、従来の印刷方法と比較して製缶コストが低減される。また、これにより得られたフィルム貼着金属缶は、従来にない新規な視覚的効果、すなわち、従来のグラビア印刷インキ層を有する印刷フィルムの光沢感が約半分程度抑えられたマット調(艶消し状態)の外観を有しており、美観、装飾性に非常に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の構成について詳しく説明する。図1に、本発明にかかるフィルム貼着金属缶の外側部分の拡大断面図を示す。
図1に示すように、本発明にかかるフィルム貼着金属缶10においては、金属板12の表面側から順に、(A)熱硬化性接着剤層14、(B)グラビア印刷インキ層16、(C)ポリエステル樹脂フィルム層18、(D)オフセット印刷インキ層20、及び(E)熱硬化性クリヤー塗膜層22が形成されている。
【0014】
なお、通常、フィルム貼着金属缶の製造において、ポリエステル樹脂フィルムの両面に、グラビア印刷インキ層と、オフセット印刷インキ層とを設けようとした場合には、まず最初に、ポリエステル樹脂フィルムの片面にグラビア印刷を行い、さらに熱硬化性接着剤層とを塗布した上で、後のオフセット印刷の工程のために、一旦、フィルムを巻き取る必要が生じる。しかしながら、この巻き取り工程の際、従来の熱硬化性接着剤を用いた場合には、熱硬化性接着剤層とポリエステル樹脂フィルム層とがくっついてしまうブロッキング現象が生じてしまうため、これに続くオフセット印刷を行うことが難しかった。また、オフセット印刷インキ層と熱硬化性クリヤー層とを焼き付ける際、通常、180〜190℃で5〜10分程度加熱処理を行う必要があり、熱硬化性接着剤の凝集破壊が生じてしまうという問題もあった。
【0015】
これに対して、本発明にかかるフィルム貼着金属缶10は、特定組成の樹脂成分を含む(A)熱硬化性接着剤14を用いることによって、(B)グラビア印刷インキ層16と、(D)オフセット印刷インキ層20とを、(C)ポリエステル樹脂フィルム18の両面に設けることを可能としたものであり、これによって、従来の印刷方法と比較して製缶コストが低減される。また、これにより得られたフィルム貼着金属缶は、(B)グラビア印刷インキ層16においてパール顔料又はシルバー顔料を、(D)オフセット印刷インキ層20において発泡インキを配合することで、従来にない新規な視覚的効果、すなわち、従来のグラビア印刷インキ層を有する印刷フィルムの光沢感が約半分程度抑えられたマット調(艶消し状態)の外観を有しており、美観、装飾性に非常に優れているものである。
【0016】
金属板
金属板12は、通常、缶体として用いられる金属板であればよく、例えば、アルミニウム板、ステンレススチール板、ティンフリースチール板、ブリキ板、クロムメッキ鋼板、アルミメッキ鋼板、ニッケルメッキ鋼板、ターンメッキ鋼板、その他の各種メッキ鋼板等の表面処理鋼板、及び金属板の表面を、熱硬化型や紫外線硬化型の塗料により被覆、あるいは熱可塑性樹脂により被覆した樹脂被覆金属板を用いることができる。また、金属板の厚さも、特に限定されることなく、金属缶の用途に応じて適宜調整して用いればよいが、通常の場合、0.175〜0.25mm程度である。
【0017】
(A)熱硬化性接着剤層
(A)熱硬化性接着剤層14は、特定組成の樹脂成分を有するものであり、該熱硬化性接着剤に含まれるポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは20〜45℃、特に好ましくは27〜45℃である。ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgが前記範囲を外れると、巻き取りの際に熱硬化性接着剤層とポリエステル樹脂フィルム層とがくっついてしまうブロッキング現象を生じたり、あるいはオフセット印刷インキ層及び熱硬化性クリヤー層の焼き付けの際、加熱による凝集破壊が生じてしまう場合がある。なお、(A)熱硬化性接着剤としては、前記ポリエステル樹脂のほか、トルエン、メチルエチルケトン等の溶剤成分や酸化チタン等の体質顔料成分を含んでいてもよい。
【0018】
また、(A)熱硬化性接着剤層14における樹脂成分としては、樹脂成分全量中、ポリエステル樹脂80〜97質量%、ウレタン樹脂2〜10質量%、ポリエステルアクリレート1〜10質量%を含むことが好ましく、さらに好ましくは、ポリエステル樹脂84〜94質量%、ウレタン樹脂4〜8質量%、ポリエステルアクリレート2〜8質量%を含むことが好ましい。樹脂成分の組成が前記範囲を逸脱すると、以上に説明したブロッキング現象及び加熱凝集破壊を生じてしまう恐れがあるほか、ポリエステル樹脂が97質量%よりも多い場合には、相対的に硬化剤成分(ウレタン樹脂、ポリエステルアクリレート)が少なくなって密着力が弱くなり、また、ポリエステル樹脂が80質量%よりも少ない場合には、相対的に硬化剤成分が多くなることで接着剤の凝集破壊が発生し、いずれも層間剥離を生じる場合がある。
【0019】
また、(A)熱硬化性接着剤層14の厚さは、5〜6μmであることが好ましい。5μmよりも薄いと、密着性が低下して層間剥離を生じてしまい、フィルムの成形性が悪くなる場合がある。また、6μmよりも厚いと、巻き取りの際に熱硬化性接着剤層とポリエステル樹脂フィルム層とがくっついてしまうブロッキング現象を生じる場合がある。
【0020】
(B)グラビア印刷インキ層
(B)グラビア印刷インキ層16は、金属缶の目的・用途等に応じた文字やデザインがグラビア印刷されたインキ層であって、特にパール顔料又はシルバー顔料を含んでいることが好ましい。パール顔料又はシルバー顔料を配合することによって、真珠光沢あるいは鏡面光沢(メタリック感)といった特殊な視覚的効果を付与することができる。パール顔料としては、例えば、微細薄片状粉末の外側を金属酸化物等によって被覆した粉末を用いることができ、具体的には、酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆シリカ、酸化チタン被覆アルミニウム等が挙げられる。パール顔料としては、粒子径5〜25μm(平均粒径約15μm)、厚み5〜15μm程度が好ましい。また、シルバー顔料としては、例えば、アルミニウム等の金属を蒸着した剥離片(金属を真空中で蒸発させてフィルム基材の表面に薄い金属被膜を凝固させ、その後にフィルム基材から金属被膜を剥離して細分化したもの)を用いることができる。シルバー顔料としては、所望の輝度に応じて、それぞれ、低輝度:粒子径10〜20μm(平均粒径約15μm)、厚み5〜6μm、高輝度:粒子径20〜30μm(平均粒径約20μm)、厚み5〜6μm、超高輝度:粒子径10〜80μm(平均粒径約30μm)、厚み5〜8μm程度が好ましい。また、パール顔料又はシルバー顔料は、インキ全量中、10〜25質量%(鏡面シルバー顔料においては1〜5質量%)であることが好ましい。なお、(B)グラビア印刷インキ層16としては、前記パール顔料又はシルバー顔料のほか、トルエン、メチルエチルケトン等の溶剤成分や酸化チタン等の体質顔料成分、さらには他の各種顔料成分を含んでいてもよい。
【0021】
また、(B)グラビア印刷インキ層16の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、
0.5〜5μm程度である。0.5μmよりも薄いと、インキの濃さが薄くなり、所望の視覚効果が得られない場合があり、また、5μmよりも厚いと、金属板12と(C)ポリエステル樹脂フィルム層18との接着がしにくくなる場合がある。なお、図1においては、便宜上、(B)グラビア印刷インキ層16を均一な一層として表現しているが、実際には、局所的にインキが付着した状態となっている場合があり、インキの付着していない箇所においては、(C)ポリエステル樹脂フィルム層18と(A)熱硬化性接着剤層14とが直接密着している。
【0022】
(C)ポリエステル樹脂フィルム層
(C)ポリエステル樹脂フィルム層18は、通常、フィルム印刷に用いられるポリエステル樹脂フィルムであればよく、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のジオール成分と、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸等のジカルボン酸成分との重縮合によって得られるポリエステル樹脂を用いることができ、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム等が挙げられる。また、(C)ポリエステル樹脂フィルム層18の厚さは、5〜25μm程度であることが好ましい。5μmより薄いと、フィルムに傷が付いた際に破れてしまい、金属板12が腐食してしまう場合があり、また、25μmよりも厚いと、透明性が低くなり、内層のグラビア印刷が見えにくくなる場合がある。
【0023】
(D)オフセット印刷インキ層
(D)オフセット印刷インキ層20は、金属缶の目的・用途等に応じた文字やデザインがオフセット印刷されたインキ層であって、特に発泡インキを含んでいることが好ましい。前記(B)グラビア印刷インキ層16にパール顔料又はシルバー顔料が配合されている場合に、(D)オフセットインキ層20において発泡インキを用いることで、パール顔料等に起因するギラギラ感が光の拡散作用によって抑えられ、従来にない新規な視覚的効果、すなわち、従来のグラビア印刷インキ層を有する印刷フィルムの光沢感が約半分程度抑えられたマット調(艶消し状態)の外観が得られる。発泡インキは、例えば、熱膨張性のマイクロカプセル粒子を有した透明インキを用いることができる。マイクロカプセル粒子の粒子径は、膨張前で約5〜15μmであることが好ましく、このマイクロカプセル粒子は、膨張後に約4〜5倍になる。また、発泡インキは、インキ全量中、2〜4質量%であることが好ましい。なお、(D)オフセット印刷インキ層20としては、前記発泡インキのほか、トルエン、メチルエチルケトン等の溶剤成分や酸化チタン等の体質顔料成分、さらには他の各種顔料成分を含んでいてもよいが、前記(B)グラビア印刷インキ層16の視覚的効果を発揮するために、ある程度の光を透過する(透明性を有する)ものである必要がある。なお、本発明において、オフセット印刷とは、ドライオフセット印刷及びウォーターレス・オフセット印刷も含むものである。
【0024】
(D)オフセット印刷インキ層20の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、5〜10μm程度である。10μmよりも厚いと、透明性が低くなる場合があるほか、発泡インキを配合した場合には、層が厚くなる分発泡インキに含まれる発泡成分(マイクロカプセル粒子)が多く含まれることで発泡しすぎてしまい、最外層にあるクリヤー塗膜層が破泡しすぎてざらざらになり、表面の質感が悪く、従来のグラビア印刷インキ層を有する印刷フィルムの光沢感が約半分程度抑えられたマット調(艶消し状態)の外観が得られず、光沢感がまったく無くなってしまう場合がある。また、5μmより薄いと、発泡インキに含まれる発泡成分が少なく、表面で破泡することがほとんどないため、光の拡散効果が得られず、所望の視覚的効果、すなわち、従来のグラビア印刷インキ層を有する印刷フィルムの光沢感が約半分程度抑えられたマット調(艶消し状態)の外観が得られない場合がある。なお、図1においては、便宜上、(D)オフセット印刷インキ層20を均一な一層として表現しているが、実際には、局所的にインキが付着した状態となっている場合があり、インキの付着していない箇所においては、(C)ポリエステル樹脂フィルム層18と(E)熱硬化性クリヤー塗膜層22とが直接密着している。
【0025】
(E)熱硬化性クリヤー塗膜層
(E)熱硬化性クリヤー塗膜層22は、通常、印刷フィルムが接着された金属缶体の最外表面を保護する目的で用いられる透明の熱硬化性の塗膜であって、例えば、アクリルメラミン樹脂を用いることができる。なお、(E)熱硬化性クリヤー塗膜層22の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、5〜8μm程度である。5μmよりも薄いと、(D)オフセット印刷インキ層20に発泡インキを配合した場合に表面が破泡しすぎてざらざらになり、外観が不良になる場合がある。8μmよりも厚いと、発泡インキを配合した場合にすべて層内部で発泡してしまい、表面で破泡することがないために光の拡散効果が得られず、所望の視覚的効果、すなわち、従来のグラビア印刷インキ層を有する印刷フィルムの光沢感が約半分程度抑えられたマット調(艶消し状態)の外観が得られない場合がある。
【0026】
缶の種類
また、通常、金属缶は、その形状によって、(1)底蓋、天蓋、及び溶接、接着等により継ぎ合わされた缶胴部の三つの部材からなるスリーピース缶、(2)缶底が一体化された缶胴部と、天蓋との二つの部材からなるツーピース缶、(3)開口部にネジ部が形成された缶胴部と、そのネジ部に螺合するキャップと、底蓋とからなるボトル型缶、(4)開口部にネジ部が形成された缶胴部と、そのネジ部に螺合するキャップと、缶胴部と一体成形された底部とからなるボトル型缶の4種類に大別される。本発明にかかるフィルム貼着金属缶は、これらいずれの形状の金属缶であってもよく、更には、金属チューブ容器や箱型の金属容器(容器の蓋板部分のみの場合も含む)等としてもよく、適切な印刷手段・塗布手段等を適宜選択することで、いずれの製法であってもフィルム貼着金属缶として製造することが可能である。
【0027】
製造方法
本発明において、コイルにフィルムを貼着するタイプのフィルム貼着金属缶(例えば、スリーピース缶)は、(1)帯状のポリエステル樹脂フィルムにグラビア印刷を行うグラビア印刷工程、(2)前記工程により得られた帯状のフィルムのグラビア印刷がなされた表面の上に熱硬化性接着剤を塗布する熱硬化性接着剤塗布工程、(3)前記工程により得られたフィルムを金属板に積層するフィルム積層工程、前記工程により得られた帯状のフィルム積層金属板をその長手方向で複数缶分となる長さのシート毎に切断するせん断工程、(4)前記工程により得られたフィルム積層金属板の金属板が積層された面と反対側のフィルム表面にオフセット印刷を行うオフセット印刷工程、(5)前記工程により得られたフィルム積層金属板のオフセット印刷がなされた表面の上に熱硬化性クリヤー塗膜を塗布する熱硬化性クリヤー塗膜塗布工程の順でフィルム貼着金属板を製造し、前記工程により得られたフィルム積層金属板から一缶分に相当する寸法のブランクを切り出し、円筒状の缶体を製造する工程を行うことによって、スリーピース缶等の所望の形状のフィルム貼着金属缶に成形する。なお、上記フィルム積層工程及びせん断工程においては、例えば、金属板の幅方向で例えば2〜6mmなどのように所定の間隔を設けて、例えば4条などのように複数条のフィルムを鋼板の長手方向にそって連続して熱貼着する。そして、複数条のフィルムが貼着された錫メッキ鋼板をその長手方向で複数缶分となる長さのシート板(例えば幅方向4〜6条、長手方向6〜10缶分の長さ)毎に切断することができる。
【0028】
また、円筒状体の外面にフィルムを貼着するタイプのフィルム貼着金属缶(例えば、ツーピース缶、ボトル缶等)においては、(1)帯状のポリエステル樹脂フィルムにグラビア印刷を行うグラビア印刷工程、(2)前記工程により得られたフィルムのグラビア印刷がなされた表面の上に熱硬化性接着剤を塗布する熱硬化性接着剤塗布工程、(3)前記工程により得られた帯状フィルムをリールから巻解きながら一缶分毎の大きさのフィルムシートに切断して、このフィルムシートを別途製造した有底円筒状缶体に向けて送り込み、各缶体で胴部外面を略一周するようにフィルムシートを貼着するフィルム貼着工程、(4)前記工程により得られたフィルム貼着金属缶の金属缶が貼着された面と反対側のフィルム表面にオフセット印刷を行うオフセット印刷工程、(5)前記工程により得られたフィルム貼着金属缶のオフセット印刷がなされた表面の上に熱硬化性クリヤー塗膜を塗布する熱硬化性クリヤー塗膜塗布工程の順でフィルム貼着金属缶を製造し、公知の方法によってツーピース缶、ボトル缶等の所望の形状のフィルム貼着金属缶に成形する。
【0029】
上記したフィルム貼着金属板の製造にかかる(1)〜(5)の各工程は、当業者において公知の方法により行うことができ、例えば、上記(1),(2)工程はグラビア印刷法、上記(4)工程は枚葉オフセット印刷法、上記(5)工程はロールコートによって行うことができる。
また、フィルム貼着金属缶の製法についても、スリーピース缶、ツーピース缶、ボトル缶等の所望の形状に応じ、当業者において公知の方法によって製造すればよく、例えば、特開昭10−80975号公報、特開2003−200521号公報等に記載されている方法にしたがって、本発明にかかるフィルム貼着金属缶を製造することができる。
【0030】
スリーピース缶であるメガネ缶の製造工程の説明図を図6に示す。なお、本発明にかかるフィルム貼着金属缶をスリーピース缶とする場合、前記(1)〜(5)の各工程により製造したフィルム貼着金属板を原料として、図6に示される(a)〜(h)の工程を実施することによって製造される。
【0031】
すなわち、第1のせん断工程(a)では、前記(1)〜(5)の各工程により製造したフィルム貼着金属板が、その長手方向で複数缶分となる長さのシート板毎に切断される。さらに、第2のせん断工程(b)では、シート板から1缶に相当する寸法の矩形形状の(c)に示すブランクが切り出される。そして、フォーミング工程(d)では、溶接缶胴成形装置によって、ブランクが円筒状に丸められる。そして、溶接工程(e)では、周方向の重ね合わせられた両端縁部分が溶接接合されて、缶胴部となる。次に、円筒状に形成された缶胴に対して缶胴溶接部の非ラミネート部分を保護するための補修塗装(図示せず)が施され、さらに、この塗装された塗料を乾燥させるために加熱乾燥が行なわれる。すなわち、この加熱乾燥工程(MCH工程)は、150〜230℃の加熱温度に缶胴を加熱することにより、缶胴溶接部の非ラミネート部分に形成された補修塗装層を乾燥させている。これと同時に、上述した工程で切断処理されて生成された切断端部のうちの缶内面側に位置する切断端部では、その保護被膜である熱可塑性フィルムの剥離が生じるのに対して、熱硬化型接着剤の硬化収縮に伴う引き連れによって、このような熱可塑性フィルムの剥離部を50%以上収縮させて、フィルムの剥離部分がそれ以上に広がらないようにしている。次に、ネック加工工程(f)では、缶胴の一方の開口端側がネック加工され、フランジ加工(g)では、フランジ加工される。そして、二重巻き締め工程(h)では、この開口端部に天蓋が巻締められて、一端が開口された円筒状の缶胴部が製作される。その後に、他方の開口端から内容物が充填され、地蓋が二重巻締めにより開口端に装着されて溶接缶が密封される。そして、溶接缶には、例えば30分の間125℃に加熱して温度を保持するレトルト処理が行われて、最終的な製品となる。
【0032】
つづいて、ツーピース缶であるDI缶の製造工程の説明図を図7に示す。なお、本発明にかかるフィルム貼着金属缶をツーピース缶とする場合、図7に示される(a)〜(e)の工程を行った後、前記(1),(2)の各工程により製造したポリエチレン樹脂フィルム(グラビア印刷層及び熱硬化性接着剤層を塗布したポリエステル樹脂フィルム)を、缶胴外面に貼着し、ついでポリエステル樹脂フィルム表面に対して前記(4),(5)の各工程(オフセット印刷工程,熱硬化性クリヤー塗膜塗布工程)を行った後に、図7に示す(f)〜(h)の工程を実施することによって製造される。
【0033】
カップ成形工程(a)では、まず、金属板を円形に切断したブランクから、絞り加工によりカップが成形される。すなわち、円盤状に打抜いた金属板をしわ押さえ装置により押さえ付けながら、ポンチとダイスを組み合わせた工具によって底付きのカップ状に成形する。次に、ボディ成形工程(b)で、そのカップにDI(Drawing & Ironing)加工が施される。すなわち、絞り加工としごき加工(これらの加工時に成形用パンチによる底部のプレス加工を含む)によって、絞り成形されたカップの側壁が薄く引き伸ばされ、深絞りカップ状に成形する。さらに、トリミング工程(c)で、その開口端が切除されて、所定の缶高寸法となるようにトリミングされる。そして、脱脂・化成処理工程(d)では、缶内外表面に処理液(以下、工業用水、薬液、イオン交換水を含めて処理液と記す)が噴霧されて表面処理が施され、上記の絞り成形・しごき加工を行う際に付着された潤滑剤が除去されるとともに、缶胴部の内外面に腐食防止のための燐酸−クロム系、ジルコニウム系、燐酸−鉄系、燐酸−錫系、燐酸−錫−ジルコニウム−有機樹脂系の化成処理剤等、適宜な表面化成処理が行われる。次に、加熱乾燥炉で乾かされ、乾燥後の第1の保護塗装工程(e)では、その缶外面側で胴部と底部との境界線に沿った両側の所定範囲内に硬化型塗料による塗装が施されて、保護被膜が形成される。その乾燥後、前記(1),(2)の各工程により製造したポリエチレン樹脂フィルム(グラビア印刷層及び熱硬化性接着剤層を塗布したポリエステル樹脂フィルム)を缶胴外面に貼着する。すなわち、前記工程により得られた帯状のポリエチレン樹脂フィルムを、リールから巻解きながら一缶分毎の大きさのフィルムシートに切断して、このフィルムシートを、別途製造した有底円筒状缶体に向けて送り込み、各缶体で胴部外面を略一周するようにフィルムシートを貼着する。ついで該缶胴外面に貼られたポリエステル樹脂フィルムの表面上に、前記(4),(5)の各工程、すなわち、オフセット印刷工程及び熱硬化性クリヤー塗膜塗布工程が順次行われる。さらに、第2の保護塗装工程(f)では、缶底が接地する部分に塗装が施され、第3の保護塗装工程(g)では、缶内面と底部の外面に塗料がスプレー塗布され、加熱乾燥される。そして、製造工程の最終段階では、ネックイン加工とフランジ加工とからなるネック・フランジ加工(h)が施され、円筒状の胴部の上端付近がネック部として縮径化されるとともに、このネック部の上端にフランジ部が形成されて、フィルムが貼着されたDI缶の缶体が製造される。
【0034】
また、本発明にかかるフィルム貼着金属缶を、開口部にネジ部が形成された缶胴部と、そのネジ部に螺合するキャップと、底蓋とからなるボトル型缶とする場合には、絞りしごき加工等によって縦長カップを成形し、該カップの底部側を複数回絞り加工することによって小径の有底円筒部と傾斜状の肩部とを成形して、次に潤滑剤を除去した後に、縦長カップの胴部外面にグラビア印刷層と熱硬化性接着剤層を備えたフィルムを貼着し、その上にロール塗装を実施し、その後、小径の有底円筒部の先端部を切断して除去した後、その先端部にカール部を成形し、その下方にネジ部を成形し、最後に縦長カップの胴部の開口端に底蓋と巻締め固着してフィルムが貼着された底蓋を備えたボトル缶が製造される。
【0035】
また、本発明にかかるフィルム貼着金属缶を、開口部にネジ部が形成された缶胴部と、そのネジ部に螺合するキャップと、缶胴部と一体成形された底部とからなるボトル型缶とする場合には、絞りしごき加工等により縦長カップを成形した後(潤滑剤を除去した後)、該カップの胴部外面にグラビア印刷層と熱硬化性接着剤層を備えたフィルムを貼着し、該フィルムの上にロール塗装を実施し、次に、開口部側を多段のネックイン加工を施して小径円筒部と傾斜状肩部を成形した後、開口部にネジ部を成形してフィルムが貼着された缶胴部と底部が一体成形されたボトル缶が製造される。
【実施例】
【0036】
つづいて、本発明にかかるフィルムラミネート溶接缶胴用ブランクの製造例を示し、本発明についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
製造例1
ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(1m巾×500m、厚み12μm)に、所望の文字及びデザインをグラビア印刷した。ここで、グラビア印刷インキとして、パール塗料(メチルエチルケトン20〜30%,トルエン15〜25%,顔料10〜20%,合成樹脂類5〜15%,イソプロピルアルコール5〜15%,酸化チタン5〜15%,メチルイソブチルケトン1〜10%,工業用キシレン5%未満,助剤5%未満,その他5%未満)を用いた。
つづいて、前記工程で得られたポリエチレンテレフタレートフィルムのグラビア印刷がなされた面と同じ側の表面上に、熱硬化性接着剤を塗布した。ここで、熱硬化性接着剤の組成は、ポリエステル樹脂14質量%(Tg=30℃)、ウレタン樹脂2質量%、ポリエステルアクリレート1質量%、酸化チタン31質量%,トルエン26質量%,メチルエチルケトン26質量%とした(樹脂成分組成/ポリエステル樹脂:ウレタン樹脂:ポリエステルアクリレート樹脂=82:12:6)。
【0037】
特開平10−80975公報に記載のフィルム貼着方法にしたがって、前記工程で得られたポリエチレンテレフタレートフィルムを巻き出し機に巻きつけ、別途、巻き出し機に巻きつけた錫メッキ鋼板(1m巾×500m,厚み0.18mm)とともに貼着装置へと巻きだして、貼着ロールの手前で、溶接継目となる非ラミネート部分(本例は幅4mm)に相当する部分をフィルムの長手方向に切断して除去してから、100〜180℃に加熱した金属ロールとゴムロールとでフィルムの先端部分を金属コイルに圧着、全面貼着し、フィルムラミネート錫メッキ鋼板とした。なお、ラミネート速度は約200m/分であった。この結果、鋼板の幅方向で4mmの間隔を設けて、4条のフィルムが鋼板の長手方向にそって連続して熱貼着された。そして、複数条のフィルムが貼着された錫メッキ鋼板がその長手方向で複数缶分となる長さのシート板(幅方向4条、長手方向6缶分長さ)毎に切断した。
つづいて、前記工程で得られたフィルムラミネート錫メッキ鋼板のシート板の外表面、すなわち、錫メッキ鋼板が積層された面と反対側の表面上の非ラミネート部分等を除いた印刷部分上に、所望の文字及びデザインをオフセット印刷或いは印刷部分全面にオフセット印刷した。ここで、オフセット印刷インキとして、発泡インキ塗料(顔料5〜40%,アルキッド樹脂45〜75%,高沸点石油系溶剤10〜25%,添加剤5%以下、発泡カプセル(マイクロカプセル平均粒径約6μm,加熱膨張率約4倍)3%)を用いた。
さらに、前記工程で得られたフィルムラミネート錫メッキ鋼板のオフセット印刷がなされた面と同じ側の表面上に、熱硬化性クリヤー塗料(アクリル樹脂24%,メラミン樹脂24%,低沸点芳香族ナフサ6.2%,高沸点芳香族ナフサ11%,n−ブタノール15%,エチレングリコールモノブチルエーテル19%,その他)を塗布し、180℃で10分間加熱して、フィルムラミネート錫メッキ鋼板は、その後、スリーピース缶用の溶接缶胴用ブランクとして用いるため、10.5×16.5cmにせん断した。
【0038】
図2に、以上のようにして得られた製造例1のフィルムラミネート溶接缶胴用ブランク110の拡大断面図を示す。
製造例1により得られたフィルムラミネート溶接缶胴用ブランク110には、錫メッキ鋼板112の表面側から順に、(A)熱硬化性接着剤層114、(B)グラビア印刷インキ層116、(C)ポリエステル樹脂フィルム層118、(D)オフセット印刷インキ層120、及び(E)熱硬化性クリヤー塗膜層122が形成されている。そして、(B)グラビア印刷インキ層116には、パール顔料124を含有しており、また、(D)オフセット印刷インキ層120及び(E)熱硬化性クリヤー塗膜層122には、発泡インキによる発泡痕126が形成されている。
【0039】
製造例1のフィルムラミネート缶胴用ブランク110において、缶の外側(図の上側)から光が当った場合、光は(E)〜(C)の各層122〜118を順に通過して、(B)グラビア印刷インキ層116まで到達した際に、(B)グラビア印刷インキ層116に含まれるパール顔料124により反射されて、缶の外側表面まで戻ってくる。そして、通常の場合、この反射光がキラキラした光沢感として需要者の目に映ることになる。しかしながら、特定の角度での反射光(正反射光)があまりにも強いと、ギラギラした感じを与えてしまい好ましくない。
【0040】
そこで、製造例1のフィルムラミネート缶胴用ブランク110では、より外側表面に近い(D)オフセット印刷インキ層120及び(E)熱硬化性クリヤー塗膜層122において発泡インキによる発泡痕126が形成されており、パール顔料124により反射された正反射光が、発泡痕126によって乱反射されて適度に拡散されるため、パール顔料124により生じる光沢感が、マット調(艶消し状態)に変化していた。また、発泡痕126によって、(E)熱硬化性クリヤー塗膜層122表面上にも適度な凹凸が形成されているため、表面反射光も減少し、従来のグラビア印刷インキ層を有する印刷フィルムの光沢感が約半分程度抑えられたマット調(艶消し状態)の外観が得られた。
【0041】
比較製造例1
ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(1m巾×500m、厚み12μm)に、熱硬化性クリヤー塗料(アミノ樹脂5.2%,エポキシ樹脂18.2%,ポリエステル樹脂2.6%,トルエン8.4%,キシレン2.9%,エチルベンゼン3.7%,1,3,5−トリメチルベンゼン1.01%,低沸点芳香族ナフサ7.6%,イソプロピルアルコール8,8%,酢酸エチル8.0%,エチレングリコールモノブチルエーテル1.2%,プロピレングリコールモノメチルエーテル2.6%,メチルエチルケトン21.1%,シクロヘキサン8.6%,その他)を塗布し、140℃で約8秒間加熱して、熱硬化性クリヤー塗膜を形成した。
つづいて、前記工程で得られたポリエチレンテレフタレートフィルムの熱硬化性クリヤー塗膜を形成されていない側の表面上に、所望の文字及びデザインをグラビア印刷した。ここで、グラビア印刷インキとしては、パール塗料(メチルエチルケトン20〜30%,トルエン15〜25%,顔料10〜20%,ウレタン樹脂5〜15%,イソプロピルアルコール5〜15%,酸化チタン5〜15%,メチルイソブチルケトン1〜10%,工業用キシレン5%未満,助剤5%未満,その他5%未満)を用いた。
【0042】
前記工程で得られたポリエチレンテレフタレートフィルムのグラビア印刷がなされた面と同じ側の表面上に、熱硬化性接着剤を塗布した。ここで、熱硬化性接着剤の組成は、ポリエステル樹脂14質量%(Tg=25℃)、ウレタン樹脂2質量%、ポリエステルアクリレート1質量%、酸化チタン31質量%,トルエン26質量%,メチルエチルケトン26質量%とした(樹脂成分組成/ポリエステル樹脂:ウレタン樹脂:ポリエステルアクリレート樹脂=82:12:6)。
つづいて、特開平10−80975公報に記載のフィルム貼着方法にしたがって、前記工程で得られたポリエチレンテレフタレートフィルムを巻き出し機に巻きつけ、別途、巻き出し機に巻きつけた錫メッキ鋼板(1m巾×500m,厚み0.18mm)とともに貼着装置へと巻きだして、100〜180℃に加熱した金属ロールとゴムロールとでフィルムの先端部分を金属コイルに圧着、全面貼着し、フィルムラミネート錫メッキ鋼板とした。なお、ラミネート速度は約200m/分であった。その後、フィルムラミネート錫メッキ鋼板を、スリーピース用の溶接缶胴用ブランクとして用いるため、10.5×16.5cmにせん断し、フィルムラミネート溶接缶胴用ブランクを得た。
【0043】
図3に、以上のようにして得られた比較製造例1のフィルムラミネート溶接缶胴用ブランク210の拡大断面図を示す。
比較製造例1により得られたフィルムラミネート溶接缶胴用ブランク210には、錫メッキ鋼板212の表面側から順に、(A)熱硬化性接着剤層214、(B)グラビア印刷インキ層216、(C)ポリエステル樹脂フィルム層218、及び(E)熱硬化性クリヤー塗膜層222が形成されている。また、(B)グラビア印刷インキ層216には、パール顔料224を含有している。
【0044】
比較製造例1のフィルムラミネート缶胴用ブランク210は、(C)オフセット印刷インキ層を設けておらず、発泡インキが含まれていないため、(B)グラビア印刷インキ層216に含まれるパール顔料224により反射された正反射光は、拡散されることなくそのまま戻ってくることになる。また、(C)ポリエステル樹脂フィルム層218、及び(E)熱硬化性クリヤー塗膜層222が、平滑且つ均一な層構成であることから、表面あるいは界面での反射光の光量が多くなり、需要者に対して好ましくないギラギラした感じを与えてしまった。
【0045】
比較製造例2
錫メッキ鋼板(100cm×87cm,厚み0.18mm)に、ベースコート(酸化チタン35〜45%,合成樹脂20〜30%,2−ブトキシエタノール5〜15%,溶剤1〜10%,コールタールナフサ1〜10%,芳香族炭化水素系溶剤1〜10%,n−ブタノール1〜10%,固形エポキシ樹脂1〜10%,ソルベッソ2001〜10%,顔料5%未満,工業用キシレン5%未満,イソブタノール5%未満,その他5%未満)を塗布し、加熱乾燥した。
つづいて、前記工程で得られた錫メッキ鋼板のベースコートがなされた表面上に、所望の文字及びデザインをオフセット印刷した。ここで、オフセット印刷インキとして、発泡インキ塗料(顔料5〜40%,アルキッド樹脂45〜75%,高沸点石油系溶剤10〜25%,添加剤5%以下、発泡カプセル(マイクロカプセル平均粒径約6μm,加熱膨張率約4倍)3%)を用いた。
【0046】
さらに、前記工程で得られた錫メッキ鋼板のオフセット印刷がなされた表面上に、熱硬化性クリヤー塗料(アクリル樹脂24%,メラミン樹脂24%,低沸点芳香族ナフサ6.2%,高沸点芳香族ナフサ11%,n−ブタノール15%,エチレングリコールモノブチルエーテル19%,その他)を塗布し、180℃で10分間加熱した。その後、錫メッキ鋼板を、スリーピース用の溶接缶胴用ブランクとして用いるため、10.5×16.5cmにせん断して、オフセット印刷溶接缶胴用ブランクを得た。
【0047】
図4に、以上のようにして得られた比較製造例2のオフセット印刷溶接缶胴用ブランク310の拡大断面図を示す。
比較製造例2により得られたオフセット印刷溶接缶胴用ブランク310には、錫メッキ鋼板312の表面側から順に、ベースコート層328、(D)オフセット印刷インキ層320、及び(E)熱硬化性クリヤー塗膜層322が形成されている。そして、(D)オフセット印刷インキ層320及び(E)熱硬化性クリヤー塗膜層322には、発泡インキによる発泡痕326が形成されている。
【0048】
比較製造例2のオフセット印刷溶接缶胴用ブランク310は、(B)グラビア印刷インキ層を設けておらず、パール顔料が含まれていないため、パール顔料の反射光に由来するキラキラした光沢感は得られなかった。なお、オフセット印刷工程においては、通常、パール顔料のような粒径の大きな顔料を配合すると、顔料がブランケットに残留してしまい、転写されずに印刷不良を起こしてしまうため、このような配合は実質的に不可能であった。
【0049】
比較製造例3
ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(1m巾×500m,厚み12μm)に、熱硬化性クリヤー塗料(アクリル樹脂24%,メラミン樹脂24%,低沸点芳香族ナフサ6.2%,高沸点芳香族ナフサ11%,n−ブタノール15%,エチレングリコールモノブチルエーテル19%,その他)を塗布し、140℃で8秒間加熱して、熱硬化性クリヤー塗膜を形成した。
つづいて、前記工程で得られたポリエチレンテレフタレートフィルムのクリヤー塗膜がなされていない側の表面上に、所望の文字及びデザインをグラビア印刷した。ここで、グラビア印刷インキとして、パール塗料(メチルエチルケトン20〜30%,トルエン15〜25%,顔料10〜20%,ウレタン樹脂5〜15%,イソプロピルアルコール5〜15%,酸化チタン5〜15%,メチルイソブチルケトン1〜10%,工業用キシレン5%未満,助剤5%未満,その他5%未満)、及び発泡インキ塗料(顔料5〜40%,アルキッド樹脂45〜75%,高沸点石油系溶剤10〜25%,添加剤5%以下、発泡カプセル(マイクロカプセル平均粒径約6μm,加熱膨張率約4倍)3%)を混合して用いた。
【0050】
前記工程で得られたポリエチレンテレフタレートフィルムのグラビア印刷がなされた面と同じ側の表面上に、熱硬化性接着剤を塗布した。ここで、熱硬化性接着剤の組成は、ポリエステル樹脂14質量%(Tg=25℃)、ウレタン樹脂2質量%、ポリエステルアクリレート1質量%、酸化チタン31質量%,トルエン26質量%,メチルエチルケトン26質量%とした(樹脂成分組成/ポリエステル樹脂:ウレタン樹脂:ポリエステルアクリレート樹脂=82:12:6)。
つづいて、特開平10−80975公報に記載のフィルム貼着方法にしたがって、前記工程で得られたポリエチレンテレフタレートフィルムを巻き出し機に巻きつけ、別途、巻き出し機に巻きつけた錫メッキ鋼板(1m巾×500m,厚み0.18mm)とともに貼着装置へと巻きだして、100〜180℃に加熱した金属ロールとゴムロールとでフィルムの先端部分を金属コイルに圧着、全面貼着し、フィルムラミネート錫メッキ鋼板とした。なお、ラミネート速度は約200m/分であった。その後、フィルムラミネート錫メッキ鋼板を、スリーピース用の溶接缶胴用ブランクとして用いるため、10.5×16.5cmにせん断し、フィルムラミネート溶接缶胴用ブランクを得た。
【0051】
図5に、以上のようにして得られた比較製造例3のフィルムラミネート溶接缶胴用ブランク410の拡大断面図を示す。
比較製造例3により得られたフィルムラミネート溶接缶胴用ブランク410には、錫メッキ鋼板412の表面側から順に、(A)熱硬化性接着剤層414、(B)グラビア印刷インキ層416、(C)ポリエステル樹脂フィルム層418、及び(E)熱硬化性クリヤー塗膜層422が形成されている。また、(B)グラビア印刷インキ層416には、パール顔料424を含有しており、また、発泡インキによる発泡痕426が形成されている。
【0052】
比較製造例3のフィルムラミネート缶胴用ブランク410は、(B)グラビア印刷インキ層424にパール顔料424を含有しており、且つ発泡痕426が形成されているものの、発泡インキが(C)ポリエステル樹脂フィルム層418に覆われてしまっているために、すべてのマイクロカプセルを均一に破泡させることが難しく、発泡痕426にムラが生じてしまい、パール顔料424により反射された反射光をきれいに乱反射することができなかった。また、最外表面の(E)熱硬化性クリヤー塗膜層422が平滑且つ均一であるため、表面反射光によるギラギラ感が残ってしまった。
【0053】
熱硬化性接着剤の樹脂成分組成
つづいて、本発明に用いる(A)熱硬化性接着剤の樹脂成分組成について詳しく検討するため、樹脂成分組成の異なる各種の熱硬化性接着剤を用いて、上記製造例1と同様にしてフィルムラミネート溶接缶胴用ブランクの製造を試みた。また、得られた各種のフィルムラミネート溶接缶胴用ブランクを用いて金属缶(スリーピース缶)を製造し、それぞれの製造例について、耐ブロッキング性、加工性及び意匠性についての評価を行った。なお、評価基準は以下に示すとおりである。各製造例の層構成及び熱硬化性接着剤の樹脂成分組成と評価結果とをまとめたものを下記表1に示す。
【0054】
〈耐ブロッキング性〉
各製造例において用いた熱硬化性接着剤を塗装したポリエステル樹脂フィルムを、接着剤面とフィルム面が対面するようにして重ね、9cm×9cmの平らなステンレス板で挟んだ。油圧式プレス機(TABLE TYPE TEST PRESS SA−303−II−S:テスター産業社製)を25℃,30kg/cmに合わせ、72時間圧着プレスし、放冷した。試験片をT型にし、引っ張り試験機(オートグラフAGS−H:島津製作所製)にて強度を測定し、チャートを読み取った(速度500mm/min)。読み取り数値を以下の基準で判定した。
優:80g未満
良:80g以上100g未満(あるいは接着によるフィルム破断)
劣:100g以上(あるいは破断)
【0055】
〈加工性〉
各製造例のフィルム貼着金属缶をセミトロシーマー(三洋機械社製)を用いてホットパック(76℃温水)し、さらにレトルト殺菌装置(東海汽罐社製,第一種圧力容器)によりレトルト処理(125℃×30分)を行った。その後、顕微鏡(SZS4045:オリンパス社製)を用いて、以下の基準で缶外面のフィルム浮きを評価した。
優:フィルム浮きが発生していなかった。
良:1mm以下の縦筋状のフィルム浮きが発生(製品の品質は満たしている)。
劣:1mmを超える縦筋状のフィルム浮きが発生。
【0056】
〈意匠性〉
各製造例のフィルム貼着金属缶について、その外観を目視することにより、以下の基準で意匠性の評価を行った。
優:優れた視覚的効果、すなわち、従来のグラビア印刷インキ層を有する印刷フィルムの光沢感が約半分程度抑えられたマット調(艶消し状態)の外観が得られていた。
良:優れた視覚的効果、すなわち、従来のグラビア印刷インキ層を有する印刷フィルムの光沢感が約半分程度抑えられたマット調(艶消し状態)の外観が得られているが、1mm以下のフィルム浮きが数カ所発生していた。
劣:優れた視覚的効果、すなわち、従来のグラビア印刷インキ層を有する印刷フィルムの光沢感が約半分程度抑えられたマット調(艶消し状態)の外観が得られなかった。あるいは1mmを越える縦筋状のフィルム浮きが発生して缶表面が凸凹していた。
【0057】
【表1】

【0058】
上記表1に示されるように、(A)熱硬化性接着剤層の樹脂成分組成が、ポリエステル樹脂80〜96質量%、ウレタン樹脂2〜10質量%、ポリエステルアクリレート2〜10質量%の範囲である製造例2〜5においては、耐ブロッキング性,加工性及び意匠性の各評価がいずれも優あるいは良であった。これに対して、ポリエステル樹脂が78質量%である比較製造例4、及びポリエステル樹脂が98質量%である比較製造例5においては、いずれもフィルム浮きが生じてしまい、加工性及び意匠性の点で劣っていた。
また、特にポリエステル樹脂84〜94質量%、ウレタン樹脂3〜8質量%、ポリエステルアクリレート3〜8質量%の範囲内である製造例3,4においては、いずれの評価項目も優であり、この樹脂組成の範囲が特に好ましいものと認められた。
【0059】
フィルム貼着金属缶の外観特性(正反射光及び総反射光測定)
つづいて、本発明者らは、本発明により得られるフィルム貼着金属缶の外観の特性についてさらに詳しく検討するため、上記製造例に準じて、各種シルバー顔料を用いて製造したフィルムラミネート缶胴用ブランクについて、正反射光及び総反射光の測定を行った。また、比較のため、発泡インキ層を設けないもの、シート印刷により製造したものをそれぞれ製造し、同様にして反射光の測定を行った。それぞれの反射光の測定方法は、以下に示すとおりである。なお、入射光に対する正反射光及び拡散反射光の参考説明図を図8に示す。
【0060】
〈正反射光測定〉
各製造例及び比較製造例について、グロスチェッカーIG−320(堀場製作所製)を用いて、入射光角度を60°とし、受光角度を60°に固定して正反射光を測定した。なお、測定方法及び測定単位は、JIS Z8741に準拠するものとした。
【0061】
〈総反射光測定〉
各製造例及び比較製造例について、LMR−200(関西ペイント社製)を用いて、入射光角を45°とし、受光角度は固定せずに、全角度での反射光(正反射光+拡散反射光)の平均値を測定した。なお、測定方法及び測定単位は、JIS Z8741に準拠するものとした。
【0062】
【表2】

【0063】
※1
ラミネート1:鋼板/接着剤/グラビア印刷(シルバー顔料を含む)/フィルム
ラミネート2:鋼板/接着剤/グラビア印刷(シルバー顔料を含む)/フィルム/オフセット印刷(発泡インキを含む)/クリヤー塗膜
シート1:鋼板/コーティング/シート印刷(シルバー顔料を含む)/クリヤー塗膜
シート2:鋼板/コーティング/シート印刷(シルバー顔料及び発泡インキを含む)/クリヤー塗膜
【0064】
※2
低輝度シルバー顔料:顔料平均粒子径10μm(10〜20μm),不定形状アルミニウム0.3〜0.4μm,メチルエチルケトン15〜25%,トルエン15〜25%,イソプロピルアルコール10〜20%,顔料10〜20%,ミネラルスピリット5〜15%,合成樹脂類5〜15%,メチルイソブチルケトン1〜10%,酢酸エチル1〜10%,ソルベントナフサ5%未満,石油ナフサ5%未満
高輝度シルバー顔料:顔料平均粒子径15μm(20〜30μm),楕円形状アルミニウム0.25μm,メチルエチルケトン25〜35%,トルエン15〜25%,酢酸エチル10〜20%,酢酸イソプロピル10〜20%,イソプロピルアルコール5〜15%,合成樹脂類1〜10%,メチルイソブチルケトン1〜10%,顔料1〜10%
鏡面シルバー顔料:顔料平均粒子径10μm(5〜15μm),蒸着アルミニウム片0.03μm,メチルエチルケトン20〜30%,トルエン10〜20%,イソプロピルアルコール10〜20%,顔料10〜20%,合成樹脂類5〜15%,メチルイソブチルケトン1〜10%,酢酸エチル1〜10%,LAWS5%未満,ソルベントナフサ5%未満
シート印刷用シルバー顔料:顔料平均粒径10〜15μm,鱗片状アルミニウム,合成樹脂55〜65%,アルミニウム15〜25%,溶剤5〜15%,6号ソルベント1〜10%,含水微粉ケイ酸1〜10%,ミネラルスピリット5%未満,その他5%未満
【0065】
上記表2に示されるように、発泡インキを含むオフセット印刷層を備えた製造例6〜8においては、発泡インキを含まない比較製造例6〜8と比較して、それぞれ正反射光の測定値が減少しており、これにより、正反射光によるギラギラ感が低減されたマット調(艶消し状態)の外観が得られていることが理解される。一方、シート印刷により製造した比較製造例10においても、発泡インキの使用により正反射光が抑えられていることが確認されるものの、シート印刷に使用可能なシルバー顔料ではあまり高い反射光を得ることができないため、光沢感に乏しく、単なるマット調の外観に近くなってしまっている。
【0066】
また、総反射光(正反射光+拡散反射光)の測定値を見ると、いずれの製造例及び比較製造例においても、発泡インキの有無によって、ほとんど差がみられない。そして、この結果から、上記正反射光の低減が、単に暗色化によるものではなく、シルバー顔料による正反射光が発泡インキの発泡痕によって多方向に拡散されることによって生じているものであることが理解される。すなわち、本発明により得られるフィルム貼着金属缶においては、発泡インキを含むオフセット印刷層を設けることで、全体としての明るさは変化しないままで、反射光が拡散されて正反射光に由来するギラギラ感が低減され、これによって、従来に無い新規なマット調(艶消し状態)の外観が得られていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明にかかるフィルム貼着金属缶の外側部分の拡大断面図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる製造例1のフィルムラミネート溶接缶胴用ブランク110の拡大断面図である。
【図3】本発明にかかる比較製造例1のフィルムラミネート溶接缶胴用ブランク210の拡大断面図である。
【図4】本発明にかかる比較製造例2のフィルムラミネート溶接缶胴用ブランク310の拡大断面図である。
【図5】本発明にかかる比較製造例3のフィルムラミネート溶接缶胴用ブランク410の拡大断面図である。
【図6】ツーピース缶であるDI缶の製造工程を説明する模式図である。
【図7】スリーピース缶であるメガネ缶の製造工程を説明する模式図である。
【図8】入射光に対する正反射光及び拡散反射光の参考説明図である。
【符号の説明】
【0068】
10 フィルム貼着金属缶(フィルムラミネート缶胴用ブランク)
12 金属板(錫メッキ鋼板)
14 (A)熱硬化性接着剤層
16 (B)グラビア印刷インキ層
18 (C)ポリエステル樹脂フィルム層
20 (D)オフセット印刷インキ層
22 (E)熱硬化性クリヤー塗膜層
24 パール顔料
26 発泡痕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶胴体外面となる金属板の表面に接着剤を介して樹脂フィルムが貼着されたフィルム貼着金属缶において、金属板表面側から順に、
(A)熱硬化性接着剤層、
(B)グラビア印刷インキ層、
(C)ポリエステル樹脂フィルム層、
(D)オフセット印刷インキ層、及び
(E)熱硬化性クリヤー塗膜層
が形成されていることを特徴とするフィルム貼着金属缶。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルム貼着金属缶において、(A)熱硬化性接着剤層に含まれるポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgが20〜45℃であることを特徴とするフィルム貼着金属缶。
【請求項3】
請求項2に記載のフィルム貼着金属缶において、(A)熱硬化性接着剤層に含まれる樹脂成分が、樹脂成分全量中、ポリエステル樹脂80〜97質量%、ウレタン樹脂2〜10質量%、ポリエステルアクリレート1〜10質量%を含む樹脂成分であることを特徴とするフィルム貼着金属缶。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のフィルム貼着金属缶において、(B)グラビア印刷インキ層が、パール顔料又はシルバー顔料を含むことを特徴とするフィルム貼着金属缶。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のフィルム貼着金属缶において、(D)オフセット印刷インキ層が、発泡インキを含むことを特徴とするフィルム貼着金属缶。
【請求項6】
請求項5に記載のフィルム貼着金属缶において、発泡インキに含まれる膨張前のマイクロカプセル粒子径が5〜15μmであることを特徴とするフィルム貼着金属缶。
【請求項7】
缶胴体外面となる金属板の表面に接着剤を介して樹脂フィルムが貼着されたフィルム貼着金属缶の製造方法において、
帯状のポリエステル樹脂フィルムにグラビア印刷を行うグラビア印刷工程と、
前記工程により得られた帯状のフィルムのグラビア印刷がなされた表面の上に熱硬化性接着剤を塗布する熱硬化性接着剤塗布工程と、
前記工程により得られたフィルムを金属板に積層するフィルム積層工程と、
前記工程により得られた帯状のフィルム積層金属板をその長手方向で複数缶分となる長さのシート毎に切断するせん断工程と、
前記工程により得られたフィルム積層金属板の金属板が積層された面と反対側のフィルム表面にオフセット印刷を行うオフセット印刷工程と、
前記工程により得られたフィルム積層金属板のオフセット印刷がなされた表面の上に熱硬化性クリヤー塗膜を塗布する熱硬化性クリヤー塗膜塗布工程と、
前記工程により得られたフィルム積層金属板から一缶分に相当する寸法のブランクを切り出し、円筒状の缶体を製造する工程と
を備えることを特徴とするフィルム貼着金属缶の製造方法。
【請求項8】
缶胴体外面となる金属板の表面に接着剤を介して樹脂フィルムが貼着されたフィルム貼着金属缶の製造方法において、
帯状のポリエステル樹脂フィルムにグラビア印刷を行うグラビア印刷工程と、
前記工程により得られたフィルムのグラビア印刷がなされた表面の上に熱硬化性接着剤を塗布する熱硬化性接着剤塗布工程と、
前記工程により得られた帯状フィルムをリールから巻解きながら一缶分毎の大きさのフィルムシートに切断して、このフィルムシートを別途製造した有底円筒状缶体に向けて送り込み、各缶体で胴部外面を略一周するようにフィルムシートを貼着するフィルム貼着工程と、
前記工程により得られたフィルム貼着金属缶の金属缶が貼着された面と反対側のフィルム表面にオフセット印刷を行うオフセット印刷工程と、
前記工程により得られたフィルム貼着金属缶のオフセット印刷がなされた表面の上に熱硬化性クリヤー塗膜を塗布する熱硬化性クリヤー塗膜塗布工程と
を備えることを特徴とするフィルム貼着金属缶の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−308231(P2008−308231A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98086(P2008−98086)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【Fターム(参考)】