説明

フィールド機器の出力回路

【課題】 小形化、低コスト化を図ったフィールド機器の出力回路を実現する。
【解決手段】 検出器からの測定信号を入力し電流信号,パルス信号,デジタル通信信号として出力する演算・制御回路と、
該演算・制御回路からの指令に基づいて操作パネルに対して赤外線を照射する赤外線発光部と、前記操作パネルの所定の位置に配置された反射物で反射した赤外線を受光する赤外線受光部から構成され、前記操作パネルの所定位置に反射物が置かれたか否かを反射された赤外線の光量の多寡によって判別する複数の赤外線スイッチと、
を具備するフィールド機器において、
前記複数の赤外線スイッチに前記演算・制御回路から出力される電流信号およびパルス信号に応じた電気信号を別々に入力し、前記操作パネルの外側に配置された赤外線受光部を介して検査装置に入力するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出器(センサー)からの信号をもとに流量、圧力、温度などを測定するためのフィールド機器の出力回路に関し、詳しくは、赤外線設定装置を用いた変換器部の小形化、低コスト化を図ったフィールド機器の出力回路に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線設定装置を用いたフィールド機器としては下記の文献が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−37563
【0004】
図4は上記特許文献1に記載された発明の概要を示す要部構成図である。
この文献に記載された技術は、フィールド機器25内で反射物10に対して発光素子21より信号を照射し、該反射物で反射された信号を受光する受光素子23を備え、ガラス面27の所定位置に反射物が置かれた否かを反射された信号の光量の多寡によって判別するものである。
【0005】
この赤外線設定装置では、赤外線設定装置発光素子21及び受光素子23を制御するための制御回路と赤外線通信を行うことが可能である発光素子及び前記受光素子を備えており、発光素子21からの信号と受光素子23からの信号とが同期している場合には赤外線設定モードであることを判断するための手段と、発光素子21からの信号と受光素子23からの信号とが非同期の場合には赤外線通信モードであることを判断するための手段を有する構成となっている。
【0006】
上述の構成によれば、共通の発光・受光素子を用いて、赤外線設定モード及び赤外線通信モードの両方を実現でき、赤外線設定モード及び赤外線通信モードの状態を認知することができる
【0007】
図5は赤外線スイッチを用いた従来のフィールド機器の出力回路の概要を示す要部ブロック構成図である。流量、圧力、温度など検出器33からのアナログ信号はA/D変換器34でデジタル信号に変換されて演算・制御回路4に入力される。
【0008】
演算・制御回路4は演算結果に応じた出力指示信号(デジタル信号)を電流出力回路1、パルス出力回路2、デジタル通信回路3に伝達する。電流出力回路1、パルス出力回路2、デジタル通信回路3は受信機器(図示省略)に出力信号を伝送する。
【0009】
電流出力回路1は4−20mA統一信号のアナログ信号を、パルス出力回路2は演算結果に応じてパルス数が変わるデジタル信号を出力する。デジタル通信回路3は演算結果などのデータを通信信号によって伝送するものである(例:フィールドバス)。
【0010】
デジタル通信回路3を有する機器は機能的には電流出力回路1、パルス出力回路2を必要としない。しかしながら、製造工程(検査工程)では電流出力回路1、パルス出力回路2を使用する必要があり、それぞれの出力を検査装置30に伝送する形態をとっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、電流出力回路1は演算結果を得ることと、4−20mA統一信号に通信信号を重畳させる通信方式によって内部パラメータのリード/ライトを実行するために必要である。内部パラメータのリード/ライトはデジタル通信回路3でも実行可能であるが、既存の製造設備を使用して、設備投資の抑制や混合ラインの実現をするために、電流出力回路1が必要となる場合が多い。
【0012】
パルス出力回路2は、流量計の場合には実流校正のために必要となる。デジタル通信回路3で得られる演算結果はタイムラグが存在し、ある一定時間の流量を測定して機器を校正する実流校正には適さないためである。
【0013】
図5における駆動回路5、赤外線発光部6、赤外線受光部7、判定回路8はフィールド機器の設置現場において内部パラメータを設定するための赤外線スイッチ(一点鎖線で囲った部分)である。赤外線スイッチは操作パネル9に操作者の指などの反射物10が触れたときに反応する。
【0014】
前述のように、機能上不要な電流出力回路1、パルス出力回路2を有することが、機器の小型化、低コスト化の妨げになっているという課題があった。
本発明は上述の課題を解決するためになされたもので、フィールドバスのようなデジタル伝送タイプのフィールド機器を対象として小形化、低コスト化を図ったフィールド機器の出力回路を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載のフィールド機器の出力回路の発明は、
検出器からの測定信号を入力し電流信号,パルス信号,デジタル通信信号として出力する演算・制御回路と、
該演算・制御回路からの指令に基づいて操作パネルに対して赤外線を照射する赤外線発光部と、前記操作パネルの所定の位置に配置された反射物で反射した赤外線を受光する赤外線受光部から構成され、前記操作パネルの所定位置に反射物が置かれたか否かを反射された赤外線の光量の多寡によって判別する複数の赤外線スイッチと、
を具備するフィールド機器において、
前記複数の赤外線スイッチに前記演算・制御回路から出力される電流信号およびパルス信号に応じた電気信号を別々に入力し、前記操作パネルの外側に配置された赤外線受光部を介して検査装置に入力するように構成したことを特徴とする。
【0016】
請求項2においては、請求項1に記載のフィールド機器の出力回路において、
検出器からの測定信号を入力し電流信号,パルス信号,デジタル通信信号として出力する演算・制御回路と、
該演算・制御回路からの指令に基づいて操作パネルに対して赤外線を照射する赤外線発光部と、前記操作パネルの所定の位置に配置された反射物で反射した赤外線を受光する赤外線受光部から構成され、前記操作パネルの所定位置に反射物が置かれたか否かを反射された赤外線の光量の多寡によって判別する複数の赤外線スイッチと、
を具備するフィールド機器において、
前記演算・制御回路から出力される電流信号およびパルス信号に応じた電気信号を切替器に入力し、該切替器で選択された電気信号のいずれかを前記赤外線スイッチに入力し、前記操作パネルの外側に配置された赤外線受光部を介して検査装置に入力するように構成したことを特徴とする。
【0017】
請求項3においては、請求項1または2に記載の請求項1または2に記載のフィールド機器の出力回路において、
前記演算・制御回路から出力される電流信号,パルス信号に応じた電気信号を前記操作パ
ネルの外側に配置された赤外線受光部を介して検査装置に入力する赤外線スイッチのほかに少なくとも一つの赤外線スイッチを設け、該赤外線スイッチを介して前記検査装置と前記制御・演算回路の内部データの送受信を行えるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したことから明らかなように請求項1の発明によれば、検出器からの測定信号を入力し電流信号,パルス信号,デジタル通信信号として出力する演算・制御回路と、該演算・制御回路からの指令に基づいて操作パネルに対して赤外線を照射する赤外線発光部と、前記操作パネルの所定の位置に配置された反射物で反射した赤外線を受光する赤外線受光部から構成され、前記操作パネルの所定位置に反射物が置かれたか否かを反射された赤外線の光量の多寡によって判別する複数の赤外線スイッチと、
を具備するフィールド機器において、前記複数の赤外線スイッチに前記演算・制御回路から出力される電流信号およびパルス信号に応じた電気信号を別々に入力し、前記操作パネルの外側に配置された赤外線受光部を介して検査装置に入力するように構成したので、機能上不要な電流出力回路1、パルス出力回路2を設ける必要がなくなり機器の小型化、低コスト化を実現することができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、演算・制御回路から出力される電流信号およびパルス信号に応じた電気信号を切替器に入力し、該切替器で選択された電気信号のいずれかを前記赤外線スイッチに入力し、前記操作パネルの外側に配置された赤外線受光部を介して検査装置に入力するように構成したので、機能上不要な電流出力回路1、パルス出力回路2を設ける必要がなくなるとともに、赤外線スイッチの数を少なくすることができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、
演算・制御回路から出力される電流信号,パルス信号に応じた電気信号を前記操作パネルの外側に配置された赤外線受光部を介して検査装置に入力する赤外線スイッチのほかに少なくとも一つの赤外線スイッチを設け、該赤外線スイッチを介して前記検査装置と前記制御・演算回路の内部データの送受信を行えるように構成したので、内部パラメータのリード/ライトが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は本発明の実施形態の一例を示す要部ブロック構成図である。
図1において、図5に示す従来例と同一要素には同一符号を付して重複する説明は省略する。この実施例では赤外線スイッチを2組(5a,6a,7a,8aと5b,6b,7b,8b)用い、これらの駆動回路5a,5bに演算・制御回路4からの電流出力またはパルス出力のいずれかをそれぞれ入力する。
【0022】
31a,31bは操作パネル9の外側に設けられ赤外線発光部6a,6bの出力を受光する赤外線受光部である。
上述の構成において、赤外線発光部6a,6bから赤外線受光部31a,31bを介して検査装置30に演算結果に応じた光信号を出力する。演算結果に応じた出力指示信号はデジタル信号であるので、デジタル化された光信号を赤外線受光部31をとおして検査装置30に伝達することができる。
【0023】
上述の構成によれば、赤外線受光部の出力を赤外線スイッチを介して検査装置に入力するので、機能上不要な電流出力回路1、パルス出力回路2を設ける必要がなくなり機器の小型化、低コスト化を実現することができる。
【0024】
図2は本発明の他の実施形態の一例を示す要部ブロック構成図である。
図2においても、図5に示す従来例と同一要素には同一符号を付して重複する説明は省略する。20は演算・制御回路4からの電流出力とパルス出力を入力し、これらの信号を切替える切替器、31は操作パネル9の外側に設けられ赤外線発光部6の出力を受光する赤外線受光部である。
【0025】
この実施例においては、電流出力回路、パルス出力回路への演算結果に応じた出力指示信号を切替器20を通して赤外線スイッチの駆動回路5に入力し、赤外線スイッチの発光部6から演算結果に応じた光信号として出力する。
上述の構成によれば、機能上不要な電流出力回路1、パルス出力回路2を設ける必要がなくなるとともに、赤外線スイッチの数を少なくすることができる。
【0026】
図3は更に他の実施例を示すもので、赤外線スイッチを3組(5a,6a,7a,8aと5b,6b,7b,8bおよび5c,6c,7c,8c)用い、これらの駆動回路5a,5bに演算・制御回路4からの電流出力またはパルス出力のいずれかを入力する。
【0027】
そして、この実施例においては、通信プロトコルを決めておき、送信信号(フィールド機器→検査装置)を駆動回路5、赤外線発光部6をとおして送信し、検査装置側に設けられた赤外線発光部32からの受信信号(検査装置→フィールド機器)を赤外線受光部7、判定回路8をとおして受信することで、内部パラメータのリード/ライトが可能になる。
【0028】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。例えば図3においては演算・制御回路4からの電流出力とパルス出力を2組の赤外線スイッチで受信するような構成としたが、演算・制御回路4からの電流出力は図2で示す切替器を用いて一組の赤外線スイッチで受信するようにしてもよい。
したがって本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態の一例を示すフィールド機器の出力回路の要部ブロック構成図である。
【図2】他の実施形態の一例を示すフィールド機器の出力回路の要部ブロック構成図である。
【図3】他の実施形態の一例を示すフィールド機器の出力回路の要部ブロック構成図である。
【図4】従来例を示す図である。
【図5】他の従来例を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 電流出力回路
2 パルス出力回路
3 デジタル通信回路
4 演算・制御回路
5 駆動回路
6,32 赤外線発光部
7,31 赤外線受光部
8 判定回路
9 操作パネル
10 反射物
20 切替器
30 検査装置
33 検出器
34 A/D変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出器からの測定信号を入力し電流信号,パルス信号,デジタル通信信号として出力する演算・制御回路と、
該演算・制御回路からの指令に基づいて操作パネルに対して赤外線を照射する赤外線発光部と、前記操作パネルの所定の位置に配置された反射物で反射した赤外線を受光する赤外線受光部から構成され、前記操作パネルの所定位置に反射物が置かれたか否かを反射された赤外線の光量の多寡によって判別する複数の赤外線スイッチと、
を具備するフィールド機器において、
前記複数の赤外線スイッチに前記演算・制御回路から出力される電流信号およびパルス信号に応じた電気信号を別々に入力し、前記操作パネルの外側に配置された赤外線受光部を介して検査装置に入力するように構成したことを特徴とするフィールド機器の出力回路。
【請求項2】
検出器からの測定信号を入力し電流信号,パルス信号,デジタル通信信号として出力する演算・制御回路と、
該演算・制御回路からの指令に基づいて操作パネルに対して赤外線を照射する赤外線発光部と、前記操作パネルの所定の位置に配置された反射物で反射した赤外線を受光する赤外線受光部から構成され、前記操作パネルの所定位置に反射物が置かれたか否かを反射された赤外線の光量の多寡によって判別する複数の赤外線スイッチと、
を具備するフィールド機器において、
前記演算・制御回路から出力される電流信号およびパルス信号に応じた電気信号を切替器に入力し、該切替器で選択された電気信号のいずれかを前記赤外線スイッチに入力し、前記操作パネルの外側に配置された赤外線受光部を介して検査装置に入力するように構成したことを特徴とするフィールド機器の出力回路。
【請求項3】
前記演算・制御回路から出力される電流信号,パルス信号に応じた電気信号を前記操作パ
ネルの外側に配置された赤外線受光部を介して検査装置に入力する赤外線スイッチのほかに少なくとも一つの赤外線スイッチを設け、該赤外線スイッチを介して前記検査装置と前記制御・演算回路の内部データの送受信を行えるように構成したことを特徴とする請求項1または2に記載のフィールド機器の出力回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−260353(P2006−260353A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−78921(P2005−78921)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】