説明

フェノールの製造方法

【課題】液相乃至臨界相にてモノクロルベンゼンと水との反応によりフェノールを得るフェノールの製造方法であって、多量の副生物の発生を伴うことなく、高収率下にフェノールを得る方法を提供する。
【解決手段】液相乃至臨界相にてモノクロルベンゼンと水との反応によりフェノールを得るフェノールの製造方法であって、触媒としてゼオライトH−ZSM−5を用いるフェノールの製造方法。H−ZSM−5はSi/Alモル比が25以下であることが好ましい。該モル比が過大であると触媒の活性が不十分な場合がある。なお、H−ZSM−5の調製の観点から、Si/Alモル比は10以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノールの製造方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、液相乃至臨界相にてモノクロルベンゼンと水との反応によりフェノールを得るフェノールの製造方法であって、多量の副生物の発生を伴うことなく、高収率下にフェノールを得ることができるという特徴を有するフェノールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液相においてモノクロルベンゼンと水との反応によりフェノールを得る技術としてたとえば非特許文献1には、苛性ソーダ水溶液を用いてモノクロルベンゼンを加水分解してフェノールを得る技術が開示されている。しかしこの方法によると、多量の塩化ナトリウムが副生し、塩素源を損失し、塩化ナトリウム水溶液の処理を必要とするという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】BERICHTE DER DEUTSCHEN CHEMISHEN GESELLSEHAFT 47 (1914)3155
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる状況において、本発明が解決しようとする課題は、液相乃至臨界相にてモノクロルベンゼンと水との反応によりフェノールを得るフェノールの製造方法であって、多量の副生物の発生を伴うことなく、高収率下にフェノールを得ることができるという特徴を有するフェノールの製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、液相乃至臨界相にてモノクロルベンゼンと水との反応によりフェノールを得るフェノールの製造方法であって、触媒としてゼオライトH−ZSM−5を用いるフェノールの製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、液相乃至臨界相にてモノクロルベンゼンと水との反応によりフェノールを得るフェノールの製造方法であって、多量の副生物の発生を伴うことなく、高収率下にフェノールを得ることができるという特徴を有するフェノールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1で用いた実験装置の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0009】
原料としてのモノクロルベンゼンとしては、特に制限はない。
【0010】
本発明においては、触媒としてゼオライトH−ZSM−5が用いられる。ゼオライトH−ZSM−5は公知のものである(たとえば、Derouane,E.G et.al. Journal of Catalysis vol.53 (1978) 40 参照。)。
【0011】
H−ZSM−5はSi/Alモル比が25以下であることが好ましい。該モル比が過大であると触媒の活性が不十分な場合がある。なお、H−ZSM−5の調製の観点から、Si/Alモル比は10以上であることが好ましい。
【0012】
本発明のH−ZSM−5は、たとえば市販のNa−ZSM−5を硝酸アンモニウム水溶液でイオン交換を行い、ろ過した後に焼成することにより製造することができる。また、該当する市販品を用いることもできる。なお、触媒として用いるH−ZSM−5の形状は、粉体、顆粒、成型体のいずれでもよい。
【0013】
本発明は液相乃至臨界相にて行われる。具体的な条件は、次のとおりである。液相の場合、温度はモノクロロベンゼンの臨界温度である359.3℃以下、圧力はその温度におけるモノクロロベンゼンの飽和蒸気圧を超えた任意の圧力である。臨界相の場合、温度はモノクロロベンゼンの臨界温度である359.3℃以上である。なお、反応液はモノクロロベンゼンと水の混合物であるため、臨界相と液相の境界となる温度は明瞭ではない。反応温度は300℃以上であることが望ましい。反応温度が低すぎると、触媒活性の発現が不十分な場合がある。
【0014】
本発明においては、原料として供給するモノクロルベンゼンと水の重量比(モノクロルベンゼン/水)が10以上であることが好ましい。該重量比が過少であると触媒活性が不十分な場合がある。
【0015】
本発明は、バッチ形式叉は流通形式のいずれでも実施できる。
【0016】
バッチ形式を用いる場合は、攪拌機を有する反応容器に水とモノクロルベンゼンと触媒であるH−ZSM−5を仕込み、所定の温度及び圧力にして攪拌を継続すればよい。反応時間は0.5hr〜24hr程度である。触媒であるH−ZSM−5の使用量は、反応液50mLに対し0.1〜5.0gが好ましい。該使用量が過少であると目的物であるフェノールの生成が不十分となる場合があり、一方該使用量が過多であると、追加の触媒量に対する追加の効果が頭打ちになり、不経済となる場合がある。
【0017】
流通形式を用いる場合は、H−ZSM−5を充填した反応容器に水とモノクロルベンゼンを流通させればよい。水とモノクロルベンゼンは上向き流でも下向き流でもよい。WHSVは1〜100/hrが好ましい。WHSVが過少であるとフェノールの単位時間あたりの生成量が過少となる場合があり、一方WHSVが過大であると原料モノクロロベンゼンの転化率が過少となる場合がある。
【実施例】
【0018】
実施例1
反応管(内径4mm、長さ1000mm、SUS316L製またはハステロイC製)の内部に触媒であるH−ZSM−5(エヌイーケムキャット社製、顆粒状)を1.5g充填した。このH−ZSM−5は、Si/Alモル比は15であった。反応管の下部から水0.3g/hr及びモノクロルベンゼン 31.2g/hrを供給した。反応管の外部をヒーターで加熱し、反応管触媒層の外側の温度は360℃でこれを反応温度とし、3時間反応を継続した。また、反応圧力は6MPaとした。反応管の上部から反応液を回収し、その組成をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、フェノール収率52.3mg−フェノール/hr/g−catであった。
【0019】
実施例2〜3及び比較例1〜2
表1に示した条件としたこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
【0020】
実施例4
撹拌機付きオートクレーブ(内容量190mL、タンタルライニング)に触媒H−ZSM−5を1.5g、モノクロロベンゼン72g、水6.0gを仕込み、オートクレーブ内に窒素を5.0MPaを張り込んだ。撹拌機を回しながらオートクレーブを加熱し反応温度を300℃とした。3時間経過後、加熱をやめオートクレーブ内を冷却した後、反応液を回収し、その組成をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、フェノール収量は11.2mgであった。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、液相乃至臨界相にてモノクロルベンゼンと水との反応によりフェノールを得るフェノールの製造方法であって、多量の副生物の発生を伴うことなく、高収率下にフェノールを得る方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 モノクロロベンゼンタンク
2 水タンク
3 高圧ポンプ
4 弁
5 反応管
6 触媒
7 ヒーター
8 反応液溜め
9 流量調整弁
10 窒素ボンベ
11 圧力計
12 温度計
13 ヒーター制御用温度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相乃至臨界相にてモノクロルベンゼンと水との反応によりフェノールを得るフェノールの製造方法であって、触媒としてゼオライトH−ZSM−5を用いるフェノールの製造方法。
【請求項2】
モノクロルベンゼンと水との反応温度が300℃以上である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
H−ZSM−5のSi/Alモル比が25以下である請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
供給するモノクロルベンゼンと水の重量比(モノクロルベンゼン/水)が10以上である請求項1記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−275208(P2010−275208A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127496(P2009−127496)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】