説明

フェノール化合物のビーズ及びその製造方法

本発明は固体形態のフェノール化合物を新たに提供する。より具体的には、本発明はヒドロキノンビーズに関する。本発明は前記ビーズの製造にも関する。本発明の方法は、フェノール化合物の濃厚水溶液を熱時調製し、前記溶液を液滴に細分化し、こうして得た液滴をガス流中で冷却してビーズに固化させ、その後前記ビーズを回収し、乾燥することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体形態のフェノール化合物を新たに提供する。より具体的には、本発明はヒドロキノンビーズを提供する。本発明は前記ビーズの製造にも関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキノンは、重合抑制剤として、またはエラストマー中の酸化防止剤として多くの分野で広く使用されている物質である。ヒドロキノンは写真の分野でも使用されている。よって、ヒドロキノンは大量に消費される物質である。
【0003】
現在、ヒドロキノンは針状で結晶化した粉末の形態で市販されている。その結果、ヒドロキノンには微粉末が存在し、これによりヒドロキノン粉末の貯蔵及び処理中にダストの問題が生ずる。
【0004】
ヒドロキノン粉末は、爆発の危険があり、目及び気道に対して刺激性の物質であるために接触したとき皮膚を刺激する恐れもあるために環境にとって多少危険がないでもない。
【0005】
日本特開2002−302716号公報は、粉末を2つのローラー間に通して錠剤を作成した後、前記錠剤を細かく砕いて顆粒を得るヒドロキノンの造粒方法を記載している。
【0006】
この方法の欠点は、圧縮機のローラー間を通過させて結晶をそのローラーで砕いているかまたは錠剤の破砕機での摩擦により顆粒化生成物中にダストが残存している恐れがあることである。更に、顆粒は緻密で、その溶解度は当初の粉末と比較して非常に低い。
【発明の開示】
【0007】
本発明の目的は、上記した欠点を解消するためにフェノール化合物、特にヒドロキノンを新たに提供することである。
【0008】
より具体的には、本発明はフェノール化合物ビーズ、特にヒドロキノンビーズを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
前記ビーズは、溶解性を付与する多孔性でありつつ耐摩耗性の特徴をも有する。
【0010】
本明細書中、用語「ビーズ」は固体でかなり球形の粒子を意味する。
【0011】
本発明は、フェノール化合物の濃厚水溶液を熱時調製し、この溶液を液滴に細分化し、得られた液滴をガス流中で冷却してビーズに固化し、前記ビーズを回収し、乾燥することによるビーズの製造方法にも関する。
【0012】
用語「濃厚溶液」は、細分化デバイスの温度で飽和、好ましくは溶解限界の80〜95%に達する濃度を有する溶液を意味する。
【0013】
本発明の方法の好ましい変形態様は、フェノール化合物の濃厚溶液を熱時調製し、この溶液をノズルに通して液滴を形成し、前記液滴を冷ガスと向流させながらタワーに落下させることにより液滴を固化させ、その後得られたビーズを回収し、乾燥することを含む。
【0014】
本発明の方法はヒドロキノンビーズの製造に特に適しているが、以下の特性を有するフェノール化合物にも適している:
高い熱時溶解度、例えば90℃の基準温度で水中溶解度が少なくとも500g/l、好ましくは少なくとも1000g/lである。上限は臨界的でないが、通常15000g/l未満である;
熱時溶解度と冷時溶解度の差が大きい。すなわち、細分化デバイスにおける温度と冷ガス流の温度の差が大きい。前記溶解度は好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3〜5倍の差がある。
【0015】
本発明の方法を適用し得るフェノール化合物の例は、下記式(I):
【0016】
【化2】

(式中、Rはヒドロキシ基、アミノ基、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。)
を有する化合物である。
【0017】
この置換基Rのリストは例示にすぎず、使用する化合物が上記した物理化学的特性を有しているならばこれらに限定されない。
【0018】
式(I)を有する化合物の具体例として、特にヒドロキノン、ピロカテキン、レゾルシン及びm−アミノフェノールが挙げられ得る。好ましくは、本発明はヒドロキノンに適用され得る。
【0019】
本発明の方法は、固有であり、フェノール化合物をビーズ形態で生成し得る特徴を有している。
【0020】
本発明で得られるビーズは上記した物理化学的特性を有している。
【0021】
上記した特性の規定及び測定方法は実施例に記載されている。
【0022】
フェノール化合物ビーズはホワイトビーズの形態を有する。本発明の方法により、前記した本質的に球形のビーズは広範囲にわたる直径を有する。粒径は100〜3000μmであり得るが、好ましくは500〜1500μmである。粒径は金属篩にかけることにより測定されることを留意されたい。
【0023】
通常、メジアン直径(d50)で表される粒径は300〜2000μm、好ましくは500〜1500μmである。メジアン直径は、粒子の50重量%がメジアン直径を超えるかまたは未満の直径を有すると規定される。
【0024】
図1は、本発明に従って得られるヒドロキノンのビーズタイプの形態を示す光学顕微鏡写真を示す。得られた生成物が均一な粒度分布を有していることに注目されたい。
【0025】
ヒドロキノンビーズは各種密度を有する。ビーズの見かけ密度(非圧縮)は好ましくは少なくとも0.3、より好ましくは0.4〜0.5である。本発明のビーズの密度は結晶化粉末の密度よりも低いことに注目すべきである。しかしながら、本発明のビーズは圧縮率が5〜10%で、結晶化粉末の圧縮率の1/3〜1/4であるように非常に圧縮されにくい。
【0026】
本発明の方法によれば、ダストがなく、輸送及び貯蔵操作中に良好な耐摩耗性を付与する物理的形態を有する本発明のフェノール化合物ビーズが得られる。
【0027】
耐摩耗性は、100μmメッシュの篩を備えたエアジェット篩(タイプAlpine 200LS−N)を用いて実施する試験により測定する。耐摩耗性は、篩上に残存するビーズの重量/ビーズの初期重量の比で表される。
【0028】
得られたビーズは90〜100%、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上の耐摩耗性を有する。
【0029】
よって、本発明は、耐摩耗性を付与する物理的形態を有し、高い内部多孔度を有し、よって使用中迅速に溶解するフェノール化合物(好ましくは、ヒドロキノン)ビーズに関する。
【0030】
ビーズは、水銀ポロシメーターで測定して0.5〜0.75cm/gの内部多孔度を有していることに注目すべきである。
【0031】
例えば、ビーズの場合メチルメタクリレート中5重量%の濃度のヒドロキノンの20℃での溶解時間は粉末と比較してほぼ半分である。ヒドロキノンが粉末形態であるか本発明のビーズ形態であるかに関係なく、アクリル酸中2%の濃度での溶解時間は同一である。
【0032】
本発明の生成物のオリジナル構造は完全に適した製造方法により得られる。
【0033】
本発明のフェノール化合物ビーズの製造方法は、フェノール化合物の濃厚水溶液を熱時調製し、この溶液を液滴に細分化し、得られた液滴をガス流中で冷却してビーズに固化させ、次いで前記ビーズを回収し、乾燥することを含む。
【0034】
本発明の方法はヒドロキノンビーズを製造するのに適している。前記方法はプリリング(噴射造粒)技術を利用しているが、通常とは対照的にヒドロキノンを溶融した後ノズルに通すことにより細分化することを含まない。
【0035】
当業者はヒドロキノンが172℃という高温で溶融することが問題であることを経験している。更に、ヒドロキノンは非常に高い蒸気圧(この温度で25ミリバール以上)を有しており、よってノズル出口での実質的な蒸発によりダストと清浄の問題が生じる。この問題は工業的見地から非常に重大な問題である。
【0036】
本出願人は、フェノール化合物の水溶液を出発物質として、プリリング技術を用いてフェノール化合物のビーズを製造できることを知見した。
【0037】
本発明の方法によれば、フェノール化合物、特にヒドロキノンの溶解度が温度の低下に伴って劇的に低下するという事実に基づいてフェノール化合物のビーズが得られる。
【0038】
より具体的には、規定の温度ゾーンにおいてフェノール化合物は可溶性であり、水溶液の温度が低下するとすぐに再結晶する。
【0039】
第1ステップにおいて、当該温度で飽和にできるだけ近い濃度でフェノール化合物の水溶液を調製することが重要である。
【0040】
前記溶液の温度は、少なくとも500g/l、好ましくは1000g/lの溶解度を得るように十分に高く選択する。
【0041】
有利には、温度は80〜98℃、好ましくは85〜95℃であるように選択する。
【0042】
この温度範囲では、ヒドロキノンの水中溶解度は水1kgあたり0.9〜1.7kgであるように特定され得る。
【0043】
次ステップでは、フェノール化合物溶液を液滴に変形する。この操作は細分化デバイス、例えばタービン、スプレーノズルまたは円形オリフィスを有するフラットノズルを用いて実施され得る。
【0044】
好ましい実施態様では、溶液をオリフィス、特にノズルに通すことにより液滴を形成する。
【0045】
次ステップでは、液滴を−30〜30℃、好ましくは−10〜10℃の温度の冷ガスと接触させることにより確実に液滴をビーズに固化する。
【0046】
冷ガスは、フェノール化合物、好ましくはヒドロキノンに対して不活性であれば任意のガスであり得る。好ましくは、窒素または酸素欠乏空気(例えば、10%に欠乏)が選択される。
【0047】
冷ガス流を材料流に対して向流として送ることが好ましい。
【0048】
滞留時間、すなわちノズル出口での液滴の形成から回収システムに達するまでの時間は有利には1〜10秒、より好ましくは3〜5秒である。
【0049】
所望の滞留時間を得るための1つの方法では、液滴を上記したような冷ガスに対して向流させながらタワー中を落下させる。
【0050】
反応の終わりに、ビーズは公知の手段、例えば回収容器での重力または流動床技術を用いて回収する。
【0051】
得られたビーズは操作可能な固体形態であるが、水を含んでいてもよい。
【0052】
通常、フェノール化合物ビーズは、10〜50重量%の水及び50〜90重量%のフェノール化合物を含む。
【0053】
ヒドロキノンの場合には、ビーズが25〜50重量%の水及び50〜75重量%のヒドロキノンを含むことが好ましい。
【0054】
本発明の方法に従って、後続ステップはプリリング操作後得られたビーズを乾燥するために実施され得る。このために、ビーズをガス流、好ましくは20℃(周囲温度)〜90℃、好ましくは60〜90℃の温度の空気流に曝す。
【0055】
流動床技術を用いて乾燥することが有利である。この場合、温度は上記温度ゾーンで段階的に上昇させる。
【0056】
乾燥操作の後に、通常1重量%未満、0.1〜1重量%、好ましくは0.6重量%の含水量を有するビーズが得られる。
【0057】
本発明の方法を実施するために使用される装置は2つのアセンブリ、すなわちビーズを形成するための第1アセンブリ及びビーズを回収し、乾燥するための第2アセンブリから構成されている。
【0058】
第1アセンブリは、フェノール化合物の溶液を加熱するための手段、特に液体(例えば、水)を所望温度で循環させるためのジャケット及びチャンバを備えたフェノール化合物用貯蔵タンクからなる。前記チャンバは通常、上部に液滴に細分化するためのデバイス(好ましくは、ノズル)を含み、下部に冷ガス流のための1つ以上の入口を備えたタワーであり、タワーの底部は冷却タワーに変わる。
【0059】
タワーの高さは広範囲で変更可能であり、例えば施設の大きさに応じて3〜40mである。上限は臨界的でないことに留意されたい。
【0060】
フェノール化合物及び水を、前記化合物を水溶液中に維持するために温度を調節するためのシステム(例えば、ジャケット)を備えた反応器中に導入する。
【0061】
使用するノズルは単孔ノズルであるか、または孔の数が1〜3000個、好ましくは1〜100個であり得る多孔ノズルであり得る。
【0062】
平行に複数のノズル(例えば、2個のノズル)を含むシステムを使用することができ、好ましくはノズルは取外し可能である。
【0063】
ノズルの孔の直径は所望するビーズの大きさに依存する。50〜2000μm、好ましくは200〜600μmであり得る。
【0064】
孔の大きさは常に、得られるビーズの大きさよりも小さい。500μmのメジアン直径を有するビーズを得るためには約300μmの孔を有するノズルが使用され得る。
【0065】
使用されるノズルは固定ノズルであり得るが、高周波数(例えば、100〜1000ヘルツ)で電気的に振動するシステムにかけられるノズルを使用することも可能である。このデバイスにより、完全に決められたサイズを有する液滴を得ることができる。
【0066】
溶液は、好ましくはガス流(好ましくは、窒素流)により保証される過圧下でノズルに到達する。過圧は大気圧に対して5〜500%である。
【0067】
ノズルは、フェノール化合物の水溶液の結晶化が始まる温度よりも2〜10℃高い温度に維持する。
【0068】
ガス流、好ましくは窒素流をノズルを離れるジェットと向流させてもよいが、必須ではない。前記ガス流が周囲温度〜80℃の温度にあることが好ましい。前記ガスを向流させると、ビーズの寸法規則性が改善され、液滴の合体が防止される。
【0069】
タワーの上部には、ガス流を均一に分布させるために障害物(chicanes)及びグリルをタワーの内壁に存在させてもよい。
【0070】
冷ガス(好ましくは、窒素または酸素欠乏空気)の流れをタワーの底部に導入する。この冷ガス流により、液滴は確実にビーズに固化する。冷ガスの温度は好ましくは−30〜30℃、より好ましくは−10〜10℃である。
【0071】
冷ガス流は、冷却ゾーンの全高の約1/10の距離でノズルの下方のタワーから離れる。
【0072】
タワー底部のビーズ回収システムの種類は臨界的でない。このシステムは回収タンクまたは粒子床を流動化し得るデバイスであり得る。このシステムは、下部にガス(好ましくは、窒素または酸素欠乏空気)流が通るグリルを含むタンク、好ましくは円筒状タンクからなる。ガス流は粒子サイズに依存するが、粒子を懸濁状に維持するようでなければならない。直径80mmの流動床の場合5〜30m/hが例示される。
【0073】
流動床は、この操作を実施するのに適した乾燥デバイス、特に流動床またはオーブンにビーズを排出するための出口を有している。
【0074】
本発明の1実施態様を図2で説明する。図2は本発明を実施するのに適した装置の概略側面図である。
【0075】
使用する装置は2つの部分、すなわち上部部分のプリリングタワー(A)及び下部部分の流動デバイス(B)により構成される。
【0076】
フェノール化合物の溶液をジャケット付き反応器の貯蔵タンク(1)に導入した後ノズル(2)に向かって送る。この目的で、窒素(3)を過圧下でタンク(1)に流す。
【0077】
タワーの高さは8mであり、上部には場合によりバイブレーター(4)に連動し得るノズル(2)、下部には冷たい酸素欠乏空気のための入口(5)を備えている。
【0078】
(5)で導入した冷却空気はノズル(2)の下の地点(6)でタワーから出ていく。
【0079】
タワーの上部には、ガス流をタワー中に均一に分布するために障害物(7)及び環状グリル(8)がある。この具体例に図示していないが、ノズル(2)の周りに向流物として20〜80℃、好ましくは60〜80℃の温度の熱窒素流(9)を送ることもできる。
【0080】
タワーの下部には円錐台状グリル(10)があり、これにより固化したビーズは冷空気のための入口(11)及び得られたビーズを流動床タイプの乾燥デバイスに連続的に排出させるための出口(12)を含む流動床デバイス(図示せず)に集められる。
【0081】
本発明の例を非限定的に示す。
【0082】
実施例を説明する前に、得られた生成物の各種特性を測定するために使用した方法を説明する。
【0083】
メジアン直径
粉末を篩にかけることにより測定する。
【0084】
圧縮及び非圧縮見かけ密度
図3に示す装置を用いて測定する。
【0085】
まず、空のメスシリンダー(2)を秤量する。
【0086】
メスシリンダー(2)に測定しようとする粉末を漏斗(1)を用いて粉末床のトップが250cm容量のメスシリンダーのトップにくるまで装入する(レベルA)。
【0087】
粉末の量を満載メスシリンダーを秤量することにより測定する。
【0088】
メスシリンダー(3)をグリップ(4)を用いて支持体(3)に固定する。
【0089】
メスシリンダーの底部に加わる衝撃の数を加算するカウンタ(8)をゼロに合わせる。
【0090】
次いで、カム(7)を介してモーター(6)により作動させるハンマー(5)により垂直衝撃をメスシリンダーの底部に加える。容量が一定になったとき操作を停止する(レベルB)。
【0091】
メスシリンダーの目盛で読んだ見かけ容量の変化をハンマーを用いて加えた衝撃の回数に対して記録する。
【0092】
実験的圧縮グラフを得る。
【0093】
見かけ容量=f(衝撃の回数)、これは見かけ密度=f(衝撃の回数)のグラフに変換される。
【0094】
圧縮前後に見かけ密度を下記式:
見かけ密度=装入した粉末の量(g)/見かけ容量(cm)。
を用いて求める。
【0095】
圧縮率は下記式:
圧縮率=[圧縮密度−非圧縮密度]/(圧縮密度)
に従って求める。
【0096】
耐摩耗性
耐摩耗性は100μmメッシュの篩を有するエアジェット篩(タイプAlpine 200 LS−N)を用いて実施した試験により測定する。
【0097】
上記メッシュは、当業者が通常認めているように直径100μm未満の粒子は粉末の操作中ダストを生じやすいので選択した。
【0098】
篩を横切る空気流の作用下で、ビーズは規則的に篩のカバーにたたきつけられ、篩の金属構造上で摩擦を受ける。
【0099】
上記した動きは、ビーズが輸送及び貯蔵中に受ける可能性がある衝撃及び機械的ストレスに完全にシミュレートしている。
【0100】
試験は100μm篩上にビーズ40gを置いた後、篩を3200Paの低圧下で5分間操作する。試験の最後に篩上に残っているビーズの量を秤量することにより、試験中に生じた大きさが100μm未満の粒子の量を推定することができる。
【0101】
耐摩耗性は、篩上に残っているビーズの量/最初のビーズの量の比として表される。
【0102】
内部多孔度
ビーズの内部多孔度は水銀ポロシメーターを用いて触媒D 4284−92についてのASTM規格に従って測定する。
【実施例】
【0103】
本実施例ではヒドロキノンビーズの製造を説明する。
【0104】
ヒドロキノンビーズは図2に示す装置において製造した。
【0105】
非振動ノズルは0.5mmの直径孔及びL/D比(Lはオリフィスの長さ、Dはオリフィスの直径を表す)3を有していた。
【0106】
結晶化ヒドロキノン粉末1500g及び水(好ましくは、脱イオン水)1228gを出発材料とした。
【0107】
ヒドロキノン粉末及び水を反応器(1)に導入した。水ジャケット中を循環する熱水を用いて加熱することによりヒドロキノンを反応器(1)中で溶解させた。生成物の温度は(1)で94℃であり、ノズル出口の(2)での温度は92.5℃であった。
【0108】
(3)での窒素過圧は0.1バールに近かった。
【0109】
(2)のノズル出口での水溶液の流速は1.8kg/hであった。
【0110】
冷却空気を0℃の温度及びタワー中に0.6m/sの速度を与える850m/hの流速で(5)から導入した。
【0111】
(6)で離れる空気の温度は3.5℃であった。
【0112】
得られたビーズを(10)で集めた。
【0113】
タワー底部でのビーズの組成は68重量%のヒドロキノン及び32重量%の水であった。
【0114】
(10)で集めたビーズを流動床(11)に回収した。(11)での流動空気の温度は20℃であった。
【0115】
流動床を60〜90℃の空気で乾燥するためにビーズを(12)で排出した。
【0116】
乾燥後得られたビーズの組成は99.64重量%のヒドロキノン及び0.36重量%の水であった。
【0117】
得られたビーズは以下の特徴を有していた:
メジアン直径(d50) 1350μm、
非圧縮見かけ密度 0.436、
圧縮見かけ密度 0.462、
耐摩耗性 99.5%、
(結晶性ヒドロキノンの圧縮率20.4%と比較して)圧縮率 5.6%、
内部多孔度 0.54cm/g、
20℃でのアクリル酸中の溶解時間 10分(結晶性ヒドロキノンと同じ)、
20℃でのメチルメタクリレート中の溶解時間 1分45秒(結晶性ヒドロキノンでは3分)。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明に従って得られるヒドロキノンのビーズタイプの形態を示す光学顕微鏡写真を示す。
【図2】本発明を実施するのに適した装置の概略側面図である。
【図3】見かけ密度を測定するための装置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(90℃の基準温度で)少なくとも500g/lの高い熱時溶解度を有し、熱時溶解度と冷時溶解度の差、すなわち細分化装置における温度と冷却ガス流の温度の差が大きく、この2つの操作温度間の溶解度は好ましくは少なくとも2倍である、フェノール化合物の、耐摩耗性と多孔性を有するビーズ。
【請求項2】
フェノール化合物が(90℃の基準温度で)少なくとも1000g/lの高い熱時溶解度を有する請求項1に記載のビーズ。
【請求項3】
フェノール化合物の熱時溶解度と冷時溶解度の差が大きく、この2つの操作温度間の溶解度は少なくとも3〜5倍である請求項1または2に記載のビーズ。
【請求項4】
フェノール化合物が式(I):
【化1】

(式中、Rはヒドロキシ基、アミノ基、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。)
を有する請求項1から3のいずれか1項に記載のビーズ。
【請求項5】
フェノール化合物がヒドロキノン、ピロカテキン、レゾルシン及びm−アミノフェノールから選択され、好ましくはヒドロキノンである請求項1から4のいずれか1項に記載のビーズ。
【請求項6】
大きさが100〜3000μm、好ましくは500〜1500μmである請求項1から5のいずれか1項に記載のビーズ。
【請求項7】
メジアン直径(d50)で表す大きさが300〜2000μm、好ましくは500〜1500μmである請求項1から6のいずれか1項に記載のビーズ。
【請求項8】
90〜100%、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上の耐摩耗性を有する請求項1から7のいずれか1項に記載のビーズ。
【請求項9】
水銀ポロシメーターを用いて測定して0.5〜0.75cm/gの内部多孔度を有する請求項1から8のいずれか1項に記載のビーズ。
【請求項10】
少なくとも0.3、好ましくは0.4〜0.5の嵩密度(非圧縮)を有する請求項5に記載のビーズ。
【請求項11】
5〜10%の圧縮率を有する請求項5に記載のビーズ。
【請求項12】
90〜100%、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上の耐摩耗性を有する請求項5に記載のビーズ。
【請求項13】
水銀ポロシメーターを用いて測定して0.5〜0.75cm/gの内部多孔度を有する請求項5に記載のビーズ。
【請求項14】
ポリマー中に十分な溶解度を有する請求項5に記載のビーズ。
【請求項15】
フォノール化合物の濃厚水溶液を熱時調製し、その溶液を液滴に細分化し、得られた液滴をガス流中で冷却してビーズに固化させ、その後前記ビーズを回収し、乾燥することを含む請求項1から14のいずれか1項に記載のビーズの製造方法。
【請求項16】
フェノール化合物の溶液をノズルに通して液滴を形成し、この液滴を冷ガスと向流させながらタワー中に落下させることにより液滴を固化させ、その後得られたビーズを回収することを含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
フェノール化合物の水溶液を考慮の温度での飽和にできるだけ近い濃度で、好ましくは少なくとも500g/l、より好ましくは少なくとも1000g/lの濃度で調製する請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
溶液の温度が所望溶解度が得られるように十分に高く、好ましくは80〜98℃、より好ましくは85〜95℃である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
使用するノズルが単孔ノズル、または1〜3000個の孔、好ましくは1〜100個の孔を有する多孔ノズルである請求項16に記載の方法。
【請求項20】
使用するノズルが50〜2000μm、好ましくは200〜600μmの直径を有する孔を含む請求項16に記載の方法。
【請求項21】
使用するノズルが固定ノズル、好ましくは高周波(好ましくは、100〜10000ヘルツで)電気振動システムにかけられるノズルである請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
液滴を冷ガス、好ましくは−30〜30℃、好ましくは−10〜10℃の温度を有する窒素または酸素欠乏空気と接触させる請求項15から22のいずれかに1項に記載の方法。
【請求項23】
液滴のノズル出口から回収装置に達するまでの滞留時間が好ましくは1〜10秒、より好ましくは3〜5秒である請求項16から22のいずれかに1項に記載の方法。
【請求項24】
好ましくはビーズを流動床技術を用いて回収する請求項15から23のいずれかに1項に記載の方法。
【請求項25】
プリリングタワーの底部のフェノール化合物ビーズの組成が10〜50重量%の水及び50〜90重量%のフェノール化合物である請求項15から24のいずれかに1項に記載の方法。
【請求項26】
プリリングタワーの底部のヒドロキノンビーズの組成が25〜50重量%の水及び50〜75重量%のヒドロキノンである請求項15から24のいずれかに1項に記載の方法。
【請求項27】
ビーズをガス流、好ましくは20〜90℃、好ましくは60〜90℃の温度の空気流に曝す請求項15から26のいずれかに1項に記載の方法。
【請求項28】
乾燥を流動床技術を用いて実施する請求項27に記載の方法。
【請求項29】
乾燥後のフェノール化合物ビーズの組成が0.1〜1重量%の水及び99〜99.9重量%のフェノール化合物である請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
乾燥後のフェノール化合物ビーズの組成が0.1〜0.6重量%の水及び99.4〜99.9重量%のフェノール化合物である請求項29に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−503900(P2006−503900A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547736(P2004−547736)
【出願日】平成15年10月28日(2003.10.28)
【国際出願番号】PCT/FR2003/003206
【国際公開番号】WO2004/039758
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(390023135)ロディア・シミ (146)
【氏名又は名称原語表記】RHONE−POULENC CHIMIE
【Fターム(参考)】