説明

フェルールプローブ

【課題】被覆に覆われた光ファイバを用いた場合でも、光ファイバのフェルールからの突出、及び被覆の光ファイバ端面からの突出をいずれも防止し、光強度の低下を防ぐことで正確且つ安定した温度計測を維持できるフェルールプローブを提供すること。
【解決手段】本発明におけるフェルールプローブは、外周面が被覆52で覆われている光ファイバ5と、光ファイバ5の端部を少なくとも一端部63で囲んで保持するフェルール6と、上記一端部63の端面63aと対向する位置に設けられ光ファイバ5及び被覆52の上記端面63aからの突出を防止する突出防止部8とを有するという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば放射温度計等に用いて好適なフェルールプローブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、計測対象から発せられる光の波長や強度を測定して、計測対象の温度を計測する放射温度計(パイロメータ、赤外放射温度計等)が用いられている。
ここで、計測対象の温度が高く、光を電気信号に変換する受光素子等を計測対象の近傍に設置できない場合には、計測対象から発せられた光を受光素子まで伝送するフェルールプローブが使用される。このフェルールプローブには、光ファイバが用いられている(例えば、非特許文献1及び2参照)。
また、計測対象と光ファイバとの間には、集光レンズが設けられている。計測対象からの光が集光レンズによって集光され、光ファイバに入射される光の強度が向上する。光の強度が向上することで、正確で安定した温度計測を行うことができる。
【0003】
光ファイバはガラスや石英からなり、そのままでは脆く破損しやすいので、光ファイバの外周面は破損防止用の被覆で覆われている。被覆には延性の高い材料が用いられ、例えば金が用いられる。
光ファイバには、その入光側端部の外周面を囲んで保持するフェルールが設けられている。このフェルールは、光ファイバの入光側端部を適切な位置に保持するためのものである。光ファイバがフェルールに保持されることで、集光レンズと入光側端部との間隔は、集光レンズの焦点距離と等しくなっている。なお、フェルールは、例えばセラミック接着剤を用いて光ファイバと接続されている。
【0004】
また、光ファイバは、屈曲自在な管状の部材であるコンジット内に配置されている。このコンジットは、光ファイバを保護するためのものであるが、コンジットを屈曲させたときに光ファイバに対して引張力が加えられ破断することを防ぐために、コンジット内には長めの光ファイバが撓んだ状態で配置されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】一ノ瀬昇、小林哲二、「センサとその応用」、総合電子出版社、1980年、P47
【非特許文献2】高橋清、「センサ技術入門」、工業調査会、1978年、P39
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術には、以下のような課題が存在する。
コンジット内には長めの光ファイバが撓んだ状態で配置されており、光ファイバは延びた状態に復元しようとする。この復元力により、フェルールの保持部分における光ファイバは、フェルールから集光レンズに向かって付勢されている。また、コンジットを屈曲させることによっても、フェルールの保持部分における光ファイバに対して、集光レンズに向かって付勢する力が作用する。
一方、フェルールは光ファイバの端部外周面をセラミック接着剤等を介して保持しているが、光ファイバの外周面には延性の高い被覆が設けられているため、上記付勢力によって光ファイバは集光レンズに向かって僅かに移動し、光ファイバの入光側端部がフェルールから突出していた。
入光側端部が突出することで、集光レンズの焦点と入光側端部におけるファイバ端面とがずれてしまい、光ファイバに入射される光の強度が低下するという課題があった。
【0007】
また、一般的に被覆の熱膨張係数は光ファイバやセラミック接着剤の熱膨張係数よりも大きいことから、フェルールプローブが高温の雰囲気内で使用される場合には、被覆の熱膨張量は光ファイバ及びセラミック接着剤の熱膨張量よりも大きくなり、被覆がファイバ端面からずれて突出していた。
被覆の突出により、集光レンズからファイバ端面に入射される光が遮られ、光ファイバに入射される光の強度が低下するという課題があった。
そして、光ファイバに入射される光の強度が低下することで、正確で安定した温度計測が維持できなくなる虞があった。
【0008】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、被覆に覆われた光ファイバを用いた場合でも、光ファイバのフェルールからの突出、及び被覆の光ファイバ端面からの突出をいずれも防止し、光強度の低下を防ぐことで正確且つ安定した温度計測を維持できるフェルールプローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明におけるフェルールプローブは、外周面が被覆で覆われている光ファイバと、光ファイバの端部を少なくとも一端部で囲んで保持するフェルールと、上記一端部の端面と対向する位置に設けられ光ファイバ及び被覆の上記端面からの突出を防止する突出防止部とを有するという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、フェルールにおける一端部の端面と対向する位置に設けられた突出防止部が、光ファイバのフェルールからの突出、及び被覆の光ファイバ端面からの突出をいずれも防止する。
【0010】
また、本発明におけるフェルールプローブは、突出防止部が、光ファイバと同一軸上に並べられ且つ光ファイバのファイバ端面と接して配置される第2光ファイバを備えるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、光ファイバに入射される光は、第2光ファイバを介して光ファイバに入射される。
【0011】
また、本発明におけるフェルールプローブは、第2光ファイバが、非被覆で設けられるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、非被覆の第2光ファイバが突出防止部に設けられており、第2光ファイバと突出防止部との間に延性の高い被覆等が設けられていないので、第2光ファイバの部分においても光ファイバ及び被覆の突出を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明によれば、被覆に覆われた光ファイバをフェルールプローブに用いた場合でも、光ファイバのフェルールからの突出、及び被覆の光ファイバ端面からの突出をいずれも防止でき、光強度の低下を防ぐことで正確且つ安定した温度計測を維持できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】フェルールプローブ1の構成を示す概略図である。
【図2】入射部2の構成を示す概略図である。
【図3】突出防止カバー8の構成を示す概略図である。
【図4】入射部2の第1の変形例を示す概略図である。
【図5】入射部2の第2の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のフェルールプローブに係る実施の形態を、図1から図5を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0015】
図1は、フェルールプローブ1の構成を示す概略図である。
フェルールプローブ1は、放射温度計の一種であるパイロメータ(図示せず)において用いられるものである。パイロメータは、不図示の計測対象から発せられる光の波長を測定して、計測対象の温度を計測する計測機器である。上記計測対象は、赤熱・白熱して可視光線を発する程度の高温(例えば750℃程度)となっているため、光を電気信号に変換する受光素子を計測対象から離れた位置に設置する必要がある。そこで、計測対象からの光を受光素子まで伝送するフェルールプローブ1が用いられる。
【0016】
フェルールプローブ1は、屈曲自在なケーブル状の機器であって、入射部2と、ケーブル部3と、コネクタ部4とを有している。
入射部2は、フェルールプローブ1の一端部に設けられ、計測対象から発せられる光が入射される部分である。なお、入射部2の詳細は後述する。
【0017】
ケーブル部3は、入射部2とコネクタ部4とを連結するケーブル部分であって、屈曲自在な管状の部材であるコンジット31の内部に後述する光ファイバ5(図2参照)が配置された構成となっている。
コンジット31は、光ファイバ5を保護するために設けられるものであり、耐熱性(例えば200℃程度)を備え可撓性を有する管部材である。また、コンジット31の内部には、長めの光ファイバ5が撓んだ状態で配置されている。これは、コンジット31を屈曲させたときに、光ファイバ5に対して引張力が加えられ破断することを防ぐためである。
【0018】
コネクタ部4は、フェルールプローブ1の他端部に設けられ、計測対象からの光を電気信号に変換し外部に出力する部分である。
コネクタ部4の内部には、計測対象からの光を電気信号に変換する受光素子として、不図示のフォトダイオードが設けられている。光ファイバ5によって伝送された光はフォトダイオードに入射され、電気信号に変換される。変換により得られた電気信号は、コネクタ部4に設けられる出力用電極を介して外部に出力される。パイロメータは、この電気信号を用いて計測対象の温度を計測する。
【0019】
次に、入射部2の詳細な説明を、図2及び図3を参照して説明する。
図2は、入射部2の構成を示す概略図であって、(a)は断面図、(b)は(a)の領域Kにおける拡大図である。なお、図2における入射部2の紙面左側を、前側(先端側)すなわち光が入射される側とする。
図3は、突出防止カバー8の構成を示す概略図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線視断面図である。
【0020】
図2に示すように、入射部2は、光ファイバ5と、フェルール6と、スリーブ7と、突出防止カバー(突出防止部)8とを有している。
光ファイバ5は、計測対象から発せられた光をコネクタ部4のフォトダイオードまで伝送するためのものである。すなわち、光ファイバ5は、入射部2だけでなくケーブル部3におけるコンジット31の内部にも配設され、コネクタ部4のフォトダイオードの近傍まで延在して設置されている。光ファイバ5は、ファイバ本体51と、被覆52とを有している。
【0021】
ファイバ本体51は、石英を用いて形成された光ファイバであって、凡そ1000℃の耐熱性を有し、その径は400μmに設定されている。なお、ファイバ本体51の材料は石英に限定されるものではなく、計測対象近傍の温度に耐えうる耐熱性を有していればよいため、例えばガラスを用いて形成されたガラスファイバであってもよい。
また、ファイバ本体51の入射側の端面であるファイバ端面51aは、ファイバ本体51の延在方向と直交する平面状に形成されている。
【0022】
被覆52は、ファイバ本体51の屈曲等による破損を防ぐためのものであり、ファイバ本体51の外周面を覆って設けられている。そのため、光ファイバ5の外周面において、ファイバ本体51の露出部分は存在しない。被覆52は、延性の高い材料を用いて形成され、本実施形態では金が用いられている。なお、金に限定されるものではなく、延性が高く、所定の耐熱性(計測対象近傍の温度に耐えうるもの)を有する他の材質であってもよい。被覆52を設けることにより、本来脆く破損しやすいファイバ本体51の強度を向上させ、その破損の発生を抑制することができる。
また、被覆52の前側の端部は、ファイバ端面51aと面一に形成されている。
【0023】
フェルール6は、中心軸方向で貫通する孔部を有する略円柱状の部材であって、光ファイバ5を適切な位置に保持するためのものである。フェルール6は、ステンレス系の金属材料からなり、第1孔部61と、第2孔部62とを有している。
【0024】
第1孔部61は、フェルール6における前側の端部(一端部)63に、フェルール6の中心部分でその延在方向と平行して設けられる孔部であって、その径は光ファイバ5の外径よりも僅かに大きく形成されている。第1孔部61内には光ファイバ5が配置され、光ファイバ5はセラミック接着剤Cを介して第1孔部61の内周面に一体的に接続されている。また、端部63の端面63aは、フェルール6の中心軸方向と直交する平面状に形成されており、光ファイバ5は、ファイバ端面51aと端面63aとが面一となる位置に設置されている。
すなわち、フェルール6の端部(一端部)63は、セラミック接着剤Cを介して、光ファイバ5の前端部を囲んで保持している。
【0025】
第2孔部62は、第1孔部61よりも大きな径を有する孔部であり、フェルール6の端部63以外の部分に、第1孔部61と連通して設けられている。第2孔部62内にも光ファイバ5は配置され、第2孔部62の内周面と光ファイバ5の外周面との間の隙間にはセラミック接着剤Cが充填されている。
【0026】
スリーブ7は、入射部2を計測対象の近傍に取り付けるためのものであり、且つフェルール6と共に用いられることで、光ファイバ5等を後述する集光レンズ9から適切な位置に設置するためのものである。スリーブ7は、ステンレス系の金属材料からなり、円筒部71と、フランジ部72とを有している。
【0027】
円筒部71は、略円筒状に形成されており、その内側にフェルール6及び光ファイバ5が配置される。円筒部71の内径は、フェルール6が隙間なく嵌合できる大きさで形成されており、フェルール6は、円筒部71の内側に中心軸方向で移動自在に設置される。また、円筒部71の内側には段部73が形成されており、段部73にフェルール6の後端部が係合することで、スリーブ7に対するフェルール6の後端側への移動が規制される。
フランジ部72は、円筒部71の後端部に接続して設けられる略円板状の部材である。フランジ部72は、板厚方向で貫通する複数の取付用孔部72aを有しており、取付用孔部72aを用いて入射部2が計測対象の近傍に取り付けられる。
【0028】
図3に示すように、突出防止カバー(突出防止部)8は、略円板状の部材であって、ファイバ本体51の端面63aからの突出、及び被覆52のファイバ本体51からの突出をいずれも防止するためのものである。突出防止カバー8は、円板部81と、第2光ファイバ82とを有している。
【0029】
円板部81は、ステンレス系の金属材料からなる円板状の部材であって、その外径は円筒部71の内側に隙間なく嵌合できる大きさで形成されている。なお、円板部81の一対の板面である、後側板面81a及び前側板面81bは、いずれも平面状に形成されている。
また、円板部81の中心部分には、板厚方向で貫通する第3孔部83が形成されている。第3孔部83の内径は、後述する第2光ファイバ82の外径よりも僅かに大きく形成されている。
【0030】
第2光ファイバ82は、石英を用いて形成され、外周面の被覆を持たない光ファイバであって、凡そ1000℃の耐熱性を有し、その径は400μm、その全長は円板部81の板厚と等しい長さに設定されている。なお、ファイバ本体51と同様に、第2光ファイバ82の材料は石英に限定されるものではなく、計測対象近傍の温度に耐えうる耐熱性を有していればよいため、例えばガラスを用いて形成されたガラスファイバであってもよい。
【0031】
第2光ファイバ82は、円板部81の第3孔部83内に配置され、セラミック接着剤Cを介して第3孔部83の内周面に一体的に接続されている。また、第2光ファイバ82の外周面に被覆は設けられていないため、第2光ファイバ82の外周面と第3孔部83の内周面との間にはセラミック接着剤Cが充填されているのみである。すなわち、円板部81及び第2光ファイバ82は、一つの剛体として構成されている。
【0032】
また、第2光ファイバ82の一対の端面である、後側端面82a及び前側端面82bは、いずれも中心軸方向と直交する平面状に形成され、通過する光の減衰を極力抑えるために平滑に研磨されている。第2光ファイバ82は、後側端面82aと後側板面81aとが互いに面一となる位置関係で、円板部81に設けられている。
【0033】
図2に示すように、突出防止カバー8は、円筒部71の内側に嵌合し、フェルール6における端部63の端面63aと対向する位置に設けられている。
突出防止カバー8と円筒部71とは、円板部81と円筒部71との間の溶接によって一体的に接続され、溶接箇所Wは前方に臨む位置に設けられている。溶接方法としては、第2光ファイバ82の位置精度等に対する影響を少なくするために、熱の影響する範囲を限定できる方法であることが好ましく、例えば電子ビーム溶接等が用いられる。
【0034】
突出防止カバー8はフェルール6に当接して設けられており、フェルール6は中心軸方向に関して突出防止カバー8と段部73とで挟持されている。したがって、フェルール6は、中心軸方向及び中心軸と直交する方向のいずれに関しても、スリーブ7に一体的に接続されている。ここで、第2光ファイバ82は、光ファイバ5と同一軸上に並んで配置されている。
また、第2光ファイバ82の後側端面82aと、ファイバ本体51のファイバ端面51aとは互いに接して設けられている。そのため、第2光ファイバ82から光ファイバ5に入射される光の減衰を少なくすることができる。
【0035】
突出防止カバー8の前方側には、計測対象から発せられる光Lを集光するための集光レンズ9が設けられている。集光レンズ9は、突出防止カバー8における第2光ファイバ82の前側端面82bとの間隔Dが集光レンズ9の焦点距離となる位置に設置されている。すなわち、前側端面82bにおいて集光レンズ9の焦点が合うことになり、光Lの強度を最も向上させた状態で第2光ファイバ82に入射させることができる。
なお、間隔Dは、スリーブ7、突出防止カバー8及び不図示のレンズ保持部材の存在により、常に一定の間隔に維持される。
【0036】
続いて、本実施形態に係るフェルールプローブ1の動作及び作用を説明する。なお、突出防止カバー8に関する動作及び作用を中心に説明する。
上述したように、コンジット31内には長めの光ファイバ5が撓んだ状態で配置されており、光ファイバ5は延びた状態に復元しようとする。また、コンジット31を屈曲させた場合にも、フェルール6の保持部分における光ファイバ5に対して、集光レンズ9に向かって付勢する力が作用する。そのため、上記復元力及び付勢力により、フェルール6によって保持された光ファイバ5は、フェルール6から集光レンズ9に向かって移動しようとする。
【0037】
また、フェルール6は光ファイバ5の先端部を囲んで保持しているが、光ファイバ5は延性の高い金属材料(金)で形成された被覆52を有しており、フェルール6は被覆52を介してファイバ本体51を保持している。すなわち、ファイバ本体51の外周面とフェルール6における第1孔部61の内周面との間には、延性の高い被覆52が介在しており、集光レンズ9に向かって移動しようとするファイバ本体51をフェルール6が一定の位置に保持することは難しい状況にあった。
【0038】
もっとも、本実施形態における入射部2には、フェルール6の端面63aと対向する位置に、突出防止カバー8が設けられている。そして、突出防止カバー8はスリーブ7の円筒部71に溶接によって一体的に接続され、突出防止カバー8の第2光ファイバ82はファイバ本体51と隙間なく当接している。そのため、光ファイバ5の復元力により、ファイバ本体51がフェルール6から集光レンズ9に向かって移動しようとしても、突出防止カバー8の第2光ファイバ82が、ファイバ本体51の移動を規制し、フェルール6の端面63aからの突出を防止することができる。
【0039】
また、集光レンズ9と、突出防止カバー8における第2光ファイバ82の前側端面82bとの間隔Dが、集光レンズ9の焦点距離となるように設定されており、加えて突出防止カバー8はスリーブ7に一体的に接続されている。そのため、突出防止カバー8がファイバ本体51によって前方に付勢されたとしても、間隔Dは変動せず、前側端面82bにおいて集光レンズ9の焦点が常に合っていることになる。
したがって、集光レンズ9から第2光ファイバ82に入射される光Lの強度を、最も高い状態に維持することができる。
【0040】
さらに、第2光ファイバ82の後側端面82aと、ファイバ本体51のファイバ端面51aとは互いに接して設置されているので、前側端面82bから入射された光Lは、第2光ファイバ82からファイバ本体51へ僅かな減衰のみで通過することができる。すなわち、光ファイバ5が第2光ファイバ82の分だけ延長された状態となっており、前側端面82bから入射された光Lをコネクタ部4のフォトダイオードまで僅かな減衰のみで伝送することができる。
したがって、本実施形態に係るフェルールプローブ1を用いることで、常に強度の高い光Lをコネクタ部4まで伝送することができるため、正確且つ安定した温度計測を維持することができる。
【0041】
また、被覆52の材料である金は、ファイバ本体51の材料である石英よりも高い熱膨張係数を有しており、入射部2が高温の計測対象の近傍に設けられた場合には、被覆52の熱膨張量はファイバ本体51の熱膨張量よりも大きくなり、ファイバ本体51のファイバ端面51aから被覆52がずれて突出する虞があった。
【0042】
しかし、本実施形態では、被覆52の先端側の端部はファイバ端面51aと面一に形成され、且つファイバ端面51a及び被覆52のいずれにも突出防止カバー8が接して設けられているので、被覆52のファイバ端面51aからの突出を防止することができる。したがって、被覆52が突出することで入射される光Lが遮られることがなくなり、入射される光Lの強度を、最も高い状態に維持することができる。
【0043】
したがって、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、被覆52に覆われた光ファイバ5をフェルールプローブ1に用いた場合でも、ファイバ本体51のフェルール6からの突出、及び被覆52のファイバ端面51aからの突出をいずれも防止でき、入射される光Lの光強度の低下を防ぐことで正確且つ安定した温度計測を維持できるという効果がある。
【0044】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態では、フェルールプローブ1はパイロメータに設けられているが、これに限定されるものではなく、放射温度計の一種である赤外放射温度計に設けられていてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、突出防止カバー8はスリーブ7と一体的に接続されているが、これに限定されるものではなく、図4に示すように、突出防止カバー8がフェルール6に接続されていてもよい。
図4は、入射部2の第1の変形例を示す概略図である。
図4に示すフェルール6には、前方に向かって開口し且つ突出防止カバー8が隙間無く嵌合できる凹部65が設けられている。突出防止カバー8は、凹部65に嵌合し凹部65の底面65aに当接している。なお、突出防止カバー8を底面65aに隙間なく当接させるために、円板部81には切欠部81cを設けることが好ましい。さらに、溶接は円板部81とフェルール6との間で実施される。したがって、このような構成を用いても、ファイバ本体51のフェルール6からの突出、及び被覆52のファイバ端面51aからの突出をいずれも防止することができる。
【0047】
また、上記実施形態では、突出防止カバー8は円板部81と第2光ファイバ82とを有するものであったが、これに限定されるものではなく、図5に示すように、光が透過できる単一の材料で形成された第2突出防止カバー(突出防止部)10を用いてもよい。
図5は、入射部2の第2の変形例を示す概略図である。
図5に示す第2突出防止カバー10は、突出防止カバー8とほぼ同一の外形寸法を有しており、その一対の端面である第2前側板面10b及び第2後側板面10aはいずれも中心軸方向と直交する平面状に形成され円滑に研磨されている。第2突出防止カバー10は円筒部71の内側に嵌合し、第2後側板面10aはフェルール6の端面63aに当接している。また、第2突出防止カバー10は、セラミック接着剤Cを介して、円筒部71の内周面に一体的に接続されている。
【0048】
第2突出防止カバー10は、ガラスや石英といった光を透過する材料で形成されている。また、集光レンズ9によって集光された光Lの焦点は、ファイバ端面51a上で合うようになっており、集光レンズ9とファイバ端面51aとの間隔D2が、集光レンズ9の焦点距離に第2突出防止カバー10の屈折率を加味した間隔に設定されている。
したがって、このような構成を用いても、ファイバ本体51のフェルール6からの突出、及び被覆52のファイバ端面51aからの突出をいずれも防止することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…フェルールプローブ、5…光ファイバ、51a…ファイバ端面、52…被覆、6…フェルール、63…端部(一端部)、63a…端面、8…突出防止カバー(突出防止部)、82…第2光ファイバ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面が被覆で覆われている光ファイバと、
前記光ファイバの端部を、少なくとも一端部で囲んで保持するフェルールと、
前記一端部の端面と対向する位置に設けられ、前記光ファイバ及び前記被覆の前記端面からの突出を防止する突出防止部とを有することを特徴とするフェルールプローブ。
【請求項2】
請求項1に記載のフェルールプローブにおいて、
前記突出防止部は、前記光ファイバと同一軸上に並べられ且つ前記光ファイバのファイバ端面と接して配置される第2光ファイバを備えることを特徴とするフェルールプローブ。
【請求項3】
請求項2に記載のフェルールプローブにおいて、
前記第2光ファイバは、非被覆で設けられることを特徴とするフェルールプローブ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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