説明

フェンス

【課題】 カバー材の設置や調整を行うことなく、隣接するパネル体間に隙間が生じない傾斜地対応型のフェンスの提供。
【解決手段】 左右方向に隣接して配置される複数のパネル体1,1と、パネル体1を支持する支柱2を備え、パネル体1は、上下の横桟3,4と左右の縦桟5,6を有し、横桟3,4と縦桟5,6とを回動自在に連結してあり、縦桟5,6は、パネル体外周側に重合部7,8を有し、隣接するパネル体1,1の横桟3,4が、端面を突き合わせるようにして連結してあり、隣接するパネル体1,1の隣接する縦桟5,6の重合部7,8が見込み方向に重なり合い、横桟3,4の角度に応じて重合部7,8同士の重なり代Lが変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜地対応型のフェンスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりフェンスのパネル体として、図16に示すように、上下の横桟90,91と左右の縦桟92,93をリベット94等により回動自在に連結し、傾斜地に設置する場合には平行四辺形状に変形できるようにしたものがあった。このようなパネル体95は、図16(a)に示すように、水平状態で左右に隣接するパネル体95,95の横桟90,91及び縦桟92,93間に隙間が開かないようにすると、図16(b)に示すように、傾斜状態で設置したときに隣接するパネル体95,95の横桟90,91間に隙間Sができ、この隙間Sを隠すためにカバー材96を別途設ける必要がある。一方、図16(c)に示すように、傾斜状態で設置するときに隣接するパネル体95,95の横桟90,91及び縦桟92,93間に隙間が開かないようにすると、図16(d)に示すように、水平状態や傾斜が緩い場所に設置するときに隣接するパネル体95,95の縦桟92,93間に隙間Sができてしまう。
特許文献1記載のフェンスは、各縦桟に左右方向にスライド可能な縦桟カバーを設け、縦桟カバーの位置調整を個々に行って縦桟間の隙間を閉塞している。このように従来の傾斜地対応型のフェンスでは、隣接するパネル体の横桟や縦桟間の隙間を隠すためにカバー材の設置や調整が必要であり、コストアップと施工の煩雑化を招いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−218067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、カバー材の設置や調整を行うことなく、隣接するパネル体間に隙間が生じない傾斜地対応型のフェンスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明によるフェンスは、左右方向に隣接して配置される複数のパネル体と、パネル体を支持する支柱を備え、パネル体は、上下の横桟と左右の縦桟を有し、横桟と縦桟とを回動自在に連結してあり、縦桟は、パネル体外周側に重合部を有し、隣接するパネル体の横桟が、端面を突き合わせるようにして連結してあり、隣接するパネル体の隣接する縦桟の重合部が見込み方向に重なり合い、横桟の角度に応じて重合部同士の重なり代が変化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によるフェンスは、パネル体の横桟と縦桟とを回動自在に連結してあるので、傾斜地に設置する場合は傾斜角度に合わせてパネル体を平行四辺形状に変形することができ、縦桟は、パネル体外周側に重合部を有し、隣接するパネル体の横桟が、端面を突き合わせるようにして連結してあり、隣接するパネル体の隣接する縦桟の重合部が見込み方向に重なり合い、横桟の角度に応じて重合部同士の重なり代が変化するようにしたので、水平に設置する場合、傾斜地に設置する場合のいずれにおいても、隣接するパネル体の横桟間及び縦桟間に隙間が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】パネル体同士の連結部を拡大して示す正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】パネル体の端部を拡大して示す正面図である。
【図5】図4のC−C断面図である。
【図6】パネル体の中央部を拡大して示す正面図である。
【図7】図6のD−D断面図である。
【図8】本発明のフェンスの一実施形態を示す正面図である。
【図9−1】パネル体の組立て手順を示す正面図である。
【図9−2】パネル体の組立て手順(図9−1の続き)を示す正面図である。
【図10】図8と同じフェンスを水平に設置した場合の正面図である。
【図11】図10のフェンスのパネル体同士の連結部を拡大して示す正面図である。
【図12】図11のE−E断面図である。
【図13】(a)はパネル体の他の実施形態を示す正面図であり、(b)は同パネル体を水平に2枚連結した状態の正面図、(c)同パネル体を平行四辺形状に変形して2枚連結した状態の正面図である。
【図14】(a)は図13のF−F断面図、(b)は図13のG−G断面図である。
【図15】縦桟の重合部の他の実施形態を示すパネル体同士の連結部の横断面図である。
【図16】従来の傾斜地対応型のフェンスの構造を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜8は、本発明のフェンスの一実施形態を示している。本フェンスは、図8に示すように、傾斜地に設置したフェンスであり、平行四辺形状の2枚のパネル体1,1を横に連結してあり、各パネル体1は1本ないし2本の支柱2により支持されている。パネル体1は、上下の横桟3,4と、左右の縦桟5,6と、中間縦桟9と、左右の縦桟5,6と中間縦桟9間に上下方向に間隔をおいて取付けた複数のルーバー10,10,…とで構成され、設置する場所の傾斜に応じて横桟3,4及びルーバー10が水平な状態から最大40°傾斜した状態まで変形できるものとなっている。図示の例は、横桟3,4及びルーバー10の傾斜が最も大きい場合を示している。フェンスの左右端部にはカバー材11を取付け、横桟3,4の小口を隠している。各部材は、アルミニウム合金の押出形材で形成してある。
【0009】
上下の横桟3,4は、図3に示すように、横桟付子3a,4aと、横桟付子3a,4aに被せて取付けた横桟本体3b,4bとからなる。横桟付子3a,4aは、略角筒状の断面となっており、横桟本体3b,4bはパネル体外周側に中空部12を有し、パネル体内周側に横桟付子3a,4aを収容する溝部13を有する。横桟本体3b,4bは、図1,4に示すように、横桟付子3a,4aよりも所定の長さだけ長くなっており、横桟付子3a,4aに被せてから長手方向に位置を調整し、両端部を背面側からのネジ14で横桟付子3a,4aに固定してある。左側のパネル体1の横桟本体3b,4bと右側のパネル体1の横桟本体3b,4bとは、図1,2に示すように、パッキン15を挟んで端面同士を突き合わせると共に、左右の横桟本体3b,4bの中空部12内に連結金具16を跨って配置し、これをネジ17で固定して連結されている。左右のパネル体1,1の横桟付子3a,4a間の間隔S(図1参照)は、横桟3,4の傾斜角度によらず一定である。
【0010】
左右の縦桟5,6は、図1,2,4,5に示すように、縦桟付子5a,6aと、縦桟本体5b,6bとからなる。縦桟本体5b,6bは、略H形断面となっており、パネル体内周側に縦桟付子5a,6aとルーバー10の端部を収容する溝部18を有すると共に、パネル体外周側の側方に張り出すフィン7,8を対向して有している。フィン7,8の間隔は、右側の縦桟6よりも左側の縦桟5の方が少し広くなっている。
縦桟付子5a,6aは、ルーバー10の長手方向の端部が背面側からのリベット19で回動自在に連結され、縦桟本体5b,6bの内周側の溝部18内に収納して、上下の端部を横桟付子3a,4aに背面側からリベット20で回動自在に連結してある。このように縦桟付子5a,6aを縦桟本体5b,6bの溝部18内に収納したことで、ルーバー10を取付けているリベット19が外部に露出しない。
縦桟本体5b,6bは、内周側の溝部18内に横桟付子3a,4aの端部を呑み込ませ、背面側からのリベット21で横桟付子3a,4aに回動自在に連結してある。横桟付子3a,4aに横桟本体3b,4bが被せてあることで、縦桟5,6の小口と、縦桟付子5a,6a及び縦桟本体5b,6bを横桟3,4に取付けているリベット20,21が外部に露出しない。
【0011】
パネル体1,1同士の連結部においては、図1,2に示すように、右側のパネル体1の左側の縦桟5のフィン7,7の内側に、左側のパネル体1の右側の縦桟6のフィン8,8が嵌まり込んでおり、このように両縦桟5,6のフィン7,8同士が見込み方向に重なることで、両縦桟5,6間に隙間が開かないようにしている。またこのようにフィン7,8同士が嵌合して重なっていることで、パネル体1,1同士の連結の強度が高められ、風や振動による連結部のばたつきを防止できると共に、両縦桟5,6の見付け面が面一状で連続するため、意匠的にも良好になる。フィン7,8同士の重なり代Lは、左右のパネル体1,1の横桟付子3a,4a間の間隔Sが横桟3,4の傾斜角度によらず一定であるため、横桟3,4の傾斜角度が大きいほど大きくなる。
【0012】
ルーバー10は、図3に示すように、上側のルーバー10の下部に下側のルーバー10の上部がラップするように配置され、これにより視線を遮りつつ通風できるようにしている。
【0013】
フェンスの左右端部には、図4,5に示すように、コ字形断面のカバー材11を側方から嵌め込み、横桟本体3b,4bにネジ22で固定してあり、カバー材11により横桟3,4の小口が外部に露出しないようにしている。横桟3,4を横桟付子3a,4aと横桟本体3b,4bとに分割して構成したことで、先に述べたように縦桟5,6を横桟3,4に連結しているリベット20,21を隠蔽できることに加え、図4に示すように、横桟本体3b,4bが横桟付子3a,4aからはみ出す長さを上下の横桟3,4で違わせることで、カバー材11の見付寸法Wを小さくできる利点がある。
【0014】
中間縦桟9は、図6,7に示すように、パネル体1,1同士の連結部と同様に、フィン7,8同士が嵌合するように背中合わせに配置した2本の縦桟本体5b,6bと、縦桟本体5b,6bの溝部18内にそれぞれ収容した縦桟付子5a,6aとからなり、縦桟本体5b,6bと縦桟付子5a,6aの上下端部が横桟付子3a,4aに背面側からのリベット20,21で回動自在に連結してある。
【0015】
各パネル体1は、図4に示すように、パネル体1を上下から挟み込むように取付けた金具23a,23bを支柱2にネジ24で固定して、支柱2に取付けてある。支柱2は、設置場所を左右に移動できるいわゆるフリー支柱である。
【0016】
次に、パネル体1の組立手順を説明すると、図9−1(a)に示すように、2本の縦桟付子5a,6a間にルーバー10,10,…をリベット19で取付けたものを2セット作成し、図9−1(b)に示すように、各縦桟付子5a,6aを縦桟本体5b,6bの溝部18内に収納する。その後、図9−1(c)に示すように、その上下に横桟付子3a,4aを渡し、縦桟付子5a,6aと縦桟本体5b,6bの上下端部を横桟付子3a,4aにリベット20,21で連結する。次に、図9−2(d)に示すように、設置する場所の傾斜に合わせてパネル体1を平行四辺形状に変形させ、横桟付子3a,4aに横桟本体3b,4bを上下から被せる。その後、横桟本体3b,4bの長手方向の位置を調整した上で、横桟本体3b,4bを横桟付子3a,4aにネジ14で固定する。
【0017】
図10〜12は、これまでに説明したものと同一のパネル体1,1を用い、水平地に設置したフェンスを示している。この場合も、縦桟5,6のフィン7,8は横桟3,4の端面よりも側方に張り出し、パネル体1,1同士の連結部において、右側のパネル体1の左側の縦桟5のフィン7,7の内側に、左側のパネル体1の右側の縦桟6のフィン8,8が嵌まり込み、両縦桟5,6間に隙間が開かない。フィン7,8同士の重なり代Lは、このように横桟3,4が水平なときに最も小さくなる。
【0018】
以上に述べたように本フェンスは、パネル体1の左右の縦桟5,6に、パネル体外周側の側方に張り出すフィン7,8を設け、隣接するパネル体1,1の隣接する縦桟5,6のフィン7,8同士が見込み方向に重なり合い、横桟3,4の角度に応じてフィン7,8同士の重なり代Lが変化するようにしたので、水平に設置する場合、傾斜地に設置する場合のいずれにおいても、隣接するパネル体1,1の縦桟5,6間に隙間が生じない。隣接するパネル体1,1同士を連結するには、横桟3,4の端面を突き合わせるようにして連結金具16で連結するだけでよく、連結作業が簡単に行え、横桟3,3と4,4間にも隙間が生じない。このように本フェンスは、パネル体1,1同士の連結部にカバーを別途設けたり、カバーの位置を調整したりする必要がないので、施工性が良好であると共に、コストを削減できる。さらに、隣接する縦桟5,6のフィン7,8同士が互いに嵌合するようにしたことで、パネル体1,1同士の連結部の強度を高められると共に、意匠性を向上できる。
【0019】
横桟3,4は、横桟付子3a,4aと横桟本体3b,4bとに分離せず、一体成形のものであってもよい。縦桟5,6も、縦桟付子5a,6aと縦桟本体5b,6bとに分離せず、一体成形のものであってもよい。図13(a)は、横桟3,4と縦桟5,6が一体成形の場合のパネル体1の例を示し、図13(b)はこのパネル体1を水平に連結した状態、図13(b)はこのパネル体1を平行四辺形状に変形して連結した状態を示している。縦桟5,6は、上下端部を横桟3,4に呑み込ませてリベット25で回動自在に連結してあり、図14に示すように、パネル体外周側の側方に張り出すフィン7,8を対向して有し、隣接するパネル体1,1の横桟3,4は端面を突き合わせて連結され、隣接するパネル体1,1の隣接する縦桟5,6のフィン7,8同士が、水平設置の場合(図14(a))、傾斜設置の場合(図14(b))の何れの場合も見込み方向に重なり合い、両縦桟5,6間に隙間が開かない。
【0020】
図15は、縦桟5,6の重合部の他の実施形態を示している。図15(a)は、左右の縦桟5,6に外周側に張り出すフィン7,8を同じ間隔で対向して設け、フィン7,8同士が互い違いに重なるように嵌合している。図15(b)は、左右の縦桟5,6に外周側に張り出すフィン7,8を一つずつ設け、そのフィン7,8が見込み方向に重なり合うようにしている。図15(c)は、一方の縦桟6に外周側に張り出すフィン8,8を対向して設け、他方の縦桟5にはそのフィン8,8間に嵌まり込む突部26を設けている。
【0021】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。横桟3,4や縦桟5,6の断面形状は適宜変更することができる。縦桟5,6のフィン7,8は、隣接する左右の縦桟5,6のどちらか一方のみに、横桟3,4の端面よりも側方に張り出して設けてもよい。横桟3,4と縦桟5,6とで構成される枠内に取付けられる部材の形態は任意であり、実施形態のようなルーバー10に限らず、棒状の部材を縦や横に格子状に取付けてもよい。部材同士を回動自在に連結するため、リベットに限らず、ネジやボルト・ナット等を使用してもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 パネル体
2 支柱
3,4 横桟
3a,4a 横桟付子
3b,4b 横桟本体
5,6 縦桟
5a,6a 縦桟付子
5b,6b 縦桟本体
7,8 フィン(重合部)
L フィン(重合部)同士の重なり代

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に隣接して配置される複数のパネル体と、パネル体を支持する支柱を備え、パネル体は、上下の横桟と左右の縦桟を有し、横桟と縦桟とを回動自在に連結してあり、縦桟は、パネル体外周側に重合部を有し、隣接するパネル体の横桟が、端面を突き合わせるようにして連結してあり、隣接するパネル体の隣接する縦桟の重合部が見込み方向に重なり合い、横桟の角度に応じて重合部同士の重なり代が変化することを特徴とするフェンス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−177230(P2012−177230A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39550(P2011−39550)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000175560)三協立山株式会社 (529)
【Fターム(参考)】