フォトクロミック化合物
【課題】可視光で着色し、暗所では速やかに未着色状態に戻るフォトクロミック色素を提供する。
【解決手段】 一般式(I)
〔式中、A1、A2、A3は6π電子系を構成する5員環を表し;B1、B2はそれぞれA2、A3の2位に結合したものであって、環式化合物を含む原子数5以上の官能基を表し;R1、R2、R3は任意の置換基を表す〕で表されるフォトクロミック化合物。
【解決手段】 一般式(I)
〔式中、A1、A2、A3は6π電子系を構成する5員環を表し;B1、B2はそれぞれA2、A3の2位に結合したものであって、環式化合物を含む原子数5以上の官能基を表し;R1、R2、R3は任意の置換基を表す〕で表されるフォトクロミック化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトクロミック化合物に関し、特に、熱消色反応速度が速いフォトクロミック化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトクロミック物質は光の照射によって分子が可逆的に異性化する物質である。
【0003】
従来さかんに研究されてきたフォトクロミック物質の一つにジアリールエテンがある。図15にジアリールエテン分子の構造式を示す。ジアリールエテンは紫外光を照射すると着色し、可視光を照射すると元の色に戻る(退色する)というフォトクロミック特性を備えた物質であるが、更に以下に挙げるような特性を有している。
・量子収率が高い。つまり、着色速度が速く、着色性が高い。
・ポリマー中での反応性が高い。従って、各種材料との融合を容易に実現可能。
・耐久性が高い。着色と退色を1万回繰り返しても着色・退色性が殆ど低下しない。
・熱安定性が高い。着色状態から退色状態への半減期は約2000年。
【0004】
ジアリールエテンの持つ上記のような特性は、光記録材料へ応用できるため、実用化に向けて種々の研究や開発が行われている。一例として、特許文献1には、ジアリールエテン系化合物を用いる多光子吸収反応を利用した光機能素子が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005-325087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、ジアリールエテンは熱安定性が非常に高い、つまり熱消色反応速度が極めて遅いという特性を有している。即ち、自然退色することが事実上無い。
一方、ジアリールエテンのように、高い量子収率や、高い耐久性、高い熱安定性を兼ね備えるフォトクロミック物質において熱消色反応速度を高くすることができれば、例えばサングラスなどへの利用が可能な調光材料としての応用可能性に富む物質となる。
【0007】
熱消色反応速度が高いフォトクロミック物質の研究はこれまでにも行われてきた。可視光があたると着色するサングラスなどには、銀塩等が用いられてきたという経緯があるが、これはガラスにしか使用できない。近年では材料のプラスチック化に伴って有機系のフォトクロミック物質が望まれている。このような物質の一候補としてスピロナフトオキサジン系のフォトクロミック分子があるが、これには着色性が低く、耐久性も不十分であるという問題があった。
【0008】
他方、ジアリールエテンの誘導体に熱退色性を付与する試みがなされてきた。置換基として分岐アルコキシ基を導入することによって、熱退色時間を20秒程度にまで短縮することが可能となっている。しかし、実用性という観点からすると、20秒という熱退色時間は未だ不十分である。例えばこのフォトクロミック化合物をサングラスに応用したとしても、それを車の運転中、特にトンネルが含まれるような道路を走行中に着用することには危険が伴う。しかも、この場合の条件として100℃以上の温度が必要とされており、実用的ではない。通常の条件下で利用できるサングラスやサンバイザーへの適用を考えると、室温で10秒以下の熱退色時間を達成する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るフォトクロミック化合物は、ジアリールエテン骨格の持つフォトクロミック化合物の特性を活かしつつ、熱消色反応速度を増加させることを目的として成されたものであり、一般式(I)
【化3】
〔式中、A1、A2、A3は同一の、又は一部が異なる、若しくは互いに異なる、置換基を有してもよい6π電子系を構成する5員環を表し;
B1、B2はそれぞれA2、A3の2位に結合したものであって、同一又は異なる、環式化合物を含む原子数5以上の官能基を表し;
R1、R2、R3は同一又は異なる任意の置換基を表す〕
で表されることを特徴としている。
【0010】
好適には、上記一般式(I)におけるA1、A2、A3は、チアゾール、チオフェン、ピロール、インドール、オキサゾール、イミダゾール、イミダゾリウムのいずれかとするとよい。また、上記一般式(I)におけるB1、B2の少なくとも一方はフェニルエチニルとするとよい。
【0011】
さらに、本発明に係るフォトクロミック化合物は、上記一般式(I)において、A1がチアゾール、A2、A3がチオフェン、B1、B2がフェニルエチニルであることを特徴とするのが好適である。
【0012】
また、好適には、上記一般式においてA1がチアゾール、A2、A3がチオフェン、R1がフェニル、R2、R3、B1、B2がフェニルエチニルであり、構造式が次式:
【化4】
で示されるフォトクロミック化合物とするとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、量子収率が高く、且つ熱消色反応速度が高いフォトクロミック化合物を得ることができる。また、本発明のフォトクロミック化合物では、可視光で着色されることに加え、プラスチック高分子分散材料への分散性も高いから、例えばドライビング用サングラスやサンバイザーといった高速調光性が求められる光機能材料に容易に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
まず、熱消色反応速度を高めるために本願発明者らが行った分子設計について説明する。熱退色速度を上げるためには、分子設計上、2つの因子を制御する必要がある。熱退色速度をアレニウスの式(k=Aexp(−E/RT)、ここに、A:頻度因子、E:活性化エネルギー、R:気体定数、T:絶対温度)において考えると、一つは活性化エネルギーEを下げることであり、もう一つは、頻度因子Aを上げることである。
【0015】
熱退色反応の活性化エネルギーEを下げるためには、開環体(未着色状態)の安定性を上げ、相対的に閉環体を不安定化させることが必要である。さらに、低い活性化エネルギーEを得るためには、A2及びA3の2位に共役系の分子を導入することも有効である。開環体では共鳴安定化エネルギーにより安定化が促進される一方で、閉環体ではsp3構造のために安定化が図られないからである。
【0016】
頻度因子を増強するためには、閉環体から開環体において開裂するC-C結合の周囲を最適化し、熱エネルギーがそのC-C結合に集中するようにするとよい。
【0017】
以上のような条件を満たす本発明のフォトクロミック化合物は、下記一般式(I)
【化5】
で表される。
上記一般式(I)において、A1、A2、A3は同一の、又は一部が異なる、若しくは互いに異なる6π電子系を構成する5員環とする。A1、A2、A3はフォトクロミック反応性を示すことが知られている構造であればよく、例えば、チアゾール、チオフェン、ピロール、インドール、オキサゾール、イミダゾール、イミダゾリウムなどを使用することができる。また、本発明においてA1、A2、A3はベンゾチオフェンやインドールといった縮合環を有する5員環でも構わないものとする。また、A1、A2、A3は、置換基を有していてもよいし、縮合環に置換基を有していてもよい。
【0018】
また、上記一般式(I)においてB1、B2はそれぞれA2、A3の2位に結合しており、互いに同一又は異なる、環式化合物を含む原子数が5以上の官能基である。また、B1、B2は上述した理由からπ共役系置換基とするのがよい。さらに、B1、B2は、三重結合などの分子骨格を有する剛直な分子骨格が望ましい。これによって頻度因子が上がり、熱退色速度を高めることができる。
B1、B2は本発明のフォトクロミック化合物において限定されるものではないが、特に好適に用いることができるものとしては、例えばメチル、フェニルエチニル、チオフェン、フェニレンビニレン、チエニレンビニレン等がある。なかでも、フェニルエチニル基が好適である。
【0019】
上記一般式(I)で表される本発明のフォトクロミック化合物に対して光を照射すると、下記一般式(II)で表される構造を有する異性体となる。
【化6】
一般式(II)で示される化合物は、先に述べた理由により不安定であるため、光が当たっている間は(II)の着色状態を保持するが、光の照射が止まると自然に非着色状態である一般式(I)の構造に戻る。
【0020】
本発明のフォトクロミック化合物では、着色状態の色み、つまり一般式(II)で示される化合物の光吸収特性は、一般式(I)(又は一般式(II))におけるR1によって調節することができる。従って、本発明のフォトクロミック化合物においてR1の構造は限定されることはなく、目的に応じて選択するのが好ましい。ただし、π共役電子を多く有する置換基を用いることにより高い着色性を得ることができる。R1としてフェニル基、チオフェン基や、ナフチル基をはじめとするアリール基、アルキル基等を用いることができる。オリゴチオフェン、フェニレンビニレン等を用いてもよい。
【0021】
R2、R3は、同一、又は異なっており、それぞれA2、A3の反応点炭素を除く残りのα位炭素に結合している。本発明のフォトクロミック化合物ではこのR2、R3が変化することによっても、着色状態の色味が変化する。従って、R2、R3はR1と同様、限定されることはない。ただし、R2、R3がπ共役電子を多く有していれば、可視光での消色反応量子収率が低下するため、着色性を高めることができる。本発明では、好適なR2、R3として、例えばフェニルエチニルや、チオフェン、フェニレンビニレン、チエニレンビニレンなどを使用することができる。
【実施例】
【0022】
本願発明者らは、図1に示すような(一般式(I)及び一般式(II)で示される化合物においてR1がフェニル、A1がチアゾール、A2、A3がチオフェンである)化合物であるTA-1a、TA-2a、TA-3a、TA-4aを作成し、それらの特性を確認、比較した。置換基B1、B2、R2、R3はそれぞれ以下のようにした。
TA-1a…B1、B2:メチル、R2、R3:フェニル
TA-2a…B1:メチル、B2:フェニルエチニル、R2:フェニル、R3:フェニルエチニル
TA-3a…B1:フェニルエチニル、B2:メチル、R2:フェニルエチニル、R3:フェニル
TA-4a…B1、B2、R2、R3:フェニルエチニル
TA-1aからTA-4aは、A1のジブロモ体とA2、A3のホウ素誘導体をパラジウム触媒下で、鈴木−宮浦カップリング反応により合成した。左右非対称形のTA-2、TA-3においてはチアゾールの5位の反応性が4位に比べて高いことを利用して段階的に反応を行った。
【0023】
TA-1aの合成方法を図2を参照しつつ説明する。
まず、300mlの4つ口フラスコに滴下ロート、三方コックを備えた反応装置をフレームドライしてAr置換した。そこへ脱水THF100mlを入れ、粗精製状態の化合物(1)(ca.32mmol)の溶液にしてメタノール/N2で-78℃に冷却した。そこへn-BuLiのヘキサン溶液(20ml、32mmol)を温度を維持したままゆっくりと滴下した。滴下終了後、温度を維持したま1h攪拌した。さらに温度を維持したまま2-isopropoxy-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolane (6.5ml、32mmol)を滴下した。滴下終了後、室温まで昇温しそのまま一日攪拌した。反応終了後、希塩酸で反応溶液を中和した。これを酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し溶媒を留去した。得られた粗生成物(2)は混合状態のまま次の反応に用いた。
次に、100mlのナスフラスコに化合物(3)(3.21g、10.1mmol)、 粗精製状態の化合物(2)、PPh3 (2.65g、10.1mmol)を入れ、2M K3PO4 100ml、ジオキサン100mlの混合溶媒に溶解した。10分間N2バブリングしてからPd(PPh3)4(570mg、0.493mmol)を加え、110℃で72h加熱攪拌した。反応終了後、反応溶液を酢酸エチルで3回分液し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層は更にMgSO4で乾燥し溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane:AcOEt=15:1)により分離し、さらに順相HPLC、逆相HPLCで完全に精製することにより、白色固体のTA-1aを得た。収量は50mg(0.0859mmol)、収率は0.85%であった。
【0024】
TA-2aの合成方法を図3を参照しつつ説明する。
まず、化合物(4) (20g、60mmol)とフェニルアセチレン(14ml、170ml)をジイソプロピルアミン300mlとトルエン180mlの共溶媒に溶解し、10分間N2バブリングした。そこへPd(PPh3)4(1.5g、1.3mmol)、CuI(230mg、1.2mmol)を加え、50℃で12h加熱攪拌した。反応終了後、反応混合物を酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。また、有機層をMgSO4で乾燥後溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane:AcOEt=10:1)により精製し、黄色の結晶である化合物(5)を得た。
次に、1000mlの4つ口フラスコに滴下ロート、三方コックを備えた反応装置をフレームドライしてAr置換した。そこへ脱水THF400mlを入れ、化合物(5)(7.55g、20.0mmol)の溶液にしてメタノール/N2で-78℃に冷却した。そこへn-BuLiのヘキサン溶液(13.8ml、22mmol、1.1eq.)を温度を維持したままゆっくりと滴下した。滴下終了後温度を維持したまま1h攪拌した。さらに温度を維持したまま2-isopropoxy-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolane(4.5ml、22mmol、1.1eq.)を滴下した。滴下終了後、室温まで昇温しそのまま一日攪拌した。反応終了後、希塩酸で反応溶液を中和した。これを酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し溶媒を留去した。得られた粗生成物をメタノールで再結晶することにより、生成物(6)を得た。
【0025】
他方、300mlの4つ口フラスコに滴下ロート、三方コックを備えた反応装置をフレームドライしてAr置換した。そこへ脱水THF150 mlを入れ化合物(7)(2.68g、10.0ml)の溶液にしてメタノール/N2で-78℃に冷却した。そこへn-BuLiのヘキサン溶液(6.9ml、11.0mmol、1.1eq.)を温度を維持したままゆっくりと滴下した。滴下終了後温度を維持したまま1h攪拌した。さらに温度を維持したまま2-isopropoxy-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolane (2.4ml、11.8mmol)を滴下した。滴下終了後、室温まで昇温しそのまま一日攪拌した。反応終了後、希塩酸で反応溶液を中和した。これを酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、溶媒を留去した。得られた粗生成物をメタノールで再結晶することにより、生成物(8)を得た。
さらに、100mlのナスフラスコに化合物(3)(314mg、0.984mmol)、化合物(8)(314mg、1.00mmol)、PPh3(138mg、0.526mmol)を入れ、2M K3PO4 20ml、ジオキサン20mlの混合溶媒に溶解した。10分間N2バブリングしてからPd(PPh3)4(63mg、0.0545mmol)を加え90℃で三日間加熱攪拌した。反応終了後、反応溶液を酢酸エチルで3回分液し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した。また、有機層をMgSO4で乾燥し溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane:AcOEt=19:1)により分離し、さらにHPLCで完全に精製することにより白色固体(9)を得た。
【0026】
100mlのナスフラスコに化合物(9)(430mg、1.0mmol)、化合物(6)(424mg、1.0mmol)、PPh3(40mg、0.15mmol)を入れ、2M K3PO4 15ml、ジオキサン35mlの混合溶媒に溶解した。10分間N2バブリングしてからPd(PPh3)4(20mg、0.017mmol)を加え90℃で三日間加熱攪拌した。反応終了後、反応溶液を酢酸エチルで3回分液し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane:AcOEt=19:1)により分離し、さらにHPLCで完全に精製した。これにより、白色固体状のTA-2aを得た。収量は469mg、収率は73%であった。
【0027】
TA-3aの合成方法を図4を参照しつつ説明する。
100mlのナスフラスコに化合物(3)(316mg、0.991mmol)、化合物(6)(426mg、1.0mmol)、PPh3(130mg、0.50mmol)を入れ、2M K3PO4 40ml、ジオキサン85mlの混合溶媒に溶解した。10分間N2バブリングしてからPd(PPh3)4 (60mg、0.052mmol)を加え90℃で三日間加熱攪拌した。反応終了後、反応溶液を酢酸エチルで3回分液し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane:AcOEt=19:1)により分離し、さらにHPLCで完全に精製した。これにより、白色固体状の生成物(10)を得た。
次に、100mlのナスフラスコに化合物(10)(110mg、0.2mmol)、化合物(8)(60mg、0.19mmol)、PPh3(23mg、0.088mmol)を入れ、2M K3PO4 15ml、ジオキサン15mlの混合溶媒に溶解した。10分間N2バブリングしてからPd(PPh3)4 (20mg、0.017mmol)を加え90℃で三日間加熱攪拌した。反応終了後、反応溶液を酢酸エチルで3回分液し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した。また、有機層をMgSO4で乾燥し溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane:AcOEt=19:1)により分離し、さらにHPLCで完全に精製した。これにより、白色固体状のTA-3aを得た。収量は10mg、収率は8.2%であった。
【0028】
TA-4aの合成方法を図5を参照しつつ説明する。
100mlのナスフラスコに化合物(3)(56mg、0.18mmol)、化合物(6)(150mg、0.35mmol)、PPh3(25mg、0.095mmol)を入れ、2M K3PO4 15ml、ジオキサン15mlの混合溶媒に溶解した。10分間N2バブリングしてからPd(PPh3)4(20mg、0.017mmol)を加え90℃で三日間加熱攪拌した。反応終了後、反応溶液を酢酸エチルで3回分液し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane:AcOEt=19:1)により分離し、さらにHPLCで完全に精製した。淡黄色固体TA-4aを得た。収量は15mg、収率は11%であった。
【0029】
TA-1a、TA-2a、TA-3a、TA-4aの各分子構造は1H-NMR及び高分解能質量分析計によって同定した。TA-1a、TA-2a、TA-3a、TA-4a溶液に紫外線を照射すると、無色→青緑の着色が起こり、可視光照射よって青緑→無色となった。以下、図1の右側に示すように、閉環体である着色状態の分子をTA-1b、TA-2b、TA-3b、TA-4bと称する。これらの吸収スペクトルを調べたところ、室温において可逆的な変化が確認された。等吸収点が観察され、一対一の異性化が生じることが確認された。
【0030】
図6に、開環体であるTA-1a、TA-2a、TA-3a、TA-4a、及びこれらの閉環体であるTA-1b、TA-2b、TA-3b、TA-4bの光吸収特性について示す。フェニルエチニルを多く導入することで、閉環体のλmaxが長波長側に移動することがわかった。TA-2bの吸収バンドがTA-3bの吸収バンドよりも長波長側にあることはπ共役系の長さによって色調が変化することを示唆している。
【0031】
また、TA-1bは室温状態の暗所では安定であったが、TA-2b、TA-3b、TA-4bは、暗所においても無着色状態であるTA-2a、TA-3a、TA-4aに戻った。このうち、TA-4bは特に不安定であり、室温では直ぐにTA-4aに戻った。(つまりTA-2b〜TA-4bは光退色反応も示すが、熱反応によっても退色する。)
【0032】
TA-4aのNMRスペクトルを-25℃の低温条件下で測定すると、メチルに起因する信号であるNMRピークが1.1(2.45ppm):1.8(2.11ppm):1.9(2.05ppm):1.2(1.88ppm)の比で観察された。これらのピークは、温度を-25℃、-10℃、0℃と変化させると消滅した。
TA-4bのCDCl3溶液のNMRスペクトルでは更に2.59ppmと2.32ppmでもピークが出現した。これはTA-4bの構造に起因するものである。
【0033】
次に、TA-4bがTA-4aに戻る(異性化する)際の吸収スペクトルを1ms毎に計測し、その変化を確認した。図7にそのグラフを示す。また、図10には温度毎に測定したその吸光度の時間変化を示す。図10より、20℃における一次熱開環反応係数kは0.135s-1と算出される。
TA-4bの熱開環反応による半減期は、20℃において7.0sec、30℃において1.8sec、40℃において0.58secであった。
なお、図8、図9にそれぞれTA-2bがTA-2aに、TA-3bがTA-3aにそれぞれ異性化する際の各温度における吸光度の時間変化を表すグラフを示す。このことは、本発明のフォトクロミック化合物において置換基(特にR2、R3、B1、B2)を適切に選択することにより、熱退色速度がコントロール可能であることを示している。
【0034】
図6の表に、20℃における活性化エネルギーE及び頻度因子Aも記す。活性化エネルギーがほぼ一定であるにもかかわらず、頻度因子Aはπ共役系が拡張するに従って大きくなるのでTA-4の熱開環反応の時定数は、TA-1〜TA-3のそれと比較して極めて高い。すなわち、フェニルエチニルを導入することで、熱消色反応速度が高まることが確認された。
TA-4の熱消色反応速度をジアリールエテンのそれと比較してみる。ジアリールエテン分子はEa=149kJmol-1、A=1.5×1013s-1の熱力学パラメータを示すので、これから予測される半減期は30℃において0.153×1013sである。これに対し、TA-4の半減期はジアリールエテンと比較して1011倍も小さい。このことからTA-4の熱退色性能が著しく高いことがわかる。
【0035】
また、本願発明者らがTA-4に太陽光を照射したところ直ぐに着色し、TA-4を暗条件に移行すると素早く透明となることを確認した。
【0036】
(比較例)
図1に示すような化合物においてB1及びB2の両方をメチルとし、R2及びR3をフェニルエチニルとしたものを合成し(これをTa-Aと呼ぶ)、Ta-Aが異性化する際の吸光度の時間変化とその温度依存性を測定した(図11)。図11に示されているように、Ta-Aは30℃の条件では十分な熱退色が生じるのに数時間以上を要した。これは、熱退色時間が短いフォトクロミック化合物を生成するうえで、B1及びB2へのフェニルエチニル基の導入が有効であるという上記の結果を支持している。
【0037】
(ポリマー中における退色反応)
上記TA-4aをPMMA(ポリメチルメタクリレート)中に分散させ、室温(20℃)でその光退色反応を確認した。図12に、PMMA中に分散されたTA-4aがTA-4bに異性化する際の吸収スペクトルを5sec毎に計測したグラフを示す。また、図13にTa-4aが分散されたPMMAの極大吸収の減衰曲線のグラフを示す。これに示されているように、室温における半減期は6.7secであった。図14はTA-4aが分散されたPMMAの写真であり、(a)紫外線照射前、(b)紫外線照射直後、(c)紫外線照射後10sec経過時、(d)紫外線照射後30sec時である。紫外線照射前には透明であったPMMA(図14(a))は、紫外線を照射すると直ちに着色する(図14(b))が、10sec経過後(図14(c))にはかなり消色(異性化)が進行し、30sec経過後には無色となった(図14(d))。
これらの結果より、吸光度が紫外線照射後5sec程度で半減し、10sec経過時には殆ど無色となり、15sec経過時には完全に無色となることが確認された。すなわち、本実施例に係るフォトクロミック化合物は、ポリマー中に分散させた状態においても光着色性能及び高速熱退色性を有することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のフォトクロミック化合物は高い熱消色反応速度を有するだけでなく、プラスチック高分子への分散性にも優れている。本発明のフォトクロミック化合物がプラスチック中に分散されて成る光機能材料は可視光が照射されると着色し、暗条件下では素早く非着色となるから、サングラス、ゴーグル、サンバイザー、化粧品、衣料、傘などに応用することができる。
【0039】
以上、本発明に係るフォトクロミック化合物について例を挙げつつ説明を行ったが、上記は単に例に過ぎないことは明らかであって、本発明の精神内において適宜に改良、変更を行ってももちろん構わない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のフォトクロミック化合物の一例。
【図2】本発明のフォトクロミック化合物の一実施例であるTa-1aの生成方法を示す図。
【図3】本発明のフォトクロミック化合物の一実施例であるTa-2aの生成方法を示す図。
【図4】本発明のフォトクロミック化合物の一実施例であるTa-3aの生成方法を示す図。
【図5】本発明のフォトクロミック化合物の一実施例であるTa-4aの生成方法を示す図。
【図6】本発明のフォトクロミック化合物の開環体と閉環体の光吸収特性の表。
【図7】TA-4bがTA-4aに異性化する際の吸収スペクトルを1ms毎に計測したグラフ。
【図8】TA-2bがTA-2aに異性化する際の吸光度の時間変化とその温度依存性を示すグラフ。
【図9】TA-3bがTA-3aに異性化する際の吸光度の時間変化とその温度依存性を示すグラフ。
【図10】TA-4bがTA-4aに異性化する際の吸光度の時間変化とその温度依存性を示すグラフ。
【図11】比較例であるTa-Aが異性化する際の吸光度の時間変化とその温度依存性を示すグラフ。
【図12】PMMA中に分散されたTA-4aがTA-4bに異性化する際の吸収スペクトルを5sec毎に計測したグラフ。
【図13】Ta-4aが分散されたPMMAの極大吸収の減衰曲線のグラフ。
【図14】TA-4aが分散されたPMMAの(a)紫外線照射前、(b)紫外線照射直後、(c)紫外線照射後10sec経過時、(d)紫外線照射後30sec時の写真。
【図15】ジアリールエテン分子の構造式。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトクロミック化合物に関し、特に、熱消色反応速度が速いフォトクロミック化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトクロミック物質は光の照射によって分子が可逆的に異性化する物質である。
【0003】
従来さかんに研究されてきたフォトクロミック物質の一つにジアリールエテンがある。図15にジアリールエテン分子の構造式を示す。ジアリールエテンは紫外光を照射すると着色し、可視光を照射すると元の色に戻る(退色する)というフォトクロミック特性を備えた物質であるが、更に以下に挙げるような特性を有している。
・量子収率が高い。つまり、着色速度が速く、着色性が高い。
・ポリマー中での反応性が高い。従って、各種材料との融合を容易に実現可能。
・耐久性が高い。着色と退色を1万回繰り返しても着色・退色性が殆ど低下しない。
・熱安定性が高い。着色状態から退色状態への半減期は約2000年。
【0004】
ジアリールエテンの持つ上記のような特性は、光記録材料へ応用できるため、実用化に向けて種々の研究や開発が行われている。一例として、特許文献1には、ジアリールエテン系化合物を用いる多光子吸収反応を利用した光機能素子が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005-325087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、ジアリールエテンは熱安定性が非常に高い、つまり熱消色反応速度が極めて遅いという特性を有している。即ち、自然退色することが事実上無い。
一方、ジアリールエテンのように、高い量子収率や、高い耐久性、高い熱安定性を兼ね備えるフォトクロミック物質において熱消色反応速度を高くすることができれば、例えばサングラスなどへの利用が可能な調光材料としての応用可能性に富む物質となる。
【0007】
熱消色反応速度が高いフォトクロミック物質の研究はこれまでにも行われてきた。可視光があたると着色するサングラスなどには、銀塩等が用いられてきたという経緯があるが、これはガラスにしか使用できない。近年では材料のプラスチック化に伴って有機系のフォトクロミック物質が望まれている。このような物質の一候補としてスピロナフトオキサジン系のフォトクロミック分子があるが、これには着色性が低く、耐久性も不十分であるという問題があった。
【0008】
他方、ジアリールエテンの誘導体に熱退色性を付与する試みがなされてきた。置換基として分岐アルコキシ基を導入することによって、熱退色時間を20秒程度にまで短縮することが可能となっている。しかし、実用性という観点からすると、20秒という熱退色時間は未だ不十分である。例えばこのフォトクロミック化合物をサングラスに応用したとしても、それを車の運転中、特にトンネルが含まれるような道路を走行中に着用することには危険が伴う。しかも、この場合の条件として100℃以上の温度が必要とされており、実用的ではない。通常の条件下で利用できるサングラスやサンバイザーへの適用を考えると、室温で10秒以下の熱退色時間を達成する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るフォトクロミック化合物は、ジアリールエテン骨格の持つフォトクロミック化合物の特性を活かしつつ、熱消色反応速度を増加させることを目的として成されたものであり、一般式(I)
【化3】
〔式中、A1、A2、A3は同一の、又は一部が異なる、若しくは互いに異なる、置換基を有してもよい6π電子系を構成する5員環を表し;
B1、B2はそれぞれA2、A3の2位に結合したものであって、同一又は異なる、環式化合物を含む原子数5以上の官能基を表し;
R1、R2、R3は同一又は異なる任意の置換基を表す〕
で表されることを特徴としている。
【0010】
好適には、上記一般式(I)におけるA1、A2、A3は、チアゾール、チオフェン、ピロール、インドール、オキサゾール、イミダゾール、イミダゾリウムのいずれかとするとよい。また、上記一般式(I)におけるB1、B2の少なくとも一方はフェニルエチニルとするとよい。
【0011】
さらに、本発明に係るフォトクロミック化合物は、上記一般式(I)において、A1がチアゾール、A2、A3がチオフェン、B1、B2がフェニルエチニルであることを特徴とするのが好適である。
【0012】
また、好適には、上記一般式においてA1がチアゾール、A2、A3がチオフェン、R1がフェニル、R2、R3、B1、B2がフェニルエチニルであり、構造式が次式:
【化4】
で示されるフォトクロミック化合物とするとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、量子収率が高く、且つ熱消色反応速度が高いフォトクロミック化合物を得ることができる。また、本発明のフォトクロミック化合物では、可視光で着色されることに加え、プラスチック高分子分散材料への分散性も高いから、例えばドライビング用サングラスやサンバイザーといった高速調光性が求められる光機能材料に容易に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
まず、熱消色反応速度を高めるために本願発明者らが行った分子設計について説明する。熱退色速度を上げるためには、分子設計上、2つの因子を制御する必要がある。熱退色速度をアレニウスの式(k=Aexp(−E/RT)、ここに、A:頻度因子、E:活性化エネルギー、R:気体定数、T:絶対温度)において考えると、一つは活性化エネルギーEを下げることであり、もう一つは、頻度因子Aを上げることである。
【0015】
熱退色反応の活性化エネルギーEを下げるためには、開環体(未着色状態)の安定性を上げ、相対的に閉環体を不安定化させることが必要である。さらに、低い活性化エネルギーEを得るためには、A2及びA3の2位に共役系の分子を導入することも有効である。開環体では共鳴安定化エネルギーにより安定化が促進される一方で、閉環体ではsp3構造のために安定化が図られないからである。
【0016】
頻度因子を増強するためには、閉環体から開環体において開裂するC-C結合の周囲を最適化し、熱エネルギーがそのC-C結合に集中するようにするとよい。
【0017】
以上のような条件を満たす本発明のフォトクロミック化合物は、下記一般式(I)
【化5】
で表される。
上記一般式(I)において、A1、A2、A3は同一の、又は一部が異なる、若しくは互いに異なる6π電子系を構成する5員環とする。A1、A2、A3はフォトクロミック反応性を示すことが知られている構造であればよく、例えば、チアゾール、チオフェン、ピロール、インドール、オキサゾール、イミダゾール、イミダゾリウムなどを使用することができる。また、本発明においてA1、A2、A3はベンゾチオフェンやインドールといった縮合環を有する5員環でも構わないものとする。また、A1、A2、A3は、置換基を有していてもよいし、縮合環に置換基を有していてもよい。
【0018】
また、上記一般式(I)においてB1、B2はそれぞれA2、A3の2位に結合しており、互いに同一又は異なる、環式化合物を含む原子数が5以上の官能基である。また、B1、B2は上述した理由からπ共役系置換基とするのがよい。さらに、B1、B2は、三重結合などの分子骨格を有する剛直な分子骨格が望ましい。これによって頻度因子が上がり、熱退色速度を高めることができる。
B1、B2は本発明のフォトクロミック化合物において限定されるものではないが、特に好適に用いることができるものとしては、例えばメチル、フェニルエチニル、チオフェン、フェニレンビニレン、チエニレンビニレン等がある。なかでも、フェニルエチニル基が好適である。
【0019】
上記一般式(I)で表される本発明のフォトクロミック化合物に対して光を照射すると、下記一般式(II)で表される構造を有する異性体となる。
【化6】
一般式(II)で示される化合物は、先に述べた理由により不安定であるため、光が当たっている間は(II)の着色状態を保持するが、光の照射が止まると自然に非着色状態である一般式(I)の構造に戻る。
【0020】
本発明のフォトクロミック化合物では、着色状態の色み、つまり一般式(II)で示される化合物の光吸収特性は、一般式(I)(又は一般式(II))におけるR1によって調節することができる。従って、本発明のフォトクロミック化合物においてR1の構造は限定されることはなく、目的に応じて選択するのが好ましい。ただし、π共役電子を多く有する置換基を用いることにより高い着色性を得ることができる。R1としてフェニル基、チオフェン基や、ナフチル基をはじめとするアリール基、アルキル基等を用いることができる。オリゴチオフェン、フェニレンビニレン等を用いてもよい。
【0021】
R2、R3は、同一、又は異なっており、それぞれA2、A3の反応点炭素を除く残りのα位炭素に結合している。本発明のフォトクロミック化合物ではこのR2、R3が変化することによっても、着色状態の色味が変化する。従って、R2、R3はR1と同様、限定されることはない。ただし、R2、R3がπ共役電子を多く有していれば、可視光での消色反応量子収率が低下するため、着色性を高めることができる。本発明では、好適なR2、R3として、例えばフェニルエチニルや、チオフェン、フェニレンビニレン、チエニレンビニレンなどを使用することができる。
【実施例】
【0022】
本願発明者らは、図1に示すような(一般式(I)及び一般式(II)で示される化合物においてR1がフェニル、A1がチアゾール、A2、A3がチオフェンである)化合物であるTA-1a、TA-2a、TA-3a、TA-4aを作成し、それらの特性を確認、比較した。置換基B1、B2、R2、R3はそれぞれ以下のようにした。
TA-1a…B1、B2:メチル、R2、R3:フェニル
TA-2a…B1:メチル、B2:フェニルエチニル、R2:フェニル、R3:フェニルエチニル
TA-3a…B1:フェニルエチニル、B2:メチル、R2:フェニルエチニル、R3:フェニル
TA-4a…B1、B2、R2、R3:フェニルエチニル
TA-1aからTA-4aは、A1のジブロモ体とA2、A3のホウ素誘導体をパラジウム触媒下で、鈴木−宮浦カップリング反応により合成した。左右非対称形のTA-2、TA-3においてはチアゾールの5位の反応性が4位に比べて高いことを利用して段階的に反応を行った。
【0023】
TA-1aの合成方法を図2を参照しつつ説明する。
まず、300mlの4つ口フラスコに滴下ロート、三方コックを備えた反応装置をフレームドライしてAr置換した。そこへ脱水THF100mlを入れ、粗精製状態の化合物(1)(ca.32mmol)の溶液にしてメタノール/N2で-78℃に冷却した。そこへn-BuLiのヘキサン溶液(20ml、32mmol)を温度を維持したままゆっくりと滴下した。滴下終了後、温度を維持したま1h攪拌した。さらに温度を維持したまま2-isopropoxy-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolane (6.5ml、32mmol)を滴下した。滴下終了後、室温まで昇温しそのまま一日攪拌した。反応終了後、希塩酸で反応溶液を中和した。これを酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し溶媒を留去した。得られた粗生成物(2)は混合状態のまま次の反応に用いた。
次に、100mlのナスフラスコに化合物(3)(3.21g、10.1mmol)、 粗精製状態の化合物(2)、PPh3 (2.65g、10.1mmol)を入れ、2M K3PO4 100ml、ジオキサン100mlの混合溶媒に溶解した。10分間N2バブリングしてからPd(PPh3)4(570mg、0.493mmol)を加え、110℃で72h加熱攪拌した。反応終了後、反応溶液を酢酸エチルで3回分液し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層は更にMgSO4で乾燥し溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane:AcOEt=15:1)により分離し、さらに順相HPLC、逆相HPLCで完全に精製することにより、白色固体のTA-1aを得た。収量は50mg(0.0859mmol)、収率は0.85%であった。
【0024】
TA-2aの合成方法を図3を参照しつつ説明する。
まず、化合物(4) (20g、60mmol)とフェニルアセチレン(14ml、170ml)をジイソプロピルアミン300mlとトルエン180mlの共溶媒に溶解し、10分間N2バブリングした。そこへPd(PPh3)4(1.5g、1.3mmol)、CuI(230mg、1.2mmol)を加え、50℃で12h加熱攪拌した。反応終了後、反応混合物を酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。また、有機層をMgSO4で乾燥後溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane:AcOEt=10:1)により精製し、黄色の結晶である化合物(5)を得た。
次に、1000mlの4つ口フラスコに滴下ロート、三方コックを備えた反応装置をフレームドライしてAr置換した。そこへ脱水THF400mlを入れ、化合物(5)(7.55g、20.0mmol)の溶液にしてメタノール/N2で-78℃に冷却した。そこへn-BuLiのヘキサン溶液(13.8ml、22mmol、1.1eq.)を温度を維持したままゆっくりと滴下した。滴下終了後温度を維持したまま1h攪拌した。さらに温度を維持したまま2-isopropoxy-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolane(4.5ml、22mmol、1.1eq.)を滴下した。滴下終了後、室温まで昇温しそのまま一日攪拌した。反応終了後、希塩酸で反応溶液を中和した。これを酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し溶媒を留去した。得られた粗生成物をメタノールで再結晶することにより、生成物(6)を得た。
【0025】
他方、300mlの4つ口フラスコに滴下ロート、三方コックを備えた反応装置をフレームドライしてAr置換した。そこへ脱水THF150 mlを入れ化合物(7)(2.68g、10.0ml)の溶液にしてメタノール/N2で-78℃に冷却した。そこへn-BuLiのヘキサン溶液(6.9ml、11.0mmol、1.1eq.)を温度を維持したままゆっくりと滴下した。滴下終了後温度を維持したまま1h攪拌した。さらに温度を維持したまま2-isopropoxy-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolane (2.4ml、11.8mmol)を滴下した。滴下終了後、室温まで昇温しそのまま一日攪拌した。反応終了後、希塩酸で反応溶液を中和した。これを酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、溶媒を留去した。得られた粗生成物をメタノールで再結晶することにより、生成物(8)を得た。
さらに、100mlのナスフラスコに化合物(3)(314mg、0.984mmol)、化合物(8)(314mg、1.00mmol)、PPh3(138mg、0.526mmol)を入れ、2M K3PO4 20ml、ジオキサン20mlの混合溶媒に溶解した。10分間N2バブリングしてからPd(PPh3)4(63mg、0.0545mmol)を加え90℃で三日間加熱攪拌した。反応終了後、反応溶液を酢酸エチルで3回分液し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した。また、有機層をMgSO4で乾燥し溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane:AcOEt=19:1)により分離し、さらにHPLCで完全に精製することにより白色固体(9)を得た。
【0026】
100mlのナスフラスコに化合物(9)(430mg、1.0mmol)、化合物(6)(424mg、1.0mmol)、PPh3(40mg、0.15mmol)を入れ、2M K3PO4 15ml、ジオキサン35mlの混合溶媒に溶解した。10分間N2バブリングしてからPd(PPh3)4(20mg、0.017mmol)を加え90℃で三日間加熱攪拌した。反応終了後、反応溶液を酢酸エチルで3回分液し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane:AcOEt=19:1)により分離し、さらにHPLCで完全に精製した。これにより、白色固体状のTA-2aを得た。収量は469mg、収率は73%であった。
【0027】
TA-3aの合成方法を図4を参照しつつ説明する。
100mlのナスフラスコに化合物(3)(316mg、0.991mmol)、化合物(6)(426mg、1.0mmol)、PPh3(130mg、0.50mmol)を入れ、2M K3PO4 40ml、ジオキサン85mlの混合溶媒に溶解した。10分間N2バブリングしてからPd(PPh3)4 (60mg、0.052mmol)を加え90℃で三日間加熱攪拌した。反応終了後、反応溶液を酢酸エチルで3回分液し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane:AcOEt=19:1)により分離し、さらにHPLCで完全に精製した。これにより、白色固体状の生成物(10)を得た。
次に、100mlのナスフラスコに化合物(10)(110mg、0.2mmol)、化合物(8)(60mg、0.19mmol)、PPh3(23mg、0.088mmol)を入れ、2M K3PO4 15ml、ジオキサン15mlの混合溶媒に溶解した。10分間N2バブリングしてからPd(PPh3)4 (20mg、0.017mmol)を加え90℃で三日間加熱攪拌した。反応終了後、反応溶液を酢酸エチルで3回分液し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した。また、有機層をMgSO4で乾燥し溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane:AcOEt=19:1)により分離し、さらにHPLCで完全に精製した。これにより、白色固体状のTA-3aを得た。収量は10mg、収率は8.2%であった。
【0028】
TA-4aの合成方法を図5を参照しつつ説明する。
100mlのナスフラスコに化合物(3)(56mg、0.18mmol)、化合物(6)(150mg、0.35mmol)、PPh3(25mg、0.095mmol)を入れ、2M K3PO4 15ml、ジオキサン15mlの混合溶媒に溶解した。10分間N2バブリングしてからPd(PPh3)4(20mg、0.017mmol)を加え90℃で三日間加熱攪拌した。反応終了後、反応溶液を酢酸エチルで3回分液し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane:AcOEt=19:1)により分離し、さらにHPLCで完全に精製した。淡黄色固体TA-4aを得た。収量は15mg、収率は11%であった。
【0029】
TA-1a、TA-2a、TA-3a、TA-4aの各分子構造は1H-NMR及び高分解能質量分析計によって同定した。TA-1a、TA-2a、TA-3a、TA-4a溶液に紫外線を照射すると、無色→青緑の着色が起こり、可視光照射よって青緑→無色となった。以下、図1の右側に示すように、閉環体である着色状態の分子をTA-1b、TA-2b、TA-3b、TA-4bと称する。これらの吸収スペクトルを調べたところ、室温において可逆的な変化が確認された。等吸収点が観察され、一対一の異性化が生じることが確認された。
【0030】
図6に、開環体であるTA-1a、TA-2a、TA-3a、TA-4a、及びこれらの閉環体であるTA-1b、TA-2b、TA-3b、TA-4bの光吸収特性について示す。フェニルエチニルを多く導入することで、閉環体のλmaxが長波長側に移動することがわかった。TA-2bの吸収バンドがTA-3bの吸収バンドよりも長波長側にあることはπ共役系の長さによって色調が変化することを示唆している。
【0031】
また、TA-1bは室温状態の暗所では安定であったが、TA-2b、TA-3b、TA-4bは、暗所においても無着色状態であるTA-2a、TA-3a、TA-4aに戻った。このうち、TA-4bは特に不安定であり、室温では直ぐにTA-4aに戻った。(つまりTA-2b〜TA-4bは光退色反応も示すが、熱反応によっても退色する。)
【0032】
TA-4aのNMRスペクトルを-25℃の低温条件下で測定すると、メチルに起因する信号であるNMRピークが1.1(2.45ppm):1.8(2.11ppm):1.9(2.05ppm):1.2(1.88ppm)の比で観察された。これらのピークは、温度を-25℃、-10℃、0℃と変化させると消滅した。
TA-4bのCDCl3溶液のNMRスペクトルでは更に2.59ppmと2.32ppmでもピークが出現した。これはTA-4bの構造に起因するものである。
【0033】
次に、TA-4bがTA-4aに戻る(異性化する)際の吸収スペクトルを1ms毎に計測し、その変化を確認した。図7にそのグラフを示す。また、図10には温度毎に測定したその吸光度の時間変化を示す。図10より、20℃における一次熱開環反応係数kは0.135s-1と算出される。
TA-4bの熱開環反応による半減期は、20℃において7.0sec、30℃において1.8sec、40℃において0.58secであった。
なお、図8、図9にそれぞれTA-2bがTA-2aに、TA-3bがTA-3aにそれぞれ異性化する際の各温度における吸光度の時間変化を表すグラフを示す。このことは、本発明のフォトクロミック化合物において置換基(特にR2、R3、B1、B2)を適切に選択することにより、熱退色速度がコントロール可能であることを示している。
【0034】
図6の表に、20℃における活性化エネルギーE及び頻度因子Aも記す。活性化エネルギーがほぼ一定であるにもかかわらず、頻度因子Aはπ共役系が拡張するに従って大きくなるのでTA-4の熱開環反応の時定数は、TA-1〜TA-3のそれと比較して極めて高い。すなわち、フェニルエチニルを導入することで、熱消色反応速度が高まることが確認された。
TA-4の熱消色反応速度をジアリールエテンのそれと比較してみる。ジアリールエテン分子はEa=149kJmol-1、A=1.5×1013s-1の熱力学パラメータを示すので、これから予測される半減期は30℃において0.153×1013sである。これに対し、TA-4の半減期はジアリールエテンと比較して1011倍も小さい。このことからTA-4の熱退色性能が著しく高いことがわかる。
【0035】
また、本願発明者らがTA-4に太陽光を照射したところ直ぐに着色し、TA-4を暗条件に移行すると素早く透明となることを確認した。
【0036】
(比較例)
図1に示すような化合物においてB1及びB2の両方をメチルとし、R2及びR3をフェニルエチニルとしたものを合成し(これをTa-Aと呼ぶ)、Ta-Aが異性化する際の吸光度の時間変化とその温度依存性を測定した(図11)。図11に示されているように、Ta-Aは30℃の条件では十分な熱退色が生じるのに数時間以上を要した。これは、熱退色時間が短いフォトクロミック化合物を生成するうえで、B1及びB2へのフェニルエチニル基の導入が有効であるという上記の結果を支持している。
【0037】
(ポリマー中における退色反応)
上記TA-4aをPMMA(ポリメチルメタクリレート)中に分散させ、室温(20℃)でその光退色反応を確認した。図12に、PMMA中に分散されたTA-4aがTA-4bに異性化する際の吸収スペクトルを5sec毎に計測したグラフを示す。また、図13にTa-4aが分散されたPMMAの極大吸収の減衰曲線のグラフを示す。これに示されているように、室温における半減期は6.7secであった。図14はTA-4aが分散されたPMMAの写真であり、(a)紫外線照射前、(b)紫外線照射直後、(c)紫外線照射後10sec経過時、(d)紫外線照射後30sec時である。紫外線照射前には透明であったPMMA(図14(a))は、紫外線を照射すると直ちに着色する(図14(b))が、10sec経過後(図14(c))にはかなり消色(異性化)が進行し、30sec経過後には無色となった(図14(d))。
これらの結果より、吸光度が紫外線照射後5sec程度で半減し、10sec経過時には殆ど無色となり、15sec経過時には完全に無色となることが確認された。すなわち、本実施例に係るフォトクロミック化合物は、ポリマー中に分散させた状態においても光着色性能及び高速熱退色性を有することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のフォトクロミック化合物は高い熱消色反応速度を有するだけでなく、プラスチック高分子への分散性にも優れている。本発明のフォトクロミック化合物がプラスチック中に分散されて成る光機能材料は可視光が照射されると着色し、暗条件下では素早く非着色となるから、サングラス、ゴーグル、サンバイザー、化粧品、衣料、傘などに応用することができる。
【0039】
以上、本発明に係るフォトクロミック化合物について例を挙げつつ説明を行ったが、上記は単に例に過ぎないことは明らかであって、本発明の精神内において適宜に改良、変更を行ってももちろん構わない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のフォトクロミック化合物の一例。
【図2】本発明のフォトクロミック化合物の一実施例であるTa-1aの生成方法を示す図。
【図3】本発明のフォトクロミック化合物の一実施例であるTa-2aの生成方法を示す図。
【図4】本発明のフォトクロミック化合物の一実施例であるTa-3aの生成方法を示す図。
【図5】本発明のフォトクロミック化合物の一実施例であるTa-4aの生成方法を示す図。
【図6】本発明のフォトクロミック化合物の開環体と閉環体の光吸収特性の表。
【図7】TA-4bがTA-4aに異性化する際の吸収スペクトルを1ms毎に計測したグラフ。
【図8】TA-2bがTA-2aに異性化する際の吸光度の時間変化とその温度依存性を示すグラフ。
【図9】TA-3bがTA-3aに異性化する際の吸光度の時間変化とその温度依存性を示すグラフ。
【図10】TA-4bがTA-4aに異性化する際の吸光度の時間変化とその温度依存性を示すグラフ。
【図11】比較例であるTa-Aが異性化する際の吸光度の時間変化とその温度依存性を示すグラフ。
【図12】PMMA中に分散されたTA-4aがTA-4bに異性化する際の吸収スペクトルを5sec毎に計測したグラフ。
【図13】Ta-4aが分散されたPMMAの極大吸収の減衰曲線のグラフ。
【図14】TA-4aが分散されたPMMAの(a)紫外線照射前、(b)紫外線照射直後、(c)紫外線照射後10sec経過時、(d)紫外線照射後30sec時の写真。
【図15】ジアリールエテン分子の構造式。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
〔式中、A1、A2、A3は同一の、又は一部が異なる、若しくは互いに異なる、置換基を有してもよい6π電子系を構成する5員環を表し;
B1、B2はそれぞれA2、A3の2位に結合したものであって、同一又は異なる、環式化合物を含む原子数5以上の官能基を表し;
R1、R2、R3は同一又は異なる任意の置換基を表す〕
で表されるフォトクロミック化合物。
【請求項2】
前記一般式(I)におけるA1、A2、A3が、チアゾール、チオフェン、ピロール、インドール、オキサゾール、イミダゾール、イミダゾリウムのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のフォトクロミック化合物。
【請求項3】
前記一般式(I)におけるB1、B2が、メチル、フェニルエチニル、チオフェン、フェニレンビニレン、チエニレンビニレンのいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載のフォトクロミック化合物。
【請求項4】
前記一般式(I)におけるR2、R3が、フェニルエチニル、チオフェン、フェニレンビニレン、チエニレンビニレンのいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフォトクロミック化合物。
【請求項5】
前記一般式(I)におけるA1がチアゾール、A2、A3がチオフェン、B1、B2がフェニルエチニルであることを特徴とする請求項1に記載のフォトクロミック化合物。
【請求項6】
構造式が次式:
【化2】
で示されるフォトクロミック化合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のフォトクロミック化合物がプラスチック中に分散されて成る光機能材料。
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
〔式中、A1、A2、A3は同一の、又は一部が異なる、若しくは互いに異なる、置換基を有してもよい6π電子系を構成する5員環を表し;
B1、B2はそれぞれA2、A3の2位に結合したものであって、同一又は異なる、環式化合物を含む原子数5以上の官能基を表し;
R1、R2、R3は同一又は異なる任意の置換基を表す〕
で表されるフォトクロミック化合物。
【請求項2】
前記一般式(I)におけるA1、A2、A3が、チアゾール、チオフェン、ピロール、インドール、オキサゾール、イミダゾール、イミダゾリウムのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のフォトクロミック化合物。
【請求項3】
前記一般式(I)におけるB1、B2が、メチル、フェニルエチニル、チオフェン、フェニレンビニレン、チエニレンビニレンのいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載のフォトクロミック化合物。
【請求項4】
前記一般式(I)におけるR2、R3が、フェニルエチニル、チオフェン、フェニレンビニレン、チエニレンビニレンのいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフォトクロミック化合物。
【請求項5】
前記一般式(I)におけるA1がチアゾール、A2、A3がチオフェン、B1、B2がフェニルエチニルであることを特徴とする請求項1に記載のフォトクロミック化合物。
【請求項6】
構造式が次式:
【化2】
で示されるフォトクロミック化合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のフォトクロミック化合物がプラスチック中に分散されて成る光機能材料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図14】
【公開番号】特開2008−38132(P2008−38132A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76722(P2007−76722)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 日本化学会第86春季年会、日本化学会主催、平成18年3月28日 河合重和・中嶋琢也・河合壯発表
【出願人】(504143441)国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 (226)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 日本化学会第86春季年会、日本化学会主催、平成18年3月28日 河合重和・中嶋琢也・河合壯発表
【出願人】(504143441)国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 (226)
【Fターム(参考)】
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