説明

フォトクロミック染料内包微粒子

【課題】
実質的に均一な粒子径と均一な発色性を有し、微粒子中からのフォトクロミック染料の溶出が極めて低く、塗料やインキ等として好適に用いることの出来る単分散フォトクロミック染料内包既架橋微粒子を提供する。
【解決手段】
非架橋性エチレン性不飽和単量体(A)と架橋性エチレン性不飽和単量体(B)とを、前記単量体に溶解する染料存在下、溶剤中で、特定の構造を有する重合開始剤を用いて重合させてなる単分散フォトクロミック染料内包既架橋微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の染料内包微粒子は、フォトクロミックや染料分散などの分野に関する。当該微粒子は単分散染料内包既架橋微粒子であり、実質的に均一な粒子径と均一な発色性を有し、微粒子中からの染料の溶出が極めて低く耐久性に優れたものである。
【背景技術】
【0002】
フォトクロミックは紫外線により可逆的変色をする現象であり、紫外線に曝された場合に色を変え、紫外線を遮断した時に最初の色に戻る現象である。特に有機系フォトクロミック化合物は色のバラエティーに富み多くの種類が報告され、ポリマー中にフォトクロミック化合物を分散したレンズフィルムコーティング剤、印刷インキ等が使用されている。
特開昭64−29489号公報に示すように、従来からポリマー中に分散したフォトクロミック化合物のフォトクロミック反応を効率的に行わせる検討が行われている。その方法としてフォトクロミック化合物を含んだ樹脂の微粒子化が試されている。
微粒子化する方法としては、物理的プロセスと化学的プロセスがある。物理的プロセスとしては、合成樹脂を溶融させた状態でフォトクロミック化合物を混練し、その後機械的粉砕する方法などがある。一方、化学的プロセスとしては、懸濁重合法により得られる微細な球状樹脂粒子に溶剤を用いてフォトクロミック染料を含浸させる方法、フォトクロミック化合物を溶解したモノマーを水性媒体中で乳化あるいは懸濁重合する方法などがある。
また、特開2000-86712号公報に示すように、重合性基を有さない疎水性有機化合物と界面活性剤とを用いて重合することで、耐久性と透明性に優れた微粒子を得る方法も開示されている。その他に、特定のフォトクロミック化合物などを用いて5〜3000μ程度の粒子径に調整した樹脂微粒子(特開平10−168439号公報)もある。
しかしながら、いずれの方法や材料も均一な低粒子径の材料を提供できず、粒子内部にフォトクロミック化合物が均一に含浸されず、発色が不均一となり、粗大粒子が存在する問題が生じていた。また、樹脂微粒子中からフォトクロミック化合物が溶出するために、良好な耐候性を得ることもできなかった。
【特許文献1】特開昭64−29489号公報
【特許文献2】特開2000-86712号公報
【特許文献3】特開平10−168439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、実質的に均一な粒子径と均一な発色性を有し、微粒子中からのフォトクロミック染料の溶出が極めて低く、塗料やインキ等として好適に用いることの出来る単分散染料内包既架橋微粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明は、非架橋性エチレン性不飽和単量体(A)と架橋性エチレン性不飽和単量体(B)とを、前記単量体に溶解する染料存在下、溶剤中で、下記式(1)または下記式(2)で表される重合開始剤を用いて重合させてなる単分散フォトクロミック染料内包既架橋微粒子に関する。
【化1】

[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基または芳香族基を示す。]

【化2】

[式中、R3及びR4は、それぞれ独立にアルキレン基または2価の芳香族基を示す。]

請求項2の発明は、架橋性エチレン単量体(B)が、重合性不飽和カルボン酸残基と前記重合性不飽和カルボン酸残基以外の反応性官能基とを有する多官能性モノマーであることを特徴とする単分散フォトクロミック染料内包既架橋微粒子に関する。
請求項3の発明は、非架橋性エチレン性不飽和単量体(A)がスチレン系単量体であり、架橋性エチレン単量体(B)がジビニル類であることを特徴とする単分散フォトクロミック染料内包既架橋微粒子に関する。
請求項4の発明は、溶剤が、水とアルコールとの混合溶剤であることを特徴とする単分散フォトクロミック染料内包既架橋微粒子に関する。
請求項5の発明は、単分散フォトクロミック染料内包既架橋微粒子が、実質的に均一な粒子径を有し、かつ、既架橋微粒子の平均粒子径が0.1〜5.0μmであることを特徴とする単分散フォトクロミック染料内包既架橋微粒子に関する。
請求項6の発明は、非架橋性エチレン性不飽和単量体(A)と架橋性エチレン性不飽和単量体(B)とを、前記単量体に溶解する染料存在下、溶剤中で、上記式(1)もしくは上記式(2)で表される重合開始剤を用いて重合させる単分散フォトクロミック染料内包既架橋微粒子の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の単分散染料内包既架橋微粒子は、実質的に均一な粒子径と均一な発色性を有する。また、微粒子中からのフォトクロミック染料の溶出が極めて低いため、高い耐候性を有する。このため、多種にわたる塗料やインキ等として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の染料内包既架橋微粒子とは、重合終了時に粒子内部に染料が取り込まれており、かつ、粒子内部が架橋された微粒子のことを言い、耐水性、耐溶剤性が高く、微粒子からの染料の溶出を抑えることができる。
【0007】
本発明の架橋性エチレン性不飽和単量体(B)は、架橋性を与えるための官能基を有している二官能性あるいは三官能性以上の多官能性モノマーであり、架橋剤として機能する。架橋性エチレン性不飽和単量体(B)の有する官能基のうち少なくとも1つは、非架橋性エチレン性不飽和単量体(A)と共重合を起こすために必要であり、残りの官能基は、架橋性を与えるための官能基として機能する。
架橋性エチレン性不飽和単量体(B)が有する架橋性を与えるための官能基としては、ビニル基、アルコキシシリル基等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0008】
これらの官能基による架橋としては、ビニル基同士のラジカル重合による架橋、アルコキシシリル基の加水分解と縮合反応による架橋等が挙げられる。中でも、樹脂微粒子合成時に起こるビニル基同士のラジカル重合による架橋が好ましい。さらに好ましくは、重合時の樹脂粒子の凝集及び多分散化が起こりにくく、得られる樹脂粒子の耐熱性も良いと言う点から、反応性が異なる官能基を有する単量体を用いることが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸残基、クロトン酸残基、マレイン酸残基、イタコン酸残基等の重合性不飽和カルボン酸残基と、前記重合性不飽和カルボン酸残基以外の反応性官能基とを有する単量体が好ましく、特に、(メタ)アクリル酸残基およびビニル基を有するエチレン性不飽和単量体が好ましい。
前記重合性不飽和カルボン酸残基以外の反応性官能基としては、ビニル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。
【0009】
ビニル基としては、例えば、エテニル基、1-プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、2-ペンテニル基等の炭素数1〜11の不飽和基含有アルキル基;スチリル基、シンナミル基等の不飽和基含有芳香族基等が挙げられる。
アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のアルコキシシリル基等が挙げられる。
【0010】
架橋性エチレン性不飽和単量体(B)のうち、(メタ)アクリル酸残基およびビニル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸1-メチルアリル、(メタ)アクリル酸2-メチルアリル、(メタ)アクリル酸1-ブテニル、(メタ)アクリル酸2-ブテニル、(メタ)アクリル酸3-ブテニル、(メタ)アクリル酸1,3-メチル-3-ブテニル、(メタ)アクリル酸2-クロルアリル、(メタ)アクリル酸3-クロルアリル、(メタ)アクリル酸o-アリルフェニル、(メタ)アクリル酸2-(アリルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸アリルラクチル、(メタ)アクリル酸シトロネリル、(メタ)アクリル酸ゲラニル、(メタ)アクリル酸ロジニル、(メタ)アクリル酸シンナミル、メタ)アクリル酸ビニル等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
他の架橋性単量体としては、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル等のアルコキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、ジアクリル酸1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタン、トリアクリル酸1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタン、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリル酸等の多官能(メタ)アクリル酸エステル類;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン,3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン等のアルコキシシリル基含有単量体類;ジビニルベンゼン、アジピン酸ジビニル等のジビニル類;イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、イタコン酸ジアリル等のジアリル類等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
架橋性エチレン性不飽和単量体(B)は、2種以上を組み合わせて用いることができる。また、架橋性エチレン性不飽和単量体(B)の共重合比は、単量体の全量を基準として5〜20重量%であることが好ましい。
【0011】
非架橋性エチレン性不飽和単量体(A)は、上記架橋性を与えるための官能基を有さない単量体であり、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリセロール、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール、4-ヒドロキシビニルベンゼン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、アリルアルコール等のヒドロキシ含有不飽和化合物;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、または、これらのアルキルもしくはアルケニルモノエステル、フタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、イソフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、テレフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、コハク酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、けい皮酸等のカルボキシル基含有不飽和化合物;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルエチルアミノエチル、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン等のジアルキルアミノ基含有不飽和化合物;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、トリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、トリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド及びトリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド等の前記ジアルキルアミノ基含有不飽和化合物を四級アンモニウム化させてなり、対イオンとしてCl-、Br-、I-等のハロゲンイオンまたはQSO-(Q:炭素数1〜12アルキル基)を有する四級アンモニウム塩基含有不飽和化合物;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸2−スルホエチル、(メタ)アクリル酸2−スルホブチル、スチレンスルホン酸、スルホフェニルアリルエーテル、スルホフェニルメタリルエーテル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有不飽和化合物;(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、 (メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸フェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ノニルフェノールポリエチレンオキシド付加物等のオキシエチレン基含有不飽和化合物;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1−ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系単量体等が挙げられるが特にこれらに限定されるものではない。
非架橋性エチレン性不飽和単量体(A)は、2種以上を併用して用いることも出来る。また、表面電荷の調整、貯蔵安定性等の物性を出すため、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基含有エステル類を非架橋性エチレン性不飽和単量体(A)全体の0〜15重量%併用しても良い。
【0012】
本発明のフォトクロミック染料としては、求めるフォトクロミック特性により、スピロオキサジン、スピロピランおよびクロメンからなる群より選択される化合物を用いることができる。多数のフォトクロミック化合物が文献に記載されており、市販もされている。文献としては、特開平7−48363号公報、特開平7−53729号公報、特開平10−168439号公報、特表平11−508943号公報、米国特許第567606号、「Photochromism, G.Brown, Editor, Techniques of Chemistry, Wiley Int erscience, Vol.III, 1971, chapter III, p45-p294, R.C.Bertelson.」などがある。
本発明のフォトクロミック染料は、前記非架橋性エチレン性不飽和単量体(A)及び架橋性エチレン性不飽和単量体(B)に溶解するものであれば良い。また、水に対して不溶解性の化合物であることが好ましい。
【0013】
非架橋性エチレン性不飽和単量体(A)と架橋性エチレン性不飽和単量体(B)とを共重合する際に用いられる溶剤は、前記単量体およびフォトクロミック染料が均質に溶解し、かつ前記単量体を重合して得られるポリマーである既架橋微粒子が不溶になるものより選ばれる。このような溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、メチルセロソルブ、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、等のケトン類;前記溶剤と水との混合溶剤等が挙げられ、これらの溶剤は2種以上を混合して用いることができる。なかでも、メタノール、エタノール、またはこれらと水の混合溶剤が望ましく、混合溶剤中の水の量は0〜70重量%であることが好ましい。
前記単量体の共重合は、単量体の量が溶剤量を基準として、10〜30重量%となる単量体濃度で行うことが好ましい。
【0014】
重合開始剤としては、上記式(1)で表される重合開始剤もしくは上記式(2)で表される重合開始剤が用いられる。これらの重合開始剤は、カチオン性の水溶性アゾ重合開始剤であり、これらの重合開始剤を用いることにより、得られる染料内包既架橋微粒子の分子末端をカチオン性にすることができる。
上記式(1)もしくは上記式(2)で表される重合開始剤は、前記単量体の全量に対して0.01〜0.30重量%の比率で用いることが好ましい。
【0015】
【化3】

式(1)中のR1及びR4は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基または芳香族基を示す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、芳香族基としては、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。アルキル基及び芳香族基は、水酸化またはハロゲン化されていても良い。水酸化アルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。また、水酸化芳香族基としては、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシベンジル基等が挙げられ、ハロゲン化芳香族基としては、クロロフェニル基、クロロベンジル基等が挙げられる。
【0016】
式(1)で表される重合開始剤の例としては、2,2’-アゾビス[2-(フェニルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロリド(VA-545、和光純薬製)、2,2’-アゾビス{2-[N-(4-クロロフェニル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロリド(VA-546、和光純薬製)、2,2’-アゾビス{2-[N-(4-ドロキシフェニル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロリド(VA-548、和光純薬製)、2,2’-アゾビス[2-(N-ベンジルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロリド(VA-552、和光純薬製)、2,2’-アゾビス[2-(N-アリルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロリド(VA-553、和光純薬製)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(V-50、和光純薬製)、2,2’-アゾビス{2-[N-(4-ヒドロキシエチル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロリド(VA-558、和光純薬製)等が挙げられる。
【0017】
【化4】

また、式(2)中のR3及びR4は、それぞれ独立にアルキレン基または2価の芳香族基を示す。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられ、2価の芳香族基としては、フェニレン基、ビフェニレン基等が挙げられる。アルキレン基は、水酸化されていても良い。水酸化アルキレン基としては、ヒドロキシメチレン基、ヒドロキシエチレン基等が挙げられる。
【0018】
式(2)で表される重合開始剤の例としては、2,2-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA-041、和光純薬製)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA-044、和光純薬製)、2,2-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA-054、和光純薬製)、2,2-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA-058、和光純薬製)、2,2-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA-059、和光純薬製)、2,2-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}ジヒドロクロリド(VA-060、和光純薬製)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン] (VA-061、和光純薬製)等が挙げられる。
【0019】
非架橋性エチレン性不飽和単量体(A)と架橋性エチレン性不飽和単量体(B)を共重合させる際には、得られる染料内包既架橋微粒子の粒子径を制御するために、上記式(1)もしくは上記式(2)で表されるカチオン性の水溶性アゾ重合開始剤と共に、ノニオン性重合開始剤を併用することが好ましい。ノニオン性重合開始剤を併用することにより、染料内包既架橋微粒子の平均粒子径を調節することができる。
ノニオン性重合開始剤は、重合溶剤に溶解し、熱によりラジカルを発生するもので、得られる重合体の分子末端がイオン性にならない化合物である。ノニオン性重合開始剤としては、アゾニトリル化合物、アルキルアゾ化合物、アゾアミド化合物等のノニオン性アゾ重合開始剤や、ケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ヒドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシエステル類等の有機過酸化物を用いることができる。
【0020】
アゾニトリル化合物としては、例えば、2,2-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-70、和光純薬製)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-65、和光純薬製)2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(V-60、和光純薬製)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(V-59、和光純薬製)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)(V-40、和光純薬製)、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド(V-30、和光純薬製)、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチル-バレロニトリル(V-19、和光純薬製)等が挙げられる。
アルキルアゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)(VR-110、和光純薬製)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)(VR-160、和光純薬製)等が挙げられる。
【0021】
アゾアミド化合物としては、例えば、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}(VA-080、和光純薬製)、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}(VA-082、和光純薬製)、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]-プロピオンアミド}(VA-085、和光純薬製)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド](VA-086、和光純薬製)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)ジハイドレート(VA-088、和光純薬製)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド](VF-096、和光純薬製)、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)(VAm-110、和光純薬製)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)(Vam-111、和光純薬製)等が挙げられる。
【0022】
ケトンパーオキサイド類としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド(パーメックH、日本油脂製)、シクロヘキサノンパーオキシド(パーヘキサH、日本油脂製)、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド(パーヘキサQ、日本油脂製)、メチルアセトアセテートパーオキサイド(パーキュアーSA、日本油脂製)、アセチルアセトンパーオキサイド(パーキュアーA、日本油脂製)等が挙げられる。
パーオキシケタール類としては、例えば、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(パーヘキサTMH、日本油脂製)、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(パーヘキサHC、日本油脂製)、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(パーヘキサ3M、日本油脂製)、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(パーヘキサC、日本油脂製)、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン(パーヘキサCD、日本油脂製)、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン(パーヘキサ22、日本油脂製)、n-ブチル4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート(パーヘキサV、日本油脂製)、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(パーテトラA、日本油脂製)等が挙げられる。
【0023】
ヒドロパーオキサイド類としては、例えば、t-ブチルヒドロパーオキサイド(パーブチルH-69、日本油脂製)、p-メンタンヒドロパーオキサイド(パーメンタH、日本油脂製)、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド(パークミルP、日本油脂製)、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド(パーオクタH、日本油脂製)、クメンヒドロパーオキサイド(パークミルH-80、日本油脂製)、t-ヘキシルヒドロパーオキサイド(パーヘキシルH、日本油脂製)等が挙げられる。
ジアルキルパーオキサイド類としては、例えば、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3(パーヘキシン25B、日本油脂製)、ジ-t-ブチルパーオキサイド(パーブチルD、日本油脂製)、t-ブチルクミルパーオキシド(パーブチルC、日本油脂製)、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25B、日本油脂製)、ジクミルパーオキシド(パークミルD、日本油脂製)、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂製)等が挙げられる。
【0024】
ジアシルパーオキサイド類としては、例えば、オクタノイルパーオキシド(パーロイルO、日本油脂製)、ラウロイルパーオキシド(パーロイルL、日本油脂製)、ステアロイルパーオキシド(パーロイルS、日本油脂製)、スクシニックアシッドパーオキシド(パーロイルSA、日本油脂製)、ベンゾイルパーオキサイド(ナイパーBW、日本油脂製)、イソブチリルパーオキサイド(パーロイルIB、日本油脂製)、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキシド(ナイパーCS、日本油脂製)、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキシド(パーロイル355、日本油脂製)等が挙げられる。
パーオキシジカーボネート類としては、例えば、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート(パーロイルNPP-50M、日本油脂製)、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(パーロイルIPP-50、日本油脂製)、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(パーロイルTCP、日本油脂製)、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート(パーロイルEEP、日本油脂製)、ジ-2-エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート(パーロイルOPP、日本油脂製)、ジ-2-メトキシブチルパーオキシジカーボネート(パーロイルMBP、日本油脂製)、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート(パーロイルSOP、日本油脂製)等が挙げられる。
【0025】
パーオキシエステル類としては、例えば、α,α’-ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(ダイパーND、日本油脂製)、クミルパーオキシネオデカノエート(パークミルND、日本油脂製)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(パーオクタND、日本油脂製)、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート(パーシクロND、日本油脂製)、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート(パーヘキシルND、日本油脂製)、t-ブチルパーオキシネオデカノエート(パーブチルND、日本油脂製)、t-ヘキシルパーオキシピバレート(パーヘキシルPV、日本油脂製)、t-ブチルパーオキシピバレート(パーブチルPV、日本油脂製)、1,1,3,3,-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(パーオクタO、日本油脂製)2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ250、日本油脂製)、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(パーシクロO、日本油脂製)、t-ヘキシルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(パーヘキシルO、日本油脂製)、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(パーブチルO、日本油脂製)、t-ブチルパーオキシイソブチレート(パーブチルIB、日本油脂製)、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(パーヘキシルI、日本油脂製)、t-ブチルパーオキシマレイックアシッド(パーブチルMA、日本油脂製)、t-ブチルパーオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノエート(パーブチル355、日本油脂製)、t-ブチルパーオキシラウレート(パーブチルL、日本油脂製)、2,5-ジメチル2,5-ビス(m-トルオイルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25MT、日本油脂製)、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(パーブチルI、日本油脂製)、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート(パーブチルE、日本油脂製)、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート(パーヘキシルZ、日本油脂製)、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25Z、日本油脂製)、t-ブチルパーオキシアセテート(パーブチルA、日本油脂製)、t-ブチルパーオキシ-m-トルオイルベンゾエート(パーブチルZT、日本油脂製)、t-ブチルパーオキシベンゾエート(パーブチルZ、日本油脂製)、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート(パーブチルIF、日本油脂製)等が挙げられる。
【0026】
上記以外の有機過酸化物としては、例えば、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート(ペロマーAC、日本油脂製)、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド(パーブチルSM、日本油脂製)、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(BTTB-50、日本油脂製)、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン(ノフマーBC、日本油脂製)等の等が挙げられる。
中でも、10時間半減期温度の低いノニオン性ラジカル重合開始剤を使用することにより、少量で効果的に粒子径を大きくすることができる。
ノニオン性重合開始剤は、前記単量体の全量に対して0〜10.0重量%の比率で用いることができ、前記カチオン性の水溶性アゾ重合開始剤と同時に添加することが好ましい。
【0027】
染料内包既架橋微粒子は、例えば、前記溶剤中に前記非架橋性エチレン性不飽和単量体(A)と架橋性エチレン性不飽和単量体(B)、および前記単量体に溶解する染料を均一に溶解し、溶存酸素を除去、60℃に加熱後、前記カチオン性水溶性アゾ重合開始剤をイオン交換水に溶解したものを、必要に応じて前記ノニオン性重合開始剤と同時に添加し、3〜10時間加熱攪拌する方法で合成される。
【0028】
重合後の転化率が充分でない時は、重合終了後に、単量体全量に対し0.1〜2重量%の重合開始剤を添加する。重合終了後に添加する開始剤としては、通常の油溶性ラジカル重合開始剤であれば問題なく使用できる。例えば、2,2-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-70、和光純薬製)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-65、和光純薬製)2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(V-60、和光純薬製)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(V-59、和光純薬製)等のアゾニトリル化合物、オクタノイルパーオキシド(パーロイルO、日本油脂製)、ラウロイルパーオキシド(パーロイルL、日本油脂製)、ステアロイルパーオキシド(パーロイルS、日本油脂製)、スクシニックアシッドパーオキシド(パーロイルSA、日本油脂製)、ベンゾイルパーオキサイド(ナイパーBW、日本油脂製)、イソブチリルパーオキサイド(パーロイルIB、日本油脂製)、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキシド(ナイパーCS、日本油脂製)、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキシド(パーロイル355、日本油脂製)等のジアシルパーオキサイド類、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート(パーロイルNPP-50M、日本油脂製)、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(パーロイルIPP-50、日本油脂製)、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(パーロイルTCP、日本油脂製)、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート(パーロイルEEP、日本油脂製)、ジ-2-エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート(パーロイルOPP、日本油脂製)、ジ-2-メトキシブチルパーオキシジカーボネート(パーロイルMBP、日本油脂製)、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート(パーロイルSOP、日本油脂製)等のパーオキシジカーボネート類、t-ブチルヒドロパーオキサイド(パーブチルH-69、日本油脂製)、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド(パーオクタH、日本油脂製)、等のヒドロパーオキサイド類、ジ-t-ブチルパーオキサイド(パーブチルD、日本油脂製)、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25B、日本油脂製)等のジアルキルパーオキサイド類、α,α'-ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(ダイパーND、日本油脂製)、クミルパーオキシネオデカノエート(パークミルND、日本油脂製)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(パーオクタND、日本油脂製)、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート(パーシクロND、日本油脂製)、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート(パーヘキシルND、日本油脂製)、t-ブチルパーオキシネオデカノエート(パーブチルND、日本油脂製)、t-ヘキシルパーオキシピバレート(パーヘキシルPV、日本油脂製)、t-ブチルパーオキシピバレート(パーブチルPV、日本油脂製)、1,1,3,3,-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(パーオクタO、日本油脂製)2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ250、日本油脂製)、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(パーシクロO、日本油脂製)、t-ヘキシルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(パーヘキシルO、日本油脂製)、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(パーブチルO、日本油脂製)、t-ブチルパーオキシイソブチレート(パーブチルIB、日本油脂製)、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(パーヘキシルI、日本油脂製)、t-ブチルパーオキシマレイックアシッド(パーブチルMA、日本油脂製)等のパーオキシエステル類等の有機過酸化物等が挙げられる。
【0029】
本発明における染料内包既架橋微粒子は、非架橋性エチレン性不飽和単量体(A)と架橋性エチレン性不飽和単量体(B)を併用することで、粒子を内部架橋し、染料の溶出を防止することができる。架橋性エチレン性不飽和単量体(B)の共重合比は、単量体の全量を基準として5〜20重量%であることが好ましく、5重量%未満では染料の溶出を防止することができず、20重量%を超えると凝集物が発生する。
【0030】
また、非架橋性エチレン性不飽和単量体(A)と架橋性エチレン性不飽和単量体(B)を共重合させる際には、分散安定剤や界面活性剤を用いることができる。分散安定剤としては、ポリビニルクロライドやスチレンアクリルコポリマー等への相溶性を向上するポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。また、界面活性剤としては、ポリプロピレンへの相溶性を向上するポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー(エパン、第一工業製薬製)、ポリエーテル変性シリコーン(シルウェット、日本ユニカー製)等のノニオン性界面活性剤、帯電を防止する第四級アンモニウム塩(コータミン、花王製)等のカチオン性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン(アモーゲン、第一工業製薬製)等の両性界面活性剤等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。また、分散安定剤及び界面活性剤の添加は、重合中でも重合後でも良い。
【0031】
本発明の染料内包既架橋微粒子は、均一な発色性を有する変動係数が5%以下の粒度分布を有する単分散微粒子として得られる。なお、変動係数は、微粒子の直径を光学顕微鏡で観察して実測し、標準偏差を平均値で除した値の百分率で表されるものである。また、単量体の組成、重合溶剤中の水の量、ノニオン性重合開始剤の量を調整することにより、0.1〜5.0μmの範囲で所望する平均粒子径の粒子が得られる。
本発明においては、水と有機溶剤の混合溶剤を用いて、水/有機溶剤の比率を調整することで、任意の粒子径の樹脂微粒子を得ることができる。水と有機溶剤に対する溶解度によるものと推定できる。さらには、併用する前記ノニオン性重合開始剤の量を調整することにより、任意の粒子径の樹脂微粒子を得ることができる。
【実施例】
【0032】
実施例により本発明を具体的に説明する。実施例において部及び%とあるのは、特に指定のない限り、すべて重量基準であるものとする。
【0033】
(実施例1)
撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管のついた反応器に、メタノール70.0部、水14.0部、スチレン14.25部、ジビニルベンゼン0.75部、フォトクロミック染料(記録素材製「サニーカラー(ピンク)」)0.3部を仕込み、窒素ガスを流し溶存酸素を除去した。反応器を60℃に加熱後、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(和光純薬製「V-50」)0.07部をイオン交換水0.5部に溶解したものと2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬製「V-65」)0.1部を同時に添加し、6時間加熱撹拌した後、固形分15%、平均粒子径1.30μm、変動係数2.30%のフォトクロミック染料内包微粒子を得た。
【0034】
(実施例2)
実施例1においてフォトクロミック染料(記録素材製「サニーカラー(ピンク)」)に替わりフォトクロミック染料(記録素材製「サニーカラー(イエロー)」)を用いた以外はすべて実施例1に従い重合を行い、固形分15%、平均粒子径1.42μm、変動係数3.52%のフォトクロミック染料内包微粒子を得た。
【0035】
(実施例3)
実施例1においてフォトクロミック染料(記録素材製「サニーカラー(ピンク)」)に替わりフォトクロミック染料(記録素材製「サニーカラー(ブルー)」)を用いた以外はすべて実施例1に従い重合を行い、固形分15%、平均粒子径1.26μm、変動係数3.21%のフォトクロミック染料内包微粒子を得た。
【0036】
(実施例4)
実施例1においてフォトクロミック染料(記録素材製「サニーカラー(ピンク)」)に替わりフォトクロミック染料(記録素材製「サニーカラー(パープル)」)を用いた以外はすべて実施例1に従い重合を行い、固形分15%、平均粒子径1.20μm、変動係数1.67%のフォトクロミック染料内包微粒子を得た。
【0037】
(実施例5)
撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管のついた反応器に、メタノール60.0部、水24.3部、メタクリル酸メチル13.5部、メタクリル酸アリル0.75部、メタクリル酸ベンジル0.75部、フォトクロミック染料(記録素材製「サニーカラー(ピンク)」)0.2部を仕込み、窒素ガスを流し溶存酸素を除去した。反応器を60℃に加熱後、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(和光純薬製「V-50」)0.03部をイオン交換水0.5部に溶解したものを添加し、6時間加熱撹拌した後、固形分15%、平均粒子径1.03μm、変動係数2.65%のフォトクロミック染料内包微粒子を得た。
【0038】
(比較例1)
撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管のついた反応器に、メタノール80.0部、スチレン15.0部、フォトクロミック染料(記録素材製「サニーカラー(ピンク)」)0.3部、ポリビニルピロリドン K-90(ISP製)1.5部を仕込み、窒素ガスを流し溶存酸素を除去した。反応器を60℃に加熱後、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬製「V-60」)0.15部をメタノール3.0部に溶解したものを添加し、6時間加熱撹拌した後、固形分15%、平均粒子径1.52μm、変動係数6.87%のフォトクロミック染料内包微粒子を得た。
【0039】
(比較例2)
比較例1においてフォトクロミック染料(記録素材製「サニーカラー(ピンク)」)に替わりフォトクロミック染料(記録素材製「サニーカラー(イエロー)」)を用いた以外はすべて実施例1に従い重合を行い、固形分15%、平均粒子径1.46μm、変動係数4.25%のフォトクロミック染料内包微粒子を得た。
【0040】
(比較例3)
撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管のついた反応器に、水80.0部、第三リン酸カルシウム2.0部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.001部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.01部(和光純薬製「V-60」)、スチレン10.0部を仕込み、窒素ガスを流し溶存酸素を除去した。70℃で6時間反応後、冷却し、得られた微粒子分散液にジビニルベンゼン0.5部、フォトクロミック染料(記録素材製「サニーカラー(ピンク)」)0.2部をトルエン7.3部に溶解した溶液を滴下し、更に70℃で3時間反応させ、固形分12.7%、平均粒子径4.87μm、変動係数9.65%のフォトクロミック染料内包微粒子を得た。
【0041】
(比較例4)
比較例3においてフォトクロミック染料(記録素材製「サニーカラー(ピンク)」)に替わりフォトクロミック染料(記録素材製「サニーカラー(パープル)」)を用いた以外はすべて実施例1に従い重合を行い、固形分15%、平均粒子径5.22μm、変動係数10.6%のフォトクロミック染料内包微粒子を得た。
【0042】
(比較例5)
撹拌機、還流冷却器、温度計のついた反応器に、キシレン79.4部、ポリプロピレンパウダー(三洋化成工業製「ハイマー330P」19.8部、フォトクロミック染料(記録素材製「サニーカラー(ブルー)」)0.8部を仕込み110℃で1時間撹拌した後、撹拌機付減圧乾燥機にて60℃で減圧乾燥し、キシレンを回収した。得られた粒子を回転式機械粉砕機にて粉砕し平均粒子径10μm変動係数52.3%の粒子を得た。
【0043】
本発明における平均粒子径は、得られた粒子分散液をシースフロー電気抵抗式粒度分布測定装置(シスメックス社製「SD-2000」)を用いて測定した粒子径の平均値である。また変動係数は、前記測定方法で得られた標準偏差を粒子径で除した百分率で表される。さらに分散液中の粗大粒子の有無は、前記測定方法で得られる粒度分布グラフより確認する。
本発明におけるフォトクロミック性の評価は、得られるフォトクロミック微粒子分散液を遠心分離後、得られた沈殿物を50℃で減圧乾燥し得られる粉体を300mJのUV照射装置で露光し、発色度合い、均一性を目視評価した。
本発明における耐候性の評価は、まず上記実施例で合成したフォトクロミック微粒子分散液を吸引濾過後、ろ過物を50℃で減圧乾燥し得られる粉体をトルエンに30重量%となるように添加し、フォトクロミック微粒子のトルエン分散液を作成した。得られたトルエン分散液を、作成直後と温度23℃、湿度60%で1週間放置後に遠心分離し、得られた上澄みを分光光度計(日立ハイテクノロジーズ製「U-3310」)を用いて吸収スペクトルを測定し、各フォトクロミック染料の特定波長における吸光度増減の経時変化を測定した。評価結果を表1と表2に示す。
【表1】


【表2】

【0044】
実施例1〜5に関しては、個々の粒子内部に均一に染料が存在するため発色性が良好であるが、比較例3、4では、個々の粒子における染料の含有量が均一でないため、発色にムラがあった。
また、実施例1〜5は高い耐候性を示したが、比較例1、2は架橋性エチレン単量体を併用しなかったため、耐候性が悪く、染料の溶剤中への溶出が観察された。
さらに、比較例5の方法により作成したフォトクロミック微粒子は、粒子径が大きく、粗大粒子が存在するため、インクジェット用インキとして使用する際、ノズルが詰まるなどの問題を生じたが、実施例1〜5に関しては、粗大粒子が存在せず、良好な物性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の染料内包微粒子は、フォトクロミックや染料分散などの分野に関する。当該微粒子は単分散染料内包既架橋微粒子であり、実質的に均一な粒子径と均一な発色性を有し、微粒子中からの染料の溶出が極めて低く耐久性に優れたものであるから、フィルムコーティング、レンズコーティング、アパレル業界、空間デザイン、印刷インキ等の種々の分野に適用できる。


























【特許請求の範囲】
【請求項1】
非架橋性エチレン性不飽和単量体(A)と架橋性エチレン性不飽和単量体(B)とを、前記単量体に溶解するフォトクロミック染料存在下、溶剤中で、下記式(1)または下記式(2)で表される重合開始剤を用いて重合させてなる単分散フォトクロミック染料内包既架橋微粒子。
【化1】


[式中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基または芳香族基を示す。]

【化2】

[式中、R3及びR4は、それぞれ独立にアルキレン基または2価の芳香族基を示す。]
【請求項2】
架橋性エチレン単量体(B)が、重合性不飽和カルボン酸残基と前記重合性不飽和カルボン酸残基以外の反応性官能基とを有する多官能性モノマーであることを特徴とする請求項1記載の単分散フォトクロミック染料内包既架橋微粒子。
【請求項3】
非架橋性エチレン性不飽和単量体(A)がスチレン系単量体であり、架橋性エチレン単量体(B)がジビニル類であることを特徴とする請求項1記載の単分散フォトクロミック染料内包既架橋微粒子。
【請求項4】
溶剤が、水とアルコールとの混合溶剤であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の単分散フォトクロミック染料内包既架橋微粒子。
【請求項5】
単分散フォトクロミック染料内包既架橋微粒子が、実質的に均一な粒子径を有し、かつ、既架橋微粒子の平均粒子径が0.1〜5.0μmであることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の単分散フォトクロミック染料内包既架橋微粒子。
【請求項6】
非架橋性エチレン性不飽和単量体(A)と架橋性エチレン性不飽和単量体(B)とを、前記単量体に溶解する染料存在下、溶剤中で、上記式(1)もしくは上記式(2)で表される重合開始剤を用いて重合させる単分散フォトクロミック染料内包既架橋微粒子の製造方法。


























【公開番号】特開2007−45892(P2007−45892A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230296(P2005−230296)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】