説明

フォトニック結晶

【課題】動作の効率が良好なフォトニック結晶を提供する。
【解決手段】屈折率が異なる少なくとも2種の材料を含み、これらの材料が周期的構造を与えるフォトニック結晶。該フォトニック結晶の少なくとも一部に非線形光学材料を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフォトニック結晶に関し、より詳しくは、その少なくとも一部に非線形光学材料を含むフォトニック結晶に関する。
【0002】
本発明のフォトニック結晶の応用可能な対象は特に制限されないが、例えば、フォトニック結晶デバイス、波長変換素子、和差周波発生素子、第二・第三・第四高調波発生素子、OPA素子、四波混合素子、誘導ラマン散乱素子、パルス圧縮、レーザー光源、光変調素子、光スイッチング素子、光応答素子、光双安定素子、光論理演算素子、有機非線形光学材料加工等に好適に利用可能である。
【背景技術】
【0003】
社会・経済活動の発展に伴い、情報通信・情報処理の分野における大容量の通信を可能とする光エレクトロニクスの重要性は、益々増大している。他方、近年の伝達すべき情報の更なる大容量化、高速化の進行により、既存の光技術のみを用いた情報通信・情報処理では限界が近くなって来ている。このような限界を打破する可能性を有する技術の一つとして、光の進路を自在に制御することが可能なフォトニック結晶が近年、脚光を浴びている。このフォトニック結晶は、屈折率が異なる物質を、光の波長と同様のレベルの間隔で周期的に組み合わせたものである。
【0004】
このようなフォトニック結晶に入射する光は、反射・屈折・干渉などが絡み合い、独特の光学現象(例えば、「分散」「異方性」「フォトニック・バンドキャップ」という特徴的な光の伝搬特性に基づく)を生じるのみならず、フォトニック結晶を用いた場合には、従来の光学材料に比べて10倍以上の光の伝搬特性の改善が期待されている。このため、フォトニック結晶は、光フィルタ、光導波路、バンドフイルター、ディスプレイ用デバイス等としての種々の光応用分野に適用が期待される。更には、フォトニック結晶は、面積比10分の1以下の超小型光回路や、スーパープリズム、零閾値レーザ;および輻射場、伝播特性を制御し得る光機能素子(例えば、急角度曲げの光導波路、極小サイズの光共振器、光変調器、波長分波器、極低しきい値レーザーアレイ等)など革新的光デバイスの実現に途を開く可能性を秘めている。
【0005】
上記したように、フォトニック結晶は周期的に変化する屈折率を有する新しい光学材料であって、将来的な種々の光学技術の重要なカギとなる材料である。しかしながら、従来より現実的に開発・提案されたフォトニック結晶は、動作の効率の点では、必ずしも充分な特性を発揮しているとは言い難かった。
【0006】
加えて、フォトニック結晶における微細加工の必要性から、実用化可能な従来のフォトニック結晶は、半導体材料を用いたフォトニック結晶に事実上限定されていた。
【0007】
【非特許文献1】J.D.Joannopoulos,R.D.Meade,and J.N.Winn,Photonic Crystals(Princeton Univ.Press,New Jersey,1995.)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を解消したフォトニック結晶を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、動作の効率が良好なフォトニック結晶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は鋭意研究の結果、従来におけるように微細加工が容易な半導体材料を用いるためはなく、むしろ従来技術においては微細加工が困難とされていた非線形材料を、その少なくとも一部に用いてフォトニック結晶を構成することが、上記目的の達成のために極めて効果的なことを見出した。
【0011】
本発明のフォトニック結晶は上記知見に基づくものであり、より詳しくは、屈折率が異なる少なくとも2種の材料を含み、これらの材料が周期的構造を与えるフォトニック結晶であって;且つ、その少なくとも一部に非線形光学材料を含むことを特徴とするものである。
【0012】
本発明は、例えば、以下の態様を含む。
【0013】
[1] 屈折率が異なる少なくとも2種の材料を含み、これらの材料が周期的構造を与えるフォトニック結晶であって;且つ、その少なくとも一部に非線形光学材料を含むことを特徴とするフォトニック結晶。
【0014】
[2] 前記周期的構造が非線形光学材料を含む[1]に記載のフォトニック結晶。
【0015】
[3] クラッド材料からなる層の上に、前記周期的構造が配置されている[1]または[2]に記載のフォトニック結晶。
【0016】
[4] 非線形光学材料からなる層の上に、前記周期的構造が配置されている[1]に記載のフォトニック結晶。
【0017】
[5] クラッド材料からなる層の上に、前記非線形光学材料からなる層が配置されている[4]に記載のフォトニック結晶。
【0018】
[6] 前記クラッド材料が金属である[3]または[5]に記載のフォトニック結晶。
【0019】
[7] 前記非線形光学材料が有機非線形光学材料である[1]〜[6]のいずれかに記載のフォトニック結晶。
【0020】
[1−1] コア層に非線形性の高い母体材料を用い、そのコア層に屈折率を二,三次元的に光波長程度の周期で変調したフォトニック結晶構造部を持たせ、またその平均屈折率よりも低い屈折率を持つ材料(又は空気)のクラッド層で上下左右に光を閉じ込めたスラブ型非線形フォトニック結晶導波路において、フォトニック結晶の特性により、異常バンド分散(特に低群速度)による電場増強効果、及び光バンド構造による位相整合効果を持たせ、導いた基本波の高調波を効率良く出力することを特徴とする非線形フォトニック結晶導波路。
【0021】
[1−2] [1−1]に記載の非線形フォトニック結晶導波路において、フォトニック結晶構造を有するコア層の母体材料として有機非線形光学材料を用いることを特徴とする非線形フォトニック結晶導波路。
【0022】
[1−3] [1−1]に記載の非線形フォトニック結晶導波路において、フォトニック結晶構造を有するコア層の平均屈折率よりも低い屈折率を有するクラッド層として、金属材料を用いることを特徴とする非線形フォトニック結晶導波路。
【0023】
[1−4] [1−1]又は2、3に記載の非線形フォトニック結晶導波路を作製するために、光、電子ビームリソグラフィー、反応性ガスを用いたドライエッチングを用いる手段を特徴とする非線形フォトニック結晶導波路の作製法。
【0024】
[1−5] [1−1]、[1−2]又は[1−3]に記載の非線形フォトニック結晶導波路を評価するための手法であり、フォトニックバンド構造を調べる、角度走査偏光反射率測定とフォトニックバンド計算を用いることを特徴とする非線形フォトニック結晶導波路の評価方法。
【0025】
[1−6] [1−5]に記載の非線形フォトニック結晶導波路の評価方法における、実験的にフォトニックバンド構造を調べる角度走査偏光反射率測定において、光を自在に偏光できること、多波長を一括に測定すること、フォトニック結晶の角度を走査できること、フォトニック結晶額域部分に光を集光できることを特徴とする非線形フォトニック結晶導波路の評価装置。
【0026】
[2−1] コア層に非線形性及び加工性の高い有機非線形光学ポリマー等の母体材料を用い、そのコア層に屈折率を光波長程度の周期で変調したフォトニック結晶構造部を持たせ、またその平均屈折率よりも低い屈折率を持つ材料(又は空気)のクラッド層で上下左右に光を閉じ込めたスラブ型非線形フォトニック結晶導波路において、フォトニック結晶の特性により、異常バンド分散(特に低群速度)による電場増強効果、及び光バンド構造による位相整合効果を持たせ、導いた基本波の和周波もしくは高調波を効率良く出力することを特徴とする非線形フォトニック結晶導波路。
【0027】
[2−2]基本波の無駄な散乱ロス及び非線形光学材料に対するダメージを軽減するため、[2−1]の構造を改良し、非線形光学材料層(波長変換部)と周期的屈折率変調層(フォトニック結晶部)を分離した2層コアを設け、且つその上下左右をその平均屈折率より低いクラッド層で閉じ込めた、非線形層・フォトニック結晶層分離型の非線形フォトニック結晶導波路において、フォトニック結晶の特性により、異常バンド分散(特に低群速度)による電場増強効果、及び光バンド構造による位相整合効果を持たせ、導いた基本波の和周波もしくは高調波を効率良く出力することを特徴とする非線形フォトニック結晶導波路。この構造では、非線形光学材料層へ周期的屈折率変調のための微細加工は行わないため、有機非線形光学材料の他に、LiNbO等の無機非線形光学材料も用いることができる。
【0028】
[2−3] [2−1]に記載の非線形フォトニック結晶導波路において、コア層の非線形材料として有機非線形光学材料を用いることを特徴とする非線形フォトニック結晶導波路。[2]に記載の非線形フォトニック結晶導波路において、コア層の非線形材料として有機非線形光学材料又は無機非線形光学材料を用いることを特徴とする非線形フォトニック結晶導波路。
【0029】
[2−4] [2−1]、[2−2]に記載の非線形フォトニック結晶導波路において、フォトニック結晶構造を有するコア層の平均屈折率よりも低い屈折率を有するクラッド層として、金属材料、またはSiO等の低屈折率誘電材料、または空気層を用いることを特徴とする非線形フォトニック結晶導波路。
【0030】
[2−5] [2−1]〜[2−4]に記載の非線形フォトニック結晶導波路を作製するために、光、電子ビームリソグラフィー、及び反応性ガスを用いたドライエッチングを用いる手段を特徴とする非線形フォトニック結晶導波路の作製法。
【0031】
[2−6] [2−1]〜[2−4]に記載の非線形フォトニック結晶導波路素子を用いて、和周波もしくは第二高調波を発生させる際の励起光源の入射法として、斜め上部から直接入射する手段、または導波路やファイバー等を用いて端面から平行に入射する手段を特徴とする非線形フォトニック結晶導波路素子の動作手法。
【0032】
[2−7] [2−1]〜[2−4]に記載の非線形フォトニック結晶導波路を評価するための手法であり、フォトニックバンド構造を調べる、角度走査偏光反射率測定とフォトニックバンド計算を用いることにより、簡便、迅速、正確に評価できることを特徴とする非線形フォトニック結晶導波路の光バンド構造評価方法。
【0033】
[2−8] [2−7]に記載の非線形フォトニック結晶導波路の評価方法における、実験的にフォトニックバンド構造を調べる角度走査偏光反射率測定において、光を自在に偏光できること、多波長を一括に測定すること、光入射角度を走査できること、フォトニック結晶の角度を走査できること、フォトニック結晶領域部分に光を集光できることを特徴とする非線形フォトニック結晶導波路の光バンド構造評価装置。
【0034】
[2−9] [2−1]〜[2−4]に記載の非線形フォトニック結晶導波路を評価するための手法であり、和周波混合及び第二高調波発生過程の評価を簡便に調べる、角度走査、和周波混合・第二高調波発生測定を行うことを特徴とする非線形フォトニック結晶導波路の非線形効果評価方法。
【0035】
[2−10] [2−9]に記載の非線形フォトニック結晶導波路の評価方法における、実験的に非線形効果を調べる角度走査、和周波混合・第二高調波発生測定において、簡便、迅速、正確に評価でき、光を自在に偏光できること、入射光の波長が可変であること、光入射角度を走査できること、フォトニック結晶の角度を走査できること、フォトニック結晶領域部分に光を集光できることを特徴とする非線形フォトニック結晶導波路の非線形効果評価装置。
【0036】
本発明においては、更に、以下のような態様をも包含することができる。
【0037】
1.和周波・第二高調波発生等の非線形光学効果は物質と電磁場の相互作用の結果、物質に誘起される非線形分極に起因する現象である。よってこの効果を増大するために、従来物質固有の光分散関係を、屈折率を光波長程度の周期で一,二,三次元的に変調したフォトニック結晶構造により改変し、物質と電磁場の相互作用を大きく増幅することを狙う。フォトニック結晶構造による光波のブラッグ共鳴によって、光分散関係(フォトニックバンド構造)中に、光の群速度が非常に低下する領域が現れる。具体的には、バンド端付近やフォトニックバンドギャップ中の欠陥バンド等に低群速度領域が現れる。その領域を利用すれば、物質中の電場強度は入射強度に対して、大きく増幅し、結果として和周波・第二高調波の放射強度が増大した。また、フォトニック結晶構造により、光バンドが多数本形成されるため、適切に設計すれば、電場増幅と位相整合条件を同時に満たすことも可能となる。この二つの効果により、コア層にフォトニック結晶構造を有する導波路を作製すれば非常に高効率な和周波・第二高調波発生素子が実現できる。
【0038】
2.フォトニック結晶導波路のコア層材料に非常に加工性・非線形光学定数の高い有機非線形光学材料を用いることにより、加工性の悪い無機非線形光学結晶を利用する場合と比較して、加工精度、コスト性ともに格段に高い、素子が実現できる。本例では有機非線形光学材料として代表的な有機非線形光学ポリマーであるDisperse Red1/PMMAを用いた。その有機非線形光学材料に対する微細加工プロセス法は、電子ビーム・光リソグラフィーおよび反応性ガスを用いたドライエッチングを用いて行う。コア層である有機非線形光学材料をスラブ導波路構造に加工し、光導波路で連結されたフォトニック結晶部に光波長程度のサイズの二次元な周期をもつ空孔を加工し、高精度な素子作製を実現した。
【0039】
3.前述したように、コア層として用いる有機非線形光学材料をフォトニック結晶構造状に加工する素子構造は、単純な構造であり工程が少なくすむ点で優れているが、有機非線形光学材料層に直接加工を行うことから、材料に対するダメージの問題、および入射波の伝播時の散乱によるロスの問題がある。これらの問題を軽減するため、その構造を改良したもう一つの素子構造として、以下のような構造を提案した。すなわち非線形光学材料層(波長変換部)と周期的屈折率変調層(フォトニック結晶部)を分離した2層コアを有する素子構造を用いる。本例では、非線形光学材料層(波長変換部)として有機非線形光学ポリマーであるDisperse Red1/PMMAを用い、周期的屈折率変調層(フォトニック結晶部)として、有機ポリマーであるPMMAを用い、その2層の間にそれらに比べ非常に薄い酸化物層(SiO)を挟んだ構造とした。2と同様にフォトニック結晶部に対する微細加工プロセス法は、電子ビーム・光リソグラフィーおよび反応性ガスを用いたドライエッチングを用いて行うが、非線形光学材料層(波長変換部)を分離し、更に薄い酸化物層を挟んでいるため、重要な導波・波長変換部に対し、プロセス上のダメージを軽減、回避することが可能であり、また導波時の無駄な散乱ロスも減らすことができる。
【0040】
4.屈折率の低い有機コア層に対する、クラッド層として金属クラッドを用いることにより、使用する波長域により適切な金属を選べば、クラッド層の屈折率の実部は1以下となり、非常に強い光閉じ込め効果により、低損失な光導波が実現できる。これは、金属のプラズマ周波数以下の負の誘電率(実部)を利用したものである。また、無機非線形光学単結晶では、基板(クラッド層)は格子の整合性から同種のものに限られるが、本例ではコア層が有機材料であるため、クラッド層が金属などの異種材料でも界面の整合性は高い。そこで、本例における素子構造は底部側のクラッドとして金属クラッドを利用し、上部側クラッドとして空気クラッドを利用した有機非線形フォトニック結晶、和周波・第二次高調波発生素子構造とした。本例では、金属クラッドとしてAg薄膜を使用した。これは波長約320nmから赤外域まで、屈折率の実部が1以下であり、また他の金属と比較し光吸収が少ないためである。
【0041】
5.次に作製素子の評価手段として、素子の光バンド構造を評価するための角度走査偏光反射率測定およびフォトニックバンド構造計算を用いる手法、そして素子の和周波混合・第二高調波発生過程の評価を行うための角度走査、和周波混合・第二高調波発生測定を用いる手法の二つを提案した。光バンド構造評価法では、角度走査偏光反射率測定における共鳴ピーク位置のエネルギーおよび運動量の値から、フォトニックバンドの位置を実験的に同定できる。そしてエネルギー、運動量を走査することにより、フォトニックバンド分散関係を実験的に決定することができる。またそれは白色光源を用いて反射光を分光・一括検知すれば、入射波の入射角度、およびフォトニック結晶に対するビーム進行角度を自動に走査していくことにより非常に高速に行うことができる。同時に平面波展開法やFDTD法(時間領域差分法)等によりフォトニックバンド計算を行い、実験値に対してフィッティングを行うことにより、測定箇所以外についても全てフォトニックバンド構造を調べることができる。よって光バンド構造を求める本手法により、作製素子の動作波長等の素子動作設計や素子性能の評価を簡便に行うことが可能となる。次に、和周波混合・第二高調波発生過程の評価法では、和周波混合・第二高調波発生測定の際に入射光の波長および入射角度、フォトニック結晶に対するビーム進行角度を走査することによって、フォトニックバンドの位置に共鳴するエネルギーおよび運動量において、出力される和周波または第二高調波の強度が増大することにより、バンドの位置の同定、およびその強度の増大の度合いから、光バンドと関連した増大の定量的調査・確認、および最も効率良く素子が動作する条件の調査、確認を行うことができる。
【0042】
これに対して、一般に、非線形光学効果を用いて波長変換を高効率に行うためには、入射波と出力波の位相を整合させることが極めて好ましい。その手法として、現在最も用いられているものは、LiNbO等の非線形光学単結晶基板に、周期的に分極反転した部分を形成する擬似位相整合法である。
【0043】
この方法は、位相整合に関しては充分有効であるが、入射power、結晶サイズ一定の元で、その波長変換効率は使用物質の第2次非線形光学定数にのみ依存し、より高効率に動作させるためには、より高い非線形電気感受率の物質を用いるしかない。高密度光ディスクや光コンピューティング等への応用から、小型短波長半導体レーザ等の低パワー光源を用いて、充分に高効率に機能するコンパクトな波長変換素子が現在求められている。だが、現在LiNbO等の非線形光学単結晶を大きく上回る特性を示す材料は見つかっておらず、今以上の大きな効率向上はこの手法では望めない。
【発明の効果】
【0044】
上述したように本発明によれば、屈折率が異なる少なくとも2種の材料を含み、これらの材料が周期的構造を与えるフォトニック結晶であって;且つ、その少なくとも一部に非線形光学材料を含むことを特徴とするフォトニック結晶が提供される。
【0045】
更に、本発明の対応する各態様によれば、例えば、以下の効果を奏することができる。
【0046】
1.高効率に非線形光学効果により波長変換を行うためには、入力波と出力波の位相を整合させることと、物質と光波の相互作用を増大することが極めて好ましい。従来の方法では位相整合することは可能でも、物質の光分散関係を改変することはできず、物質固有の非線形光学定数値に性能は縛られていた。本発明によれば、フォトニック結晶構造を有するスラブ光導波路型の波長変換素子を作製することにより、光分散関係をフォトニックバンド構造により改変し、その効率を大きく増大させることができる。本発明により、このような素子構造、および作製手法が提供される。
【0047】
2.上記のような機能を達成するためには、光波長レベルにおいて、高精度且つ設計通り、素子構造を再現良く作製することが極めて好ましい。しかし、波長変換素子として最も良く利用されるLiNbO等の無機非線形光学結晶は、非常に加工性が悪く、フォトニック結晶構造を作製するには、従来においては適さないとされて来た。本発明によれば、加工性・非線形光学定数の高い、フォトニック結晶構造作製に適した材料系を選定することが好ましく、その要請を満たす材料系として、有機非線形光学材料が提供される。また、その有機非線形光学材料は素子構造作製のための加工プロセス法は、従来においては確立されていなかったが、本発明においては、再現性高く、且つ高精度に作製可能な素子加工プロセス法が提供される。
【0048】
3.2に記載した有機非線形光学材料をフォトニック結晶構造状に加工する素子構造は、単純な構造であり工程が少なくすむ点で優れているが、有機非線形光学材料層に直接加工を行うことから、材料に対するダメージの問題、および入射波の伝播時の散乱によるロスの点では改良の余地があった。本発明によれば、これらの問題を軽減するため、その構造を改良した非線形光学材料層(波長変換部)と周期的屈折率変調層(フォトニック結晶部)を分離した2層コアを有する素子構造、およびその素子加工プロセス法が提供される。
【0049】
4.フォトニック結晶はその性質上、導波損失を防ぐためには、上下の強い光閉じ込めが極めて好ましい。また有機材料等の比較的低い屈折率を持つ材料をコア層として用いる場合、光閉じ込め効果が弱くなり、導波損失が高くなる点に改良の余地があった。本発明のは、その解決策としてクラッド層に、有機材料の一般的な屈折率(約1.4〜1.8)と比較しても低い屈折率の材料系を選ぶ必要がある。よってこの要請を満たす材料系を本発明において提供される。
【0050】
5.作製した素子に対して、簡便にその特性・素子性能を見積もる評価手段は、確立していない。またフォトニックバンド構造の異常分散を利用するという、素子形態のため、素子評価を行うことは、動作波長等の素子動作設計を行うためにも非常に重要となる。本発明においては、簡便且つ正確に素子動作の設計および素子評価を行える手法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
【0052】
(フォトニック結晶の定義)
本発明において、「フォトニック結晶」とは、屈折率が異なる少なくとも2種の材料を含み、且つ、これらの屈折率が異なる少なくとも2種の材料が周期的構造を与えるものを言う。本発明においては、少なくとも一部に、このような「周期的構造」を含む限り、該「周期的構造」以外の構造の有無、種類は問わない。すなわち、本発明において、「フォトニック結晶」とは、「周期的構造」を有するものそれ自体であってもよく、また、このような「周期的構造」を含む、より大きな構造体であってもよい。
【0053】
本発明において、ある構造体が「フォトニック結晶」であるか否かは、下記に示すようなフォトニックバンド構造が形成されているか調べることによって確認することができる。
【0054】
<フォトニックバンド構造の確認方法>
【0055】
角度走査偏光反射率測定から得られた光バンド構造の実験値が、フォトニックバンド構造計算から得られた光バンド構造の計算値と良好に対応することを確認して、測定対象が「フォトニック結晶」であると判断する。ここに、前者実験値の測定方法に関しては、文献(S.Inoue,K.Kajikawa,and Y.Aoyagi,Appl.Phys.Lett.,82,2966−2968(2003))を参照することができ、後者の光バンド構造の計算値に関しては、文献(A.Taflow,Computational Electrodynamics:The Finite−Difference Time−Domain Method(Artech House INC,Norwood,1995))を参照することができる。また、上記の「実験値が計算値と良好に対応する」とは、実験値と計算値との間において、光バンドの分散特性及び、光バンドの周波数帯が良く一致していることを言う。
【0056】
(本発明のフォトニック結晶)
本発明のフォトニック結晶は、屈折率が異なる少なくとも2種の材料を含み、これらの材料が周期的構造を与え、且つ、フォトニック結晶の少なくとも一部に非線形光学材料を含む。ここに、第1の屈折率を有する材料を「材料A」と表記し、該第1の屈折率とは異なる屈折率を有する材料を「材料B」と表記する(屈折率はA>Bとする)。これらの材料AおよびBが、周期的構造を与えることとなる。本発明においては、フォトニック結晶全体として前記非線形光学材料を含んでいれば足りる。すなわち、材料Aまたは材料Bの少なくとも一方が非線形光学材料であっても良く、また周期的構造以外の部分に非線形光学材料を含んでいても良い。
【0057】
(材料A)
本発明に使用すべき「材料A」(屈折率が大きい材料)は、光学材料として使用可能なものである限り、特に制限されない。このような「材料A」としては、例えば、以下に示す材料が使用可能である。
ガラス材料、無機結晶材料、半導体材料、有機材料(ポリマー材料を含む)、金属材料
【0058】
中でも、光ロス低減の点からは、以下に示す材料を用いることが好ましい。
・使用波長領域において、光吸収の少ない材料
・形状、組成、光学特性の均一性の高い材料
【0059】
(材料B)
本発明に使用すべき「材料B」は、前記「材料A」より屈折率が小さく、且つ光学材料として使用可能なものである限り、特に制限されない。このような「材料B」としては、例えば、以下に示す材料が使用可能である。
空気(もしくは真空)、ガラス材料、無機結晶材料、半導体材料、有機材料(ポリマー含む)、金属材料
【0060】
中でも、光ロス低減の点からは、以下に示す材料を用いることが好ましい。
・使用波長領域において、光吸収の少ない材料
・形状、組成、光学特性の均一性の高い材料
【0061】
本発明においては、材料Aと材料Bの間に屈折率差が存在すればその屈折率の差の絶対値は、特に制限されない。しかしながら、周期構造による、光分散関係の変調の効果を十分に発現させるためには、屈折率差Δnが約0.5以上あることが好ましい。
【0062】
(周期的構造)
本発明において、周期的構造は、後述する光バンド構造を形成するものである限り、特に制限されない。この周期構造は、一次元周期構造、二次元周期構造、三次元周期構造のいずれであってもよい。周期構造の具体例としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。
【0063】
一次元周期構造:前記した材料A,Bを光波長程度の厚みで交互に積層した多層膜構造

二次元周期構造:材料A中に材料Bを正方格子状又は三角格子状、又は、六方格子状等
に配置した二次元構造、及びその逆。
三次元周期構造:材料AとBをダイヤモンド格子状、体心立方格子状、面心立方格子状
、六方格子状、三角格子状、直方格子状、ウッドパイル状、ヤブロノ
バイト状等に配置した三次元構造。
また、これらの周期構造中に意図的に周期長を変えた部分や欠陥部分、不純物を挿入した部分等を形成することも可能である(不純物バンドを形成・光局在効果)。
【0064】
(非線形光学材料)
本発明において使用可能な非線形光学材料は特に制限されない。高効率な素子動作の点からは、以下のような特性を示す非線形光学材料を用いることが好ましい。使用波長範囲において高光学非線形性材料、使用波長域で光吸収の少ない材料、形状、組成、光学特性の均一性の高い材料であることが好ましい。また、非線形光学材料の「非線形」の程度は2次及び3次の非線形感受率によって表すことができる。
【0065】
上記非線形光学材料としては、無機材料、有機材料、半導体材料、およびそれらの種々の組合せ(混合物、組成物、固溶体等)も使用可能である。より具体的には、例えば、下記の非線形光学材料が挙げられる。
【0066】
(1)無機非線形光学材料の例:LiNbO,LiTaO,KDP,BBO,LBO,KTP等の無機非線形光学結晶、GeドープSiOガラス、カルコゲンガラス等の非線形ガラス材料、BaTiO,SBN等の強誘電性結晶(2)有機非線形光学材料の例:MNA,MAP,Urea,L−PCA,DAN,MNP,DMNP等の低分子系非線形光学材料、DR1/PMMA,MNA/PMMA,DCV/PMMA,Poly(MMA−co−MMA−DR1),PPNA,Poly(MMS−co−MMA−3R),Poly(St−NPP),Bis−A,NNDN等の高分子に低分子を分散させた、あるいは化学的に修飾・架橋したポリマー系材料、PDA,PA,PAV,PPV,PATh等のポリマー材料、Ann,MPc,VOPc等の分子材料(3)半導体非線形光学材料の例:GaAs,ZnO,CdS,C,InSb,Si,GaN,InP等の半導体材料、GaAs/AlGaAs,GaN/AlGaN等の半導体超格子材料(4)組合せ非線形光学材料の例:半導体あるいは金属の微粒子をドープしたガラス材料、半導体あるいは金属の微粒子を分散させたポリマー材料
【0067】
上記した各種の非線形光学材料の中でも、良加工性、大量生産性、低コスト性、の点からは、有機非線形光学材料が好適に使用可能である。中でも、化学的・機械的高安定性、非中心対称構造を構築可能、易加工性、の点からは、下記の非線形光学材料が好適に使用可能である。
【0068】
・DR1/PMMA,MNA/PMMA,DCV/PMMA,Poly(MMA−co−MMA−DR1),PPNA,Poly(MMS−co−MMA−3R),Poly(St−NPP),Bis−A,NNDN等の高分子に低分子を分散させた、あるいは化学的に修飾・架橋した有機非線形光学ポリマー材料
・PDA,PA,PAV,PPV,PATh等の有機非線形光学ポリマー材料
【0069】
(クラッド層)
本発明においては、クラッド層を構成する材料は、その屈折率がコア層のそれより低い限り、特に制限されない。コア層への強い光閉じ込め実現、光リークによる光損失低減の点からは、このクラッド層の材料の屈折率と、コア層の材料の屈折率との差の絶対値は、0.05以上であることが好ましく、更には0.5以上であることが好ましい。
【0070】
有機材料のような低い屈折率(約1.4〜1.8)のコア層材料よりも、十分に低い屈折率を持たせること、構造的に安定な素子を実現すること、の点からは、このクラッド層を構成する材料として金属を用いることが好ましい。このような金属として使用可能なものとしては、例えば以下のものが挙げられる。
Ag,Au,Al,Ca,K,Na,Rb,Rh,Cs等
【0071】
上記した金属の中でも、低光吸収、低屈折率、これらを満たす波長範囲、高化学的安定性の点からは、下記のものが好適に使用可能である。
【0072】
Ag,Au,Al,Cu等
本発明においては、クラッド材料として、誘電体多層膜、誘電体二次元周期構造を用いることも可能である。この誘電体多層膜の性質は適切に設計を行えばある周波数帯の任意の偏光を持つ光をほぼ完全に反射する。この性質は誘電体ミラー、誘電ファブリペローフィルターなどに応用されており、またフォトニック結晶的な見方をすれば、1次元フォトニック結晶のフォトニックバンドギャップを利用しているといえる。この材料をクラッド層に用いれば、コア層内のある周波数帯の任意のモードを完全に閉じ込めることが可能であり、有機材料のような屈折率が低く、且つ強度が弱く空気クラッドが使えないコア層材料に対して非常に有効である。
【0073】
(フォトニック結晶素子構造の第1の具体的態様)
【0074】
図1は、本発明のフォトニック結晶素子構造の具体的な一態様を示す模式斜視図である。図1を参照して、この態様のフォトニック結晶素子においては、シリコン基材1上にAgクラッド層2が配置され、更に、該Agクラッド層2上に、有機非線形光学材料を用いた周期的構造3(以下、この周期的構造を「コア層」と称する場合がある)が配置されている。この周期的構造3の内部には、円柱孔4が形成されており、また導波路5の形状とされている。
【0075】
非線形光学材料として、この図1の態様においては有機非線形光学材料を用いる。このように有機非線形光学材料を用いることにより、大きい非線形光学定数、高い作製・加工性、既存の光ファイバー・光導波路に対する高いカップリング効率を容易に得ることができる。更に、この図1に示す構造は低コストで作製可能であるため、大量生産への適応がより容易である。この態様においては、該有機非線形光学材料として、例えば、ゲストにディスパース・レッド(Disperse Red)1(顔料、以下「DR1」と略記する場合がある)、ホストにPMMA(ポリメチルメタクリレート)を用いた有機非線形光学ポリマーを用いることができる。ただし、上述したように、本発明における非線形光学材料はこれに限らず、無機材料、有機材料、半導体材料、およびそれらの種々の組合せ(混合物、組成物、固溶体等)も使用可能である。
【0076】
(第1の態様の素子作製方法)
上記した第1の態様の作製方法は特に制限されないが、高精度加工性、高側壁垂直性、高アスペクト比加工性、極微細加工性の点からは、下記のような作製方法を用いることが好ましい。
【0077】
第1の素子構造(素子構造1)を作製するに際して、上記の非線形光学ポリマーに対して、本例では電子線リソグラフィーおよび反応性ガスを用いたICPドライエッチング等により高垂直性・高アスペクト比を持つ2次元フォトニック結晶導波路を作製する。本例においては、加工技術としてドライエッチング技術を用いたが、本発明における技術はこれに限らず、ナノインプリント技術、陽極酸化技術、化学エッチング技術、電子・集束イオン・フォトンビームリソグラフィー技術、選択成長技術、レーザ加工技術等も用いることができる。
【0078】
本素子構造例の模式図を図1に示すように、この例においては2次元フォトニック結晶導波路を作製する。
【0079】
図2は、図1に示す素子構造を作製するためのプロセスと説明するための模式断面図である。図2を参照して、まず、微細加工用の多層膜として、洗浄したSiウェハー基板10上にAgクラッド層11(厚さ500nm)を真空蒸着し、その上にモノクロロベンゼン溶液中に溶解させたDR1/PMMAをスピンコーターによりスピンコートし、120−200℃でベーキングすることにより、コア層(650nm)12を形成する。
更にドライエッチング用ハードマスクとしてSOG膜(東京応化製OCD)13をスピンコート(150−300nm)し、ベーキング(120−300℃)する。
【0080】
次にポジ型のフォトレジスト(東京応化製OFPR、1−2μm)を塗布(1μm程度)してポジ型のフォトレジスト層を形成した後、ベーキング(120−180℃)し、紫外フォトリソグラフィー装置(ミカサ製)を用いて、導波路構造にレジストをパターニングする。
【0081】
このようにパターニングされたレジストの層をマスクとして、CH/H反応ガス(H:30〜70%,0.2〜0.8Pa)およびO/Ar反応ガス(O濃度10−50%、全圧0.15−0.5Pa)を用いたICPドライエッチングにより、DR1/PMMAを導波路状に加工する。
【0082】
フォトレジスト13を除去した後、EBレジスト(東京応化製OEBR)14をスピンコート(50−300nm)し、ベーキング(120−180℃)する(図2(b))。
【0083】
次いで、EBリソグラフィーにより導波路上にフォトニック結晶パターンを加工し(図2(c))、CF/H反応ガス(H濃度30−70%、全圧0.2−0.8Pa)を用いたICPドライエッチングにより、該フォトニック結晶パターンをハードマスクにパターン転写する(図2(d))。
【0084】
次いでO/Ar反応ガス(O濃度10−50%、全圧0.15−0.5Pa)を用いたICPドライエッチングにより、DR1/PMMAに高精度にフォトニック結晶構造の加工を行う(図2(e))。最後に必要に応じてフッ酸によりマスク除去を行い(図2(f))、非線形光学ポリマー2次元フォトニック結晶導波路(図1)が完成となる。
【0085】
以上、図2に示した作製プロセス手順により、図1の構造を得ることができる。加工後の素子をノマルスキー光学顕微鏡(図3(a))およびSEM(走査電子顕微鏡)で観察した。図3(b)は表面SEM写真であり、図3(c)は断面SEM写真である。また図3(a)において、参照記号30は非線形フォトニック結晶構造部領域、31は非パターニング領域(参照用)、32は光入出力用導波路(非線形フォトニック結晶構造部結合)、および33は 光入出力用導波路(非パターニング領域結合)を示す。
【0086】
(第2の素子構造)
第2の素子構造(素子構造2)として、非線形光学材料層(波長変換部)と周期的屈折率変調層(フォトニック結晶部)を分離した2層コアを有する素子構造の模式斜視図を図4に示す。この構造は、第1の構造を改良したもので、非線形光学材料層(波長変換部)と周期的屈折率変調層(フォトニック結晶部)を分離したことで導波・波長変換部に対し、プロセス上のダメージを軽減、回避すること、また導波時の無駄な散乱ロスも減らすことができる。また更にこの構造では、非線形材料に加工を行うことが必須でないため、該非線形材料としてLiNbO等の一般的に加工性が良くない材料も容易に用いることができ、適用できる材料系および応用性が飛躍的に増大する。
【0087】
その作製法であるが、まず、洗浄したSiウェハー基板41上にAgクラッド層42を真空蒸着(500nm)し、その上に非線形光学材料層(波長変換部)43としてモノクロロベンゼン溶液中に溶解させたDR1/PMMA33をスピンコーターによりスピンコート(150−300nm、その後120−200℃でベーキング)し、その上に保護膜44としてSOGを非常に薄くスピンコート(20−100nm、その後120−300℃でベーキング)し、更に、周期的屈折率変調層(フォトニック結晶部)45を形成する。
【0088】
この周期的屈折率変調層45は、図1の場合と同様に(すなわち、図2に示すプロセスと同様に)形成することができる。すなわち、モノクロロベンゼン溶液中に溶解させたPMMAをスピンコート(200−800nm、その後120−200℃でベーキング)し、更にドライエッチング用ハードマスクとしてSOG(主SiO)をスピンコート(150−300nm)しベーキング(120−300℃)した。次にフォトレジストを塗布(1μm程度)後、ベーキング(120−180℃)し、フォトリソグラフィーにより導波路構造にレジストをパターニングする。
【0089】
レジストをマスクとして、CF/H反応ガス(H濃度30−70%、全圧0.2−0.8Pa)およびO/Ar反応ガス(O濃度10−50%、全圧0.15−0.5Pa)を用いたドライエッチングにより、これら4層を導波路状に加工する。フォトレジストを除去後、EBレジストをスピンコート(50−300nm)しベーキング(120−180℃)する。EBリソグラフィーにより導波路上にフォトニック結晶パターンを加工し、CF/H反応ガス(H濃度30−70%、全圧0.2−0.8Pa)を用いたドライエッチングによりハードマスクにパターン転写する。次いでO/Ar反応ガス(O濃度10−50%、全圧0.15−0.5Pa)を用いたドライエッチングにより、PMMAに高精度にフォトニック結晶構造の加工を行う。最後に必要に応じてフッ酸によりマスク除去を行い、非線形光学材料層(波長変換部)と周期的屈折率変調層(フォトニック結晶部)を分離した2層コアを有する非線形光学ポリマー2次元フォトニック結晶導波路が完成となる。加工後の素子のSEM写真を図5に示す。
【0090】
(素子動作の設計および評価)
素子動作の設計および評価を正確に行うためには、作製された非線形光学2次元フォトニック結晶導波路が、どのようなバンド構造をもつのか、理論的にシミュレーションすると同時に、実験的に直接観測することが、通常は必要である。理論計算に関しては、平面波展開法に比べより精度の高い、3次元FDTD法によるバンド計算法を用いて解析を行うことが好ましい。これは他のバンド計算手法(S−Matrix法、T−Matrix法、平面波展開法等)に対しても適用できる。
【0091】
実験的には、角度走査偏光反射率測定を行い、反射スペクトルにおいて鋭い極小として現れる、光バンドと入射光との間の共鳴ピーク位置からフォトニックバンド構造を決定する。具体的には、タングステンハロゲン白色光源を用いた各偏光平行ビームを、微小なサンプル(パターニング)部に対して、集光入射し、分光器およびCCDを用いて反射スペクトルを測定、更にビーム入射角、および結晶対称軸に対する面内ビーム進行角をそれぞれ走査し、スペクトルに現れる共鳴ピークの周波数シフトから、フォトニックバンド分散曲線を追跡する。
【0092】
測定系の幾何学的対応模式斜視図を図6に示す。また用いた測定光学系の模式平面図を図7に示す。図6において、参照記号50は入射光、51は入射光角度、および52は面内光進行角度を示す。図7において、参照記号63は光源(タングステンハロゲンランプ)、34は光ファイバー、35はコリメートレンズ、36はアイリス、37はミラー、38はNDフィルター、39は広帯域用偏光子、40は広帯域用1/2波長版、41は拡大鏡、42は長焦点アクロマティックレンズ、43はサンプル(非線形フォトニック結晶導波路)部、44はPC制御自動サンプルステージ(θ、2θ、φ回転)、45はアクロマティックコリメートレンズ、46は光ファイバーカップリング、47は分光器、48はCCDディテクター、および49は制御用コンピューターを示す。
【0093】
この測定手法は、入射時にプリズムカップリングを用いれば、ライトラインの下側つまり導波モードを観測することが可能であり、実験的な光バンド構造を全ての範囲で完全に決定、調査することができる。
【0094】
このように理論・実験両面からバンド構造を決定すれば、例えば超低群速度・位相整合を同時に満たし、和周波・第二高調波発生が著しく増大される動作条件を正確に求め、且つ素子性能を評価することができる。例としてフォトニック結晶周期500nm、正方格子構造を持つ、第1の素子構造に対して、求めたフォトニックバンド構造を図8のグラフに示す。図8において、参照記号80は角度走査偏光反射率測定から得られた光バンド構造の実験値、および81はフォトニックバンド構造計算から得られた光バンド構造の計算値、82は空気中の光のライトコーンを示す。結晶周期を変えることにより、図8の縦軸のエネルギーは自由に変更することができる。
【0095】
例で示した構造では、正方格子上の対角方向にビームを入射した場合、フォトニックバンド構造により、第二高調波の位相整合が可能であることが実際に確認された。同時に高調波の光群速度は真空中の光速に対して30分の1以下に低下していることが示され、その電場増強の効果により、高調波発生効率は、位相整合がなされている一様媒質素子と比較して、はるかに増強する可能性があることが確認された。
【0096】
(和周波混合・第二高調波発生過程の評価)
次に、代表的な非線形光学過程である和周波混合・第二高調波発生過程の評価を提案する技法において行った。本例では非線形光学過程として和周波混合・第二高調波発生過程を評価したが、本発明素子はこれに限ることはなく、他の様々の非線形光学効果(光パラメトリック発振・増幅、電気光学効果、誘導ラマン・誘導振りルアン散乱、自己位相変調、光ソリトン効果、非線形屈折率効果、光カー効果、光双安定効果、光混合効果、差周波発生、誘導発光、ホールバーニング効果、光エコー効果、第三・第四高調波発生、光整流効果、光誘起屈折率変化、四波混合等)を用いた様々な応用(波長変換、光増幅、波長可変レーザ、OPA、圧力・温度センサ、波形整形、光シャッタ、光強度変調、光パルス圧縮、光ソリトン、変調不安定性、DFBレーザー、狭帯域光フィルタ、光サンプリング、レーザーポンプ用光源、短波長光源、分光、分散補償、光スイッチ、高密度光メモリ、光論理素子、X線発生、高速光スイッチ、全光スイッチ等)に適用することができる。
【0097】
本例においては、和周波混合・第二高調波発生測定の際に入射光の波長および入射角度、フォトニック結晶に対するビーム進行角度を走査することによって、フォトニックバンドの位置に共鳴するエネルギーおよび運動量において、出力される和周波または第二高調波の強度が増大することにより、バンドの位置の同定、およびその強度の増大の度合いから、光バンドと関連した増大の定量的調査・確認、および最も効率良く素子が動作する条件の調査、確認を行うことができる。本例では入射光源として、広範囲にわたり波長可変可能(0.3−10μm)な、短パルスOPAを用いた。入射光学系およびステージ等の試料保持部は、上述した角度走査偏光反射率測定のものと同様である。試料入射直前に励起光の高調波・和周波成分は干渉フィルターにより取り除く。和周波・高調波の検知部は、ファイバーによって分光器・CCDに取り込むか、またはバンドパスフィルターを通して光電子増倍管に取り込む形式を用いた。
【0098】
第2の素子構造に対して、同軸2ビーム入射(波長736nm,800nm)において、CCDを用いる方式により得られた、和周波(383nm)・第二高調波(368nmと400nm)の発生を観測した結果、およびフォトニックバンドに共鳴する運動量(入射角度42.5度)において第二高調波(波長368nm)の強度が大きく増大した結果を示したものを図9のグラフに示す。図9において、参照記号83は第二高調波(波長368nm)のスペクトルピーク、84は和周波(383nm)のスペクトルピーク、85は第二高調波(400nm)のスペクトルピーク、および86は本素子における第二高調波(波長368nm)強度の入射角度依存性を示す。
【0099】
本結果により本提案素子構造によって実際に和周波・高調波を通常媒質中に比べ、はるかに高効率に発生できる可能性があることが示された。
【0100】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。
【実施例1】
【0101】
第1の素子構造(素子構造1)を作製するに際して、非線形光学ポリマーに対して、本例では電子線リソグラフィーおよび反応性ガスを用いたICPドライエッチング等により高垂直性・高アスペクト比を持つ2次元フォトニック結晶導波路を作製した。本例においては、加工技術としてドライエッチング技術を用いた。模式図を図1に示すように、この例においては2次元フォトニック結晶導波路を作製した。
【0102】
図2の模式断面図を参照して、まず、微細加工用の多層膜として、硫酸過酸化水素水(2:1)及び純水により、洗浄したSiウェハー基板10上に、Agクラッド層11(厚さ500nm)を真空蒸着した。
【0103】
上記により形成したAgクラッド層11上に、モノクロロベンゼン溶液中に濃度0.1〜1.0mol/lで溶解させたDR1(ALDRICH社製、商品名:Disperse Red1)/PMMA(和光純薬工業社製、商品名:メタクリル酸メチルポリマー、DR1:0.5〜10wt%)をスピンコーター(共和理研社製、商品名:K−3598D−1 SPIMER)によりスピンコートし、120−200℃で10〜60分間ベーキングすることにより、コア層(650nm)12を形成した。
更にドライエッチング用ハードマスクとしてSOG膜(東京応化製OCD)をスピンコート(150−300nm)し、ベーキング(120−300℃;10〜60分間)した。
【0104】
次にポジ型のフォトレジスト(東京応化製OFPR、1−2μm)を用いて塗布(1μm程度)してポジ型のフォトレジスト層13を形成した後、ベーキング(120−180℃;10〜60分間)し、紫外フォトリソグラフィー装置(ミカサ製、商品名:マスクアライナー MA−20型)を用いて、導波路構造にレジストをパターニングした。
【0105】
このようにパターニングされたレジストの層14をマスクとして、CF/H反応ガス(H:30〜70%,0.2〜0.8Pa)及びO/Ar反応ガス(O濃度10−50%、全圧0.15−0.5Pa)を用いたICPドライエッチングにより、DR1/PMMAを導波路状に加工した。この際に用いたICPドライエッチング条件は、以下の通りであった。
【0106】
<ICPドライエッチング条件>
ICPドライエッチング装置:入江工研社製、商品名:ICPエッチング装置(研究室において改良)IEE600A
これらの詳細については、下記の論文を参照することができる。
・S.Inoue,Kajikawa,Y.Aoyagi,Appl.Phys.Lett.,82,2966−2968(2003)
・S.Inoue,and K.Kajikawa Mater.Sci.Eng.B103,170−176(2003)
【0107】
次いでOアッシングにより、フォトレジストを除去後、EBレジスト(東京応化製OEBR)をスピンコート(50−300nm)し、ベーキング(120−180℃;10〜60分間)した。
EBリソグラフィー(日立社製、商品名:S−4100(SEM観察装置、研究室において改良))により導波路上にフォトニック結晶パターンを加工し、CF/H反応ガス(H濃度30−70%、全圧0.2−0.8Pa)を用いたICPドライエッチングにより、該フォトニック結晶パターンをハードマスクにパターン転写した。この際に用いたICPドライエッチング条件は、以下の通りであった。
【0108】
<ICPドライエッチング条件>
前記と同様。
詳細については前記論文を参照することができる。
次いでO/Ar反応ガス(O濃度10−50%、全圧0.15−0.5Pa)を用いたICPドライエッチングにより、DR1/PMMAに高精度にフォトニック結晶構造の加工を行った。この際に用いたICPドライエッチング条件は、以下の通りであった。
【0109】
<ICPドライエッチング条件>
前記と同様。
最後にフッ酸によりマスク除去を行い、非線形光学ポリマー2次元フォトニック結晶導波路(図1)を完成させた。最終的に得られた2次元フォトニック結晶導波路(図1)において、円柱孔4の直径は200nm、隣接する円柱孔4の間隔(円柱孔4の中心相互間の距離)500nm、フォトニック結晶部3の厚さは650nmであった。
【0110】
以上、図2に示した作製プロセス手順により、図1の構造を得ることができた。加工後の素子をノマルスキー光学顕微鏡(ニコン社製、商品名:ECLIPSE−ME600P)およびSEM(走査電子顕微鏡;日立社製、商品名:S−4100)写真(倍率:60000倍)として図3に示す。
【実施例2】
【0111】
以下の方法によて、第2の素子構造(素子構造2)として、非線形光学材料層(波長変換部)と周期的屈折率変調層(フォトニック結晶部)を分離した2層コアを有する素子構造(図4)を作製した。
【0112】
まず、洗浄したSiウェハー基板上にAgクラッド層を真空蒸着(500nm)した。
【0113】
このAgクラッド層の上に、非線形光学材料層(波長変換部)としてモノクロロベンゼン中に溶解(濃度:0.1〜1mol/l)させたDR1/PMMA(DR1:0.5〜10wt%)溶液をスピンコーターによりスピンコート(150−300nm、その後120−200℃でベーキング)し、その上に保護膜としてSOGを非常に薄くスピンコート(20−100nm、その後120−300℃でベーキング)した。
【0114】
更に、この非線形光学材料層の上に、実施例1と同様にしてフォトニック結晶構造を形成した。
【0115】
すなわち、周期的屈折率変調層(フォトニック結晶部)として、モノクロロベンゼン溶液中に溶解させたPMMAをスピンコート(200−800nm、その後120−200℃でベーキング)し、更にドライエッチング用ハードマスクとしてSOG(主SiO)をスピンコート(150−300nm)しベーキング(120−300℃)した。
【0116】
次にフォトレジストを塗布(1μm程度)後、ベーキング(120−180℃)し、フォトリソグラフィーにより導波路構造にレジストをパターニングした。レジストをマスクとしてCF/H反応ガス(H濃度30−70%、全圧0.2−0.8Pa)及びO/Ar反応ガス(O濃度10−50%、全圧0.15−0.5Pa)を用いたドライエッチングにより、これら4層を導波路状に加工した。
【0117】
フォトレジストをOアッシングにより除去した後、その上にEBレジストをスピンコート(50−300nm)しベーキング(120−180℃)した。EBリソグラフィーにより導波路上にフォトニック結晶パターンを加工し、CF/H反応ガス(H濃度30−70%、全圧0.2−0.8Pa)を用いたドライエッチングによりハードマスクにパターン転写した。次いでO/Ar反応ガス(O濃度10−50%、全圧0.15−0.5Pa)を用いたドライエッチングにより、PMMAに高精度にフォトニック結晶構造の加工を行った。最後にフッ酸によりマスク除去を行い、非線形光学材料層(波長変換部)と周期的屈折率変調層(フォトニック結晶部)を分離した2層コアを有する非線形光学ポリマー2次元フォトニック結晶導波路(図4)を完成させた。最終的に得られた2次元フォトニック結晶導波路(図1)において、円柱孔4の直径は140nm、隣接する円柱孔4の間隔(円柱孔4の中心相互間の距離)650nm、フォトニック結晶部45の厚さは650nmであった。
【0118】
加工後の素子のSEM写真(倍率:45000倍)を図5に示す。
【実施例3】
【0119】
(素子動作の設計および評価)
以下の方法により、理論的にシミュレーションすると同時に、実験的に直接観測を行った。
【0120】
理論計算に関しては、平面波展開法に比べより精度の高い、3次元FDTD法によるバンド計算法を用いて解析を行った。この3次元FDTD法によるバンド計算法の詳細に関しては、前記文献を参照することができる。
【0121】
実験的には、角度走査偏光反射率測定を行い、反射スペクトルにおいて鋭い極小として現れる、光バンドと入射光との間の共鳴ピーク位置からフォトニックバンド構造を決定した。この角度走査偏光反射率測定法の詳細に関しては、文献(S.Inoue,K.Kajikawa,Y.Aoyagi,Appl.Phys.Lett.,82,2966−2968(2003))を参照することができる。
【0122】
具体的には、タングステンハロゲン白色光源を用いた各偏光平行ビームを、微小なサンプル(パターニング)部に対して、集光入射し、分光器およびCCDを用いて反射スペクトルを測定、更にビーム入射角、および結晶対称軸に対する面内ビーム進行角をそれぞれ走査し、スペクトルに現れる共鳴ピークの周波数シフトから、フォトニックバンド分散曲線を追跡した。測定系の幾何学的対応模式図を図6に示す。また用いた測定光学系を図7に示す。この測定手法は、入射時にプリズムカップリングを用いれば、ライトラインの下側つまり導波モードを観測することが可能であり、実験的な光バンド構造を全ての範囲で完全に決定、調査することができる。
【0123】
図7に示す測定光学系において、用いた各構成要素の具体名は前述した通りである。また、これらの各構成要素はステージ付光学ミラーを用いて光学的に連結した。
【0124】
このように理論・実験両面からバンド構造を決定することにより、超低群速度・位相整合を同時に満たし、和周波・第二高調波発生が著しく増大される動作条件を正確に求め、且つ素子性能を評価することができた。例としてフォトニック結晶周期500nm、正方格子構造を持つ、第1の素子構造に対して、求めたフォトニックバンド構造を図8に示す。結晶周期を変えることにより、図8の縦軸のエネルギーを自由に変更することができた。
【0125】
例で示した構造では、正方格子上の対角方向にビームを入射した場合、フォトニックバンド構造により、第二高調波の位相整合が可能であることが実際に確認された。同時に高調波の光群速度は真空中の光速に対して30分の1以下に低下していることが示され、その電場増強の効果により、高調波発生効率は、位相整合がなされている一様媒質素子と比較して、はるかに増強する可能性があることが確認された。
【実施例4】
【0126】
(和周波混合・第二高調波発生過程の評価)
次に、代表的な非線形光学過程である和周波混合・第二高調波発生過程の評価を行った。
【0127】
本例においては、和周波混合・第二高調波発生測定の際に入射光の波長および入射角度、フォトニック結晶に対するビーム進行角度を走査することによって、フォトニックバンドの位置に共鳴するエネルギーおよび運動量において、出力される和周波または第二高調波の強度が増大することにより、バンドの位置の同定、およびその強度の増大の度合いから、光バンドと関連した増大の定量的調査・確認、および最も効率良く素子が動作する条件の調査、確認を行うことができた。本例では入射光源として、広範囲にわたり波長可変可能(0.3−10μm)な、短パルスOPAを用いた。入射光学系およびステージ等の試料保持部は、先ほどの角度走査偏光反射率測定のものと同様である。試料入射直前に励起光の高調波・和周波成分は干渉フィルターにより取り除いた。和周波・高調波の検知部は、ファイバーによって分光器・CCDに取り込むか、またはバンドパスフィルターを通して光電子増倍管に取り込む形式を用いた。
【0128】
第2の素子構造に対して、同軸2ビーム入射(波長736nm,800nm)において、CCDを用いる方式により得られた、和周波(383nm)・第二高調波(368nmと400nm)の発生を観測した結果、およびフォトニックバンドに共鳴する運動量(入射角度42.5度)において第二高調波(波長368nm)の強度が大きく増大した結果を示したものを図9に示す。本結果により本提案素子構造によって実際に和周波・高調波を通常媒質中に比べ、はるかに高効率に発生できる可能性があることが示された。
【0129】
上述したように、本発明において特定された素子材料・構造を用い、提案した微細加工プロセスを行うことにより、SEM観察等の評価から、非常に高精度な高アスペクト・高垂直性の非線形フォトニック結晶導波路形状第二高調波発生素子を作製できることが示された。
【0130】
また作製した素子に対して行った角度走査偏光反射率測定、およびフォトニックバンド構造計算により得られた光分散関係(フォトニックバンド構造)から、フォトニックバンド構造を正確に決定できること、素子の最適動作設計が簡便且つ正確に行えることが確認された。また同時に、素子を伝播する群速度が真空中の光速度に対して約30分の1以下に低下していることが確認され、その値から、位相整合がなされている一様媒質中と比較して和周波・第二高調波の放射強度が著しく増幅される可能性があることが示された。また、実際に本素子における和周波・第二高調波発生の提案手法による測定により、本素子において和周波・高調波が出力可能であり、また、フォトニックバンドに共鳴した条件においてその強度が増大することが確認された。これらは、本発明により非常に高効率、極微小な和周波・第二高調波発生素子が実現できることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明の素子形態(素子構造1)の一態様を示す模式斜視図である。
【図2】本発明の素子作製方法の一態様を示す模式断面図である。
【図3】本発明の素子構造作製(素子構造1)のノマルスキー光学顕微鏡写真(a)(倍率:200倍)、SEM写真(b)および(c)(ともに倍率:60000倍)である。
【図4】本発明の素子形態(素子構造2)の一態様を示す模式斜視図である。
【図5】本発明の素子構造作製(素子構造2)のSEM写真(倍率:45000倍)である。
【図6】本発明の素子評価方法の実施例を説明するための模式斜視図である。
【図7】本発明の素子評価装置(光バンド構造を求める)の一態様を示す図である。
【図8】本発明の素子評価の方法を説明するためのグラフである(非線形フォトニック結晶導波路のフォトニックバンド構造を示している)。
【図9】本発明の素子評価の方法を説明するためのグラフである。本素子における第二高調波(波長368nm)強度の入射角度依存性を示している。また挿入図は入射角度42.5度の際の本素子から放射された和周波(383nm)および第二高調波(368nmと400nm)を観測したスペクトルを示している)。
【符号の説明】
【0132】
1 基板(Si)
2 金属クラッド層(Ag)
3 非線形フォトニック結晶コア層(DR1/PMMA)
4 円柱孔
5 基本波入力用、高調波出力用導波路
10 Si基板11…金属材料膜(Ag)
12 有機非線形光学材料層(DR1/PMMA)
13 ハードマスク(SOG:主成分SiO
14 フォトレジスト又はEBレジスト
21 多層薄膜形成プロセス過程
22 フォトリソグラフィー、ドライエッチング、EBレジスト塗布プロセス過程
23 位置合わせ、電子ビーム露光、現像プロセス過程
24 CF/Hドライエッチング(ハードマスクエッチング)プロセス過程
25 Ar/Oドライエッチング(有機非線形光学材料エッチング)プロセス過程
26 ハードマスク除去プロセス過程
27 非線形フォトニック結晶導波路
28a 光学顕微鏡写真(非線形フォトニック結晶導波路および参照用導波路)
28b 表面SEM写真(非線形フォトニック結晶構造部)
28c 断面SEM写真(非線形フォトニック結晶構造部)
30 非線形フォトニック結晶構造部領域
31 非パターニング領域(参照用)
32 光入出力用導波路(非線形フォトニック結晶構造部結合)
33 光入出力用導波路(非パターニング領域結合)
41 Si基材
42 金属クラッド層(Ag)
43 非線形材料コア層(DR1/PMMA)
44 酸化物保護・分離層(SiO
45 フォトニック結晶準コア層(PMMA)
46 マスク層
48 入射導波光の模式的な電界強度分布
50 入射光
51 入射光角度
52 面内光進行角度
63 光源(タングステンハロゲンランプ)
64 光ファイバー
65 コリメートレンズ
66 アイリス
67 ミラー
68 NDフィルター
69 広帯域用偏光子
70 広帯域用1/2波長版
71 拡大鏡
72 長焦点アクロマティックレンズ
73 サンプル(非線形フォトニック結晶導波路)部
74 PC制御自動サンプルステージ(θ、2θ、φ回転)
75 アクロマティックコリメートレンズ
76 光ファイバーカップリング
77 分光器
78 CCDディテクター
79 制御用コンピューター
80 角度走査偏光反射率測定から得られた光バンド構造の実験値
81 フォトニックバンド構造計算から得られた光バンド構造の計算値
82 空気中の光のライトコーン
83 第二高調波(波長368nm)のスペクトルピーク
84 和周波(383nm)のスペクトルピーク
85 第二高調波(400nm)のスペクトルピーク
86 本素子における第二高調波(波長368nm)強度の入射角度依存性

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率が異なる少なくとも2種の材料を含み、これらの材料が周期的構造を与えるフォトニック結晶であって;且つ、その少なくとも一部に非線形光学材料を含むことを特徴とするフォトニック結晶。
【請求項2】
前記周期的構造が非線形光学材料を含む請求項1に記載のフォトニック結晶。
【請求項3】
クラッド材料からなる層の上に、前記周期的構造が配置されている請求項1または2に記載のフォトニック結晶。
【請求項4】
前記非線形光学材料が有機非線形光学材料である請求項1〜3のいずれかに記載のフォトニック結晶。
【請求項5】
前記周期構造層を有する層が、コア層として機能する請求項1〜4のいずれかに記載のフォトニック結晶。
【請求項6】
屈折率が異なる少なくとも2種の材料を含み、これらの材料が周期的構造を与え、且つ、その少なくとも一部に非線形光学材料を含むフォトニック結晶の製造方法であって、以下の工程を含む方法:
基板上に、周期的構造を与える加工材料層を形成する工程;および
該加工材料層をパターンニングして、フォトニック結晶パターンを有する周期的構造を形成する工程。
【請求項7】
前記基板と、加工材料層との間に、予めクラッド材料からなる層が形成されている請求項6に記載のフォトニック結晶の製造方法。
【請求項8】
前記周期構造を有する層のパターニングが、ドライエッチング、ナノインプリント技術、陽極酸化技術、化学エッチング技術、電子・集束イオン・フォトンビームリソグラフィー技術、選択成長技術、レーザ加工技術から選ばれる技術によって行われる請求項6または7に記載のフォトニック結晶の製造方法。
【請求項9】
前記基板が、Siからなる基板である請求項6〜8のいずれかに記載のフォトニック結晶の製造方法。
【請求項10】
前記基板が、非線形材料からなる基板である請求項6〜8のいずれかに記載のフォトニック結晶の製造方法。
【請求項11】
前記非線形材料が、無機非線形材料、有機非線形材料、半導体非線形材料、またはこれらの組合せ材料から選ばれる請求項10に記載のフォトニック結晶の製造方法。
【請求項12】
前記無機非線形材料が、無機非線形光学結晶、LiNbOまたはLiTaOから選ばれる請求項11に記載のフォトニック結晶の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−148463(P2007−148463A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71262(P2007−71262)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【分割の表示】特願2003−307719(P2003−307719)の分割
【原出願日】平成15年8月29日(2003.8.29)
【出願人】(899000013)財団法人理工学振興会 (81)
【Fターム(参考)】