説明

フォトマスクの検査方法

【課題】オペレータにかかる負担を軽減し、又フォトマスクをキズつけることなくフォトマスクの欠陥検査、特に断線の有無を検出する検査方法を提供する。
【解決手段】フォトマスクの検査方法であって、該フォトマスクを用いて導電性を有する複製物を作製し、該導電性を有する複製物の電気的抵抗を測定することで該フォトマスクの良否の確認を行うことを特徴とするフォトマスクの検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスク上の欠陥検査、特に断線の有無を検出するためのフォトマスクの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体プリント配線基板やTFT、液晶、有機EL基板といった電子部品回路の製造の際に使用されるフォトマスク上の断線や異物等のパターン欠陥検査をするために、特開2005−265736号公報(特許文献1)、特開2004−37134号公報(特許文献2)、特開平8−137093(特許文献3)号公報のように光学的手法を利用し、フォトマスクのデジタルデータを取得し、画像処理等を行い欠陥の検査を行う欠陥検査装置が提案されている。しかし、この種の装置は、特殊な画像処理を行う必要があり高額で有る場合が多く経済的な負担が大きい。またオペレータの目視による検査も依然として行われているがその作業はオペレータにとって大変負担の大きな作業であり、特に異物等パターンを有するものを探すよりも断線のような画像の欠落を探す方が大変であり非常に煩雑なものであった。また従来よりクロムマスクのように導電性をもったフォトマスクはあるがフォトマスクに直接プローブなどの測定端子を押し当て電気的抵抗を測定するとフォトマスクにキズが入ってしまいフォトマスク自身に欠陥が生じる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−265736号公報
【特許文献2】特開2004−37134号公報
【特許文献3】特開平8−137093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来法が有する欠点を考慮し、オペレータにかかる負担を軽減し、またフォトマスクをキズつけることなくフォトマスクの欠陥検査、特に断線の有無を検出する検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記目的は、以下の発明によって達成された。
フォトマスクの検査方法であって、該フォトマスクを用いて導電性を有する複製物を作製し、該導電性を有する複製物の電気的抵抗を測定することで該フォトマスクの良否の確認を行うことを特徴とするフォトマスクの検査方法。
【発明の効果】
【0006】
上記方法により、オペレータにかかる作業の負担を軽減し、またフォトマスクをキズつけることなくフォトマスクの欠陥検査、特に断線の有無を検出する検査方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例にて使用したフォトマスク
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明における導電性を有する複製物の作製は、感光性を有する導電性材料前駆体を該フォトマスクを用いて露光し、その後現像等の処理をすることによって作製する。そして得られた導電性を有する複製物にプローブ等の測定端子を直接押し当て電気的抵抗を測定することで断線の有無が検出でき、フォトマスクをキズつけることなく、またオペレータが目視で検査する必要もなく非常に簡単に短時間で検査ができる。
【0009】
本発明で用いる導電性材料前駆体としては絶縁性基板に無電解めっき触媒を付与したのちフォトレジスト層を設けたもの、銅や金等により被覆された絶縁性基板にフォトレジスト層を設けたもの、またハロゲン化銀乳剤層を有する導電性材料前駆体などがある。絶縁性基板に無電解めっき触媒を付与したのちフォトレジスト層を設けたものは、使用するフォトマスクに応じたネガ、もしくはポジ型のフォトレジスト層を設けフォトマスクを介して密着露光した後に現像処理を行いその後無電解めっきを行い導電性を有する複製物を得ることができる。また無電解めっき後に電解めっきを行っても良い。銅や金等により被覆された絶縁性基板にフォトレジスト層を設けたものもマスクに応じたフォトレジスト層を設けフォトマスクを介して密着露光した後に、現像処理を行いその後不要な銅や金をエッチング除去することで導電性を有する複製物を得ることができる。絶縁性基板上にハロゲン化銀乳剤層を有する導電性材料前駆体としては(1)銀塩拡散転写法を利用する導電性材料前駆体、(2)直接現像後に定着する導電性材料前駆体、(3)硬化現像法を利用する導電性材料前駆体があり、これらはいずれもフォトマスクを介して密着露光した後にそれぞれの方法に応じた現像処理を行うことで導電性を有する複製物が得られる。上記した導電性材料前駆体の中でも解像度の観点からハロゲン化銀乳剤層を有する導電性材料前駆体が好ましく、ハロゲン化銀乳剤層を有する導電性材料前駆体の中でも(1)の銀塩拡散転写法に従う現像処理で作製するものが高い導電性を有する複製物が得られることから、本発明の検査方法に好適である。以下銀塩拡散転写法に従う現像処理により作製する複製物を作製するために用いる導電性材料前駆体について詳細に説明する。
【0010】
銀塩拡散転写法を利用する導電性材料前駆体に用いられる絶縁性基板としては、プラスチック、ガラス、ゴム、セラミックス等が好ましく用いられる。プラスチックの中でも、可撓性を有する樹脂フィルムは、取扱い性が優れている点で好適に用いられる。本発明の絶縁性基板に使用される樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等からなる厚さ50〜300μmの樹脂フィルムが挙げられる。絶縁性基板としてプラスチックを用いる場合には、絶縁性基板上に塩化ビニリデンやポリウレタン等の易接着層を設けることが好ましく、また絶縁性基板表面にコロナ放電処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を施しても良い。絶縁性基板としてガラスを用いる場合には、コロイダルシリカ、酸化チタン等の金属酸化物層等の易接着層を設け、その後150〜500℃で加熱処理することが好ましい。
【0011】
銀塩拡散転写法を利用する導電性材料前駆体は、絶縁性基板と得られる銀画像との接着性を高める目的で、また物理現像核を絶縁性基板に担持させる目的で、絶縁性基板上、あるいは前記易接着層上にベース層を設けることが好ましい。ベース層は親水性ポリマーを主体に含有する層であり、ここで主体とはベース層の全固形分に対して親水性ポリマーを50質量%以上含有することを意味する。ベース層の親水性ポリマーとしては、タンパク質、セルロース化合物、糖誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体等が例示され、中でもタンパク質が好ましく、タンパク質としては、ゼラチン、アルブミン、カゼインあるいはこれらの混合物が好ましい。またベース層はその他の成分として、界面活性剤、染料、及び架橋剤等を含有しても良い。ベース層におけるタンパク質の含有量は1平方メートル当たり5〜500mgが好ましく、特に10〜300mgが好ましい。
【0012】
銀塩拡散転写法を利用する導電性材料前駆体は、絶縁性基板上に、絶縁性基板から近い側から物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層を少なくともこの順に有する。物理現像核としては、重金属あるいはその硫化物からなる微粒子(粒子サイズは1〜数十nm程度)が用いられる。例えば、金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物等が挙げられるが、銀コロイド及び硫化パラジウム核が好ましい。物理現像核層の物理現像核の含有量は、固形分で1平方メートル当たり0.1〜10mg程度が適当である。
【0013】
また物理現像核層は、バインダーとして親水性ポリマーを含有することができる。前述のように絶縁性基板上、あるいは前記易接着層上にベース層を設けた場合、物理現像核層はバインダーとして親水性ポリマーを含有しなくても良いが、ベース層を設けなかった場合、物理現像核層はバインダーとして親水性ポリマーを含有することが望ましい。親水性ポリマーの添加量は、物理現像核に対して10〜500質量%程度が好ましい。親水性ポリマーとしては、ゼラチン、アラビアゴム、セルロース、アルブミン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、各種デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミドとビニルイミダゾールの共重合体等を用いることができる。好ましい親水性ポリマーとしては、ゼラチン、アルブミン、カゼイン等のタンパク質である。
【0014】
物理現像核を含有する塗液は架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤としては例えばクロム明ばんのような無機化合物、ホルマリン、グリオキザール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンの様なアルデヒド等価体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩や、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−トリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンや1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、高分子硬膜剤としてのジアルデヒド澱粉等の種々タンパク質の架橋剤(硬膜剤)の一種もしくは二種以上を含有することが好ましい。これらの架橋剤の中でも、好ましくは、グリオキザール、グルタルアルデヒド、3−メチルグルタルアルデヒド、サクシンアルデヒド、アジポアルデヒド等のジアルデヒド類であり、より好ましい架橋剤は、グルタルアルデヒドである。架橋剤は、ベース層及び/または物理現像核層に含まれるタンパク質1gに対して0.0001〜1モルを物理現像核を含有する塗液に含有させるのが好ましく、特に0.001〜0.1モルが好ましい。
【0015】
絶縁性基板と銀画像の接着性を高めるという観点から物理現像核は絶縁性基板上に設けられた架橋された層に担持されることが極めて好ましい。従って導電性材料前駆体がベース層を有さない場合、物理現像核を含有する塗液が上記親水性ポリマーと前記架橋剤を共に含有することが好ましい。一方、導電性材料前駆体がベース層を有する場合、前記架橋剤はベース層を塗設するための塗液が含有しても良く、あるいは物理現像核を含有する塗液を塗布する前に架橋剤のみを単独で塗布しても良いが、最も好ましい様態は、物理現像核を含有する塗液が架橋剤を含有しこれをベース層上に塗布することでベース層内部に架橋剤を拡散させ、架橋されたベース層に物理現像核が担持される様態である。物理現像核を含有する塗液を塗布する方式としては、例えばディップコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティングなどの各種塗布方式がある。
【0016】
銀塩拡散転写法を利用する導電性材料前駆体は必要に応じて、物理現像核を含有する塗液が塗布された物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層の間に中間層を設けても良い。該導電性材料前駆体は、像様に露光し、これに可溶性銀錯塩形成剤及び還元剤をアルカリ処理液中で作用させた後、温水等によって水洗することで導電性を有する所望のパターンの銀画像を有する複製物を得るが、前述の中間層は、不要となった物理現像核上の層の除去性を促進するのに好適である。中間層は、親水性ポリマーを主体に含有する層である。ここでいう親水性ポリマーとは、現像液(アルカリ処理液)で容易に膨潤し、下層の物理現像核まで現像液を容易に浸透させるものであれば任意のものが選択できる。また主体とは、中間層の全固形分に対して親水性ポリマーを50質量%以上含有することを意味する。親水性ポリマーとしてはゼラチン、アルブミン、カゼイン、ポリビニルアルコール等を用いることができる。特に好ましい親水性ポリマーは、ゼラチン、アルブミン、カゼイン等のタンパク質である。本発明の効果を十分に得るためには、この中間層の親水性ポリマーの固形分塗布量としては、ハロゲン化銀乳剤層の総バインダー量に対して3〜30質量%の範囲が好ましく、特に10〜20質量%が好ましい。
【0017】
また中間層には、必要に応じてResearch Disclosure Item 17643(1978年12月)及び18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような公知の写真用添加剤を含有させることができる。
【0018】
銀塩拡散転写法を利用する導電性材料前駆体においては光センサーとしてハロゲン化銀乳剤層が設けられる。ハロゲン化銀に関する銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム等で用いられる技術は、そのまま用いることもできる。
【0019】
ハロゲン化銀乳剤層に用いられるハロゲン化銀乳剤粒子の形成には、順混合、逆混合、同時混合等の、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)及び18716(1979年11月)、308119(1989年12月)で記載されているような公知の手法を用いることができる。中でも同時混合法の1種で、粒子形成される液相中のpAgを一定に保ついわゆるコントロールドダブルジェット法を用いることが、粒径のそろったハロゲン化銀乳剤粒子が得られる点において好ましい。本発明においては、好ましいハロゲン化銀乳剤粒子の平均粒径は0.25μm以下、特に好ましくは0.05〜0.2μmである。本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤のハロゲン化物組成には好ましい範囲が存在し、塩化物を80モル%以上含有するのが好ましい。
【0020】
ハロゲン化銀乳剤の製造においては、必要に応じてハロゲン化銀粒子の形成あるいは物理熟成の過程において、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩、あるいはロジウム塩もしくはその錯塩、イリジウム塩もしくはその錯塩など、VIII族金属元素の塩もしくはその錯塩を共存させても良い。また、種々の化学増感剤によって増感することができ、イオウ増感法、セレン増感法、貴金属増感法など当業界で一般的な方法を、単独、あるいは組み合わせて用いることができる。また本発明においてハロゲン化銀乳剤は必要に応じて色素増感することもできる。
【0021】
ハロゲン化銀乳剤層のバインダーは親水性ポリマーが好ましく、親水性ポリマーとしては、タンパク質、セルロース化合物、糖誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体等があり、中でもタンパク質が好ましい。タンパク質としては、ゼラチン、アルブミン、カゼインあるいはこれらの混合物が好ましい。また、親水性ポリマーをゼラチンとした場合、ハロゲン化銀乳剤層に含有するハロゲン化銀量とゼラチン量の比率は、ハロゲン化銀(銀換算)とゼラチンとの質量比(銀/ゼラチン)が1.2以上、より好ましくは1.5以上である。
【0022】
ハロゲン化銀乳剤層には、更に種々の目的のために、公知の写真用添加剤を用いることができる。これらは、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)及び18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載、あるいは引用された文献に記載されている。
【0023】
また絶縁性基板から最も遠い最外層として必要に応じて保護層を設けても良い。保護層は前述の中間層と同様、親水性ポリマーを主体に含有する層である。親水性ポリマーは、現像液で容易に膨潤し、下層のハロゲン化銀乳剤層、物理現像核まで現像液を容易に浸透させるものであれば任意のものが選択でき、具体的には、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、ポリビニルアルコール等を用いることができる。特に好ましい親水性ポリマーは、ゼラチン、アルブミン、カゼイン等のタンパク質である。保護層の親水性ポリマーの固形分塗布量は、前述の中間層の親水性ポリマーと合わせた量が、ハロゲン化銀乳剤層の総バインダー量に対して20〜100質量%の範囲が好ましく、特に30〜80質量%が好ましい。
【0024】
また保護層には、必要に応じてResearch Disclosure Item 17643(1978年12月)及び18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような公知の写真用添加剤を含有させることができる。
【0025】
銀塩拡散転写法を利用する導電性材料前駆体は、必要に応じて絶縁性基板のハロゲン化銀乳剤層とは反対面に裏塗り層を設けることができる。
【0026】
また、該導電性材料前駆体にはハロゲン化銀乳剤層の感光波長域に吸収極大を有する非増感性染料または顔料を、画質向上のためのハレーション防止剤、あるいはイラジエーション防止剤として用いることは好ましい。ハレーション防止剤としてはハロゲン化銀乳剤層と絶縁性基板の間の中間層やあるいは裏塗り層に含有させることができる。イラジエーション防止剤としては、ハロゲン化銀乳剤層に含有させるのが良い。添加量は、目的の効果が得られるのであれば広範囲に変化しうるが、例えばハレーション防止剤として裏塗り層に含有させる場合、1平方メートル当たり約20mg〜約1gの範囲が望ましい。
【0027】
上記導電性材料前駆体を用い、導電性を有するフォトマスクの複製物を作製するための方法は、例えば水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介し、フォトマスクと導電性材料前駆体を密着露光し、露光後、該導電性材料前駆体を現像すなわちアルカリ処理液で銀錯塩拡散転写現像し、温水で水洗し、ハロゲン化銀乳剤層等の物理現像核層の上に設けられた層を除去する。これにより本発明の検査法に用いる複製物が得られる。このアルカリ処理液とは後述する銀錯塩拡散転写現像を行う際に用いる液である。物理現像核の上に設けられたハロゲン化銀乳剤層等の除去方法は、水洗除去あるいは剥離紙等に転写剥離する方法がある。水洗除去は、スクラビングローラ等を用いて温水シャワーを噴射しながら除去する方法や温水をノズル等でジェット噴射しながら水の勢いで除去する方法がある。また、剥離紙等で転写剥離する方法は、ハロゲン化銀乳剤層上の余分なアルカリ処理液(銀錯塩拡散転写用現像液)を予めローラ等で絞り取っておき、ハロゲン化銀乳剤層等と剥離紙を密着させてハロゲン化銀乳剤層等をプラスチック樹脂フィルムから剥離紙に転写させて剥離する方法である。剥離紙としては吸水性のある紙や不織布、あるいは紙の上にシリカのような微粒子顔料とポリビニルアルコールのようなバインダーとで吸水性の空隙層を設けたものが用いられる。
【0028】
次に、銀錯塩拡散転写現像のために必要な可溶性銀錯塩形成剤、還元剤、及びアルカリ処理液について説明する。可溶性銀錯塩形成剤は、ハロゲン化銀を溶解し可溶性の銀錯塩を形成させる化合物であり、還元剤はこの可溶性銀錯塩を還元して物理現像核上に金属銀を析出させるための化合物であり、これらの作用はアルカリ処理液中で行われる。
【0029】
可溶性銀錯塩形成剤としては、チオ硫酸アンモニウム及びチオ硫酸ナトリウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、オキサドリドン類、2−メルカプト安息香酸及びその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、米国特許第5,200,294号明細書に記載のようなチオエーテル類、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に、T.H.ジェームス編のザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス4版の474〜475項(1977年)に記載されている化合物が挙げられる。
【0030】
次に、還元剤について説明する。還元剤は写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができる。例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロルハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、アスコルビン酸及びその誘導体、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0031】
上記した可溶性銀錯塩形成剤及び還元剤は、物理現像核層やベース層に含有させても良いし、ハロゲン化銀乳剤層中に含有させても良いし、またはアルカリ処理液中に含有させても良く、更に複数の位置に含有させることができる。特に上記した可溶性銀錯塩形成剤及び還元剤は、アルカリ処理液中に含有させるのが好ましい。
【0032】
アルカリ処理液中への可溶性銀錯塩形成剤の含有量は、現像液1リットル当たり、0.1〜5モルの範囲で用いるのが適当であり、還元剤は現像液1リットル当たり0.05〜1モルの範囲で用いるのが適当である。
【0033】
アルカリ処理液のpHは10以上が好ましく、更に11〜14が好ましい。本発明で得られた導電性材料前駆体の銀錯塩拡散転写現像を行うためのアルカリ処理液の適用は、浸漬方式であっても塗布方式であっても良い。浸漬方式は、例えば、タンクに大量に貯留されたアルカリ処理液中に、物理現像核及びハロゲン化銀乳剤層が設けられた導電性材料前駆体を浸漬しながら搬送するものであり、塗布方式は、例えばハロゲン化銀乳剤層上にアルカリ処理液を1平方メートル当たり40〜120ml程度塗布するものである。
【0034】
本発明において、アルカリ処理液の好ましい処理条件は、アルカリ処理液の温度を18〜22℃とすることが適当である。アルカリ処理液の適用時間は、20秒〜3分程度が適当である。この態様は、特に浸漬方式の場合に好適である。
【0035】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、無論この記述により本発明が制限されるものではない。
【実施例】
【0036】
本発明における導電性を有するフォトマスクの複製物を得るために、銀塩拡散転写法を利用する導電性材料前駆体を以下の様に作製した。絶縁性基板として、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、ゼラチン塗布量が0.15g/mとなるようにベース層を絶縁性基板の両面に塗設した。このベース層の一方の面に下記組成の裏塗り層を塗布、乾燥した。
【0037】
<裏塗り層組成>
ゼラチン 2g/m
不定形シリカマット剤(平均粒径5μm) 20mg/m
界面活性剤(S−1) 400mg/m
染料1 200mg/m
【0038】
【化1】

【0039】
【化2】

【0040】
次に裏塗り層を有する側とは反対側のベース層表面に、下記のようにして作製した硫化パラジウムからなる物理現像核を含有する塗液を硫化パラジウムが固形分で0.4mg/mになるように塗布し、乾燥した。
【0041】
<硫化パラジウムゾルの調製>
A液 塩化パラジウム 5g
塩酸 40ml
蒸留水 1000ml
B液 硫化ソーダ 8.6g
蒸留水 1000ml
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通し硫化パラジウムゾルを得た。
【0042】
<物理現像核を含有する塗液の調製>
前記硫化パラジウムゾル 50ml
4質量%のグルタルアルデヒド溶液 45ml
界面活性剤(S−1) 1g
水を加えて全量を2000mlとする。
【0043】
次に上記物理現像核を含有する塗液を塗布、乾燥した物理現像核層上に下記の中間層と後述のハロゲン化銀乳剤層と保護層をスライドビードコーターを用いて同時重層塗布し、銀塩拡散転写法を利用する導電性材料前駆体を得た。このときハロゲン化銀乳剤層は銀量で2.54g/mになるように塗布した。
【0044】
<中間層組成>
ゼラチン 0.25g/m
界面活性剤(S−1) 3mg/m
【0045】
<ハロゲン化銀乳剤の作製>
ハロゲン化銀乳剤は写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法でpAgを7.5に保ち作製した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀90モル%と臭化銀10モル%であり、平均粒径が0.15μmになるように調製した。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸を用い金イオウ増感を施した。続いて銀換算で2.54gのハロゲン化銀乳剤に対し、ゼラチン1.6g/m、また1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールを3.0mg/m、界面活性剤(S−1)を20mg/mを添加した。
【0046】
<保護層組成>
ゼラチン 1g/m
不定形シリカマット剤(平均粒径3.5μm) 15mg/m
界面活性剤(S−1) 3mg/m
【0047】
このようにして得た導電性材料前駆体をA4サイズに裁断し、水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介し、図1に示すパターンを有するフォトマスクを密着させて露光した。フォトマスクの回路部1である細線の太さは50μmで長さ20cm、測定部2は1cm四方の正方形である。フォトマスクは予めオペレータが目視による検査を行い断線がないフォトマスクを10枚用意し、そのうち5枚には回路部に故意にカッターナイフを用いてキズをつけ断線箇所を設けた。それぞれのフォトマスクに対して露光を行った。
【0048】
上記露光した10枚の試料を下記組成のアルカリ処理液(銀錯塩拡散転写用現像液)で20℃で60秒の浸漬処理を行ったのち40℃温水で水洗し乾燥を行った。
【0049】
<アルカリ処理液>
水酸化ナトリウム 20g
ハイドロキノン 20g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 2g
亜硫酸ナトリウム 30g
N−メチルエタノールアミン 10g
全量を水で1000ml
pH=13に調整する。
【0050】
上記のようにして得られた導電性を有する前述のフォトマスクと同様のパターンを有する複製物の10枚を試料No.1〜10とした。その後MASTECH社製温度計付マルチメーターMAS838を用いて図1の測定部2の両方に端子を押し当てそれぞれ電気的抵抗を測定し、その結果とオペレータが故意に断線を設けたフォトマスクとの関係を表1にまとめた。MASTECH社製温度計付マルチメーターMAS838の電気的抵抗の測定結果が2MΩ以下のものを○とし2MΩより高いもの×とした。
【0051】
【表1】

【0052】
表1から明らかなように、故意に断線を設けたフォトマスクを使用した導電性を有する複製物のMASTECH社製温度計付マルチメーターMAS838での測定結果は、すべて2MΩ以上となり×となった。また直接フォトマスクにMASTECH社製温度計付マルチメーターMAS838の測定端子を押し当てて測定をしなかったのでキズつけることもなく、フォトマスクの検査を行うことができた。
【0053】
厚さ20μm銅箔を片面に設けた厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの絶縁性基板の銅箔を設けた面にポジ型フォトレジスト層を有する導電性材料前駆体を作製し、A4サイズに裁断したものを図1のフォトマスクで回路部の線幅が50μmと25μmのものを用意し、50μmと25μmのそれぞれの回路部に故意にカッターナイフで断線箇所を設けた。このフォトマスクを用いて先の実施例と同様に露光後、苛性ソーダを含有するpH12のアルカリ溶液で未硬化のフォトレジスト層を取り除いたのち不要な銅を塩化第二鉄溶液でエッチング除去し、水洗、乾燥を行い導電性を有する複製物(試料No.12)を作製した。また先の実施例で作製した銀塩拡散転写法を利用する導電性材料前駆体も同様のフォトマスクを用いて先の実施例と同様に露光、現像し、導電性を有する複製物(試料No.11)を作製した。その後MASTECH社製温度計付マルチメーターMAS838により電気的抵抗を測定し表2にまとめた。測定結果が2MΩ以下のものを○とし2MΩより高いもの×とした。
【0054】
【表2】

【0055】
表2から明らかなように銀塩拡散転写法を利用する導電性材料前駆体の試料No.11は25及び50μmの線幅とも断線を示す2MΩ以上となり×を示した。よって、銀塩拡散転写法を利用する導電性材料前駆体から作製した回路は解像度の点において優れていることがわかった。
【符号の説明】
【0056】
1 回路部
2 測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトマスクの検査方法であって、該フォトマスクを用いて導電性を有する複製物を作製し該導電性を有する複製物の電気的抵抗を測定することで該フォトマスクの良否の確認を行うことを特徴とするフォトマスクの検査方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−211162(P2010−211162A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60131(P2009−60131)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】