説明

フォトマスクブランクの梱包方法、フォトマスクブランクの保管方法、フォトマスクブランクの輸送方法、並びにフォトマスクの製造方法

【課題】収納したフォトマスクブランクのガス汚染によるレジスト膜の感度変化と粉塵による汚染の両方を抑制することができるとともに、保管、輸送が容易なフォトマスクブランクの梱包方法を提供する。
【解決手段】フォトマスクブランクの梱包方法であって、少なくとも、フォトマスクブランク上にレジスト膜材料を塗布してレジスト膜を成膜するレジスト膜成膜工程と、該フォトマスクブランクをフォトマスクブランク収納容器に収納するフォトマスクブランク収納工程と、該フォトマスクブランク収納容器を、有機ガス吸着剤、塩基性ガス吸着剤、酸性ガス吸着剤から選ばれるいずれか1つ以上のガス吸着剤と共に、密封体で包装して、前記ガス吸着剤を、前記フォトマスクブランク収納容器の外側で且つ前記密封体の内側に配置するフォトマスクブランク収納容器包装工程とにより、フォトマスクブランクを梱包することを特徴とするフォトマスクブランクの梱包方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路、CCD(電荷結合素子)、LCD(液晶表示素子)用カラーフィルター、及び磁気ヘッド等の微細加工に用いられるフォトマスクを製造するためのフォトマスクブランクを梱包する方法に関する。また、本発明は、フォトマスクブランクの輸送方法、保管方法、さらには、フォトマスクの製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体加工、特に大規模集積回路の高集積化により、回路パターンの微細化がますます必要になってきている。その結果、回路を構成する配線パターンの細線化や、セルを構成する層間の配線のためのコンタクトホールパターンの微細化を達成するための技術の要求はますます高まってきている。また、このような配線パターンやコンタクトホールパターンを形成する光リソグラフィーでは、パターンが書き込まれたフォトマスクを用いるが、このフォトマスクの製造においても、配線パターンやコンタクトホールパターンの微細化に伴い、より微細且つ正確なパターンをフォトマスクに書き込める技術が求められている。
【0003】
より精度の高いフォトマスクパターンをフォトマスク基板上に形成するためには、まず、フォトマスクブランク上に高精度のレジストパターンを形成することが必要になる。ここで、実際に半導体基板を加工する際の光リソグラフィーは縮小投影を行うため、フォトマスクパターンは実際に必要なパターンサイズの4倍程度の大きさである。しかし、それだけ精度が緩くなるというわけではなく、原版であるフォトマスクには露光後のパターン精度に求められるものよりも高い精度が求められる。更に、すでに現在行われているリソグラフィーでは、描画しようとしている回路パターンは使用する光の波長をかなり下回るサイズになっている。そのため、回路の形状をそのまま4倍にしたフォトマスクパターンを使用すると、実際の光リソグラフィーを行う際に生じる光の干渉等の影響で、フォトマスクパターン通りの形状はレジスト膜に転写されない。そこでこれらの影響を減じるため、フォトマスクパターンを実際の回路パターンより複雑な形状(いわゆるOPC)に加工する技術等が用いられ、フォトマスクブランク加工の際に必要なレジストパターンにもより微細かつ高精度なリソグラフィー技術が求められてきている。
【0004】
このため、使用されるレジスト膜も、高感度、高解像度を与える化学増幅型が使用されるようになってきている。しかし、化学増幅型レジスト膜は酸を触媒としてレジスト膜の溶解性を変化させるため、微量の塩基性物質の吸着によってパターン形状が大きく変化してしまう。また、酸性物質の混入によっても感度変化を起こす場合がある。このため、すでに塩基性物質等の影響を受けにくい化学増幅型も多数提案されているが、より微細なレジストパターンを解像しようとした場合、塩基性物質等の影響を全く受けないという化学増幅型レジスト膜は実現されていない。このように、化学増幅型レジスト膜は、環境による汚染に弱く、容易に感度が変化するため、保管、輸送が困難であるという問題がある。
【0005】
フォトマスクのマスクパターン形成は、フォトマスクブランク上に成膜されたレジスト膜をエッチングマスクとして遮光性膜をエッチングし、遮光性膜を遮光パターンに加工するが、レジスト膜の成膜は、リソグラフィーの直前に行われる場合と、フォトマスクブランクへのレジスト膜材料の塗布、レジスト膜の成膜を行った後に、梱包され、一旦保管あるいは輸送される場合がある。
後者の場合、従来よりフォトマスクブランク上に微細な粉塵が吸着されることを如何に避けるかという方策が種々採られてきた。
【0006】
一方、ガス等による汚染を防止するものとしては、化学増幅型レジスト膜材料を塗布した基板ではないが、レチクル等の基板に対する汚染を防ぐ保管容器として、洗浄後の基板を減圧乾燥し、そのまま保管することのできる容器が提案されている(特許文献1参照)。しかし、容器に付着していた塩基性物質が汚染の原因となることも有り、化学増幅型レジスト膜の解像性変化を抑制するという目的では、この保管容器は必ずしも目的に添うものではない。
【0007】
また、フォトマスクブランクは、梱包の際、一般に、フォトマスクブランク収納容器に収納され、さらに密封体で包装される。
密封体として包装袋等を用いる場合、包装後、包装袋等を加熱圧着して密封することがあるが、この加熱圧着の際、包装袋の中に含まれる可塑剤等の化学成分がガス化して、フォトマスクブランクに塗布したレジストの感度変動を引き起こすことがある。また、一般的に、包装袋の軟らかい樹脂はレジストにとって好ましくない化学成分の発生量が多い事が知られている。
しかしながら、上記従来の保管容器によってはこれらの原因によるレジスト感度変動を十分に抑制することはできない。
【0008】
また、ウエーハ等の基板を収納する基板収納容器に関する技術として、ケミカルフィルターを通して、容器中の気体を循環させるという方法が提案されている(特許文献2参照)。この基板収納容器はモーターを用いて容器内の気体を循環させ、ケミカルフィルターを通して異物ガスを除去することができるものであり、塩基性ガス等の除去に有効であるとされている。しかし、この容器を用いた場合、循環用装置のバッテリーを含め装置が大型化してしまい、輸送上のみならず保管上も不利である。しかも、この容器を長期間使用した場合には、モーターの振動の影響が避けられず、容器とフォトマスクブランクとがこすれること等によって発塵の問題が生じる可能性が高い。
このように、従来、レジスト膜、特に、化学増幅型レジスト膜を成膜したフォトマスクブランクを梱包後、保管、輸送しようとする場合に、ガスによる汚染と粉塵による汚染の両方を抑制することのできるフォトマスクブランクの梱包方法が望まれていた。
【0009】
【特許文献1】特開平4−22124号公報
【特許文献2】特開2000−174109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、収納したフォトマスクブランクのガス汚染によるレジスト膜の感度変化と粉塵による汚染の両方を抑制することができるとともに、保管、輸送が容易なフォトマスクブランクの梱包方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、フォトマスクブランクの梱包方法であって、少なくとも、フォトマスクブランク上にレジスト膜材料を塗布してレジスト膜を成膜するレジスト膜成膜工程と、該フォトマスクブランクをフォトマスクブランク収納容器に収納するフォトマスクブランク収納工程と、該フォトマスクブランク収納容器を、有機ガス吸着剤、塩基性ガス吸着剤、酸性ガス吸着剤から選ばれるいずれか1つ以上のガス吸着剤と共に、密封体で包装して、前記ガス吸着剤を、前記フォトマスクブランク収納容器の外側で且つ前記密封体の内側に配置するフォトマスクブランク収納容器包装工程とにより、フォトマスクブランクを梱包することを特徴とするフォトマスクブランクの梱包方法を提供する(請求項1)。
【0012】
前述のようにフォトマスクブランク収納容器内の雰囲気中の有機ガス、塩基性ガス、酸性ガス等は、レジスト膜の感度を変化させる。そのため、レジスト膜を成膜したフォトマスクブランクを収納する場合、収納容器雰囲気中の有機ガス、塩基性ガス、酸性ガス等のレジスト感度変動の原因となるガス濃度が極力低いものである必要がある。ここで、有機ガス、塩基性ガス、酸性ガス等が、収納容器雰囲気中に紛れ込む大きな原因として、フォトマスクブランク収納容器から発生するガスや、収納容器を包装する密封体から発生するガスが挙げられる。すなわち、フォトマスクブランク収納容器から発生したガスや、密封体を加熱圧着する際などに、密封体から発生したガスが、収納容器雰囲気中に紛れ込んでいたのである。そこで、本発明のフォトマスクブランクの梱包方法では、有機ガス吸着剤、塩基性ガス吸着剤、酸性ガス吸着剤から選ばれるいずれか1つ以上のガス吸着剤を、フォトマスクブランク収納容器の外側で且つ密封体の内側に配置することで、密封体から発生する有機ガス、塩基性ガス、酸性ガスを、これら吸着剤に吸着させ、収納容器内の雰囲気中に侵入するのを防ぎ、また、フォトマスクブランク収納容器から発生するガスも、このガス吸着剤に吸着させ、収納容器雰囲気中の塩基性ガス等のレジスト感度変動の原因となるガス濃度を低減させている。したがって、本発明のフォトマスクブランクの梱包方法により、フォトマスクブランクを梱包すれば、保管、輸送中に、有機ガス、塩基性ガス、酸性ガス等でフォトマスクブランクが汚染される恐れが少なく、保管、輸送中に、レジスト膜の感度が変化するのを防ぐことができる。
また、ガス吸着剤を、フォトマスクブランク収納容器の外側に配置するので、収納容器内での粉塵の発生を防止することができ、容器内の雰囲気を清浄に保つことができる。このため、収納したフォトマスクブランクの粉塵による汚染を抑制することができる。
【0013】
また、従来の梱包方法で用いる収納容器には、収納容器内の雰囲気中の有機ガス、塩基性ガス、酸性ガス等を除去するのに、モーターを用いて、雰囲気を循環させるものもあるが、モーター自体やその振動などが原因で、微細な粉塵発生の問題が避けられない。しかし、本発明の梱包方法で用いるフォトマスクブランク収納容器では、モーターを使用しないものを用いることができるので、振動せず、これに起因して、輸送、保管中に微細な粉塵が発生する恐れも少ない。また、モーター設置のためのスペースを容器内に設ける必要もなく、収納容器を大幅に小型化することもでき、輸送、保管に有利である。
【0014】
そして、本発明のフォトマスクブランクの梱包方法では、前記フォトマスクブランクに成膜するレジスト膜を、化学増幅型レジスト膜とすることができる(請求項2)。
【0015】
化学増幅型レジスト膜は、高感度、高解像度を実現できる反面、たとえ微量であっても塩基性物質等の吸着によって容易に感度が変化するので、レジスト膜を成膜した後のフォトマスクブランクを梱包し、保管、輸送するのが極めて困難であるという問題がある。しかし、本発明のフォトマスクブランクの梱包方法によれば、フォトマスクブランク収納容器内の雰囲気中の塩基性物質等の濃度を極めて低くできるので、感度変化を生じやすい化学増幅型レジスト膜を成膜したフォトマスクブランクを梱包し、保管、輸送するのに好適である。
【0016】
また、本発明のフォトマスクブランクの梱包方法では、前記密封体で、1又は2以上のフォトマスクブランク収納容器を包装することができる(請求項3)。
【0017】
このように、本発明では、密封体で、フォトマスクブランク収納容器を個別に包装するようにしても良いし、あるいは、複数個のフォトマスクブランク収納容器をまとめて包装するようにしても良い。
【0018】
また、本発明のフォトマスクブランクの梱包方法では、前記密封体を、軟質樹脂製包装袋とするのが好ましい(請求項4)。
【0019】
軟質樹脂製の包装袋は、軽量で、また軟質であることから発塵の恐れが少ない。したがって、密封体として軟質樹脂製包装袋を用いれば、保管、輸送に有利であるし、また、発塵による汚染をさらに低減することができる。
【0020】
また、本発明のフォトマスクブランクの梱包方法では、前記フォトマスクブランク収納容器を包装した密封体を、さらに、アルミ箔に樹脂コートした包装袋で包装するのが好ましい(請求項5)。
【0021】
このように、密封体を、さらに、アルミ箔に樹脂コートした包装袋で包装することにより、中身について光線の影響を長時間受けないようにすることができるし、帯電を避けることもできる。
【0022】
また、本発明のフォトマスクブランクの梱包方法では、前記ガス吸着剤を、不織布で包んだガス吸着剤とするのが好ましい(請求項6)。
【0023】
ここで、ガス吸着剤からも発塵の恐れがある。そこで、ガス吸着剤を、不織布で包んだものとすれば、これらのガス吸着剤からの発塵による汚染を十分に防止することができる。
【0024】
また、本発明のフォトマスクブランクの梱包方法では、前記ガス吸着剤を、ULPAフィルターで包んだガス吸着剤とするのが好ましい(請求項7)。
【0025】
このようにガス吸着剤を、ULPAフィルターで包んだものとすれば、発塵による汚染をより確実に防止することができる。
【0026】
また、本発明のフォトマスクブランクの梱包方法では、前記レジスト膜成膜工程から前記フォトマスクブランク収納容器包装工程までを、塩基性ガス濃度がアンモニア換算で5ppb以下の雰囲気で行うのが好ましい(請求項8)。
【0027】
このように、レジスト膜成膜工程からフォトマスクブランク収納容器包装工程までを、塩基性ガス濃度がアンモニア換算で5ppb以下の雰囲気で行うことで、収納容器に収納したフォトマスクブランクのレジスト膜の感度変化をより確実に抑制することができる。
【0028】
また、本発明は、前記本発明の梱包方法で梱包したフォトマスクブランクを保管することを特徴とするフォトマスクブランクの保管方法を提供する(請求項9)。さらに、本発明は、前記本発明の梱包方法で梱包したフォトマスクブランクを輸送することを特徴とするフォトマスクブランクの輸送方法を提供する(請求項10)。
【0029】
このように、本発明の梱包方法で梱包したフォトマスクブランクを保管、輸送すれば、保管、輸送中のレジスト膜のガス汚染及び粉塵汚染の両方を抑制することができる。また、梱包後のものを比較的にコンパクトに構成できるので、保管、輸送に有利である。
【0030】
また、本発明は、前記本発明の保管方法で保管したフォトマスクブランクを使用して、これにリソグラフィーによりパターンを形成し、フォトマスクを製造することを特徴とするフォトマスクの製造方法を提供する(請求項11)。さらに、本発明は、本発明の方法で輸送したフォトマスクブランクを使用して、これにリソグラフィーによりパターンを形成し、フォトマスクを製造することを特徴とするフォトマスクの製造方法を提供する(請求項12)。
【0031】
本発明の保管又は輸送方法で、保管あるいは輸送したフォトマスクブランクは、感度変化及び粉塵汚染が非常に少ない。そのため、このレジスト膜を成膜したフォトマスクブランクを使用して、リソグラフィーによりパターンを形成すれば、微細かつ高精度でレジストパターンを形成でき、従って、高精度なマスクパターンが形成された高品質なフォトマスクを製造することができる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明のフォトマスクブランクの梱包方法によれば、有機ガス吸着剤、塩基性ガス吸着剤、酸性ガス吸着剤から選ばれるいずれか1つ以上のガス吸着剤を、フォトマスクブランク収納容器の外側で且つ密封体の内側に配置するので、フォトマスクブランク収納容器や密封体から発生する塩基性ガスを始めとするレジスト感度変動の原因となるガスが、そのガス吸着剤に吸着され、除去される。そのため、収納容器内の雰囲気中のレジスト感度変動の原因となるガス濃度が極めて低い。したがって、本発明の方法により、レジスト膜、特には化学増幅型のレジスト膜を成膜したフォトマスクブランクを梱包すれば、レジスト膜成膜後、長時間、保管、輸送した場合でも、有機ガス、塩基性ガス、酸性ガス等のレジスト感度変動の原因となるガスで汚染される恐れが少ない。そのため、保管、輸送中に、レジスト膜の感度が変化するのを十分に防ぐことができる。したがって、フォトマスクブランクを加工する際のリソグラフィー工程において、安定した感度および解像度を得ることができる。
また、ガス吸着剤を、フォトマスクブランク収納容器の外側に配置するので、収納容器内で発生する粉塵が少なく、収納容器内の雰囲気を、清浄に保つことができる。このため、収納したフォトマスクブランクの粉塵による汚染を抑制することもできる。
しかも、本発明のフォトマスクブランク収納容器では、モーター等を使用する必要がないので、振動せず、これに起因して、輸送、保管中に微細な粉塵が発生する恐れも少ない。また、モーター設置のためのスペースを容器内に設ける必要もなく、収納容器を大幅に小型化することもでき、輸送、保管に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
レジストを塗布したフォトマスクブランクを梱包し、保管、輸送する場合、保管、輸送中に、フォトマスクブランクのガス汚染と粉塵汚染の両方を抑制できることが望まれる。
ここで、包装袋等の密封体を密封するのに加熱圧着する場合、密封体に含まれる可塑材等の化学成分がガス化して、フォトマスクブランクに塗布されたレジストの感度変動を引き起こす危険がある。また、一般的に包装袋等の軟らかい樹脂は有害な化学成分の発生量が多いことが知られている。さらに、フォトマスクブランク収納容器から発生するガスが問題となることもある。
【0034】
また、フォトマスクブランクは、容器内でフォトマスクブランクが動かないように固定される。すなわち、フォトマスクブランクはシリコンウエーハなどに比べ重量が重いことから、輸送の際、振動等により容器内でフォトマスクブランクと容器の間でのこすれあいによる発塵等を防止するため、容器内でフォトマスクブランクが動かないように固定される。この時、モーターを使用して容器内の気体を循環させる従来の容器を用いると、モーター自体から発塵する恐れや、あるいはモーターの振動によるこすれ、容器内での気体の攪拌によりむしろ微細な粉塵が発生する恐れがある。
しかも、循環用装置のモーター、バッテリー等を含め、装置が大型化してしまい、輸送上不利であるばかりでなく、保管においても不利である。
【0035】
そこで、本発明者らは検討を重ねた結果、有機ガス吸着剤、塩基性ガス吸着剤、酸性ガス吸着剤から選ばれるいずれか1つ以上のガス吸着剤を、フォトマスクブランク収納容器の外側で且つ密封体の内側に配置することで、密封体やフォトマスクブランク収納容器等から発生した有機ガス、塩基性ガス、酸性ガス等が、これらのガス吸着剤に吸着され、収納容器内の雰囲気中に紛れ込む有機ガス、塩基性ガス、酸性ガス等を低減できること、また、ガス吸着剤を収納容器内に配置しないので、発塵を抑制することができること、さらに、収納容器内にモーター等を設けないので、振動が少なく、輸送、保管中に、微細な粉塵が発生する恐れも少ない上に、収納容器を小型化できること、等に想到し本発明を完成させた。
【0036】
すなわち、本発明のフォトマスクブランクの梱包方法は、少なくとも、フォトマスクブランク上にレジスト膜材料を塗布してレジスト膜を成膜するレジスト膜成膜工程と、該フォトマスクブランクをフォトマスクブランク収納容器に収納するフォトマスクブランク収納工程と、該フォトマスクブランク収納容器を、有機ガス吸着剤、塩基性ガス吸着剤、酸性ガス吸着剤から選ばれるいずれか1つ以上のガス吸着剤と共に、密封体で包装して、前記ガス吸着剤を、前記フォトマスクブランク収納容器の外側で且つ前記密封体の内側に配置するフォトマスクブランク収納容器包装工程とにより、フォトマスクブランクを梱包することを特徴とする。
【0037】
以下、本発明について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る方法によりフォトマスクブランクを梱包した状態の一例を示す概略断面図である。
フォトマスクブランク収納容器10は、容器本体11と、蓋体12を具備する。さらに、フォトマスクブランク収納容器10は、基板押さえ13と、支持体14を具備し、一枚のフォトマスクブランク15を水平に収納することができる。すなわち、容器本体11の上面の開口部が蓋体12で閉じられた状態では、基板押さえ13及び支持体14が、フォトマスクブランク15を蓋体12からの圧力で主面側から力学的に押さえて固定することができる。
【0038】
ここでは、このフォトマスクブランク収納容器10は、有機ガス吸着剤、塩基性ガス吸着剤、酸性ガス吸着剤から選ばれるいずれか1つ以上のガス吸着剤16と共に、密封体17で包装されており、さらに、フォトマスクブランク収納容器10を包装した密封体17は、アルミ箔に樹脂コートした包装袋18で包装されている。これにより、ガス吸着剤16が、フォトマスクブランク収納容器10の外側で且つ密封体17の内側に配置されている。
尚、ここでは、ガス吸着剤16は、不織布40とULPAフィルター41で包まれたものである。
【0039】
一方、図2は、本発明に係る方法によりフォトマスクブランクを梱包した状態の別の例を示す概略断面図である。
このフォトマスクブランク収納容器20は、容器本体21と、蓋体22と、内容器30を具備する。さらに、フォトマスクブランク収納容器20は、基板押さえ23と、支持体24と、内容器支持体31を具備し、5枚のフォトマスクブランク25を内容器30内に立てて収納することができる。すなわち、容器本体21の上側の開口部が蓋体22で閉じられた状態では、基板押さえ23と支持体24が、フォトマスクブランク25を蓋体22からの圧力でフォトマスクブランクの側面側から力学的に押さえて固定することができる。
【0040】
ここでは、フォトマスクブランク収納容器20は、有機ガス吸着剤、塩基性ガス吸着剤、酸性ガス吸着剤から選ばれるいずれか1つ以上のガス吸着剤26と共に、密封体27で包装されており、さらに、フォトマスクブランク収納容器20を包装した密封体27は、アルミ箔に樹脂コートした包装袋28で包装されている。これにより、ガス吸着剤26が、フォトマスクブランク収納容器20の外側で且つ密封体27の内側に配置されている。
尚、ここでは、ガス吸着剤26は、不織布50とULPAフィルター51で包まれたものとなっている。
【0041】
尚、図2に示すフォトマスクブランク収納容器20の内容器30には、底面にスリットが入っている。そのため、フォトマスクブランク25を固定するのに、基板押さえ23と支持体24を設けているが、内容器の底面にスリットが入っていない場合には、基板押さえ23と内容器とでフォトマスクブランク25を固定することができるので、支持体24がなくとも内容器支持体31があれば十分である。
また、本発明のフォトマスクブランクの梱包方法は、上記例示した1枚のフォトマスクブランクを収納する容器、複数枚のフォトマスクブランクを収納する容器の他、いずれの公知のフォトマスクブランク収納容器にも適用できる。
【0042】
また、本発明のフォトマスクブランクの梱包方法では、上記のように密封体で、フォトマスクブランク収納容器を個別に包装するようにしても良いし、あるいは、複数個のフォトマスクブランク収納容器をまとめて包装するようにしても良い。
【0043】
このように、有機ガス吸着剤、塩基性ガス吸着剤、酸性ガス吸着剤から選ばれるいずれか1つ以上のガス吸着剤を、フォトマスクブランク収納容器の外側で且つ密封体の内側に配置することにより、フォトマスクブランク収納容器や密封体から発生するレジスト感度変動の原因となるガスを、ガス吸着剤で吸着し、除去することができる。そのため、収納容器がレジスト感度変動の原因となるガスが低減された雰囲気に保持されるので、容器外の汚染ガスが容器内に混入することがなく、結果としてフォトマスクブランク収納容器内の雰囲気中のレジスト感度変動の原因となるガスを低減することができる。また、ガス吸着剤を、フォトマスクブランク収納容器の外側に配置するので、収納容器内の雰囲気を、清浄に保つことができる。さらに、収納容器内にモーターを設けなくても良いので、振動が少なく、輸送、保管中に、微細な粉塵が発生する恐れも少ない上に、収納容器を小型化でき、輸送、保管に有利である。
【0044】
密封体17,27としては、軟質樹脂製包装袋、硝子ケース、プラスチックケース等が挙げられるが、この他、気密を保てるものであれば何れでも良い。
輸送を伴わない保管、あるいはコンテナー等を用いる輸送でなければ、密封体として、軟質樹脂製包装袋を用いるが好ましい。軟質樹脂製包装袋は、軽量なため輸送に有利であり、また、軟質であることから、発塵の恐れが少ないからである。このような軟質樹脂製包装袋としては、具体的には、ウエーハBox GZ袋 PET透明タイフ゜(信越フイルム社製)等が挙げられる。
【0045】
また、フォトマスクブランク収納容器を密封体で包装したものを、さらに、アルミ箔に樹脂コートした包装袋で包装するのが好ましい。このように二重包装とすることで、中身について光線の影響を長時間受けないようにすることができるし、また、帯電を避けることもできる。このようなアルミ箔に樹脂コートした包装袋としては、具体的には、ウエーハBox GZ袋 PETアルミタイプ(信越フイルム社)等が挙げられる。また、保管、輸送においては、これらをさらにクッション材やダンボール箱に入れるようにしても良い。
【0046】
本発明で使用する有機ガス吸着剤は、比表面積が高く、疎水性の表面を持つタイプの吸着剤であればいずれも使用可能であるが、特に容易に入手可能で、高い有機ガス捕集効果が期待できるのは活性炭である。
【0047】
また、塩基性ガス吸着剤も多数のものが公知かつ市販されているが、一般的には無機材料、特に珪酸や硫酸等の不揮発性酸のアルミニウム塩が好ましく使われる。また、強酸性イオン交換樹脂等に使用される強酸性側鎖を持った樹脂類もこの目的に使用しうる材料である。
さらに、酸性ガス吸着剤も多数のものが公知かつ市販されているが、一般的には金属酸化物や金属水酸化物、例えば消石灰などが使用可能であるほか、高温で焼結した活性炭は有機ガスだけでなく、酸性ガスの吸着剤としても機能しうる。また、強塩基性イオン交換樹脂等に使用される強塩基性側鎖を持った樹脂類もこの目的に使用しうる材料である。
【0048】
ガス吸着剤16,26は、包装を行う際などにクリーンルームを清浄に保つために、あらかじめ発塵しないように造粒されているものや、樹脂等に固定されているもの、不織布で包んだものなどを用いることが好ましい。特に、図1,2に示したもののように、不織布40,50で包んだものは、市販品を容易に入手することができ、しかも、これを使うと、作業環境の汚染を十分に防ぐことができるので、より好ましい。
また、図1,2に示したように、ガス吸着剤16,26を、ULPAフィルター41,51で包むのがさらに好ましく、これにより、発塵による汚染をより一層確実に防止できる。ULPAフィルターは、微小な粉塵が問題となる半導体加工工程の多方面で使用されており、市販の公知のものが使用できる。
【0049】
レジスト膜の感度を変動させる原因となるガス成分は、フォトマスクブランク収納容器等から放出されると、拡散により移動する。このため、フォトマスクブランク収納容器内に放出されたガスを、容器外に配置した有機ガス吸着剤、塩基性ガス吸着剤、酸性ガス吸着剤から選ばれるいずれか1つ以上のガス吸着剤により確実に吸着させるために、フォトマスクブランク収納容器自体は気密性を高めず、通気性を確保できるものとするのが好ましい。
この場合、容器本体と蓋体の間に気密シールをしない、容器本体と蓋体の接触部に気密部材を使用しない等の方法により、通気性を確保することができる。
【0050】
また、密封体として、圧着可能な軟質樹脂製包装袋を用いてフォトマスクブランク収納容器を包装する場合、圧着前に包装袋中の空気を十分吸引し、その後、圧着して密封する方法がよく用いられている。しかし、本発明の場合、包装袋中の空気を完全に吸引すると、包装袋の変形によりフォトマスクブランク容器とガス吸着剤の間の空間が遮断され、ガス吸着剤が十分に機能しない恐れがある。そこで、本発明では、軟質樹脂製包装袋でフォトマスクブランク収納容器を包装した後、圧着前に包装袋中の空気の吸引を行う場合には、フォトマスクブランク収納容器とガス吸着剤の間に空間が確保されるようにするか、あるいは吸引を不完全に行うことが好ましい。
【0051】
一方、包装袋とフォトマスクブランク収納容器との間の空き空間が大きすぎる場合にも、ガス吸着剤による吸着効率が落ちる恐れがある。このため、本発明では、包装袋中の空気は必要以上には残らないように形を整えてからシールするのが好ましい。
【0052】
また、密封体として、硝子ケース、プラスチックケース等の硬質のケースを用いてフォトマスクブランク収納容器を包装する場合には、ガス吸着剤の周辺の空間を確保できる。このため、ケースを密封する前に、ケース内を十分に減圧しても良い。ただし、減圧を行った場合には、ケースからフォトマスクブランク収納容器を取り出す際に圧力を開放してやる必要があり、この際微粒子がフォトマスクブランク収納容器の外壁に付着したり、中に吸いこまれないよう、防塵手段を施すことが好ましい。
【0053】
本発明のフォトマスクブランク収納容器の材質としては、すでにフォトマスクブランク収納容器や半導体ウエーハ収納容器に使用されているものが多数公知であり、それらの何れも使用可能である。但し、本発明のフォトマスクブランク収納容器は、レジスト膜を成膜したフォトマスクブランクを収納する容器であるため、半導体ウエーハの収納容器の場合と異なり、レジスト膜が光を受けて感光しないように、短波長の光を通さない材質であるのが好ましい。例としては、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、ポリアセタール、ポリカーボネート、PEEK等に色素を分散させたもの等が挙げられる。
【0054】
次に、図3を参照して、フォトマスクブランクの梱包、保管、輸送を経てフォトマスクを製造するまでの工程の全体の流れについて説明する。
まず、フォトマスクブランク基板は、石英硝子、フッ化カルシウム等公知のものが使用されるが、一般的には長方形の石英硝子が用いられる。そして、この基板を洗浄後(工程(A))、基板上に、例えばスパッターにより、バイナリーマスクであれば遮光膜、反射防止膜等が、ハーフトーンマスクであれば、半透明膜、場合によりさらに遮光膜、反射防止膜が成膜される(工程(B))。しかし、本発明は、これらに限定されず、すべての公知の被加工フォトマスクブランクに適用可能である。
【0055】
このフォトマスクブランクを再び洗浄後、フォトマスブランク上に、更にレジスト膜材料をスピン塗布、スキャン塗布等公知の何れかの方法により塗布し、加熱によりレジスト膜材料中の溶剤を揮発除去してレジスト膜を成膜する(工程(C))。
ここで使用されるレジスト膜材料としては、例えば、化学増幅型が挙げられ、ネガ型でもポジ型でも良い。
【0056】
化学増幅型ネガ型レジスト膜材料は公知のものが何れも使用可能であるが、一般的にはアルカリ水溶液で溶解可能な樹脂、電子線あるいは光のようなエネルギー線の照射により強酸を発生する酸発生剤、酸が存在すると酸を触媒としてアルカリ可溶性樹脂間を架橋して、樹脂をアルカリ不溶性とする架橋剤等が含有される。
【0057】
また化学増幅型ポジ型レジスト膜材料も公知のものが何れも使用可能であるが、一般的には、アルカリ可溶性樹脂の酸性側鎖の一部が酸で脱保護される保護基によって置換された、アルカリ不溶性である樹脂と酸発生剤等が含有される。
これらが更に含有する成分についても公知のものが多数知られており、本発明ではいずれも用いることができ特に制限されるものではない。
【0058】
また、フォトマスクブランク加工用には高いエッチング耐性が求められるため、上記何れのタイプのレジスト膜材料に使用される樹脂の基本骨格にも芳香族含有樹脂が含まれることが好ましい。これらのレジスト膜材料は、成膜後のレジスト膜中でエネルギー線の照射を受けると酸発生剤より強酸が発生し、発生酸は周囲の複数の反応点で、ネガ型であれば架橋反応を、ポジ型であれば脱保護反応を起こすため、高感度と高解像度が得られる。逆にそれが故に外部から酸性を有するものが混入したり、酸を失活させる物質が混入したりすると、反応性が容易に変化する。
【0059】
レジスト膜材料を塗布してレジスト膜を成膜したフォトマスクブランクは、成膜状態を確認した後、移載装置にてフォトマスクブランク収納容器に収納され(工程(D))、該フォトマスクブランク収納容器は有機ガス吸着剤、塩基性ガス吸着剤、酸性ガス吸着剤から選ばれるいずれか1つ以上のガス吸着剤とともに密封体で包装される(工程(E))。そして、その後、輸送及び/又は保管される(工程(F))。さらに、輸送及び/又は保管されたフォトマスクブランクを使用して、これにリソグラフィー、エッチング加工によりパターンを形成し、フォトマスクを製造する(工程(G))。
【0060】
ここで、レジスト膜成膜工程(工程(C))からフォトマスクブランク収納容器包装工程(工程(E))までの一連の工程を、塩基性ガス濃度がアンモニア換算で5ppb以下の雰囲気で行うのが好ましい。この場合、より好ましくは3ppb以下、さらに好ましくは2ppb以下である。
このように作業環境を管理することで、梱包されるフォトマスクブランクに成膜されたレジスト膜の感度を安定させることができる。また、梱包後、輸送、保管の際に塩基性ガスの環境が管理されていない場所に収納容器が置かれても、再び開封する際の環境が管理されていれば、レジスト膜の感度変化をかなり抑制することができる。また、バッチ間の感度差も非常に小さい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
フォトマスクブランクを収納する容器として、図1に示すフォトマスクブランク収納容器10を準備した。
また、有機ガス吸着剤及び塩基性ガス吸着剤16として、不織布40に包まれた活性炭(日本ピュアテック社製PurePUT−K)及び不織布40に包まれた塩基性ガス吸着剤(日本ピュアテック社製PurePUT−N)を、0.15μmの粒子を99%以上捕集するULPAフィルター41で包んだものを準備した。
【0062】
フォトマスクブランクとして、石英ガラス基板上にクロム膜を主成分とした遮光膜を持つフォトマスクブランクを使用した。
このクロム膜基板の上に電子線描画露光用の化学増幅型ポジ型レジスト膜材料をレジスト塗布機により4000Åの厚さで塗布し、加熱によりレジスト膜材料の溶剤を揮発除去してレジスト膜を成膜した。このとき、レジスト塗布機上部などには酸性ガス及び塩基性ガスを除去するケミカルフィルター及びULPAフィルターを配置し、アンモニアガス換算の塩基性ガス濃度が2ppb以下の雰囲気を維持した。
【0063】
つづいて、レジスト膜を成膜したフォトマスクブランクをアンモニアガス換算の塩基性ガス濃度が2ppb以下に制御されたクリーンルーム内で、上記フォトマスクブランク収納容器に収納した。さらに、このフォトマスクブランク収納容器を、上記準備したガス吸着剤と共に、軟質樹脂製透明包装袋(信越フイルム社製ウエーハBox GZ袋 PET透明タイプ)で包装し、さらにそれをアルミ箔に樹脂コートした包装袋(信越フイルム社製ウエーハBox GZ袋 PETアルミタイプ)で包装し、開口部を熱シールして包装袋内を気密化した。
そして、このように梱包したフォトマスクブランクをクリーンルームから外部環境に持ち出した。
【0064】
次に、15日経過後と、30日経過後のそれぞれに、再び梱包したフォトマスクブランクをクリーンエアによる洗浄を経て、雰囲気の塩基性ガス濃度が2ppb以下にコントロールされている環境に持ち込んだ。
さらに、保管されていたフォトマスクブランクを開封後すぐに電子線描画露光機に装着し、パターン照射して1ミクロンのラインアンドパターンを形成した。照射された基板を定法に従い、照射後加熱、アルカリ性現像液による現像を経ることにより、レジストパターンを得た。
【0065】
そして、走査型電子顕微鏡を用いて上方より、1ミクロンのパターンの線幅を精密に測定し、経過時間0の標品との比較を行った。その結果を図4に示す。
この場合、フォトマスクブランク上に描画されたレジストパターンの線幅は、15日後に平均で1.012ミクロン、30日後には1.014ミクロンであった。
【0066】
(比較例1)
一方、ガス吸着剤を入れないこと以外は実施例1と全く同様に梱包したフォトマスクブランクを用意し、同様に外部環境に持ち出した。
次に、15日経過後と、30日経過後のそれぞれに、再び梱包したフォトマスクブランクをクリーンエアによる洗浄を経て、雰囲気の塩基性ガス濃度が2ppb以下にコントロールされている環境に持ち込み、実施例1と同様の方法によりレジストパターンを得た。
その結果を図4に示す。この場合、得られたレジストパターンの線幅は、15日後に1.030ミクロン、30日後には1.036ミクロンであった。
【0067】
これらの結果より、本発明の方法によりフォトマスクブランクを梱包し、保管した場合、得られるレジストパターンは、経過時間に対する線幅変化が非常に小さいことが確認された。すなわち、本発明の方法によりフォトマスクブランクを梱包後、保管、輸送することで、高感度でかつ高精度な経時変化のない電子線描画レジストを塗布したフォトマスクブランクが得られる。これによりフォトマスクの経時変化による電子線露光描画の不良発生が少なく効率よく高精度マスクの製造が可能となる。
【0068】
一方、レジスト表面のパーティクルによる汚染は、レーザー散乱を用いたパーティクル測定法により検査を行った。日立電子エンジニアリング製GM1000Aを用い、30日後にクリーンルームに持ち込まれた実施例1及び比較例1のフォトマスクブランクのレジスト上、全面のパーティクル数を測定したところ、0.5μm以上のパーティクルは何れからも検出されなかった。また、0.2μm以上のパーティクルは全て3〜5個であり、両者に差異は見られなかった。従って、本発明の収納容器では、塩基性ガス等をガス吸着剤に吸着してレジスト膜の感度変化を防止できると共に、発塵の原因とならないことが分かった。しかも、容器を比較的コンパクトに構成することができる。
【0069】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る方法によりフォトマスクブランクを梱包した状態の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係る方法によりフォトマスクブランクを梱包した状態の別の例を示す概略断面図である
【図3】フォトマスクブランクの梱包、保管、輸送を経てフォトマスクを製造するまでの工程を示すフロー図である。
【図4】経過時間とレジストパターンの線幅変化の関係を示すグラフである(実施例1、比較例1)。
【符号の説明】
【0071】
10、20…フォトマスクブランク収納容器、 11、21…容器本体、
12、22…蓋体、 13、23…基板押さえ、 14、24…支持体、
15、25…フォトマスクブランク、 16、26…ガス吸着剤、
17、27…密封体、 18、28…アルミ箔に樹脂コートした包装袋、
30…内容器、 31…内容器支持体、
40、50… 不織布、 41、51…ULPAフィルター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトマスクブランクの梱包方法であって、少なくとも、フォトマスクブランク上にレジスト膜材料を塗布してレジスト膜を成膜するレジスト膜成膜工程と、該フォトマスクブランクをフォトマスクブランク収納容器に収納するフォトマスクブランク収納工程と、該フォトマスクブランク収納容器を、有機ガス吸着剤、塩基性ガス吸着剤、酸性ガス吸着剤から選ばれるいずれか1つ以上のガス吸着剤と共に、密封体で包装して、前記ガス吸着剤を、前記フォトマスクブランク収納容器の外側で且つ前記密封体の内側に配置するフォトマスクブランク収納容器包装工程とにより、フォトマスクブランクを梱包することを特徴とするフォトマスクブランクの梱包方法。
【請求項2】
前記フォトマスクブランクに成膜するレジスト膜を、化学増幅型レジスト膜とすることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクブランクの梱包方法。
【請求項3】
前記密封体で、1又は2以上のフォトマスクブランク収納容器を包装することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフォトマスクブランクの梱包方法。
【請求項4】
前記密封体を、軟質樹脂製包装袋とすることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクの梱包方法。
【請求項5】
前記フォトマスクブランク収納容器を包装した密封体を、さらに、アルミ箔に樹脂コートした包装袋で包装することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクの梱包方法。
【請求項6】
前記ガス吸着剤を、不織布で包んだガス吸着剤とすることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクの梱包方法。
【請求項7】
前記ガス吸着剤を、ULPAフィルターで包んだガス吸着剤とすることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクの梱包方法。
【請求項8】
前記レジスト膜成膜工程から前記フォトマスクブランク収納容器包装工程までを、塩基性ガス濃度がアンモニア換算で5ppb以下の雰囲気で行うことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクの梱包方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の方法で梱包したフォトマスクブランクを保管することを特徴とするフォトマスクブランクの保管方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の方法で梱包したフォトマスクブランクを輸送することを特徴とするフォトマスクブランクの輸送方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法で保管したフォトマスクブランクを使用して、これにリソグラフィーによりパターンを形成し、フォトマスクを製造することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法で輸送したフォトマスクブランクを使用して、これにリソグラフィーによりパターンを形成し、フォトマスクを製造することを特徴とするフォトマスクの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−195149(P2006−195149A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6240(P2005−6240)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】