説明

フォトモジュール

【課題】本発明は、伝送経路中の信号強度を計測するフォトモジュールにおいて、製造工程を多くすることなくかつコストを高くすることなく、フォトモジュールに導光した信号光を受光素子に集光するとともに、フォトモジュールから戻った反射光を伝送経路中に再入射させないようにする技術を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、入射光を導波する入射光ファイバ1と、入射光ファイバ1と異なる光軸21を有し、入射光の波長に対して1/4周期長より大きく1/2周期長より小さい周期長を有し、光軸21に垂直な面と有限の角度をなす面において入射光ファイバ1と接合され、光軸21に略垂直な面を出射光の出射面として有する屈折率分布型レンズ2と、出射光の集光位置に配置され、出射光の強度を計測する受光素子3と、を備えることを特徴とするフォトモジュールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送経路中の信号強度を計測するフォトモジュールにおいて、フォトモジュールに導光した信号光を受光素子に集光するとともに、フォトモジュールから戻った反射光を伝送経路中に再入射させないようにする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
伝送経路中の信号強度を計測することにより、伝送経路中の通信状態を監視するフォトモジュールがある(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示されたラインモニタは、入射光ファイバ、出射光ファイバ、ロッドレンズ、透光部を含む反射膜及び受光検出素子から構成される。伝送経路から導光された光信号は、入射光ファイバ及びロッドレンズを経て、反射膜に到達する。反射膜のうち透光部に到達した光信号は、受光検出素子で検出される。反射膜のうち反射部に到達した光信号は、ロッドレンズ及び出射光ファイバを経て、伝送経路に出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−141709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1においては、出射光ファイバ及び反射膜を設けることにより、伝送経路から導光した光信号のうち、一部を受光検出素子で検出し、残りを伝送経路に出力する。ところで、特許文献1を応用して、出射光ファイバ及び反射膜を設けることなく、伝送経路から導光した光信号を、全て受光検出素子で検出することが考えられる。
【0006】
従来技術のフォトモジュールの構成を図1に示す。従来技術のフォトモジュールは、入射光ファイバ1、屈折率分布型レンズ2及び受光素子3から構成される。入射光ファイバ1は、入射光を導波する。屈折率分布型レンズ2は、入射光ファイバ1の出射端に接合され、入射光ファイバ1と異なる光軸21を有し、入射光の波長に対して1/4周期長を有し、光軸21に略垂直な両端面を有する。受光素子3は、屈折率分布型レンズ2からの出射光の光路位置に配置され、屈折率分布型レンズ2からの出射光の強度を計測する。
【0007】
従来技術のフォトモジュールにおける光信号の光路について説明する。伝送経路からの光信号は、入射光ファイバ1において、光路A上を導光され、屈折率分布型レンズ2において、光軸21から外れた点22に到達する。屈折率分布型レンズ2の周期長は、入射光の波長に対して1/4周期長であるため、点22に到達した光信号は、屈折率分布型レンズ2において、光路B上を導光され、光軸21上にある点23に到達する。点23に到達した光信号は、光路C上を導光され、受光素子3において、点31に到達する。
【0008】
ここで、光信号の光路は、ある程度の拡がりを有する。点22に到達した光信号は、屈折率分布型レンズ2において、光路Bから拡がりの分だけ外れた光路B−1、B−2を導光され、それぞれ点23から拡がりの分だけ外れた点25、26に到達する。屈折率分布型レンズ2の周期長は、入射光の波長に対して1/4周期長であるため、点25、26に到達した光信号は、それぞれ光路Cに平行な光路C−1、C−2を導光され、受光素子3において、それぞれ点31から拡がりの分だけ外れた点32、33に到達する。よって、従来技術のフォトモジュールでは、信号光は、受光素子3に集光されにくい。
【0009】
そして、点23、25、26に到達した光信号のうち、一部は受光素子3に向かって透過され、残りは入射光ファイバ1に向かって反射される。屈折率分布型レンズ2の周期長は、入射光の波長に対して1/4周期長であるため、点23、25、26で反射された光信号は、屈折率分布型レンズ2において、それぞれ光路D、D−1、D−2を導光され、点24に集光する。ここで、点22、24は、光軸21に関して対称な位置にある。点24で反射された光信号は、屈折率分布型レンズ2において、光路D、D−1、D−2を導光され、それぞれ点23、25、26に到達する。点23、25、26で反射された光信号は、屈折率分布型レンズ2において、それぞれ光路B、B−1、B−2を導光され、点22に集光する。よって、従来技術のフォトモジュールでは、光信号は、屈折率分布型レンズ2内の多重反射のため、入射光ファイバ1に反射されやすい。
【0010】
ここで、光信号が点22、24や点23、25、26で反射されることにより入射光ファイバ1に反射されることがないように、屈折率分布型レンズ2の点22、24側や点23、25、26側の端面において、略直角研磨ではなく斜角度研磨を施すことや略直角研磨面に対して反射防止膜を設けることが考えられる。しかし、斜角度研磨を施すことや反射防止膜を設けることは、製造工程を多くしコストを高くする。
【0011】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、伝送経路中の信号強度を計測するフォトモジュールにおいて、製造工程を多くすることなくかつコストを高くすることなく、フォトモジュールに導光した信号光を受光素子に集光するとともに、フォトモジュールから戻った反射光を伝送経路中に再入射させないようにする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、屈折率分布型レンズの光軸を、入射光ファイバの光軸と異ならせ、屈折率分布型レンズの周期長を、入射光の波長に対して1/4周期長より大きく1/2周期長より小さくし、屈折率分布型レンズの両端面のうち、入射端面には斜角度研磨を施す一方で、出射端面には略直角研磨を施すこととした。
【0013】
具体的には、本発明は、入射光を導波する入射光ファイバと、前記入射光ファイバと異なる光軸を有し、前記入射光の波長に対して1/4周期長より大きく1/2周期長より小さい周期長を有し、前記光軸に垂直な面と有限の角度をなす面において前記入射光ファイバと接合され、前記光軸に略垂直な面を出射光の出射面として有する屈折率分布型レンズと、を備えることを特徴とするフォトモジュールである。
【0014】
また、本発明は、前記出射光の集光位置に配置され、前記出射光の強度を計測する受光素子と、前記屈折率分布型レンズ及び前記受光素子の間に配置され、前記光軸に略垂直な面において前記屈折率分布型レンズと接合される受光素子封止窓材と、をさらに備えることを特徴とするフォトモジュールである。
【0015】
この構成によれば、屈折率分布型レンズの受光素子側の一端において、光信号の光路の拡がりは、受光素子に向かう方向に集光する。そして、屈折率分布型レンズの入射光ファイバ側の一端において、光信号の光路の拡がりは、従来技術と異なり集光しない。
【0016】
そして、光信号の入射光ファイバへの反射を防止するためには、屈折率分布型レンズの入射光ファイバ側の一端では、斜角度研磨を施すことが望ましいが、屈折率分布型レンズの受光素子側の一端では、屈折率分布型レンズの周期長を調節したことにより、斜角度研磨を施す必要はなく略直角研磨を施せば十分である。さらに、屈折率分布型レンズの受光素子側の一端において、略直角研磨を施す場合には斜角度研磨を施す場合より、受光素子の受光面において、集光効率を向上させる効果を見込むこともできる。
【0017】
よって、製造工程を多くすることなくかつコストを高くすることなく、フォトモジュールに導光した信号光を受光素子に集光するとともに、フォトモジュールから戻った反射光を伝送経路中に再入射させないようにすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、伝送経路中の信号強度を計測するフォトモジュールにおいて、製造工程を多くすることなくかつコストを高くすることなく、フォトモジュールに導光した信号光を受光素子に集光するとともに、フォトモジュールから戻った反射光を伝送経路中に再入射させないようにする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来技術のフォトモジュールの構成を示す図である。
【図2】本発明のフォトモジュールの構成を示す図である。
【図3】本発明のアレイ型フォトモジュールの構成を示す図である。
【図4】本発明のアレイ型フォトモジュールの矢視X−X断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0021】
(フォトモジュールの構成)
本発明のフォトモジュールの構成を図2に示す。本発明のフォトモジュールは、入射光ファイバ1、屈折率分布型レンズ2及び受光素子3から構成される。入射光ファイバ1は、入射光を導波する。屈折率分布型レンズ2は、入射光ファイバ1の出射端に接合され、入射光ファイバ1と異なる光軸21を有し、入射光の波長に対して1/4周期長より大きく1/2周期長より小さい周期長を有する。屈折率分布型レンズ2は、光軸21に垂直な面と有限の角度をなす面において入射光ファイバ1と接合され、光軸21に略垂直な面を出射光の出射面として有する。受光素子3は、屈折率分布型レンズ2からの出射光の集光位置に配置され、屈折率分布型レンズ2からの出射光の強度を計測する。ここで、略垂直(略直角)とは、垂直(直角)に対して公差を含む概念である。
【0022】
本発明のフォトモジュールにおける光信号の光路について説明する。伝送経路からの光信号は、入射光ファイバ1において、光路A上を導光され、屈折率分布型レンズ2において、光軸21から外れた点22に到達する。屈折率分布型レンズ2の周期長は、入射光の波長に対して1/4周期長より大きく1/2周期長より小さい周期長であるため、点22に到達した光信号は、屈折率分布型レンズ2において、光路E上を導光され、入射光ファイバ1側の一端から1/4周期長において、光軸21上にある点23に到達し、受光素子3側の一端において、光軸21から外れた点27に到達する。点27に到達した光信号は、光路F上を導光され、受光素子3において、点31に到達する。
【0023】
ここで、光信号の光路は、ある程度の拡がりを有する。点22に到達した光信号は、屈折率分布型レンズ2において、光路Eから拡がりの分だけ外れた光路E−1、E−2を導光され、入射光ファイバ1側の一端から1/4周期長において、それぞれ点23から拡がりの分だけ外れた点25、26に到達し、受光素子3側の一端において、それぞれ点27から拡がりの分だけ外れた点28、29に到達する。屈折率分布型レンズ2の周期長は、入射光の波長に対して1/4周期長より大きく1/2周期長より小さい周期長であるため、点28、29に到達した光信号は、それぞれ受光素子3に向かうに従って光路Fに近づく光路F−1、F−2を導光され、受光素子3において、点31に到達する。よって、本発明のフォトモジュールでは、信号光は、受光素子3に集光されやすい。
【0024】
そして、点27、28、29に到達した光信号のうち、一部は受光素子3に向かって透過され、残りは入射光ファイバ1に向かって反射される。屈折率分布型レンズ2の周期長は、入射光の波長に対して1/4周期長より大きく1/2周期長より小さい周期長であるため、点27、28、29で反射された光信号は、屈折率分布型レンズ2において、点22、24に集光しない。ここで、点22、24は、光軸21に関して対称な位置にある。よって、本発明のフォトモジュールでは、光信号は、屈折率分布型レンズ2内の多重反射があるとしても、入射光ファイバ1に反射されにくい。
【0025】
ここで、屈折率分布型レンズ2の入射光ファイバ1側の一端では、光信号が光路Aから光路Aへと反射されないように、光軸21に垂直な面と有限の角度をなす面を入射光ファイバ1との接合面とする斜角度研磨を施すことが望ましい。しかし、屈折率分布型レンズ2の受光素子3側の一端では、光信号が点27、28、29で反射されても光路Aに反射されることはほとんどないため、光軸21に垂直な面と有限の角度をなす面を出射光の出射面とする斜角度研磨を施す必要はなく、光軸21に略垂直な面を出射光の出射面とする略直角研磨を施せば十分である。さらに、屈折率分布型レンズ2の受光素子3側の一端において、略直角研磨を施す場合には斜角度研磨を施す場合より、受光素子3の受光面において、集光効率を向上させる効果を見込むこともできる。
【0026】
屈折率分布型レンズ2の周期長は、実施形態では、入射光の波長に対して1/4周期長より大きく1/2周期長より小さい周期長であったが、変形例として、nが自然数であるとき、入射光の波長に対して(1/4+n/2)周期長より大きく(1/2+n/2)周期長より小さい周期長であってもよい。ただし、フォトモジュールの小型化及び低コスト化のためには、屈折率分布型レンズ2の周期長は、入射光の波長に対して1/4周期長より大きく1/2周期長より小さい周期長であることが望ましい。
【0027】
(アレイ型フォトモジュールの構成)
本発明のアレイ型フォトモジュールの構成を図3に示す。アレイ型フォトモジュールMは、入射光ファイバアレイ1A、屈折率分布型レンズアレイ2A、受光素子封止窓材パッケージ3P及び受光素子パッケージ4Pから構成される。
【0028】
入射光ファイバアレイ1Aは、各チャンネルについて、入射光ファイバ1を有する。屈折率分布型レンズアレイ2Aは、各チャンネルについて、屈折率分布型レンズ2を有する。受光素子封止窓材パッケージ3Pは、屈折率分布型レンズアレイ2A及び受光素子パッケージ4Pの間に配置され、各チャンネルについて、光路F、F−1、F−2の伝送媒質を有する。受光素子パッケージ4Pは、各チャンネルについて、受光素子3を有する。
【0029】
本発明のアレイ型フォトモジュールの矢視X−X断面を図4に示す。図4の矢視X−X断面は、各チャンネルについての入射光ファイバ1及び屈折率分布型レンズ2を切断する断面である。屈折率分布型レンズ2の入射光ファイバ1側の一端では、光軸21に垂直な面Pと有限の角度(α)をなす面Qを入射光ファイバ1との接合面とする斜角度研磨を施している。よって、入射光ファイバ1の屈折率分布型レンズ2側の一端では、光軸21に垂直な面Pと有限の角度(−α)をなす面Qを屈折率分布型レンズ2との接合面とする斜角度研磨を施す。屈折率分布型レンズ2の受光素子3側の一端では、光軸21に略垂直な面Rを出射光の出射面とする略直角研磨を施している。よって、受光素子封止窓材パッケージ3Pの屈折率分布型レンズ2側の一端では、光軸21に略垂直な面Rを屈折率分布型レンズ2との接合面とする略直角研磨を施す。
【0030】
入射光ファイバアレイ1Aの入射光ファイバ1、屈折率分布型レンズアレイ2Aの屈折率分布型レンズ2、及び受光素子パッケージ4Pの受光素子3について、配置の方向及び配置の間隔は同一であり、各チャンネルについて、導光方向は平行に並列される。これにより、アレイ型フォトモジュールMにおいて、容易にかつ安価に製造することができるうえに、高密度アレイ化を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係るフォトモジュールは、チャンネル数が単数であるか複数であるかに関わらず、伝送経路中の信号強度を計測するときに適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1:入射光ファイバ
2:屈折率分布型レンズ
3:受光素子
M:アレイ型フォトモジュール
1A:入射光ファイバアレイ
2A:屈折率分布型レンズアレイ
3P:受光素子封止窓材パッケージ
4P:受光素子パッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を導波する入射光ファイバと、
前記入射光ファイバと異なる光軸を有し、前記入射光の波長に対して1/4周期長より大きく1/2周期長より小さい周期長を有し、前記光軸に垂直な面と有限の角度をなす面において前記入射光ファイバと接合され、前記光軸に略垂直な面を出射光の出射面として有する屈折率分布型レンズと、
を備えることを特徴とするフォトモジュール。
【請求項2】
前記出射光の集光位置に配置され、前記出射光の強度を計測する受光素子と、
前記屈折率分布型レンズ及び前記受光素子の間に配置され、前記光軸に略垂直な面において前記屈折率分布型レンズと接合される受光素子封止窓材と、
をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載のフォトモジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−24937(P2013−24937A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157024(P2011−157024)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(591160268)北日本電線株式会社 (41)
【Fターム(参考)】