説明

フォークリフトのバックレスト

【課題】RFID用アンテナを適切な位置及び向きに取り付け可能な構造としたバックレストを提供する。
【解決手段】フォークリフトのバックレストであって、バックレストの垂直方向、水平方向、前後方向および回転方向の少なくとも1つ以上の方向に対して位置及び角度の調節が可能なRFID用アンテナ6の取り付け手段7を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フォークリフトのバックレストに関し、RFID(Radio Frequency Identification,電波による個体識別)タグと非接触でデータの読み書きするRFID用アンテナおよびリーダライタを容易に且つ適切な位置に取り付け可能なバックレストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工場や倉庫等において物品の運搬に用いられるパレットやパレットに積載された荷物を管理するためにRFIDタグが用いられている。RFIDタグはパレットや荷物に貼り付けられて、RFID用アンテナ及びリーダライタによりRFIDタグに記録された情報を読み取り、あるいはRFIDタグに新たなデータを書き込み、パレットや荷物の管理に利用されている。
【0003】
そして、RFIDタグに対する読み書き処理を容易に行うために、RFID用アンテナをフォークリフトのマストやバックレストに取り付けたシステムが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005−509575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、既存のフォークリフトのバックレストは、荷物がマストの後方に荷崩れするのを防止するための荷受け用の枠として作られており、そもそもRFID用アンテナやリーダライタを取り付ける構造にはなっていない。そのため、実際にRFID用アンテナやリーダライタをバックレストに取り付けようとすると、アンテナをRFIDタグと適切な位置関係になるように取り付けることができず、また取り付けた後にフォークリフトを稼動させた時の振動でアンテナの取り付け位置が狂ってRFIDタグとのデータ送受信効率が低下し、さらに取り付けたRFID用アンテナやリーダライタがフォークリフト操作者の前方視界を妨げるといった問題があった。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、RFID用アンテナを適切な位置及び向きに取り付け可能な構造としたバックレストを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、バックレストの垂直方向、水平方向、前後方向および回転方向の少なくとも一以上の方向に対して位置及び角度の調節が可能なRFID用アンテナの取り付け手段を備えることによって、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
上記発明によれば、取り付け手段によりRFID用アンテナの位置または角度が、バックレストの垂直方向、水平方向、前後方向および回転方向の少なくとも一以上の方向に対して調節可能であるため、RFID用アンテナを適切な位置及び向きに取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態を適用したフォークリフトの全体を示す斜視図である。
【図2】図1のバックレストを示す正面図である。
【図3】図1のバックレストを示す側面図である。
【図4】図1のバックレストを示す平面図である。
【図5】図2のRFID用アンテナの取り付け部を拡大して示す正面図である。
【図6】図5のVI矢視図(図2のRFID用アンテナの取り付け部を拡大して示す側面図)である。
【図7】図5のVII矢視図(図2のRFID用アンテナの取り付け部を拡大して示す平面図)である。
【図8】RFID用アンテナを含む管理システムの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、上記発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1はフォークリフトの全体を示す斜視図であり、本例のバックレスト15を適用した例を示す。フォークリフト10は、車体11と、当該車体11の前面に立設されたマスト12と、当該マスト12に対して昇降可能に設けられたフィンガバー13と、当該フィンガバー13に装着された一対のフォーク14と、フィンガバー13の両端に装着されて当該フィンガバー13とともに昇降するバックレスト15と、を備える。
【0011】
マスト12は、下端を中心に傾動可能とされ、油圧シリンダ16を駆動することによりマスト12の傾動角度を調節することができる。フィンガバー13は、昇降機17を駆動することによりマスト12に沿った昇降位置を調節することができ、これにともなってフォーク14及びバックレスト15の昇降位置も調節される。フォークリフト10の運転手は、運転席に設けられた操作レバーを操作することによりマスト12の傾動角度とフォーク14の昇降位置とを調節しながら荷物20を運搬操作する。
【0012】
バックレスト15は、フォーク14にて載置した荷物20の背面を支持または規制する枠体であって、図2にその細部を示すように、上側の梁材を構成する受体2と、当該受体2の両端のそれぞれに取り付けられた左右一対の脚体3と、下側の梁材を構成し脚体3間に掛け渡された横材4と、受体2と横材4との間に掛け渡された4本の縦材5と、を備える。受体2と脚体3、脚体3と横材4、受体2と縦材5、横材4と縦材5のそれぞれの接合部は、溶接またはボルト・ナットなどの手段により強固に接合されている。
【0013】
本例のバックレスト15には、荷物20に貼り付けられたRFIDタグに記録された情報を受信したり、RFIDタグに書き込む情報を送信したりするRFID用アンテナ6と、当該RFID用アンテナ6にて受信した情報を入力したり出力したりするリーダライタ8とが装着されている。
【0014】
ここで、RFIDによる荷物の管理システムの一例を示す。図8はそのブロック図であり、荷物20に直接貼り付けられるか或いは荷物20を載置するパレットに貼り付けられるRFIDタグ50と、フォークリフト10のバックレスト15に装着されるRFID用アンテナ6と、フォークリフト10のバックレスト15に装着されるリーダライタ8と、RFIDタグ50の情報を取り込んだりRFIDタグ50に情報を書き込んだりして荷物20の管理処理を実行する管理装置51とを備える。RFIDタグ50には、所定の周波数にてRFID用アンテナ6に情報を送信するとともにRFID用アンテナ6からの情報を受信するアンテナが内蔵されている。
【0015】
RFIDタグ50とRFID用アンテナ6との間の情報の授受は、電波による無線通信により行われる。リーダライタ8と管理装置51との間の情報の授受も電波による無線通信により行うことができるが、有線通信または記憶媒体を用いた情報の授受を行うこともできる。また、RFID用アンテナ6とリーダライタ8との間の情報の授受は有線通信により行われるが、リーダライタ8をフォークリフト10に装着しない場合は電波による無電通信により行ってもよい。
【0016】
こうした管理システムは、種々の荷物管理処理に利用される。たとえば、それぞれにRFIDタグ50が貼り付けられ複数の荷物20が、輸送車にて倉庫に輸送されてきて、フォークリフト10を用いてこれらの荷物20を倉庫に収容する場合に、収容した荷物20の情報をRFID管理システムによって倉庫の管理装置51に出力することで、倉庫の収容物の管理に供することができる。
【0017】
フォークリフト10を用いて荷物20を運搬する場合に、荷物20に貼り付けられたRFIDタグ50に情報の読み書きが行われるが、荷物20の大きさや荷物20の形状によっては、RFIDタグ50との間で電波を送受信できないおそれもある。すなわち、RFIDタグ50とRFID用アンテナ6との間で授受される電波は、ある程度の指向性を有するので、RFIDタグ50とRFID用アンテナ6とがある範囲の位置と角度で対向していないと電波の送受信効率が低下するおそれがある。
【0018】
また、電波の偏波特性には、時間が経過しても電界と磁界が回転しない直線偏波と、時間の経過とともに電界と磁界が回転する円偏波とがあり、本例のRFIDシステムにはどちらの偏波特性の電波も適用できる。しかしながら、直線偏波特性の電波を用いた場合には、荷物20に貼り付けられたRFIDタグ50とRFID用アンテナ6との回転方向の相対位置によっては送受信効率が低下するおそれもある。
【0019】
このため、本例のバックレスト15では、RFID用アンテナ6を装着するにあたり、バックレスト15の垂直方向、水平方向、前後方向および回転方向の少なくとも1つ以上の方向に対してRFID用アンテナ6の位置と角度の調節が可能とされている。以下、RFID用アンテナ6を上記方向に対して位置及び角度調節が可能にバックレスト15に装着する具体例について説明する。
【0020】
図2に示すように、本例のバックレスト15の左右の上部には、RFID用アンテナ6が可動式RFID用アンテナ取り付け具7(以下単にアンテナ取り付け具7ともいう)によって取り付けられ、また中央部には、RFID用リーダライタ8がRFID用リーダライタ取り付け具9(以下単にリーダライタ取り付け具9ともいう)により取り付けられている。
【0021】
アンテナ取り付け具7は、任意の箇所の縦材5(又は脚体3)と縦材5との間に装着することができる。図2に示す例では、バックレスト15に向かって左側の脚体3と左から1番目の縦材5との間、および右側の脚体3と右から1番目の縦材5との間に設置されている。アンテナ取り付け具7の装着位置は、バックレスト15に対して上記各方向に対して調節可能とされているが、これに加えて、バックレスト15をフォークリフト10に取り付けてフォーク14を最上端から最下端まで昇降させたときに、運転手の視界を妨げない位置とすることが望ましい。
【0022】
図5は図2の左上部のRFID用アンテナ6を拡大して示す正面図、図6は図5のVI矢視図(側面図)、図7は図5のVII矢視図(平面図)である。アンテナ取り付け具7は、図6及び図7に示すように、断面コの字状(C型チャンネル鋼材状)の第1取り付け具71と、当該第1取り付け具71の両側部にそれぞれ設けられた板状の第2取り付け具72とを有する。
【0023】
図6に示すように、脚体3および縦材5には縦方向スリット3a,5aが形成され、この縦方向スリット3a,5aと第2取り付け具72の孔73とにボルト74aを挿通してナット74bで締めることにより、第2取り付け具72の位置を脚体3及び縦材5に沿って上下方向に調節できる構造とされている。図6において縦材5に形成された縦方向スリット5aは隠れて見えないが、脚体3の縦方向スリット3aに対応した位置に形成されている。
【0024】
また、第2取り付け具72には前後方向スリット75が形成され、この前後方向スリット75と第1取り付け具71の孔76とにボルト77aを挿通してナット77bで締めることにより、第1取り付け具71の位置を第2取り付け具72に沿って前後方向に調節できる構造とされている。
【0025】
図7に示すように、第1取り付け具71の前面にストッパ付きボールジョイント78を介してRFID用アンテナ6が取り付けられている。ストッパ付きボールジョイント78は、ストッパ78aを解錠するとボールジョイント部78bを中心にRFID用アンテナ6が揺動可能とされ、ストッパ78aを施錠するとその位置で固定される。これにより、RFID用アンテナ6は、図3の側面視において傾倒角度θ1が調節できるとともに図4の平面視において首振り角度θ2が調節できる。また、図2の正面視において回転角度θ3を調節することもできる。
【0026】
なお図示はしないが、アンテナ取り付け具7の可動方向はこれに限定されるものではなく、受体2及び横材4に同様の横方向スリットを設け、これら受体2及び横材4の間に可動式RFID用アンテナ取り付け具7を同様に設置するようにすれば、横方向の位置を調節することも可能となる。
【0027】
図2に戻り、バックレスト15にはRFID用リーダライタ8がリーダライタ取り付け具9を介して装着されている。リーダライタ取り付け具9は、RFID用リーダライタ8がRFID用アンテナ6のように角度調節を必要としないため、図2に示す例では、バックレスト15に向かって左から2番目の縦材5と3番目の縦材5との間に固定されている。ただし、フォ−クリフト10の運転手の前方視界を妨げない位置になるような任意の箇所の縦材5と縦材5との間に設置することが望ましい。
【0028】
以上のとおり本例のバックレスト15によれば、RFID用アンテナ6の位置および角度が荷物20に応じて調節可能に構成されているので、事前にアンテナ取り付け具7の位置及び角度を荷物20に応じて調節すれば、RFIDタグ50とRFID用アンテナ6の間のデータ送受信効率が高くなる。また、RFID用アンテナ6及びRFIDリーダライタ8ともに運転者の前方視界を妨げない位置に取り付けられているので、安全な運転を行うことができる。
【0029】
なお、上述した実施形態では、RFID用アンテナ6の位置と角度とをアンテナ取り付け具7を手動操作により調節するように構成したが、アンテナ取り付け具7にアクチュエータなどを設けて、これを駆動させるように構成してもよい。この場合に、RFIDタグ50との情報の授受の状態に応じて送受信効率が高い位置及び角度になるまでアクチュエータを駆動するように構成することもできる。
【符号の説明】
【0030】
15 バックレスト
2 受体
3 脚体
4 横材
5 縦材
6 RFID用アンテナ
7 可動式RFID用アンテナ取り付け具
8 RFID用リーダライタ
9 RFID用リーダライタ取り付け具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォークリフトのバックレストであって、
バックレストの垂直方向、水平方向および前後方向の少なくとも1つ以上の方向に対して位置調節が可能なRFID用アンテナの取り付け手段を備えることを特徴とするバックレスト。
【請求項2】
前記RFID用アンテナの取り付け手段は、バックレストの垂直方向に対してアンテナ角度が調節可能であることを特徴とする請求項1に記載のバックレスト。
【請求項3】
前記RFID用アンテナの取り付け手段は、バックレストの水平方向に対してアンテナ角度が調節可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のバックレスト。
【請求項4】
前記RFID用アンテナの取り付け手段は、バックレストの回転方向に対してアンテナ角度が調節可能であることを特徴とする請求項1及至3のいずれか1項に記載のバックレスト。
【請求項5】
前記RFID用アンテナの取り付け手段は、アンテナの角度が任意の方向に調節可能な構造としたことを特徴とする請求項1に記載のバックレスト。
【請求項6】
フォークリフト操作者の前方視界を妨げない位置に、RFID用リーダライタの取り付け手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1及至5のいずれかに記載のバックレスト。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−121733(P2011−121733A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281337(P2009−281337)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(591089877)昭和情報機器株式会社 (8)
【Fターム(参考)】