フォージングロール設備およびフォージング方法
【課題】ビレット成形のサイクルタイムを短縮でき、エネルギーロスやランニングコストを減らす。
【解決手段】一対のフォージングロール1a ,1bと、マニプレータ40と、入側搬送手段10と、出側搬送手段とを備えたフォージングロール設備Aであって、マニプレータ40が、ビレットBを把持解放自在なマニトング42と、マニトング42を前進後退させる移動手段を備えており、一対のフォージングロール1a ,1bの連続回転中において、移動手段が、一対のフォージングロール1a ,1bの外周面における成形型非取付部分同士が対面している間に、マニトング42を受取位置Iまで移動させ、入側搬送手段10が、一対の成形型MA ,MB同士が対面する前に、受取位置Iまで移動されたマニトング42にビレットBを供給する。
【解決手段】一対のフォージングロール1a ,1bと、マニプレータ40と、入側搬送手段10と、出側搬送手段とを備えたフォージングロール設備Aであって、マニプレータ40が、ビレットBを把持解放自在なマニトング42と、マニトング42を前進後退させる移動手段を備えており、一対のフォージングロール1a ,1bの連続回転中において、移動手段が、一対のフォージングロール1a ,1bの外周面における成形型非取付部分同士が対面している間に、マニトング42を受取位置Iまで移動させ、入側搬送手段10が、一対の成形型MA ,MB同士が対面する前に、受取位置Iまで移動されたマニトング42にビレットBを供給する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォージングロール設備およびフォージング方法に関する。
フォージングロールは主に鍛造品の歩留まりを向上させるためビレットを予備成形する設備である。したがって、一般的には、フォージングロール設備は、鍛造プレスの上流側の設備として鍛造プレスラインを構成している。
【背景技術】
【0002】
図8および図9に示すように、鍛造プレスラインのフォージングロール設備Aには、通常、一対のフォージングロール101a,101bを備えたフォージングロール装置100と、ビレットBを把持解放可能なマニトング103を有するマニピュレータ102と、前記マニトング103にビレットBを供給する入側搬送装置110とを備えている。上記の一対のフォージングロール101a,101bは、その表面に複数の成形溝が設けられた一対の成形型M,Mが設けられており、成形型M,M同士が対向すると、成形溝によって両者の間に複数のパスが形成されるのである。
【0003】
このようなフォージングロール設備Aでは、以下のようにしてビレットBが成形される(例えば、特許文献1参照)。
図10はロール成形作業中におけるフォージングロール101a,101bとマニトング103の相対的な位置を示した図である。図11(A)はロール成形作業中におけるフォージングロール101a,101bの回転速度の時間変動を示した図であり、(B)はロール成形作業中におけるマニトング103の移動速度の時間変動を示した図である。
図10および図11に示すように、まず、入側搬送装置110からマニトング103にビレットBが供給されると、ビレットBは、マニトング103によって把持された状態で、第一パスに配置される(図10(a))。
ついで、フォージングロール101a,101bが回転されると、ビレットBは、マニトング103によって成形型Mの表面の周速度と同じ速度で矢印aの方向に移動される(図11中Iの期間)。すると、ビレットBは、一対の成形型Mによって挟まれて成形される(図10(b),(c))。
成形が終了すると、ビレットBは、フォージングロール101a,101bよりもマニピュレータ102 側に引抜かれ(図10(d))、フォージングロール101a,101bの回転が停止する。そして、フォージングロール101a,101bの回転が停止している間(図11中IIの期間)に、ビレットBは、マニピュレータ102によって横送りされたのち第二パスに配置される。
【0004】
しかるに、フォージングロール101を使用する鍛造プレスラインでは、そのサイクルタイムがフォージングロール101におけるビレットBを成形するサイクルタイム、つまり、フォージングロール設備Aから鍛造プレスにビレットBを供給するサイクルタイムに左右される。ところが、上記のごとく、従来のフォージングロール設備Aでは、マニトング103を移動させてビレットBを各パスに配置するときには、一対のフォージングロール101a,101bの回転を停止させている。このため、一対のフォージングロール101a,101bの回転速度を、所定の速度にするまでの助走期間が必要であり、ビレットBを成形するサイクルタイムが長くなってしまう。
しかも、各工程を行うたびに、フォージングロール101の停止と再起動を行うので、エネルギーロスが大きいし、フォージングロール101の回転停止を制御するクラッチやブレーキの損傷が激しく、メンテナンス等のランニングコストの増大にもつながる。とくに、複数の成形行程を有するフォージングロール101の場合には、上記の問題が一層大きくなる。
【0005】
【特許文献1】特開平10―272533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる事情に鑑み、フォージングロールによるビレット成形のサイクルタイムを短縮でき、エネルギーロスやランニングコストを減らすことができるフォージングロール設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明のフォージングロール設備は、一対のフォージングロールと、該一対のフォージングロール間へのビレットの引込みと排出とを制御するマニプレータと、前記フォージングロールの反マニプレータ側に配置された、ビレットを前記マニプレータに供給する入側搬送手段と、ビレットを次工程に搬送する出側搬送手段とを備えたフォージングロール設備であって、前記一対のフォージングロールの外周面に、その中心軸に対して所定の角度範囲に、一対の成形型がそれぞれ取り付けられており、前記マニプレータが、ビレットを把持解放自在なマニトングと、該マニトングを、前記入側搬送手段からビレットを受け取る受取位置と、前記出側搬送手段にビレットを排出する排出位置との間で移動させる移動手段を備えており、前記一対のフォージングロールの連続回転中において、前記移動手段が、前記一対のフォージングロールの外周面における成形型非取付部分同士が対面している間に、前記マニトングを前記受取位置まで移動させ、前記入側搬送手段が、前記一対の成形型同士が対面する前に、前記受取位置まで移動された前記マニトングにビレットを供給することを特徴とする。
第2発明のフォージングロール設備は、第1発明において、前記一対の成形型が、両者の間に複数の成形パスを有する多工程成形型であり、前記移動手段が、前記マニトングを、前記一対の成形型間に形成される複数の成形パスに対応した複数の成形ラインに移動させる横送り機構と、前記複数の成形ラインにおいて、前記マニトングを、成形待機位置と工程終了位置との間で前進後退させる往復移動機構とを備えており、前記一対のフォージングロールの連続回転中において、前記往復移動機構が、前記一対のフォージングロールの外周面における成形型非取付部分同士が対面している間に、前記マニトングを前記成形待機位置まで移動させることを特徴とする。
第3発明のフォージングロール設備は、第2発明において、前記移動手段の横送り機構によって前記マニトングが最終成形ラインから第一成形ラインまで移動される間に、前記一対のフォージングロールが空転されることを特徴とする。
第4発明のフォージングロール設備は、第2発明において、前記最終成形ラインにおいて、前記成形待機位置と前記工程終了位置との間に、前記出側搬送手段にビレットを排出する排出位置が設けられており、前記マニトングが、前記移動手段の横送り機構によって最終成形ラインから第一成形ラインまで移動されるときに、前記往復移動機構によって前記排出位置から前記第一成形ラインの工程終了位置まで移動されることを特徴とする。
第5発明のフォージングロール設備は、第1発明において、前記入側搬送手段が、ビレット受けユニットと、該ビレット受けユニットを、ビレットを受取る中間位置と、ビレットを前記フォージングロールに供給する前進位置との間で進退させる前後進機構とからなり、前記ビレット受けユニットが、前記前進位置に配置されるタイミングと、前記マニトングが受取位置に配置されるタイミングとが同じタイミングになるように、前記前後進機構によって進退されることを特徴とする。
第6発明のフォージングロール設備は、第5発明において、前記入側搬送手段が、ビレット受けユニットと、該ビレット受けユニットを、ビレットを受取る中間位置と、ビレットを前記フォージングロールに供給する前進位置との間で進退させる前後進機構とからなり、前記ビレット受けユニットが、前記ビレットを前記マニトングに供給するときに、ビレットをマニトングに押しつける付勢機構を備えていることを特徴とする。
第7発明のフォージングロール設備は、第6発明において、前記ビレット受けユニットが、先端が開口し、その先端からビレットが供給されるビレット受け筒を備えており、前記付勢機構が、前記ビレット受け筒の底部に設けられ、該ビレット受け筒の軸方向に沿って伸縮可能に設けられたバネと、該バネとビレット受けユニットの先端側との間に設けられた付勢部材とを備えており、前記マニトングを受取位置に配置した状態において、前記ビレット受けユニットを前進位置に配置されると、前記マニトングと前記ビレット受け筒の底面との間の距離が、前記バネの取付長と、前記ビレット受け筒の軸方向におけるビレットの長さと、前記ビレット受け筒の軸方向における前記付勢部材の長さとを合わせた長さよりも短くなることを特徴とする。
第8発明のフォージング方法は、一対のフォージングロールと、該一対のフォージングロール間へのビレットの引込みと排出とを制御するマニプレータと、前記フォージングロールの反マニプレータ側に配置された、ビレットを前記マニプレータに供給する入側搬送手段と、ビレットを次工程に搬送する出側搬送手段とを備えたフォージングロール設備において、前記一対のフォージングロールの外周面に、その中心軸に対して所定の角度範囲に、一対の成形型がそれぞれ取り付けられており、前記マニプレータが、ビレットを把持解放自在なマニトングと、該マニトングを、前記入側搬送手段からビレットを受け取る受取位置と、前記出側搬送手段にビレットを排出する排出位置との間で移動させる移動手段を備えており、前記一対のフォージングロールの連続回転中において、前記移動手段が、前記一対のフォージングロールの外周面における成形型非取付部分同士が対面している間に、前記マニトングを前記受取位置まで移動させ、前記入側搬送手段が、前記一対の成形型同士が対面する前に、前記受取位置まで移動された前記マニトングにビレットを供給することを特徴とする。
第9発明のフォージング方法は、第8発明において、前記一対の成形型が、両者の間に複数の成形パスを有する多工程成形型であり、前記移動手段が、前記マニトングを、前記一対の成形型間に形成される複数の成形パスに対応した複数の成形ラインに移動させる横送り機構と、前記複数の成形ラインにおいて、前記マニトングを、成形待機位置と工程終了位置との間で前進後退させる往復移動機構とを備えており、前記一対のフォージングロールの連続回転中において、前記往復移動機構が、前記一対のフォージングロールの外周面における成形型非取付部分同士が対面している間に、前記マニトングを前記成形待機位置まで移動させることを特徴とする。
第10発明のフォージング方法は、第9発明において、前記移動手段の横送り機構によって前記マニトングが最終成形ラインから第一成形ラインまで移動される間に、前記一対のフォージングロールが空転されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、フォージングロールの連続回転中において、成形型同士が対面していないとき、つまり成形型同士が再び対面するまでの間に、入側搬送手段からマニトングにビレットを供給することができるので、ビレットを供給するためにフォージングロールの回転を停止させる必要がない。このため、ビレットを成形するサイクルタイムを短くすることができるし、フォージングロールを、常に一定の回転数で回転させておくことができるから、エネルギーロスも少なくできる。また、フォージングロールの回転停止を制御するクラッチやブレーキを、フォージング作業を暫く休止するとき以外には使用しなくてすむので、クラッチやブレーキの損傷を抑えることができ、メンテナンス等のランニングコストを低減することができる。
第2発明によれば、多工程成形型によってビレットを成形する場合であっても、フォージングロールの回転を停止させることなく各工程の成形を行うことができるので、ビレットを成形するサイクルタイムを短くすることができ、エネルギーロスも少なくでき、メンテナンス等のランニングコストを低減することができる。
第3発明によれば、マニトングが最終成形ラインから第一成形ラインまで移動されるときに、一対のフォージングロールを空転させる、つまり、一のビレットの成形が終了してから、次のビレットを受け入れるまでの期間もフォージングロールの回転を停止させないので、クラッチやブレーキの損傷を抑えることができる。また、空転させる回転を1回だけにすれば、成形作業を行わない期間を短縮することができるから、生産効率が低下することを防ぐことができる。
第4発明によれば、マニトングを、最終成形ラインから第一成形ラインまで移動させながら排出位置から工程終了位置まで後退させているから、一のビレットを排出してから次のビレットを受け入れるまでの時間を短縮することができる。よって、ビレットを成形するサイクルタイムを短くすることができ、生産効率を高くすることができる。
第5発明によれば、ビレット受けユニットからマニトングにビレットを受け渡すために必要とする時間を短くすることができる。言い換えれば、マニトングが、一対のフォージングロール間で静止している時間を短くすることができるので、一対のフォージングロールを連続回転させた状態においても、確実かつ安全にビレットの受け渡しを行うことができる。
第6発明によれば、入側搬送手段からマニトングにビレットを受け渡すときに、ビレット受けユニットの付勢機構によってビレットがマニトングに押しつけられるので、ビレットをマニトングに確実に供給することができる。
第7発明によれば、マニトングを受取位置に配置した状態において、ビレット受けユニットを前進位置に配置すれば、付勢部材を介してバネがビレットに押されて収縮することになる。逆にいえば、付勢部材を介してバネによってビレットがマニトングに押しつけられる。しかも、マニトングが受取位置から後退を開始しても、受取位置から後退した移動量がバネの収縮量と同じ長さになるまでは、ビレットをマニトングに押しつけたままにしておくことができるので、ビレットをマニトングに確実に供給することができる。また、バネによってビレットを付勢しているだけであるから、付勢機構の構造を簡単にできる。
第8発明によれば、フォージングロールの連続回転中において、成形型同士が対面していないとき、つまり成形型同士が再び対面するまでの間に、入側搬送手段からマニトングにビレットを供給することができるので、ビレットを供給するためにフォージングロールの回転を停止させる必要がない。このため、ビレットを成形するサイクルタイムを短くすることができるし、フォージングロールを、常に一定の回転数で回転させておくことができるから、エネルギーロスも少なくできる。また、フォージングロールの回転停止を制御するクラッチやブレーキを、フォージング作業を暫く休止するとき以外には使用しなくてすむので、クラッチやブレーキの損傷を抑えることができ、メンテナンス等のランニングコストを低減することができる。
第9発明によれば、多工程成形型によってビレットを成形する場合であっても、フォージングロールの回転を停止させることなく各工程の成形を行うことができるので、ビレットを成形するサイクルタイムを短くすることができ、エネルギーロスも少なくでき、メンテナンス等のランニングコストを低減することができる。
第10発明によれば、マニトングが最終成形ラインから第一成形ラインまで移動されるときに、一対のフォージングロールを空転させる、つまり、一のビレットの成形が終了してから、次のビレットを受け入れるまでの期間もフォージングロールの回転を停止させないので、クラッチやブレーキの損傷を抑えることができる。また、空転させる回転を1回だけにすれば、成形作業を行わない期間を短縮することができるから、生産効率が低下することを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本実施形態のフォージングロール設備Aの概略平面図である。図2はマニプレータ40の概略説明図である。図3および図4はビレットBの成形作業中におけるマニトング42の動きを示した図である。図5はビレットBの成形作業中におけるマニトング42の移動とフォージングロール1の回転のタイミングを示したチャートである。図6はビレットBを入側搬送手段10からマニトング42に受け渡している状態の概略説明図である。図7はビレットBを入側搬送手段10が受け取る状態の概略説明図である。
【0010】
図1および図6において、符合1は、フォージングロールを示している。このフォージングロール1は、一対のロール1a,1bから構成されており、一対のロール1a,1bの外周面には、ビレットBを成形するための成形型MA,MBがそれぞれ取り付けられている。この成形型MA,MBは、ロール1a,1bの外周面において、ロール1a,1bの中心軸に対して40〜 180°の角度範囲に、一対のロール1a,1bを回転させると互いに対向するように取り付けられている。また、一対の成形型MA,MBには、それぞれ4本の成形溝が形成されており、一対の成形型MA,MBが対向すると、両者の間に4本の成形パスが形成される。つまり、一対の成形型MA,MBは、複数本の成形パスを有する多工程成形型であり、図1では、下から上に向かって、第一成形パス、第二成形パス、第三成形パス、第四成形パスの順に並んでいる。
なお、一対の成形型MA,MB間に形成される成形パスの本数は4本に限られず、3本以下でもよいし、5本以上でもよい。
【0011】
図1に示すように、前記フォージングロール1の側方には、このフォージングロール1を挟むようにマニプレータ40と入側搬送手段10が設けられている。
入側搬送手段10は、前記フォージングロール1の反マニプレータ側、つまりマニプレータ40との間にフォージングロール1を挟む位置に設けられている。この入側搬送手段10は、図示しないインダクションヒータから供給されたビレットBをマニプレータ40に供給するためのものであるが、詳細は後述する。
【0012】
マニプレータ40は、入側搬送手段10から供給されたビレットBを一対のロール1a,1b間に引き込み、フォージングロール1による成形が終了したビレットBを図示しない出側搬送手段に供給するものである。
図1および図2において、符号41はマニプレータ40のアームを示している。このアーム41は、その軸が、前記成形型MA,MB間に形成される複数の成形パスの中心軸を含む平面(以下、単にパス平面という)上において、複数の成形パスの中心軸と平行となるように配置されている。このアーム41の先端、つまりフォージングロール1側の端部には、入側搬送手段10から供給されるビレットBを把持解放可能に支持するマニトング42が設けられている。
【0013】
このマニプレータ40は、前記アーム41とともマニトング42を平行移動させる横送り機構45を備えている。この横送り機構45は、中心軸が前記一対のロール1a,1bの回転軸と平行かつ前記パス平面と平行な平面内に位置するように設けられた一対の軸47,47と、この一対の軸47,47に沿って移動可能に設けられた移動ベース48と、この移動ベース48を移動させるボールネジ機構46とから構成されている。
このため、ボールネジ機構46のサーボモータ46a を駆動すると、軸47と平行に設けられたネジ軸46b が回転され、前記移動ベース48に固定されたナット部材46c がネジ軸46b に沿って移動するので、移動ベース48とともにアーム41を一対の軸47,47の軸方向に沿って移動させることができる。言い換えれば、アーム41とともマニトング42を前記パス平面内と平行に移動させることができる。
そして、この横送り機構45によってアーム41を移動させたときに、アーム41の中心軸と前記4本の成形パスの中心軸が一致する位置が、4本の成形ラインa〜dとなるのである。
【0014】
また、マニプレータ40は、アーム41をその軸方向に沿ってフォージングロール1の回転に同期して前進後退させる往復移動機構49を備えている。この往復移動機構49は、図示しないが、フォージングロール1のロール軸軸端に設けたカム形状に従い、レバー、リンクを介してマニプレータ40を前進、後退させるものである。そして、各成形ラインa〜dにおいて、アーム41が前進したときのマニトング42の位置が成形待機位置Iであり、アーム41が後退したときのマニトング42の位置が工程終了位置IIである。なお、第一成形ラインaでは、成形待機位置Iが受取位置に該当する。
また、第四成形ライン、つまり最終成形ラインdでは、成形待機位置Iと工程終了位置IIとの間に排出位置IIIが設けられている。
【0015】
つぎに、ビレットBの成形作業中におけるマニトング42の移動を、図3、図4および図5に基づいて説明する。
まず、フォージングロール1の回転によって一対の成形型MA,MBが非対面状態(図5中、A1の区間)になると、往復移動機構49によってアーム41が前進され、第一成形ラインaの工程終了位置IIにあるマニトング42が受取位置Iまで移動する。すると、入側搬送手段10からビレットBが供給され、このビレットBをマニトング42が把持する(図3(A))。
【0016】
ビレットBを把持すると、往復移動機構49によってアーム41が後退を開始し、マニトング42も、アーム41とともに一対の成形型MA,MBにおける互いに対向する面の周速度と同じ速度で、工程終了位置IIに向かって後退を開始する。すると、ビレットBは、一対のロール1a,1b間を通過するときに、一対の成形型MA,MBの第1パスによって成形され(図5中、B1の区間)、マニトング42は工程終了位置IIまで移動する(図3(B))。
【0017】
工程終了位置IIまで移動したときには、一対の成形型MA,MBが再び非対面状態(図5中、A2の区間)となるが、再び一対の成形型MA,MBが対面状態となるまでの間に、マニトング42は、横送り機構45によってアーム41とともに第二成形ラインbまで移動され(図3(C))、かつ往復移動機構49によって第二成形ラインbの成形待機位置Iまで移動される。つまり、マニトング42は、ロール1a,1bが一回転する間に、第一成形ラインaの受取位置Iから第二成形ラインbの成形待機位置Iまで移動するのである(図3(D))。
【0018】
第二成形ラインbの成形待機位置Iまで移動されると、マニトング42は、再び一対の成形型MA,MBにおける互いに対向する面の周速度と同じ速度で後退し、第2パスによってビレットBが形成され(図5中、B2の区間)、マニトング42は工程終了位置IIまで移動する。
【0019】
上記と同様の手順で、第二成形ラインbの工程終了位置IIから最終成形ラインdの工程終了位置IIまでマニトング42を移動させれば、第三成形ラインc、最終成形ラインdにおいてもビレットBが成形され、フォージングロール1によるビレットBの成形が終了する。
【0020】
そして、最終成形ラインdにおけるビレットBの成形が終了すると、一対の成形型MA,MBが再び非対面状態(図5中、A5の区間)となっている間に、マニトング42は工程終了位置IIから排出位置IIIまで前進され、排出位置IIIにおいてビレットBを解放するので、ビレットBは図示しない出側搬送手段に排出される(図4(E)、(F))。
【0021】
ビレットBを解放したマニトング42は、フォージングロール1が1回転する間(図5中、A5、B5の区間)に、最終成形ラインdの排出位置III から第一成形ラインaの工程終了位置IIまで移動される。つまり、マニトング42は、往復移動機構49によってアーム41とともに後退されると同時に横送り機構45によってアーム41とともに最終成形ラインdから第一成形ラインaまで移動されるのである(図4(F)、(G))。
そして、マニトング42が第1成形ラインaの工程終了位置IIに戻ったときには、一対の成形型MA,MBが非対面状態(図5中、A6の区間)となっているので、マニトング42は再び往復移動機構49によってアーム41とともに前進され、受取位置Iに配置され、次のビレットBを受け取るのである(図4(H))。
【0022】
上記のごとく、本実施形態のフォージングロール設備Aによれば、成形型MA,MB同士が対面していないときに、つまり成形型MA,MB同士が対面してから再び対面するまでの間に、入側搬送手段10からマニトング42にビレットBを供給することができ、そして、多工程成形型によってビレットBを成形する場合であれば、成形型MA,MB同士が対面していない間、つまりロール1a ,1bが一回転する間に、次工程の成形待機位置Iまでマニトング42を移動させることができる。
よって、フォージングロール1を連続回転させた状態であっても、ビレットBの供給、およびビレットBの連続成形を行なうことができる。言い換えれば、ビレットBの供給および成形をフォージングロール1の回転を停止させずに行うことができるから、ビレットBを成形するサイクルタイムを短くすることができる。
しかも、フォージングロール1を、常に一定の回転数で回転させておくことができるから、エネルギーロスも少なくできるし、フォージングロール1の回転停止を制御するクラッチやブレーキを、成形作業を暫く休止するとき以外には使用しなくてすむので、クラッチやブレーキの損傷を抑えることができ、メンテナンス等のランニングコストを低減することができる。
【0023】
また、一のビレットBの成形が終了した後、マニトング42が最終成形ラインdから第一成形ラインaまで移動されるときに、一対のフォージングロール1を空転させる、つまり、一のビレットBの成形が終了してから、次のビレットBを受け入れるまでの期間もフォージングロール1の回転を停止させないので、クラッチやブレーキの損傷を抑えることができる。
なお、空転させる回転は1回に限られないが、空転させる回転を1回だけにしすれば、成形作業を行わない期間を短縮することができるから、ロール1a ,1bを空転させたとしても生産効率が低下することを防ぐことができる。
【0024】
さらに、マニトング42を、最終成形ラインdから第一成形ラインaまで移動させながら排出位置III から工程終了位置IIまで後退させているから、一のビレットBを排出してから次のビレットBを受け入れるまでの時間をさらに短縮することができる。よって、ビレットBを成形するサイクルタイムを短くすることができ、生産効率を高くすることができる。
【0025】
つぎに、入側搬送手段10を詳細に説明する。
図6および図7に示すように、本実施形態のフォージングロール設備Aに使用されている入側搬送手段10の構造は、特願2000―300177号公報に記載されている入側プッシャ装置と実質同様の構成を有するものであり、ビレット受けユニット30に付勢手段を設けたことが特徴である。
そこで、ビレット受けユニット30の構造を説明する前に、前記文献の入側プッシャ装置と実質同様の構成を有する部分、具体的には、前後進機構および姿勢変更機構の構造について簡単に説明する。
【0026】
図6および図7において、符号11は本体ケーシング11を示しており、符号12はモータを示している。このモータ12にはネジ棒13が連結されており、このネジ棒13には、スライダ17に固定されたナット部材16が螺合している。このスライダ17には、連結軸21が回転自在に通されている。
この連結軸21の一端には、先端にカムフォロアー23が取付けられた図示しないアームが結合されている。このカムフォロアー23は、本体ケーシング11の背面側に設けられたカム板25のカム溝26に摺動可能に取り付けられている。また、連結軸21の他端には、ビレット受けユニット30が固定されている。
このため、モータ12を駆動すれば、スライダ17が前後進されるから、ビレット受けユニット30を、ビレットBを受取る中間位置Cと、ビレットBをフォージングロール1に供給する前進位置Dとの間で進退させることができるのである。
そして、スライダ17が前後進すると、カムフォロアー23がカム溝26内を摺動しながら上下に変位するから、アームを介して連結軸21が回転する。すると、ビレット受けユニット30の姿勢が変化するから、ビレット受けユニット30を、中間位置CではビレットBの受け入れに適した姿勢とすることができ、前進位置Dでは後述するビレット受け筒32の軸方向と一対の成形型MA,MBの第一成形パスの軸方向とが一致するような姿勢とすることができるのである。
【0027】
そして、モータ12の駆動は、ビレット受けユニット30の前進後退が、前記マニトング42の移動と連動するように制御されている。具体的には、ビレット受けユニット30が前進位置Dに配置されるタイミングが、マニトング42が受取位置Iに配置されるタイミングと同じタイミングになるように、モータ12の駆動が制御される。
すると、ビレット受けユニット30からマニトング42へのビレット受け渡し時間を短くすることができる。言い換えれば、マニトング42が、一対のフォージングロール1a ,1b間で静止している時間を短くすることができる。したがって、一対のフォージングロール1a ,1bを連続回転させた状態においても、入側搬送手段10からマニトング42に確実かつ安全にビレットBを受け渡すとができる。
【0028】
さて、ビレット受けユニット30について説明する。
図6および図7に示すように、連結軸21の端部には、ビレット受け筒32が固定されている。このビレット受け筒32は円筒状の部材であり、先端側が開口されている。このビレット受け筒32の内部は、仕切部32a によって先端側(以下、ビレット収容室という)と基端側(以下、付勢室という)に分離されている。
また、ビレット受け筒32の内部には、付勢部材である押し棒33が配置されており、この押し棒33は、仕切部32a を貫通しかつビレット受け筒32の中心軸に沿って摺動可能に取りつけられている。この押し棒33における付勢室内部の一端には、プレート33a が設けられており、このプレート33a と付勢室の底面との間には、バネ34が設けられている。
このバネ34は、ビレット受け筒32内にビレットBが収容されていない状態の長さ(以下、取付長L3という)が、自然長よりも短くなるようにとなるように圧縮荷重を加えた状態で付勢室に収容されている。具体的には、中間位置CにおいてビレットBを受け入れたときに、押し棒33を介してバネ34に加わる荷重よりも少し強い圧縮荷重を加えた状態で付勢室内に取り付けられている。
【0029】
そして、ビレット受けユニット30は、前記マニトング42が受取位置Iに配置した状態において、前進位置Dに配置されると、マニトング42とビレット受け筒32の底面との間の距離が、バネ34の取付長L3と、ビレット受け筒32の軸方向におけるビレットBの長さL1と、ビレット受け筒32の軸方向における押し棒34の先端部長さL2とを合わせた長さよりも短くなるように構成されている。
【0030】
このため、ビレット受けユニット30からマニトング42にビレットBを受け渡すときに、押し棒33を介してバネ34がビレットBに押されて収縮することになる。逆にいえば、押し棒33を介してビレットBがバネ34によってマニトング42に押しつけられるから、ビレットBをマニトング42に確実に供給することができる。
しかも、マニトング42が受取位置Iから後退を開始しても、受取位置Iから後退した移動量がバネ34の収縮量と同じ長さになるまでは、ビレットBをマニトング42に押しつけたままにしておくことができる。つまり、マニトング42によってビレットBを把持するための期間を長くすることができるから、ビレットBをマニトング42に確実に供給することができる。
【0031】
また、バネ34は、上述したような圧縮荷重が加えられた状態で付勢室内に取り付けられており、ビレットBを受け入れたときに収縮しないから、前記マニトング42が受取位置Iに配置され、ビレット受けユニット30が前進位置Dに配置されたときに、バネ34によってビレットBをマニトング42に確実に押しつけることができる。
【0032】
そして、ビレットBをマニトング42に付勢する機構は、バネ34と押し棒33だけであるから、ビレット受けユニット30の構造を簡単にできる。
上記の押し棒33およびバネ34が、特許請求の範囲にいう付勢手段である。
【0033】
なお、付勢手段は上記のごとき構成に限られず、ビレット受けユニット30からマニトング42にビレットを受け渡すときに、ビレットBをマニトング42に押しつけることができるものであれば、エアシリンダなどでもよく、特に限定はない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態のフォージングロール設備Aの概略平面図である。
【図2】マニプレータ40の概略説明図である。
【図3】ビレットBの成形作業中におけるマニトング42の動きを示した図である。
【図4】ビレットBの成形作業中におけるマニトング42の動きを示した図である。
【図5】ビレットBの成形作業中におけるマニトング42の移動とフォージングロール1の回転のタイミングを示したチャートである。
【図6】ビレットBを入側搬送手段10からマニトング42に受け渡している状態の概略説明図である。
【図7】ビレットBを入側搬送手段10が受け取る状態の概略説明図である。
【図8】従来のフォージングロール設備の概略説明図である。
【図9】従来のフォージングロール設備の概略説明図である。
【図10】ロール成形作業中におけるフォージングロール101a,101bとマニトング103の相対的な位置を示した図である。
【図11】(A)はロール成形作業中におけるフォージングロール101a,101bの回転速度の時間変動を示した図であり、(B)はロール成形作業中におけるマニトング103の移動速度の時間変動を示した図である。
【符号の説明】
【0035】
1 フォージングロール
10 入側搬送装置
30 ビレット受けユニット
32 ビレット受け筒
34 バネ
40 マニプレータ
42 マニトング
45 横送り機構
49 往復移動機構
A フォージングロール設備
B ビレット
MA 成形型
MB 成形型
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォージングロール設備およびフォージング方法に関する。
フォージングロールは主に鍛造品の歩留まりを向上させるためビレットを予備成形する設備である。したがって、一般的には、フォージングロール設備は、鍛造プレスの上流側の設備として鍛造プレスラインを構成している。
【背景技術】
【0002】
図8および図9に示すように、鍛造プレスラインのフォージングロール設備Aには、通常、一対のフォージングロール101a,101bを備えたフォージングロール装置100と、ビレットBを把持解放可能なマニトング103を有するマニピュレータ102と、前記マニトング103にビレットBを供給する入側搬送装置110とを備えている。上記の一対のフォージングロール101a,101bは、その表面に複数の成形溝が設けられた一対の成形型M,Mが設けられており、成形型M,M同士が対向すると、成形溝によって両者の間に複数のパスが形成されるのである。
【0003】
このようなフォージングロール設備Aでは、以下のようにしてビレットBが成形される(例えば、特許文献1参照)。
図10はロール成形作業中におけるフォージングロール101a,101bとマニトング103の相対的な位置を示した図である。図11(A)はロール成形作業中におけるフォージングロール101a,101bの回転速度の時間変動を示した図であり、(B)はロール成形作業中におけるマニトング103の移動速度の時間変動を示した図である。
図10および図11に示すように、まず、入側搬送装置110からマニトング103にビレットBが供給されると、ビレットBは、マニトング103によって把持された状態で、第一パスに配置される(図10(a))。
ついで、フォージングロール101a,101bが回転されると、ビレットBは、マニトング103によって成形型Mの表面の周速度と同じ速度で矢印aの方向に移動される(図11中Iの期間)。すると、ビレットBは、一対の成形型Mによって挟まれて成形される(図10(b),(c))。
成形が終了すると、ビレットBは、フォージングロール101a,101bよりもマニピュレータ102 側に引抜かれ(図10(d))、フォージングロール101a,101bの回転が停止する。そして、フォージングロール101a,101bの回転が停止している間(図11中IIの期間)に、ビレットBは、マニピュレータ102によって横送りされたのち第二パスに配置される。
【0004】
しかるに、フォージングロール101を使用する鍛造プレスラインでは、そのサイクルタイムがフォージングロール101におけるビレットBを成形するサイクルタイム、つまり、フォージングロール設備Aから鍛造プレスにビレットBを供給するサイクルタイムに左右される。ところが、上記のごとく、従来のフォージングロール設備Aでは、マニトング103を移動させてビレットBを各パスに配置するときには、一対のフォージングロール101a,101bの回転を停止させている。このため、一対のフォージングロール101a,101bの回転速度を、所定の速度にするまでの助走期間が必要であり、ビレットBを成形するサイクルタイムが長くなってしまう。
しかも、各工程を行うたびに、フォージングロール101の停止と再起動を行うので、エネルギーロスが大きいし、フォージングロール101の回転停止を制御するクラッチやブレーキの損傷が激しく、メンテナンス等のランニングコストの増大にもつながる。とくに、複数の成形行程を有するフォージングロール101の場合には、上記の問題が一層大きくなる。
【0005】
【特許文献1】特開平10―272533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる事情に鑑み、フォージングロールによるビレット成形のサイクルタイムを短縮でき、エネルギーロスやランニングコストを減らすことができるフォージングロール設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明のフォージングロール設備は、一対のフォージングロールと、該一対のフォージングロール間へのビレットの引込みと排出とを制御するマニプレータと、前記フォージングロールの反マニプレータ側に配置された、ビレットを前記マニプレータに供給する入側搬送手段と、ビレットを次工程に搬送する出側搬送手段とを備えたフォージングロール設備であって、前記一対のフォージングロールの外周面に、その中心軸に対して所定の角度範囲に、一対の成形型がそれぞれ取り付けられており、前記マニプレータが、ビレットを把持解放自在なマニトングと、該マニトングを、前記入側搬送手段からビレットを受け取る受取位置と、前記出側搬送手段にビレットを排出する排出位置との間で移動させる移動手段を備えており、前記一対のフォージングロールの連続回転中において、前記移動手段が、前記一対のフォージングロールの外周面における成形型非取付部分同士が対面している間に、前記マニトングを前記受取位置まで移動させ、前記入側搬送手段が、前記一対の成形型同士が対面する前に、前記受取位置まで移動された前記マニトングにビレットを供給することを特徴とする。
第2発明のフォージングロール設備は、第1発明において、前記一対の成形型が、両者の間に複数の成形パスを有する多工程成形型であり、前記移動手段が、前記マニトングを、前記一対の成形型間に形成される複数の成形パスに対応した複数の成形ラインに移動させる横送り機構と、前記複数の成形ラインにおいて、前記マニトングを、成形待機位置と工程終了位置との間で前進後退させる往復移動機構とを備えており、前記一対のフォージングロールの連続回転中において、前記往復移動機構が、前記一対のフォージングロールの外周面における成形型非取付部分同士が対面している間に、前記マニトングを前記成形待機位置まで移動させることを特徴とする。
第3発明のフォージングロール設備は、第2発明において、前記移動手段の横送り機構によって前記マニトングが最終成形ラインから第一成形ラインまで移動される間に、前記一対のフォージングロールが空転されることを特徴とする。
第4発明のフォージングロール設備は、第2発明において、前記最終成形ラインにおいて、前記成形待機位置と前記工程終了位置との間に、前記出側搬送手段にビレットを排出する排出位置が設けられており、前記マニトングが、前記移動手段の横送り機構によって最終成形ラインから第一成形ラインまで移動されるときに、前記往復移動機構によって前記排出位置から前記第一成形ラインの工程終了位置まで移動されることを特徴とする。
第5発明のフォージングロール設備は、第1発明において、前記入側搬送手段が、ビレット受けユニットと、該ビレット受けユニットを、ビレットを受取る中間位置と、ビレットを前記フォージングロールに供給する前進位置との間で進退させる前後進機構とからなり、前記ビレット受けユニットが、前記前進位置に配置されるタイミングと、前記マニトングが受取位置に配置されるタイミングとが同じタイミングになるように、前記前後進機構によって進退されることを特徴とする。
第6発明のフォージングロール設備は、第5発明において、前記入側搬送手段が、ビレット受けユニットと、該ビレット受けユニットを、ビレットを受取る中間位置と、ビレットを前記フォージングロールに供給する前進位置との間で進退させる前後進機構とからなり、前記ビレット受けユニットが、前記ビレットを前記マニトングに供給するときに、ビレットをマニトングに押しつける付勢機構を備えていることを特徴とする。
第7発明のフォージングロール設備は、第6発明において、前記ビレット受けユニットが、先端が開口し、その先端からビレットが供給されるビレット受け筒を備えており、前記付勢機構が、前記ビレット受け筒の底部に設けられ、該ビレット受け筒の軸方向に沿って伸縮可能に設けられたバネと、該バネとビレット受けユニットの先端側との間に設けられた付勢部材とを備えており、前記マニトングを受取位置に配置した状態において、前記ビレット受けユニットを前進位置に配置されると、前記マニトングと前記ビレット受け筒の底面との間の距離が、前記バネの取付長と、前記ビレット受け筒の軸方向におけるビレットの長さと、前記ビレット受け筒の軸方向における前記付勢部材の長さとを合わせた長さよりも短くなることを特徴とする。
第8発明のフォージング方法は、一対のフォージングロールと、該一対のフォージングロール間へのビレットの引込みと排出とを制御するマニプレータと、前記フォージングロールの反マニプレータ側に配置された、ビレットを前記マニプレータに供給する入側搬送手段と、ビレットを次工程に搬送する出側搬送手段とを備えたフォージングロール設備において、前記一対のフォージングロールの外周面に、その中心軸に対して所定の角度範囲に、一対の成形型がそれぞれ取り付けられており、前記マニプレータが、ビレットを把持解放自在なマニトングと、該マニトングを、前記入側搬送手段からビレットを受け取る受取位置と、前記出側搬送手段にビレットを排出する排出位置との間で移動させる移動手段を備えており、前記一対のフォージングロールの連続回転中において、前記移動手段が、前記一対のフォージングロールの外周面における成形型非取付部分同士が対面している間に、前記マニトングを前記受取位置まで移動させ、前記入側搬送手段が、前記一対の成形型同士が対面する前に、前記受取位置まで移動された前記マニトングにビレットを供給することを特徴とする。
第9発明のフォージング方法は、第8発明において、前記一対の成形型が、両者の間に複数の成形パスを有する多工程成形型であり、前記移動手段が、前記マニトングを、前記一対の成形型間に形成される複数の成形パスに対応した複数の成形ラインに移動させる横送り機構と、前記複数の成形ラインにおいて、前記マニトングを、成形待機位置と工程終了位置との間で前進後退させる往復移動機構とを備えており、前記一対のフォージングロールの連続回転中において、前記往復移動機構が、前記一対のフォージングロールの外周面における成形型非取付部分同士が対面している間に、前記マニトングを前記成形待機位置まで移動させることを特徴とする。
第10発明のフォージング方法は、第9発明において、前記移動手段の横送り機構によって前記マニトングが最終成形ラインから第一成形ラインまで移動される間に、前記一対のフォージングロールが空転されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、フォージングロールの連続回転中において、成形型同士が対面していないとき、つまり成形型同士が再び対面するまでの間に、入側搬送手段からマニトングにビレットを供給することができるので、ビレットを供給するためにフォージングロールの回転を停止させる必要がない。このため、ビレットを成形するサイクルタイムを短くすることができるし、フォージングロールを、常に一定の回転数で回転させておくことができるから、エネルギーロスも少なくできる。また、フォージングロールの回転停止を制御するクラッチやブレーキを、フォージング作業を暫く休止するとき以外には使用しなくてすむので、クラッチやブレーキの損傷を抑えることができ、メンテナンス等のランニングコストを低減することができる。
第2発明によれば、多工程成形型によってビレットを成形する場合であっても、フォージングロールの回転を停止させることなく各工程の成形を行うことができるので、ビレットを成形するサイクルタイムを短くすることができ、エネルギーロスも少なくでき、メンテナンス等のランニングコストを低減することができる。
第3発明によれば、マニトングが最終成形ラインから第一成形ラインまで移動されるときに、一対のフォージングロールを空転させる、つまり、一のビレットの成形が終了してから、次のビレットを受け入れるまでの期間もフォージングロールの回転を停止させないので、クラッチやブレーキの損傷を抑えることができる。また、空転させる回転を1回だけにすれば、成形作業を行わない期間を短縮することができるから、生産効率が低下することを防ぐことができる。
第4発明によれば、マニトングを、最終成形ラインから第一成形ラインまで移動させながら排出位置から工程終了位置まで後退させているから、一のビレットを排出してから次のビレットを受け入れるまでの時間を短縮することができる。よって、ビレットを成形するサイクルタイムを短くすることができ、生産効率を高くすることができる。
第5発明によれば、ビレット受けユニットからマニトングにビレットを受け渡すために必要とする時間を短くすることができる。言い換えれば、マニトングが、一対のフォージングロール間で静止している時間を短くすることができるので、一対のフォージングロールを連続回転させた状態においても、確実かつ安全にビレットの受け渡しを行うことができる。
第6発明によれば、入側搬送手段からマニトングにビレットを受け渡すときに、ビレット受けユニットの付勢機構によってビレットがマニトングに押しつけられるので、ビレットをマニトングに確実に供給することができる。
第7発明によれば、マニトングを受取位置に配置した状態において、ビレット受けユニットを前進位置に配置すれば、付勢部材を介してバネがビレットに押されて収縮することになる。逆にいえば、付勢部材を介してバネによってビレットがマニトングに押しつけられる。しかも、マニトングが受取位置から後退を開始しても、受取位置から後退した移動量がバネの収縮量と同じ長さになるまでは、ビレットをマニトングに押しつけたままにしておくことができるので、ビレットをマニトングに確実に供給することができる。また、バネによってビレットを付勢しているだけであるから、付勢機構の構造を簡単にできる。
第8発明によれば、フォージングロールの連続回転中において、成形型同士が対面していないとき、つまり成形型同士が再び対面するまでの間に、入側搬送手段からマニトングにビレットを供給することができるので、ビレットを供給するためにフォージングロールの回転を停止させる必要がない。このため、ビレットを成形するサイクルタイムを短くすることができるし、フォージングロールを、常に一定の回転数で回転させておくことができるから、エネルギーロスも少なくできる。また、フォージングロールの回転停止を制御するクラッチやブレーキを、フォージング作業を暫く休止するとき以外には使用しなくてすむので、クラッチやブレーキの損傷を抑えることができ、メンテナンス等のランニングコストを低減することができる。
第9発明によれば、多工程成形型によってビレットを成形する場合であっても、フォージングロールの回転を停止させることなく各工程の成形を行うことができるので、ビレットを成形するサイクルタイムを短くすることができ、エネルギーロスも少なくでき、メンテナンス等のランニングコストを低減することができる。
第10発明によれば、マニトングが最終成形ラインから第一成形ラインまで移動されるときに、一対のフォージングロールを空転させる、つまり、一のビレットの成形が終了してから、次のビレットを受け入れるまでの期間もフォージングロールの回転を停止させないので、クラッチやブレーキの損傷を抑えることができる。また、空転させる回転を1回だけにすれば、成形作業を行わない期間を短縮することができるから、生産効率が低下することを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本実施形態のフォージングロール設備Aの概略平面図である。図2はマニプレータ40の概略説明図である。図3および図4はビレットBの成形作業中におけるマニトング42の動きを示した図である。図5はビレットBの成形作業中におけるマニトング42の移動とフォージングロール1の回転のタイミングを示したチャートである。図6はビレットBを入側搬送手段10からマニトング42に受け渡している状態の概略説明図である。図7はビレットBを入側搬送手段10が受け取る状態の概略説明図である。
【0010】
図1および図6において、符合1は、フォージングロールを示している。このフォージングロール1は、一対のロール1a,1bから構成されており、一対のロール1a,1bの外周面には、ビレットBを成形するための成形型MA,MBがそれぞれ取り付けられている。この成形型MA,MBは、ロール1a,1bの外周面において、ロール1a,1bの中心軸に対して40〜 180°の角度範囲に、一対のロール1a,1bを回転させると互いに対向するように取り付けられている。また、一対の成形型MA,MBには、それぞれ4本の成形溝が形成されており、一対の成形型MA,MBが対向すると、両者の間に4本の成形パスが形成される。つまり、一対の成形型MA,MBは、複数本の成形パスを有する多工程成形型であり、図1では、下から上に向かって、第一成形パス、第二成形パス、第三成形パス、第四成形パスの順に並んでいる。
なお、一対の成形型MA,MB間に形成される成形パスの本数は4本に限られず、3本以下でもよいし、5本以上でもよい。
【0011】
図1に示すように、前記フォージングロール1の側方には、このフォージングロール1を挟むようにマニプレータ40と入側搬送手段10が設けられている。
入側搬送手段10は、前記フォージングロール1の反マニプレータ側、つまりマニプレータ40との間にフォージングロール1を挟む位置に設けられている。この入側搬送手段10は、図示しないインダクションヒータから供給されたビレットBをマニプレータ40に供給するためのものであるが、詳細は後述する。
【0012】
マニプレータ40は、入側搬送手段10から供給されたビレットBを一対のロール1a,1b間に引き込み、フォージングロール1による成形が終了したビレットBを図示しない出側搬送手段に供給するものである。
図1および図2において、符号41はマニプレータ40のアームを示している。このアーム41は、その軸が、前記成形型MA,MB間に形成される複数の成形パスの中心軸を含む平面(以下、単にパス平面という)上において、複数の成形パスの中心軸と平行となるように配置されている。このアーム41の先端、つまりフォージングロール1側の端部には、入側搬送手段10から供給されるビレットBを把持解放可能に支持するマニトング42が設けられている。
【0013】
このマニプレータ40は、前記アーム41とともマニトング42を平行移動させる横送り機構45を備えている。この横送り機構45は、中心軸が前記一対のロール1a,1bの回転軸と平行かつ前記パス平面と平行な平面内に位置するように設けられた一対の軸47,47と、この一対の軸47,47に沿って移動可能に設けられた移動ベース48と、この移動ベース48を移動させるボールネジ機構46とから構成されている。
このため、ボールネジ機構46のサーボモータ46a を駆動すると、軸47と平行に設けられたネジ軸46b が回転され、前記移動ベース48に固定されたナット部材46c がネジ軸46b に沿って移動するので、移動ベース48とともにアーム41を一対の軸47,47の軸方向に沿って移動させることができる。言い換えれば、アーム41とともマニトング42を前記パス平面内と平行に移動させることができる。
そして、この横送り機構45によってアーム41を移動させたときに、アーム41の中心軸と前記4本の成形パスの中心軸が一致する位置が、4本の成形ラインa〜dとなるのである。
【0014】
また、マニプレータ40は、アーム41をその軸方向に沿ってフォージングロール1の回転に同期して前進後退させる往復移動機構49を備えている。この往復移動機構49は、図示しないが、フォージングロール1のロール軸軸端に設けたカム形状に従い、レバー、リンクを介してマニプレータ40を前進、後退させるものである。そして、各成形ラインa〜dにおいて、アーム41が前進したときのマニトング42の位置が成形待機位置Iであり、アーム41が後退したときのマニトング42の位置が工程終了位置IIである。なお、第一成形ラインaでは、成形待機位置Iが受取位置に該当する。
また、第四成形ライン、つまり最終成形ラインdでは、成形待機位置Iと工程終了位置IIとの間に排出位置IIIが設けられている。
【0015】
つぎに、ビレットBの成形作業中におけるマニトング42の移動を、図3、図4および図5に基づいて説明する。
まず、フォージングロール1の回転によって一対の成形型MA,MBが非対面状態(図5中、A1の区間)になると、往復移動機構49によってアーム41が前進され、第一成形ラインaの工程終了位置IIにあるマニトング42が受取位置Iまで移動する。すると、入側搬送手段10からビレットBが供給され、このビレットBをマニトング42が把持する(図3(A))。
【0016】
ビレットBを把持すると、往復移動機構49によってアーム41が後退を開始し、マニトング42も、アーム41とともに一対の成形型MA,MBにおける互いに対向する面の周速度と同じ速度で、工程終了位置IIに向かって後退を開始する。すると、ビレットBは、一対のロール1a,1b間を通過するときに、一対の成形型MA,MBの第1パスによって成形され(図5中、B1の区間)、マニトング42は工程終了位置IIまで移動する(図3(B))。
【0017】
工程終了位置IIまで移動したときには、一対の成形型MA,MBが再び非対面状態(図5中、A2の区間)となるが、再び一対の成形型MA,MBが対面状態となるまでの間に、マニトング42は、横送り機構45によってアーム41とともに第二成形ラインbまで移動され(図3(C))、かつ往復移動機構49によって第二成形ラインbの成形待機位置Iまで移動される。つまり、マニトング42は、ロール1a,1bが一回転する間に、第一成形ラインaの受取位置Iから第二成形ラインbの成形待機位置Iまで移動するのである(図3(D))。
【0018】
第二成形ラインbの成形待機位置Iまで移動されると、マニトング42は、再び一対の成形型MA,MBにおける互いに対向する面の周速度と同じ速度で後退し、第2パスによってビレットBが形成され(図5中、B2の区間)、マニトング42は工程終了位置IIまで移動する。
【0019】
上記と同様の手順で、第二成形ラインbの工程終了位置IIから最終成形ラインdの工程終了位置IIまでマニトング42を移動させれば、第三成形ラインc、最終成形ラインdにおいてもビレットBが成形され、フォージングロール1によるビレットBの成形が終了する。
【0020】
そして、最終成形ラインdにおけるビレットBの成形が終了すると、一対の成形型MA,MBが再び非対面状態(図5中、A5の区間)となっている間に、マニトング42は工程終了位置IIから排出位置IIIまで前進され、排出位置IIIにおいてビレットBを解放するので、ビレットBは図示しない出側搬送手段に排出される(図4(E)、(F))。
【0021】
ビレットBを解放したマニトング42は、フォージングロール1が1回転する間(図5中、A5、B5の区間)に、最終成形ラインdの排出位置III から第一成形ラインaの工程終了位置IIまで移動される。つまり、マニトング42は、往復移動機構49によってアーム41とともに後退されると同時に横送り機構45によってアーム41とともに最終成形ラインdから第一成形ラインaまで移動されるのである(図4(F)、(G))。
そして、マニトング42が第1成形ラインaの工程終了位置IIに戻ったときには、一対の成形型MA,MBが非対面状態(図5中、A6の区間)となっているので、マニトング42は再び往復移動機構49によってアーム41とともに前進され、受取位置Iに配置され、次のビレットBを受け取るのである(図4(H))。
【0022】
上記のごとく、本実施形態のフォージングロール設備Aによれば、成形型MA,MB同士が対面していないときに、つまり成形型MA,MB同士が対面してから再び対面するまでの間に、入側搬送手段10からマニトング42にビレットBを供給することができ、そして、多工程成形型によってビレットBを成形する場合であれば、成形型MA,MB同士が対面していない間、つまりロール1a ,1bが一回転する間に、次工程の成形待機位置Iまでマニトング42を移動させることができる。
よって、フォージングロール1を連続回転させた状態であっても、ビレットBの供給、およびビレットBの連続成形を行なうことができる。言い換えれば、ビレットBの供給および成形をフォージングロール1の回転を停止させずに行うことができるから、ビレットBを成形するサイクルタイムを短くすることができる。
しかも、フォージングロール1を、常に一定の回転数で回転させておくことができるから、エネルギーロスも少なくできるし、フォージングロール1の回転停止を制御するクラッチやブレーキを、成形作業を暫く休止するとき以外には使用しなくてすむので、クラッチやブレーキの損傷を抑えることができ、メンテナンス等のランニングコストを低減することができる。
【0023】
また、一のビレットBの成形が終了した後、マニトング42が最終成形ラインdから第一成形ラインaまで移動されるときに、一対のフォージングロール1を空転させる、つまり、一のビレットBの成形が終了してから、次のビレットBを受け入れるまでの期間もフォージングロール1の回転を停止させないので、クラッチやブレーキの損傷を抑えることができる。
なお、空転させる回転は1回に限られないが、空転させる回転を1回だけにしすれば、成形作業を行わない期間を短縮することができるから、ロール1a ,1bを空転させたとしても生産効率が低下することを防ぐことができる。
【0024】
さらに、マニトング42を、最終成形ラインdから第一成形ラインaまで移動させながら排出位置III から工程終了位置IIまで後退させているから、一のビレットBを排出してから次のビレットBを受け入れるまでの時間をさらに短縮することができる。よって、ビレットBを成形するサイクルタイムを短くすることができ、生産効率を高くすることができる。
【0025】
つぎに、入側搬送手段10を詳細に説明する。
図6および図7に示すように、本実施形態のフォージングロール設備Aに使用されている入側搬送手段10の構造は、特願2000―300177号公報に記載されている入側プッシャ装置と実質同様の構成を有するものであり、ビレット受けユニット30に付勢手段を設けたことが特徴である。
そこで、ビレット受けユニット30の構造を説明する前に、前記文献の入側プッシャ装置と実質同様の構成を有する部分、具体的には、前後進機構および姿勢変更機構の構造について簡単に説明する。
【0026】
図6および図7において、符号11は本体ケーシング11を示しており、符号12はモータを示している。このモータ12にはネジ棒13が連結されており、このネジ棒13には、スライダ17に固定されたナット部材16が螺合している。このスライダ17には、連結軸21が回転自在に通されている。
この連結軸21の一端には、先端にカムフォロアー23が取付けられた図示しないアームが結合されている。このカムフォロアー23は、本体ケーシング11の背面側に設けられたカム板25のカム溝26に摺動可能に取り付けられている。また、連結軸21の他端には、ビレット受けユニット30が固定されている。
このため、モータ12を駆動すれば、スライダ17が前後進されるから、ビレット受けユニット30を、ビレットBを受取る中間位置Cと、ビレットBをフォージングロール1に供給する前進位置Dとの間で進退させることができるのである。
そして、スライダ17が前後進すると、カムフォロアー23がカム溝26内を摺動しながら上下に変位するから、アームを介して連結軸21が回転する。すると、ビレット受けユニット30の姿勢が変化するから、ビレット受けユニット30を、中間位置CではビレットBの受け入れに適した姿勢とすることができ、前進位置Dでは後述するビレット受け筒32の軸方向と一対の成形型MA,MBの第一成形パスの軸方向とが一致するような姿勢とすることができるのである。
【0027】
そして、モータ12の駆動は、ビレット受けユニット30の前進後退が、前記マニトング42の移動と連動するように制御されている。具体的には、ビレット受けユニット30が前進位置Dに配置されるタイミングが、マニトング42が受取位置Iに配置されるタイミングと同じタイミングになるように、モータ12の駆動が制御される。
すると、ビレット受けユニット30からマニトング42へのビレット受け渡し時間を短くすることができる。言い換えれば、マニトング42が、一対のフォージングロール1a ,1b間で静止している時間を短くすることができる。したがって、一対のフォージングロール1a ,1bを連続回転させた状態においても、入側搬送手段10からマニトング42に確実かつ安全にビレットBを受け渡すとができる。
【0028】
さて、ビレット受けユニット30について説明する。
図6および図7に示すように、連結軸21の端部には、ビレット受け筒32が固定されている。このビレット受け筒32は円筒状の部材であり、先端側が開口されている。このビレット受け筒32の内部は、仕切部32a によって先端側(以下、ビレット収容室という)と基端側(以下、付勢室という)に分離されている。
また、ビレット受け筒32の内部には、付勢部材である押し棒33が配置されており、この押し棒33は、仕切部32a を貫通しかつビレット受け筒32の中心軸に沿って摺動可能に取りつけられている。この押し棒33における付勢室内部の一端には、プレート33a が設けられており、このプレート33a と付勢室の底面との間には、バネ34が設けられている。
このバネ34は、ビレット受け筒32内にビレットBが収容されていない状態の長さ(以下、取付長L3という)が、自然長よりも短くなるようにとなるように圧縮荷重を加えた状態で付勢室に収容されている。具体的には、中間位置CにおいてビレットBを受け入れたときに、押し棒33を介してバネ34に加わる荷重よりも少し強い圧縮荷重を加えた状態で付勢室内に取り付けられている。
【0029】
そして、ビレット受けユニット30は、前記マニトング42が受取位置Iに配置した状態において、前進位置Dに配置されると、マニトング42とビレット受け筒32の底面との間の距離が、バネ34の取付長L3と、ビレット受け筒32の軸方向におけるビレットBの長さL1と、ビレット受け筒32の軸方向における押し棒34の先端部長さL2とを合わせた長さよりも短くなるように構成されている。
【0030】
このため、ビレット受けユニット30からマニトング42にビレットBを受け渡すときに、押し棒33を介してバネ34がビレットBに押されて収縮することになる。逆にいえば、押し棒33を介してビレットBがバネ34によってマニトング42に押しつけられるから、ビレットBをマニトング42に確実に供給することができる。
しかも、マニトング42が受取位置Iから後退を開始しても、受取位置Iから後退した移動量がバネ34の収縮量と同じ長さになるまでは、ビレットBをマニトング42に押しつけたままにしておくことができる。つまり、マニトング42によってビレットBを把持するための期間を長くすることができるから、ビレットBをマニトング42に確実に供給することができる。
【0031】
また、バネ34は、上述したような圧縮荷重が加えられた状態で付勢室内に取り付けられており、ビレットBを受け入れたときに収縮しないから、前記マニトング42が受取位置Iに配置され、ビレット受けユニット30が前進位置Dに配置されたときに、バネ34によってビレットBをマニトング42に確実に押しつけることができる。
【0032】
そして、ビレットBをマニトング42に付勢する機構は、バネ34と押し棒33だけであるから、ビレット受けユニット30の構造を簡単にできる。
上記の押し棒33およびバネ34が、特許請求の範囲にいう付勢手段である。
【0033】
なお、付勢手段は上記のごとき構成に限られず、ビレット受けユニット30からマニトング42にビレットを受け渡すときに、ビレットBをマニトング42に押しつけることができるものであれば、エアシリンダなどでもよく、特に限定はない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態のフォージングロール設備Aの概略平面図である。
【図2】マニプレータ40の概略説明図である。
【図3】ビレットBの成形作業中におけるマニトング42の動きを示した図である。
【図4】ビレットBの成形作業中におけるマニトング42の動きを示した図である。
【図5】ビレットBの成形作業中におけるマニトング42の移動とフォージングロール1の回転のタイミングを示したチャートである。
【図6】ビレットBを入側搬送手段10からマニトング42に受け渡している状態の概略説明図である。
【図7】ビレットBを入側搬送手段10が受け取る状態の概略説明図である。
【図8】従来のフォージングロール設備の概略説明図である。
【図9】従来のフォージングロール設備の概略説明図である。
【図10】ロール成形作業中におけるフォージングロール101a,101bとマニトング103の相対的な位置を示した図である。
【図11】(A)はロール成形作業中におけるフォージングロール101a,101bの回転速度の時間変動を示した図であり、(B)はロール成形作業中におけるマニトング103の移動速度の時間変動を示した図である。
【符号の説明】
【0035】
1 フォージングロール
10 入側搬送装置
30 ビレット受けユニット
32 ビレット受け筒
34 バネ
40 マニプレータ
42 マニトング
45 横送り機構
49 往復移動機構
A フォージングロール設備
B ビレット
MA 成形型
MB 成形型
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のフォージングロールと、該一対のフォージングロール間へのビレットの引込みと排出とを制御するマニプレータと、前記フォージングロールの反マニプレータ側に配置された、ビレットを前記マニプレータに供給する入側搬送手段と、ビレットを次工程に搬送する出側搬送手段とを備えたフォージングロール設備であって、
前記一対のフォージングロールの外周面に、その中心軸に対して所定の角度範囲に、一対の成形型がそれぞれ取り付けられており、
前記マニプレータが、
ビレットを把持解放自在なマニトングと、
該マニトングを、前記入側搬送手段からビレットを受け取る受取位置と、前記出側搬送手段にビレットを排出する排出位置との間で移動させる移動手段を備えており、
前記一対のフォージングロールの連続回転中において、
前記移動手段が、前記一対のフォージングロールの外周面における成形型非取付部分同士が対面している間に、前記マニトングを前記受取位置まで移動させ、
前記入側搬送手段が、前記一対の成形型同士が対面する前に、前記受取位置まで移動された前記マニトングにビレットを供給する
ことを特徴とするフォージングロール設備。
【請求項2】
前記一対の成形型が、両者の間に複数の成形パスを有する多工程成形型であり、
前記移動手段が、
前記マニトングを、前記一対の成形型間に形成される複数の成形パスに対応した複数の成形ラインに移動させる横送り機構と、
前記複数の成形ラインにおいて、前記マニトングを、成形待機位置と工程終了位置との間で前進後退させる往復移動機構とを備えており、
前記一対のフォージングロールの連続回転中において、
前記往復移動機構が、前記一対のフォージングロールの外周面における成形型非取付部分同士が対面している間に、前記マニトングを前記成形待機位置まで移動させる
ことを特徴とする請求項1記載のフォージングロール設備。
【請求項3】
前記移動手段の横送り機構によって前記マニトングが最終成形ラインから第一成形ラインまで移動される間に、前記一対のフォージングロールが空転される
ことを特徴とする請求項2記載のフォージングロール設備。
【請求項4】
前記最終成形ラインにおいて、前記成形待機位置と前記工程終了位置との間に、前記出側搬送手段にビレットを排出する排出位置が設けられており、
前記マニトングが、
前記移動手段の横送り機構によって最終成形ラインから第一成形ラインまで移動されるときに、前記往復移動機構によって前記排出位置から前記第一成形ラインの工程終了位置まで移動される
ことを特徴とする請求項2記載のフォージングロール設備。
【請求項5】
前記入側搬送手段が、
ビレット受けユニットと、
該ビレット受けユニットを、ビレットを受取る中間位置と、ビレットを前記フォージングロールに供給する前進位置との間で進退させる前後進機構とからなり、
前記ビレット受けユニットが、
前記前進位置に配置されるタイミングと、前記マニトングが受取位置に配置されるタイミングとが同じタイミングになるように、前記前後進機構によって進退される
ことを特徴とする請求項1記載のフォージングロール設備。
【請求項6】
前記入側搬送手段が、
ビレット受けユニットと、
該ビレット受けユニットを、ビレットを受取る中間位置と、ビレットを前記フォージングロールに供給する前進位置との間で進退させる前後進機構とからなり、
前記ビレット受けユニットが、
前記ビレットを前記マニトングに供給するときに、ビレットをマニトングに押しつける付勢機構を備えている
ことを特徴とする請求項5記載のフォージングロール設備。
【請求項7】
前記ビレット受けユニットが、
先端が開口し、その先端からビレットが供給されるビレット受け筒を備えており、
前記付勢機構が、
前記ビレット受け筒の底部に設けられ、該ビレット受け筒の軸方向に沿って伸縮可能に設けられたバネと、
該バネとビレット受けユニットの先端側との間に設けられた付勢部材とを備えており、
前記マニトングを受取位置に配置した状態において、前記ビレット受けユニットを前進位置に配置されると、前記マニトングと前記ビレット受け筒の底面との間の距離が、前記バネの取付長と、前記ビレット受け筒の軸方向におけるビレットの長さと、前記ビレット受け筒の軸方向における前記付勢部材の長さとを合わせた長さよりも短くなる
ことを特徴とする請求項6記載のフォージングロール設備。
【請求項8】
一対のフォージングロールと、該一対のフォージングロール間へのビレットの引込みと排出とを制御するマニプレータと、前記フォージングロールの反マニプレータ側に配置された、ビレットを前記マニプレータに供給する入側搬送手段と、ビレットを次工程に搬送する出側搬送手段とを備えたフォージングロール設備において、
前記一対のフォージングロールの外周面に、その中心軸に対して所定の角度範囲に、一対の成形型がそれぞれ取り付けられており、
前記マニプレータが、
ビレットを把持解放自在なマニトングと、
該マニトングを、前記入側搬送手段からビレットを受け取る受取位置と、前記出側搬送手段にビレットを排出する排出位置との間で移動させる移動手段を備えており、
前記一対のフォージングロールの連続回転中において、
前記移動手段が、前記一対のフォージングロールの外周面における成形型非取付部分同士が対面している間に、前記マニトングを前記受取位置まで移動させ、
前記入側搬送手段が、前記一対の成形型同士が対面する前に、前記受取位置まで移動された前記マニトングにビレットを供給する
ことを特徴とするフォージング方法。
【請求項9】
前記一対の成形型が、両者の間に複数の成形パスを有する多工程成形型であり、
前記移動手段が、
前記マニトングを、前記一対の成形型間に形成される複数の成形パスに対応した複数の成形ラインに移動させる横送り機構と、
前記複数の成形ラインにおいて、前記マニトングを、成形待機位置と工程終了位置との間で前進後退させる往復移動機構とを備えており、
前記一対のフォージングロールの連続回転中において、
前記往復移動機構が、前記一対のフォージングロールの外周面における成形型非取付部分同士が対面している間に、前記マニトングを前記成形待機位置まで移動させる
ことを特徴とする請求項8記載のフォージング方法。
【請求項10】
前記移動手段の横送り機構によって前記マニトングが最終成形ラインから第一成形ラインまで移動される間に、前記一対のフォージングロールが空転される
ことを特徴とする請求項9記載のフォージング方法。
【請求項1】
一対のフォージングロールと、該一対のフォージングロール間へのビレットの引込みと排出とを制御するマニプレータと、前記フォージングロールの反マニプレータ側に配置された、ビレットを前記マニプレータに供給する入側搬送手段と、ビレットを次工程に搬送する出側搬送手段とを備えたフォージングロール設備であって、
前記一対のフォージングロールの外周面に、その中心軸に対して所定の角度範囲に、一対の成形型がそれぞれ取り付けられており、
前記マニプレータが、
ビレットを把持解放自在なマニトングと、
該マニトングを、前記入側搬送手段からビレットを受け取る受取位置と、前記出側搬送手段にビレットを排出する排出位置との間で移動させる移動手段を備えており、
前記一対のフォージングロールの連続回転中において、
前記移動手段が、前記一対のフォージングロールの外周面における成形型非取付部分同士が対面している間に、前記マニトングを前記受取位置まで移動させ、
前記入側搬送手段が、前記一対の成形型同士が対面する前に、前記受取位置まで移動された前記マニトングにビレットを供給する
ことを特徴とするフォージングロール設備。
【請求項2】
前記一対の成形型が、両者の間に複数の成形パスを有する多工程成形型であり、
前記移動手段が、
前記マニトングを、前記一対の成形型間に形成される複数の成形パスに対応した複数の成形ラインに移動させる横送り機構と、
前記複数の成形ラインにおいて、前記マニトングを、成形待機位置と工程終了位置との間で前進後退させる往復移動機構とを備えており、
前記一対のフォージングロールの連続回転中において、
前記往復移動機構が、前記一対のフォージングロールの外周面における成形型非取付部分同士が対面している間に、前記マニトングを前記成形待機位置まで移動させる
ことを特徴とする請求項1記載のフォージングロール設備。
【請求項3】
前記移動手段の横送り機構によって前記マニトングが最終成形ラインから第一成形ラインまで移動される間に、前記一対のフォージングロールが空転される
ことを特徴とする請求項2記載のフォージングロール設備。
【請求項4】
前記最終成形ラインにおいて、前記成形待機位置と前記工程終了位置との間に、前記出側搬送手段にビレットを排出する排出位置が設けられており、
前記マニトングが、
前記移動手段の横送り機構によって最終成形ラインから第一成形ラインまで移動されるときに、前記往復移動機構によって前記排出位置から前記第一成形ラインの工程終了位置まで移動される
ことを特徴とする請求項2記載のフォージングロール設備。
【請求項5】
前記入側搬送手段が、
ビレット受けユニットと、
該ビレット受けユニットを、ビレットを受取る中間位置と、ビレットを前記フォージングロールに供給する前進位置との間で進退させる前後進機構とからなり、
前記ビレット受けユニットが、
前記前進位置に配置されるタイミングと、前記マニトングが受取位置に配置されるタイミングとが同じタイミングになるように、前記前後進機構によって進退される
ことを特徴とする請求項1記載のフォージングロール設備。
【請求項6】
前記入側搬送手段が、
ビレット受けユニットと、
該ビレット受けユニットを、ビレットを受取る中間位置と、ビレットを前記フォージングロールに供給する前進位置との間で進退させる前後進機構とからなり、
前記ビレット受けユニットが、
前記ビレットを前記マニトングに供給するときに、ビレットをマニトングに押しつける付勢機構を備えている
ことを特徴とする請求項5記載のフォージングロール設備。
【請求項7】
前記ビレット受けユニットが、
先端が開口し、その先端からビレットが供給されるビレット受け筒を備えており、
前記付勢機構が、
前記ビレット受け筒の底部に設けられ、該ビレット受け筒の軸方向に沿って伸縮可能に設けられたバネと、
該バネとビレット受けユニットの先端側との間に設けられた付勢部材とを備えており、
前記マニトングを受取位置に配置した状態において、前記ビレット受けユニットを前進位置に配置されると、前記マニトングと前記ビレット受け筒の底面との間の距離が、前記バネの取付長と、前記ビレット受け筒の軸方向におけるビレットの長さと、前記ビレット受け筒の軸方向における前記付勢部材の長さとを合わせた長さよりも短くなる
ことを特徴とする請求項6記載のフォージングロール設備。
【請求項8】
一対のフォージングロールと、該一対のフォージングロール間へのビレットの引込みと排出とを制御するマニプレータと、前記フォージングロールの反マニプレータ側に配置された、ビレットを前記マニプレータに供給する入側搬送手段と、ビレットを次工程に搬送する出側搬送手段とを備えたフォージングロール設備において、
前記一対のフォージングロールの外周面に、その中心軸に対して所定の角度範囲に、一対の成形型がそれぞれ取り付けられており、
前記マニプレータが、
ビレットを把持解放自在なマニトングと、
該マニトングを、前記入側搬送手段からビレットを受け取る受取位置と、前記出側搬送手段にビレットを排出する排出位置との間で移動させる移動手段を備えており、
前記一対のフォージングロールの連続回転中において、
前記移動手段が、前記一対のフォージングロールの外周面における成形型非取付部分同士が対面している間に、前記マニトングを前記受取位置まで移動させ、
前記入側搬送手段が、前記一対の成形型同士が対面する前に、前記受取位置まで移動された前記マニトングにビレットを供給する
ことを特徴とするフォージング方法。
【請求項9】
前記一対の成形型が、両者の間に複数の成形パスを有する多工程成形型であり、
前記移動手段が、
前記マニトングを、前記一対の成形型間に形成される複数の成形パスに対応した複数の成形ラインに移動させる横送り機構と、
前記複数の成形ラインにおいて、前記マニトングを、成形待機位置と工程終了位置との間で前進後退させる往復移動機構とを備えており、
前記一対のフォージングロールの連続回転中において、
前記往復移動機構が、前記一対のフォージングロールの外周面における成形型非取付部分同士が対面している間に、前記マニトングを前記成形待機位置まで移動させる
ことを特徴とする請求項8記載のフォージング方法。
【請求項10】
前記移動手段の横送り機構によって前記マニトングが最終成形ラインから第一成形ラインまで移動される間に、前記一対のフォージングロールが空転される
ことを特徴とする請求項9記載のフォージング方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−297447(P2006−297447A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122797(P2005−122797)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(502235326)住友重機械テクノフォート株式会社 (122)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(502235326)住友重機械テクノフォート株式会社 (122)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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