説明

フッ素ゴム組成物及びフッ素ゴム架橋体の製造方法

【課題】本発明の課題は、(1)クリーンであり、(2)高比重であり、(3)破断伸びの面で高物性であり、(4)ハロゲン物質(塩素)不含有であり、(5)ゴム表面が金属と非粘着であるフッ素ゴム組成物及びフッ素ゴム架橋体の製造方法を提供すること。
【解決手段】3元系フッ素ポリマーからなる過酸化物加硫可能なフッ素ゴムと、硫酸バリウムと、過酸化物架橋剤、カウンターイオンにBFを持つ塩とを含有し、前記硫酸バリウムを前記フッ素ポリマー100重量部に対して、50〜180重量部含有し、前記カウンターイオンにBFを持つ塩を、前記フッ素ポリマー100重量部に対して、0.7〜1.5重量部含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフッ素ゴム組成物及びフッ素ゴム架橋体の製造方法に関し、詳しくは高比重で高物性なフッ素ゴム組成物及びフッ素ゴム架橋体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のハードディスク容量増に伴い、ハードディスク装置の精度向上が必要とされている。そのため、ハードディスク装置のディスク周りにバランス調整用オモリ(以下「バランサー」と称する)が用いられることが多くなっている。
【0003】
そのバランサーに使用されるゴム架橋体には、高比重であり、かつクリーンな材料が求められることから、従来より、フッ素ゴム架橋体が使用されている。
【0004】
しかしながら、一般的なフッ素ゴム架橋体は、比重が1.8〜2.1程度であり、ディスクのバランスを調整するために、バランサーを多数個使用しなければならない場合があり、多数使用すればコストがかかる問題がある。
【0005】
また、ディスクのバランスが悪い場合は、従来の比重では調整しきれないことがある。
【0006】
以上のことから、バランサー用ゴム架橋体においては、クリーン性を維持しつつ、より高比重のゴム架橋体が求められている。フッ素ゴム架橋体の高比重化は、高比重で物性への影響が少ない充填材として、硫酸バリウムを配合する手法が知られている。
【0007】
しかし、比重が2.2以上になるまで多量に配合すると、物性への影響が出始め、特に破断伸びの低下が大きく、製品の形状によっては成型が困難となる。
【0008】
また、近年、電気・電子部品業界全体にハロゲン(特に塩素、臭素)低減の動きがあり、バランサーにおいても、ハロゲン物質低減が求められている。
【0009】
さらに、バランサー取り付けの際に、スムーズに取り付けられるように、ゴム表面が金属と非粘着であることが好ましく、またバランサーの形状が複雑であっても無理なく成形できるように、破断伸びが大きい方が好ましい。
【0010】
これらのことからすると、バランサー用ゴム架橋体に要求される性能ないし物性としては、(1)クリーンであること、(2)高比重であること、(3)破断伸びの面で高物性であること、(4)ハロゲン物質(塩素)不含有であること、(5)ゴム表面が金属と非粘着であることが挙げられる。
【0011】
特許文献1では、ポリオール架橋可能なフッ素ゴムに架橋剤としてビスフェノールAF、架橋促進剤としてトリフェニルベンジルフォスフォニウムクロライドを用い、低摩擦化ができることを見出している。
【0012】
しかしながらこの手法は、(1)クリーンであること、(5)非粘着性であるという点では問題が少ないものの、架橋促進剤に塩素を含有するため、要求を満足できない課題がある。
【0013】
特許文献2では、ポリオール架橋可能なフッ素ゴムに架橋剤としてビスフェノールAF、架橋促進剤として、5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネニウムテトラフルオロボレートを用い、低摩擦化ができることを見出している。
【0014】
しかしながら、この手法は、(1)クリーンであること、(4)ハロゲン物質不含有であること、(5)非粘着性であるという点では、問題が少ないものの、比重を上げるために高比重の充填材を多量配合すると、配合量に伴って物性が低下し、製品の形状によっては成型が困難となる問題がある。
【0015】
特許文献3では、過酸化物加硫可能なフッ素ゴムに架橋剤として2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド、架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレートを用い、低摩擦化するためにトリフェニルベンジルフォスフォニウムクロライドを用いているが、この手法では、(1)クリーンであること、(5)非粘着性であるという点では問題が少ないものの、低摩擦化するための薬剤に塩素を含有するため、要求を満足できない。
【特許文献1】国際公開第2004/094479号
【特許文献2】国際公開第2007/058038号
【特許文献3】特開2007−169511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そこで、本発明の課題は、(1)クリーンであり、(2)高比重であり、(3)破断伸びの面で高物性であり、(4)ハロゲン物質(塩素)不含有であり、(5)ゴム表面が金属と非粘着であるフッ素ゴム組成物及びフッ素ゴム架橋体の製造方法を提供することにある。
【0017】
また本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題は以下の発明によって解決される。
【0019】
(請求項1)
3元系フッ素ポリマーからなる過酸化物加硫可能なフッ素ゴムと、硫酸バリウムと、過酸化物架橋剤、カウンターイオンにBFを持つ塩とを含有し、前記硫酸バリウムを前記フッ素ポリマー100重量部に対して、50〜180重量部含有し、前記カウンターイオンにBFを持つ塩を、前記フッ素ポリマー100重量部に対して、0.7〜1.5重量部含有することを特徴とするフッ素ゴム組成物。
【0020】
(請求項2)
請求項1記載のフッ素ゴム組成物を、予め過酸化物架橋した後、次いで、200℃〜300℃の温度範囲で0.1〜48時間熱処理することにより、比重が2.2〜2.8、JIS K6251に準拠して測定した破断伸び(%)が、250%以上である架橋体を得ることを特徴とするフッ素ゴム架橋体の製造方法。
【0021】
(請求項3)
JIS K6251に準拠して測定した破断伸び(%)が、250%以上350%以下であることを特徴とする請求項2記載のフッ素ゴム架橋体の製造方法。
【0022】
(請求項4)
請求項2又は3記載の製造方法によって得られたフッ素ゴム架橋体を用いて形成されたバランス調整用オモリ。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、1)クリーンであり、(2)高比重であり、(3)破断伸びの面で高物性であり、(4)ハロゲン物質(塩素)不含有であり、(5)ゴム表面が金属と非粘着であるフッ素ゴム組成物及びフッ素ゴム架橋体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
〔フッ素ゴム組成物〕
本発明のフッ素ゴム組成物は、3元系フッ素ポリマーからなる過酸化物加硫可能なフッ素ゴムと、硫酸バリウムと、過酸化物架橋剤、カウンターイオンにBFを持つ塩とを含有する。
【0026】
<フッ素ゴム>
フッ素ゴムは、3元系フッ素ポリマーからなる過酸化物加硫可能なものであり、3元系フッ素ゴムポリマーとしては、含フッ素オレフィンの3元共重合体を用いることができる。
【0027】
含フッ素オレフィンとしては、具体的には、例えば、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニル、パーフルオロアクリル酸エステル、アクリル酸パーフルオロアルキル、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテル等が挙げられる。
【0028】
三元系フッ素ポリマーからなるフッ素ゴムとしては、好ましくは、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン3元共重合体(略称:VDF−HFP−TFE)、フッ化ビニリデン−パーフルオロ(メチルビニルエーテル)−テトラフルオロエチレン3元共重合体(略称:VDF−FMVE−TFE)等が挙げられる。
【0029】
これらのフッ素ゴムは、従来公知の方法により、溶液重合、懸濁重合または乳化重合させることにより得られ、市販品として入手できる(例えばデュポン社製品バイトンGLT600Sなど)。
【0030】
<架橋剤>
架橋剤としては、過酸化物系架橋剤が用いられ、過酸化物系架橋剤としては有機過酸化物架橋剤を好ましく用いることができる。
【0031】
有機過酸化物架橋剤としては、例えば2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、第3ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、第3ブチルクミルパーオキサイド、1,1−ジ(第3ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ジ(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、第3ブチルパーオキシベンゾエート、第3ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、n−ブチル−4,4−ジ(第3ブチルパーオキシ)バレレートなどが用いられる。これらは市販品(例えば日本油脂製品パーヘキサ25B−40など)をそのまま用いることができる。
【0032】
なお、本発明においては、架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレートなどを添加できる。
【0033】
<架橋促進剤>
本発明において架橋促進剤として用いられるカウンターイオンにBF(テトラフルオロホウ酸イオン)を持つ塩としては、下記化1で示される第4級アンモニウム塩を用いることができる。
【0034】
【化1】

【0035】
上記式中、Rは炭素数1〜24のアルキル基または炭素数7〜20のアラルキル基を表わし、Xはテトラフルオロボレート基を表わす。
【0036】
好ましい第4級アンモニウム塩としては、5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネニウムテトラフルオロボレートが挙げられる。
【0037】
5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネニウムテトラフルオロボレートは、約80℃の融点を有し、ロール、ニーダー、バンバリーなどによる加熱混練時(100℃)に容易に融解するので、分散性に優れる点で好ましい。
【0038】
本発明において、カウンターイオンにBFを持つ塩は、非粘着性を向上させる効果もある。
【0039】
本発明に用いるカウンターイオンにBFを持つ塩は、原料フッ素ゴムと第4級アンモニウム塩を含む市販のマスターバッチを使用することもできる。
【0040】
<硫酸バリウム>
本発明において、硫酸バリウムは高比重を達成するために添加される。
【0041】
本発明に用いられる硫酸バリウム は、一般の市販品を使用することができる。
【0042】
<その他の配合成分>
本発明においては、以上の成分以外に、ゴム配合剤として、例えばカーボンブラック、カーボン繊維等の補強剤;ハイドロタルサイト(Mg6Al2(OH)16CO3)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、チタン酸カリウム、酸化チタン、硼酸アルミニウム、ガラス繊維、アラミド繊維等の充填剤;ワックス、金属セッケン等の加工助剤;水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の受酸剤;老化防止剤;熱可塑性樹脂;などのようなゴム工業で一般的に使用されている配合剤を本発明に使用する硫酸バリウム、架橋剤及び架橋促進剤の効果を損なわない範囲で必要に応じて添加できる。
【0043】
<配合比>
硫酸バリウムの配合量は、フッ素ポリマー100重量部に対して、50〜180重量部の範囲であり、好ましくは、100〜150重量部の範囲である。50重量部より少ないと、目的とする高比重が得られず、180重量部より多いと混練加工性(ニーダー排出性)が著しく悪化するため生産性が悪い。
【0044】
またカウンターイオンにBFを持つ塩の配合量は、フッ素ポリマー100重量部に対して、0.7〜1.5重量部の範囲であり、好ましくは0.7〜0.9重量部の範囲である。0.7重量部より少ないと、ゴム表面が非粘着にならず、1.5重量部より多く配合しても、非粘着の効果は変わらずコスト増となる。
【0045】
本発明において、過酸化物系架橋剤の含有量は、フッ素ポリマー100重量部に対して、0.5〜5重量部の範囲が好ましく、より好ましくは1〜3重量部の範囲である。
【0046】
従来、硫酸バリウムは混練加工性や物性を維持するために100重量部未満添加されていた。本発明ではフッ素ゴム架橋体の高比重を達成するために、硫酸バリウムの好ましい配合量が100重量部〜150重量部であっても、破断伸びが250〜350%と高物性を達成することができる。更にカウンターイオンにBFを持つ塩が、非粘着の効果を高めるために、硫酸バリウムを多く添加しても望ましい高物性と非粘着性を維持することができる。
【0047】
<調製>
本発明に係るフッ素ゴム組成物の調製法としては、例えば、所定量の上記各成分を、インターミックス、ニーダー、バンバリーミキサー等の密閉型混練機またはオープンロールなどゴム用の一般的な混練機で混練する手法や、各成分を溶剤等で溶解して、攪拌機等で分散させる方法などが挙げられる。
【0048】
〔フッ素ゴム架橋体の製造方法〕
<一次加硫(架橋)>
上記のようにして得られたフッ素ゴム組成物は、射出成形機、圧縮成形機、加硫プレス機、オーブンなどを用いて、通常、140℃〜230℃の温度で1〜120分程度加熱(一次加硫)することにより、架橋(加硫)成形できる。
【0049】
なお、一次加硫は、一定の形状を形成(予備成形)するために、形状を維持できる程度に架橋させる工程であり、空気加熱等のオーブンでも一次加硫は可能であるが、複雑な形状では、金型により成形されることが好ましい。
【0050】
本発明では、フッ素ゴム組成物の混練後に被処理物を圧縮成形する場合、上記混練後は、通常、(a)一旦常温に戻し、再び昇温して圧縮成形してもよく、あるいは(b)混練後そのまま昇温を続けて圧縮成形してもよい。通常、圧縮成形機を用いる圧縮工程では、工程上、上記(a)の手法になる。
【0051】
フッ素ゴム組成物の加硫前に、該組成物を一定形状にしておけば、(a)の手法でも(b)の手法でも、低摩擦、低粘着性の成形品を得ることができる。得られるフッ素ゴム架橋体の低粘着化の程度は、その前の熱処理に向けた昇温パターンや昇温曲線の如何には影響されず、熱処理を行う温度と時間に左右される。
【0052】
<熱処理>
本発明では、一次加硫後に熱処理(二次加硫)を行なう。この熱処理方法は、通常の2次加硫と同じであるが、本発明のフッ素ゴム組成物でなければ、通常の2次加硫を行っても、高比重で高物性を備え、かつゴム表面が金属と非粘着であることを実現できるフッ素ゴム架橋体は得られない。
【0053】
一次加硫後の熱処理としては、本発明のフッ素ゴム組成物(一次架橋体)を、200℃〜300℃の温度範囲、好ましくは250℃〜260℃の温度範囲とすることである。熱処理時間は、0.1〜48時間の範囲であり、好ましくは1〜48時間、更に好ましくは10〜48時間の範囲である。
【0054】
<フッ素ゴム架橋体の物性>
このようにして得られたフッ素ゴム架橋体は、比重が2.2〜2.8で、かつJIS K6251に準拠して測定した破断伸びが250〜350%である。また本発明の架橋体は、金属との粘着性もない。
【0055】
即ち、本発明の架橋体は、(1)クリーンであること、(2)高比重であること(2.2〜2.8)、(3)高物性であること(破断伸びが250%以上)、(4)ハロゲン物質(塩素)不含有であること、(5)ゴム表面が金属と非粘着であることの5つの条件をすべて満たすことができる。
【0056】
従って、高比重でかつクリーン性が要求されるフッ素ゴム製品に利用でき、特に、ハードディスク装置内のディスクのバランス調整用オモリ(バランサー)として好適に使用できる。
【実施例】
【0057】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されない。
【0058】
実施例1
3元系フッ素ポリマーからなるフッ素ゴム;
(デュポン・ダウ・エラストマー社製「バイトンGLT600S」;ムーニー粘度ML1+10(121℃)65) 100重量部
硫酸バリウム 130重量部
酸化亜鉛(正同化学工業社製) 3重量部
架橋助剤:トリアリルイソシアヌレート(日本化成社製「TAIC M−60」)
3重量部
架橋剤:
2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド
(日本油脂製品「パーヘキサ25B−40」) 2重量部(ロール投入)
架橋促進剤:
5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネニウムテトラフルオロボレート 0.9重量部(ロール投入)
【0059】
以上の各配合成分(加硫成分除く)をニーダーに投入し、20分混練した後、オープンロールにて加硫成分を投入することで組成物を調製した。
【0060】
これを170℃ 20分プレス加硫することで加硫品を成形し、さらにオーブンにて260℃ 10時間 2次加硫を行ない、フッ素ゴム架橋体を製造した。
【0061】
<評価>
1.比重及び破断伸び:
得られたフッ素ゴム架橋体の試験サンプルについて、比重及び破断伸びを以下の方法で測定し、その結果を表1に示す。
比重:JIS Z8807に準拠して測定した。
破断伸び(%):JIS K6251に準拠して測定した。
【0062】
2.非粘着性
ステンレスの板上にJIS K6262圧縮永久ひずみ試験片(大型試験片)を置き、フッ素ゴム架橋体の試験片の上に100gの分銅を乗せて、試験片とステンレス板を密着させた状態でステンレス板と平行に試験片を移動させ、以下の基準で評価し、その結果を表1に示す。
○:試験片を容易に移動できる(非粘着性良好)
×:試験片がステンレス板に粘着して移動できない(非粘着不良)
【0063】
3.加工性(ニーダー排出性):
混練後、ニーダーから排出する際の排出性を以下の基準で評価し、その結果を表1に示す。
×:ニーダーのローターにゴムが粘着し、ゴムの排出に10分以上要する場合
○:ニーダーのローターにゴムが粘着せず、比較的容易に排出できる場合
【0064】
4.ハロゲンの含有の有無:ゴム組成物に基づく事実を表1に示す。
【0065】
実施例2
実施例1において、架橋促進剤(5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネニウムテトラフルオロボレート)の配合量を、0.7重量部に代えた以外は、同様にして、評価した。その結果を表1に示す。
【0066】
実施例3
実施例1において、架橋促進剤(5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネニウムテトラフルオロボレート)の配合量を、1.5重量部に代えた以外は、同様にして、評価した。その結果を表1に示す。
【0067】
実施例4
実施例1において、硫酸バリウムの配合量を、50重量部に代えた以外は、同様にして、評価した。その結果を表1に示す。
【0068】
比較例1
実施例1において、硫酸バリウムの配合量を、190重量部に代えた以外は、同様にして、評価した。その結果を表1に示す。
【0069】
フッ素ゴム組成物の各配合成分(加硫成分除く)をニーダーに投入し混練を行ったが、ニーダーのローターにゴムが粘着し排出できず、評価を中止した。
【0070】
比較例2
実施例1において、架橋促進剤(5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネニウムテトラフルオロボレート)の配合量を、0.5重量部に代えた以外は、同様にして、評価した。その結果を表1に示す。
【0071】
比較例3
2元系フッ素ポリマーからなるフッ素ゴム
(デュポン・ダウ・エラストマー社製「バイトンA−500」;
ムーニー粘度ML1+10(121℃)45) 100重量部
硫酸バリウム 50重量部
ハイドロタルサイト(協和化学社製「DHT−4A」) 3重量部
水酸化カルシウム(近江化学工業社製「カルディック#2000」) 3重量部
架橋剤:
ビスフェノールAF(デュポン・ダウ・エラストマー社製「キュラティブVC#30」;50wt%とフッ素ゴム〔バイトンE−45〕50wt%のマスターバッチ)
3.5重量部(ロール投入)
架橋促進剤:
5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネニウムテトラフルオロボレート 0.875重量部(ロール投入)
【0072】
以上の各配合成分にて実施例1と同様にフッ素ゴム架橋体を得、評価した。その結果を表1に示す。
【0073】
比較例4
比較例3において、硫酸バリウムの配合量を、125重量部に代えた以外は、同様にして、評価した。その結果を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
実施例1、2、3の結果から、5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネニウムテトラフルオロボレートが0.7〜1.5重量部の範囲で非粘着が得られ、または破断伸びが300%程度である。
【0076】
実施例4では硫酸バリウムを50重量部配合することで、目標とする比重2.2以上を達成している。
【0077】
比較例1では、硫酸バリウムの量が多すぎて、ニーダーのローターにゴムが粘着し排出できなかった。
【0078】
比較例2では、5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネニウムテトラフルオロボレートの量が少ないため、非粘着の効果が得られなかった。
【0079】
比較例3では、比重が要求特性の下限値付近になるように硫酸バリウムの量を調整したが、2元系ポリオール架橋タイプのポリマーでは伸びが220%であり、物性を満足させることができなかった。
【0080】
比較例4では、2元系ポリオール架橋タイプのポリマーに実施例1〜3と同量の硫酸バリウムを配合したところ、比重は同等であったが、伸びは130%まで低下し、実用範囲を大きく下回ることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3元系フッ素ポリマーからなる過酸化物加硫可能なフッ素ゴムと、硫酸バリウムと、過酸化物架橋剤、カウンターイオンにBFを持つ塩とを含有し、
前記硫酸バリウムを前記フッ素ポリマー100重量部に対して、50〜180重量部含有し、
前記カウンターイオンにBFを持つ塩を、前記フッ素ポリマー100重量部に対して、0.7〜1.5重量部含有することを特徴とするフッ素ゴム組成物。
【請求項2】
請求項1記載のフッ素ゴム組成物を、予め過酸化物架橋した後、次いで、200℃〜300℃の温度範囲で0.1〜48時間熱処理することにより、比重が2.2〜2.8、JIS K6251に準拠して測定した破断伸び(%)が、250%以上である架橋体を得ることを特徴とするフッ素ゴム架橋体の製造方法。
【請求項3】
JIS K6251に準拠して測定した破断伸び(%)が、250%以上350%以下であることを特徴とする請求項2記載のフッ素ゴム架橋体の製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3記載の製造方法によって得られたフッ素ゴム架橋体を用いて形成されたバランス調整用オモリ。

【公開番号】特開2010−53186(P2010−53186A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217221(P2008−217221)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】