説明

フッ素化されたインダン化合物を含む液晶媒体

本発明は、負の誘電異方性を有する極性の化合物の混合物に基づく液晶媒体であって、これが、式I


式中、R11、R12、A、A、Z、Z、mおよびnは、請求項1において定義した通りである、
で表される少なくとも1種の化合物を含む、前記液晶媒体、並びにECB、PALCまたはIPS効果に基づくアクティブマトリックスディスプレイのためのこの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負の誘電異方性を有する極性の化合物の混合物に基づく液晶媒体であって、これが、式I
【化1】

式中、
11およびR12は、各々、互いに独立して、H、15個までのC原子を有し、非置換であるか、CNもしくはCFにより単置換されているか、またはハロゲンにより少なくとも単置換されているアルキルまたはアルケニル基であり、ここで、さらに、これらの基中の1つまたは2つ以上のCH基は、
【化2】

により、O原子が互いに直接結合しないように置換されていてもよく、
【0002】
およびAは、各々、互いに独立して、
a)1,4−シクロヘキセニレンまたは1,4−シクロヘキシレン基であり、ここで、1つまたは2つの隣接していないCH基は、−O−または−S−により置換されていてもよく、
b)1,4−フェニレン基であり、ここで、1つまたは2つのCH基は、Nにより置換されていてもよく、
c)ピペリジン−1,4−ジイル、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フェナントレン−2,7−ジイルおよびフルオレン−2,7−ジイルからなる群からの基であり、
ここで、基a)、b)およびc)は、ハロゲン原子により単置換または多置換されていてもよく、
【0003】
およびZは、各々、互いに独立して、−CO−O−、−O−CO−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−CHCH−、−(CH−、−C−、−CHCF−、−CFCH−、−CF=CF−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CH=CH−、−C≡C−または単結合であり、
mおよびnは、各々、互いに独立して、0、1または2であり、ここでm+n≧1である、
で表される少なくとも1種の化合物を含む、前記液晶媒体に関する。
【0004】
このタイプの媒体は、特に、ECB効果に基づくアクティブマトリックスアドレッシングを有する電気光学的ディスプレイおよびIPS(面内切換)ディスプレイのために用いられるべきものである。
【0005】
電気的に制御された複屈折、即ちECB(電気的に制御された複屈折)効果またはDAP(配向相の変形)効果の原理は、最初に1971年に記載された(M.F. SchieckelおよびK. Fahrenschon、"Deformation of nematic liquid crystals with vertical orientation in electrical fields"、Appl. Phys. Lett. 19 (1971), 3912)。J.F. Kahn (Appl. Phys. Lett. 20 (1972), 1193)並びにG. LabrunieおよびJ. Robert (J. Appl. Phys. 44 (1973), 4869)による論文が続いた。
【0006】
J. RobertおよびF. Clerc(SID 80 Digest Techn. Papers (1980), 30)、J. Duchene(Displays 7 (1986), 3)並びにH. Schad(SID 82 Digest Techn. Papers (1982), 244)による論文は、液晶相が、弾性定数K/Kの間の比率についての高い値、光学異方性Δnについての高い値および−0.5〜−5の誘電異方性Δεについての値を有して、ECB効果に基づく高度情報ディスプレイ素子において用いるのに適しなければならないことを示した。ECB効果に基づく電気光学的ディスプレイ素子は、ホメオトロピックな端部配向を有する。誘電的に負の液晶媒体はまた、いわゆるIPS効果を用いるディスプレイにおいて用いることができる。
【0007】
電気光学的ディスプレイ素子におけるこの効果の工業的な適用には、多数の要求を満たさなければならないLC相が必要である。
ここで特に重要なのは、水分、空気および物理的影響、例えば熱、赤外線、可視および紫外線領域における照射並びに直流および交流電界に対する化学的耐性である。
さらに、工業的に用いることができるLC相には、好適な温度範囲において液晶中間相および低い粘度を有することが必要である。
【0008】
以前に開示された液晶中間相を有する一連の化合物のいずれも、これらの要求をすべて満たす単一の化合物を含んでいない。従って、2〜25種、好ましくは3〜18種の化合物の混合物が、一般的に、LC相として用いることができる物質を得るために調製される。しかし、最適な相を、このようにして容易に調製するのは、可能ではなかった。その理由は、顕著に負の誘電異方性および十分な長期間安定性を有する液晶材料は、現在まで入手可能ではなかったからである。
【0009】
マトリックス液晶ディスプレイ(MLCディスプレイ)は、知られている。個別の画素を個別に切り換えるために用いることができる非線型素子は、例えば能動的素子(即ちトランジスタ)である。次に、用語「アクティブマトリックス」を用い、ここで、2つのタイプの間で区別をすることができる:
1.基板としてのシリコンウエファー上のMOS(金属酸化物半導体)トランジスタ。
2.基板としてのガラス板上の薄膜トランジスタ(TFT)。
【0010】
タイプ1において、用いられる電気光学的効果は、通常動的散乱またはゲスト−ホスト効果である。基板材料としての単結晶シリコンの使用は、ディスプレイの大きさを制限する。この理由は、種々の部分表示をモジュラー集合させてさえも、接合部分に問題が生じるからである。
好ましく、さらに有望なタイプ2の場合において、用いられる電気光学効果は、通常TN効果である。
2つの技術の間で、区別がなされる:化合物半導体、例えばCdSeを含むTFT、または多結晶形もしくは無定形シリコンを基材とするTFT。後者の技術は、世界中で格別に研究努力されている。
【0011】
TFTマトリックスは、ディスプレイの1枚のガラス板の内側に施され、一方他方のガラス板は、この内側に、透明な対向電極を担持している。画素電極の大きさと比較すると、TFTは極めて小さく、像に対する悪影響をほとんど有していない。この技術はまた、フィルター素子が各々の切換可能な画素に対向するように、モザイク状の赤色、緑色および青色フィルターを配列した全色可能性ディスプレイに拡張することができる。
【0012】
以前開示されたTFTディスプレイは、通常、透過に交差偏光板を備えたTNセルとして動作し、背面照射される。
用語MLCディスプレイは、ここで、集積非線型素子を備えたすべてのマトリックスディスプレイを含み、即ちアクティブマトリックスに加えて、受動素子、例えばバリスターまたはダイオード(MIM=金属−絶縁体−金属)を有するディスプレイをも含む。
【0013】
このタイプのMLCディスプレイは、特に、TV用途に(例えば、ポケット型TV)、または自動車もしくは航空機構築における高度情報ディスプレイ用に適する。コントラストの角度依存性および応答時間に関する問題に加えて、また、MLCディスプレイでは、液晶混合物の不適切に高い比抵抗値による困難が生じる[TOGASHI, S., SEKIGUCHI, K., TANABE, H., YAMAMOTO, E., SORIMACHI, K., TAJIMA, E., WATANABE, H., SHIMIZU, H., Proc. Eurodisplay 84, 1984年9月:A210-288 Matrix LCD Controlled by Double Stage Diode Rings,141頁以降、Paris;STROMER, M., Proc. Eurodisplay 84, 1984年9月: Design of Thin Film Transistors for Matrix Addressing of Television Liquid Crystal Displays, 145頁以降、Paris]。抵抗値が減少するに従って、MLCディスプレイのコントラストは低下する。液晶混合物の比抵抗値は一般に、ディスプレイの内側表面との相互作用によって、MLCディスプレイの寿命全般を通じて減少するため、高い(初期)抵抗値は、長い動作期間にわたり許容できる抵抗値を有しなければならないディスプレイのために、極めて重要である。
【0014】
以前開示されたMLC−TNディスプレイの欠点は、これらの比較的低いコントラスト、比較的高い視野角依存性およびこれらのディスプレイにおいてグレーシェードを生じる困難さのためである。
従って、極めて高い比抵抗および同時に広い動作電圧範囲、短い応答時間および低いしきい値電圧を有し、この補助により種々のグレーシェードを生じることができるMLCディスプレイに対する多大な要求が継続している。
【0015】
本発明は、ECBまたはIPS効果に基づき、前に示した欠点を有しないか、または有していても一層低い程度のみにであり、同時に極めて高い比抵抗値を有するMLCディスプレイを提供する目的を有する。
ここで、この目的は、式Iで表される少なくとも1種の化合物を含むネマティック液晶混合物をこれらのディスプレイ素子において用いた場合に達成することができることが、見出された。
従って、本発明は、式Iで表される少なくとも1種の化合物を含む、負の誘電異方性を有する極性の化合物の混合物に基づく液晶媒体に関する。
【0016】
式Iで表される化合物は、例えば、EP 0 637 585 A1から知られている。従来技術に記載されている液晶混合物は、専ら強誘電体の用途を意図する。フッ素化されたインダン類のECBまたはIPSディスプレイのための使用は、知られていない。
本発明の混合物は、容量性しきい値についての極めて好ましい値、保持比についての比較的高い値および同時に極めて良好な低温安定性および極めて低い回転粘度を示す。
【0017】
いくつかの好ましい態様を、以下に示す:
a)さらに、式IIAおよび/またはIIB
【化3】

式中、
は、R11について定義した通りであり、
pは、1または2であり、
vは、1〜6である、
で表される1種または2種以上の化合物を含む、液晶媒体。
【0018】
b)さらに、式III
【化4】

式中、
31およびR32は、各々、互いに独立して、12個までのC原子を有する直鎖状アルキル、アルキルアルコキシまたはアルコキシ基であり、
【化5】

は、
【化6】

である、
で表される1種または2種以上の化合物を含む、液晶媒体。
【0019】
c)式Iで表される1種、2種、3種、4種または5種以上、好ましくは1種または2種の化合物を含む、液晶媒体。
d)式IにおけるR11が、好ましくは以下の意味:直鎖状アルキル、ビニル、1E−アルケニルまたは3−アルケニルを有する、液晶媒体。
11および/またはR12がアルケニルである場合には、これは、好ましくは、CH=CH、CH−CH=CH、C−CH=CH、CH=CH−CまたはCH−CH=CH−Cである。
12は、好ましくは、Hまたは1〜6個のC原子を有する直鎖状アルキル、特にメチル、エチルまたはプロピルである。
【0020】
e)式Iで表される化合物の、全体としての混合物中の比率が、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%である、液晶媒体。
f)式IIAおよび/またはIIBで表される化合物の、全体としての混合物中の比率が、少なくとも20重量%である、液晶媒体。
g)式IIIで表される化合物の、全体としての混合物中の比率が、少なくとも5重量%である、液晶媒体。
【0021】
h)従属式I1〜I36:
【化7】

【0022】
【化8】

【0023】
【化9】

【0024】
【化10】

【0025】
【化11】

【0026】
【化12】

から選択された少なくとも1種の化合物を含む、液晶媒体。
【0027】
特に好ましい媒体は、式
【化13】

【0028】
【化14】

で表される化合物からなる群から選択された1種または2種以上の化合物を含む。
【0029】
i)さらに、式IIIa〜IIIf:
【化15】

式中、
alkylおよびalkylは、各々、互いに独立して、1〜6個のC原子を有する直鎖状アルキル基であり、
alkenylおよびalkenylは、各々、互いに独立して、2〜6個のC原子を有する直鎖状アルケニル基である、
から選択された化合物を含む、液晶媒体。
本発明の媒体は、好ましくは、式IIIa、式IIIbおよび/または式IIIeで表される少なくとも1種の化合物を含む。
【0030】
式IIIeおよびIIIfで表される特に好ましい化合物を、以下に示す:
【化16】

【0031】
j)本質的に:
5〜30重量%の式Iで表される1種または2種以上の化合物および
20〜70重量%の式IIAおよび/またはIIBで表される1種または2種以上の化合物
からなる、液晶媒体。
【0032】
k)さらに、式
【化17】

式中、
およびRは、各々、互いに独立して、請求項1におけるRについて示した意味の1つを有し、
wおよびxは、各々、互いに独立して、1〜6である、
で表される1種または2種以上の四環式化合物を含む、液晶媒体。
【0033】
l)さらに、式
【化18】

【0034】
【化19】

【0035】
【化20】

式中、R13〜R28は、各々、互いに独立して、R11について定義した通りであり、zおよびmは、各々、互いに独立して、1〜6である、
で表される1種または2種以上の化合物を含む、液晶媒体。Rは、H、CH、Cまたはn−Cである。
【0036】
m)さらに、式
【化21】

式中、Rは、1個または2〜6個のC原子を有するアルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルアルコキシまたはアルケニルオキシであり、alkenylは、前に定義した通りである、
で表される1種または2種以上の化合物を含む、液晶媒体。
【0037】
本発明は、さらに、ECB効果に基づくアクティブマトリックスアドレッシングを有する電気光学的ディスプレイであって、これが、誘電体として、請求項1〜9のいずれかに記載の液晶媒体を含むことを特徴とする、前記電気光学的ディスプレイに関する。
液晶混合物は、好ましくは、少なくとも60Kのネマティック相範囲および20℃で多くとも30mm・s−1の流動粘度ν20を有する。
【0038】
本発明の液晶混合物は、約−0.5〜−8.0、特に約−3.0〜−6.0のΔεを有し、ここで、Δεは、誘電異方性を示す。回転粘度γは、好ましくは<150mPa・s、特に<140mPa・sである。
【0039】
液晶混合物における複屈折Δnは、一般的に、0.07〜0.16、好ましくは0.08〜0.11である。
本発明の混合物は、すべてのVA−TFT用途、例えばMVA、PVAおよびASVに適する。これらは、さらに、負のΔεのIPSおよびPALC用途に適する。
【0040】
式Iで表される化合物を、例えば、以下のようにして製造することができる:
スキーム1
【化22】

【0041】
本発明のディスプレイ中のネマティック液晶混合物は、一般的に、2種の成分AおよびBを含み、これら自体は、1種または2種以上の個別の化合物からなる。
成分Aは、顕著に負の誘電異方性を有し、ネマティック相に≦−0.3の誘電異方性を付与する。これは、好ましくは、式I、IIAおよび/またはIIBで表される化合物を含む。
成分Aの比率は、好ましくは45〜100%、特に60〜100%である。
【0042】
成分Aについて、≦−0.8のΔεの値を有する1種(または2種以上)の個別の化合物が、好ましくは選択される。この値は、全体としての混合物中の比率Aが比較的小さい際には、一層負でなければならない。
成分Bは、顕著なネマトゲン性および20℃において30mm・s−1より大きくない、好ましくは25mm・s−1より大きくない流動粘度を有する。
【0043】
成分B中の特に好ましい個別の化合物は、20℃において18mm・s−1より大きくない、好ましくは12mm・s−1より大きくない流動粘度を有する、極度に低い粘度のネマティック液晶である。
成分Bは、単変的に、または互変的にネマティックであり、スメクティック相を有せず、スメクティック相の発生を、液晶混合物における極めて低い温度まで防止することができる。例えば、高いネマトゲン性を有する種々の材料を、スメクティック液晶混合物に加えた場合には、これらの材料のネマトゲン性を、達成されるスメクティック相の抑制の程度により比較することができる。
【0044】
多数の好適な材料が、文献から当業者に知られている。特に好ましいのは、式IIIで表される化合物である。
さらに、これらの液晶相はまた、18種よりも多い成分、好ましくは18〜25種の成分を含むことができる。
【0045】
相は、好ましくは、4〜15種、特に5〜12種の式I、IIAおよび/またはIIBおよび随意にIIIで表される化合物を含む。
式I、IIAおよび/またはIIBおよびIIIで表される化合物に加えて、他の構成成分もまた、例えば全体としての混合物の45%まで、しかし好ましくは35%まで、特に10%までの量で存在することができる。
【0046】
他の構成成分は、好ましくは、ネマティックまたはネマトゲン性物質、特に既知の物質から、アゾキシベンゼン類、ベンジリデンアニリン類、ビフェニル類、ターフェニル類、フェニルまたはシクロヘキシル安息香酸類、フェニルまたはシクロヘキシルシクロヘキサンカルボン酸類、フェニルシクロヘキサン類、シクロヘキシルビフェニル類、シクロヘキシルシクロヘキサン類、シクロヘキシルナフタレン類、1,4−ビスシクロヘキシルビフェニル類またはシクロヘキシルピリミジン類、フェニルまたはシクロヘキシルジオキサン類、随意にハロゲン化されたスチルベン類、ベンジルフェニルエーテル類、トラン類および置換ケイ皮酸類の群から選択される。
【0047】
このタイプの液晶相の構成成分として適する最も重要な化合物を、式IV
−L−G−E−R10 IV
式中、LおよびEは、各々、1,4−二置換ベンゼンおよびシクロヘキサン環、4,4’−二置換ビフェニル、フェニルシクロヘキサンおよびシクロヘキシルシクロヘキサン系、2,5−二置換ピリミジンおよび1,3−ジオキサン環、2,6−二置換ナフタレン、ジおよびテトラヒドロナフタレン、キナゾリンおよびテトラヒドロキナゾリンにより形成された群からの炭素環式または複素環式環系であり、
【0048】
Gは、
【化23】

またはC−C単結合であり、Qは、ハロゲン、好ましくは塩素、または−CNであり、RおよびR10は、各々、18個まで、好ましくは8個までの炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシであり、またはこれらの基の1つは、あるいはまた、CN、NC、NO、NCS、CF、OCF、F、ClまたはBrである、
により特徴づけすることができる。
【0049】
これらの化合物のほとんどにおいて、RおよびR10は、互いに異なっており、これらの基の1つは、通常アルキルまたはアルコキシ基である。提案された置換基の他の変形は、一般的である。多くのこのような物質またはこれらの混合物もまた、商業的に入手できる。すべてのこれらの物質は、文献から知られている方法により製造することができる。
当業者には、本発明のVA、IPSまたはPALC混合物はまた、例えばH、N、O、ClおよびFが対応する同位体により置換されている化合物を含んでいてもよいことは、言うまでもない。
【0050】
本発明の液晶ディスプレイの構造は、例えばEP-A 0 240 379に記載されているように、通常の配置に相当する。
以下の例は、本発明を、これを限定せずに説明することを意図する。本明細書中で、百分率は、重量パーセントであり;すべての温度は、摂氏度で示す。
式Iで表される化合物に加えて、本発明の混合物は、好ましくは、以下に示す化合物の1種または2種以上を含む。
【0051】
以下の略語を用いる:
(nおよびm=1〜6;z=1〜6)
【化24】

【0052】
【化25】

【0053】
【化26】

【0054】
【化27】

【0055】
【化28】

【0056】
【化29】

【0057】
本発明において用いることができる液晶混合物は、自体慣用である方法において製造される。一般的に、少ない方の量で用いる成分の所望の量を、有利には高温で、主要成分を構成する成分中に溶解する。有機溶剤、例えばアセトン、クロロホルムまたはメタノール中で成分の溶液を混合し、混合した後に、例えば蒸留により溶剤を再び除去することも可能である。
【0058】
誘電体はまた、当業者に知られており、文献中に記載されている他の添加剤、例えばUV吸収剤、酸化防止剤および遊離基スカベンジャーを含むことができる。例えば、0〜15%の多色性染料、安定剤またはキラルなドーパントを加えることができる。
【0059】
例えば、0〜15%の多色性染料、さらに導電性塩、好ましくは4−ヘキソキシ安息香酸エチルジメチルドデシルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボラナートもしくはクラウンエーテル類の錯塩を加えて(例えばHaller et al., Mol. Cryst. Liq. Cryst. 第24巻、249〜258頁(1973)を参照)、導電性を改善することができるか、または物質を加えて、誘電異方性、粘度および/またはネマティック相の配向を改変することができる。このタイプの物質は、例えば、DE-A 22 09 127、22 40 864、23 21 632、23 38 281、24 50 088、26 37 430および28 53 728に記載されている。
【0060】
表Aは、本発明の混合物に加えることができる可能なドーパントを示す。混合物がドーパントを含む場合には、これを、0.01〜4.0重量%、好ましくは0.1〜1.0重量%の量で用いる。
【0061】
表A
【化30】

【0062】
【化31】

【0063】
例えば本発明の混合物に加えることができる安定剤を、以下の表Bに示す。
表B
(n=1〜12)
【化32】

【0064】
【化33】

【0065】
【化34】

【0066】
【化35】

【0067】
【化36】

【0068】
以下の例は、本発明を、これを限定せずに説明することを意図する。本明細書中、
は、20℃における容量性のしきい値電圧[V]を示し、
Δnは、20℃および589nmで測定した光学異方性を示し、
Δεは、20℃および1kHzにおける誘電異方性を示し、
cp.は、透明点[℃]を示し、
γは、20℃で測定した回転粘度[mPa・s]を示し、
LTSは、試験セル中で決定した低温安定性を示す。
【0069】
しきい値電圧の測定のために用いたディスプレイは、20μmの距離における2枚の面平行外側板および液晶のホメオトロピックな配向を行う外側板の内側上のSE−1211(日産化学)の被覆配向層を有する電極層を有する。
【0070】
混合物例
比較例1
【表1】

【0071】
例M1
【表2】

【0072】
例M2
【表3】

【0073】
例M3
【表4】

【0074】
例M4
【表5】

【0075】
例M5
【表6】

【0076】
例M6
【表7】

【0077】
例M7
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
負の誘電異方性を有する極性の化合物の混合物に基づく液晶媒体であって、これが、式I
【化1】

式中、
11およびR12は、各々、互いに独立して、H、15個までのC原子を有し、非置換であるか、CNもしくはCFにより単置換されているか、またはハロゲンにより少なくとも単置換されているアルキルまたはアルケニル基であり、ここで、さらに、これらの基中の1つまたは2つ以上のCH基は、
【化2】

により、O原子が互いに直接結合しないように置換されていてもよく、
およびAは、各々、互いに独立して、
a)1,4−シクロヘキセニレンまたは1,4−シクロヘキシレン基であり、ここで、1つまたは2つの隣接していないCH基は、−O−または−S−により置換されていてもよく、
b)1,4−フェニレン基であり、ここで、1つまたは2つのCH基は、Nにより置換されていてもよく、
c)ピペリジン−1,4−ジイル、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フェナントレン−2,7−ジイルおよびフルオレン−2,7−ジイルからなる群からの基であり、
ここで、基a)、b)およびc)は、ハロゲン原子により単置換または多置換されていてもよく、
およびZは、各々、互いに独立して、−CO−O−、−O−CO−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−CHCH−、−(CH−、−C−、−CHCF−、−CFCH−、−CF=CF−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CH=CH−、−C≡C−または単結合であり、
mおよびnは、各々、互いに独立して、0、1または2であり、ここでm+n≧1である、
で表される少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする、前記液晶媒体。
【請求項2】
さらに、式IIAおよび/またはIIB
【化3】

式中、
は、15個までのC原子を有し、非置換であるか、CNもしくはCFにより単置換されているか、またはハロゲンにより少なくとも単置換されているアルキルまたはアルケニル基であり、ここで、さらに、これらの基中の1つまたは2つ以上のCH基は、各々、互いに独立して、
【化4】

により、O原子が互いに直接結合しないように置換されていてもよく、
pは、1または2であり、
vは、1〜6である、
で表される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の液晶媒体。
【請求項3】
さらに、式III
【化5】

式中、
31およびR32は、各々、互いに独立して、12個までのC原子を有する直鎖状アルキル、アルケニル、アルキルアルコキシまたはアルコキシ基であり、
【化6】

は、
【化7】

である、
で表される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の液晶媒体。
【請求項4】
式Iで表される1種、2種、3種、4種または5種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の液晶媒体。
【請求項5】
式Iで表される化合物の、全体としての混合物中の比率が、少なくとも5重量%であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の液晶媒体。
【請求項6】
式IIAおよび/またはIIBで表される化合物の、全体としての混合物中の比率が、少なくとも20重量%であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の液晶媒体。
【請求項7】
式IIIで表される化合物の、全体としての混合物中の比率が、少なくとも5重量%であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の液晶媒体。
【請求項8】
式I1〜I36
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

式中、
11は、請求項1において定義した通りであり、alkylは、1〜6個のC原子を有する直鎖状アルキル基である、
から選択された少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の液晶媒体。
【請求項9】
本質的に、
5〜30重量%の式Iで表される1種または2種以上の化合物
および
20〜70重量%の式IIAおよび/またはIIBで表される1種または2種以上の化合物
からなることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の液晶媒体。
【請求項10】
ECB、PALCまたはIPS効果に基づくアクティブマトリックスアドレッシングを有する電気光学的ディスプレイであって、これが、誘電体として、請求項1〜9のいずれかに記載の液晶媒体を含むことを特徴とする、前記電気光学的ディスプレイ。

【公表番号】特表2007−510010(P2007−510010A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534625(P2006−534625)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010648
【国際公開番号】WO2005/037957
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】