説明

フッ素化オリゴマーシランを含むフッ素性化学物質組成物

フッ素性化学物質オリゴマーシラン、そのようなシラン及び/又はそのようなシランの縮合生成物を含む組成物、並びにこうした組成物で製造されるコーティング。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶媒に溶解又は分散したフッ素化オリゴマーシランを含むフッ素性化学物質組成物に関する。更に本発明は、組成物において使用されるフッ素化オリゴマーシランに関する。また本発明は、フッ素化オリゴマーシランの縮合生成物を含む組成物、及びフッ素性化学物質組成物で基材を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス並びにセラミックスのような基材を撥油性及び撥水性を付与するために、フッ素化シラン、すなわち、1つ以上のフッ素化基を有するシラン化合物の使用が知られている。例えば、欧州特許第1341741号には、セラミックスを撥油性及び撥水剤を付与するための、フッ素化ポリエーテルシランを含む組成物が記載されている。欧州特許第1225187号には、有機溶媒に溶解又は分散したオリゴマーフッ素性化学物質シランを含有するフッ素性化学物質組成物が開示されている。フッ素性化学物質組成物は、セラミックス並びにガラスのような基材を撥水性及び/又は撥油付与するために、特に有用である。
【0003】
欧州特許第1369453号は、(a)重縮合反応を受けることが可能な1つ以上の基を含むフッ素化オリゴマーと、(b)重縮合可能な基を有する非フッ素化化合物と、を含むフッ素性化学物質組成物に関する。また本発明は、構成成分(a)及び(b)の部分的な又は実質的に完全な縮合体を含む組成物にも関する。フッ素性化学物質組成物は、基材を処理するために使用することができ、こうした基材を撥油性及び撥水性を付与することができ、並びに/又はそれに染み忌避性を提供する。
【0004】
ペルフルオロポリエーテルシラン及びアルコキシシランを含有する更なるコーティング組成物が、欧州特許第1444305号及び同第1444289号に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基材に撥水特性を提供するフッ素性化学物質組成物が多く知られているにも関わらず、更なる組成物、特に改善された耐久性、すなわち研磨条件下でさえ、より長く続く撥水特性を有するものを見つけるという要望が続いている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基材上に非常に耐久性がある撥水、撥油、及び/又は染み忌避剤コーティングを提供することが可能なコーティング組成物を提供する。特に、本発明の組成物は、研磨条件下又は長期に渡る使用においてでさえ、初期の撥水特性が実質的に維持されるような耐久性があるコーティングを提供するために有用であり、更に、コーティング組成物は、環境に優しい方法で適用及び使用することができ、信頼性があり、便利で、費用効率が高い方法で製造されることができる。
【0007】
本発明は、フッ素性化学物質組成物であって、有機溶媒に溶解又は分散して、
(a)一般式、
【0008】
【化1】

【0009】
により表されるフッ素化オリゴマーシランであり、式中、Xは末端基を表し、Mはフッ素化アルコール、ポリイソシアネート、及びイソシアネート反応性非フッ素化モノマーの縮合から得られるフッ素化モノマーに由来する単位を表し、Mは非フッ素化モノマーに由来する単位を表し、Mは式、
【0010】
【化2】

【0011】
により表されるシリル基を有する単位を表し、式中、Y、Y、及びYはそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基、若しくは加水分解性基を表し、Y、Y、及びYの少なくとも1つは加水分解性基を表し、
Gは連鎖移動剤の残基を含む一価の有機基であり、nは1〜100の値を表し、mは0〜100の値を表し、rは0〜100の値を表し、n+m+rは少なくとも2であり、
ただし、以下の条件の少なくとも1つを満たす、(i)Gは式、
【0012】
【化3】

【0013】
のシリル基を含有する一価の有機基であり、式中、Y、Y、及びYはそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基若しくは加水分解性基を表し、Y、Y、及びYの少なくとも1つは加水分解性基を表すか、又は(ii)rは少なくとも1であり、いくつかの実施形態では、
(b)1分子当たり少なくとも2つの加水分解性基を有するSi、Ti、Zr、B、Al、Ge、V、Pb、Sn、及びZnからなる群から選択される元素Mの非フッ素化化合物と、を含む、フッ素性化学物質組成物を提供する。
【0014】
更なる態様においては、本発明は、フッ素化オリゴマーシラン及び上述の構成成分(b)で規定する非フッ素化化合物との部分的又は実質的に完全な縮合反応後に、得られる反応生成物を含む組成物を提供する。用語「実質的に完全な縮合反応」とは、反応が完全であるか、又は混合物中の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%の加水分解性基が消滅したことを意味する。反応の完成は、赤外分光法及びSi−NMRを使用することにより観測できる。本発明に関連して、「部分的な縮合」及び「部分的な縮合体」とは、混合物中のいくらかの加水分解性基が反応した一方で、更なる縮合又は架橋反応に利用できる大量の加水分解性基が残っていることを意味する。典型的に、部分的な縮合体とは、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%の加水分解性基が、更なる縮合反応のためになお利用できることを意味する。
【0015】
更に本発明は、上で規定されるようなフッ素化オリゴマーシラン及び非フッ素化化合物との反応から得られる生成物を提供する。
【0016】
更なる態様においては、また本発明は、基材の表面の少なくとも一部に上で規定する組成物を適用する工程を含む、基材の処理方法も提供する。本発明のフッ素性化学物質組成物は、基材を処理するために使用することができ、こうした基材に撥油性及び撥水性を付与することが可能であり、並びに/又は染み忌避性を提供する。
【0017】
なお、更なる態様においては、本発明は、フッ素化オリゴマーシランであって、一般式、
【0018】
【化4】

【0019】
で表され、式中、Xは末端基を表し、Mはフッ素化アルコール、ポリイソシアネート、及びイソシアネート反応性非フッ素化モノマーの縮合から得られるフッ素化モノマーに由来する単位を表し、Mは非フッ素化モノマーに由来する単位を表し、Mは式、
【0020】
【化5】

【0021】
により表されるシリル基を有する単位を表し、式中、Y、Y、及びYはそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基、若しくは加水分解性基を表し、Y、Y、及びYの少なくとも1つは加水分解性基を表し、
Gは連鎖移動剤の残基を含む一価の有機基であり、nは1〜100の値を表し、mは0〜100の値を表し、rは0〜100の値を表し、n+m+rは少なくとも2であり、
ただし、(i)Gは式、
【0022】
【化6】

【0023】
のシリル基を含有する一価の有機基であり、式中、Y、Y、及びYはそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基若しくは加水分解性基を表し、Y、Y、及びYの少なくとも1つは加水分解性基を表し、又は(ii)rは少なくとも1である、という条件の少なくとも1つを満たす、フッ素化オリゴマーシラン。
【0024】
一般に、組成物は、低レベルの適用で効果的であり、良好な耐久性を有する。組成物は、セラミックス、(多孔質の)石、ガラス、イノックス(inox)、クロム化スチール、木、布地、及び皮のような基材を、撥水性及び/又は撥油性を付与するために特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に関連して用語「加水分解性基」とは、典型的な縮合条件下で直接縮合反応を受けることが可能な基、又はこれらの条件下で加水分解可能であり、よって縮合反応を受けることが可能な化合物を生じさせる基を意味する。加水分解性基の例としては、塩素のようなハロゲン、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、及びアシルオキシ基が挙げられる。典型的な縮合反応条件としては、酸性又は塩基性条件が挙げられる。それ故に、これらの反応条件下において、本発明によるフッ素性化学物質組成物は、縮合反応を受けさせることができ、及び/又は基材上に耐久性があるコーティングを提供するために、基材と反応させることができる。こうして、形成されるコーティングは、所望の耐久性がある撥油及び撥水特性を示すことができる。
【0026】
本発明において使用される、用語「非加水分解性基」とは、上述で規定する加水分解性基以外の基を指す。
【0027】
一般に、式(I)で表されるフッ素化オリゴマーシランは、連鎖移動剤の存在下において、フッ素化モノマーのフリーラジカルオリゴマー化により調製され得るオリゴマーである。またオリゴマーは、1つ以上の加水分解性基を有する1つ以上のシリル基も包含すべきである。1つ以上の加水分解性基を有するシリル基は、フッ素化モノマーと1つ以上の加水分解性基を有するシリル基を有するモノマーとの共重合により、及び/又はこうしたシリル基を包含する連鎖移動剤の使用を通じて、フッ素化オリゴマーシランに包含されることができる。或いは、オリゴマー化に続いて、1つ以上の加水分解性基を有するシリル基を有する試薬と反応できる官能化連鎖移動剤又は官能化コモノマーを使用することができる。
【0028】
式(I)におけるn、m、及びrの合計により表される単位の総数は、化合物をオリゴマーにするために一般に少なくとも2、好ましくは少なくとも3である。フッ素化オリゴマーシランにおけるnの値は、典型的に1〜100であり、2〜20が特に好適である。m及びrの値は、典型的に0〜100であり、好ましくは1〜30である。特定の実施形態によると、mの値はnの値よりも小さく、n+m+rは少なくとも2である。
【0029】
フッ素化オリゴマーシランは、典型的に約400g/モル〜約100,000g/モル、好ましくは約1,000g/モル〜約20,000g/モルの重量平均分子量を有する。フッ素化オリゴマーは、少なくとも約10モル%(単位M、M、及びM総モルを基準として)の加水分解性基を含有することが好ましい。
【0030】
更に本発明の組成物において使用されるフッ素化オリゴマーシランの調製は、化合物の混合物をもたらし、従って、一般式(I)は、化合物の混合物を表してもよく、式(I)の指数n、m、及びrは、こうした混合物における該当する単位のモル量を表すことを、当業者は理解するであろう。従って、n、m、及びrは小数値であり得ることが明らかであろう。
【0031】
フッ素化オリゴマーシランを表す式(I)の単位Mは、一般に、フッ素化アルコール、ポリイソシアネート、及びイソシアネート反応性非フッ素化モノマーの縮合から得られるフッ素化モノマーに由来する。
【0032】
フッ素化アルコールは、典型的に、部分的にフッ素化した、若しくは完全にフッ素化した一官能性アルコール又はジオールである。一般に、フッ素化アルコールは、少なくともペルフルオロ部分を含有するであろう。好適なフッ素化アルコールとしては、少なくとも3個、好ましくは3〜6個の炭素原子を有する一官能性フッ素化アルカノール若しくはフッ素化ジオール、1つ以上のペルフルオロポリエーテル基、及び1つ以上のヒドロキシル基を有するペルフルオロポリエーテル化合物、又はオリゴマーフッ素化アルコール若しくはジオールから選択されるものが挙げられる。フッ素化アルコールの混合物も同様に使用が考えられる。
【0033】
一実施形態においては、フッ素化アルコールは、式IIで表すことができる一官能性アルカノール又はアルカンジオールである。
【0034】
PF−Q−(OH) (II)
式中、PFはペルフルオロ脂肪族基を表し、Qは有機二価又は三価連結基であり、aは1又は2、好ましくは1である。ペルフルオロ脂肪族基PFは、ペルフルオロ化した、安定な、不活性の、好ましくは飽和の、非極性の、3〜6個の炭素原子を含有する一価脂肪族ラジカルである。それは直鎖又は分枝鎖であることができる。特に好適なフッ素化アルコールは、PF−基が4〜6個の炭素原子を有し、式C−又はC13−であるものである。
【0035】
連結基Qは、一般に非フッ素化又は部分的にフッ素化しており、1〜約20個の炭素原子を含有してよい。Qは、芳香族又は脂肪族基を包含してよく、所望により酸素、窒素、若しくはイオウ含有基、又はこれらの組み合わせを含有できる。好適な連結基Qの例としては、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキレン、アリーレン、アラールキレン、スルホニル、スルホキシ、スルホンアミド、カルボンアミド、カルボニルオキシ、ウレタニレン、ウレイレン、及びスルホンアミドアルキレンのようなそれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
本明細書で有用なフッ素化アルカノール又はアルカンジオールの特定の説明に役立つ例としては、
CFCFCFCFCHCHOH、
CFCFCFCFCFCFCHCHOH、
CF(CFSON(CH)CHCHOH、
CF(CFSON(CH)CHCH(OH)CHOH、
CF(CFSON(C)CHCHOH、
CF(CFSON(C)CHCH(OH)CHOH
CF(CFSON(CH)CHCH(CH)OH、及び
(CFCFCFSON(CH)CHCHOHが挙げられる。
【0037】
本発明の代わりの実施形態においては、フッ素化アルコールは、1つ以上のペルフルオロポリエーテル基及び1つ以上のヒドロキシル基を有するペルフルオロポリエーテル化合物であってよい。用語「ペルフルオロポリエーテル化合物」とは、炭素及びフッ素からなり、少なくとも2つのエーテル結合を含有するフッ素化ポリエーテル基を有する化合物を意味する。
【0038】
一実施形態においては、ペルフルオロポリエーテル化合物は、式IIIにより表されることができる。
【0039】
PF−Q−(OH) (III)
式中、PFはペルフルオロポリエーテル基を表し、Qは二価又は三価の一般に非フッ素化又は部分的にフッ素化の有機連結基を表し、bは1又は2、好ましくは1である。連結基Qの例としては、O、N、又はSが割り込んでよく、アルキレン基、オキシ基、チオ基、ウレタン基、カルボキシ基、カルボニル基、アミド基、オキシアルキレン基、チオアルキレン基、カルボキシアルキレン、及び/又はアミドアルキレン基で置換されてよい芳香族又は脂肪族基を含む有機基が挙げられる。
【0040】
1つの特定の実施形態においては、式(III)のペルフルオロポリエーテル基PFは、式IVに従う基で構成される一価のペルフルオロポリエーテル部分である。
【0041】
F(RfcO)2d− (IV)
式中、各Rfcは独立して、ペルフルオロアルキレン基を表し、各xは独立して、3以上の整数を表し、dは整数1〜6である。ペルフルオロアルキレン基Rfcは、直鎖又は分枝鎖であってよく、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子を含んでよい。ペルフルオロアルキレンオキシ基−RfcO−の例としては、−CFCFO−、−CF(CF)CFO−、−CFCF(CF)O−、−CFCFCFO−、−CFO−、−CF(CF)O−、−CFCFCFCF−O−が挙げられる。ペルフルオロポリエーテル基は、同一のペルフルオロアルキレンオキシ単位、又は異なるペルフルオロアルキレンオキシ単位の混合物からなってよい。ペルフルオロポリエーテル基が、異なるペルフルオロアルキレンオキシ単位からなる場合、それらは、ランダム構成、交互構成で存在することができ、又はブロックとして存在することができる。ペルフルオロポリアルキレンオキシ基の典型例としては、
−[CFCFO]−、−[CF(CF)CFO]−、−[CFCFO][CFO]−、及び−[CFCFO]l−[CF(CF)CFO]−が挙げられ、式中、rは整数5〜25、sは整数3〜25、i、j、l、及びkはそれぞれ整数3〜25である。
【0042】
式(IV)に相当する特に好適なペルフルオロポリエーテル基は、
F(CF(CF)CFO)CF(CF)−であり、
式中、gは少なくとも3である。上式のペルフルオロポリエーテル基は、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)のオリゴマー化に好都合に由来する。特に好適な実施形態においては、gは整数3〜25であり、相当するペルフルオロポリエーテル基は、少なくとも約750g/モルの分子量を有する。
【0043】
式(III)に従うペルフルオロポリエーテル化合物の好適な例としては、
F(CF(CF)CFO)CF(CF)−CONR−CHCHOHCHOHで、式中、Rは水素又は例えば炭素原子1〜4個のアルキル基、
F(CF(CF)CFO)CF(CF)−CONH−1,4−ジヒドロキシフェニル、
F(CF(CF)CFO)CF(CF)−CHOCHCHOHCHOH、
F(CF(CF)CFO)CF(CF)−COOCHCHOHCHOH、
F(CF(CF)CFO)CF(CF)−CONR”−(CHvOH、
F(CF(CF)CFO)CF(CF)−CONR”−((CH−O)−H、
F(CF(CF)CFO)CF(CF)−CONHCHCHCHN(CHCHOH)
が挙げられ、式中R”は、水素、又はメチル、エチル、プロピル、ブチル、若しくはヘキシルのようなアルキルであり、vは2、3、4、6、8、10、又は11であり、wは1〜4であり、gは少なくとも3である。特に好適な例は、F(CF(CF)CFO)CF(CF)CONR(CHOHであり、式中Rは水素であり、vは2であり、gは少なくとも3である。
【0044】
本発明の更なる実施形態においては、フッ素化アルコールは式、
(MF)r(MH)−q−(OH)
で表すことができるオリゴマーフッ素化アルコール又はジオールであり得、式中、cは1又は2、好ましくは1であり、(MF)(MH)は、フッ素化モノマー由来のr単位と、非フッ素化モノマー、例えば炭化水素モノマー由来のs単位とを含むフッ素化オリゴマーを表し、rは典型的に2〜40の値を表し、sは典型的に0〜20を表し、−Q−(OH)は共にアルコール又はジオールで官能化された連鎖移動剤から水素原子を除去することにより得られる有機残基を表す。オリゴマーフッ素化アルコールにおけるrの値は、典型的に2〜40、好ましくは2〜20、より好ましくは3〜15である。2つ以上の異なるフッ素化モノマー及び任意の非フッ素化モノマーに由来するフッ素化オリゴマーも同様に好適である。
【0045】
上述の式において、Qは、典型的に式−S−R−に従う有機残基を表し、式中、Rは、好ましくは直鎖又は分枝鎖アルキレン(好ましくは約2〜6個の炭素原子を有する)、環状アルキレン、アリーレン、及びアラールキレンからなる群から選択される有機二価結合基を表す。
【0046】
オリゴマーフッ素化アルコールは、ヒドロキシ官能化連鎖移動剤の存在下において、フッ素化モノマー及び非フッ素化モノマーのフリーラジカルオリゴマー化により調製されることができる。オリゴマーフッ素化アルコールの脂肪族主鎖は、例えば、上式におけるr及びsの合計が2〜60であるような部分オリゴマーを下塗りするために十分な数の重合単位を含む。
【0047】
一実施形態においては、フッ素化モノマーは、式
−Q−E
により表すことができ、式中、Rは少なくとも3個の炭素原子を有するフッ素化脂肪族基を表し、Qは非フッ素化二価結合基を表し、Eはフリーラジカル重合可能なエチレン性不飽和基である。
【0048】
特定の実施形態においては、フッ素化モノマーは、ペルフルオロ脂肪族基を含有するα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のエステルであり、一般式、
PF−Q−OC(O)−C(R’)=CH
で表すことができ、式中、PFは3〜6個の炭素原子を有するペルフルオロ脂肪族基を表し、Qは有機二価結合基であり、Rは水素、フッ素、又は1〜4個の炭素原子を有する低級アルキル基を表す。
【0049】
ペルフルオロ脂肪族基PFは、ペルフルオロ化した、安定な、不活性、好ましくは飽和の、非極性の、3〜6個の炭素原子を含有する一価の脂肪族ラジカルである。これは直鎖鎖又は分枝鎖であり得る。特に好適なフッ素化モノマーは、PF−基が式C−又はC13−の式であるものである。
【0050】
連結基Qは、ペルフルオロ脂肪族基PFをフリーラジカル重合性基に連結する。連結基Qは一般に非フッ素化であり、好ましくは1〜20個の炭素原子を含有する。Qは、所望により、酸素、窒素若しくは硫黄含有基、又はそれらの組み合わせを含有することができ、Qには、フリーラジカル重合を実質的に妨げる官能基(例えば、重合性オレフィン二重結合、チオール、及び当業者に既知の他のこうした官能基)がない。好適な連結基Qの例としては、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキレン、アリーレン、アラールキレン、スルホニル、スルホキシ、スルホンアミド、カルボンアミド、カルボニルオキシ、ウレタニレン、ウレイレン、及びスルホンアミドアルキレンのようなこれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
フッ素化モノマーの具体例としては、
CFCFCFCFCHCHOCOCR=CH
CF(CFCHCHOCOCR=CH
CF(CFCHOCOCR=CH
CF(CFSON(CH)CHCHOCOCR=CH
CF(CFSON(C)CHCHOCOCR=CH
CF(CFSON(CH)CHCH(CH)OCOCR=CH
(CFCFCFSON(CH)CHCHOCOCR=CH、が挙げられ、
式中、Rは水素又はメチルである。
【0052】
オリゴマーフッ素化アルコール又はジオールの合成に有用な非フッ素化モノマーは、典型的にフリーラジカル重合可能なエチレン性不飽和基及び炭化水素部分を含有するモノマーである。炭化水素基含有モノマーは周知であり、一般に市販されている。非フッ素化モノマーの例としては、例えば、アリルアセテート及びアリルヘプタノエートのようなアリルエステル;セチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルのようなアルキルビニルエーテル又はアルキルアリルエーテル;アクリル酸、メタクリル酸、α−クロロアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸のような不飽和酸、並びにこれらの無水物及びこれらのエステル,例えばビニル、アリル、メチル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、ヘプチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、ラウリル、ステアリル、イソボルニル又はアルコキシエチルアクリレート及びメタクリレート;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−クロロアクリロニトリル、2−シアノエチルアクリレート、アルキルシアノアクリレートのようなα−β不飽和ニトリル;アリルアルコール、アリルグリコレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、n−ジイソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N−t−ブチルアミノエチルメタクリレートのようなα,β−不飽和カルボン酸誘導体;スチレン及びビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−シアノメチルスチレンのようなその誘導体;エチレン、プロピレン、イソブテン、3−クロロ−1−イソブテン、ブタジエン、イソプレン、クロロ及びジクロロブタジエン並びに2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンのようなハロゲンを含有することができる低級オレフィン系炭化水素;ビニル及びビニリデンクロライドのようなアリル又はビニルハロゲン化物が挙げられる。好ましい非フッ素化モノマーとしては、オクタデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ブチルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、イソブチルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート及びエチルヘキシルメタクリレート、並びにビニルクロライド及びビニリデンクロライドから選択されるもののような炭化水素基含有モノマーが挙げられる。
【0053】
オリゴマーフッ素化アルコール又はジオールは、典型的にヒドロキシル官能化連鎖移動剤の存在下において調製される。ヒドロキシル官能化連鎖移動剤の例としては、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−2−ブタノール、3−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−1−プロパノール、11−メルカプト−1−ウンデカノール、及び3−メルカプト−1,2−プロパンジオールから選択されるものが挙げられる。単一化合物又は異なった連鎖移動剤の混合物を使用してよい。特に好適な連鎖移動剤は、2−メルカプトエタノールである。
【0054】
オリゴマーのフッ素化アルコールを調製するために、フリーラジカル反応開始剤が通常存在する。こうしたフリーラジカル反応開始剤は、当該技術分野において既知であり、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビス(2−シアノ吉草酸)及び同類のもののようなアゾ化合物;クメン、t−ブチル、及びt−アミルヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシド;ジ−t−ブチル及びジクミルペルオキシドのようなジアルキルペルオキシド;t−ブチルペルベンゾエート及びジ−t−ブチルペルオキシフタレートのようなペルオキシエステル;ベンゾイルペルオキシド及びラウロイルペルオキシドのようなジアシルペルオキシドが挙げられる。
【0055】
式(I)のフッ素化オリゴマーシランの調製に使用され、そこから式(I)の単位Mが誘導され得るフッ素化モノマーは、典型的にフッ素化アルコール、ポリイソシアネート、及びイソシアネート反応性非フッ素化モノマーの縮合反応により調製される。
【0056】
フッ素化モノマーの調製に好適なポリイソシアネートとしては、2、3、又は4個のイソシアネート基を有する1つ以上の脂肪族イソシアネート、2、3、又は4個のイソシアネート基を有する1つ以上の芳香族イソシアネート、及びこれらの混合物から選択されることができるものが挙げられる。脂肪族ジイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、及び1,2−エチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、及び3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネートIPDI)が挙げられる。脂肪族トリイソシアネートの例としては、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの環状三量体、及びイソホロンジイソシアネート(イソシアヌレート)の環状三量体が挙げられる。芳香族ジイソシアネートの例としては、4,4’−メチレンジフェニレンジイソシアネート、4,6−ジ−(トリフルオロメチル)−1,3−ベンゼンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、o、m、及びp−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジフェニルエーテル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジイソシアネートジフェニルメタン、4,5’−ジフェニルジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジベンジル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネートジフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートジフェニル、2,2’−ジクロロ−5,5’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネートジフェニル、1,3−ジイソシアネートベンゼン、1,2−ナフチレンジイソシアネート、4−クロロ−1,2−ナフチレンジイソシアネート、1,3−ナフチレンジイソシアネート、及び1,8−ジニトロ−2,7−ナフチレンジイソシアネートが挙げられる。芳香族トリイソシアネートの例としては、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(PAPI)が挙げられる。
【0057】
同様に有用であるのは、ビウレット含有トリイソシアネートのような内部イソシアネート由来部分を含有するイソシアネート、例えばバイエル(Bayer)又はローディア(Rhodia)からそれぞれ市販されるデスモジュール(DESMODUR)(商標)N100又はトロネート(TOLONATE)HDB、イソシアヌレート含有トリイソシアネート、例えばヒュルス社(Huls AG)から市販されるIPDI−1890、アゼテジンジオン含有ジイソシアネート、例えばバイエル(Bayer)から市販されるデスモジュール(DESMODUR)(商標)TTである。同様に、デスモジュール(DESMODUR)(商標)L及びデスモジュール(商標)W、トリ−(4−イソシアネートフェニル)−メタン(デスモジュール(商標)R)(全てバイエル(Bayer)から入手可能)、並びにDDI1410(ヘンケル(Henkel)から入手可能)のような他の市販のジ−又はトリ−イソシアネートも好適である。
【0058】
イソシアネート反応性非フッ素化モノマーは、例えばヒドロキシ官能性ビニルエーテル、アクリルアミドを包含するヒドロキシル基を有するモノマーを包含し、イソシアネート反応性アクリレート及びメタクリレートが特に好適である。イソシアネート反応性アクリレート又はメタクリレート非フッ素化モノマーの特に好適な例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びブタンジオールモノアクリレートが挙げられる。更に好適なモノマーとしては、ポリエチレングリコールの(メタ)アクリレート、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのブロックコポリマーの(メタ)アクリレート、及びアミノ末端ポリエーテルの(メタ)アクリレートを包含する(ポリ)オキシアルキレン基を含むモノマーが挙げられる。単一イソシアネート反応性アクリレート若しくはメタクリレート非フッ素化モノマー、又はこれらの混合物を使用できる。
【0059】
式(I)のフッ素化オリゴマーシランの調製に使用されるフッ素化モノマーは、典型的に触媒の存在下で調製される。好適な触媒としては、ジラウリン酸ジブチル錫、オクタン酸第一錫、オレイン酸第一錫、ジブチルジ−(2−エチルヘキサン酸)錫、塩化第一錫、及び当該技術分野において既知の他のもののような錫塩が挙げられる。存在する触媒の量は、特定の反応及び使用される反応物質に依存するであろう。一般に、好適な触媒濃度は、反応物質の総重量を基準として約0.001〜約10重量%であり、特に好適には約0.05〜約5重量%である。
【0060】
フッ素化モノマーは、単一工程反応で調製されることができる。代わりの実施形態においては、フッ素化モノマーは、2工程反応で調製されることができ、第1工程では、フッ素化アルコールとポリイソシアネートは、得られる反応生成物が1つ以上の遊離イソシアネート基を有するような比で反応することができる。第2工程では、遊離イソシアネート基は、イソシアネート反応性非フッ素化モノマーと更に反応することができる。或いは、非フッ素化イソシアネート反応性モノマーは、初めにポリイソシアネートと反応し、続いてフッ素化アルコールと反応が続いてもよい。一般にフッ素化アルコール、ポリイソシアネート、及びイソシアネート反応性非フッ素化モノマーの量は、アルコール基とイソシアネート基のモル量が等しいか又はおよそ等しいように選択される。それらの合成方法により、ウレタン系フッ素化モノマーは、一般に混合物である。
【0061】
反応は、乾燥条件下で行われることが好ましい。好適な反応温度は、剤並びに使用する触媒の種類及び量に依存するであろう。一般に好適な温度は、室温から約120℃までである。
【0062】
式(I)に表されるフッ素化オリゴマーシランの単位Mは、一般に、非フッ素化モノマー、好ましくはエチレン性不飽和基及び炭化水素部分を含有するモノマーに由来する。
【0063】
特定の実施形態においては、非フッ素化モノマーとしては、式(V)に従うものが挙げられる。
【0064】
−L−E (V)
式中、Rは、水素原子又は非フッ素化有機基、例えば、所望により例えば、ハロゲン、ニトリル基、ヒドロキシル基、アミノ基で置換されてよく、所望によりカテナリーへテロ原子を含有してよい炭化水素基を表し、Lは、例えば−O−、−OOC−、又はアミド基のような有機二価結合基を表し、kは0又は1であり、Eはエチレン性不飽和基を表す。
【0065】
単位Mを誘導できる非フッ素化モノマーの例としては、フリーラジカル重合可能なエチレン性化合物の一般的部類が挙げられ、例えば、アリルアセテート及びアリルヘプタノエートのようなアリルエステル;セチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルのようなアルキルビニルエーテル又はアルキルアリルエーテル;アクリル酸、メタクリル酸、α−クロロアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸のような不飽和酸、並びにこれらの無水物及びこれらのエステル、例えばビニル、アリル、メチル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、ヘプチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、ラウリル、ステアリル、イソボニル又はアルコキシエチルアクリレート、及びメタクリレート;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−クロロアクリロニトリル、2−シアノエチルアクリレート、アルキルシアノアクリレートのようなα−β不飽和ニトリル;アリルアルコール、アリルグリコレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、n−ジイソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N−t−ブチルアミノエチルメタクリレートのようなα,β−不飽和カルボン酸誘導体;スチレン及び例えばビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−シアノメチルスチレンのようなその誘導体;エチレン、プロピレン、イソブテン、3−クロロ−1−イソブテン、ブタジエン、イソプレン、クロロ及びジクロロブタジエン、並びに2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンのようなハロゲンを含有できる低級オレフィン炭化水素;ビニル及びビニリデンクロライドのようなアリル又はビニルハロゲン化物が挙げられる。好ましい非フッ素化モノマーとしては、オクタデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ブチルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、イソブチルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート、及びエチルヘキシルメタクリレート、並びにビニルクロライド及びビニリデンクロライドから選択されるもののような炭化水素基含有モノマーが挙げられる。
【0066】
式(I)で表されるフッ素化オリゴマーシランは、一般に、単位Mは、式、
【0067】
【化7】

【0068】
により表わされる、少なくとも1つの加水分解性基を有するシリル基を有し、式中、Y、Y、及びYはそれぞれ独立して、アルキル基、好ましくは例えばメチル、エチル又はプロピルのようなC〜Cアルキル基、又はシクロヘキシル若しくはシクロペンチルのようなシクロアルキルを含有するアルキル基;フェニルのようなアリール基、アルキルアリール基若しくはアラルキル基;ハロゲンのような加水分解性基、メトキシ、エトキシのようなアルコキシ基若しくはアリールオキシ基を表し、Y、Y、及びYの少なくとも1つは加水分解性基を表す。
【0069】
特定の実施形態においては、単位Mとしては、一般式(VI)に相当するものが挙げられる。
【0070】
【化8】

【0071】
式中、R、R、及びRはそれぞれ独立して、水素、例えばメチル若しくはエチルのようなアルキル基、ハロゲン、又はアリール基を表し、Zは有機二価結合基を表し、Y、Y、及びYは上述で規定されるとおりである。
【0072】
こうした単位Mは、式(VII)により表されるモノマーに由来してもよい。
【0073】
【化9】

【0074】
式中、Y、Y、及びYはそれぞれ独立して、アルキル基、好ましくは例えばメチル、エチル若しくはプロピルのようなC〜Cアルキル基、又はシクロヘキシル若しくはシクロペンチルのようなシクロアルキルを含有するアルキル基;フェニルのようなアリール基、アルキルアリール基若しくはアラルキル基;ハロゲンのような加水分解性基、メトキシ、エトキシのようなアルコキシ基若しくはアリールオキシ基を表し、Y、Y、及びYの少なくとも1つは加水分解性基を表し、Zは有機二価結合基を表し、Eはエチレン性不飽和基を表す。
【0075】
或いは、式VIに従う、こうした単位Mは、官能化モノマーと、更に記載されるであろうシリル基含有剤とを反応させることにより得ることができる。用語「官能化モノマー」とは、後続反応のために利用できる1つ以上の基、例えば縮合反応を受けることが可能な基を有するモノマーを意味する。典型的に、官能化モノマーは、イソシアネート又はエポキシ基と反応することが可能な1つ以上の基を有するモノマーである。こうした基の具体例としては、ヒドロキシ及びアミノ基が挙げられる。
【0076】
Zは有機二価結合基を表し、典型的に1〜20個の炭素原子を含有する。Zは、所望により酸素、窒素、若しくはイオウ含有基、又はこれらの組み合わせを含有することができ、Zは、好ましくはフリーラジカルオリゴマー化(例えば、重合性オレフィン性二重結合、チオール、及び当技術者に既知の他のこうした官能性)に実質的に干渉する官能基がない。好適な連結基Zの例としては、直鎖、分枝鎖、又は環状アルキレン、アリーレン、アラールキレン、オキシアルキレン、カルボニルオキシアルキレン、オキシカルボキシアルキレン、カルボキシアミドアルキレン、ウレタニレンアルキレン、ウレイレンアルキレン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい連結基は、アルキレン、オキシアルキレン、及びカルボニルオキシアルキレンからなる群から選択される。特に好ましい実施形態によると、連結基Zは式、
【0077】
【化10】

【0078】
に相当し、式中、Q及びQは独立して、有機二価結合基を表す。有機二価結合基Qの例としては、例えばアルキレン、アリーレン、オキシアルキレン、カルボニルオキシアルキレン、オキシカルボキシアルキレン、カルボキシアミドアルキレン、ウレタニレンアルキレン、及びウレイレンアルキレンが挙げられる。有機二価結合基Qの例としては、例えばアルキレン及びアリーレンが挙げられる。TはO又はNRを表し、Rは水素、C〜Cアルキル基又はアリール基を表す。
【0079】
式(VII)に従うモノマーの例としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及びメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランのようなアルコキシシラン官能化アクリレート若しくはメタクリレートが挙げられる。
【0080】
フッ素化オリゴマーシランは、連鎖移動剤の存在下で、フッ素化モノマーと所望により非フッ素化モノマー及びシリル基を含有するモノマーのフリーラジカル重合を通じて好都合に調製される。フリーラジカル反応開始剤は、一般に重合又はオリゴマー化反応を開始するために使用される。一般に知られたラジカル開始剤を使用することができ、それらの例としては、アゾビスイソブチロニトリル(ABIN)及びアゾ−2−シアノ吉草酸及び同類のもののようなアゾ化合物;クメン、t−ブチル及びt−アミルヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシド;ジ−t−ブチル及びジクミルペルオキシドのようなジアルキルペルオキシド;t−ブチルペルベンゾエート及びジ−t−ブチルペルオキシフタレートのようなペルオキシエステル;ベンゾイルペルオキシド及びラウロイルペルオキシドのようなジアシルペルオキシドが挙げられる。
【0081】
オリゴマー化反応は、有機フリーラジカル反応に適した任意の溶媒中で行うことができる。反応物質は、任意の好適な濃度、例えば、反応混合物の総重量を基準として約5重量%〜約90重量%で溶媒中に存在できる。好適な溶媒の例としては、脂肪族及び脂環式炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン)、芳香族溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、グリム、ジグリム、ジイソプロピルエーテル)、エステル(例えば、エチルアセテート、ブチルアセテート)、アルコール(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド)、メチルクロロホルム、フレオン(FREON)(商標)113、トリクロロエチレン、α,α,α−トリフルオロトルエンのようなハロゲン化溶媒、及び同類のもの、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0082】
オリゴマー化反応は、有機フリーラジカル反応を導くのに適した任意の温度で行うことができる。用いる特定の温度及び溶媒は、剤の溶解度、特定の反応開始剤を用いるために必要とされる温度、望ましい分子量、及び同類のもののような要件に基づいて、当業者が容易に選択することができる。全ての反応開始剤及び全ての溶媒に好適な特定の温度を列挙することは現実的ではないが、一般に好適な温度は約30℃〜約200℃である。
【0083】
フッ素化オリゴマーシランは、連鎖移動剤の存在下で調製される。好適な連鎖移動剤としては、ヒドロキシ−、アミノ−、メルカプト、又はハロゲン基を挙げてもよい。連鎖移動剤としては、2つ以上のこうしたヒドロキシ、アミノ−、メルカプト、又はハロゲン基を挙げてもよい。フッ素化オリゴマーシランの調製に有用な典型的な連鎖移動剤としては、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−2−ブタノール、3−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−1−プロパノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−エチルアミン、ジ(2−メルカプトエチル)硫化物、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、及びメルカプトオクタデシルプロピオネートから選択されるものが挙げられる。
【0084】
特に好適な実施形態においては、1つ以上の加水分解性基を有するシリル基を含有する連鎖移動剤は、フッ素化オリゴマーシランを製造するためのオリゴマー化において使用される。こうしたシリル基を包含する連鎖移動剤としては、式VIIIに従うものが挙げられる。
【0085】
【化11】

【0086】
式中、Y、Y、及びYは、それぞれ独立して、アルキル基、好ましくは例えばメチル、エチル若しくはプロピルのようなC〜Cアルキル基、又はシクロヘキシル若しくはシクロペンチルのようなシクロアルキルを含有するアルキル基;フェニルのようなアリール基、アルキルアリール基若しくはアラルキル基;ハロゲンのような加水分解性基、メトキシ、エトキシ若しくはアリールオキシ基のようなアルコキシ基を表し、Y、Y、及びYの少なくとも1つは加水分解性基を表す。Lは二価結合基を表す。
【0087】
好ましい連鎖移動剤は、Lが−S−Q−を表し、Qが式VIIIのシリコーン原子(silicone atom)に連結するものであり、式中、Qは、例えば直鎖、分枝鎖若しくは環状アルキレン、アリーレン、又はアラールキレンのような有機二価結合基を表す。一般に、こうした連鎖移動剤の使用は、一価の有機基Gが以下の式に相当するフッ素化オリゴマーをもたらすであろう。
【0088】
【化12】

【0089】
式中、Y、Y、Y、及びQは、上で規定されるような意味を有する。
【0090】
単一の連鎖移動剤又は異なる連鎖移動剤の混合物を使用してよい。好ましい連鎖移動剤は、2−メルカプトエタノール、オクチルメルカプタン、メルカプトオクタデシルプロピオネート、及び3−メルカプトプロピルトリメトキシシランである。典型的に、連鎖移動剤は、オリゴマー中の重合モノマー単位の数を制御し、並びに所望の分子量のフッ素化オリゴマーシランを得るために十分な量で存在する。一般に連鎖移動剤は、フッ素化及び非フッ素化モノマーを包含する存在する総モノマーの1等量当たり約0.05〜約0.5等量、好ましくは約0.25等量の量で使用される。
【0091】
本発明の組成物において有用なフッ素化オリゴマーシランは、1つ以上の加水分解性基を含有する。これらの加水分解性基は、1つ以上の加水分解性基を含有するシリル基を有する連鎖移動剤、例えば上式VIII(式中、Y、Y、及びYの少なくとも1つは加水分解性基を表す)に従う連鎖移動剤の存在下でのオリゴマー化により、フッ素化オリゴマーシランに導入されてよく、並びに/又は上式VII(式中、Y、Y、及びYの少なくとも1つは、加水分解性基を表す)に従うモノマーのような1つ以上の加水分解性基を有するシリル基を含有するモノマーとのコオリゴマー化により、フッ素化オリゴマーシランに導入されてよい。或いは、オリゴマー化に続き、シリル基含有剤と反応することができる官能化連鎖移動剤又は官能化コモノマーを使用することができる。
【0092】
従って、第一実施形態によると、フッ素化オリゴマーシランは、所望によりシリル基も含有してよい連鎖移動剤、例えば上式VIII(式中、Y、Y、及びYの少なくとも1つは、加水分解性基を表す)に従う連鎖移動剤の存在下で、フッ素化アルコール、ポリイソシアネート、及びイソシアネート反応性非フッ素化モノマーと、上式VII(式中、Y、Y、及びYの少なくとも1つは、加水分解性基を表す)に従うモノマーとの縮合により得られるフッ素化モノマー、並びに任意の非フッ素化モノマーをオリゴマー化することにより調製できる。
【0093】
上の方法の変化形として、シリル基含有モノマーを使用せずに、シリル基含有連鎖移動剤を使用して、オリゴマー化を行ってもよい。
【0094】
フッ素化オリゴマーシランを製造するための更なる実施形態は、フッ素化アルコール、ポリイソシアネート、及びイソシアネート反応性非フッ素化モノマーの縮合により得られるフッ素化モノマーと、任意の非フッ素化モノマー及び官能化モノマーとの、連鎖移動剤の存在下での重合又はオリゴマー化を包含する。こうした官能化モノマーの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、及び同類のもののようなヒドロキシ、アミノ官能化アクリレート、又はメタクリレートが挙げられる。官能化モノマーの使用に代わり、又はこれに加えて、官能化連鎖移動剤を使用することができる。用語「官能化連鎖移動剤」とは、後続反応に利用できる1つ以上の基、例えば縮合反応を受けることが可能な基を有する連鎖移動剤を意味する。典型的に、官能化連鎖移動剤は、イソシアネート又はエポキシ基と反応することが可能な1つ以上の基を有する連鎖移動剤である。こうした基の具体例としては、ヒドロキシ及びアミノ基が挙げられる。こうした連鎖移動剤の例としては、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−2−ブタノール、3−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−1−プロパノール並びに3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、11−メルカプト−1−ウンデカノール、及び2−メルカプト−エチルアミンが挙げられる。オリゴマー化に続き、コモノマー及び/又は連鎖移動剤に含有される官能基は、加水分解性基を有するシリル基を包含してコモノマー及び/又は連鎖移動剤に含有される官能基と反応することが可能な化合物と反応することができる。
【0095】
モノマー又は連鎖移動剤に包含される官能基と反応するのに好適な化合物としては、以下の式に従う化合物が挙げられる。
【0096】
【化13】

【0097】
式中、Aは、モノマー又は連鎖移動剤に含有される官能基との縮合反応を受けることが可能な官能基、特にヒドロキシ又はアミノ官能オリゴマーと縮合することが可能な官能基を表す。Aの例としては、イソシアネート又はエポキシ基が挙げられ、Qは有機二価結合基を表し、Y、Y、及びYはそれぞれ独立して、アルキル基、好ましくは例えばメチル、エチル若しくはプロピルのようなC〜Cアルキル基、又はシクロヘキシル若しくはシクロペンチルのようなシクロアルキルを含有するアルキル基;フェニルのようなアリール基、アルキルアリール基若しくはアラルキル基;ハロゲンのような加水分解性基、メトキシ、エトキシのようなアルコキシ基若しくはアリールオキシ基を表し、Y及びYの少なくとも1つは加水分解性基を表す。
【0098】
有機二価結合基Qは、1〜約20個の炭素原子を含有することが好ましい。Qは、所望により、酸素、窒素、若しくはイオウ含有基、又はこれらの組み合わせを含有することができる。好適な連結基Qの具体例としては、直鎖、分枝鎖又は環状アルキレン、アリーレン、アラールキレン、オキシアルキレン、カルボニルオキシアルキレン、オキシカルボキシアルキレン、カルボキシアミドアルキレン、ウレタニレンアルキレン、ウレイレンアルキレン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。特に好適な連結基は、アルキレン、オキシアルキレン、及びカルボニルオキシアルキレンからなる群から選択される。
【0099】
式IXに従う化合物の例としては、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン及び3−エポキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。式IX(式中、Aはイソシアネート基である)に従う化合物と続いて反応するヒドロキシ又はアミノ官能化連鎖移動剤を使用する場合、フッ素化オリゴマーシラン中の得られる一価の有機基Gは、一般に式、
【0100】
【化14】

【0101】
で表され、式中、Q、Q、Y、Y、及びYは、上述で規定されるような意味を有し、Tは、O又はNRを表し、Rは水素、アリール、又はC〜Cアルキル基である。
【0102】
縮合反応は、当業者に周知の従来の条件下にて行われる。反応は、触媒の存在下で行われることが好ましい。好適な触媒としては、ジラウリン酸ジブチル錫、オクタン酸第一錫、オレイン酸第一錫、ジブチルジ−(2−エチルヘキサン酸)錫、塩化第一錫のような錫塩、及び当業者に知られている他のものが挙げられる。存在する触媒の量は、特定の反応に応じて異なるであろうので、特定の好ましい濃度を列挙することは現実的でない。しかし、好適な触媒濃度は、反応物の全重量を基準にして一般には約0.001重量%〜約10重量%、好ましくは約0.1重量%〜約5重量%である。
【0103】
縮合反応は、乾燥条件下で、エチルアセテート、アセトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、及び同類のもののような極性溶媒中にて行われることが好ましい。好適な反応温度は、用いられる特定の剤、溶媒及び触媒に基づいて当業者によって容易に決定されるであろう。好適な温度は、およそ室温〜約120℃である。
【0104】
本発明のいくつかの実施形態のフッ素性化学物質組成物において使用される構成成分(b)は、1分子当たり少なくとも2つの加水分解性基を有するSi、Ti、Zr、B、Al、Ge、V、Pb、Sn、及びZnからなる群から選択される元素Mの1つ以上の非フッ素化化合物を含む。加水分解性基は、元素Mに直接結合することが好ましい。本発明の1つの実施形態では、構成成分(b)は、式(X)に従う化合物を含む。
【0105】
(RM(Yj−i (X)
式中、Rは非加水分解性基を表し、MはSi、Ti、Zr、B、Al、Ge、V、Pb、Sn、及びZnからなる群から選択される元素を表し、jはMの価数に依存して3又は4であり、iは0、1、又は2であり、Yは加水分解性基を表す。
【0106】
構成成分(b)に存在する加水分解性基は、同一でも異なってもよく、一般に、例えば酸性又は塩基性水性条件下で加水分解可能であるので、構成成分(b)は縮合反応を受け得る。加水分解性基は、加水分解すると、ヒドロキシル基のような、縮合反応を受けることが可能な基を生むことが好ましい。
【0107】
構成成分(b)における加水分解性基の典型的な例としては、構成成分(a)に関して記載されたものが挙げられる。構成成分(b)の特に好適な例としては、テトラ−、トリ−、又はジアルコキシ(好ましくは1〜4個の炭素原子を含有する)化合物が挙げられる。
【0108】
非加水分解性基Rは、同一でも異なってもよく、加水分解されることができない。例えば、非加水分解性基Rは、独立して炭化水素基、例えば直鎖若しくは分枝状であってよく、1つ以上の脂肪族環状炭化水素構造を包含してよいC〜C30アルキル基、C〜C30アリール基(所望により、ハロゲン及びC〜Cアルキル基から選択される1つ以上の置換基により置換される)、又はC〜C30アラルキル基から選択されてよい。
【0109】
1つの実施形態において、非加水分解性基Rは、独立して炭化水素基、例えばC〜C30アルキル基及びC〜C20アリール基(所望により、ハロゲン及びC〜Cアルキル基から選択される1つ以上の置換基により置換される)から選択される。
【0110】
化合物(b)の特に好適な例としては、MがTi、Zr、Si、及びAlであるものが挙げられる。
【0111】
構成成分(b)の代表例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、テトラ−メチルオルトチタンネート、テトラエチルオルトチタンネート、テトラ−イソプロピルオルトチタンネート、テトラ−n−プロピルオルトチタンネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタンネート、テトラエチルジルコンネート、テトラ−イソプロピルジルコンネートテトラ−n−プロピルジルコネート、及び同類のものが挙げられる。より好ましい化合物としては、Si、Ti、及びZrのC〜Cアルコキシ誘導体が挙げられる。特に好適な化合物(b)としては、テトラエトキシシラン及びテトラ(2−エチルヘキシル)チタネートが挙げられる。単一の化合物(b)又は化合物(b)の混合物を使用してよい。
【0112】
コーティングの耐久性を更に向上するために、所望により、フッ素性化学物質組成物は、フッ素化オリゴマー(a)及び、もしあれば非フッ素化化合物(b)に加えて、更に1つ以上の架橋剤を含んでよい。架橋剤は、構成成分(a)及び(b)の化合物からの追加の官能性を持つ化合物から選択されてよい。例えば、架橋剤は、架橋反応において係合可能な1分子当たり少なくとも1つの加水分解性基及び少なくとも1つの反応性官能基を有するSi、Ti、Zr、B、Al、Ge、V、Pb、Sn、及びZnからなる群から選択される元素Mの化合物を含んでよい。この少なくとも1つの加水分解性基は、元素Mに直接結合することが好ましい。
【0113】
好適な及び好ましい加水分解性基としては、構成成分(a)及び(b)に関して述べられる基が挙げられる。架橋剤が1超過の加水分解性基を包含する場合、これらは同一でも異なってもよい。特に好適な加水分解性基は、メトキシ、エトキシ、イソ−及び(好ましくは)n−プロポキシ、又はイソ−及び(好ましくは)n−ブトキシ基のようなC〜Cアルコキシ基から選択される。
【0114】
反応性官能基は、更なる架橋官能性を提供するために、架橋反応において係合可能な架橋剤における基である。架橋反応は、例えば照射、加熱、又はこれらの組み合わせを伴ってもよい。架橋剤が1超過の反応性官能基を包含する場合、これらの基は同一でも異なってもよい。
【0115】
好適な反応性官能基としては、アミノ基、エポキシ基、メルカプタン、又は無水物基のような、縮合又は付加反応により反応する可能性がある基が挙げられる。更に好適な反応性官能基としては、ビニル基及びアクリレート若しくはメタクリレート基のような、フリーラジカル重合により反応する可能性がある基が挙げられる。これらの中で、ビニル、アクリレート若しくはメタクリレート基のようなフリーラジカル重合性基が、特に好ましい反応性官能基である。付加又は縮合反応により反応できる反応性官能基を有する好適な架橋剤の例としては、エポキシプロピルトリメトキシシラン、ビス(3−アミノプロピルトリメトキシシリル)アミン、及びアミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0116】
フリーラジカル重合性基を有する好適な架橋剤の例としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン並びにアルコキシシラン官能化アクリレート、又は例えばメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランのようなメタクリレートが挙げられる。
【0117】
こうした反応性官能基、好ましくはフリーラジカル重合性基の存在は、基材上への組成物のコーティング後に、二重の硬化、すなわち、ラジカル重合を通しての不飽和有機ラジカルの熱的又は光化学的に誘発される結合、及び重縮合の熱的完了(例えば、いまだ存在する基M−OHからの水の脱離により)を行うことができるという点で、有利である。不飽和化合物を使用する場合、好適な基材上に適用されたコーティング組成物の熱及び/又は光化学的に誘発される硬化のために、典型的に追加の触媒が存在すべきである。特に好ましいのは、光重合反応開始剤の添加である。こうした反応開始剤は、市販されており、例えば、イルガキュア(Irgacure)(登録商標)184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、イルガキュア(登録商標)500(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン)、及びチバ・ガイギー(Ciba-Geigy)から入手可能なイルガキュア(登録商標)型の他の光開始剤、メルク(Merck)から入手可能なダロキュア(Darocur)(登録商標)型光開始剤、ベンゾフェノン、及び同類のものが挙げられる。
【0118】
所望により採用される熱反応開始剤の例は、当業者に既知であり、とりわけ、ジアシルペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、アルキルペルエステル、ジアルキルペルオキシド、ペルケタール、ケトンペルオキシド、及びアルキルヒドロペルオキシドの形態の有機過酸化物が挙げられる。こうした熱反応開始剤の具体例は、ジベンゾイルペルオキシド、第三級ブチルペルベンゾエート、及びアゾビスイソブチロニトリルである。これらの反応開始剤は、当業者に既知の量でコーティング組成物に添加される。典型的に反応開始剤は、架橋剤の量を基準として約0.1〜約2重量%の量で添加されるであろう。
【0119】
組成物は、抗菌特性のような追加の特性を持つコーティングを提供する添加剤を更に含有してよい。例としては、[C1837N(CH(CHSi(OCHClが挙げられる。しかし、組成物の撥水特性に悪影響を与えないために、イオン性添加剤の添加は、約10重量%を超えないで維持することが好ましい。更に好適な添加剤としては、UV安定剤、UV吸収剤、シリカ、ジルコニア、又はチタニアのようなミクロ及びナノ粒子、顔料、充填剤、並びに同類のものが挙げられる。
【0120】
本発明の一実施形態に従うと、フッ素性化学物質組成物は、構成成分(a)(式(I)のフッ素化オリゴマーシラン)と任意の架橋剤との部分的な縮合体又は実質的に完全な縮合生成物を含んでよい。本発明の別の実施形態では、フッ素性化学物質組成物は、構成成分(a)(式(I)のフッ素化オリゴマーシラン)と、構成成分(b)(元素Mの非フッ素化化合物)と、任意の架橋剤との反応により得られる部分的な縮合体又は実質的に完全な縮合生成物を含んでよい。
【0121】
重縮合反応は、加水分解性基の加水分解をもたらすために十分な水、酸、又は塩基触媒の存在下で好都合に実行される。水の量は、好ましくは総組成物の約0.1〜約20重量%、より好ましくは約0.5〜約5重量%であろう。好適な触媒としては、以下に示すような有機及び無機酸又は塩基触媒が挙げられる。典型的に触媒は、約0.01〜約0.1重量%の量で添加されるであろう。
【0122】
良好な疎水性及び耐久性を得るために、好ましくは有機若しくは無機酸、又は塩基触媒を使用すべきである。有機酸としては、酢酸、クエン酸、ギ酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペルフルオロ酪酸、及び同類のものが挙げられる。無機酸の例としては、硫酸、塩酸、及び同類のものが挙げられる。有用な塩基触媒の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びトリエチルアミンが挙げられる。典型的に、触媒は、フッ素性化学物質組成物の約0.01〜約10重量%、より好ましくは約0.05〜約5重量%の量で添加されるであろう。
【0123】
特に好適な実施形態に従うと、基材に適用するための組成物は、有機溶媒中固体が少なくとも10重量%の溶液を含む濃縮物を、該濃縮物に有機溶媒又は溶媒の混合物を添加することによって希釈することにより、調製される。フッ素性化学物質組成物の調製における化合物(a)と化合物(b)との重量比は、広く変化させてもよく、典型的に約2:1〜約1:100である。1つの特定の実施形態においては、化合物(a)と化合物(b)との重量比は、約1:2〜約1:50である。良好な撥水特性を得るために、非常に低量のフッ素性化学物質製品を使用できることが見出された。こうした組成物は、環境的利点を提供するだけでなく、費用上の利点も提供する。更なる特定の実施形態においては、フッ素性化学物質組成物は、化合物(b)の存在なしで製造される。
【0124】
典型的に本発明のフッ素性化学物質組成物は、有機溶媒に溶解又は分散する。使用される有機溶媒又は有機溶媒のブレンドは、化合物(a)及び任意の架橋剤、及び/又は化合物(a)、(b)、及び任意の架橋剤の混合物、並びに反応後形成されるフッ素化縮合体を溶解することが可能でなければならない。好ましくは、使用される有機溶媒又は有機溶媒のブレンドは、少なくとも約0.01%のフッ素性化学物質縮合体を溶解することが可能である。更に、好ましくは溶媒又は溶媒の混合物は、水への溶解度が少なくとも約0.1重量%、好ましくは約1重量%であり、酸又は塩基触媒への溶解度が少なくとも約0.01重量%、好ましくは約0.1重量%である。有機溶媒又は有機溶媒の混合物がこれらの基準を満たさないならば、フッ素化縮合体、溶媒(類)、水、及び触媒の均質混合物を得ることができない可能性がある。
【0125】
好適な有機溶媒、又は溶媒の混合物は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールのような脂肪族アルコール(好ましくは1〜6個の炭素原子を含有する)、アセトン又はメチルエチルケトンのようなケトン、エチルアセテート、メチルホルメートのようなエステル、ジエチルエーテル及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルのようなエーテルから選択することができる。特に好ましい溶媒としては、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン及びアセトンが挙げられる。
【0126】
出発化合物及び/又はフッ素性化学物質縮合体の溶解度を改善するために、フッ素化溶媒を有機溶媒と組み合わせて用いてもよい。こうしたフッ素化溶媒は、CFCHOHのような親水基を更に含有しない限り、水及び酸、又は塩基に対する溶解度の要件を一般に満たさないであろうから、それだけで用いるのには一般に適さないであろう。
【0127】
フッ素化溶媒の例としては、3Mから入手可能なペルフルオロヘキサン又はペルフルオロオクタンのようなフッ素化炭化水素、ソルベイ(Solvay)から入手可能なペンタフルオロブタン、又はデュポン(DuPont)から入手可能なCFCFHCFHCFCFのような部分的フッ素化炭化水素、3Mから入手可能なメチルペルフルオロブチルエーテル又はエチルペルフルオロブチルエーテルのようなハイドロフルオロエーテルが挙げられる。これらの物質と有機溶媒との様々なブレンドを使用することができる。
【0128】
構成成分(a)、(b)、及び任意の架橋剤からのフッ素性化学物質縮合体の形成は、化合物の混合物をもたらすことを、当業者は更に理解するであろう。縮合順序は、アルクルス(Arkles)(CHEMTECH(1977)、7巻、766〜78頁)により記載されている。
【0129】
一般に、本発明のフッ素性化学物質組成物は、撥水及び撥油である耐久性があるコーティングを製造するのに十分な量で基材に適用される。このコーティングは、極めて薄い、例えば、約1〜約50ナノメートルであることができるが、実際には有用なコーティングはより厚くてもよい。
【0130】
一実施形態においては、コーティング組成物は、典型的に溶媒中の比較的希釈された溶液であり、構成成分(a)すなわちフッ素化オリゴマーシラン、及び構成成分(b)すなわち非フッ素化化合物、及び/又は構成成分(a)及び(b)の部分的又は実質的に完全な縮合生成物を約0.01〜約30重量%、好ましくは約0.01〜約20重量%、より好ましくは約0.05〜約5重量%含む。
【0131】
更なる実施形態においては、コーティング組成物は、構成成分(a)すなわちフッ素化シラン、及び/又は構成成分(a)の部分的な又は実質的に完全な縮合生成物を約0.01〜約10重量%、好ましくは約0.05〜約5重量%からなる溶媒中で比較的希釈された溶液である。
【0132】
本発明のフッ素性化学物質組成物と共に特に効果的な方法で処理され得る好適な基材としては、好ましくはフッ素性化学物質組成物、及び/又はその部分的若しくは完全な重縮合生成物と反応することが可能な基を有する硬質表面を有する基材が挙げられる。特に好適な基材としては、セラミックス、ガラス、様々な金属、天然及び人工石、高分子材料(例えばポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレンコポリマー、例えばスチレンアクリロニトリルコポリマー、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート)、ペイント(例えばアクリル樹脂上のもの)、粉末コーティング(例えばポリウレタン又はハイブリッド粉末コーティング)、木、並びに繊維性基材(例えば布地、皮、カーペット、紙)が挙げられる。様々な物品は、その上に耐久性がある撥水及び撥油コーティングを提供するために、本発明のフッ素性化学物質組成物で効果的に処理されることができる。例としては、セラミックタイル、バスタブ若しくはトイレット、ガラスシャワーパネル、建築ガラス、車両の様々な部分(例えばミラー又はフロントガラス)、ガラス、及びセラミック若しくはエナメル質陶器材料が挙げられる。
【0133】
基材の処理は、処理表面の撥油性及び撥水性に起因して、処理表面の汚れの保持力を低くし、より容易に洗浄可能にする。本発明の組成物から得ることができる処理表面の高度な耐久性のため、長時間の露出若しくは使用、及び繰り返しの洗浄にも関わらず、これらの所望の特性は維持される。
【0134】
基材の処理を達成するために、好ましくは上に開示された溶媒組成物の形態のフッ素性化学物質組成物を基材に適用する。基材上にコーティングされるフッ素性化学物質組成物の量は一般に、撥水性及び撥油性であるコーティング、例えばコーティングの乾燥及び硬化後に測定して、20℃の蒸留水に対する接触角が少なくとも80゜であり、n−ヘキサデカンに対する接触角が少なくとも40゜であるようなコーティングを製造するのに十分な量であろう。
【0135】
最適な特徴、特に耐久性を得るために、好ましくは、基材は、本発明の組成物を適用する前に、洗浄されるべきである。つまり、コーティングすべき基材の表面には、コーティング前に有機汚染が実質的にあってはならない。洗浄技術は、基材の種類に依存し、例えば、アセトン又はエタノールのような有機溶媒での溶媒洗浄工程が挙げられる。
【0136】
ブラッシング、スプレー、ディップ、ローリング、スプレッド、及び同類のもののような多種多様のコーティング方法を、本発明の組成物を適用するために使用することができる。フッ素性化学物質組成物の適用のために好ましいコーティング方法としては、スプレー適用が挙げられる。典型的に、コーティングされる基材は、室温(典型的に、約20℃〜約25℃)にて処理組成物に接触し得る。或いは、混合物は、例えば、約60℃〜約150℃の温度で予備加熱した基材に適用することができる。これは、工業生産の上で特に有益があるもので、例えばセラミックタイルは、生産ラインの終わりにおいて焼成オーブンの直後に処理されることができる。適用後、処理された基材を、室温又は高温、例えば約40℃〜約300℃において、乾燥及び硬化に十分な時間、乾燥及び硬化することができる。或いは、熱処理に加えて、それぞれ反応開始剤の種類及び存在に依存して、それ自体が既知の方法にてコーティング組成物を照射(例えばUV照射、レーザー等)により硬化してよい。また、プロセスは過剰の材料を除去するための研磨工程を必要とする可能性もまたある。
【実施例】
【0137】
以下の実施例は、本発明を更に例証するが、本発明を制限することを意図しない。特に指示がない限り、全ての部は重量による。
【0138】
A.略語
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
A−174:CH=C(CH)C(O)O(CHSi(OCH、アルドリッチ(Aldrich)から入手可能
A−160:HS(CHSi(OCH、アルドリッチ(Aldrich)から入手可能
DBTDL:ジラウリン酸ジブチル錫
MeFBSEA:N−メチルペルフルオロブチルスルホンアミドエチルアクリレート
MeFBSEMA:N−メチルペルフルオロブチルスルホンアミドエチルメタクリレート
MEHQ:メチルヒドロキノン
HOEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
HOPMA:ヒドロキシプロピルメタクリレート
TDI:トルエンジイソシアネート
TEOS:テトラエトキシシラン、アルドリッチ(Aldrich)から入手可能
IPDI:イソホロンジイソシアネート
ODMA:オクタデシルメタクリレート
MeFBSE:N−メチルペルフルオロブチルスルホンアミドエタノール
MDI:4,4’−メチレンジフェニレンジイソシアネート
PAPI:ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、バイエル(Bayer)から入手可能
HFPO−alc:F(CF(CF)CFO)6.85CF(CF)C(O)NHCHCHOH、様々な鎖長を持つオリゴマーの混合物からなる。指標6.85は、繰り返しHFPO−単位の数の数学的平均を示す。
【0139】
B.適用及び使用方法
コーティング方法
第一工程においては、基材を洗浄し、アセトンで脱脂した。洗浄後、それぞれの実施例において示されているようなフッ素化オリゴマーシランの0.1〜1%溶液を、40mL/分でのスプレー塗布により、基材上に適用した。基材を乾燥し、150℃で5分間硬化した。
【0140】
接触角
処理された基材について、オリンパス(Olympus)TGHMゴニオメーターを使用して、水(W)及び
n−ヘキサデカン(O)に対するそれらの接触角を試験した。研磨前(初期)及び研磨直後(研磨)に、接触角を測定した。値は4つの測定値の平均値であり、度で報告される。接触角の測定可能な最低値は20であった。値<20は、液体が表面上に広がることを意味する。
【0141】
研磨試験
処理した基材を、CIFクリームクリーナー(レバー・ファベルジュ(Lever Faberge))を使用するエリクセン(Erichsen)洗浄機を使用して研磨した。40の研磨サイクルが行われた。
【0142】
C.中間体及びフッ素性化学物質組成物の合成
1.(HFPO)−alc:F(CF(CF)CFO)6.85CF(CF)C(O)NHCHCHOHの合成
(HFPO)−alcを、対応する(HFPO)−エステル、
F(CF(CF)CFO)6.85CF(CF)COOCHから調製した。
【0143】
1リットルの三首反応フラスコに、攪拌棒、コンデンサー、滴下漏斗、加熱マントル、及び温度計を装着した。フラスコに、1000gの
(HFPO)−エステルを充填した。混合物を40℃に加熱し、43.4gのエタノールアミンを、滴下漏斗を経由して30分間に渡って添加した。反応混合物を65℃に3時間保持した。FTIR分析により、完全な転化が示された。最終製品を以下のように精製した。500mLのエチルアセテートを添加し、有機溶液を200mLのHCl(1N)で洗浄した後、200mLの食塩水で2回洗浄した。有機相をMgSO上で乾燥させた。ビュッヒ(Buchi)のロータリーエバポレーターを使用して、酢酸エチルを、水流真空で蒸発させた。油ポンプ真空(<100Pa(1mbar))を使用して、生成物を50℃で5時間乾燥した。代わりの精製工程としては、ビュッヒ(Buchi)のロータリーエバポレーター(75℃以下=<13kPa(100mmHg)を使用して、水流真空によって、反応中に形成されたメタノールを蒸発させることを包含した。残留メタノールを、油ポンプ真空(80℃以下、=<1kPa(10mbar))で更に除去した。
【0144】
得られた(HFPO)−alcは、黄色の油であった。構造をNMRによって確認した。
【0145】
2.フッ素化モノマー(MF)の合成
a.オリゴマーフッ素化アルコール、ポリイソシアネート及びイソシアネート反応性非フッ素化モノマーから出発する、フッ素化モノマーの合成
いくつかのフッ素化モノマーを、MF−1:(MeFBSEA/HSHCHCHOH:4/1)/TDI/HOEA(等モル量)について示された一般手順に従って調製した。
【0146】
攪拌棒、加熱マントル、温度計及びコンデンサーを装着した三首フラスコに、205.5g(0.5モル)のMeFBSEA、9.7g(0.125モル)のHSCHCHOH、144gのエチルアセテート、及び0.2gのAIBNを入れた。反応物を、窒素及び真空を使用して3回脱気した後、窒素下で75℃まで加熱した。4時間後、第二部分の0.1gのAIBNを添加した。反応を一晩継続させた。0.5gのAIBNを添加し、75℃、窒素下にて、反応を6時間続けた。反応物を窒素下で30℃まで冷却し、21.8g(0.125モル)の2,4トルエンジイソシアネート(TDI)を添加した。反応混合物を窒素下で80℃まで6時間加熱した。その後、14.5g(0.125モル)の2−ヒドロキシエチルアクリレート(HOEA)を、2滴のDBTDL触媒及び100ppmのMEHQ及びフェノチアジンと共に添加した。窒素下70℃で、反応を一晩継続させた。透明な、わずかに黄色の溶液が得られた。IR分析により、全てのイソシアネート基の完全な転化が示された。
【0147】
表1に示された反応物質から出発し、上の手順を使用して、更なるウレタン系フッ素化モノマー(MF−2〜MF−6)を調製した。全ての反応物質を等モル量で使用した。
【0148】
【表1】

【0149】
b.フッ素化アルコール又はペルフルオロポリエーテルアルコール、ポリイソシアネート、及びイソシアネート反応性非フッ素化モノマーから出発する、フッ素化モノマーの合成
いくつかのフッ素化モノマーを、MF−7:MeFBSE/MDI/HOEA(1/1.1/1)について示された手順に従って調製した。
【0150】
攪拌棒、加熱マントル、温度計及びコンデンサーを装着した三首フラスコに、35.7g(0.1モル)のMeFBSE、27.5gのMDI(0.11モル)、及び72gの乾燥MEKを入れた。混合物を窒素下で80℃まで加熱し、6時間反応させた。その後、18.7g(0.11モル)のHOEAを、さじ先ほどのMEHQ及びフェノチアジン、並びに1滴のDBTDL触媒と共に添加した。窒素下80℃で16時間、反応を継続させた。かすんだ溶液が得られた。IR分析により、全てのイソシアネート基の完全な反応が確認された。
【0151】
表2に示された反応物質から出発し、上の手順を使用して、更なるウレタン系フッ素化モノマー(MF−8〜MF−12)を調製した。他に示されない限り(例えば、MF−11)、全ての反応物質を等モル量で使用した。
【0152】
【表2】

【0153】
3.フッ素化オリゴマーシラン(FC)の合成
いくつかのフッ素化オリゴマーシランを、FC−1:MF−1/A−174/ODMA/A−160(等モル量)について以下に概説される手順に従って調製した。
【0154】
攪拌棒、温度計、コンデンサー及び加熱マントルを装着した三首フラスコに、80.4gの50%固体のウレタン系フッ素化モノマーMF−1(0.02モル)のエチルアセテート溶液、5g(0.02モル)のA−174、4gの(0.02モル)A−160、6.8gのODMA(0.02モル)、及び0.2gのAIBNを入れた。反応混合物を、窒素及び真空を使用して3回脱気した後、反応を70℃で6時間行った。その後、更なる0.1gのAIBNを添加し、反応を一晩継続させた。透明溶液が得られた。
【0155】
表3に示されたモル量で反応性化合物を使用して、本質的に上の手順に従って、更なるフッ素化オリゴマーシランを調製した。フッ素化オリゴマーシランFC−13〜FC−25はMEK中で製造され、反応は70℃ではなく75℃で行われた。
【0156】
【表3】

【0157】
4.比較フッ素性化学物質組成物(CFC)の合成
当該技術分野において既知の方法に従って、比較フッ素性化学物質組成物CFC−1〜CFC−3を調製した。これらの組成及び合成のための参考文献を表4に示す。
【0158】
【表4】

【0159】
D.実施例
実施例1〜15並びに比較実施例C−1及びC−2
実施例1〜15においては、フッ素化オリゴマーシランFC−1〜FC−12と金属アルコキシドを、表5に示された量で混合することにより、フッ素性化学物質組成物を調製した。混合物を、1%HCl(37%)を更に含有するエタノール中1%固体まで、希釈した。室温において、組成物を白色艶出しタイルにスプレーした。過剰な生成物を、3M高性能ワイプ(High Performance wipe)にてすぐ除去した。試料を、室温にて24時間硬化した。比較実施例C−1及びC−2を同じ方法で製造したが、それぞれ比較フッ素性化学物質組成物CFC−1及びCFC−2を使用した。初めに、並びにエリクセン(Erichsen)洗浄剤及び洗剤CIF(レバー・ファベルジュ(Lever Faberge)から入手可能)での40サイクルの機械的研磨後に、オリンパス(Olympus)TGHMゴニオメーターを使用して接触角を測定した。結果を表5に要約する。
【0160】
【表5】

【0161】
実施例16〜32並びに比較実施例C−3及びC−4
実施例16〜32においては、フッ素化オリゴマーシランFC−13〜FC−25を60℃まで加熱して完全に溶解し、MEK中1%固体まで更に希釈した。これらの希釈混合物に、4g/100gMEK金属アルコキシド又は表6に示すようなこれらの混合物、及び1%のHCl(37%)を添加した。室温において、組成物を白色艶出しタイルにスプレーした。過剰な生成物を、3M高性能ワイプ(High Performance wipe)にてすぐ除去した。試料を室温にて24時間硬化させた。比較実施例C−3及びC−4を同じ方法で製造したが、それぞれ比較フッ素性化学物質組成物CFC−1及びCFC−2を使用した。初めに、18%HClに16時間接触後、並びにエリクセン(Erichsen)洗浄剤及び洗剤CIF(レバー・ファベルジュ(Lever Faberge)から入手可能)での40サイクルの機械的研磨後に、オリンパス(Olympus)TGHMゴニオメーターを使用して接触角を測定した。結果を表6に要約する。
【0162】
【表6】

【0163】
注記:=CHSi(OCHCH
**=(CHSi(OCHCH
***=0.5gのC1837Si(OCH+3.5gのTEOS
本発明の様々な修正及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素性化学物質組成物であって、
(a)一般式、
【化1】

により表されるフッ素化オリゴマーシランであり、式中、Xは末端基を表し、Mはフッ素化アルコール、ポリイソシアネート、及びイソシアネート反応性非フッ素化モノマーの縮合から得られるフッ素化モノマーに由来する単位を表し、Mは非フッ素化モノマーに由来する単位を表し、Mは式、
【化2】

により表されるシリル基を有する単位を表し、式中、Y、Y、及びYはそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基、若しくは加水分解性基を表し、Y、Y、及びYの少なくとも1つは加水分解性基を表し、Gは連鎖移動剤の残基を含む一価の有機基であり、nは1〜100の値を表し、mは0〜100の値を表し、rは0〜100の値を表し、n+m+rは少なくとも2であり、
ただし、以下の条件の少なくとも1つを満たす、(i)Gは式、
【化3】

のシリル基を含有する一価の有機基であり、式中、Y、Y、及びYはそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基若しくは加水分解性基を表し、Y、Y、及びYの少なくとも1つは加水分解性基を表すか、又は(ii)rは少なくとも1である、フッ素オリゴマーシランと、
所望により、(b)1分子当たり少なくとも2つの加水分解性基を有するSi、Ti、Zr、B、Al、Ge、V、Pb、Sn、及びZnからなる群から選択される元素Mの非フッ素化化合物と、を含み、
前記フッ素化オリゴマーシラン、及び存在する場合、前記非フッ素化化合物が、有機溶媒に溶解若しくは分散している、フッ素性化学物質組成物。
【請求項2】
前記フッ素化アルコールが少なくとも3つの炭素原子を有する一官能性ペルフルオロアルコールである、請求項1に記載のフッ素性化学物質組成物。
【請求項3】
前記フッ素化アルコールが、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する連鎖移動剤の存在下において、フッ素化モノマー、及び所望により非フッ素化モノマーのフリーラジカル重合により得られるオリゴマーフッ素化アルコールである、請求項1に記載のフッ素性化学物質組成物。
【請求項4】
前記フッ素化モノマーが式、
−Q−E
に相当し、式中、Rは少なくとも3つの炭素原子を有するフッ素化脂肪族基を表し、Qは非フッ素化二価結合基を表し、Eはエチレン性不飽和基である、請求項3に記載のフッ素性化学物質組成物。
【請求項5】
前記連鎖移動剤が少なくとも1つのヒドロキシル基を有するメルカプタン化合物である、請求項3に記載のフッ素性化学物質組成物。
【請求項6】
前記フッ素化アルコールが一官能性ペルフルオロポリエーテルアルコールである、請求項1に記載のフッ素性化学物質組成物。
【請求項7】
前記単位Mが一般式、
−L−E
に従う非フッ素化モノマーに由来し、式中、Rは水素原子又は非フッ素化有機基を表し、Lは有機二価結合基を表し、kは0又は1であり、Eはエチレン性不飽和基を表す、請求項1に記載のフッ素性化学物質組成物。
【請求項8】
前記非フッ素化化合物(b)が式、
(RM(Yj−i
に相当し、式中、Rは非加水分解性基を表し、MはSi、Ti、Zr、B、Al、Ge、V、Pb、Sn、及びZnからなる群から選択される元素を表し、jはMの価数に依存して3又は4であり、iは0、1、又は2であり、Yは加水分解性基を表す、請求項1に記載のフッ素性化学物質組成物。
【請求項9】
式(I)のフッ素化オリゴマーシランと非フッ素化化合物(b)との重量比が約2:1〜約1:100である、請求項1に記載のフッ素性化学物質組成物。
【請求項10】
前記組成物が、少なくとも約5重量%の量で前記フッ素化オリゴマーシランを含む濃縮物の形態である、請求項1に記載のフッ素性化学物質組成物。
【請求項11】
前記組成物が、約0.01〜約5重量%の量で前記フッ素化オリゴマーシランを含む希釈形態である、請求項1に記載のフッ素性化学物質組成物。
【請求項12】
酸又は塩基触媒、及び水を更に含む、請求項1に記載のフッ素性化学物質組成物。
【請求項13】
請求項1にて規定する式(I)の前記フッ素化オリゴマーシラン及び前記非フッ素化化合物(b)との反応生成物を含む、フッ素性化学物質組成物。
【請求項14】
請求項1にて規定する式(I)の前記フッ素化オリゴマーシラン及び前記非フッ素化化合物(b)との反応から得られる生成物。
【請求項15】
基材の処理方法であって、請求項1にて規定するフッ素性化学物質組成物を前記基材に適用することを含む、基材の処理方法。
【請求項16】
前記基材を加熱することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記基材がガラス、セラミック、金属、繊維性基材又は高分子基材を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
フッ素化オリゴマーシランであって、一般式、
【化4】

で表され、式中、Xは末端基を表し、Mはフッ素化アルコール、ポリイソシアネート、及びイソシアネート反応性非フッ素化モノマーの縮合から得られるフッ素化モノマーに由来する単位を表し、Mは非フッ素化モノマーに由来する単位を表し、Mは式、
【化5】

により表されるシリル基を有する単位を表し、式中、Y、Y、及びYはそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基、若しくは加水分解性基を表し、Y、Y、及びYの少なくとも1つは加水分解性基を表し、Gは連鎖移動剤の残基を含む一価の有機基であり、nは1〜100の値を表し、mは0〜100の値を表し、rは0〜100の値を表し、
n+m+rは少なくとも2であり、ただし、以下、(i)Gは式、
【化6】

のシリル基を含有する一価の有機基であり、式中、Y、Y、及びYはそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基若しくは加水分解性基を表し、Y、Y、及びYの少なくとも1つは加水分解性基を表し、又は(ii)rは少なくとも1である、という条件の少なくとも1つを満たす、フッ素化オリゴマーシラン。

【公表番号】特表2009−544816(P2009−544816A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521908(P2009−521908)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/073883
【国際公開番号】WO2008/014174
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】