説明

フッ素化ジヒドロテトラベナジンエーテルイメージング剤及びプローブ

本発明は、ジヒドロテトラベナジンに関連する新規フッ素化エーテル化合物及びかかるフッ素化エーテル化合物の製造に際して有用な中間体を提供する。フッ素化エーテル化合物はラセミ形態及び鏡像異性的に富化された形態の両方で提供され、フッ素−18及びフッ素−19のいずれか一方又は両方を含み得る。フッ素化エーテル化合物は、特にヒトの糖尿病に関連するバイオマーカーであるVMAT−2に対して高い親和性を有することが示される。フッ素−18基を含むフッ素化エーテル化合物は、VMAT−2バイオマーカーを標的化するPETイメージング剤として有用である。非放射性標識フッ素化エーテル化合物は、PETイメージング剤を発見するためのプローブとして有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジヒドロテトラベナジンに関連するフッ素化エーテル化合物及びかかるフッ素化エーテル化合物の製造に際して有用な中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
1957年に初めて報告されて以来(Pletscher,A.(1957)Release of 5−hydroxytryptamine by benzoquinolizine derivatives with sedative action,Science 126,507)、テトラベナジン及び構造的に関連する化合物が広く調査され、若干のTBZ化合物及びテトラベナジン誘導体がヒトの健康に影響を及ぼす各種の状態を治療するのに有望であることが示されてきた。例えば、ジヒドロテトラベナジンは精神分裂病及び他の精神病の治療のための薬剤として確認されており(例えば、国際公開第2007/017654号を参照されたい)、テトラベナジンはハンチントン病の治療のための薬剤として有望であることが示されている(Neurology(2006),66(3),366−372)。テトラベナジン及びその誘導体の生物学的研究において使用される大抵の製法はラセミ化合物に関して実施されてきたが、少なくとも1つの事例では、別々に試験した鏡像異性体が示す生物学的活性は大幅に異なっていた(Koeppe,R.A.et al.(1999)Assessment of extrastriatal vesicular monoamine transporter binding site density using stereoisomers of [11C]dihydrotetrabenazine,J Cereb Blood Flow Metab 19,1376−1384を参照されたい)。
【0003】
さらに最近になって、フッ素−18原子を組み込んだ9−デスメチル(±)−ジヒドロテトラベナジンの誘導体は、PETイメージング剤として有用であることが示された(Nuclear Medicine and Biology 33(2006)685−694)。また、Nuclear Medicine and Biology 34(2007)239−246、及びNuclear Medicine and Biology 34(2007)233−237も参照されたい。
【0004】
本発明は、新しい部類のフッ素化ジヒドロテトラベナジン誘導体及びフッ素化ジヒドロテトラベナジン類似体を提供すると共に、かかるフッ素化エーテル化合物を鏡像異性的に富化された形態又はラセミ形態で製造するために使用できる効率的な合成方法を開示する。本発明によって提供されるフッ素化エーテル化合物は、PETイメージング剤、PETイメージング剤開発のためのプローブ、及び治療剤として有用である。加えて、本発明は、主題のジヒドロテトラベナジン誘導体及びジヒドロテトラベナジン類似体の一方又は両方の鏡像異性体を製造するために使用できる新規合成中間体組成物を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/130365号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、本発明は以下の構造Iを有するフッ素化エーテル化合物を提供する。
【0007】
【化1】

【0008】
式中、R1はC2〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2はC1〜C10脂肪族基又はC3〜C10脂環式基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素又はC1〜C10脂肪族基である。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、以下の構造IIを有する主成分鏡像異性体を含んでなる鏡像異性的に富化されたフッ素化エーテル化合物を提供する。
【0010】
【化2】

【0011】
式中、R1はC2〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2はC1〜C10脂肪族基又はC3〜C10脂環式基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素又はC1〜C10脂肪族基である。
【0012】
さらに別の実施形態では、本発明は、以下の構造IIIを有する主成分鏡像異性体を含んでなる鏡像異性的に富化されたフッ素化エーテル化合物を提供する。
【0013】
【化3】

【0014】
式中、R1はC2〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2はC1〜C10脂肪族基又はC3〜C10脂環式基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素又はC1〜C10脂肪族基である。
【0015】
さらに別の実施形態では、本発明は、以下の構造Iを有するフッ素化エーテル化合物を含んでなるPETイメージング剤を提供する。
【0016】
【化4】

【0017】
式中、R1は1以上のフッ素−18原子を含むC2〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2はC1〜C10脂肪族基又はC3〜C10脂環式基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素又はC1〜C10脂肪族基である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書及び特許請求の範囲では多くの用語を用いるが、これらは以下の意味をもつものと定義される。
【0019】
単数形で記載したものであっても、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。
【0020】
「任意の」又は「任意には」という用語は、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象が起こる場合と起こらない場合を包含する。
【0021】
本明細書で使用する「溶媒」という用語は、ただ1種の溶媒又は溶媒の混合物を意味し得る。
【0022】
本明細書及び特許請求の範囲の全体を通じて使用される概略表現用語は、それが関係する基本機能の変化を生じることなしに変動することが許容される任意の数量表現を修飾するために適用できる。したがって、「約」のような用語で修飾された値は、明記された厳密な値に限定すべきでない。場合によっては、概略表現用語は値を測定するための計器の精度に対応することがある。
【0023】
本明細書で使用する「芳香族基」という用語は、1以上の芳香族原子団を含む原子価1以上の原子配列をいう。1以上の芳香族原子団を含む原子価1以上の原子配列は、窒素、硫黄、セレン、ケイ素及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよく、或いは炭素及び水素のみから構成されていてもよい。本明細書で使用する「芳香族基」という用語は、特に限定されないが、フェニル基、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、ナフチル基、フェニレン基及びビフェニル基を包含する。上述の通り、芳香族基は1以上の芳香族原子団を含む。芳香族原子団は常に4n+2(式中、「n」は1以上の整数である。)の「非局在化」電子を有する環状構造であり、フェニル基(n=1)、チエニル基(n=1)、フラニル基(n=1)、ナフチル基(n=2)、アズレニル基(n=2)、アントラセニル基(n=3)などで例示される。芳香族基はまた、非芳香族成分を含んでいてもよい。例えば、ベンジル基はフェニル環(芳香族原子団)及びメチレン基(非芳香族成分)からなる芳香族基である。同様に、テトラヒドロナフチル基は芳香族原子団(C63)が非芳香族成分−(CH24−に縮合してなる芳香族基である。便宜上、本明細書での「芳香族基」という用語は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、ハロ芳香族基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステルやアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲の官能基を含むものと定義される。例えば、4−メチルフェニル基はメチル基を含むC7芳香族基であり、メチル基がアルキル基である官能基である。同様に、2−ニトロフェニル基はニトロ基を含むC6芳香族基であり、ニトロ基が官能基である。芳香族基は、4−トリフルオロメチルフェニル、ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(即ち、−OPhC(CF32PhO−)、4−クロロメチルフェン−1−イル、3−トリフルオロビニル−2−チエニル、3−トリクロロメチルフェン−1−イル(即ち、3−CCl3Ph−)、4−(3−ブロモプロプ−1−イル)フェン−1−イル(即ち、4−BrCH2CH2CH2Ph−)などのハロゲン化芳香族基を包含する。芳香族基のさらに他の例には、4−アリルオキシフェン−1−オキシ、4−アミノフェン−1−イル(即ち、4−H2NPh−)、3−アミノカルボニルフェン−1−イル(即ち、NH2COPh−)、4−ベンゾイルフェン−1−イル、ジシアノメチリデンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(即ち、−OPhC(CN)2PhO−)、3−メチルフェン−1−イル、メチレンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(即ち、−OPhCH2PhO−)、2−エチルフェン−1−イル、フェニルエテニル、3−ホルミル−2−チエニル、2−ヘキシル−5−フラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(4−フェン−1−イルオキシ)(即ち、−OPh(CH26PhO−)、4−ヒドロキシメチルフェン−1−イル(即ち、4−HOCH2Ph−)、4−メルカプトメチルフェン−1−イル(即ち、4−HSCH2Ph−)、4−メチルチオフェン−1−イル(即ち、4−CH3SPh−)、3−メトキシフェン−1−イル、2−メトキシカルボニルフェン−1−イルオキシ(例えば、メチルサリチル)、2−ニトロメチルフェン−1−イル(即ち、2−NO2CH2Ph)、3−トリメチルシリルフェン−1−イル、4−t−ブチルジメチルシリルフェン−1−イル、4−ビニルフェン−1−イル、ビニリデンビス(フェニル)などがある。「C3〜C10芳香族基」という用語は、3以上で10以下の炭素原子を含む芳香族基を包含する。芳香族基1−イミダゾリル(C322−)はC3芳香族基を代表する。ベンジル基(C77−)はC7芳香族基を代表する。
【0024】
本明細書で使用する「脂環式基」という用語は、環状であるが芳香族でない原子配列を含む原子価1以上の基をいう。本明細書で定義される「脂環式基」は、芳香族原子団を含まない。「脂環式基」は1以上の非環式成分を含んでいてもよい。例えば、シクロヘキシルメチル基(C611CH2−)は、シクロヘキシル環(環状であるが芳香族でない原子配列)及びメチレン基(非環式成分)からなる脂環式基である。脂環式基は、窒素、硫黄、セレン、ケイ素及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよく、或いは炭素及び水素のみから構成されていてもよい。便宜上、本明細書での「脂環式基」という用語は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステルやアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲の官能基を含むものと定義される。例えば、4−メチルシクロペント−1−イル基はメチル基を含むC6脂環式基であり、メチル基がアルキル基である官能基である。同様に、2−ニトロシクロブト−1−イル基はニトロ基を含むC4脂環式基であり、ニトロ基が官能基である。脂環式基は、同一のもの又は相異なるものであってよい1以上のハロゲン原子を含み得る。ハロゲン原子には、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素がある。1以上のハロゲン原子を含む脂環式基には、2−トリフルオロメチルシクロヘキス−1−イル、4−ブロモジフルオロメチルシクロオクト−1−イル、2−クロロジフルオロメチルシクロヘキス−1−イル、ヘキサフルオロイソプロピリデン−2,2−ビス(シクロヘキス−4−イル)(即ち、−C610C(CF32610−)、2−クロロメチルシクロヘキス−1−イル、3−ジフルオロメチレンシクロヘキス−1−イル、4−トリクロロメチルシクロヘキス−1−イルオキシ、4−ブロモジクロロメチルシクロヘキス−1−イルチオ、2−ブロモエチルシクロペント−1−イル、2−ブロモプロピルシクロヘキス−1−イルオキシ(例えば、CH3CHBrCH2610O−)などがある。脂環式基のさらに他の例には、4−アリルオキシシクロヘキス−1−イル、4−アミノシクロヘキス−1−イル(即ち、H2NC610−)、4−アミノカルボニルシクロペント−1−イル(即ち、NH2COC58−)、4−アセチルオキシシクロヘキス−1−イル、2,2−ジシアノイソプロピリデンビス(シクロヘキス−4−イルオキシ)(即ち、−OC610C(CN)2610O−)、3−メチルシクロヘキス−1−イル、メチレンビス(シクロヘキス−4−イルオキシ)(即ち、−OC610CH2610O−)、1−エチルシクロブト−1−イル、シクロプロピルエテニル、3−ホルミル−2−テトラヒドロフラニル、2−ヘキシル−5−テトラヒドロフラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(シクロヘキス−4−イルオキシ)(即ち、−OC610(CH26610O−)、4−ヒドロキシメチルシクロヘキス−1−イル(即ち、4−HOCH2610−)、4−メルカプトメチルシクロヘキス−1−イル(即ち、4−HSCH2610−)、4−メチルチオシクロヘキス−1−イル(即ち、4−CH3SC610−)、4−メトキシシクロヘキス−1−イル、2−メトキシカルボニルシクロヘキス−1−イルオキシ(2−CH3OCOC610O−)、4−ニトロメチルシクロヘキス−1−イル(即ち、NO2CH2610−)、3−トリメチルシリルシクロヘキス−1−イル、2−t−ブチルジメチルシリルシクロペント−1−イル、4−トリメトキシシリルエチルシクロヘキス−1−イル(例えば、(CH3O)3SiCH2CH2610−)、4−ビニルシクロヘキセン−1−イル、ビニリデンビス(シクロヘキシル)などがある。「C3〜C10脂環式基」という用語は、3以上で10以下の炭素原子を含む脂環式基を包含する。脂環式基2−テトラヒドロフラニル(C47O−)はC4脂環式基を代表する。シクロヘキシルメチル基(C611CH2−)はC7脂環式基を代表する。
【0025】
本明細書で使用する「脂肪族基」という用語は、環状でない線状又は枝分れ原子配列からなる原子価1以上の有機基をいう。脂肪族基は1以上の炭素原子を含むものと定義される。脂肪族基をなす原子配列は、窒素、硫黄、ケイ素、セレン及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよく、或いは炭素及び水素のみから構成されていてもよい。便宜上、本明細書での「脂肪族基」という用語は、「環状でない線状又は枝分れ原子配列」の一部として、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステルやアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲の官能基を含むものと定義される。例えば、4−メチルペント−1−イル基はメチル基を含むC6脂肪族基であり、メチル基がアルキル基である官能基である。同様に、4−ニトロブト−1−イル基はニトロ基を含むC4脂肪族基であり、ニトロ基が官能基である。脂肪族基は、同一のもの又は相異なるものであってよい1以上のハロゲン原子を含むハロアルキル基であり得る。ハロゲン原子には、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素がある。1以上のハロゲン原子を含む脂肪族基には、ハロゲン化アルキルであるトリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、ヘキサフルオロイソプロピリデン、クロロメチル、ジフルオロビニリデン、トリクロロメチル、ブロモジクロロメチル、ブロモエチル、2−ブロモトリメチレン(例えば、−CH2CHBrCH2−)などがある。脂肪族基のさらに他の例には、アリル、アミノカルボニル(即ち、−CONH2)、カルボニル、2,2−ジシアノイソプロピリデン(即ち、−CH2C(CN)2CH2−)、メチル(即ち、−CH3)、メチレン(即ち、−CH2−)、エチル、エチレン、ホルミル(即ち、−CHO)、ヘキシル、ヘキサメチレン、ヒドロキシメチル(即ち、−CH2OH)、メルカプトメチル(即ち、−CH2SH)、メチルチオ(即ち、−SCH3)、メチルチオメチル(即ち、−CH2SCH3)、メトキシ、メトキシカルボニル(即ち、CH3OCO−)、ニトロメチル(即ち、−CH2NO2)、チオカルボニル、トリメチルシリル(即ち、(CH33Si−)、t−ブチルジメチルシリル、3−トリメトキシシリルプロピル(即ち、(CH3O)3SiCH2CH2CH2−)、ビニル、ビニリデンなどがある。さらに他の例としては、C1〜C10脂肪族基は1以上で10以下の炭素原子を含む。メチル基(即ち、CH3−)はC1脂肪族基の例である。デシル基(即ち、CH3(CH29−)はC10脂肪族基の例である。
【0026】
上述の通り、一実施形態では、本発明は以下の構造Iを有するフッ素化エーテル化合物を提供する。
【0027】
【化5】

【0028】
式中、R1はC2〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2はC1〜C10脂肪族基又はC3〜C10脂環式基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素又はC1〜C10脂肪族基である。
【0029】
式(I)の化合物並びに以下に述べる本発明の他の態様では、
1は、好適にはC2-6フルオロアルキル、C1-6フルオロアルコキシ(C1-6アルキル)、C2-6フルオロハロアルキル及びC1-6フルオロアルキルカルボニル(C1-6アルキル)から選択され、
2は、好適にはC1-6アルキル及びC3-8シクロアルキルから選択され、
3及びR4は、各々独立にC1-6アルキル及びC1-6アルコキシから選択される。
【0030】
本発明によって提供されるフッ素化エーテル化合物は、特にヒト患者における糖尿病活性と相互に関連すると考えられる1群のバイオマーカーであるタイプ2小胞モノアミン輸送体(VMAT−2)に対して高い親和性を有することが本明細書で示される。この系列の新規フッ素化エーテル化合物においてはフッ素による置換がVMAT−2結合性に関して許容されるという発見により、本発明の化合物はVMAT−2バイオマーカーを標的化する検査においてポジトロン放出断層撮影法(PET)用イメージング剤として使用することが可能となる。
【0031】
かくして一実施形態では、本発明は、フッ素の放射性ポジトロン放出同位体であるフッ素−18原子を含む一般構造Iの範囲内の放射性標識フッ素化エーテル化合物を提供する。かかる放射性標識フッ素化エーテル化合物は、例えば糖尿病に関連する病的状態に関してヒト患者のポジトロン放出断層撮影法(PET)スクリーニングを行うためのイメージング剤として使用するのに適している。ポジトロン放出断層撮影法は、ヒトの健康にとって決定的に重要な医学イメージング技法となっている。
【0032】
別の実施形態では、本発明は、安定なフッ素同位体であるフッ素−19原子を含む一般構造Iの範囲内のフッ素化エーテル化合物を提供する。フッ素−19原子を含むフッ素化エーテル化合物は、標的バイオマーカー(例えば、VMAT−2)に対して最適親和性を有するフッ素化エーテル化合物の同定を可能にする結合検査において有用である。VMAT−2のような標的バイオマーカーに対する所定のフッ素−19含有フッ素化エーテル化合物の実質的な結合親和性は、対応するフッ素−18含有フッ素化エーテル化合物のPETイメージングにおける有用性の信頼できる予測指標である。本明細書に開示される通り、構造Iを有するフッ素化エーテル化合物はVMAT−2に対して実質的な結合親和性を示す。
【0033】
本明細書全体を通じて興味の焦点は主としてヒトの健康に向けられているものの、本発明によって提供されるフッ素化エーテル化合物は、ヒト及び動物の各種疾患の検査及び治療に際し、イメージング剤として、イメージング剤開発のためのプローブとして、及び治療剤として有用である。
【0034】
構造Iを有するフッ素化エーテル化合物を以下の表1に例示する。
【0035】
【表1】

【0036】
一般に、そして本明細書全体を通じ、ある構造に関する絶対又は相対立体化学は例えば構造Iに見られるように示されていないが、該構造はすべての可能な絶対及び相対立体化学配置を包含するものとする。即ち、構造Iは絶対又は相対立体化学が示されていないフッ素化エーテル化合物を表している。したがって、構造Iは、環位置2、3及び12にR配置及びS配置の両方を有するラセミ形のフッ素化エーテル化合物1a(表1)を含む1群のフッ素化エーテル化合物を表すものである。別の実施形態では、構造Iは、環位置2、3及び12にR配置(絶対立体化学)を有するフッ素化エーテル化合物1b(表1)を表している。さらに別の実施形態では、構造Iは、フッ素化エーテル化合物1bとは逆の絶対立体化学を有するフッ素化エーテル化合物1d(表1)を表している。本明細書の表1に示した個々のフッ素化エーテル化合物が一般構造Iの範囲内に含まれるジヒドロテトラベナジン(DTBZ)エーテル誘導体を例示していることは、当業者には容易に理解されよう。
【0037】
上述の通り、一実施形態では、本発明は、ラセミ混合物(例えば、フッ素化エーテル化合物1a(表1))、単一の鏡像異性体(例えば、フッ素化エーテル化合物1b(表1))、又は単一の主成分鏡像異性体について鏡像異性的に富化された組成物であり得る構造Iのフッ素化エーテル化合物を提供する。以下の表2の番号2a〜2cは、主成分鏡像異性体及び1種以上の微量成分鏡像異性体を含むフッ素化エーテル化合物を例示している。
【0038】
【表2】

【0039】
表2、フッ素化エーテル組成物は主成分鏡像異性体(その構造は「主成分鏡像異性体の構造」欄に示されている)及び1種以上の「微量成分鏡像異性体」を含んでいる。表2に例示されたフッ素化エーテル組成物では、主成分鏡像異性体のモル百分率が「モル%」として示されているが、これは組成物のすべての他のフッ素化エーテル成分の量に対する表示された構造の主成分鏡像異性体のモル百分率である。ここでの議論のためには、ジヒドロテトラベナジンエーテル誘導体は一般構造Iの範囲内に含まれる任意の化合物である。番号2aは、96モル%の表示されたR,R,R主成分鏡像異性体及びそれより少ない量のS,S,S微量成分鏡像異性体を含むフッ素化エーテル組成物を表している。番号2cは、表示された構造を有する主成分鏡像異性体及び表示された構造を有する3種の微量成分を含むフッ素化エーテル組成物を表している。表2の番号2cに例示された粗生成物がジアステレオマー混合物の例を表しているは、当業者には容易に理解されよう。
【0040】
一実施形態では、本発明は、構造Iで表されるフッ素化エーテル化合物であって、鏡像異性的に富化されていて環位置12にR配置を有する鏡像異性体を95モルパーセント(モル%)以上含むものを提供する。
【0041】
別の実施形態では、本発明は、構造Iで表されるフッ素化エーテル化合物であって、鏡像異性的に富化されていて環位置3にR配置を有する鏡像異性体を95モルパーセント(モル%)以上含むものを提供する。
【0042】
一実施形態では、本発明は、構造Iを有するフッ素化エーテル化合物であって、環位置2のフッ素化エーテル部分(−O−R1)が環位置3のR2基に対して逆の配置を有するものを提供する。表2の番号2a〜2cの主成分鏡像異性体は、環位置2のフッ素化エーテル部分(−O−R1)が環位置3のR2基に対して逆の配置を有するフッ素化エーテル化合物を例示している。表1の番号1aは、ラセミ形のフッ素化エーテル化合物であって、成分鏡像異性体の各々が環位置2のフッ素化エーテル部分と環位置3のR2基との間に逆の関係を有することによって特徴づけられるものを表している。
【0043】
一実施形態では、本発明は、以下の構造IIを有する主成分鏡像異性体を含んでなる鏡像異性的に富化されたフッ素化エーテル化合物を提供する。
【0044】
【化6】

【0045】
式中、R1はC2〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2はC1〜C10脂肪族基又はC3〜C10脂環式基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素又はC1〜C10脂肪族基である。
【0046】
構造IIを有する主成分鏡像異性体を以下の表3に例示する。
【0047】
【表3】

【0048】
一実施形態では、本発明は、構造IIを有する鏡像異性体を80モル%以上含む鏡像異性的に富化されたフッ素化エーテル化合物、例えば番号3a(表3)の化合物を含むフッ素化エーテル組成物であって、表示されたR,R,R鏡像異性体が組成物のすべての他のジヒドロテトラベナジンエーテル成分の量に対して80モル%以上を占めるものを提供する。
【0049】
別の実施形態では、本発明は、構造IIを有する鏡像異性体を95モル%以上含む鏡像異性的に富化されたフッ素化エーテル化合物、例えば番号3b(表3)の化合物を含むフッ素化エーテル組成物であって、表示されたR,R,R鏡像異性体が組成物のすべての他のジヒドロテトラベナジンエーテル成分の量に対して95モル%以上を占めるものを提供する。
【0050】
一実施形態では、本発明は、R1がC2〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2がイソブチルであり、かつR3及びR4がメトキシ基である構造IIを有する主成分鏡像異性体を含む鏡像異性的に富化されたフッ素化エーテル化合物を提供し、かかる主成分鏡像異性体を以下の表4に例示する。
【0051】
【表4】

【0052】
一実施形態では、本発明は、以下の構造IIIを有する主成分鏡像異性体を含んでなる鏡像異性的に富化されたフッ素化エーテル化合物を提供する。
【0053】
【化7】

【0054】
式中、R1はC2〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2はC1〜C10脂肪族基又はC3〜C10脂環式基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素又はC1〜C10脂肪族基である。
【0055】
構造IIIを有する主成分鏡像異性体を以下の表5に例示する。
【0056】
【表5】

【0057】
一実施形態では、本発明は、構造IIIを有する鏡像異性体を80モル%以上含む鏡像異性的に富化されたフッ素化エーテル化合物、例えば番号5a(表5)の化合物を含むフッ素化エーテル組成物であって、表示されたS,S,S鏡像異性体が組成物のすべての他のジヒドロテトラベナジンエーテル成分の量に対して80モル%以上を占めるものを提供する。別の実施形態では、本発明は、構造IIIを有する鏡像異性体を95モル%以上含む鏡像異性的に富化されたフッ素化エーテル化合物、例えば番号5b(表5)の化合物を含むフッ素化エーテル組成物であって、表示されたS,S,S鏡像異性体が組成物のすべての他のジヒドロテトラベナジンエーテル成分の量に対して95モル%以上を占めるものを提供する。
【0058】
別の実施形態では、本発明は、R1がC2〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2がイソブチルであり、かつR3及びR4がメトキシ基である構造IIIを有する主成分鏡像異性体を含む鏡像異性的に富化されたフッ素化エーテル化合物を提供し、かかる主成分鏡像異性体を以下の表6に例示する。
【0059】
【表6】

【0060】
後記に実証される通り、式(I)、(II)及び(III)のフッ素−18標識化合物は、VMAT−2バイオマーカーに対するPETイメージング剤として有用である。したがって、本発明のさらに他の態様に従えば、被験体におけるVMAT−2の検出方法であって、
(i)上記に定義したような式(I)、(II)又は(III)のフッ素−18標識化合物或いはその塩を前記被験体に投与する段階、及び
(ii)インビボPETイメージングによって前記フッ素−18標識化合物の取込みを検出する段階
を含んでなる方法が提供される。
【0061】
かかる方法は、例えばβ細胞塊を測定する方法を提供することにより、VMAT−2関連疾患の診断及び臨床研究において有用性を有する情報及びデータを提供する。被験体は、VMAT−2関連疾患を有するか又はそれが疑われる哺乳動物、最も好適にはヒトである。別の態様では、上記に定義したような式(I)、(II)又は(III)の化合物或いはその塩はまた、例えば臨床研究目的のため、健常なヒト志願者においてVMAT−2をイメージングするためにも使用できる。VMAT−2のイメージングは定量的に実施できる結果、VMAT−2の量又はその量の変化を測定して疾患を診断し又はその進行を追跡することができる。別法として、VMAT−2のイメージングはVMAT−2の位置を探索するためにも使用できる。
【0062】
「VMAT−2関連疾患」という用語は、ハンチントン病、パーキンソン病又は精神分裂病のような脳のVMAT−2関連疾患、或いはインスリノーマや他の神経内分泌腫瘍を含むβ細胞関連疾患又は糖尿病(例えば、1型糖尿病、2型糖尿病若しくは症状発現前の1型糖尿病)のような膵臓のVMAT−2関連疾患を意味する。本発明の一態様では、VMAT−2関連疾患は糖尿病である。本発明の別の態様では、VMAT−2関連疾患は精神分裂病である。
【0063】
したがって、VMAT−2関連疾患のインビボPET診断又はイメージングのための放射性医薬品の製造における、式(I)、(II)又は(III)のフッ素−18標識化合物或いはその塩の使用がさらに提供される。別の態様では、VMAT−2関連疾患のインビボPET診断又はイメージングで使用するための、式(I)、(II)又は(III)のフッ素−18標識化合物或いはその塩が提供される。
【0064】
さらに他の態様では、被験体(好ましくはヒト)におけるVMAT−2関連疾患のインビボ診断又はイメージング方法であって、式(I)、(II)又は(III)のフッ素−18標識化合物或いはその塩を投与する段階、及びインビボPETイメージング技法によって前記化合物の取込みを検出する段階を含んでなる方法が提供される。本方法は、特に糖尿病のインビボ診断又はイメージングのために好ましい。本発明の一態様では、本方法は、式(I)、(II)又は(III)のフッ素−18標識化合物或いはその塩を予め投与した被験体(好ましくはヒト)において、インビボPETイメージング技法によって前記化合物の取込みを検出する段階を含んでいる。
【0065】
本発明はさらに、VMAT−2関連疾患に対処するための薬物による被験体(好ましくはヒト)の治療効果をモニターする方法であって、式(I)、(II)又は(III)のフッ素−18標識化合物或いはその塩を前記被験体に投与する段階及びインビボPETイメージング技法によって前記化合物の取込みを検出する段階を含んでなり、前記投与及び検出は任意ではあるが好ましくは(例えば前記薬物による治療前、治療中及び治療後に)繰り返して実施される方法を提供する。
【0066】
式(I)、(II)又は(III)の化合物或いはその塩は、好ましくは、インビボで使用するために前記化合物及び薬学的に許容される賦形剤を含んでなる医薬製剤として投与され、したがってかかる製剤は本発明のさらに他の態様をなす。「医薬製剤」とは、本発明では、式(I)、(II)又は(III)の化合物或いはその塩の有効量を哺乳動物(好適にはヒト)への投与に適した形態で含んでなる製剤として定義される。「薬学的に許容される賦形剤」は、好適には、製剤が生理学的に認容され得るようにして(即ち、毒性又は耐え難い不快感なしに哺乳動物体に投与できるようにして)式(I)、(II)又は(III)の化合物或いはその塩を懸濁又は溶解できる流体(特に液体)である。薬学的に許容される賦形剤は、好適には、無菌のパイロジェンフリー注射用水、(有利には注射用の最終製剤が等張性になるように平衡させ得る)食塩水のような水溶液、或いは1種以上の張度調整物質(例えば、血漿陽イオンと生体適合性対イオンとの塩)、糖(例えば、グルコース又はスクロース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール又はマンニトール)、グリコール(例えば、グリセロール)又は他の非イオン性ポリオール物質(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)の水溶液のような注射可能なキャリヤー液体である。好ましくは、薬学的に許容される賦形剤はパイロジェンフリー注射用水又は等張食塩水である。
【0067】
医薬製剤は、抗菌保存剤、pH調整剤、充填剤、安定剤又は重量オスモル濃度調整剤のような追加賦形剤を任意に含むことができる。「抗菌保存剤」という用語は、潜在的に有害な微生物(例えば、細菌、酵母又はかび)の増殖を阻止する薬剤を意味する。抗菌保存剤はまた、使用する用量に応じて多少の殺菌性を示すこともある。本発明の抗菌保存剤の主な役割は、医薬製剤におけるこのような微生物の増殖を阻止することである。しかし、抗菌保存剤は、任意には投与に先立って前記医薬製剤を調製するために使用されるキットの1種以上の成分における潜在的に有害な微生物の増殖を阻止するためにも使用できる。好適な抗菌保存剤には、パラベン類(即ち、メチル、エチル、プロピル又はブチルパラベン或いはこれらの混合物)、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、セトリミド及びチオメルサールがある。好ましい抗菌保存剤はパラベン類である。
【0068】
「pH調整剤」という用語は、医薬製剤のpHがヒト又は哺乳動物への投与のために許容し得る範囲(およそpH4.0〜10.5)内にあることを保証するために有用な化合物又は化合物の混合物を意味する。好適なかかるpH調整剤には、トリシン、リン酸塩又はTRIS[即ち、トリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタン]のような薬学的に許容される緩衝剤、及び炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又はこれらの混合物のような薬学的に許容される塩基がある。医薬製剤をキットの形態で使用する場合には、pH調整剤を任意には独立のバイアル又は容器に入れて供給することができ、その結果としてキットのユーザーは多段操作の一部としてpHを調整することができる。
【0069】
「充填剤」という用語は、製造及び凍結乾燥中における材料の取扱いを容易にすることができる薬学的に許容される増量剤を意味する。好適な充填剤には、塩化ナトリウムのような無機塩、及びスクロース、マルトース、マンニトール又はトレハロースのような水溶性糖又は糖アルコールがある。
【0070】
本発明の医薬製剤は、通例、注射器又はカニューレによる溶液の追加及び抜取りを許しながら、無菌健全性及び/又は放射能安全性の維持、さらに任意には不活性ヘッドスペースガス(例えば、窒素又はアルゴン)の維持を可能にする密封容器からなる適当なバイアル又は容器に入れた状態で供給される。好ましいかかる容器は、気密クロージャーを(通例はアルミニウムからなる)オーバーシールと共にクリンプ加工した隔膜封止バイアルである。クロージャーは、無菌健全性を維持しながら皮下注射針による1回又は数回の穿刺に適したもの(例えば、クリンプ加工した隔膜封止クロージャー)である。かかる容器は、(例えば、ヘッドスペースガスの変更又は溶液のガス抜きのために)所望される場合にはクロージャーが真空に耐え得ると共に、酸素又は水蒸気のような外部大気ガスの侵入を許すことなしに減圧のような圧力変化にも耐え得るという追加の利点を有している。
【0071】
好ましい複数用量容器は、複数の患者用量を含む(例えば、容積10〜30cm3の)単一のバルクバイアルからなり、したがって臨床的状況に合わせて製剤の実用寿命中に様々な時間間隔で1回分の患者用量を臨床グレードの注射器に抜き取ることができる。予備充填注射器は1回分のヒト用量又は「単位用量」を含むように設計され、したがって好ましくは臨床用に適した使い捨て注射器又は他の注射器である。本発明の医薬製剤は、好ましくは1人の患者用に適した用量を有し、上述したような適当な注射器又は容器に入れて供給される。
【0072】
本発明の医薬製剤は、無菌製造条件下で(即ち、クリーンルーム内で)製造して所望の無菌で非発熱性の製品を得ることができる。基本構成部分、特に賦形剤及び医薬製剤に接触する装置部品(例えば、バイアル)は無菌であることが好ましい。医薬製剤の成分は、無菌濾過或いは(例えば、γ線照射、オートクレーブ処理、乾熱又は(例えば、エチレンオキシドによる)化学処理を用いる)終末滅菌をはじめとする、当技術分野で公知の方法によって滅菌できる。一部の成分を予め滅菌しておけば、最小数の操作を実施すれば済むので好ましい。しかし、予防策として、医薬製剤の製造における最終段階として少なくとも無菌濾過段階を含めることが好ましい。
【0073】
式(I)、(II)又は(III)の化合物或いはその塩の「有効量」とは、インビボPETイメージングでの使用又は治療での使用のために有効な量を意味し、投与すべき正確な化合物、被験体又は患者の体重、及び当技術分野の熟練した医師にとって自明な他の変量に応じて変動する。本発明のフッ素−18標識化合物は、PETイメージングのためには、所望の信号を生み出すのに十分な量で被験体に投与すればよい。通常、体重70kg当たり0.01〜100mCi、好ましくは0.1〜50mCiの典型的な放射性核種投与量で十分であろう。
【0074】
上述の通り、本発明によって提供されるフッ素化エーテル化合物I、II及びIIIは、フッ素化エーテル部分−OR1にフッ素−18原子を含み得る。様々な実施形態において、フッ素−18原子を含むかかるフッ素化エーテル化合物はPETイメージング剤として有用である。かくして一実施形態では、本発明は、以下の構造Iを有するフッ素化エーテル化合物を含んでなるPETイメージング剤を提供する。
【0075】
【化8】

【0076】
式中、R1は1以上のフッ素−18原子を含むC2〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2はC1〜C10脂肪族基又はC3〜C10脂環式基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素又はC1〜C10脂肪族基である。
【0077】
別の実施形態では、本発明は、以下の構造IIを有する主成分鏡像異性体を含む鏡像異性的に富化されたフッ素化エーテル化合物を含んでなるPETイメージング剤を提供する。
【0078】
【化9】

【0079】
式中、R1は1以上のフッ素−18原子を含むC2〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2はC1〜C10脂肪族基又はC3〜C10脂環式基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素又はC1〜C10脂肪族基である。
【0080】
さらに別の実施形態では、本発明は、以下の構造IIIを有する主成分鏡像異性体を含む鏡像異性的に富化されたフッ素化エーテル化合物を含んでなるPETイメージング剤を提供する。
【0081】
【化10】

【0082】
式中、R1は1以上のフッ素−18原子を含むC2〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2はC1〜C10脂肪族基又はC3〜C10脂環式基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素又はC1〜C10脂肪族基である。
【0083】
本明細書で使用する「PETイメージング剤」という用語は、フッ素−18標識フッ素化エーテル化合物を含む組成物であって、PETスキャンを実施するため患者に投与できる組成物をいう。通例、イメージング剤は、PETスキャンを行うのに十分な量のフッ素−18標識フッ素化エーテル化合物を含む水性製剤の形態で患者に投与される。通例、患者に投与されるフッ素−18標識フッ素化エーテル化合物の量は、フッ素−18標識フッ素化エーテル化合物の重量としてナノグラムのオーダーに相当している。患者に投与されるPETイメージング剤に存在する非放射性フッ素−19含有フッ素化エーテル化合物の相対量に関しては、PETイメージング剤は通例約1〜約99%の範囲内の比放射能を有している。一実施形態では、PETイメージング剤は約10〜約95%の範囲内の比放射能を有している。別の実施形態では、PETイメージング剤は約20〜約90%の範囲内の比放射能を有している。
【0084】
フッ素−18フッ素化エーテル化合物を含む水性製剤は、通例は静脈内に投与され、水中へのPETイメージング剤の分散を促進する各種薬剤を含み得る。一実施形態では、PETイメージング剤は、エタノール及びフッ素−18標識フッ素化エーテル化合物を含む水性製剤として患者に投与できる。別の実施形態では、PETイメージング剤は、デキストロース及びフッ素−18標識フッ素化エーテル化合物を含む水性製剤として患者に投与できる。さらに別の実施形態では、PETイメージング剤は、食塩水及びフッ素−18標識フッ素化エーテル化合物を含む水性製剤として患者に投与できる。かかる製剤は、上述したようなさらに他の賦形剤を任意に含み得る。かかる賦形剤には、さらに典型的には、緩衝剤、薬学的に許容される可溶化剤(例えば、シクロデキストリン或いはプルロニック(Pluronic)、ツイーン(Tween)又はリン脂質のような界面活性剤)及び薬学的に許容される安定剤又は酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、ゲンチシン酸又はp−アミノ安息香酸)のような1種以上の賦形剤が含まれる。
【0085】
一実施形態では、本発明は、以下の構造[18F]IVを有するフッ素化エーテル化合物を含んでなるPETイメージング剤を提供する。
【0086】
【化11】

【0087】
PETイメージング剤として、及びPETイメージング剤として使用するための所定フッ素化エーテル化合物の適性を判定するためのプローブとして有用であることに加え、本発明によって提供されるフッ素化エーテル化合物は、精神分裂病及びハンチントン病のような疾患の治療において治療学的有用性を有すると考えられる。かくして一実施形態では、本発明は、患者における病的状態を治療するのに有用な、構造Iを有するフッ素化エーテル化合物を提供する。別の実施形態では、本発明は、患者における病的状態を治療するのに有用な、構造IIを有する鏡像異性的に富化されたフッ素化エーテル化合物を提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、患者における病的状態を治療するのに有用な、構造IIIを有する鏡像異性的に富化されたフッ素化エーテル化合物を提供する。通例、患者に投与されるフッ素化エーテル化合物の量はミリグラムのオーダーである。
【0088】
一般構造I或いは一般構造II又はIIIの範囲内にあるフッ素化エーテル化合物のようなフッ素化エーテル化合物が、各種の条件下で、PETイメージング剤として、イメージング剤の発見及び開発のためのプローブとして、及び/又は治療剤として有用な塩を形成し得ることは当業者にとって容易に理解されよう。したがって、本発明は新規で有用なフッ素化エーテル化合物のホスト及びその塩を提供する。
【0089】
本発明に係る好適な塩には、(i)鉱酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸及び硫酸)から導かれるもの並びに有機酸(例えば、酒石酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、メタンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸)から導かれるもののような、生理学的に許容される酸付加塩、並びに(ii)アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩及びカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩及びマグネシウム塩)、有機塩基(例えば、トリエタノールアミン、N−メチル−D−グルカミン、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン及びモルホリン)との塩、及びアミノ酸(例えば、アルギニン及びリシン)との塩のような、生理学的に許容される塩基塩がある。特定の一実施形態では、本発明は構造IVを有する新規フッ素化エーテル化合物の塩酸塩を提供する。
【0090】
本発明のさらに他の態様では、医学で使用するための、式(I)、(II)又は(III)の化合物或いはその塩が提供される。
【0091】
本発明のフッ素化エーテル化合物は、本明細書の実験セクションに示されるものをはじめとする各種の方法によって製造できる。
一実施形態では、フッ素化エーテル化合物は、以下の構造Vを有するジヒドロテトラベナジンと二官能性求電子試薬との反応によって第1中間体のジヒドロテトラベナジン化合物を生成させることで製造される。
【0092】
【化12】

【0093】
式中、R2はC1〜C10脂肪族基又はC3〜C10脂環式基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素又はC1〜C10脂肪族基である。上記の第1中間体は、それ自体が求核性フッ化物イオン又は求電子性フッ素化剤と反応し得るか、或いは1以上の化学段階によって求核性フッ化物イオン又は求電子性フッ素化剤と反応し得る第2中間体のジヒドロテトラベナジン化合物に変換できる。
【0094】
かくして一実施形態では、本発明は構造VIを有する親フッ素性化合物を提供する。
【0095】
【化13】

【0096】
式中、R1は求核性フッ化物イオン又は求電子性フッ素化剤と反応し得る1以上の官能基を含むC2〜C20脂肪族基、C3〜C20脂環式基又はC3〜C20芳香族基であり、R2はC1〜C10脂肪族基又はC3〜C10脂環式基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素又はC1〜C10脂肪族基である。
【0097】
構造VIを有する親フッ素性化合物を以下の表7に例示する。
【0098】
【表7】

【0099】
本発明によって提供される親フッ素性化合物には、ラセミ混合物(例えば、番号7a、7c、7g、7i及び7jの組成物)並びに鏡像異性的に富化された組成物(例えば、番号7bに示した構造を有する主成分鏡像異性体を含む組成物)の両方がある。
【0100】
一実施形態では、本発明は、R1が求核性フッ化物イオンと反応し得る1以上の官能基を含むC2〜C20脂肪族基、C3〜C20脂環式基又はC3〜C20芳香族基である構造VIを有する親フッ素性化合物を提供する。一実施形態では、求核性フッ化物イオンと反応し得る官能基は芳香族スルホン酸エステル基(例えば、トシレート、ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート)である。別の実施形態では、求核性フッ化物イオンと反応し得る官能基は脂肪族スルホン酸エステル基(例えば、メタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート)である。一実施形態では、求核性フッ化物イオンと反応し得る官能基は、トシレート基、メシレート基、トリフルオロメタンスルホネート基及びp−ニトロベンゾエート基からなる群から選択される。
【0101】
一実施形態では、本発明は、R1基が求核性フッ化物イオンと反応し得る1以上のトシレート基を含む構造VIを有する親フッ素性化合物を提供する。例えば、表7の番号7a、7j及び7kを参照されたい。本明細書に定義される通り、トシレート基は芳香族基であり、トシレート基を含むR1基も芳香族基である。例えば番号7aに示した化合物では、トシレート基を含むR1基はC9芳香族基であり、これはフッ化物イオンで置換されるとC2フッ素化脂肪族基になる。
【0102】
別の実施形態では、本発明は、R1基が求核性フッ化物イオンと反応し得る1以上のメシレート基を含む構造VIを有する親フッ素性化合物を提供する。本明細書に定義される通り、メシレート基は脂肪族基であり、メシレート基を含むR1基はR1基の全体的構造に応じて脂肪族基、脂環式基又は芳香族基であり得る。例えば、R1がメシレート基及びエポキシ基を含む構造VIを有する親フッ素性化合物では、R1基は脂環式基である。別法として、R1がメシレート基及びトシレート基を含む構造VIを有する親フッ素性化合物では、R1基は芳香族基である。本明細書に示された脂肪族基、脂環式基及び芳香族基の定義によれば、脂肪族基(環状でない原子配列)は脂環式基(芳香族でない環状の原子配列)及び芳香族基(芳香族である環状の原子配列)を含んでいてはならず、脂環式基は芳香族基を含んでいてはならず、芳香族基は芳香族原子団のみを含んでいなければならないという階層構造が確立されることを念頭に置くことは役に立つ。
【0103】
別の実施形態では、本発明は、R1基が求核性フッ化物イオンと反応し得る1以上のトリフルオロメタンスルホネート(トリフレート)基を含む構造VIを有する親フッ素性化合物を提供する。例えば、表7の番号7bを参照されたい。
【0104】
別の実施形態では、本発明は、R1基が求核性フッ化物イオンと反応し得る1以上のp−ニトロベンゾエート基を含む構造VIを有する親フッ素性化合物を提供する。例えば、表7の番号7cを参照されたい。
【0105】
別の実施形態では、本発明は、R1基が求核性フッ化物イオンと反応し得る1以上のメタンスルホネート基を含む構造VIを有する親フッ素性化合物を提供する。例えば、表7の番号7dを参照されたい。
【0106】
別の実施形態では、本発明は、R1基が求核性フッ化物イオンと反応し得る1以上のエポキシ基を含む構造VIを有する親フッ素性化合物を提供する。例えば、表7の番号7iを参照されたい。
【0107】
さらに別の実施形態では、本発明は、R1基が求核性フッ化物イオンと反応し得る1以上の環状スルフェート基を含む構造VIを有する親フッ素性化合物を提供する。例えば、表7の番号7lを参照されたい。
【0108】
一実施形態では、本発明は、R1が求電子性フッ素化剤(例えば、フッ素ガス、ペルクロリルフルオリド、フッ化第二水銀及びフェニルセレネニルフルオリド)と反応し得る1以上の官能基を含むC2〜C20脂肪族基である構造VIを有する親フッ素性化合物を提供する。
【0109】
かくして一実施形態では、求電子性フッ素化剤と反応し得る官能基は、炭素−炭素二重結合及び炭素−炭素三重結合からなる群から選択される。表7の番号7e、7f、7g及び7hは、一般構造VIの範囲内にある化合物であって、求電子性フッ素化剤と反応し得るものを例示している。
【0110】
親フッ素性テトラベナジン化合物VIは、鏡像異性的に富化された形態又はラセミ形態で製造できる。例えば、親フッ素性テトラベナジン化合物VIは、表7の番号7bに示したR,R,R−鏡像異性体で富化することができる。別法として、親フッ素性テトラベナジン化合物は、表7の番号7bとは逆の絶対立体化学を有する鏡像異性体(例えば、番号7dのS,S,S−鏡像異性体)で富化することもできる。
【0111】
かくして一実施形態では、本発明は、以下の構造VIIを有する主成分鏡像異性体を含んでなる鏡像異性的に富化された親フッ素性化合物を提供する。
【0112】
【化14】

【0113】
式中、R1は求核性フッ化物イオン又は求電子性フッ素化剤と反応し得る1以上の官能基を含むC2〜C20脂肪族基、C3〜C20脂環式基又はC3〜C20芳香族基であり、R2はC1〜C10脂肪族基又はC3〜C10脂環式基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素又はC1〜C10脂肪族基である。主成分鏡像異性体VIIは、表7の番号7b、7e、7h、7k及び7lによって例示される。
【0114】
別の実施形態では、本発明は、以下の構造VIIIを有する主成分鏡像異性体を含んでなる鏡像異性的に富化された親フッ素性化合物を提供する。
【0115】
【化15】

【0116】
式中、R1は求核性フッ化物イオン又は求電子性フッ素化剤と反応し得る1以上の官能基を含むC2〜C20脂肪族基、C3〜C20脂環式基又はC3〜C20芳香族基であり、R2はC1〜C10脂肪族基又はC3〜C10脂環式基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素又はC1〜C10脂肪族基である。主成分鏡像異性体VIIIは、表7の番号7dによって例示される。
【0117】
構造Vを有するジヒドロテトラベナジン化合物は、以下の構造IXを有する対応テトラベナジン(TBZ)から容易に製造される。
【0118】
【化16】

【0119】
式中、R2はC1〜C10脂肪族基又はC3〜C10脂環式基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素又はC1〜C10脂肪族基である。例えば、エタノール中で環位置2のカルボニル基を水素化ホウ素ナトリウムで還元することでジヒドロテトラベナジンVが得られる。
【0120】
構造IXを有するテトラベナジン化合物は化学文献で知られており、ラセミ形のテトラベナジン及びジヒドロテトラベナジン組成物並びに鏡像異性的に富化されたテトラベナジン及びジヒドロテトラベナジン組成物の両方の製法が記載されている。同時係属国際特許出願第PCT/US2008/065738号には、ラセミ形のテトラベナジン組成物及び鏡像異性的に富化されたテトラベナジン組成物の製造方法が開示されている。加えて、本明細書の実施例セクションには、テトラベナジン化合物IX及びジヒドロテトラベナジン化合物Vの製造及び特性決定に関する詳細な実験的記載が示されている。
【0121】
一般に、テトラベナジン化合物IXを製造するためには、求核性アルケニル化学種を、以下の構造Xを有するアルデヒド化合物と反応させることでアリル型アルコールを得る(実施例セクションの方法4、5及び6を参照されたい)。
【0122】
【化17】

【0123】
式中、R3は水素又はC1〜C20脂肪族基であり、R4は水素又はC1〜C20脂肪族基であり、P1は保護基である。次いで、アリル型アルコールを酸化することで、「第1中間体」と呼ばれるエノンを得る(実施例セクションの方法7、8及び9を参照されたい)。次いで、それの保護基を除去し、脱保護された第1中間体にアミノ環化反応を施して対応するTBZ化合物を得る。
【0124】
一般式Xに包含される代表的なアルデヒド化合物を以下の表8に示す。
【0125】
【表8】

【0126】
表8の番号8aに示したアルデヒド化合物の製法は、本明細書の実施例セクション(方法1〜3)に記載されている。一般に、構造Xによって表される部類のアルデヒド化合物は、例えば以下のスキーム1に示す方法論を使用する当技術分野で認められた方法によって製造できる。
【0127】
【化18】

【0128】
かくして、アルデヒド化合物Xは、Sasamoto et al.(Journal of the American Chemical Society 128,14010−14011,2006)によって記載された方法論を用いて製造された中間体から製造できる。Sasamoto et al.は、鏡像異性的に富化されたテトラヒドロキノリンマロネート化合物の製法を開示している。かかる化合物は、本明細書に示される通り、スキーム1に図示されているようなテトラヒドロキノリンマロネートの一方のエステル部分の選択的加水分解及び脱炭酸、次いで得られたテトラヒドロイソキノリンモノエステルからアルデヒド化合物Xへの還元によってアルデヒド化合物Xに転化できる。
【0129】
スキーム1に示された2モル%のDM−SEGPHOSが生成物アルデヒドXの鏡像異性的富化の原因となるキラル触媒をなすこと、さらに逆のキラリティーのDM−SEGPHOSをキラル触媒として使用すれば、「S」鏡像異性体(環位置12にS配置を有するアルデヒド化合物X(例えば、表8の番号8bを参照されたい))について鏡像異性的に富化された生成物アルデヒドXが得られることは、当業者にとって容易に理解されよう。好適なキラル触媒には、Sasamoto et al.(Journal of the American Chemical Society 128,14010−14011,2006)によって開示されたもの、例えば(S)−Binap、(R)−Binap、(S)−DM−Binap、(R)−DM−Binap、(S)−DM−SEGPHOS及び(R)−DM−SEGPHOSがある。通例、単一の配置(例えば、「S」配置)を有する配位子からなる触媒の使用は逆の「R」配置の立体化学的に富化されたマロネート付加物を生み出し、その逆もまた正しい。
【0130】
キラル触媒を用いて環位置12に単一の配置が富化されたアルデヒド化合物Xを生成することに加えて、ラセミ形のアルデヒドXをそれの成分鏡像異性体に分離するために多種多様の方法が利用できる。例えば、ラセミ形のアルデヒド化合物Xは、キラルhplcカラム上での高速液体クロマトグラフィー(hplc)によってそれの成分鏡像異性体に分離できる。
【0131】
本発明によって提供される鏡像異性的に富化された組成物を製造するための他の方法には、構造Iを有するラセミ形のフッ素化エーテル化合物をジアステレオマーの混合物からなる付加物に転化させ、次いでこれを分別結晶によって分離するものがある。例えば、構造Iを有するラセミ形のフッ素化エーテル化合物を(+)−酒石酸と反応させることで、ラセミ形のフッ素化エーテル化合物の付加物(酒石酸アンモニウム塩)を生成させることができる。前記付加物は酒石酸アンモニウム塩のジアステレオマーの混合物からなり、次いでこれを分別結晶によって分離すればよい。
【実施例】
【0132】
以下の実施例は本発明に係る方法及び実施形態を例示するものにすぎず、したがって特許請求の範囲を限定するものと解すべきでない。
【0133】
ジヒドロテトラベナジン(DTBZ)出発原料の製造方法
方法1 保護ジエステル2の製造
【0134】
【化19】

【0135】
ジヒドロイソキノリン(1.0eq.)及びBoc無水物(1.5eq.)を室温のCH2Cl2に溶解することで、ジヒドロイソキノリンに関して1.5Mの溶液を得た。混合物を30分間撹拌した。所定の時間後、反応混合物を0℃に冷却し、次いでジイソプロピルマロネート(1.5eq.)及びPd触媒(0.008eq.)の予備冷却ジクロロメタン溶液を反応混合物に順次添加することで、出発ジヒドロイソキノリンに関して0.84Mの最終反応濃度を得た。反応混合物を約2.5℃で15時間撹拌し続けた。この時間後、EtOAc及びブラインを反応混合物に添加した。水性層を3回分のEtOAcで抽出し、合わせた有機層を乾燥し(Na2SO4)、濾過し、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗物質を最小量のジクロロメタンに溶解し、SiO2上でのフラッシュクロマトグラフィー(15〜30%EtOAc−ヘキサン、溶出は285nm及び228nmで観察した)によって精製した。生成物は、室温では溶解状態で回転異性体の混合物として存在する無色の固体(94%)であった。[α]26D−69.0(c0.21,CHCl3);1H NMR(CDCl3)δ0.81−1.02(m,6H)、1.06−1.17(m,6H)、1.23−1.38(m,9H)、2.51−2.63(m,1H)、2.64−2.77(m,1H)、3.20−3.29(m,0.6H)、3.32−3.41(m,0.4H)、3.51−3.58(m,1H)、3.62−3.70(m,6H)、3.70−3.76(m,0.4H)、3.91−4.01(m,0.6H)、4.65−4.82(m,1H)、4.83−4.98(m,1H)、5.71(見掛けのd,J=5.7Hz,0.6H)、5.78(見掛けのd,J=7.9Hz,0.4H)、6.42−6.49(m,1H)、6.77(s,0.6H)、6.81(s,0.4H);13C NMR(CDCl3)δ21.02、21.09、21.18、21.32、27.24、27.95、28.02、37.60、39.34、52.11、52.83、55.48、55.52、59.28、60.08、68.58、68.76、68.82、79.46、80.03、110.09、110.73、111.13、126.11、126.18、126.37、127.07、146.81、146.87、147.93、153.86、154.30、166.29、166.78、166.94、167.06。
【0136】
方法2 保護エステル2の選択的加水分解及び脱炭酸
【0137】
【化20】

【0138】
出発原料をイソプロパノールに溶解しての0.2M溶液を得た。この溶液に1M NaOH水溶液を添加して、反応混合物の最終濃度をマロネートに関して0.1Mにした。反応混合物を70℃に加熱し、この温度に22分間保った(計時は反応混合物の温度が65℃を超えた時点で開始した)。所定の時間後、反応混合物を急速に0℃に冷却した。反応混合物を2M HCl水溶液で注意深く酸性化し、3回分のジクロロメタンで抽出した。合わせた有機抽出液を乾燥し(Na2SO4)、濾過し、減圧下で濃縮した。単離された物質をTHFに溶解して(反応混合物に使用したの初期量に基づいて)0.1Mの溶液を得、トリエチルアミン(1.0eq)を室温で反応混合物に添加した。反応混合物をその還流温度に加熱し、この温度に90分保った。反応混合物を減圧下で濃縮し、最小量のCH2Cl2に溶解し、直ちにSiO2上でのカラムクロマトグラフィー(15〜40%EtOAc−ヘキサン、40%での溶出液を284nmでモニターした)によって精製した。生成物は室温で回転異性体の混合物として存在し、無色の泡状物(79%)であった。[α]26D−82(c0.24,CH2Cl2);1H NMR(CDCl3)δ1.19−1.25(m,6H)、1.43−1.49(m,9H)、2.58−2.69(m,2H)、2.70−2.77(m,1H)、2.78−2.92(m,1H)、3.13−3.43(m,1H)、3.81−3.85(m,6H)、3.86−4.01(m,1H)、4.91−5.05(m,1H)、5.38−5.61(m,1H)、6.56−6.61(m,1H)、6.64−6.70(s,1H);13C NMR(CDCl3)δ21.75、21.90、27.93、28.08、28.44、37.53、38.75、42.22、42.81、51.11、51.87、55.92、56.02、68.08、79.74、80.21、109.60、109.99、111.44、111.54、126.28、126.48、128.54、128.76、147.51、147.97、154.39、154.51、170.36、170.59;LRMS−(ESI+)(C2131NO6+H)[M+H]+に関する計算値394.22、実測値394.16。
【0139】
方法3 アルデヒド化合物4の製造
【0140】
【化21】

【0141】
出発モノエステル(、1.0eq.)を−78℃のトルエンに溶解した0.12M溶液に、シリンジポンプでDiBAl−H(1.5eq.)の1.5Mヘキサン溶液を滴下した。滴下後、反応混合物を−78℃で2時間撹拌した。反応混合物をEtOAcの添加によって奪活し、次いで飽和クエン酸水溶液で酸性化した。反応混合物を室温まで放温し、30分間撹拌し続けた。相を分離し、水性相を3回分のEtOAcで抽出した。合わせた有機抽出液を2回分の2M HCl水溶液で洗浄し、ブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物をSiO2上での精製に供した(15〜35%EtOAc−ヘキサン、溶出は285nm及び228nmで観察した)。単離生成物であるアルデヒド化合物は無色の泡状物(76%)であった。生成物は室温で回転異性体の1:1混合物として存在した。[α]26D−116(c0.26,CH2Cl2);1H NMR(CDCl3)δ1.40(s,9H)、2.58(見掛けのt,J=3.8Hz,0.5H)、2.61(見掛けのt,J=3.5Hz,0.5H)、2.68−2.88(m,3H)、3.02−3.27(m,1H)、3.78(見掛けのs,6H)、3.87−3.99(m,0.5H)、4.08−4.23(m,0.5H)、5.37−5.68(m,1H)、6.55(s,1H)、6.58(s,1H)、9.78(s,1H);13C NMR(CDCl3)δ20.90、28.02、28.27、37.23、38.65、49.29、49.93、51.12、55.83、55.96、80.13、80.64、109.42、109.52、111.52、126.34、126.51、127.78、127.82、147.72、147.97、153.85、154.62、200.08、200.33。
【0142】
方法4 アルデヒド化合物4とヨウ化アルケニル5から導かれる求核性アルケニル化学種との反応によるアリル型アルコール6の製造
【0143】
【化22】

【0144】
ヨウ化アルケニル(1.0eq)及びアルデヒド化合物(1.0eq.)からなる室温のニート混合物に、0.5%NiCl2(w/w)をドープした塩化クロム2.65eq.を添加した。混合物を約2分間渦動させて均質な緑灰色ペーストを得、次いで窒素下でさらに10分間撹拌した後、無水DMFを添加して最終反応濃度を0.36Mにした。反応混合物は濃緑色であり、室温で14時間撹拌し続けた。所定の時間後、反応混合物を1:1 EtOAc−ヘキサンで希釈し、0.5M EDTA水溶液(pH9)を添加し、混合物全体を1.5時間撹拌した。水性層を3回分のEtOAcで抽出し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、濾液を減圧下で濃縮して緑色の油状物を得た。粗物質をSiO2上でのカラムクロマトグラフィーに供した(35%EtOAc−ヘキサン、溶出は285nm及び228nmで観察した)。生成物であるアリル型アルコールは、ジアステレオマーの混合物として収率53%で単離された淡黄色の油状物であったが、これを追加の特性決定又は分析なしに次の段階に供した。
【0145】
方法5 アルデヒド化合物4とヨウ化アルケニル7から導かれる求核性アルケニル化学種との反応によるアリル型アルコール8の製造
【0146】
【化23】

【0147】
ヨウ化アルケニル(1.0eq)及びアルデヒド化合物(1.25eq.)からなる室温のニート混合物に、0.5%NiCl2(w/w)をドープした塩化クロム2.5eq.を添加した。混合物を約2分間渦動させて均質な緑灰色ペーストを得、次いで窒素下でさらに10分間撹拌した後、無水DMFを添加して最終反応濃度を0.36Mにした。反応混合物は濃緑色であり、室温で14時間撹拌し続けた。所定の時間後、反応混合物を1:1 EtOAc−ヘキサンで希釈し、0.5M EDTA水溶液(pH9)を添加し、混合物全体を1.5時間撹拌した。水性層を3回分のEtOAcで抽出し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、濾液を減圧下で濃縮して緑色の油状物を得た。粗物質をSiO2上でのカラムクロマトグラフィーに供した(20%EtOAc−ヘキサン〜35%EtOAc−ヘキサン、溶出は285nm及び228nmで観察した)。生成物であるアリル型アルコールは、ジアステレオマーの混合物として収率54%で単離された淡黄色の油状物であったが、これを追加の特性決定又は分析なしに次の段階に供した。
【0148】
方法6 アルデヒド化合物4とヨウ化アルケニル9から導かれる求核性アルケニル化学種との反応によるアリル型アルコール10の製造
【0149】
【化24】

【0150】
ヨウ化アルケニル(1.5eq)及びアルデヒド(1.0eq.)からなる室温のニート混合物に、0.5%NiCl2(w/w)をドープした塩化クロム2.5eq.を添加した。混合物を約2分間渦動させて均質な緑灰色ペーストを得、次いで窒素下でさらに10分間撹拌した後、無水DMFを添加して最終反応濃度を0.36Mにした。反応混合物は濃緑色であり、室温で14時間撹拌し続けた。所定の時間後、反応混合物を1:1 EtOAc−ヘキサンで希釈し、0.5M EDTA水溶液(pH9)を添加し、混合物全体を1.5時間撹拌した。水性層を3回分のEtOAcで抽出し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、濾液を減圧下で濃縮して緑色の油状物を得た。粗物質をSiO2上でのカラムクロマトグラフィー(40%EtOAc−ヘキサン、溶出は285nm及び228nmで観察した)に供することで、生成物であるアリル型アルコール10をジアステレオマーの1:1混合物として存在する淡黄色の油状物(47%)として得た。1H NMR(CD2Cl2)δ0.94−1.00(m,6H)、1.13−1.16(m,9H)、1.54−1.57(m,9H)、1.67−1.74(m,2H)、1.79−1.86(m,0.5H)、1.87−1.94(m,1H)、1.96−2.05(m,0.5H)、2.09−2.24(m,2H)、2.66−2.77(m,1H)、2.85−2.99(m,1H)、3.16−3.22(m,0.5H)、3.36−3.44(m,0.5H)、3.80−3.92(m,8H)、4.01−4.08(m,0.5H)、4.12−4.17(m,0.5H)、4.30−4.38(m,0.5H)、4.66−4.77(m,0.5H)、4.86−4.96(m,1H)、5.23−5.30(m,0.5H)、5.34−5.39(m,1H)、5.39−5.43(m,0.5H)、6.68−6.72(m,1H)、6.73−6.77(m,0.5H)、6.77−6.81(m,0.5H)、7.43−7.52(m,6H)、7.75−7.82(m,4H);13C NMR(CD2Cl2)δ19.12、26.83、27.33、27.45、27.54、27.59、28.29、28.41、33.46、33.48、38.30、39.45、43.64、43.82、44.93、45.05、45.48、45.95、50.95、52.25、55.89、55.99、56.01、61.14、69.99、73.06、80.03、80.49、110.21、110.56、111.87、112.00、112.02、112.39、125.92、126.32、126.35、127.77、129.57、129.69、130.17、134.15、135.68、147.85、147.88、147.99、148.11、148.71、149.59、149.61、155.79、156.39。
【0151】
方法7 アリル型アルコール6の酸化による第1中間体12の製造
【0152】
【化25】

【0153】
アリル型アルコール(1.0eq)を0℃のジクロロメタンに溶解した0.1M溶液に、1.1eq.のデス−マーチン(Dess−Martin)試薬11を添加した。反応混合物を撹拌しながら、2.5時間かけてゆっくりと室温まで加温した。反応物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液の添加によって奪活し、酢酸エチルで希釈した。有機層及び水性層を分配して分離し、水性層をさらに3回分の酢酸エチルで抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮した。粗物質をSiO2上でのカラムクロマトグラフィー(10〜30%EtOAc−ヘキサン、溶出は285nm及び228nmで観察した)によって精製した。生成物である第1中間体12は、26℃では溶解状態で回転異性体の60:40混合物として存在する無色の悪臭ある油状物(66%)であった。1H NMR(CDCl3)δ0.82(見掛けのt,J=7.6Hz,6H)、1.42(s,9H)、1.70(見掛けのsept,J=6.62Hz,1H)、2.08−2.15(m,1H)、2.15−2.24(m,1H)、2.62−2.70(m,1H)、2.75−2.91(m,1H)、2.93−3.07(m,1H)、3.07−3.29(m,1.6H)、3.30−3.43(m,0.4H)、3.79(s,3H)、3.81(s,3.4H)、4.04−4.16(m,0.6H)、5.52−5.62(m,1H)、5.69(s,1H)、5.90(s,0.6H)、6.04(s,0.4H)、6.57(s,1H)、6.63(s,1H);13C NMR(CDCl3)δ22.45、27.04、27.25、28.11、28.41、38.01、39.33、40.39、45.20、45.90、51.62、55.92、55.98、79.75、80.23、109.85、110.25、110.28、111.41、125.65、125.72、126.26、129.25、147.57、147.87、148.16、148.29、148.35、154.40、154.51、199.53;HRMS−(ESI+)(C2435NO5)+H)[M+H]+に関する計算値418.2594、実測値418.2590。
【0154】
方法8 アリル型アルコール8の酸化による第1中間体13の製造
【0155】
【化26】

【0156】
(1.0eq)を0℃のジクロロメタンに溶解した0.1M溶液に、1.1eq.のデス−マーチン試薬11を添加した。反応混合物を撹拌しながら、2.5時間かけてゆっくりと室温まで加温した。反応物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液の添加によって奪活し、ジクロロメタンで希釈した。有機層及び水性層を分配して分離し、水性層をさらに3回分のジクロロメタンで抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮した。粗物質をSiO2上でのカラムクロマトグラフィー(10〜50%EtOAc−ヘキサン、溶出は285nm及び228nmで観察した)によって精製した。生成物である第1中間体13は、26℃では溶解状態で回転異性体の50:50混合物として存在する無色の油状物(82%)であった。1H NMR(CD2Cl2)δ1.19(s,9H)、1.55(s,9H)、1.63−1.83(m,5H)、2.34−2.57(m,2H)、2.70−2.85(m,1H)、2.85−3.05(m,1H)、3.05−3.41(m,2.5H)、3.41−3.56(m,0.5H)、3.81−3.83(m,1H)、3.84(s,3H)、3.86(s,3H)、3.97−4.08(m,0.5H)、4.20−4.35(m,0.5H)、5.68(見掛けのt,J=6.6Hz,1H)、5.87(s,1H)、6.09(s,0.5H)、6.19(s,0.5H)、6.71(s,1H)、6.76(s,1H)、7.45−7.60(m,6H)、7.77−7.95(m,4H);13C NMR(CD2Cl2)δ19.19、24.66、24.75、26.83、28.06、28.28、30.57、32.43、37.75、39.20、45.16、45.66、63.84、79.46、79.77、110.21、110.49、111.81、124.37、124.67、126.45、127.76、129.19、129.68、134.13、135.61、147.79、148.19、149.20、154.09、154.41、199.15、199.27;HRMS−(ESI+)(C4053NO6Si+H)[M+H]+に関する計算値672.3720、実測値672.3715。
【0157】
方法9 アリル型アルコール10の酸化による第1中間体14の製造
【0158】
【化27】

【0159】
アリル型アルコール10(1.0eq)を0℃のジクロロメタンに溶解した0.1M溶液に、1.1eq.のデス−マーチン試薬11を添加した。反応混合物を撹拌しながら、5時間かけてゆっくりと室温まで加温した。反応物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液の添加によって奪活し、ジクロロメタンで希釈した。有機層及び水性層を分配して分離し、水性層をさらに3回分のジクロロメタンで抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮した。粗物質をSiO2上でのカラムクロマトグラフィー(10〜50%EtOAc−ヘキサン、溶出は285nm及び228nmで観察した)によって精製した。生成物である第1中間体14は、26℃では溶解状態で回転異性体の50:50混合物として存在する黄色の泡状物(93%)であった。1H NMR(CD2Cl2)δ0.85(s,6H)、1.14(s,9H)、1.48−1.57(m,9H)、1.65(t,J=7.3Hz,2H)、2.30−2.50(m,2H)、2.70−2.80(m,1H)、2.85−2.98(m,1H)、3.07−3.17(m,1H)、3.22−3.37(m,1.5H)、3.38−3.50(m,0.5H)、3.81(s,3H)、3.85(s,3H)、3.85−3.92(m,2H)、3.94−4.02(m,0.5H)、4.18−4.25(m,0.5H)、5.65−5.72(m,1H)、5.74(s,1H)、6.07(s,0.5H)、6.14(s,0.5H)、6.69(s,1H)、6.76(s,1H)、7.45−7.54(m,6H)、7.77−7.82(m,4H);13C NMR(CD2Cl2)δ19.09、26.80、26.92、26.97、28.13、28.22、28.28、33.22、37.94、39.39、41.79、41.87、44.49、45.33、46.02、51.16、51.44、55.79、55.83、61.05、79.47、79.76、110.18、110.51、111.74、126.40、127.26、127.36、127.76、129.48、129.69、134.09、135.66、146.93、147.06、147.78、148.10、154.16、154.47、199.36;HRMS−(ESI+)(C4257NO6Si−C592(Boc)+H)[M−Boc+H]+に関する計算値600.3509、実測値600.3496。
【0160】
方法10 第1中間体12からのBoc保護基の除去及びアミノ環化による(+)−テトラベナジン15の製造
【0161】
【化28】

【0162】
第1中間体12(1.0eq)を10%Me2S−ジクロロメタンに溶解して82mM溶液を得た。溶液を0℃に冷却し、トリイソプロピルシラン(1.1eq.)、次いで(0℃に予備冷却した)TFAを反応混合物に添加して41mMの最終濃度を得た。反応混合物を0℃で1時間撹拌した。所定の時間後、反応混合物を飽和炭酸カリウム水溶液の添加によって0℃で奪活し、減圧下で濃縮して大部分のジメチルスルフィドを除去した。混合物を5回分のジクロロメタンで抽出し、合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮することで、粗生成物を黄色の固体として得た。粗生成物をヘキサン中3.5%ジメトキシエタンから再結晶した。得られた無色の結晶をヘキサンで洗浄して純粋な(+)−テトラベナジン(15)(46%)を得た。mp126.0oC(3.5%DME−ヘキサン)(116℃で結晶多形が認められた);[α]26D+37.2(c0.41,CH2Cl2);1H NMR(CD2Cl2)δ0.89(見掛けのt,J=7.2Hz,6H)、0.98(ddd,J=12,6.0,4.0Hz,1H)、1.59−1.68(m,1H)、1.74(ddd,J=12,5.9,5.7Hz,1H)、2.32(見掛けのt,J=11.7Hz,1H)、2.46(見掛けのt,J=12.3Hz,1H)、2.55(ddd,J=12,10.0,3.8Hz,1H)、2.65−2.73(m,2H)、2.83(dd,J=5.5,2.8Hz,1H)、2.97−3.07(m,1H)、3.07−3.14(m,1H)、3.25(dd,J=9.7,6.3Hz,1H)、3.47(見掛けのd,J=12Hz,1H)、3.75(s,3H)、3.77(s,3H)、6.55(s,1H)、6.60(s,1H);13C NMR(CD2Cl2)δ21.98、23.02、25.51、29.46、35.16、47.47、47.63、50.47、55.87、56.01、61.47、62.46、108.46、111.72、126.37、128.96、147.65、147.98、209.72;HRMS−(ESI+)(C1927NO3+H)[M+H]+に関する計算値318.2069、実測値318.2082。
【0163】
方法11 第1中間体13からのBoc保護基の除去及びアミノ環化による(+)−TBZ化合物16の製造
【0164】
【化29】

【0165】
第1中間体出発原料13(1.0eq)を10%Me2S−ジクロロメタンに溶解して26mM溶液を得た。溶液を0℃に冷却し、トリイソプロピルシラン(1.1eq.)、次いで(0℃に予備冷却した)TFAを反応混合物に添加して13mMの最終濃度を得た。反応混合物を0℃で1時間撹拌した。所定の時間後、反応混合物を飽和炭酸カリウム水溶液の添加によって0℃で奪活し、減圧下で濃縮して大部分のジメチルスルフィドを除去した。混合物を5回分のジクロロメタンで抽出し、合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮することでオレンジ色の油状物を得た。単離した物質を直ちにSiO2上でのフラッシュクロマトグラフィー(20〜30%EtOAc−ヘキサン、溶出は285nm及び228nmで観察した)によって精製した。(所望の生成物を豊富に含むジアステレオマー混合物として存在する)半純粋な生成物を、数日かけてヘキサン中3.5%ジメトキシエタンから晶出させた。得られた無色の結晶をヘキサンで洗浄することで、(+)−TBZ化合物16を単一のジアステレオマー(42%)として得た。[α]26D+40.1(c0.63,CH2Cl2);1H NMR(CD2Cl2)δ1.14(s,9H)、1.18−1.30(m,1H)、1.45−1.56(m,2H)、1.60−1.75(m,2H)、1.86−1.98(m,1H)、2.41(見掛けのt,J=11.4Hz,1H)、2.47(見掛けのt,J=12.6Hz,1H)、2.59−2.82(m,3H)、2.93(dd,J=13.1,2.8Hz,1H)、3.06−3.20(m,2H)、3.34(dd,J=9.6,6.1Hz,1H)、3.55(見掛けのd,J=11.6Hz,1H)、3.78(見掛けのt,J=6.3Hz,2H)、3.84(s,3H)、3.85(s,3H)、6.64(s,1H)、6.69(s,1H)、7.40−7.53(m,6H)、7.70−7.81(m,4H);13C NMR(CD2Cl2)δ19.14、23.43、25.98、26.74、29.47、32.77、47.55、49.42、50.44、55.74、55.86、61.06、62.36、63.81、108.31、111.68、126.31、127.68、128.91、129.60、134.15、135.59、147.59、147.90、209.36;HRMS−(ESI+)(C3545NO4Si+H)[M+H]+に関する計算値572.3196、実測値572.3187。
【0166】
方法12 第1中間体14からのBoc保護基の除去及びアミノ環化による(+)−TBZ化合物17の製造
【0167】
【化30】

【0168】
出発原料14(1.0eq)を10%Me2S−ジクロロメタンに溶解して出発原料の176mM溶液を得た。溶液を0℃に冷却し、トリイソプロピルシラン(1.1eq.)、次いで(0℃に予備冷却した)TFAを反応混合物に添加して88mMの最終濃度を得た。反応混合物を0℃で1時間撹拌した。所定の時間後、反応混合物を飽和炭酸カリウム水溶液の添加によって0℃で奪活し、減圧下で濃縮して大部分のジメチルスルフィドを除去した。混合物を5回分のジクロロメタンで抽出し、合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮することで黄色の泡状物を得た。粗生成物をSiO2上でのフラッシュクロマトグラフィー(0.2%トリエチルアミン−10%EtOAc−89.8%ヘキサン〜0.2%トリエチルアミン−50%EtOAc−49.8%ヘキサン、溶出は285nm及び228nmで観察した)によって精製した。生成物である(+)−TBZ化合物17は、所望のジアステレオマーのみからなる無色の泡状物(73%)であった。1H NMR(CD2Cl2)δ0.79(dd,J=13.8,3.8Hz,1H)、0.92(s,6H)、1.14(s,9H)、1.59−1.72(m,2H)、2.27(dd,J=13.2,5.1Hz,1H)、2.52−2.65(m,2H)、2.68−2.82(m,2H)、2.94(dd,J=13.0,3.0Hz,1H)、3.06−3.18(m,2H)、3.25(dd,J=9.8,6.3Hz)、3.55(dd,J=11.6,1.8Hz,1H)、3.83−3.88(m,8H)、6.65(s,1H)、6.69(s,1H)、7.44−7.53(m,6H)、7.74−7.82(m,4H);13C NMR(CD2Cl2)δ19.09、26.79、27.10、29.48、32.31、36.90、44.38、46.02、47.45、50.15、55.77、55.91、61.09、62.53、63.50、108.38、111.75、126.30、127.74、128.93、129.67、134.13、135.65、147.66、147.98、208.73;HRMS−(ESI+)(C3749NO4Si+H)[M+H]+に関する計算値600.3509、実測値600.3499。
【0169】
方法13 (+)−テトラベナジン15の還元によるジヒドロテトラベナジン化合物18及び19のジアステレオマー混合物の製造
【0170】
【化31】

【0171】
(+)−TBZ(15)を0℃のエタノールに溶解した0.11M溶液にNaBH4(2.85eq)を添加した。反応混合物を室温で60分間撹拌した。溶媒を減圧下で注意深く除去し、残留物をジクロロメタンに溶解し、3回分の飽和K2CO3水溶液で洗浄した。水性洗液を2回分のジクロロメタンで逆抽出した。合わせた有機抽出液を乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮することで、高真空下で静置すれば結晶化する無色の油状物を得た。粗生成物の精製は、SiO2上でのクロマトグラフィー(2.5〜5%MeOH−CH2Cl2、溶出は285nmで観察した)によって達成した。UV活性画分をTLCによって再分析した。この手順で2種の生成物18及び19を単離した。主生成物18は無色の固体(74%)であった。[α]26D+48(c0.30,CH2Cl2);1H NMR(CD2Cl2)δ0.93(d,J=6.6Hz,3H)、0.95(d,J=6.6Hz,3H)、1.04(ddd,J=14.6,8.7,4.3Hz,1H)、1.42(dd,J=20.2,11.4Hz,1H)、1.59(ddd,J=13.7,9.6,3.3Hz,1H)、1.64−1.78(m,2H)、1.96(見掛けのt,J=11.4Hz,1H)、2.27(br s,1H)、2.40−2.48(m,1H)、2.54(ddd,J=12.3,3.7,2.3Hz,1H)、2.60−2.67(m,1H)、2.95−3.09(m,3H)、3.11(見掛けのd,J=11.1Hz,1H)、3.35(ddd,J=10.4,10.4,4.5Hz,1H)、3.80−3.81(m,6H)、6.60(s,1H)、6.69(s,1H);13C NMR(CD2Cl2)δ21.61、24.02、25.33、29.30、39.68、40.81、41.58、51.83、55.74、55.91、60.02、60.92、74.32、108.42、111.73、126.68、129.76、147.35、147.61;HRMS−(ESI+)(C1929NO3+H)[M+H]+に関する計算値320.2226、実測値320.2242。副生成物19は黄色の油状物(4%)であった。1H NMR(CD2Cl2)δ0.94(d,J=6.6Hz,3H)、0.96(d,J=6.6Hz,3H)、1.13−1.20(m,1H)、1.24−1.34(m,2H)、1.60−1.77(m,2H)、1.89−2.00(m,1H)、2.36−2.44(m,2H)、2.53(ddd,J=10.5,10.5,3.8Hz,1H)、2.58−2.70(m,2H)、2.91−2.98(m,1H)、2.98−3.09(m,1H)、3.48(見掛けのd,J=11.6Hz,1H)、3.80−3.82(見掛けのs,6H)、4.07(見掛けのd,J=3.1Hz,1H)、6.60(s,1H)、6.68(s,1H);13C NMR(CD2Cl2)δ22.74、22.81、24.87、29.30、37.83、38.87、39.42、52.44、55.76、55.96、56.32、56.43、67.88、108.45、111.78、127.18、130.38、147.30、147.54。
【0172】
構造Vを有するDTBZから導かれるエーテル化合物を製造するための一般手順
DMFに溶解した構造Vを有するDTBZ化合物(1当量)及びNaH(5.0当量)の混合物(0.1M)を60℃で3時間加熱する。混合物を0℃に冷却し、適当なアルキル化剤(例えば、フルオロアルキルトシレート、ハロゲン化アリル又はベンジルオキシアルキルトシレート)を添加し、混合物を室温(RT)まで放温する。次いで、反応混合物を60℃で14時間加熱し、RTに冷却する。反応混合物を水の添加によって奪活し、有機溶媒(例えば、EtOAc、トルエン、ジエチルエーテル)で3回抽出する。合わせた有機抽出液を水及びブラインで順次に洗浄し、乾燥剤(例えば、Na2SO4、MgSO4、CaCl2)上で乾燥し、濾過し、濃縮する。残留物をクロマトグラフィーにより精製することで、生成物であるエーテル化合物を得ることができる。
【0173】
方法14 2−フルオロエチル4−メチルベンゼンスルホネート20の製造
【0174】
【化32】

【0175】
2−フルオロエタノール(1.0g、15.6mmol)をピリジン(15mL)に溶解した0℃の溶液に、トシルクロリド(6.5g、34.1mmol)を30分かけて添加した。反応混合物を0℃で4時間撹拌し、氷冷水及びEtOAcの添加によって奪活した。層を分離し、有機層を水、1M HCl(5×)、飽和Na2CO3及びブラインで順次に洗浄した。有機層を無水Na2SO4上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物を、ヘキサン中5〜40%EtOAcを溶離剤として用いるシリカゲル(12g)上でのクロマトグラフィーにかけることで、フルオロトシレート20(3.2g、95%)をわずかに黄色の油状物として得た。1H NMR(500MHz,CDCl3)δ7.83(d,J=10.0Hz,1H)、7.38(d,J=10.0Hz,2H)、4.59(dt,J=50.0&5.0Hz,2H)、4.28(dt,J=30.0&5.0Hz,2H)、2.47(s,3H)。
【0176】
方法15 3−フルオロプロピル4−メチルベンゼンスルホネート21の製造
【0177】
【化33】

【0178】
エチレングリコール(10mL)中に溶解した3−クロロプロパノール(2.5mL、30mmol)、KF(3.5g、60mmol)及びNaI(50mg、0.33mmol)の混合物を、ショートパス蒸留コンデンサーに取り付けた丸底フラスコ内に配置した。混合物を130℃で加熱し、得られた3−フルオロプロパノールを無色の液体として集めた。3−フルオロエタノール(600mg、7.68mmol)をピリジン(8mL)に溶解した0℃の溶液に、トシルクロリド(3.2g、16.78mmol)を30分かけて添加した。反応混合物を0℃で4時間撹拌し、氷冷水及びEtOAcの添加によって奪活した。生成物のフルオロトシレートを上記方法14に記載したようにして精製することで、化合物21(1.2g、67%)をわずかに黄色の油状物として得た。1H NMR(500MHz,CDCl3)δ7.83(d,J=10.0Hz,1H)、7.38(d,J=10.0Hz,2H)、4.59(dt,J=50.0 & 5.0Hz,2H)、4.28(dt,J=30.0 & 5.0Hz,2H)、2.47(s,3H)。
【実施例1】
【0179】
実施例1 フッ素化エーテル化合物22の製造
【0180】
【化34】

【0181】
構造Vを有するDTBZから導かれるエーテル化合物を製造するための一般手順を使用した。即ち、DTBZ(18)(10mg、0.031mmol)、NaH(4mg、0.155mmol)及び2−フルオロエチル4−メチルベンゼンスルホネート(7mg、0.031mmol)から、CH2Cl2中1〜2%MeOHを溶離剤として用いるシリカゲル(4g)上でのフラッシュクロマトグラフィー後に、表示された2R,3R,12R絶対立体化学を有する生成物のフッ素化エーテル化合物22 3mg(27%)を黄色の固体として得た。1H NMR(500MHz,CDCl3)δ6.69(s,1H)、6.61(s,1H)、4.65(t,J=4.0Hz,1H)、4.56(t,J=4.0Hz,1H)、3.89(s,3H)、3.87(s,3H)、3.07−3.18(m,3H)、3.01−3.04(m,1H)、2.59−2.69(m,2H)、2.48(t,J=9.6Hz,1H)、2.01(t,J=,1H)、1.93−1.86(m,1H)、1.64−1.74(m,4H)、1.50(q,J=9.0Hz,1H)、1.03(ddd,J=14.6,8.7 & 4.3Hz,1H)、0.95(d,J=6.6Hz,3H)、0.93(d,J=6.6Hz,3H)。高分解能質量分析法(HRMS)(ESI+)C2132FNO3[M+H]+に関する計算値366.2444、実測値366.2441。
【実施例2】
【0182】
実施例2 フッ素化エーテル化合物23の製造
【0183】
【化35】

【0184】
構造Vを有するDTBZから導かれるエーテル化合物を製造するための一般手順を使用した。即ち、DTBZ(18)(23mg、0.072mmol)、NaH(18mg、0.72mmol)及び3−フルオロプロピル4−メチルベンゼンスルホネート(17mg、0.072mmol)から、分取HPLCでの精製後に、表示された2R,3R,12R絶対立体化学を有する生成物のフッ素化エーテル化合物23 0.5mg(2%)を黄色の固体として得た。HRMS(ESI+)C2235FNO3[M]+に関する計算値380.2601、実測値380.2568。
【0185】
方法16 ベンジルオキシプロピルDTBZエーテル24の製造
【0186】
【化36】

【0187】
DMFに溶解したDTBZ(18)(1当量)及びNaH(5.0当量)の混合物(0.1M)を60℃で3時間加熱する。次いで、混合物を0℃に冷却し、3−ベンジルオキシプロピルトシレートで処理し、室温まで放温する。次いで、反応混合物を60℃で14時間加熱し、周囲温度に冷却する。反応混合物を水の添加によって奪活し、混合物をEt2O(3×)で3回抽出する。合わせた有機抽出液を水及びブラインで順次に洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濾過し、濃縮する。残留物をクロマトグラフィーにより精製することで、構造24を有するDTBZエーテル化合物を得る。
【0188】
方法17 ヒドロキシプロピルDTBZエーテル25の製造
【0189】
【化37】

【0190】
Parr瓶に入れた100mgのベンジルオキシプロピルDTBZエーテル24のエタノール(50mL)溶液をまずアルゴンガスでパージし、炭素上5重量%パラジウム(Pd/C)(10mg)を添加する。次いで、Parr瓶をParr水素化装置に取り付け、再びアルゴンでパージし、次いで水素ガスでパージする。水素圧を大気圧よりわずかに高く保ちながら、Parr瓶を穏やかに揺らす。水素化分解混合物を薄層クロマトグラフィー(tlc)によって定期的にモニターする。tlcがベンジル基の完全な除去を示したとき、水素化分解混合物をけいそう土で濾過し、濾液をロータリーエバポレーター上において減圧下で濃縮してヒドロキシプロピルDTBZエーテル25を得る。
【実施例3】
【0191】
実施例3 親フッ素性DTBZエーテルトシレート26の製造
【0192】
【化38】

【0193】
3−ヒドロキシプロピルDTBZエーテル誘導体25(50mg)をピリジン(1mL)に溶解した溶液にトルエンスルホニルクロリド(トシルクロリド、1.5当量)を添加し、混合物を0℃で撹拌し、tlcによって定期的にモニターする。tlcが出発3−ヒドロキシプロピルDTBZエーテルの完全な消費を示したとき、反応混合物を氷冷水及びEtOAcの添加によって奪活する。有機層を水、1M HCl(5×)、飽和Na2CO3及びブラインで順次に洗浄する。有機層を無水Na2SO4上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮する。残留物をシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけて親フッ素性DTBZエーテルトシレート26を得る。
【実施例4】
【0194】
実施例4 PETイメージング剤27の製造
【0195】
【化39】

【0196】
遮蔽フード内に収容されかつ窒素パージ入口及び磁気回転棒を備えたテフロン(登録商標)内張り反応バイアルに、F−18フッ化物イオン、炭酸カリウム(約1mg)及びクリプトフィックス(Kryptofix)221(約10mg)を含む水性アセトニトリル溶液約1ミリリットルを加える。バイアルを窒素流下で100℃に加熱することで、水の共沸除去を行う。追加の乾燥アセトニトリル(1mL)を添加して蒸発させる。この共沸乾燥プロトコルを3回繰り返す。最終蒸発段階後、DTBZエーテルトシレート26(2mg)を含むジメチルホルムアミド及びアセトニトリルの混合物(約1mL)を添加し、バイアルを密封する。反応混合物を撹拌しながら100℃で10分間加熱し、次いで室温に冷却する。出発トシレートエーテル26及び生成物のF−18フッ素化エーテル化合物27を含む生成物混合物を水(10mL)で希釈し、Sep−Pakカートリッジに通す。次いで、カートリッジを水(3×)で洗浄することで、未反応のフッ化物イオン及び生成物混合物の他の水溶性成分を除去する。次いで、放射性標識フッ素化エーテル化合物27及び出発トシレート26をアセトニトリルでカートリッジから溶出させる。次いで、大部分のアセトニトリルを蒸発させ、残留物を水性アセトニトリルに溶解し、分取逆相HPLCにかけることで、PETイメージング剤27を含む水性製剤を得る。
【0197】
方法18 ヒドロキシエチルDTBZエーテル28の製造
【0198】
【化40】

【0199】
DMFに溶解したDTBZ(18)(1当量)及びNaH(5.0当量)の混合物(0.1M)を60℃で3時間加熱する。次いで、混合物を0℃に冷却し、テトラヒドロフラン中にエチレンオキシドを含む溶液を添加し、室温まで放温する。次いで、反応混合物を60℃で24時間加熱し、周囲温度に冷却する。反応混合物を水の添加によって奪活し、混合物をEt2O(3×)で3回抽出する。合わせた有機抽出液を水及びブラインで順次に洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濾過し、濃縮する。残留物をクロマトグラフィーにより精製することで、構造28を有するヒドロキシエチルDTBZエーテル化合物を得る。
【実施例5】
【0200】
実施例5 親フッ素性DTBZエーテルトシレート29の製造
【0201】
【化41】

【0202】
2−ヒドロキシエチルDTBZエーテル誘導体28(100mg)をピリジン(2mL)に溶解した溶液にトルエンスルホニルクロリド(トシルクロリド、1.5当量)を添加し、混合物を0℃で撹拌し、tlcによって定期的にモニターする。tlcが出発2−ヒドロキシエチルDTBZエーテルの完全な消費を示したとき、反応混合物を氷冷水及びEtOAcの添加によって奪活する。有機層を水、1M HCl(5×)、飽和Na2CO3及びブラインで順次に洗浄する。有機層を無水Na2SO4上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮する。残留物をシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけて親フッ素性DTBZエーテルトシレート29を得るが、これは再結晶によってさらに精製することができる。
【実施例6】
【0203】
実施例6 PETイメージング剤30の製造
【0204】
【化42】

【0205】
遮蔽フード内に収容されかつ窒素パージ入口及び磁気回転棒を備えたテフロン(登録商標)内張り反応バイアルに、F−18フッ化物イオン、炭酸カリウム(約1mg)及びクリプトフィックス221(約10mg)を含む水性アセトニトリル溶液約1ミリリットルを加える。バイアルを窒素流下で100℃に加熱することで、水の共沸除去を行う。追加の乾燥アセトニトリル(1mL)を添加して蒸発させる。この共沸乾燥プロトコルを3回繰り返す。最終蒸発段階後、DTBZエーテルトシレート29(2mg)を含むジメチルホルムアミド及びアセトニトリルの混合物(約1mL)を添加し、バイアルを密封する。反応混合物を撹拌しながら100℃で10分間加熱し、次いで室温に冷却する。出発トシレートエーテル29及び生成物のF−18フッ素化エーテル化合物30を含む生成物混合物を水(10mL)で希釈し、Sep−Pakカートリッジに通す。次いで、カートリッジを水(3×)で洗浄することで、未反応のフッ化物イオン及び生成物混合物の他の水溶性成分を除去する。次いで、放射性標識フッ素化エーテル化合物30及び出発トシレート29をアセトニトリルでカートリッジから溶出させる。次いで、大部分のアセトニトリルを蒸発させ、残留物を水性アセトニトリルに溶解し、分取逆相HPLCにかけることで、PETイメージング剤30を含む水性製剤を得る。
【0206】
方法19 別法によるPETイメージング剤30の製造
【0207】
【化43】

【0208】
遮蔽フード内に収容されかつ窒素パージ入口及び磁気回転棒を備えたテフロン(登録商標)内張り反応バイアルに、F−18フッ化物イオン、炭酸カリウム(約1mg)及びクリプトフィックス221(約10mg)を含む水性アセトニトリル溶液約1ミリリットルを加える。バイアルを窒素流下で100℃に加熱することで、水の共沸除去を行う。追加の乾燥アセトニトリル(1mL)を添加して蒸発させる。この共沸乾燥プロトコルを3回繰り返す。最終蒸発段階後、エチレングリコールビストシレート(2mg)を含むジメチルホルムアミド及びアセトニトリルの混合物(約1mL)を添加し、バイアルを密封する。反応混合物を撹拌しながら100℃で10分間加熱し、次いで室温に冷却する。出発ビストシレート及び生成物のF−18フッ素化モノトシレートを含む生成物混合物を水(10mL)で希釈し、Sep−Pakカートリッジに通す。次いで、カートリッジを水(3×)で洗浄することで、未反応のフッ化物イオン及び生成物混合物の他の水溶性成分を除去する。次いで、放射性標識フッ素化モノトシレート及び出発ビストシレートをアセトニトリルでカートリッジから溶出させる。次いで、大部分のアセトニトリルを蒸発させ、残留物を水性アセトニトリルに溶解し、分取逆相HPLCにかけて精製F−18フッ素化モノトシレートを得る。精製F−18フッ素化モノトシレートを水とアセトニトリルとの共沸除去によって乾燥する。次いで、乾燥F−18フッ素化モノトシレートを60℃で約2mgのDTBZナトリウム塩と反応させる。放射性標識フッ素化エーテル化合物30及びDTBZナトリウム塩を含む生成物混合物を塩化アンモニウム水溶液で奪活し、分取HPLCにかけることで、PETイメージング剤30を含む水性製剤を得る。別法として、F−18フッ素化モノトシレートは、J.Label.Compd.Radiopharm.2006、49:pp 177−195に記載されているようにして製造し精製することもできる。
【0209】
方法20 別法によるヒドロキシプロピルDTBZエーテル25の製造
【0210】
【化44】

【0211】
一般手順に従い、ジメチルホルムアミド(DMF)中においてDTBZ(18)を水素化ナトリウム及び臭化アリルと反応させることで、合成中間体としてDTBZアリルエーテル31(構造に関しては以下の方法21を参照されたい)を得、これをカラムクロマトグラフィーによって精製する。中間体のDTBZアリルエーテルを室温のテトラヒドロフラン中においてTHF中の1モルボラン(BH3)1/3当量で一晩処理する。次いで、THF:水の1:1混合物中の過ホウ酸ナトリウム3当量を添加し、混合物を室温で一晩撹拌する。反応混合物を水の添加によって奪活し、Et2O(3×)で3回抽出する。合わせた有機抽出液を水及びブラインで順次に洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濾過し、濃縮する。残留物をクロマトグラフィーにより精製することで、構造25を有する3−ヒドロキシプロピルDTBZエーテル化合物を得る。
【0212】
方法21 別法によるヒドロキシエチレンDTBZエーテル28の製造
【0213】
【化45】

【0214】
0℃の塩化メチレン(CH2Cl2)中においてDTBZアリルエーテル31(500mg)を過剰のオゾンと1時間反応させる。反応混合物を、水素化ホウ素ナトリウム水溶液の添加、次いで塩化メチレンと等容のメタノールの添加によって0℃で奪活する。反応混合物を室温まで放温させ、メタノール及び塩化メチレンをロータリーエバポレーター上で除去する。粗生成物を酢酸エチル(EtOAc)に溶解し、飽和塩化アンモニウム溶液、水及びブラインで洗浄し、次いで硫酸ナトリウム上で乾燥して濾過する。濾液を減圧下で濃縮してヒドロキシエチルDTBZエーテル28を得、これをシリカゲル上でのクロマトグラフィーによって精製することができる。
【実施例7】
【0215】
実施例7 PETイメージング剤33の製造
【0216】
【化46】

【0217】
遮蔽フード内に収容されかつ窒素パージ入口及び磁気回転棒を備えたテフロン(登録商標)内張り反応バイアルに、F−18フッ化物イオン、炭酸カリウム(約1mg)及びクリプトフィックス221(約10mg)を含む水性アセトニトリル溶液約1ミリリットルを加える。バイアルを窒素流下で100℃に加熱することで、水の共沸除去を行う。追加の乾燥アセトニトリル(1mL)を添加して蒸発させる。この共沸乾燥プロトコルを3回繰り返す。最終蒸発段階後、(化合物29と同様にして製造した)エーテルトシレート32(2mg)を含むジメチルホルムアミド及びアセトニトリルの混合物(約1mL)を添加し、バイアルを密封する。反応混合物を撹拌しながら100℃で10分間加熱し、次いで室温に冷却する。次いで、出発トシレート32及び生成物のF−18フッ素化エーテル化合物33を含む生成物混合物をオクタデシルアミン5mg及び炭酸カリウム(2mg)を用いて60℃で5分間処理することで、未反応のエーテルトシレートを対応するオクタデシルアミン34に転化させる。次いで、生成物混合物を水(10mL)で希釈し、Sep−Pakカートリッジに通す。次いで、カートリッジを水(3×)で洗浄することで、未反応のフッ化物イオン及び生成物混合物の他の水溶性成分を除去する。次いで、放射性標識フッ素化エーテル化合物33及び対応するオクタデシルアミン付加物34をアセトニトリルでカートリッジから溶出させる。次いで、大部分のアセトニトリルを蒸発させ、残留物を水性アセトニトリルに溶解し、分取逆相HPLCにかけることで、精製PETイメージング剤33を得る。
【実施例8】
【0218】
実施例8 PETイメージング剤36の製造
【0219】
【化47】

【0220】
遮蔽フード内に収容されかつ窒素パージ入口及び磁気回転棒を備えたテフロン(登録商標)内張り反応バイアルに、F−18フッ化物イオン、炭酸カリウム(約1mg)及びクリプトフィックス221(約10mg)を含む水性アセトニトリル溶液約1ミリリットルを加える。バイアルを窒素流下で100℃に加熱することで、水の共沸除去を行う。追加の乾燥アセトニトリル(1mL)を添加して蒸発させる。この共沸乾燥プロトコルを3回繰り返す。最終蒸発段階後、(化合物29と同様にして製造した)エーテルトシレート35(2mg)を含むジメチルホルムアミド及びアセトニトリルの混合物(約1mL)を添加し、バイアルを密封する。反応混合物を撹拌しながら100℃で10分間加熱し、次いで室温に冷却する。生成物混合物に、出発トシレート35のモル数を基準にして約10当量の第一アミン基を含む量のアミノプロピル官能化シリカを添加する。混合物を加温してアミノプロピル官能化シリカと未反応トシレート35との反応を行わせ、次いでけいそう土の層で濾過する。けいそう土の層を追加のアセトニトリルですすぎ、合わせたカラム流出液を試料調製用バイアル内で濃縮乾固する。エタノール及び水をバイアルに加えることで、PETイメージング剤36の水性製剤を得る。化合物36を含む水性製剤を、フッ素−18放射崩壊を検出し得るγ線検出器を用いるHPLCによってアッセイする。
【0221】
VMAT−2に対するフッ素化エーテル化合物の結合親和性の測定
本発明によって提供されるフッ素化DTBZエーテル化合物22及び23に関してVMAT−2結合親和性を測定した。VMAT−2結合親和性の測定は、プロトコルCat.No.100−0751を用いてNovascreen Biosciences Corporation(ハノーヴァー、米国メリーランド州)により実施された。Novascreen,Inc.は、製薬業界のための生物学的アッセイの商業的提供業者である。結合親和性データを以下の表9に示すが、これらは本発明のフッ素化エーテル化合物(化合物22及び23)がDTBZ対照品(比較例1)に比べて非常に高い結合親和性を有することを例示している。フッ素化エーテル化合物22及び23に関して得られたデータは、フルオロ脂肪族基による環位置2のヒドロキシル基の置換(これは生物学的活性分子の水素がフッ素で置換される場合に必ず生じる不確実性をもってDTBZの環位置2の基のサイズ及び親油性の変化を合併する構造変化である)が意外にも許容されることを示している。加えて、ナノモル(nM)濃度単位で表された結合定数Kiは、VMAT−2バイオマーカーに対する本発明のフッ素化エーテル化合物の非常に高い親和性を表している。
【0222】
【表9】

【0223】
上記の実施例は単に例示的なものであって、本発明の若干の特徴のみを例示するために役立つ。添付の特許請求の範囲は考えられる限り広い範囲で本発明を特許請求するものであり、本明細書に記載した実施例は多種多様なすべての可能な実施形態から選択された実施形態を例示している。したがって、添付の特許請求の範囲は本発明の特徴を例示するために利用される実施例の選択によって限定されべきでないというのが出願人の意図するところである。特許請求の範囲で使用される「含む」という用語及びその文法的変形語は、論理的に言って、例えば特に限定されないが「から本質的になる」及び「からなる」のような様々に定義範囲の異なる語句も含めて意味する。必要な場合には範囲が示されているが、これらの範囲はその中に入るすべての部分範囲を包含する。これらの範囲内での変動は当業者には自明であろうし、また未だ公表されていなくてもこれらの変動は可能であれば添付の特許請求の範囲によってカバーされると解すべきである。また、科学及び技術の進歩により、言語の不正確さのために現在では想定されていない同等例及び置換例が可能になることも予想されるが、これらの変形例も可能であれば添付の特許請求の範囲によってカバーされると解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造Iを有するフッ素化エーテル化合物。
【化1】

(式中、R1はC2〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2はC1〜C10脂肪族基又はC3〜C10脂環式基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素又はC1〜C10脂肪族基である。)
【請求項2】
鏡像異性的に富化された、請求項1記載のフッ素化エーテル化合物。
【請求項3】
環位置12にR配置を有する鏡像異性体を95モル%以上含む、請求項1又は請求項2記載のフッ素化エーテル化合物。
【請求項4】
環位置3にR配置を有する鏡像異性体を95モル%以上含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のフッ素化エーテル化合物。
【請求項5】
環位置2の−O−R1基が環位置3のR2基に対して逆の配置を有する、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のフッ素化エーテル化合物。
【請求項6】
ジアステレオマーの混合物からなる、請求項1記載のフッ素化エーテル化合物。
【請求項7】
以下の構造IIを有する主成分鏡像異性体を含んでなる鏡像異性的に富化されたフッ素化エーテル化合物。
【化2】

(式中、R1はC2〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2はC1〜C10脂肪族基又はC3〜C10脂環式基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素又はC1〜C10脂肪族基である。)
【請求項8】
構造IIを有する鏡像異性体を80モル%以上含む、請求項7記載の鏡像異性的に富化されたフッ素化エーテル化合物。
【請求項9】
構造IIを有する鏡像異性体を95モル%以上含む、請求項7記載の鏡像異性的に富化されたフッ素化エーテル化合物。
【請求項10】
1がC2-6フルオロアルキル、C1-6フルオロアルコキシ(C1-6アルキル)、C2-6フルオロハロアルキル及びC1-6フルオロアルキルカルボニル(C1-6アルキル)から選択され、R2がC1-6アルキル及びC3-8シクロアルキルから選択され、R3及びR4が各々独立にC1-6アルキル及びC1-6アルコキシから選択される、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の化合物。
【請求項11】
1がC2-10フッ素化脂肪族基であり、R2がイソブチルであり、R3及びR4がメトキシ基である、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の化合物。
【請求項12】
以下の構造IVを有する、請求項7乃至請求項9のいずれか1項記載の化合物。
【化3】

(式中、Meはメチルである。)
【請求項13】
以下の構造を有する、請求項7乃至請求項9のいずれか1項記載の化合物。
【化4】

(式中、Meはメチルである。)
【請求項14】
フッ素−18原子を含む、請求項1乃至請求項13のいずれか1項記載の化合物。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載の化合物の塩。
【請求項16】
請求項1乃至請求項15のいずれか1項記載の化合物と薬学的に許容される賦形剤とを含んでなる医薬製剤。
【請求項17】
医学で使用するための、請求項1乃至請求項15のいずれか1項記載の化合物。
【請求項18】
被験体におけるVMAT−2の検出方法であって、
(i)請求項14記載のフッ素−18標識化合物又はその塩を前記被験体に投与する段階、及び
(ii)インビボPETイメージングによって前記フッ素−18標識化合物の取込みを検出する段階
を含んでなる方法。
【請求項19】
被験体(好ましくはヒト)におけるVMAT−2関連疾患のインビボ診断又はイメージング方法であって、請求項14記載のフッ素−18標識化合物又はその塩を投与する段階、及びインビボPETイメージング技法によって前記化合物の取込みを検出する段階を含んでなる方法。
【請求項20】
VMAT−2関連疾患が糖尿病である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
請求項18乃至請求項20のいずれか1項記載の方法で使用するための、請求項14記載の化合物又はその塩。
【請求項22】
以下の構造VIを有する親フッ素性化合物。
【化5】

(式中、R1は求核性フッ化物イオン又は求電子性フッ素化剤と反応し得る1以上の官能基を含むC2〜C20脂肪族基、C3〜C20脂環式基又はC3〜C20芳香族基であり、R2はC1〜C10脂肪族基又はC3〜C10脂環式基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素又はC1〜C10脂肪族基である。)
【請求項23】
1が求核性フッ化物イオンと反応し得る1以上の官能基を含むC2〜C20脂肪族基、脂環式基又は芳香族基である、請求項22記載の親フッ素性化合物。
【請求項24】
鏡像異性的に富化された、請求項22又は請求項23記載の親フッ素性化合物。
【請求項25】
環位置12にR配置を有する鏡像異性体を95モル%以上含む、請求項22乃至請求項24のいずれか1項記載の親フッ素性化合物。
【請求項26】
環位置3にR配置を有する鏡像異性体を95モル%以上含む、請求項22乃至請求項25のいずれか1項記載の親フッ素性化合物。
【請求項27】
環位置2の−O−R1基が環位置3のR2基に対して逆の配置を有する、請求項22乃至請求項26のいずれか1項記載の親フッ素性化合物。
【請求項28】
1が1以上の芳香族スルホン酸エステル基を含む、請求項22乃至請求項27のいずれか1項記載の親フッ素性化合物。
【請求項29】
1が1以上の脂肪族スルホン酸エステル基を含む、請求項22乃至請求項27のいずれか1項記載の親フッ素性化合物。
【請求項30】
以下の構造VIIを有する主成分鏡像異性体を含んでなる鏡像異性的に富化された親フッ素性化合物。
【化6】

(式中、R1は求核性フッ化物イオン又は求電子性フッ素化剤と反応し得る1以上の官能基を含むC2〜C20脂肪族基、脂環式基又は芳香族基であり、R2はC1〜C10脂肪族基又はC3〜C10脂環式基であり、R3はC1〜C2脂肪族基であり、R4はC1〜C2脂肪族基である。)
【請求項31】
構造VIIを有する鏡像異性体を80モル%以上含む、請求項30記載の鏡像異性的に富化された親フッ素性化合物。
【請求項32】
構造VIIを有する鏡像異性体を95モル%以上含む、請求項30記載の鏡像異性的に富化された親フッ素性化合物。
【請求項33】
1が求核性フッ化物イオンと反応し得る1以上の官能基を含むC2〜C20脂肪族基、脂環式基又は芳香族基である、請求項30記載の鏡像異性的に富化された親フッ素性化合物。

【公表番号】特表2011−500829(P2011−500829A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531220(P2010−531220)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/080861
【国際公開番号】WO2009/055520
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】