説明

フッ素化有機カーボネートを収容する容器

本発明は、フッ素化有機カーボネートと、希ガス、例えば、アルゴン,キセノン、空気より重くかつフッ素化有機化合物と干渉しないガス状脂肪族フッ素化炭素、およびSF、またはこれらの任意の混合物からなる群から選択されるカバーガスを含むガス雰囲気とを収容する容器を提供する。フッ素化有機カーボネートは、Liイオン電池の溶媒または溶媒用添加剤として非常に好適であり、したがって、長期間貯留する間でさえも非常に純度の高い状態に維持しなければならない。アルゴンまたはキセノンガス雰囲気は、例え容器が開放されており、液体が一般的な空気環境中で取り扱われる場合でさえも空気や湿気の侵入を阻止する。本発明はまた、フッ素化有機カーボネートを安全な方法で貯留する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素化有機カーボネートを収容する容器、およびフッ素化有機カーボネートを貯留する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素化有機カーボネート、特に、フッ素化エチレンカーボネート、フッ素化プロピレンカーボネート、およびフッ素化ジアルキルカーボネート、例えば、フルオロメチルメチルカーボネートは、Liイオン電池用添加剤として好適である。この目的に用いるためにはこれらの液体が高純度であることが不可欠である。望ましくない副生成物を形成させ得る加水分解反応の原因となる水分を排除することは非常に有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
製造後のフッ素化有機カーボネートは、輸送および貯留用の容器に使用時まで貯留される。カーボネートを充填したり、これらを移し替えたり、またはこれらを抜き取る際にこの容器を開放すると、空気や湿気が侵入する可能性がある。
【0004】
本発明の文脈においては、特段の指定がない限り単数形は複数形を包含し、特段の指定がない限り複数形は単数形を包含することを意図している。したがって、「カーボネート(carbonates)」という用語は、単一種のカーボネート化合物またはカーボネート化合物の混合物が関与し得ることを意味している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この問題は、フッ素化有機カーボネートを貯留するための本発明の容器および本発明の方法により克服される。本発明の容器は、容器壁と、液体物品を貯留するための内容積部と、貯留すべき物品を充填するかまたは貯留された物品を取り出すための開口部と、貯留された物品を環境から保護するために開口部を閉塞するための閉塞具とを備え、この容器は、フッ素化有機カーボネートと、空気より重い希ガス、空気より重くかつフッ素化有機化合物と干渉しないガス状脂肪族フッ素化炭素(gaseous fluorinated aliphatic carbon)、およびSF、ならびにこれらの任意の混合物からなる群から選択されるカバーガスを50容量%超含むガス雰囲気とを収容している。この開口部は、例えば、容器上面、例えば蓋に設けられた弁であってもよい。この弁を通じて液体を貯留槽に充填することができるかまたは液体を貯留容器から取り出すことができる。「貯留された物品を環境から保護する」という用語は、特に、多くの場合容器周辺に存在するであろう空気および湿気との接触を阻止することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の容器を示すものである。
【図2】一般的な鋼(ステンレス鋼ではない)から作製された容器を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、本願発明の容器を示す。容器壁1はステンレス鋼から作製されている。弁3は、容器上壁に位置する蓋2に螺着されており、弁3は、容器底部5の近傍まで延在しているホース4に接続されている。弁3は、ライン6を介して希ガスの供給源(図示せず)およびライン7を介してフッ素化カーボネートの貯留槽(同じく図示せず)に接続することができる。この容器は、アルゴン雰囲気9で覆われたフッ素化カーボネート8を収容している。容器を過剰に加圧する望ましくないガスはライン10を介して導出することができる。
【0008】
図2は、一般的な鋼(ステンレス鋼ではない)から作製された容器を示す。容器壁1はポリエチレンライニング(polyethylene lining)11でコーティングされている。他の参照符号は図1に対応する。図2に示した容器は鋼の壁が容器内に貯留された液体と直接接触しないように保護されているので、使い捨て容器として使用することができる。
【0009】
本発明における単数形は複数形を包含することを意図している。本発明における「希ガス」という用語も同様に単数形および複数形を包含し、したがってその雰囲気は、単一種の希ガスまたは2種以上の希ガスの混合物を含んでいてもよい。単一種の希ガスが含まれる場合、常に存在する他の微量の希ガスは無視される。例えば、ガス雰囲気がアルゴンを75容量%含み、これを100容量%から差し引いた残部が窒素である場合、窒素中またはアルゴン中に存在する可能性のある微量のヘリウムは無視される。
【0010】
好ましくは、ガス雰囲気は、カバーガスを75容量%以上、より好ましくは90容量%以上、特に好ましくはカバーガスを99容量%以上含む。好ましくは、100容量%から差し引いた残部は、存在する可能性のある空気や酸素等の望ましくない微量不純物を除いて、窒素、ヘリウム、またはこれらの任意の混合物である。好ましいカバーガスは希ガスであり、アルゴンおよびキセノン、特にアルゴンが好ましい希ガスである。
【0011】
単数形の用語である「ガス状脂肪族フッ素化炭素」も同様に単数形および複数形を包含する。これは、直鎖および分岐の脂肪族パーフルオロカーボンすなわち炭素およびフッ素からなる化合物ならびに直鎖および分岐の脂肪族ハイドロフルオロカーボンすなわち炭素、水素、およびフッ素からなる化合物を指す。フルオロカーボンはフッ素化有機カーボネートと反応してはならず、これらはLiイオン電池に使用するのに好ましいと考えられており、好ましくは、この種の電池の他の構成要素(例えば、Li塩、非フッ素系溶媒、添加剤、電極材料等)と反応してはならない。不飽和のパーフルオロカーボンおよびハイドロフルオロカーボンを適用することも可能であるが、飽和のパーフルオロカーボンおよびハイドロフルオロカーボンを適用することが好ましい。一般に、上記直鎖および分岐の脂肪族パーフルオロカーボンすなわち炭素およびフッ素からなる化合物ならびに直鎖および分岐の脂肪族ハイドロフルオロカーボンすなわち炭素、水素、およびフッ素からなる化合物、特に、飽和のパーフルオロカーボンおよびハイドロフルオロカーボンは干渉することがない。標準圧力(1バール(abs))における沸点は0℃未満、好ましくは−10℃未満である。
【0012】
標準圧力における沸点が0℃未満である式(I)C(式中、xは、1および2から選択される整数であり、yは、0、1、および2から選択される整数であり、zは、(2x−y+2)である)の化合物は、空気より重いガスとして非常に好適である。これらの化合物は、フッ素化有機化合物ともLiイオン電池の他の構成要素とも干渉しない。
【0013】
例えば、CH、CHF、CF、C、およびCが好適なフッ素化炭素である。
【0014】
希ガス、SF、パーフルオロカーボン、およびハイドロフルオロカーボンの群の中でも、希ガスおよびSFがカバーガスとして好ましく、特に希ガスがカバーガスとして好ましい。
【0015】
ここで、好ましい実施形態、すなわちフッ素化カーボネート、1種またはそれ以上の希ガス、および不活性ガスを収容する容器を考慮しながら本発明をさらに詳細に説明する。
【0016】
好ましくは、容器内のガス雰囲気は希ガスを75容量%以上含み、好ましい希ガスは、アルゴンおよびキセノンならびにこれらの混合物である。これを100容量%から差し引いた残部は、フッ素化有機カーボネートとも、Liイオン電池溶媒として使用することが意図されたフッ素化カーボネートと後段で混合される可能性のある他の任意の溶媒または添加剤とも干渉しない不活性ガスである。好ましくは、不活性ガスは、窒素、ヘリウム、六フッ化硫黄、およびこれらの任意の混合物からなる群から選択される。窒素およびヘリウムが特に不活性ガスとして好ましい。好ましくは、容器内のガス雰囲気は、アルゴン、キセノン、またはこれらの混合物を90容量%以上含む。より好ましくは、アルゴン、キセノン、またはこれらの混合物を95容量%以上含む。特に好ましくは、アルゴンもしくはキセノンまたはこれらの混合物を99容量%以上含む。
【0017】
アルゴンが好ましい。基本的に純粋なアルゴンが特に好ましい。「基本的に純粋な」とは、アルゴンの純度が好ましくは≧99.0容量%、より好ましくは、アルゴンの純度が≧99.9容量%であることを指す。
【0018】
ガス雰囲気の圧力は、1バール(abs)未満に維持することが可能であろう。これは好ましくは1バール(abs)以上である。ガス雰囲気の圧力の上限は、容器、ライン、弁、蓋、および他の部品の安全上の懸案事項に関し許容される圧力に依存する。多くの場合は、1バール(abs)以上から10バール(abs)以下の範囲の圧力が非常に好適である。
【0019】
容器はフッ素化有機カーボネートと適合性を有する任意の材料から作製することができ、例えば、ステンレス鋼、フッ素化ポリマー、ポリエチレン、またはポリプロピレンから作製することができる。所望により、容器の内側はフッ素化有機カーボネートと適合性のある材料、例えば、上述したポリマーのうちの1種でコーティングされていてもよい。アルミニウムまたはアルミニウム合金から作製された容器、例えば円筒形容器または瓶も同様に好適である。
【0020】
内容積部に制限はない。フッ素化有機カーボネートを希ガス雰囲気と一緒に貯留するには、内容積部が10mL以上の容積を有する容器が好適である。内容積が20000L以下またはそれをさらに超える容器も同様に好適である。多くの場合、内容積が約30L、60L、200L、または400Lの円筒形容器が有用である。
【0021】
容器は、望ましくない物質の侵入を阻止するために内容積部を周囲雰囲気から完全に分離することができる形態のものである。これは、液体または気体を充填または抜き出すための1種またはそれ以上の手段、例えば、弁または蓋を有している。
【0022】
上述したように、容器はフッ素化有機カーボネートを収容している。好ましくは、フッ素化カーボネートは、フッ素化ジメチルカーボネート、フッ素化エチレンカーボネート、およびフッ素化プロピレンカーボネートからなる群から選択される。フッ素化ジメチルカーボネートおよびプロピレカーボネートは1個またはそれ以上のフッ素原子で置換されていてもよく、例えば、一フッ素化、二フッ素化、三フッ素化、四フッ素化、五フッ素化、および六フッ素化されていてもよい。フッ素化エチレンカーボネートは、一フッ素化、二フッ素化、三フッ素化、および四フッ素化されていてもよい。これらの化合物は、例えば、各非フッ素系有機カーボネートを元素状フッ素と反応させることによるか、またはフッ素化度のより高いフッ素化有機カーボネートを得るためにフッ素化度のより低いフッ素化有機カーボネートを用いることによって調製することができる。多くの場合、フッ素化は、純粋な出発物質または好適な溶媒、例えば、フッ化水素またはパーフルオロカーボン中に溶解した出発物質を用いて行われる。元素状フッ素は窒素で希釈される場合が多く、フッ素を15〜25容量%含み、残りが窒素である混合物が非常に好適である。フッ素化は、よりフッ素化度の低いフッ素化有機カーボネートを調製する場合はより低い温度、例えば、−20℃〜30℃の範囲で行われる。よりフッ素化度の高い有機カーボネートを得るためには、反応温度がわずかに高くなるであろう。
【0023】
よりフッ素化度の高い化合物は異性体で存在してもよい。これらの異性体は、例えば、上述したように、元素状フッ素を非フッ素化有機カーボネートまたはフッ素化度がより低いフッ素化有機カーボネート、例えば一フッ素化有機カーボネートと反応させた際に生成する。好ましくは、容器は、フルオロメチルメチルカーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、ビス−(フルオロメチル)カーボネート、フルオロエチレンカーボネート(または4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン)、4,4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4,5−トリフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4,5,5−テトラフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、フルオロメチル−エチレンカーボネート(または4−フルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン)、ジフルオロメチルエチレンカーボネート(または4−ジフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン)、4−メチル−4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−フルオロメチル−4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−フルオロメチル−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−4,4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、および4−メチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンからなる群からのフッ素化有機カーボネートを収容している。勿論、容器は2種以上のフッ素化有機カーボネートを収容していてもよい。
【0024】
収容されているフッ素化カーボネートは、好ましくはさらなる蒸留または再晶析を行うことなく、Liイオン電池の溶媒または溶媒用添加剤としてそのまま使用するのに適した純度を有する。好ましくは、純度は99.0重量%以上であり、99.9重量%以上であることが好ましい。
【0025】
一実施形態においては、容器は各ラインによってカバーガスのガス貯留槽に接続されており、好ましくは、液体が抜き出される際は常に真空が形成されるのを防ぐために各ガスをガス雰囲気に供給することができるように、容器はアルゴン、キセノン、またはこれらの混合物の貯留槽に接続されている。一般に、カバーガス、例えば、アルゴン、キセノン、またはこれらの混合物はガス貯留槽内で加圧されることになるので、ガス貯留槽内のガスは容器から液体を押し出すように適用することができる。こうすることにより液体の抜き出しが非常に容易になると同時に、望ましくないガスの容器内への侵入が効果的に阻止される。
【0026】
他の実施形態においては、容器はガス雰囲気の貯留槽に接続されていない。しかしこの場合は、例え容器が開放されていても、カバーガス、好ましくはアルゴンもしくはキセノンまたはこれらの混合物が、空気や湿気が容器内の気体空間に入り込むのを効果的に防止する。
【0027】
本発明の他の態様は、フッ素化有機カーボネートを貯留する方法に関する。この方法において、フッ素化有機カーボネートは、容器壁と、液体物品を貯留するための内容積部と、貯留すべき物品を充填するかまたは貯留された物品を取り出すための開口部と、貯留された物品を環境から保護するために開口部を閉塞するための閉塞具とを備えた容器に貯留されており、この容器は、フッ素化カーボネートと、空気より重い希ガス、空気より重くかつフッ素化有機化合物と干渉しないガス状脂肪族フッ素化炭素、およびSF、またはこれらの任意の混合物からなる群から選択されるカバーガスを75容量%以上含むガス雰囲気とを収容している。カバーガスは、好ましくは、アルゴン、キセノン、およびこれらの混合物から選択される。100容量%から差し引いた残部は不活性ガス、好ましくはヘリウム、窒素、またはこれらの任意の混合物である。好ましくは、容器内の雰囲気は、アルゴンまたはキセノンを90容量%以上含む。より好ましくは、アルゴンまたはキセノンを95容量%以上含む。特に好ましくは、アルゴンまたはキセノンを99容量%含む。アルゴンおよびキセノンの混合物も適用可能である。
【0028】
アルゴンが好ましい。基本的に純粋なアルゴンが特に好ましい。「基本的に純粋な」とは、好ましくはアルゴンの純度が99.9容量%であることを指す。
【0029】
好ましくは、本発明の方法は、フッ素化有機カーボネートを容器に充填するステップを含む。場合により、例えば、容器内に含まれている任意の水、空気、または他の不純物を除去するために真空引きすることによって容器を浄化してもよい。場合により、後段で容器に貯留すべき種類の純粋なフッ素化有機カーボネートの一部を、容器の内容積部、弁、またはラインを清浄化するための浄化液として使用してもよい。カバーガス、好ましくは、アルゴン、キセノン、またはこれらの混合物、特に好ましくはアルゴンは、容器のガス雰囲気中に実際に存在する任意のガスの50容量%以上、好ましくは75容量%以上を置換するように充填される。好ましくは、容器内に存在するガス雰囲気は完全にフラッシュされる。最後にフッ素化有機カーボネートが容器に供給され、それによってガス雰囲気の一部が置き換えられるかまたは容器から抜き出される。
【0030】
好ましくは、本発明による方法は、容器から液体を除去するステップも含む。このステップにおいては、液体が例えばポンプにより除去され、かつ好ましくは、ガス雰囲気の圧力は基本的に一定に維持される。例えば、上述したように、容器にガス貯留槽が接続されていてもよく、液体が容器から除去される際にガス貯留槽からのガスが容器に供給される。ガス貯留槽内のガス雰囲気(好ましくは、容器内に実際に存在するガス雰囲気と構成要素が同じである)は、貯留容器を加圧するために適用してもよい。こうすることにより、容器の内容積部に任意の外部ガスが入り込むことが防止され、容器から液体を抜き出すことがより容易になる可能性があり、液体をポンプで汲み出す必要がなくなり、例えば弁を開放すれば十分である。
【0031】
場合により、気体以外の不純物または湿気が容器に入り込まないように保護するために、容器内のガス雰囲気を時々置換してもよい。
【0032】
したがって、本発明の方法は、
a)フッ素化カーボネートを容器に充填する前に、空気より重い希ガスからなる群から選択されるカバーガスを50容量%超含むガス雰囲気で容器をフラッシュする(flushing)ステップ、
b)容器から抜き出されたフッ素化有機カーボネートの量を補うために、空気より重い希ガス、空気より重くかつフッ素化有機化合物と干渉しないガス状脂肪族フッ素化炭素、およびSF、ならびにこれらの任意の混合物からなる群から選択されるカバーガスを50容量%超含むガス雰囲気を容器に供給するステップ、
c)ガス雰囲気を、空気より重い希ガス、空気より重くかつフッ素化有機化合物と干渉しないガス状脂肪族フッ素化炭素、およびSF、ならびにこれらの任意の混合物からなる群から選択されるカバーガスを50容量%超含む新鮮なガス雰囲気でフラッシュする(flushing)ステップ、ならびに
d)空気より重い希ガス、空気より重くかつフッ素化有機化合物と干渉しないガス状脂肪族フッ素化炭素、およびSF、ならびにこれらの任意の混合物からなる群から選択されるカバーガスを50容量%超含むガス雰囲気で容器を加圧するステップ
からなる群からの少なくとも1つのステップをさらに含む。
【0033】
この実施形態においても同様に、カバーガスは、好ましくは、アルゴン、キセノン、およびこれらの混合物から選択される。特に好ましくは、カバーガスはアルゴンである。
【0034】
希ガスを含有する雰囲気の好ましい実施形態は上述したものに対応する(すなわち、好ましくは、ガス雰囲気中に75容量%以上の希ガスが含まれ、この希ガスは、好ましくは、アルゴン、キセノン、およびこれらの混合物からなる群から選択され、アルゴンが特に好ましいなど)。この場合、フラッシュに用いられるガス雰囲気は、加圧または抜き出された液体を補うための供給に使用されるガス雰囲気と必ずしも同一である必要はない。
【0035】
本発明の容器および方法は、貯留されたカーボネートの汚染を効果的に防止することができるフッ素化有機カーボネートの貯留を提供する。アルゴンまたはキセノンガス雰囲気は、例え容器が開放されていて、液体が一般的な空気環境中で取り扱われる場合でさえも、空気や湿気の侵入を阻止する。
【実施例】
【0036】
以下の実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、これらに限定することを意図するものではない。
【0037】
実施例1:フルオロエチレンカーボネートを含む容器
1.1.フルオロエチレンカーボネートF1EC(4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン)の調製
米国特許出願公開第20060036102号明細書に記載の方法に従いフルオロエチレンカーボネート(「F1EC」)を製造する。エチレンカーボネートのフルオロエチレンカーボネート中溶液を、窒素で希釈した元素状フッ素(体積比F:N=1:4)と反応させる。結果として得られる反応生成物を米国特許出願公開第20060036102号明細書に記載されているように単離する。純度が>99.9重量%(ガスクロマトグラフィーにより測定)のフルオロエチレンカーボネートを得る。
【0038】
1.2.F1ECの貯留
ステンレス鋼製の30L容器を純度が99容量%を超えるアルゴンでフラッシュする。次いで、非常に高純度のフルオロエチレンカーボネートを浄化液として使用して容器の内面と接触させることにより、付着している任意の水分、埃、または他の汚染物質を除去する。得られた液体を除去した後、容器の蓋の各開口部に弁を螺着させる。この弁により容器を完全に閉塞することが可能になる。これを、保護用ガス雰囲気の貯留槽に接続されたラインに接続することができる。このラインを介して、容器を非常に高純度のアルゴンを用いて再びフラッシュする。このガスは、この弁の他の開口部およびこの弁に通じているオフガスラインを介して容器から排出される。次いで、所望の量のフルオロエチレンカーボネートを、この弁の他の栓(下方に伸びて容器の底部まで届いているホースに接続されている)を通じて容器に充填する。次いで、容器の弁を閉止するかあるいは弁を取り外し、蓋を、例えば取り付けネジにより閉鎖する。このようにして、液中に延在しており、かつ弁を介して他の貯留槽に接続されているホースを通じて液体の全部または一部のみが容器から取り出されるまで液体を貯留することができる。液体を除去する最中はアルゴンが容器に供給され、したがって任意の空気や水分が容器の内部空間に入り込むことが阻止される。
【0039】
1.3.SF中におけるF1ECの貯留
F1ECを充填した実施例1.2.の容器を用いる。この間、純度が99容量%のSF(これを100容量%から差し引いた残部は窒素である)を保護ガス雰囲気として使用する。
【0040】
1.4.フルオロメチルメチルカーボネート(F1DMC)の貯留
F1DMCを充填した実施例1.2.の容器を使用する。アルゴンを75容量%(これを100容量%から差し引いた残部は窒素である)を含む混合物を保護雰囲気として使用する。
【0041】
1.5.CF/N中におけるF1ECの貯留
F1ECを充填した実施例1.2.の容器を使用する。この間、CFを95容量%およびNを5容量%を含むガス雰囲気を使用して空気および湿気の侵入から保護する。
【0042】
1.6.Ar/N中におけるF1ECの貯留
F1ECを充填した実施例1.2.の容器を使用する。この間、純度が>99容量%のアルゴンを75容量%およびNを25容量%含むガス雰囲気を使用して空気および湿気の侵入から保護する。
【0043】
1.7.Ar中におけるF2ECの貯留
4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(F2EC)を充填した実施例1.2.の容器を使用する。この化合物は、F:ECの比率をより高くすることを除いてF1ECと同一方法で調製される。この間、純度が>99容量%のアルゴンを75容量%およびNを25容量%含むガス雰囲気を使用して空気および湿気の侵入から保護する。
【0044】
1.8.Ar/N下におけるF1ECの貯留
F1ECを充填した実施例1.2.の容器を使用する。この間、純度が>99容量%のアルゴンを75容量%およびNを25容量%含むガス雰囲気を使用して空気および湿気の侵入を保護する。
【0045】
1.9.貯留容器からのF1ECの安全な抜き出し
実施例1.1に記載した貯留容器を使用する。アルゴンラインへの弁の接続を開放し、次いで、ホース、弁、および貯留槽へのラインを通じて液体を容器からポンプにより汲み出される。その後、両方の接続を閉止する。空気も湿気も侵入することができない。
【0046】
2.鋼容器におけるF1ECの貯留
今回は一般的な鋼から作製された30L容器を用いることを除いて実施例1.2を繰り返す。容器壁の内側をポリエチレンライニングでコーティングする。安価な材料であるため、この容器を使い捨て容器として扱うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器壁と、
液体物品を貯留するための内容積部と、
貯留すべき物品を充填するかまたは前記貯留された物品を取り出すための開口部と、
前記貯留された物品を環境から保護するために前記開口部を閉塞するための閉塞具と、
を含む容器であって、
フッ素化有機カーボネートと、空気より重い希ガス、空気より重くかつ前記フッ素化有機化合物と干渉しないガス状脂肪族フッ素化炭素、およびSF、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるカバーガスを50容量%超含むガス雰囲気とを収容している、容器。
【請求項2】
希ガスを75容量%以上収容している、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記希ガスが、アルゴン、キセノン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の容器。
【請求項4】
基本的に純粋なアルゴンからなるガス雰囲気を収容している、請求項3に記載の容器。
【請求項5】
ステンレス鋼、ポリエチレン、ポリプロピレン、アルミニウム、またはアルミニウム合金から製造されている、請求項1に記載の容器。
【請求項6】
フッ素化ジメチルカーボネート、フッ素化エチレンカーボネート、フッ素化プロピレンカーボネート、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選択されるフッ素化カーボネートを収容している、請求項1に記載の容器。
【請求項7】
フルオロメチルメチルカーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、ビス−(フルオロメチル)カーボネート、フルオロエチレンカーボネート(または4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン)、4,4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4,5−トリフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4,5,5−テトラフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、フルオロメチル−エチレンカーボネート(または4−フルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン)、ジフルオロメチルエチレンカーボネート(または4−ジフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン)、4−メチル−4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−フルオロメチル−4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−フルオロメチル−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−4,4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、およびこれらの2種以上の混合物からなる群からのフッ素化有機カーボネートを収容している、請求項6に記載の容器。
【請求項8】
前記フッ素化有機カーボネートの純度が99.9重量%以上である、請求項1に記載の容器。
【請求項9】
フッ素化有機カーボネートを貯留するための方法であって、
前記フッ素化有機カーボネートが、
容器壁と、
液体物品を貯留するための内容積部と、
貯留すべき液体を充填するかまたは前記貯留された物品を取り出すための開口部と、
前記貯留された液体物品を環境から保護するために前記開口部を閉塞するための閉塞具と、
を備える容器に貯留され、前記容器が、前記フッ素化カーボネートと、空気より重い希ガス、空気より重くかつ前記フッ素化有機化合物と干渉しないガス状脂肪族フッ素化炭素、およびSF、ならびにこれらの任意の混合物からなる群から選択されるカバーガスを50容量%超、好ましくは前記希ガスを75容量%以上含むガス雰囲気とを収容する、方法。
【請求項10】
前記希ガスが、アルゴン、キセノン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ガス雰囲気が、アルゴンまたはキセノンを95容量%以上含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
アルゴンまたはキセノンが99容量%以上含まれる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
純粋なアルゴンから基本的になるガス雰囲気を収容している、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
a)前記フッ素化カーボネートを前記容器に充填する前に、空気より重い希ガス、空気より重くかつ前記フッ素化有機化合物と干渉しないガス状脂肪族フッ素化炭素、およびSF、またはこれらの任意の混合物からなる群から選択されるカバーガスを50容量%超含むガス雰囲気で前記容器をフラッシュするステップ、
b)前記容器から抜き出されたフッ素化有機カーボネートの量を補うために、空気より重い希ガス、空気より重くかつ前記フッ素化有機化合物と干渉しないガス状脂肪族フッ素化炭素、およびSF、ならびにこれらの任意の混合物からなる群から選択されるカバーガスを50容量%超含むガス雰囲気を前記容器に供給するステップ、
c)前記ガス雰囲気を、空気より重い希ガス、空気より重くかつ前記フッ素化有機化合物と干渉しないガス状脂肪族フッ素化炭素、およびSF、またはこれらの任意の混合物からなる群から選択されるカバーガスを50容量%超含む新鮮なガス雰囲気でフラッシュするステップ、ならびに
d)空気より重い希ガス、空気より重くかつ前記フッ素化有機化合物と干渉しないガス状脂肪族フッ素化炭素、およびSF、またはこれらの任意の混合物からなる群から選択されるカバーガスを50容量%超含むガス雰囲気で前記容器を加圧するステップ、
からなる群からの少なくとも1つのステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記カバーガスが、アルゴン、キセノン、およびこれらの混合物から選択される、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−512146(P2012−512146A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540130(P2011−540130)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067013
【国際公開番号】WO2010/069893
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(592165314)ゾルファイ フルーオル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (55)
【氏名又は名称原語表記】Solvay Fluor GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans−Boeckler−Allee 20,D−30173 Hannover,Germany
【Fターム(参考)】