説明

フッ素含有(メタ)アクリレート化合物、ハードコート用組成物及び成形品

【課題】屈折率を選択する範囲を広げ、耐擦傷性、耐熱性及び耐薬品性に優れた低屈折率を与えるフッ素含有(メタ)アクリレートを提供することを目的とする。
【解決手段】式(I)で表されるフッ素含有アクリレート化合物。



[式中、Rが、炭化水素基、該基に含まれるメチレン基はO又はカルボニル基で置換されていてもよく、該基は、F、水酸基又は−OC基が置換されていてもよい;Rは、H又はアルキル基;Xは、結合手、アルキレンオキサイド基又は置換基−O−(CO)−R−(CO)−O−R−;Xは、結合手、アルキレンオキサイド基あるいは−O−X2’−;R及びRは、Fが置換されていてもよい炭化水素基;X2’は、結合手、アルキレンオキサイド基又は置換基−O−(CO)−R−(CO)−O−R−;tは、1〜13の整数;nは1〜10の整数:mは3〜18の整数]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフッ素含有(メタ)アクリレート化合物、ハードコート用組成物及び成形品に関し、より詳細には、光学部品、反射防止膜等に有利に利用されるフッ素含有(メタ)アクリレート化合物、ハードコート用組成物及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話、各種平面ディスプレイ等の光学部品に、プラスチックの光学材料が用いられている。プラスチックの光学材料は、物質固有の屈折率を有しており、光学部品の設計にあたっては、適切な屈折率を有する材質を選択することになる。
しかし、プラスチックの光学材料の種類は限られており、屈折率の選択範囲にも限界がある。
【0003】
反射防止膜に用いられる比較的低屈折率の光学材料として、フッ素系化合物及びシリコン系化合物がある(例えば、特許文献1:特開2000−264883号公報、特許文献2:特開2003−313242号公報)。
【0004】
しかし、フッ素系化合物は、他の物品との接触によって傷が付き易い。また、フッ素系化合物を光学部品に用いた場合、耐熱性が低く、加熱によって変形し易いという問題がある。
また、シリコン系化合物は酸及びアルカリ等の薬品により侵され易いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−264883号公報
【特許文献2】特開2003−313242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためなされたもので、屈折率を選択する範囲を広げ、耐擦傷性、耐熱性及び耐薬品性に優れた低屈折率を与えるフッ素含有(メタ)アクリレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフッ素含有アクリレート化合物は、
式(I)

[式中、
Rが、炭素数1〜40の炭化水素基であり、該炭化水素基に含まれるメチレン基は酸素原子及び/又はカルボニル基で置換されていてもよく、該炭化水素基は、フッ素原子、水酸基又は−OC基が置換されていてもよい、
は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、
は、結合手、付加モル数1〜10のアルキレンオキサイド基又は置換基−O−(CO)−R−(CO)−O−R−であり、
は、結合手、付加モル数1〜10のアルキレンオキサイド基又は置換基−O−(CO)−R−(CO)−O−R−、あるいは−O−X2’−であり、
及びRは、同一又は異なって、フッ素原子が置換されていてもよい炭素数1〜10の炭化水素基であり、
2’は、結合手、付加モル数1〜10のアルキレンオキサイド基又は置換基−O−(CO)−R−(CO)−O−R−であり、
tは、1〜13の整数であり、
nは1〜10の整数であり、mは3〜18の整数である。]
で表されることを特徴とする。
【0008】
このようなフッ素含有アクリレート化合物では、以下の要件の1以上を備えることが好ましい。
Rが、二重結合を少なくとも1つ含有する。
Rが、−OC基が置換されている炭素数1〜20の炭化水素基であり、該炭化水素基に含まれるメチレン基は酸素原子及び/又はカルボニル基で置換されていてもよい。
式(I)の化合物が、式(Ia)、式(Ib)及び(Ib’)


(式中、R、n及びmは、上記と同義であり、
は、水素原子又はメチル基、
は、水酸基又は−OCが置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、
t’は、1〜4の整数を示す)
で表される化合物から選択される少なくとも1種以上の化合物である。
【0009】
置換基−X−O−CO−CR=CHが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルオキシアルキルジカルボン酸及び(メタ)アクリロイルオキシアルキル−ヒドロキシアルキルジカルボン酸の残基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基である。
置換基−OCが、フルオロアルキル基置換ビニル化合物である。
【0010】
また、本発明のフッ素含有アクリレート化合物は、
エポキシ化合物をアクリロイルオキシ基又はアルキルアクリロイルオキシ基含有化合物でアクリレート化して得られる化合物と、フルオロアルキル基置換ビニル化合物との反応生成物としてのフッ素含有アクリレート化合物であることを特徴とする。
【0011】
このような化合物では、エポキシ化合物が、グリシジル基含有化合物であることが好ましい。
また、アクリロイルオキシ基又はアルキルアクリロイルオキシ基含有化合物が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルオキシアルキルジカルボン酸及び(メタ)アクリロイルオキシアルキル−ヒドロキシアルキルジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0012】
フルオロアルキル基置換ビニル化合物が、式(II)

で表される化合物であることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明のフッ素含有(メタ)アクリレートの製造方法は、
式(I’)で表される化合物にフルオロアルキル基置換ビニル化合物を反応させて式(I)で表されるフッ素含有(メタ)アクリレートを製造することを特徴とする。

(式中、R、R、X及びX、t、n及びmは上記と同義である。)
【0014】
このような製造方法では、 式(I’)で表される化合物を、式(a)で表されるエポキシ化合物に、式(b)で表される化合物を反応させて(メタ)アクリレート化して得ることが好ましい。


(式中、R、R、X及びX及びtは上記と同義である。)
【0015】
さらに、本発明のハードコート用組成物は、上述したフッ素含有(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする。
また、本発明の成形品は、上述したハードコート用組成物の硬化重合体がハードコート層として形成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、屈折率を選択する範囲を広げることができ、さらに、耐擦傷性、耐熱性及び耐薬品性に優れたフッ素含有(メタ)アクリレートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のフッ素含有(メタ)アクリレート化合物は、上述した式(I)(以下、化合物(I)と記載することがある)で表される化合物である。
化合物(I)は、言い換えると、フッ素含有(メタ)アクリレート化合物、つまり、エポキシ化合物をアクリロイルオキシ基又はアルキルアクリロイルオキシ基含有化合物(好ましくは、メタクリロイルオキシ基)でアクリレート化して得られる化合物と、フルオロアルキル基置換ビニル化合物との反応生成物とも表すことができる。
【0018】
なお、本明細書においては、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートの双方を意味する。
【0019】
式(I)における置換基Rは、炭化水素基である。炭素数は1〜40程度が適している。
ただし、この炭化水素基は、炭化水素基に含まれるメチレン基は酸素原子及び/又はカルボニル基で置換されていてもよい。
また、この炭化水素基は、1つ以上のフッ素原子、水酸基及び/又は−OC基が置換されていてもよい。
さらに、1以上の炭素−炭素二重結合を有していてもよい。
【0020】
炭化水素基としては、直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素及びこれらを組み合わせた基等が挙げられる。具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリールアルキル基、アルキルアリール基又はこれらに対応する2価以上の基等が挙げられる。また、これらの炭化水素において、1以上の炭素−炭素二重結合を有していることが好ましい。例えば、ビニル基及びその繰り返し単位等が挙げられる。
【0021】
アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、sec−ペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル等が挙げられる。
アリール基としては、フェニル、トチル、キシリル、クメニル、メシチル、ナフチル、ビフェニル、2,2−ビスフェニレンプロパン等が挙げられる。
アラルキル基としては、ベンジル、フェネチル、クミル、ナフチルメチル、ナフチルエチル等が挙げられる。
【0022】
この炭化水素基は、炭化水素基に含まれるメチレン基の1又は2つ以上が、1つの酸素原子又は1つのカルボニル基、1つの酸素原子及び1つのカルボニル基、1つの酸素原子及び2以上のカルボニル基、2以上の酸素原子及び1つのカルボニル基で置換されていてもよい。例えば、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シクロアルキレングリコール、ポリシクロアルキレングリコール、アリーレングリコール、ポリアリーレングリコール等のグリコール類に由来する基等が挙げられる。
【0023】
この炭化水素基は、1つ以上のフッ素原子、水酸基及び/又は−OC基が置換されていてもよい。例えば、2〜20個のフッ素原子、水酸基又は−OCで置換されているものが挙げられる。具体的には、パーフルオロアルキル、モノアルコール、ポリアルコール(グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロール、ポリトリメチロール、エリスリトール、ポリエリスリトール、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール等)等に由来する基等が挙げられる。
【0024】
は、水素原子又はアルキル基である。アルキル基としては、上記と同様のものが例示される。Rとしては、なかでも、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0025】
及びX2’は、それぞれ独立に、結合手、付加モル数1〜10のアルキレンオキサイド基又は置換基

で表される。ここで、R及びRは、それぞれフッ素原子が置換されていてもよい炭化水素基である。炭素数は、1〜10程度が適している。炭化水素基としては上記と同様のものが例示される。
は、なかでも、炭素数が偶数の基、エチレン、ブチレン、ヘキシレン、シクロヘキシレン、フェニレン等が好ましい。Rは、なかでも、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘプチレン、ヘキシレン等の低級アルキレン基が好ましく、メチレン、エチレン、プロピレン基がより好ましい。さらに、フッ素原子が置換されているものが好ましい。
また、アルキレンオキサイドとしては、炭素数2から4程度が適している。具体的には、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。これらのアルキレンオキサイドは、付加モル数が1〜10程度が適しており、1〜5程度が好ましく、1〜3程度がより好ましい。
なお、Xにおいて、Xと重複する定義は、Xと同様のものが例示される。また、本明細書においては、−O−X2’−は、(CH側)−O−X2’−(R側)を意味する。
【0026】
式(I)の化合物は、例えば、式(Ia)、式(Ib)及び(Ib’)で表される化合物が挙げられる。


(式中、R、n及びmは、上記と同義であり、
は、水素原子又はメチル基、
は、水酸基又は−OCが置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、
t’は、1〜4の整数を示す)
【0027】
式(I)の化合物としては、具体的には、以下の化合物が挙げられる。なお、以下の化合物において、(FAr)は、上述した式(II)で表される置換基を意味する。

【0028】

【0029】


【0030】

【0031】


【0032】
また、本発明のフッ素含有(メタ)アクリレート化合物を得るためのエポキシ化合物としては、エポキシ基を1以上有する化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、式(a)

(式中、R及びtは上記と同義である)
で表される化合物が挙げられる。
式(a)の化合物において、tが2以上の場合は、X互いに異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
また、別の観点から、式(a)の化合物としては、以下の式(a−1)から式(a−5)で表される化合物が挙げられる。これらの式においては、R1aは、2,3−エポキシプロピル基である。
R−O−R1a (a−1)
ここで、Rは、アクリロイル基、メタクリロイル基又はCH−(CH−(w=1〜20の整数)が好ましい。
【0033】
1a−O−R−O−R1a (a−2)
ここで、−O−R−O−は、
−O−(CH−O− (w=4〜20の整数)、
−O−(CHCH(OH)CHO)− (w=1〜20の整数)、
−O−(CHCHO)− (w=1〜20の整数)、
−O−(CHCH(CH)O)− (w=1〜20の整数)、
−O−(CHC(CHCHO)− (w=1〜20の整数)、
−O−(CO)−C−C(CH−C−(OC−O− (w=0〜20の整数)、
−O−(CH(CH)CHO)−C−C(CH−C−(OCHCH(CH))−O− (w=0〜20の整数)、
−O−(CO)−C10−C(CH−C10−(OC−O− (w=0〜20の整数)、
−O−(CH(CH)CHO)−C10−C(CH−C10−(OCHCH(CH))−O− (w=0〜20の整数)が好ましい。
【0034】
R−(O−R1a (a−3)
Rは、CHCHC(CH−が好ましい。
【0035】
R−(O−R1a (a−4)
Rは、C(−CH−が好ましい。
【0036】
(R1a−O)−R−(O−R1a (a−5)
Rは、−(CH−CCHOCHC(−CH−が好ましい。
【0037】
式(a)の具体的な化合物としては、例えば、以下のもの等が挙げられる。以下の式において、a、s、b、c、dは、それぞれ1〜20の整数を表す。

【0038】

【0039】


【0040】

【0041】

【0042】

【0043】
これらのエポキシ化合物は、当該分野で公知の方法によって合成することができる。また、市販品を用いてもよい。例えば、共栄社化学株式会社製、エポライトシリーズが例示される。
(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物としては、この置換基を1以上有する化合物であれば、特に限定されない。また、別の観点から、式(I)における置換基−X−O−CO−CR=CHも、この構造を有する限り特に限定されない。
(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物としては、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸、式(III)

(式中、Rは上記と同義である、r、q、u、vは、それぞれ1〜10の整数である(以下同義)。)
で表される化合物等が例示される。また、式(I)における置換基−X−O−CO−CR=CHは、これら化合物の残基とすることができる。
【0044】
このような化合物の具体的な例としては、以下のもの等が挙げられる。

【0045】

【0046】
エポキシ化合物を(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物で(メタ)アクリレート化するために、式(a)で表されるエポキシ化合物に、式(b)で表される(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物を反応させる方法が挙げられる。これによって、式(I’)で表される化合物を得ることができる。


(式中、各置換基の定義は上記と同義である。)
【0047】
この反応は、通常、エポキシ化合物と(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物とを、エポキシ基とカルボキシル基との官能基のモル比で、0.5〜2:1にて反応させることが適している。
この場合の反応温度は、例えば、40〜110℃程度、好ましくは60〜90℃程度が挙げられる。また、反応時間は、30分間〜48時間程度、30分間〜24時間程度が挙げられる。また、適当な触媒を使用してもよい。
【0048】
この(メタ)アクリレート化された化合物、つまり、式(I’)で表される化合物にフルオロアルキル基置換ビニル化合物を反応させることにより、式(I)で表されるフッ素含有(メタ)アクリレートを製造することができる。

【0049】
ここで、フルオロアルキル基置換ビニル化合物としては、総炭素数が2〜20程度、好ましくは2〜15程度のパーフルオロアルキル基置換ビニル化合物が例示される。
ここでのパーフルオロアルキル基としては、パーフルオロメチル、パーフルオロエチル、パーフルオロn−プロピル、パーフルオロイソプロピル、パーフルオロn−ブチル、パーフルオロsec−ブチル、パーフルオロtert−ブチル、パーフルオロn−ペンチル、パーフルオロsec−ペンチル、パーフルオロn−ヘキシル、パーフルオロn−オクチル、パーフルオロ2−エチルヘキシル等が挙げられる。なかでも、パーフルオロメチル、パーフルオロエチル、パーフルオロn−プロピル、パーフルオロイソプロピル等が好ましい。
【0050】
ビニル化合物としては、エテン、n−プロペン、イソプロペン、n−ブテン、sec−ブテン、tert−ブテン、n−ペンテン、sec−ペンテン、n−ヘキシセン、n−オクテン、2−エチルヘキセン等が挙げられる。
なお、ビニル化合物へのパーフルオロアルキル基の置換基の数は特に限定されず、1〜18程度が挙げられる。
【0051】
具体的には、パーフルオロオクテン、パーフルオロノネン、パーフルオロデケン、パーフルオロウンデケン、パーフルオロドデケン等が挙げられ、パーフルオロノネンが好ましい。なかでも、以下の式(IIa)のパーフルオロノネンがより好ましい。

【0052】
(メタ)アクリレート化された化合物とフルオロアルキル基置換ビニル化合物との反応は、例えば、通常、0.1〜2:1(反応基)のモル比で行うことが適している。この場合の反応温度は、例えば、0〜200℃程度、好ましくは20〜80℃程度が挙げられる。また、反応時間は、30分間〜30時間程度、30分間〜20時間程度が挙げられる。適当な触媒を用いてもよい。
反応は、IRスペクトルにてアクリレート化された化合物の水酸基に基づく吸収から確認することができる。
【0053】
このように、本発明の製造方法では、エポキシ化合物を利用することにより、より多くの水酸基に結合するフッ素含有ビニル化合物の導入を実現することができ、以下の説明するにように、より屈折率を低減させることができるとともに、防汚効果を発揮させることができる。
【0054】
本発明のハードコート用組成物は、上述したフッ素含有(メタ)アクリレートを含んでなる。この組成物は、上述したフッ素含有(メタ)アクリレートを1〜100重量%程度、さらに40〜90重量%程度含有していることが好ましい。
【0055】
本発明のハードコート用組成物には、さらに、(メタ)アクリル酸化合物又はビニル基含有化合物を含有していてもよい。この場合、これらの化合物は、例えば、全組成物100量部に対して、0.1〜50重量部含有されていることが好ましい。これらの化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
このような(メタ)アクリル酸化合物は、例えば、アクリル酸アミド類、アルキル(メタ)アクリレート類、アミノアルキル(メタ)アクリレート類、アミノアルキル(メタ)アクリレートの4級塩類、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの酸無水物付加物類、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、アルキルジオールジ(メタ)アクリレート類、ポリオールポリ(メタ)アクリレート類、アルキレンオキサイド付加ポリオールポリ(メタ)アクリレート類が挙げられる。これらの化合物は、例えば、特開2000−264939号に記載のものが例示される。
【0057】
また、1,2−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−4,4,4−トリフルオロブタン、1,2−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタン、1,2−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−4,4,5,5,6,6,6−へプタフルオロへキサン、1,2−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−4,4,5,5,6,6,7,7,7−ノナフルオロヘプタン、1,2−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ウンデカフルオロオクタン、1,2−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−トリデカフルオロノナン、1,2−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ペンタデカフルオロデカン、1,2−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−へプタデカフルオロウンデカン、1,2−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,12−ノナデカフルオロドデカン、1,2−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−ペンタデカフルオロウンデカン、1,2−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−4−トリフルオロメチル−5,5,5−トリフルオロペンタン、1,2−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−5−トリフルオロメチル−6,6,6−トリフルオロヘキサン、1,2−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−3−メチル−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタン、1,2−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−3−メチル−4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロヘキサン、1,2−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−4−(パーフルオロシクロへキシル)ブタン、1,4−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−2,2,3,3−テトラフルオロブタン、1,5−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−2,2、3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタン、1,6−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロへキサン、1,7−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロへプタン、1,8−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロオクタン、1,9−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−テトラデカフルオロノナン、1,10−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−へキサデカフルオロデカン、1,11−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−オクタデカフルオロウンデカン、1,12−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11−エイコサフルオロドデカン、1,8−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−2,7−ジヒドロキシ−4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、1,9−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−2,8−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6−ヘキサフルオロノナン、1,10−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−2,9−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,11−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−2,10−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−デカフルオロウンデカン、1,12−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−2,11−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドテカフルオロドデカン、2,2−ビス[(メタ)アクリロイルオキシメチル]プロピオン酸−2−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−へプタデカフルオロウンデシルのような含フッ素(メタ)アクリル酸エステル;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールへキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートへキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマーのようなフッ素非含有の(メタ)アクリル酸エステル等であってもよい。
【0058】
ビニル基含有化合物は、例えば、酢酸ビニル、N−ビニルアセトアミド、ビニルピロリドン、ビニルアルキルエーテル類、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸の塩類等が挙げられる。
【0059】
本発明の組成物には、さらに、重合開始剤、反応促進剤、希釈剤、レベリング剤及び潤滑性付与剤、その他の添加剤等が混合されていてもよい。
【0060】
重合開始剤として、紫外線照射により重合が開始されるものが挙げられる。
具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンのようなアセトフェノン系開始剤;ベンゾイン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンのようなベンゾイン系開始剤;ベンゾフェノン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンのようなベンゾフェノン系開始剤;2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントンのようなチオキサントン系開始剤が挙げられる。
【0061】
反応促進剤としては、例えば、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステルのような3級アミンが例示される。
【0062】
重合開始剤及び/又は反応促進剤は、ハードコート用組成物中、それぞれ、0.01〜20重量%程度含まれていることが適している。
【0063】
希釈剤としては、アルキレングリコールのモノアルキルエーテル類、アルキルアルコール類、アルキレングリコールモノアルキルアルコールのアルキルカルボン酸エステル類、ケトン類、アルキルアルコールのアルキルカルボン酸エステル類等が挙げられる。これらは、例えば、特開2004−43790号に記載のものが例示される。
【0064】
レベリング剤及び潤滑性付与剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンとポリジメチルシロキサンとの共重合体、ポリオキシアルキレンとフルオロカーボンとの共重合体等が挙げられる。
【0065】
本発明のハードコート用組成物は、必要に応じて溶媒を含有してもよい。溶媒としては、上述したようなアルコール類、グリコール類、脂肪族環状ケトン類、酢酸エステル類等が挙げられる。
【0066】
本発明の成形品は、ハードコート用組成物を、活性エネルギー線で重合することによって得られる。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、放射線、赤外線、X線、電子線等が挙げられる。これにより、成形品等の表面においてハードコート層を構成することができる。
【0067】
つまり、本発明の組成物に活性エネルギー線を照射すると、(メタ)アクリル酸エステル分子間で、(メタ)アクリロイル基同士が速やかに架橋し、この架橋が順次繰り返されて3次元的な網目状に重合し、硬化物を形成する。この硬化物は、網目状に架橋しているため、強固であり、耐擦傷性及び耐熱性に優れる。また、その表面に化学的に安定なパーフルオロアルキル基を露出させ、表面エネルギーを低下させるため、耐薬品性を向上させることができ、防汚性にも優れている。
【0068】
なお、成形品中のフッ素の含有量が多いほど、成形品の屈折率は低下する。
フッ素の含有量は、パーフルオロアルキル基(C2s−1−O−)の適切な置換数によって調整することができる。言い換えると、用いるフルオロアルキル基置換ビニル化合物における炭素数及びそれに置換されるフッ素原子の数等によって調整することができる。また、本発明のフッ素含有(メタ)アクリレートと、組成物中に含有される添加剤等の他の成分等の配合比を変化させることにより調整することができる。これにより所望の屈折率を有するフッ素含有(メタ)アクリレートによる成形品が得られる。
【0069】
ここでの成形品は、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AN樹脂等の汎用樹脂からなるプラスチック成形品に限られず、木材、ガラス、金属、セラミック、紙、セメント、これらの複合品等の種々の材料で成形されたものを包含する。好ましくは、その表面に、本発明のハードコート用組成物がハードコート層として形成されたものを意味する。また、この成形品としては、本発明のハードコート用組成物がハードコート層を構成するフィルム、転写箔等の形態であってもよい。
【0070】
本発明の成形品は、特に、光学材料として有用である。また、その屈折率が1.32〜1.45と低いため、光学部品表面に形成する反射防止膜としても有用である。
【0071】
従って、例えば、透明基材の上に本発明のハードコート用組成物を塗布してフィルム形状とし、ハードコート用転写箔、ハードコート用フィルム、反射防止膜としたのもでもよいし、これらの転写箔、フィルム、反射防止膜を成形品の表面に適用したものでもよい。
さらに、成形品がプラスチックからなる場合は、そのプラスチック成形品の意図する特性に影響を及ぼさない限り、成形品を構成するプラスチックに、本発明のハードコート用組成物を混合して、ハードコート層又は反射防止層としてもよい。
【0072】
例えば、透明基材の一又は双方の表面にハードコート用組成物を塗布し、その塗膜を光照射等することによりハードコート層又は反射防止層を形成してもよい。
透明基材としては、ポリウレタン樹脂、ポリエピスルフィド樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のような(メタ)アクリル系重合体、アリル系重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ポリカーボネート、MS樹脂、環状ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート等の各種合成樹脂からなる基材、ガラス等のレンズ基材等が挙げられる。基材は、平板状、曲板状、フィルム状等のいずれの形状であってもよい。必要に応じて、基材とハードコート層との間に、別な層を設けてもよい。この別な層は、単層であっても複層であってもよい。
【0073】
塗布は、例えばディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、スピンコート法、ロールコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、はけ塗り法等により行うことができる。
塗布の厚みは、硬化後に0.01〜100μm程度とすることが適している。
光照射は、紫外線等により約100〜1,500mJ/cm2程度が挙げられる。
【0074】
なお、ハードコート層の密着性等を向上させるために、あらかじめ透明基材又は成形品の表面にプライマー層を設けたり、アルカリ処理、酸処理、プラズマ処理、コロナ処理、火炎処理等の前処理を行ってもよい。
【0075】
プライマー層としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂が挙げられる。プライマー層の厚みは2〜50nm程度が適している。プライマー層は、これらの樹脂溶液を、ディッピング法、スプレー法、フローコート法、ロールコート法、スピンコート法などいずれかの方法で塗布することにより形成することができる。
【実施例】
【0076】
本発明のフッ素含有(メタ)アクリレートの実施例を以下に詳細に説明する。
【0077】
(フッ素含有(メタ)アクリレートの合成1)
以下の反応式に示したように、4つ口フラスコに攪拌装置、温度計及び冷却装置を取り付け、フッ素含有(メタ)アクリレートを構成するエポキシエステル化合物として、プロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物(エポキシエステル70PA(商品名)、共栄社化学(株)製)346重量部と、パーフルオロノネン945重量部と、トリエチルアミン101重量部、N,N−ジメチルホルムアミド500mlを仕込み、20〜30℃で14時間反応させて、フッ素含有(メタ)アクリレート(A1)を得た。
【0078】
得られた化合物は、FT−IRにて水酸基ピーク3440cm−1の消失と屈折率の低下とから目的の化合物が得られたことを確認した。

【0079】
(フッ素含有(メタ)アクリレートの合成2)
以下の反応式に示したように、グリセリンジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物(エポキシエステル80MFA(商品名)、共栄社化学(株)製)362重量部と、パーフルオロノネン1418重量部とを、トリエチルアミン101重量部、N,N−ジメチルホルムアミド500mlと共に仕込み、20〜30℃で14時間反応させて、フッ素含有(メタ)アクリレート(A2)を得た。
得られた化合物は、FT−IRにて水酸基ピーク3440cm−1の消失と屈折率の低下とから目的の化合物が得られたことを確認した。

【0080】
(フッ素含有(メタ)アクリレートの合成3)
以下の反応式に示したように、1,4-ビス(2,3−エポキシプロピル)−パーフルオロブタンのアクリル酸付加物327重量部と、パーフルオロノネン945重量部とを、トリエチルアミン101重量部、N,N−ジメチルホルムアミド500mlと共に仕込み、20〜30℃で14時間反応させて、フッ素含有(メタ)アクリレートA3を得た。
得られた化合物は、FT−IRにて水酸基ピーク3440cm−1の消失と屈折率の低下とから目的の化合物が得られたことを確認した。

【0081】
実施例1〜6及び比較例1、2
パーフルオロ基含有(メタ)アクリル酸エステルとして、上記で得られたA1及びA2と、表1に示す成分を混合し、さらに、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンであるイルガキュア184(チバ・スペシャリティケミカルス社製の商品名)5重量部を混合して、液状のハードコート用組成物を調製した。
【0082】
(ハードコート用組成物の外観観察)
組成物の外観について、目視により透明、白濁のいずれであるかを観察した。
【0083】
(ハードコート用組成物の屈折率測定試験)
アッベ屈折計(アタゴ(株)製)により25℃でのハードコート用組成物の屈折率を測定した。
【0084】
(成形品の硬化性試験)
各組成物を、ガラス板上に膜厚10μmとなるように塗工した。これに、紫外線照射装置(日本電池(株)製)で80W高圧水銀灯を用いて約700mJ/cmの紫外線を照射し、組成物が重合した成形品を得た。成形品(硬化膜)を指で触ったとき、硬く充分に重合していたものを良好、軟らかく液状の組成物が残存し、重合が不十分であったものを不良とする2段階で評価した。
【0085】
(成形品の屈折率測定試験)
各組成物を、ガラス板上に膜厚100μmとなるように塗工し、同様に紫外線照射装置で重合させて、成形品とした。この成形品をガラス板から剥離し、アッベ屈折計により25℃での屈折率を測定した。
【0086】
(成形品の耐擦傷性試験)
各組成物を、ガラス板上に膜厚10μmとなるように塗工し、同様に紫外線照射装置で重合させて、成形品とした。100g/cmの荷重をかけた規格0000のスチールウールでこの成形品を10往復擦り、成形品表面の傷の発生の程度を目視により観察した。
【0087】
(成形品の耐薬品性試験)
各組成物を、ガラス板上に膜厚10μmとなるように塗工し、同様に紫外線照射装置で重合させて、成形品とした。得られた成形品に、3%塩酸水溶液、3%水酸化ナトリウム水溶液をそれぞれ1滴ずつ落とし、室温下で30分間放置後、拭き取り、成形品の外観変化を目視により観察した。
【0088】
(成形品の反射防止性評価試験)
実施例1〜6のハードコート用組成物を、メチルエチルケトンで固形分5%となるまで希釈した。それを、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムへ乾燥膜厚100nmとなるように塗工し、100℃で2分間乾燥後、同様に紫外線照射装置で重合させて、成形品を得た。この成形品につき、紫外可視分光光度計Ubest V−550(日本分光(株)製の商品名)を用いて、400〜800nmの間で測定し、その5°正反射率の最小値を求めた。なお、測定の際には成形品の裏面をサンドペーパーで粗面化した後、黒色インキで塗りつぶし、裏面反射の影響を抑えた。
【0089】
実施例及び比較例の組成物及びその成形品についての試験結果を表1にあわせて示す。
【表1】

【0090】
なお、表1の成分は、以下の通りである。
樹脂B1 2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロ−1,10−デカンジアクリレート
樹脂B2 ペンタアクリロイル−ヘプタデカフルオロノネニル−ジペンタエリスリトール/ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
樹脂B3 トリアクリロイル−ヘプタデカフルオロノネニル−ペンタエリスリトール/ペンタエリスリトールテトラアクリレート
樹脂B4 商品名:ライトアクリレートDPE−6A(共栄社化学株式会社製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
【0091】
表1から、実施例1〜6においては、その屈折率の低さから、成形品とした場合においても、反射率を最小限にとどめることができるとともに、耐薬品性も良好であり、優れたハードコート層として使用することができる。
一方、比較例1及び2では、十分に低い屈折率が得られないか、あるいは、十分な硬度が得られないことから、ハードコート層として満足のいく結果が得られなかった。
【0092】
このように、本発明の組成物は、アクリル樹脂の透明性、耐擦傷性及び耐久性を最大限に発揮させながら、十分に屈折率が低く、有効に表面における反射を防止することができる。
【0093】
実施例7
実施例1において、A1をA3に変更した以外、実施例1と同様に組成物及び成形品を製造し、実施例1と同様に評価したところ、実施例1よりも屈折率がやや低い値が得られるとともに、その他の特性については、実施例1とほぼ同様の結果が得られることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のフッ素含有(メタ)アクリレート及びそれを用いたハードコート用組成物は、プラスチック、ガラス、紙、木材等からなる成形品に適用することができ、これらの成形品に対して、密着性、透明性、耐擦傷性、耐湿性等の耐久性等において、長期間にわたって、安定で、優れたコーティング層を与えることができるとともに、屈折率が低いことから、反射率をより低減することができる。よって、これらの特性を要求する部位、成形品のいずれにおいても利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)

[式中、
Rが、炭素数1〜40の炭化水素基であり、該炭化水素基に含まれるメチレン基は酸素原子及び/又はカルボニル基で置換されていてもよく、該炭化水素基は、フッ素原子、水酸基又は−OC基が置換されていてもよい、
は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、
は、結合手、付加モル数1〜10のアルキレンオキサイド基又は置換基−O−(CO)−R−(CO)−O−R−であり、
は、結合手、付加モル数1〜10のアルキレンオキサイド基又は置換基−O−(CO)−R−(CO)−O−R−、あるいは−O−X2’−であり、
及びRは、同一又は異なって、フッ素原子が置換されていてもよい炭素数1〜10の炭化水素基であり、
2’は、結合手、付加モル数1〜10のアルキレンオキサイド基又は置換基−O−(CO)−R−(CO)−O−R−であり、
tは、1〜13の整数であり、
nは1〜10の整数であり、mは3〜18の整数である。]
で表されるフッ素含有アクリレート化合物。
【請求項2】
Rが、二重結合を少なくとも1つ含有する請求項1に記載のフッ素含有(メタ)アクリレート化合物。
【請求項3】
Rが、−OC基が置換されている炭素数1〜20の炭化水素基であり、該炭化水素基に含まれるメチレン基は酸素原子及び/又はカルボニル基で置換されていてもよい請求項1又は2に記載のフッ素含有(メタ)アクリレート化合物。
【請求項4】
式(I)の化合物が、式(Ia)、式(Ib)及び(Ib’)


(式中、R、n及びmは、上記と同義であり、
は、水素原子又はメチル基、
は、水酸基又は−OCが置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、
t’は、1〜4の整数を示す)
で表される化合物から選択される少なくとも1種以上の化合物である請求項1から3のいずれか1つに記載のフッ素含有(メタ)アクリレート。
【請求項5】
置換基−X−O−CO−CR=CHが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルオキシアルキルジカルボン酸及び(メタ)アクリロイルオキシアルキル−ヒドロキシアルキルジカルボン酸の残基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基である請求項1から4のいずれか1つに記載のフッ素含有(メタ)アクリレート。
【請求項6】
置換基−OCが、フルオロアルキル基置換ビニル化合物である請求項1から5のいずれか1つに記載のフッ素含有(メタ)アクリレート。
【請求項7】
エポキシ化合物をアクリロイルオキシ基又はアルキルアクリロイルオキシ基含有化合物でアクリレート化して得られる化合物と、フルオロアルキル基置換ビニル化合物との反応生成物としてのフッ素含有アクリレート化合物。
【請求項8】
エポキシ化合物が、グリシジル基含有化合物である請求項7に記載に記載のフッ素含有(メタ)アクリレート化合物。
【請求項9】
アクリロイルオキシ基又はアルキルアクリロイルオキシ基含有化合物が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルオキシアルキルジカルボン酸及び(メタ)アクリロイルオキシアルキル−ヒドロキシアルキルジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項7又は8に記載のフッ素含有(メタ)アクリレート化合物。
【請求項10】
フルオロアルキル基置換ビニル化合物が、式(II)

で表される化合物である請求項6から9のいずれか1つに記載のフッ素含有(メタ)アクリレート化合物。
【請求項11】
式(I’)で表される化合物にフルオロアルキル基置換ビニル化合物を反応させて式(I)で表されるフッ素含有(メタ)アクリレートを製造することを特徴とするフッ素含有(メタ)アクリレートの製造方法。

(式中、R、R、X及びX、t、n及びmは上記と同義である。)
【請求項12】
式(I’)で表される化合物を、式(a)で表されるエポキシ化合物に、式(b)で表される化合物を反応させて(メタ)アクリレート化して得る請求項11に記載のフッ素含有(メタ)アクリレートの製造方法。


(式中、R、R、X及びX及びtは上記と同義である。)
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1つに記載のフッ素含有(メタ)アクリレートを含むハードコート用組成物。
【請求項14】
請求項13に記載のハードコート用組成物の硬化重合体がハードコート層として形成されてなることを特徴とする成形品。

【公開番号】特開2011−32352(P2011−32352A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179191(P2009−179191)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000162076)共栄社化学株式会社 (67)
【Fターム(参考)】