説明

フッ素樹脂基材接着用樹脂組成物及びそのフッ素樹脂基材接着用樹脂組成物を用いて得られる金属張積層板

【課題】より簡便な方法で、フッ素樹脂基材と無粗化の金属箔との密着性を顕著に向上させ、ファインピッチ回路形成の可能な技術の提供を目的とする。
【解決手段】上記課題を達成するため、フッ素樹脂基材に対し金属箔を張り合わせるための接着層を形成するための樹脂組成物として、当該樹脂組成物は、溶剤に可溶で且つ官能基として分子内に水酸基、カルボキシル基、アミノ基の1種又は2種以上を有するポリマー成分を2重量部〜20重量部、沸点200℃以上のエポキシ樹脂及び沸点200℃以上のアミン系エポキシ樹脂硬化剤からなるエポキシ樹脂配合物を50重量部以上、を含有することを特徴とするフッ素樹脂基材接着用樹脂組成物を用いる。また、この樹脂組成物を用いたフッ素樹脂基材用接着剤の提供、金属箔2と接着層3とが積層構造を採る接着層付金属箔4の提供、当該フッ素樹脂基材を用いた銅張積層板及びその製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願に係る発明は、フッ素樹脂基材接着用樹脂組成物、そのフッ素樹脂基材接着用樹脂組成物を用いたフッ素樹脂基材用接着剤、そのフッ素樹脂基材用接着剤を用いて得られる金属張積層板及びプリント配線板、そして、その金属張積層板の製造方法に関する。特に、金属箔との張り合わせを行っても、良好な密着性を得ることが困難と言われるフッ素樹脂基材との密着性に優れた接着剤原料であるフッ素樹脂基材接着用樹脂組成物、そのフッ素樹脂基材接着用樹脂組成物を用いたフッ素樹脂基材用接着剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のパーソナルコンピュータ、携帯電話等の電子機器は、高速通信及び高速演算を可能とするためクロック周波数をGHzレベルで高くする傾向にある。これに対応して、プリント配線板にも低誘電損失且つ低誘電率であるという誘電特性、クロストーク特性等の高周波特性、その他耐熱性、耐久性を備えることが要求されている。
【0003】
また、衛星通信機器等の電子機器では、衛星放送、衛星通信の発達から、アンテナ、BSコンバータ等では、マイクロ波(30GHz以下)の周波数帯、より高速情報伝達に使用するミリ波(30GHz〜300GHz)の周波数帯での使用を考え、高周波回路対応のクロストーク特性等に優れたプリント配線板が開発されている。
【0004】
以上のような用途において、今後、使用する周波数帯域が更に高周波帯域に移行していくことが予想できる。このように周波数帯域が上がっていくにつれ、プリント配線板に関しては、特に誘電特性が重要となる。このような用途において、フッ素樹脂基材をプリント配線板の絶縁層に用いたものが使用されてきた。
【0005】
例えば、特許文献1には、低誘電率で低誘電正接のガラスクロスとフッ素樹脂の複合化により得られる誘電体と、この誘電体の少なくとも一主面に形成された電解銅箔とを具備する銅張積層板であり、誘電率が2.3(12GHz)以下で、誘電正接が0.001(12GHz)以下の特性をもつことを特徴とするフッ素樹脂銅張積層板が開示されている。この文献から、フッ素樹脂基材が誘電特性に優れ、高周波領域でのプリント配線板の絶縁層構成材料として極めて有用なものと理解できる。
【0006】
ところが、フッ素樹脂基材を用いた場合、フッ素樹脂基材と金属箔との密着性が弱いことが欠点としてあった。特に、吸湿後の当該密着性が弱くなる傾向があった。
【0007】
フッ素樹脂基材と金属箔との密着性を改善するため、特許文献2には、ガラスクロスにフッ素樹脂を含浸保持させたフッ素樹脂含浸層と金属箔との間にフッ素樹脂接着含浸層を設けたプリント配線板が開示されている。このときのフッ素樹脂接着含浸層は、樹脂特性に起因するアンカー効果によって金属箔と金属箔直下のフッ素樹脂含浸層との間の密着性を改善し、剥離強度を増強するために用いている。そして、このフッ素樹脂接着含浸層は、フッ素樹脂含浸層のフッ素樹脂としてPTFEを使用し、フッ素樹脂接着含浸層のフッ素樹脂としてPFAを使用することが好ましいとしている。即ち、基材にも接着層にもフッ素系樹脂を組み合わせている。
【0008】
そして、特許文献3には、高温多湿条件下でも高い信頼性をもって使用できる配線板を提供することを目的に、ポリアリルスルフォン、芳香族ポリスルフィドおよび芳香族ポリエーテルの中から選ばれるいずれか少なくとも1種以上の熱可塑性樹脂とフッ素樹脂からなることを特徴とするフッ素樹脂組成物をプリント配線板の絶縁層構成材料として用いることが開示されている。
【0009】
更に、特許文献4には、フッ素樹脂基材と金属箔との密着性を改善するものではないが、フッ素樹脂基材とスクリーン印刷法により形成した導体との密着性を改善するために、基板の、導体配線を形成するための表面に、粗面化処理、プラズマ処理、粗面化処理をしたのちプラズマ処理、または粗面化処理をしたのちスパッタリング法による金属膜の被覆形成処理、のうちいずれか1つの表面処理を施したことを特徴とするプリント配線用基板が開示されている。
【0010】
【特許文献1】特開2002−307611号公報
【特許文献2】WO01/003478号公報
【特許文献3】特開平11−199738号公報
【特許文献4】WO2003/103352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、フッ素樹脂銅張積層板から得られるプリント配線板にも、その用途を苦慮すれば、電子機器の多機能化、小型化を達成するため、より一層のファインピッチ回路化が要求されてきた。
【0012】
そして、その回路形成には広く電解法若しくは圧延法で製造された銅箔が使用されてきた。この銅箔は、その接着面に粗化処理、防錆処理、シランカップリング剤処理が施されるのが通常である。このときの粗化処理のレベルによっては、要求されるレベルのファインピッチ回路をエッチング法で形成することは困難である。しかも、フッ素樹脂基材と銅箔との密着性が低いと、エッチング液等に対する耐薬品性能及び耐吸湿特性が著しく劣化するため、ファインピッチ回路の形成は不可能となる。近年では、FR−4基材を用いた銅張積層板では、無粗化の銅箔を使用して、従来不可能であったファインピッチ回路の形成が試みられている。これに対し、従来のフッ素樹脂基板ではフッ素樹脂基材と金属箔との密着性が低いため、無粗化の金属箔を使用すると密着力は殆ど得られず、無粗化箔の使用は検討すら出来なかった。
【0013】
上記特許文献2及び特許文献3に開示の方法では、フッ素樹脂基材と無粗化の銅箔との密着性を十分に得ることは出来ず、一定の限界がある。その結果、ヒートショックが負荷されると、フッ素樹脂基材と無粗化の銅箔で形成した回路との剥離(デラミネーション現象)が起きていた。
【0014】
従って、市場では、より簡便な方法で、フッ素樹脂基材と無粗化の金属箔との密着性を顕著に向上させ、ファインピッチ回路形成の可能な技術が望まれてきた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、以下に述べる樹脂組成物等を用いて、フッ素樹脂基材と金属箔との接着界面を形成することで、フッ素樹脂系プリント配線板の回路の引き剥がし強さを飛躍的に向上させ、無粗化の金属箔を用いることを可能としたのである。従って、以下の述べる金属箔とは、主に無粗化の金属箔を意味するものである。以下、本件発明を説明する。
【0016】
フッ素樹脂基材接着用樹脂組成物: 本件発明に係るフッ素樹脂基材接着用樹脂組成物は、フッ素樹脂基材に対し金属箔を張り合わせるための接着層を形成するための樹脂組成物において、当該樹脂組成物は、溶剤に可溶で且つ官能基として分子内に水酸基、カルボキシル基、アミノ基の1種又は2種以上を有するポリマー成分を2重量部〜50重量部、沸点200℃以上のエポキシ樹脂及び沸点200℃以上のアミン系エポキシ樹脂硬化剤からなるエポキシ樹脂配合物を50重量部以上、を含有することを特徴とするものである。
【0017】
本件発明に係るフッ素樹脂基材接着用樹脂組成物において、前記ポリマー成分は、ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂の群から選ばれた1種又は2種以上を混合したものであることが好ましい。
【0018】
そして、本件発明に係るフッ素樹脂基材接着用樹脂組成物において、前記沸点200℃以上のエポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ゴム変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上を混合したものであることが好ましい。
【0019】
また、本件発明に係るフッ素樹脂基材接着用樹脂組成物において、アミン系エポキシ樹脂硬化剤は、芳香族ポリアミン、ポリアミド類及びこれらをエポキシ樹脂や多価カルボン酸と重合或いは縮合させて得られるアミンアダクト体の群から選ばれた1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0020】
フッ素樹脂基材用接着剤: 本件発明に係るフッ素樹脂基材用接着剤は、フッ素樹脂基板に対し金属箔を張り合わせるために用いる樹脂接着剤であって、上記フッ素樹脂基材接着用樹脂組成物に有機溶剤を添加して混合して得られることを特徴としたものである。
【0021】
そして、本件発明に係るフッ素樹脂基材用接着剤は、前記有機溶剤にメチルエチルケトン、シクロペンタノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンのいずれか1種の溶剤又はこれらの混合溶剤を用いることが好ましい。
【0022】
接着層付金属箔: 本件発明に係る接着層付金属箔は、金属箔の表面に基材に対する接着層を備えた接着層付金属箔において、当該接着層は、上記フッ素樹脂基板用樹脂接着剤を用いて形成したものであることを特徴とする。
【0023】
そして、本件発明に係る接着層付金属箔において、前記接着層は、厚さ0.5μm〜3μmの半硬化樹脂層であることが好ましい。
【0024】
また、本件発明に係る接着層付金属箔において、前記接着層付金属箔の接着層は、MIL規格におけるMIL−P−13949Gに準拠して測定したときのレジンフローが5%以内という特性を備えることが好ましい。
【0025】
更に、本件発明に係る接着層付金属箔において、前記金属箔は、銅箔、ニッケル箔、スズ箔、金箔、銀箔、白金箔、鉄箔、コバルト箔、銅合金箔、ニッケル合金箔、スズ合金箔、金合金箔、銀合金箔、白金合金箔、鉄合金箔、コバルト合金箔のいずれかを用いることが好ましい。
【0026】
金属張積層板: 本件発明に係る金属張積層板は、フッ素樹脂基材の表面に接着層を介して金属層を張り合わせて得られる金属張積層板であって、前記接着層は、上記樹脂組成物を含むことを特徴としたものである。
【0027】
また、本件発明に係る金属張積層板は、フッ素樹脂基材の表面に接着層を介して金属層を張り合わせて得られる金属張積層板であって、前記接着層は、前記フッ素樹脂基材用接着剤を用いて形成したことを特徴としたものである。
【0028】
プリント配線板: 本件発明に係るプリント配線板は、上記金属張積層板の金属箔をエッチング加工することにより得られるものである。
【0029】
金属張積層板の製造方法: 本件発明に係る金属張積層板の製造方法は、以下の工程A−1〜工程C−1を経ることを特徴とするものであり、説明の都合上、以下「第1製造方法」と称する。
【0030】
工程A−1: フッ素樹脂基材の金属箔との張り合わせ面に活性化処理を施す工程。
工程B−1: フッ素樹脂基材用接着剤を調製し、このフッ素樹脂基材用接着剤を金属箔の表面に塗布して乾燥することで、金属箔の表面に0.5μm〜3μm厚さの半硬化樹脂層を形成することで接着層付金属箔を製造する工程。
工程C−1: フッ素樹脂基材の活性化処理を施した張り合わせ面に対し、接着層付金属箔の接着層面を当接させて積層して熱間プレス成形することで金属張積層板とする工程。
【0031】
また、本件発明に係る金属張積層板の製造方法は、以下の工程A−2〜工程C−2を経ることを特徴とするものを採用することも出来る。そして、説明の都合上、以下「第2製造方法」と称する。
【0032】
工程A−2: フッ素樹脂基材の金属箔との張り合わせ面に活性化処理を施す工程。
工程B−2: フッ素樹脂基材用接着剤を調製し、このフッ素樹脂基材用接着剤を離型性プラスチックフィルムの表面に塗布して乾燥することで、当該離型性プラスチックフィルムと厚さ0.5μm〜3μmの半硬化樹脂層が積層状態にある離型性プラスチックフィルム付接着層を製造する工程。
工程C−2: フッ素樹脂基材の活性化処理を施した張り合わせ面に対し、離型性プラスチックフィルム付接着層の半硬化樹脂層を当接させ重ね合わせて仮接着し、離型性プラスチックフィルムを剥離除去して、当該半硬化樹脂層をフッ素樹脂基材の表面に残す工程。
工程D−2: 工程C−2でフッ素樹脂基材表面に設けた半硬化樹脂層の表面に金属箔を積層して熱間プレス成形することで金属張積層板とする工程。
【0033】
更に、本件発明に係る金属張積層板の製造方法は、以下の工程A−3〜工程C−3を経ることを特徴とするものを採用することも出来る。そして、説明の都合上、以下「第3製造方法」と称する。
【0034】
工程A−3: フッ素樹脂基材の金属箔の張り合わせ面に活性化処理を施す工程。
工程B−3: フッ素樹脂基材用接着剤を調製する工程。
工程C−3: フッ素樹脂基材の活性化処理した表面に、工程B−3で調製したフッ素樹脂基材用接着剤を塗布して乾燥させることで、0.5μm〜3μm厚さの半硬化樹脂層を形成する工程。
工程D−3: 工程C−3でフッ素樹脂基材表面に設けた半硬化樹脂層の表面に金属箔を積層して熱間プレス成形することで金属張積層板とする工程。
【0035】
以上に述べてきた金属張積層板の製造方法において、前記活性化処理は、粗化処理、プラズマ処理、又はこれらを組み合わせた複合処理のいずれかを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0036】
本件発明に係るフッ素樹脂基材接着用樹脂組成物は、フッ素樹脂基材に対し無粗化の金属箔を張り合わせる場合の接着層の形成に適したものであり、フッ素樹脂基材と無粗化の金属箔との密着性を顕著に向上させ、ヒートショックを受けたときの回路のデラミネーション現象等を効果的に防止できる。そして、このフッ素樹脂基材接着用樹脂組成物で接着層を形成しようとする場合には、当該フッ素樹脂基板用樹脂組成物に有機溶剤を添加して、層形成に適し且つ最適なレジンフローを得ることのできる樹脂固形分量に調製しフッ素樹脂基材用接着剤として使用できる。
【0037】
そして、上記フッ素樹脂基板用樹脂接着剤を用いて金属箔の表面に接着層を形成することも容易であり、フッ素樹脂基材用の接着層付金属箔の提供が可能となる。このとき、当該接着層の厚さを0.5μm〜3μmの半硬化樹脂層とすることで、フッ素樹脂基材に対し最も良好な密着性を得ることが出来る。そして、このときの金属箔には、種々の無粗化の金属箔の使用が可能であり、プリント配線板用途に限らず、広く使用可能である。
【0038】
以上のフッ素樹脂基材接着用樹脂組成物、フッ素樹脂基板用樹脂接着剤、フッ素樹脂基材用の接着層付金属箔を用いることで、フッ素樹脂基材と金属層との密着性に優れた金属張積層板の提供が可能となる。従って、この金属張積層板を用いることで、高品質のプリント配線板の提供が可能となる。
【0039】
更に、本件発明に係る金属張積層板の製造方法は、上記接着層が介在するために、熱間プレス加工する際のプレス温度が低温化でき、製造コストを安価に出来る。しかも、予めフッ素樹脂基材の金属箔の張り合わせ面に活性化処理を施すことで、フッ素樹脂基材と金属層との密着性をより安定的に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本件発明に関する実施の形態に関して説明する。説明にあたっては、各項目に分別して説明する。
【0041】
フッ素樹脂基材接着用樹脂組成物の形態: 本件発明に係るフッ素樹脂基材接着用樹脂組成物は、(1)溶剤に可溶で且つ官能基として分子内に水酸基、カルボキシル基、アミノ基の1種又は2種以上を有するポリマー成分を2重量部〜50重量部、(2)沸点200℃以上のエポキシ樹脂及び沸点200℃以上のアミン系エポキシ樹脂硬化剤からなるエポキシ樹脂配合物を50重量部以上、を含有することを特徴とする。ここでは、前記ポリマー成分とエポキシ樹脂配合物との合計を100重量部とした場合である。
【0042】
ここで「溶剤に可溶であり官能基として分子内に水酸基、カルボキシル基、アミノ基の1種又は2種以上を有するポリマー成分」(以下、単に「ポリマー成分」と称する。)とは、ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂の群から選ばれた1種又は2種以上を混合したものであることが好ましい。ここで言うポリマー成分には、まず溶剤に可溶であるという性質が求められる。可能でなければ、溶剤を用いての固形分調整等が困難となる。そして、このポリマー成分が2重量部未満の場合には、銅張積層板のプレス成形後の硬度が高く、脆くなるため靱性が得られない。一方、このポリマー成分が50重量部を超える場合には、耐熱性が低くなり、銅張積層板のプレス成形温度に耐えられなくなり、樹脂劣化を引き起こす。そして、より好ましくは、当該ポリマー成分は2重量部〜30重量部とする。硬化後の樹脂としての耐熱性及びフレキシビリティが最も良好となる。
【0043】
「沸点200℃以上のエポキシ樹脂」とは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ゴム変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂の群から選ばれる一種又は2種以上を混合して用いることが好ましい。線形(2官能)のエポキシ樹脂を用いることでフッ素樹脂基材と金属箔との間での密着性を高くする事が出来る。従って、この樹脂組成物の主体をなす「沸点200℃以上のエポキシ樹脂」と「沸点200℃以上のアミン系エポキシ樹脂硬化剤」との合計をエポキシ樹脂配合物といい、これが50重量部以上となる事が好ましい。そして、より好ましくは50重量部〜80重量部の配合割合で用いられる。従って、当該エポキシ樹脂配合物が50重量部未満の場合には、フッ素樹脂基材と金属箔との密着性を十分に向上させ得ず、80重量部を越えると樹脂溶液としたとき流動性が高くなり、後述するレジンフローの範囲を維持できなくなる。
【0044】
そして、エポキシ樹脂硬化剤としては、単に硬化させることのみを目的とすれば、ジシアンジアミド、イミダゾール類、芳香族アミン等のアミン類、ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールA等のフェノール類、フェノールノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂等のノボラック類、無水フタル酸等の酸無水物等のあらゆる硬化剤を用いることができる。しかしながら、沸点200℃以上のアミン系エポキシ樹脂硬化剤を用いることが、フッ素樹脂基材と金属箔との密着性を顕著に向上させるという観点から最も好ましい。プレス成形温度が180℃付近であり、このプレス成形温度付近に硬化剤の沸点があると、プレス成形によりエポキシ樹脂硬化剤が沸騰するため硬化した絶縁樹脂層内に気泡が発生しやすくなる。そして、フッ素樹脂基材と金属箔との間に接着層を構成するのにアミン系エポキシ樹脂硬化剤を用いると最も安定した密着性が得られる。即ち、「沸点200℃以上のアミン系エポキシ樹脂硬化剤」とは、芳香族ポリアミン、ポリアミド類及びこれらをエポキシ樹脂や多価カルボン酸と重合或いは縮合させて得られるアミンアダクト体の群から選ばれた一種又は二種以上を用いる場合を言う。そして、これをより具体的に言えば、4,4’−ジアミノジフェニレンサルフォン、3,3’−ジアミノジフェニレンサルフォン、4,4−ジアミノジフェニレル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]サルフォンのいずれかを用いることが好ましい。また、当該アミン系エポキシ樹脂硬化剤のエポキシ樹脂に対する添加量は、それぞれの当量から自ずと導き出されるものであるため、本来厳密にその配合割合を明記する必要性はないものと考える。従って、本件発明では、硬化剤の添加量を特に限定していない。
【0045】
また、必要に応じて適宜量添加する硬化促進剤を用いることも好ましい。ここで言う硬化促進剤とは、3級アミン、イミダゾール、尿素系硬化促進剤等である。本件発明では、この硬化促進剤の配合割合は、特に限定を設けていない。なぜなら、硬化促進剤は、プレス加工時の加熱条件等を考慮して、製造者が任意に選択的に添加量を定めて良いものであるからである。
【0046】
そして、本件発明に言う樹脂組成物にはゴム性樹脂を添加することも好ましい。ここで言うゴム性樹脂とは、天然ゴム及び合成ゴムを含む概念として記載しており、後者の合成ゴムにはスチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム等がある。更に、耐熱性を要求される場合には、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム等の耐熱性合成ゴムを選択使用することも有用である。これらのゴム性樹脂に関しては、上記ポリマー成分と反応して共重合体を形成するように、両末端に種々の官能基を備えるものであることが望ましい。
【0047】
更に、上記高分子ポリマーの架橋剤を必要に応じて添加して用いることも好ましい。例えば、上記高分子ポリマーとして、ポリビニルアセタール樹脂を用いる場合には、ウレタン樹脂を架橋材として用いる等である。
【0048】
以上に述べてきた樹脂組成物の構成成分を全て含むとすれば、樹脂組成物を100重量部としたとき、エポキシ樹脂が50重量部〜80重量部、硬化剤が1重量部〜15重量部、硬化促進剤が0.01重量部〜1.0重量部、ポリマー成分が2重量部〜50重量部、架橋剤が1重量部〜5重量部、ゴム性樹脂が1重量部〜10重量部の範囲の組成を採用することが好ましい。この組成範囲に含まれる限り、フッ素樹脂基材と金属箔との良好な密着性を維持し、且つ、製品の密着性のバラツキが少なくなる。
【0049】
フッ素樹脂基材用接着剤の形態: 一般的に、上記フッ素樹脂基材接着用樹脂組成物は、そのままの状態で接着層の形成に用いることは困難である。そこで、上記フッ素樹脂基材接着用樹脂組成物に有機溶剤を添加して混合するしてフッ素樹脂基材用接着剤として用いる。かかる場合、樹脂固形分10wt%〜40wt%に調製する事が好ましい。樹脂固形分が10wt%未満の場合には、粘度が低すぎて、接着層を形成するための樹脂膜を形成しても塗布直後に流れて膜厚均一性を確保しにくい。これに対し、樹脂固形分が40wt%を越えると、粘度が高く、薄い樹脂膜の形成が困難となる。
【0050】
このときの有機溶剤として、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンのいずれか1種の溶剤又はこれらの混合溶剤を用いることが好ましい。ここで言う溶剤は、上記樹脂組成物の溶解可能なものを選択している。しかし、溶剤としてメチルエチルケトン及び/又はシクロペンタノンを用いると、金属積層板の製造のプレス加工時の熱により効率よく揮発除去することが容易であり、且つ、揮発ガスの浄化処理も容易で、しかも、樹脂膜形成に適した樹脂溶液粘度の調節が容易である。そして、メチルエチルケトンとシクロペンタノンとの混合溶剤の場合、その混合割合にも特に限定はないが、シクロペンタノンに対しメチルエチルケトンを共存溶媒とすると、揮発除去の速度が速くなり好ましい。
【0051】
しかし、上記メチルエチルケトンやシクロペンタノン等での溶解が困難なポリマー成分の場合には、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を溶媒として用いる。特に、これらの溶媒を複数種混合した溶媒を用いると、得られる樹脂溶液の品質安定性の長期確保が可能となる傾向にある。かかる溶媒を用いる場合も、樹脂溶液の樹脂固形分は、同様の理由で上記10wt%〜40wt%とする事が好ましい。
【0052】
接着層付金属箔の形態: 本件発明に係る接着層付金属箔は、図1に示すように、金属箔2の表面に基材に対する接着層3を備えた接着層付金属箔4であって、当該接着層を上記フッ素樹脂基板用樹脂接着剤を用いて形成したものである。この形成方法に関しては、後述する。
【0053】
そして、本件発明に係る接着層付金属箔において、前記接着層は、厚さ0.5μm〜3μmの半硬化樹脂層である。ここで、半硬化樹脂層でなければ、熱間プレス加工により再流動化しないため、フッ素樹脂基材と金属箔との張り合わせが出来ないことになる。このように薄樹脂層を形成することとしたのは、プレス加工時に以下に述べるレジンフローが殆ど起こらない状態を確実に作り出すためである。この接着層の厚さが0.5μm未満となると、厚さを均一に作り込むことも困難で、フッ素樹脂基材と金属箔との間で均一な厚さの樹脂層として残すことが困難で、ワークサイズの1枚の金属張積層板の面内において、引き剥がし強さのバラツキが大きくなる。これに対し、当該接着層の厚さが3μmを超えると、フッ素樹脂基材の持つ良好な電気特性を劣化させる。なお、この接着層の厚さは、1mあたりの完全平面に樹脂を塗布したと考えたときの換算厚さである。
【0054】
また、本件発明に係る接着層付金属箔において、前記接着層付金属箔の接着層は、MIL規格におけるMIL−P−13949Gに準拠して測定したときのレジンフローが5%以内という特性を備えることが好ましい。このレジンフローが5%以内でなければ、フッ素樹脂基材と金属箔との良好な密着性を得ることが出来ないのである。なお、下限に関して特に規定していないが、1%程度である。レジンフローに関しては、接着層の厚さ、接着層を形成する際に用いたフッ素樹脂基板用樹脂接着剤の樹脂固形分量等が特性を決める要因となるが、上記樹脂組成物の本来持つレジンフローが重要であることは当然である。通常、金属箔とフッ素樹脂基材との張り合わせを行う場合、その界面にエアーの噛み混み等を起こす場合もある。そこで、銅張積層板を製造する場合を例にとれば、このエアー抜きを兼ねて1mサイズの銅張積層板で端部から5mm〜15mm程度のレジンフローを意図的に起こさせる。ところが、本件発明で用いる接着層の場合には、このレジンフローが殆ど起こらないことが、フッ素樹脂基材と金属箔との良好な密着性を確保する上で重要な要因となる。
【0055】
本件明細書において、レジンフローはMIL規格のMIL−P−13949Gに準拠して測定したときの値で判断している。即ち、レジンフローの測定精度を確保するため、上記接着層を40μm厚さで電解銅箔の表面に意図的に形成し、10cm角試料を4枚製造する。そして、この4枚の10cm角試料を重ねた状態でプレス温度171℃、プレス圧14kgf/cm、プレス時間10分の条件で張り合わせ、そのときのレジンフロ−を数1に従って計算して求めた。なお、通常のプリプレグを用いたとき及び通常の樹脂付銅箔(40μm厚さ樹脂層)のレジンフローは、20%前後である。
【0056】
【数1】

【0057】
更に、本件発明に係る接着層付金属箔において、前記金属箔は、銅箔、ニッケル箔、スズ箔、金箔、銀箔、白金箔、鉄箔、コバルト箔、銅合金箔、ニッケル合金箔、スズ合金箔、金合金箔、銀合金箔、白金合金箔、鉄合金箔、コバルト合金箔のいずれかを用いることが好ましい。即ち、電子材料用途に使用可能な全ての金属箔という概念で記載している。そして、前記金属箔の全ては、その製造方法を問わず、電解法で得られたものでも、圧延法で得られたものでも、物理蒸着法で得られたものでも構わない。また、その厚さに関しても特段の限定はない。
【0058】
しかし、上記金属箔の表面に対し、防錆処理、シランカップリング剤処理等を施すことで、より密着性を向上させることも可能である。従って、本件発明で用いる金属箔とは、粗化処理を省略したものを対象にしている。しかし、仮に粗化処理を施した金属箔を使用することに、何ら問題はない。なお、粗化処理とは、金属箔の表面に微細な金属粒を付着形成したり、金属箔表面を化学的に処理して凹凸形状を形成したりするものであり、その手法に関しては問わない。特に、一般的に広く知られた粗化処理は、電解銅箔及び圧延銅箔に施す微細銅粒を付着形成させて行う粗化処理である。
【0059】
ここで言う防錆処理とは、フッ素樹脂基材の種類に応じて適宜選択して用いるものであり特段の限定はない。防錆処理としては、ベンゾトリアゾール、イミダゾール等を用いる有機防錆、若しくは亜鉛、クロメート、亜鉛合金、ニッケル合金等を用いる無機防錆のいずれを採用しても良い。有機防錆の場合は、有機防錆剤を浸漬塗布、シャワーリング塗布、電着する等の手法を採用できる。無機防錆の場合は、電解で防錆元素を銅箔の表面上に析出させる方法、その他いわゆる置換析出法等を用いることが可能である。なお、図面中では、防錆処理層は特に記載せず省略している。
【0060】
そして、シランカップリング剤処理は、アミノ系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤のいずれか一種又は二種以上を用いて行うものが一般的である。シランカップリング剤処理は、シランカップリング剤として最も一般的なエポキシ官能性シランカップリング剤を始めオレフィン官能性シラン、アクリル官能性シラン等種々のものを用いるのが可能である。しかし、アミノ官能性シランカップリング剤又はメルカプト官能性シランカップリング剤を用いると、フッ素樹脂基材と金属箔との密着性をより高めることが可能で特に好ましい。プリント配線板の回路の引き剥がし強度は、従来から高いほどよいと言われた。ところが、近年は、エッチング技術の精度の向上によりエッチング時の回路剥離は無くなり、プリント配線板業界におけるプリント配線板の取り扱い方法が確立され、回路を誤って引っかけて起こる断線剥離の問題も解消されてきた。そのため、近年は少なくとも0.8kgf/cm以上の引き剥がし強度があれば、現実の使用が可能といわれ、1.0kgf/cm以上あれば何ら問題ないと言われる。
【0061】
これらシランカップリング剤を、より具体的に明示しておくことにする。プリント配線板用にプリプレグのガラスクロスに用いられると同様のカップリング剤を中心にビニルトリメトキシシラン、ビニルフェニルトリメトキシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、4−グリシジルブチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−3−(4−(3−アミノプロポキシ)プトキシ)プロピル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を用いることが可能である。
【0062】
そして、シランカップリング剤処理の方法は、一般的に用いられる浸漬法、シャワーリング法、噴霧法等、特に方法は限定されない。工程設計に合わせて、最も均一に金属箔とシランカップリング剤を含んだ溶液とを接触させ吸着させることのできる方法を任意に採用すれば良い。シランカップリング剤は、溶媒としての水に0.5〜10g/l溶解させて、室温レベルの温度で用いるものである。シランカップリング剤濃度が0.5g/lを下回る場合は、シランカップリング剤の吸着速度が遅く、一般的な商業ベースの採算に合わず、吸着も不均一なものとなる。また、10g/lを超える濃度であっても、特に吸着速度が速くなることもなく不経済となる。なお、図面中では、シランカップリング剤処理層は特に記載せず省略している。
【0063】
金属張積層板の形態: 本件発明に係る金属張積層板は、フッ素樹脂基材の表面に接着層を介して金属層を張り合わせて得られる金属張積層板であって、前記接着層が上記樹脂組成物を含むことを特徴としたものである。また、前記接着層が前記フッ素樹脂基材用接着剤を用いて形成したことを特徴としたものである。本件発明に係る金属張積層板の断面構成を図2に示す。図2(a)には片面金属張積層板1aを、図2(b)には両面金属張積層板1bを、図2(c)には内層回路9を内部に備える4層金属張積層板1cを示している。従って、本件発明に係る金属張積層板とは、その層構成には関係なく、外層に金属箔2が張り合わせられた状態のものであって、その内層にフッ素樹脂基材層5を備え、金属箔2とフッ素樹脂基材層5との間に接着層3を備えた構成の積層体を言う。
【0064】
ここで、図2(c)には内層回路9を内部に備える4層金属張積層板1cの製造方法に関して簡単に述べておく。例えば、図2(b)に示す両面金属張積層板1bの両面の金属層をエッチング加工して回路20を形成して両面プリント配線板21とする。そして、2枚の両面プリント配線板21、FR−4等のプリプレグ22等を用いて、図3に示すように積層し、熱間プレス加工することで4層金属張積層板1cが得られる。また、2枚の両面プリント配線板21と、両面に本件発明に係るフッ素樹脂材料接着剤を用いた接着層3を備えるフッ素樹脂基材5とを用いて、図4に示すように積層し、熱間プレス加工することで4層金属張積層板1cが得られる。
【0065】
そして、ここで言うフッ素樹脂基材とは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化))、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化))、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド(2フッ化))、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン(3フッ化))、その他特許文献3に開示されたようなポリアリルスルフォン、芳香族ポリスルフィドおよび芳香族ポリエーテルの中から選ばれるいずれか少なくとも1種の熱可塑性樹脂とフッ素樹脂とからなるフッ素系樹脂等を用いた基材であり、ガラスクロス等の骨格材を含んでも含まなくとも構わない。また、このフッ素樹脂基材の厚さに関しても、特段の限定はない。
【0066】
プリント配線板の形態: 本件発明に係るプリント配線板は、上記金属張積層板の金属箔をエッチング加工することにより得られるものである。このときのエッチングプロセスは、特に限定されないが、金属箔の表面にエッチングレジスト層を設け、エッチングパターンを露光、現像し、レジストパターンを形成し、金属箔の構成金属成分を溶解可能なエッチング液で回路エッチングを行うのが一般的である。
【0067】
金属張積層板の製造方法の形態: 本件発明に係る金属張積層板の第1製造方法に関して説明する。以下、工程A−1〜工程C−1を順次説明する。
【0068】
工程A−1: この工程では、フッ素樹脂基材の金属箔の張り合わせ面に活性化処理を施す。ここで言う活性化処理とは、フッ素樹脂基材と接着層との密着性を向上させ、結果としてフッ素樹脂基材表面に対する金属箔の密着性を向上させるために行うものである。この活性化処理を具体的に言えば、粗化処理、プラズマ処理、又はこれらを組み合わせた複合処理の事である。このフッ素樹脂基材の粗化処理とは、湿式又は乾式のブラスト法、湿式エッチング法、ドライエッチング法等を使用できる。特に、化学的手法を用いて行う湿式エッチング粗化処理で、ナトリウムエッチングと称される手法が多く採用される。そして、この粗化処理によって形成される粗化面は、平均粗さ(Ra)が20nm〜100nmとする事が好ましい。この平均粗さ(Ra)が20nm未満の場合には、フッ素樹脂基材と接着層との密着性を向上させ得ない。一方、平均粗さ(Ra)が100nmを超えても、粗化によるフッ素樹脂基材と接着層との密着性向上効果は、それ以上に上昇しない。
【0069】
そして、プラズマ処理とは、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスでプラズマ気流を生成し、そのプラズマ気流に、フッ素樹脂基材の表面を接触させる処理のことである。前記不活性ガスを、減圧し雰囲気に導入し、平板型の一対の電極を平行に配置して、その電極間に電圧を印加してプラズマ気流を発生させ、そのプラズマ気流中にフッ素樹脂基板を入れて一定時間処理する。または、高周波電極等の間にプラズマ気流を発生させ、そのプラズマ気流中にフッ素樹脂基板を入れて一定時間処理する。このときのプラズマ処理条件に特段の限定はないが、投入電力(W)と電極面積(cm)とから算出される電力密度(W/cm)が0.05W/cm〜1W/cmとすると30秒〜1分程度の処理時間を採用する。このプラズマ処理時間は、いたずらに長くしてもフッ素樹脂基材と金属箔との密着性を顕著に向上させることにはならないからである。
【0070】
また、上記粗化処理とプラズマ処理とを組み合わせた複合処理を行う場合には、いずれの処理を最初に行っても構わない。図5(a)に、活性化処理したフッ素樹脂基材5を概念的に示した。
【0071】
工程B−1: この工程では、フッ素樹脂基材用接着剤を調製し、このフッ素樹脂基材用接着剤を金属箔の表面に塗布して乾燥することで、金属箔の表面に0.5μm〜3μm厚さの半硬化樹脂層を形成することで接着層付金属箔を製造する。フッ素樹脂基材用接着剤の調製に関しては上述のとおりである。
【0072】
そして、このフッ素樹脂基材用接着剤を金属箔2の表面に塗布して乾燥することで、金属箔2の表面に0.5μm〜3μm厚さの半硬化樹脂層(図面中は、単に「接着層3」として示す。)を形成することで、図5(b)に示す接着層付金属箔4を製造する。
【0073】
工程C−1: この工程では、図5(c)に示すように、工程A−1でフッ素樹脂基材の活性化処理を施した張り合わせ面に対し、工程B−1で得られた接着層付金属箔4の接着層3を当接させて積層し、熱間プレス成形することで図5(d)に示す金属張積層板1aを得る。このときの熱間プレス加工条件に関しては、特段の限定はない。しかし、本件発明に係る製造方法の場合、従来のフッ素樹脂基材を用いたプレス加工には260℃〜400℃程度のプレス温度が採用されてきたが、200℃前後(190℃〜220℃)の低温でのプレス加工が可能である。従って、プレス加工に要する熱エネルギーが低く、製造コストを安価にすることが可能となる利点がある。以下、同様である。
【0074】
また、本件発明に係る金属張積層板の第2製造方法は、以下の工程A−2〜工程C−2を経ることを特徴とするものである。
【0075】
工程A−2: この工程では、フッ素樹脂基材の金属箔の張り合わせ面に活性化処理を施すのであり、上記第1製造方法の場合と同様である。従って、説明を省略する。図6(a)に、活性化処理したフッ素樹脂基材5を概念的に示した。
【0076】
工程B−2: この工程は、上述の方法でフッ素樹脂基材用接着剤を調製し、このフッ素樹脂基材用接着剤を離型性プラスチックフィルム7の表面に塗布して乾燥することで、図6(b)に示すように、当該離型性プラスチックフィルムと厚さ0.5μm〜3μmの半硬化樹脂層(図面中は、単に「接着層3」として示す。)が積層状態にある離型性プラスチックフィルム付接着層8を製造する。
【0077】
ここで、離型性プラスチックフィルムとは、剥離性を備えるフィルムを選択的に用いる意味で使用しており、その材質及び厚さ等に関しての特段の限定はない。具体的には、PETフィルム、熱可塑性フッ素樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム等を用いることが好ましい。そして、このときの離型性プラスチックフィルムへのフッ素樹脂基材用接着剤の塗布方法に関しては、特段の限定はなく、エッジコータ、コンマコータ、グラビアコータ等を使用できる。
【0078】
工程C−2: この工程では、フッ素樹脂基材5の活性化処理を施した張り合わせ面に対し、図6(c)に示すように離型性プラスチックフィルム付接着層8の半硬化樹脂層(図面中は、単に「接着層3」として示す。)を当接させ重ね合わせて仮接着し、離型性プラスチックフィルム7を剥離除去する。
【0079】
工程D−2: この工程では、工程C−2でフッ素樹脂基材表面に設けた半硬化樹脂層の表面に、図6(d)に示すように金属箔2を積層して熱間プレス成形することで、図6(e)に示す金属張積層板1aとする。
【0080】
そして、本件発明に係る金属張積層板の第3製造方法は、以下の工程A−3〜工程C−3を経ることを特徴とする。
【0081】
工程A−3: この工程では、フッ素樹脂基材の金属箔の張り合わせ面に活性化処理を施すのであり、上記第1製造方法の場合と同様である。従って、説明を省略する。図7(a)に、活性化処理したフッ素樹脂基材5を概念的に示した。
【0082】
工程B−3: この工程では、フッ素樹脂基材用接着剤を調製する。従って、この調整に関しての説明は上述したとおりであるので、ここでの重複した説明は省略する。
【0083】
工程C−3: この工程では、フッ素樹脂基材5の活性化処理した表面に、工程Bで調製したフッ素樹脂基材用接着剤を塗布して乾燥させることで、図7(b)に示すように、0.5μm〜3μm厚さの半硬化樹脂層(図面中は、単に「接着層3」として示す。)を形成する。このときのフッ素樹脂基材用接着剤の塗布方法に関しては、特段の限定はなく、エッジコータ、コンマコータ、グラビアコータ等を使用できる。
【0084】
工程D−3: この工程では、工程C−3でフッ素樹脂基材5の表面に設けた半硬化樹脂層(図面中は、単に「接着層3」として示す。)の表面に金属箔2を積層して熱間プレス成形することで図7(c)に示す金属張積層板1aとする。
【0085】
以上に述べてきた金属張積層板の製造方法の説明では、片面金属張積層板のみを例示して説明してきたが、当業者であれば同じ技術的思想の基、容易に両面銅張積層板、多層銅張積層板を製造することが可能である。
【実施例1】
【0086】
本実施例においては、第1製造方法を用いて、銅張積層板を製造し、銅箔の引き剥がし強さの測定を行った。以下、工程毎に説明する。
【0087】
工程A−1: この工程では、0.6mm厚さのPTFEフッ素樹脂基材(淀川ヒューテック株式会社製)の金属箔の張り合わせ面に活性化処理を施した。この活性化処理は、金属ナトリウム処理、プラズマ処理、金属ナトリウム処理とプラズマ処理とを順次行った複合処理の3種類を行い。3種類のフッ素樹脂基材、試料1、試料2、試料3を製造した。
【0088】
このときの金属ナトリウム処理は、金属ナトリウムやナトリウム錯体の作用によりフッ素樹脂基材の表面からフッ素原子を引き抜き、その表面に水酸基やカルボニル基、カルボキシル基を生成させることでフッ素樹脂基材表面の活性化を図るものであり、ここでは株式会社潤工社製のテトラエッチ処理液を用いて行った。
【0089】
そして、プラズマ処理は、真空チャンバー内に、一対の板状電極を平行に離間配置し、真空度が1×10−3Paオーダーまで排気して、真空チャンバー内に窒素ガスをスローリークし、真空度が0.2Paになるように調整し、電力密度0.12W/cmで低温プラズマ気流を発生させた。そして、この低温プラズマ気流中に、フッ素樹脂基材を1分間入れることでプラズマ処理を行った。
【0090】
また、金属ナトリウム処理とプラズマ処理とを順次行った複合処理は、上記条件の金属ナトリウム処理とプラズマ処理とを順次行った。
【0091】
以上の活性化処理を行って、図5(a)に模式的に示す活性化処理したフッ素樹脂基材5を得た。
【0092】
工程B−1: ここでは、エポキシ樹脂69重量部、硬化剤11重量部、硬化促進剤0.25重量部、ポリマー成分15重量部、架橋剤3重量部、ゴム性樹脂3重量部のフッ素樹脂基材接着用樹脂組成物を調整した。具体的には、以下の表1に示している。
【0093】
【表1】

【0094】
そして、表1に示す樹脂組成物を、メチルエチルケトンとジメチルアセトアミドとを用いて樹脂固形分を30重量%に調整ですることでフッ素樹脂基材用接着剤とした。そして、このフッ素樹脂基材用接着剤を、グラビアコーターを用いて、無粗化の電解銅箔(厚さ:18μm、防錆処理層:亜鉛−ニッケル合金層、シランカップリング剤処理:γ−アミノプロピルトリエトキシシラン)の張り合わせ面に塗布した。そして、5分間の風乾を行い、その後140℃の加熱雰囲気中で3分間の乾燥処理を行い、半硬化状態の1.5μm厚さの半硬化樹脂層(接着層)を形成し、図5(b)に示す接着層付金属箔4を製造した。
【0095】
このときに得られた半硬化樹脂層(接着層)のレジンフローの測定は、上記フッ素樹脂基材用接着剤で40μm厚さの半硬化樹脂層を18μm厚さの銅箔の片面に設けたものを製造し、これをレジンフロー測定用試料とした。そして、このレジンフロー測定用試料から10cm角試料を4枚採取し、上述したMIL−P−13949Gに準拠してレジンフローの測定を行った。その結果、レジンフローは1.5%であった。
【0096】
工程C−1: この工程では、図5(c)に示すように、工程A−1で得られた3つの試料(試料1、試料2、試料3)のフッ素樹脂基材の活性化処理を施した張り合わせ面に対し、工程B−1で得られた接着層付金属箔4の接着層3を当接させて積層し、200℃×60分、32kgf/cmの圧力で熱間プレス成形することで、図5(d)に示す3種(CL1−1、CL1−2、CL1−3)の金属張積層板1aを得た。
【0097】
引き剥がし強さ測定用試料の製造: 上記金属張積層板1a(CL1−1、CL1−2、CL1−3)の銅箔層に、ドライフィルムを用いてエッチングレジスト層形成し、このエッチングレジスト層に引き剥がし強さ測定用の直線回路を形成するためのエッチングパターンを露光、現像し、レジストパターンを形成し、金属箔の構成金属成分を銅エッチング液で回路エッチングを行い、レジスト剥離することにより、引き剥がし強さ測定用回路の形成を行った。なお、0.2mm幅の直線回路を常態及び耐塩酸性測定用として用い、0.8mm幅の直線回路を耐湿性測定用として用いる。
【0098】
そして、フッ素樹脂基材と銅箔回路との引き剥がし強さ測定を行った。この結果に関しては表2に示す。本件明細書に言う引き剥がし強さとは、基材から銅箔回路を90°方向(基板に対して垂直方向)に引き剥がしたときの強度のことである。その中で、常態の引き剥がし強さとは、上述のエッチングして回路を製造した直後、何ら処理を行うことなく測定した引き剥がし強さである。そして、加熱後の引き剥がし強さとは、260℃の半田バスに20秒間フローティングさせた後に、室温まで冷まして、測定した引き剥がし強さである。
【0099】
そして、耐塩酸性劣化率は、試験用回路を作成し、直ぐに測定した常態引き剥がし強さから、各表中に記載した塩酸処理後(塩酸:水=1:1に室温で60分間浸漬後。)にどの程度の引き剥がし強さの劣化が生じているかを示すものであり、[耐塩酸性劣化率(%)]= ([常態引き剥がし強さ]−[塩酸処理後の引き剥がし強さ])/[常態引き剥がし強さ]×100の計算式で算出したものである。
【0100】
また、耐湿性劣化率は、試験用回路を作成し、直ぐに測定した常態引き剥がし強さから、各表中に記載した吸湿処理後(沸騰したイオン交換水中で2時間保持後)にどの程度の引き剥がし強さの劣化が生じているかを示すものであり、[耐湿性劣化率(%)]= ([常態引き剥がし強さ]−[吸湿処理後の引き剥がし強さ])/[常態引き剥がし強さ]×100の計算式で算出したものである。従って、これらの劣化率が小さな値であるほど、フッ素樹脂基材と銅箔回路との優れた密着性を有することになる。
【0101】
【表2】

【実施例2】
【0102】
本実施例においては、第2製造方法を用いて、銅張積層板を製造し、銅箔の引き剥がし強さの測定を行った。以下、工程毎に説明する。
【0103】
工程A−2: この工程は、実施例1と同様であるため省略する。従って、ここでも3種類のフッ素樹脂基材、試料1、試料2、試料3を製造した。図6(a)に、活性化処理したフッ素樹脂基材5を概念的に示した。
【0104】
工程B−2: この工程は、実施例1で調整したと同様のフッ素樹脂基材用接着剤を用いて、このフッ素樹脂基材用接着剤を離型性プラスチックフィルム7としてPETフィルムを用いて、その表面にグラビアコータを用いて塗布し、5分間の風乾を行い、その後140℃の加熱雰囲気中で3分間の乾燥処理することで、図6(b)に示すように、当該離型性プラスチックフィルムと1.5μmの半硬化樹脂層(図面中は、単に「接着層3」として示す。)が積層状態にある離型性プラスチックフィルム付接着層8を製造した。
【0105】
工程C−2: この工程では、フッ素樹脂基材5の活性化処理を施した張り合わせ面に対し、図6(c)に示すように離型性プラスチックフィルム付接着層8の半硬化樹脂層(図面中は、単に「接着層3」として示す。)を当接させ重ね合わせ、緩やかな加圧を行うことで仮接着し、離型性プラスチックフィルム7を剥離除去した。
【0106】
工程D−2: この工程では、工程C−2でフッ素樹脂基材表面に設けた半硬化樹脂層の表面に、実施例1で用いたと同様の無粗化の銅箔(金属箔)2を、図6(d)に示すように積層して、200℃×60分、32kgf/cmの圧力で熱間プレス成形することで、図6(e)に示す層構成の3種(CL2−1、CL2−2、CL2−3)の金属張積層板1aとした。
【0107】
以下、実施例1と同様にして引き剥がし強さ測定用試料を製造し、フッ素樹脂基材と銅箔回路との引き剥がし強さ測定を行った。この結果に関しては表3に示す。
【0108】
【表3】

【実施例3】
【0109】
本実施例においては、第3製造方法を用いて、銅張積層板を製造し、銅箔の引き剥がし強さの測定を行った。以下、工程毎に説明する。
【0110】
工程A−3: この工程は、実施例1と同様であるため省略する。従って、ここでも3種類のフッ素樹脂基材、試料1、試料2、試料3を製造した。図7(a)に、活性化処理したフッ素樹脂基材5を概念的に示した。
【0111】
工程B−3: この工程では、実施例1で調整したと同様のフッ素樹脂基材用接着剤を調整した。
【0112】
工程C−3: この工程では、フッ素樹脂基材5の活性化処理した表面に、工程B−3で調製したフッ素樹脂基材用接着剤を塗布し、5分間の風乾を行い、その後140℃の加熱雰囲気中で3分間の乾燥処理することで、図7(b)に示すように、1.5μm厚さの半硬化樹脂層(図面中は、単に「接着層3」として示す。)を形成した。このときのフッ素樹脂基材用接着剤の塗布は、エッジコータを用いて行った。
【0113】
工程D−3: ここでは、工程C−3でフッ素樹脂基材5の表面に設けた半硬化樹脂層(図面中は、単に「接着層3」として示す。)の表面に、18μm厚さの実施例1で用いたと同じ銅箔(金属箔)2を積層して、200℃×60分、32kgf/cmの圧力で熱間プレス成形することで、図7(c)に示す層構成の3種(CL3−1、CL3−2、CL3−3)の金属張積層板1aとした。
【0114】
以下、実施例1と同様にして引き剥がし強さ測定用試料を製造し、フッ素樹脂基材と銅箔回路との引き剥がし強さ測定を行った。この結果に関しては表4に示す。
【0115】
【表4】

【0116】
以上に述べてきた実施例を見るに、全ての実施態様において、無粗化の金属箔を用いているが常態引き剥がし強さ及び加熱後引き剥がし強さの全てが、1.0kgf/cmを超えている。これは、従来のフッ素樹脂基材と金属箔との引き剥がし強さが、0.8kgf/cm前後であることを考えれば、飛躍的に高くなっていると言える。
【0117】
そして、全ての実施態様において、耐塩酸性劣化率は5%以内であり、耐湿性劣化率は10%以内に収まっている。これは、従来のフッ素樹脂プリント配線板の場合、耐塩酸性劣化率が10%前後、耐湿性劣化率は15%以上であることを考えれば、無粗化の金属箔を用いた場合でも飛躍的にフッ素樹脂基材と金属箔との密着性が向上していると言える。
【産業上の利用可能性】
【0118】
以上述べてきた本件発明に係る内容をもってすると、無粗化の金属箔とフッ素樹脂基材とが非常に高い密着性示し、ヒートショックを受けたときの回路のデラミネーション現象等を効果的に防止できフッ素樹脂銅張積層板及びフッ素樹脂プリント配線板の提供が可能となる。しかも、無粗化の金属箔を使用できるため、エッチング法で回路形成を行う場合にも、ファインピッチパターンの形成が容易となる。従って、低誘電損失且つ低誘電率であるという誘電特性、クロストーク特性等に関する良好な高周波特性、その他耐熱性、耐久性を備え、回路と基材との密着性に優れ、且つ、ファインピッチパターンを備える高品質のフッ素樹脂プリント配線板を市場に安価に供給できるようになる。また、本件発明に係る金属張積層板の製造方法は、新たな装置を必要とするものでもなく、従来の設備の使用が可能であり、低温でのプレス加工が可能であるため製造コストが安価である。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本件発明に係る接着層付金属箔の層構成を示す模式断面図である。
【図2】本件発明に係る金属張積層板の層構成のバリエーションの一例を示す模式断面図である。
【図3】多層プリント配線板製造のイメージを示す模式図である。
【図4】多層プリント配線板製造のイメージを示す模式図である。
【図5】本件発明に係る金属張積層板の製造プロセスを説明するためのフロー図である。
【図6】本件発明に係る金属張積層板の製造プロセスを説明するためのフロー図である。
【図7】本件発明に係る金属張積層板の製造プロセスを説明するためのフロー図である。
【符号の説明】
【0120】
1a,1b,1c 金属張積層板
2 金属箔
3 接着層
4 接着層付金属箔
5 フッ素樹脂基材層
7 離型性プラスチックフィルム
8 離型性プラスチックフィルム付接着層
9 内層回路
20 回路
21 両面プリント配線板
22 プリプレグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂基材に対し金属箔を張り合わせるための接着層を形成するための樹脂組成物において、
当該樹脂組成物は、溶剤に可溶で且つ官能基として分子内に水酸基、カルボキシル基、アミノ基の1種又は2種以上を有するポリマー成分を2重量部〜50重量部、
沸点200℃以上のエポキシ樹脂及び沸点200℃以上のアミン系エポキシ樹脂硬化剤からなるエポキシ樹脂配合物を50重量部以上、
を含有することを特徴とするフッ素樹脂基材接着用樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリマー成分は、ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂の群から選ばれた1種又は2種以上を混合したものである請求項1に記載のフッ素樹脂基材接着用樹脂組成物。
【請求項3】
前記沸点200℃以上のエポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ゴム変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上を混合したものである請求項1又は請求項2に記載のフッ素樹脂基材接着用樹脂組成物。
【請求項4】
アミン系エポキシ樹脂硬化剤は、芳香族ポリアミン、ポリアミド類及びこれらをエポキシ樹脂や多価カルボン酸と重合或いは縮合させて得られるアミンアダクト体の群から選ばれた1種又は2種以上を用いる請求項1〜請求項3のいずれかに記載のフッ素樹脂基材接着用樹脂組成物。
【請求項5】
フッ素樹脂基板に対し金属箔を張り合わせるために用いる樹脂接着剤であって、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のフッ素樹脂基板用樹脂組成物に有機溶剤を添加して混合して得られることを特徴としたフッ素樹脂基材用接着剤。
【請求項6】
前記有機溶剤は、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンのいずれか1種の溶剤又はこれらの混合溶剤である請求項5に記載のフッ素樹脂基材用接着剤。
【請求項7】
金属箔の表面に基材に対する接着層を備えた接着層付金属箔において、
当該接着層は、前記請求項5又は請求項6に記載のフッ素樹脂基板用樹脂接着剤を用いて形成したものであることを特徴としたフッ素樹脂基材用の接着層付金属箔。
【請求項8】
前記接着層付金属箔の接着層は、厚さ0.5μm〜3μmの半硬化樹脂層である請求項7に記載のフッ素樹脂基材用の接着層付金属箔。
【請求項9】
前記接着層付金属箔の接着層は、MIL規格におけるMIL−P−13949Gに準拠して測定したときのレジンフローが5%以内という特性を備えるものである請求項7又は請求項8に記載のフッ素樹脂基材用の接着層付金属箔。
【請求項10】
前記金属箔は、銅箔、ニッケル箔、スズ箔、金箔、銀箔、白金箔、鉄箔、コバルト箔、銅合金箔、ニッケル合金箔、スズ合金箔、金合金箔、銀合金箔、白金合金箔、鉄合金箔、コバルト合金箔のいずれかを用いる請求項7〜請求項9のいずれかに記載のフッ素樹脂基材用の接着層付金属箔。
【請求項11】
フッ素樹脂基材の表面に接着層を介して金属層を張り合わせて得られる金属張積層板であって、
前記接着層は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の樹脂組成物を含むことを特徴とした金属張積層板。
【請求項12】
フッ素樹脂基材の表面に接着層を介して金属層を張り合わせて得られる金属張積層板であって、
前記接着層は、請求項5又は請求項6に記載のフッ素樹脂基材用接着剤を用いて形成したことを特徴とした金属張積層板。
【請求項13】
請求項11又は請求項12の金属張積層板の金属箔をエッチング加工することにより得られることを特徴としたプリント配線板。
【請求項14】
請求項11又は請求項12に記載の金属張積層板の製造方法であって、以下の工程A−1〜工程C−1を経ることを特徴とする金属張積層板の製造方法。
工程A−1: フッ素樹脂基材の金属箔との張り合わせ面に活性化処理を施す工程。
工程B−1: フッ素樹脂基材用接着剤を調製し、このフッ素樹脂基材用接着剤を金属箔の表面に塗布して乾燥することで、金属箔の表面に0.5μm〜3μm厚さの半硬化樹脂層を形成することで接着層付金属箔を製造する工程。
工程C−1: フッ素樹脂基材の活性化処理を施した張り合わせ面に対し、接着層付金属箔の接着層面を当接させて積層して熱間プレス成形することで金属張積層板とする工程。
【請求項15】
請求項11又は請求項12に記載の金属張積層板の製造方法であって、以下の工程A−2〜工程C−2を経ることを特徴とする金属張積層板の製造方法。
工程A−2: フッ素樹脂基材の金属箔との張り合わせ面に活性化処理を施す工程。
工程B−2: フッ素樹脂基材用接着剤を調製し、このフッ素樹脂基材用接着剤を離型性プラスチックフィルムの表面に塗布して乾燥することで、当該離型性プラスチックフィルムと厚さ0.5μm〜3μmの半硬化樹脂層が積層状態にある離型性プラスチックフィルム付接着層を製造する工程。
工程C−2: フッ素樹脂基材の活性化処理を施した張り合わせ面に対し、離型性プラスチックフィルム付接着層の半硬化樹脂層を当接させ重ね合わせて仮接着し、離型性プラスチックフィルムを剥離除去して、当該半硬化樹脂層をフッ素樹脂基材の表面に残す工程。
工程D−2: 工程C−2でフッ素樹脂基材表面に設けた半硬化樹脂層の表面に金属箔を積層して熱間プレス成形することで金属張積層板とする工程。
【請求項16】
請求項11又は請求項12に記載の金属張積層板の製造方法であって、以下の工程A−3〜工程D−3を経ることを特徴とする金属張積層板の製造方法。
工程A−3: フッ素樹脂基材の金属箔の張り合わせ面に活性化処理を施す工程。
工程B−3: フッ素樹脂基材用接着剤を調製する工程。
工程C−3: フッ素樹脂基材の活性化処理した表面に、工程B−3で調製したフッ素樹脂基材用接着剤を塗布して乾燥させることで、0.5μm〜3μm厚さの半硬化樹脂層を形成する工程。
工程D−3: 工程C−3でフッ素樹脂基材表面に設けた半硬化樹脂層の表面に金属箔を積層して熱間プレス成形することで金属張積層板とする工程。
【請求項17】
前記活性化処理は、粗化処理、プラズマ処理、又はこれらを組み合わせた複合処理のいずれかである請求項14又は請求項15のいずれかに記載の金属張積層板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−326923(P2007−326923A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158092(P2006−158092)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】