説明

フッ素系共重合体溶液及びその製造方法

【課題】撥水撥油性、透明性、溶液安定性(溶液での保存安定性)、環境特性、安全性(不燃性)に優れ、且つ塗膜の耐久性、及び各種基材への適合性に優れるフッ素系共重合体溶液を提供する。
【解決手段】フルオロオレフィンとフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体とを必須の重合成分として含んでなる含フッ素共重合体が、水素原子とフッ素原子と炭素原子のみから構成される環状フッ素系溶剤に溶解されてなることを特徴とするフッ素系共重合体溶液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水撥油性、透明性、溶液安定性に優れ、且つ環境対応特性、安全性(不燃性)、材料適合性に優れるフッ素樹脂溶液並びにその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハロゲン系溶剤として使用されてきたクロロフルオロカーボン(CFC)等は、地球温暖化の原因の1つとして挙げられるオゾン層破壊における対象物質としても知られるようになった。近年、このようなオゾン層破壊物質を使用せずに、重合溶媒として一般式:CHR(Rは少なくともフッ素原子1個を含むパーハロメチル基又はパーハロエチル基である)で表される直鎖構造の化合物を含有する溶媒を用いた含フッ素重合体(フルオロオレフィン単位を主構成単位として含有する)の製造方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この方法により得られた含フッ素重合体は耐熱性、耐溶剤性等に優れるものの、非常に高分子量である為、コーティング材料等としては適さない場合が多い。
【0003】
又、オゾン層破壊性や引火性等の問題がなく、フッ素樹脂を安定に溶解させることが出来る炭素原子とフッ素原子のみからなる溶剤、炭素原子とフッ素原子と酸素原子のみからなる溶剤、炭素原子とフッ素原子と窒素原子のみからなる溶剤、及び炭素原子とフッ素原子と酸素原子と窒素原子のみからなる溶剤から選ばれるフッ素系溶剤を用い、フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体あるいはフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体とこれ以外のエチレン性不飽和単量体からなる単量体組成物の滴下重合反応により得られるフッ素樹脂溶液の製造方法が提案されている(特許文献2)。しかしながら、この方法により製造されるフッ素樹脂は主骨格にフルオロオレフィン単位が必須の構成成分となっていないので特に外装材等に用いた場合には充分な耐久性等が得られにくいなどの問題がある。
【0004】
更に、電子・電気部品用防湿コーティング剤としては、フッ化ビニリデン系重合体を含むフッ素樹脂と、フッ素系溶剤とのコーティング組成物が提案されている(特許文献3)。しかしながら、このようなコーティング組成物から得られる被膜は、高撥水性を必要とする用途には適さない場合が多く、未だ充分なものとは言い難い。
【特許文献1】特開平3−17106号公報
【特許文献2】特開平9−132606号公報
【特許文献3】特開2006−307147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記のような問題点を解決するフッ素系共重合体溶液、即ち、撥水撥油性、透明性(溶液状態での溶液の透明性、並びに塗膜化したときの透明性)、溶液安定性(溶液での保存安定性)、環境特性、安全性(不燃性)に優れ、且つ塗膜の耐久性、及び各種基材への適合性(基材表面への接着性及び定着性)に優れるフッ素系共重合体溶液、並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記のような問題点を解決すべく鋭意検討を行った結果、水素原子とフッ素原子と炭素原子のみから構成される環状フッ素系溶剤に、フルオロオレフィンとフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体とを必須の重合成分として含んで構成される含フッ素共重合体を、溶解して得られるフッ素系共重合体溶液が、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、オゾン破壊係数(ODP)がゼロであり、地球温暖化係数(GWP)も直鎖フッ素系溶剤に比べて非常に低い、水素原子とフッ素原子と炭素原子のみから構成される環状フッ素系溶剤を使用すると共に、この環状フッ素系溶剤に上記必須の重合成分を含んで構成される含フッ素共重合体を溶解して得られるフッ素系共重合体溶液及びその製造方法に関するものである。
【0008】
フルオロオレフィンとフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体の構成比としては、特に制限はないが、撥水撥油性及び透明性を向上させるためには、重合単位として、(1)フルオロオレフィンを5〜30モル%、及び(2)フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体を10〜80モル%、を必須成分として含み構成される含フッ素共重合体が溶解されてなるフッ素系共重合体溶液が好ましい。
【0009】
更に好ましくは、本発明は、重合単位として、(1)フルオロオレフィンを5〜30モル%、(2)フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体を10〜80モル%、及び(3)ジシクロペンタニル基含有(メタ)アクリレート及び/又はジシクロペンテニル基含有(メタ)アクリレートより選択される少なくとも1種の単量体を1〜25モル%、を含み構成される含フッ素共重合体が、上記の水素原子とフッ素原子と炭素原子のみから構成される環状フッ素系溶剤に溶解されてなることを特徴とするフッ素系共重合体溶液であり、撥水撥油性、透明性、溶液安定性、環境特性、安全性(不燃性)に優れ、且つ塗膜耐久性、及び各種基材への適合性にも優れるといった特性を有するものである。特に、上記(1)、(2)、及び(3)を必須として含み構成される含フッ素共重合体は、水素原子とフッ素原子と炭素原子のみから構成される環状フッ素系溶剤という特定の溶媒に溶解されることにより、その溶液が無色透明の状態となり、かつ長期間経過してもゲル化することなく、初期の無色透明な溶液状態が保持されるといった優れた溶液安定性を有することになる。
【0010】
また更に本発明は、重合単位として、上記(1)及び(2)の2成分、または上記(1)〜(3)の3成分に加えて、水酸基含有不飽和単量体、アルキルビニルエーテル、アルキルアリルエーテル、フッ素化ビニルエーテル、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、不飽和カルボン酸及び反応性シリコーンの内から選択された1種以上の重合体単位を、さらに含み構成される含フッ素共重合体が、上記環状フッ素系溶媒に溶解されてなるフッ素系共重合体溶液であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の共重合体において、フルオロオレフィンとしては、分子中に1つ以上のフッ素原子を有するオレフィンであって、例えばフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニル、ヘキサフルオロイソブチレン等が好適である。これらのフルオロオレフィンは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せてもよい。
【0012】
特に、CF=CXY(式中、X、Yはそれぞれ水素原子、フッ素原子、塩素原子、またはトリフルオロメチル基を示し、同一であっても異なっていても良い)で表されるフルオロオレフィンが好ましく、さらに好ましくは、フッ化ビニリデン及びテトラフルオロエチレンの内から選択される少なくとも1種のフルオロオレフィンであって、この場合(フルオロオレフィンがフッ化ビニリデン及びテトラフルオロエチレンの場合)に構成された含フッ素共重合体溶液の、透明性、及びその溶液安定性について特に優れる。具体的には50℃の保存安定性試験において、10ヶ月経過後もその溶液に対して光透過性が初期とほとんど変わらないという効果がみられる。
【0013】
また、フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体の具体例としては、
CH2=CHCOOCH2CH2(CF24F、CH2=CHCOOCH2CH2(CF2F、CH2=CHCOOCH2CH2(CF2F、CH2=CHCOOCH2CH2(CF210F、CH2=CHCOOCH2CH2(CF212F、CH2=CHCOOCH2CH2(CF220F、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF2F、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF2F、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF2F、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF210F、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF212F、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF220F、CH2=CHCOOCH2CF、CH2=CHCOOCH22、CH2=CHCOOCH2(CF2F、CH2=CHCOOCH2(CF220F、CH2=C(CH3)COOCH2CF、CH2=C(CH3)COOCH2(CF2F、CH2=C(CH3)COOCH2(CF220F、CH2=C(CH3)COOCH2CF(CF、CH2=C(CH3)COOCH2CFHCF、CH2=C(CH3)COO(CH2(CF210F、CH2=C(CH3)COO(CH2CF(CF、CH2=C(CH3)COOCH(CH3)CFCFHCF、CH2=C(CH3)COOCH(C25)C1021、CH2=CHCOOCH(CF)C817、CH2=CFCOOCH2(CF22F、CH2=CFCOOCH2CH2(CF26F、CH2=CH(CF2F、CH2=CH(CF2F、CH2=CH(CF210F、CH2=CH(CF212F、CH2=CHCOOCH2(CF22H、CH2=CHCOOCH2(CF24H、CH2=CHCOOCH2(CF26H、CH2=CHCOOCH2(CF28H、CH2=CHCOOCH2(CF210H、CH2=CHCOOCH2(CF212H、CH2=CHCOOCH2(CF214H、CH2=CHCOOCH2(CF218H、CH2=CHCOOCH2(CF220H、CH2=C(CH3)COOCH2(CF24H、CH2=C(CH3)COOCH2(CF26H、CH2=C(CH3)COOCH2(CF28H、CH2=CHCOOC(CH3248H、CH2=C(CH3)COOC(CH3248H、CH2=CHCOOC(CH32612H、CH2=C(CH3)COOC(CH32612H、CH2=CHCOOCH2CH(OH)CH2817、CH2=C(CH3)COOCH2CH(OH)C481837、CH2=CHCOO(CH2N(CH3)COC1225、CH2=CHCOO(CH22N(C25)SO17
等が挙げられる。更に、主鎖中に酸素原子が介在するモノマー(例えば(CFOFOCFCF−等)であっても良い。特に、CH2=CHCOOCH2CH2(CF2F(2−ペルフルオロオクチルエチルアクリレート)、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF2F(2−ペルフルオロオクチルエチルメタクリレート)、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF2F、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF2Fが好ましい。これらのフッ素化アルキル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せてもよい。
【0014】
また本発明の共重合体を構成する重合単位としてのジシクロペンタニル基含有(メタ)アクリレート又はジシクロペンテニル基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートが挙げられるが、特にジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレートが好適である。これらのアクリレートを単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせても良い。
【0015】
また本発明の共重合体の残部として含有される重合単位としての水酸基含有不飽和単量体の具体例としては、ヒドロキシメチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオール、グリセロール α−モノアリルエーテル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等が好適である。これらの水酸基含有不飽和単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せてもよい。
【0016】
またアルキルビニルエーテルの具体例としては、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、グリシジルオキシメチルビニルエーテル、グリシジルオキシエチルビニルエーテル、グリシジルオキシブチルビニルエーテル、グリシジルオキシペンチルビニルエーテル、グリシジルオキシシクロヘキシルビニルエーテル、ペルフルオロオクチルエチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0017】
また本発明の共重合体を構成する重合単位としてのアルキルアリルエーテルの具体例としては、エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル、イソブチルアリルエーテル、n−プロピルアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0018】
またフッ素化ビニルエーテルの具体例としては、CF=CFOCF、CF=CFO(CFF、CF=CFO(CFF、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCF等が挙げられる。
【0019】
またアクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。
【0020】
またメタクリル酸エステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。
【0021】
また不飽和カルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、イタコン酸、2−ヘキセン酸、3−ヘキセン酸、5−ヘキセン酸等が挙げられる。
【0022】
本発明の含フッ素共重合体は、撥水撥油性、透明性、耐薬品性、耐候性に優れた塗膜を形成することが出来るが、さらにこれらの単位に加えて、使用目的などに応じて30モル%を超えない範囲で他の共重合可能な単量体単位を含むこともできる。
【0023】
該共重合可能な単量体として、例えば片末端がメタクリル変性されたポリジメチルシロキサン、両末端がメタクリル変性されたポリジメチルシロキサン、両末端がビニル変性されたポリジメチルシロキサン、片末端がメタクリル変性された含フッ素ポリジメチルシロキサン等の反応性シリコーン類;エチレン、プロピレン、スチレン等のオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロオレフィン類;酢酸ビニル、n−酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のアルカンカルボン酸とビニルアルコールとのエステル類;N−ビニルアセトアミドや、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート等の親水性付与単量体類が挙げられる。
【0024】
本発明の含フッ素共重合体は、その一態様においての必須成分として、重合単位として、フルオロオレフィンを5〜30モル%、フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体を10〜80モル%含み構成されることを特徴とする。更にもう一様態においての必須成分として、重合単位として、フルオロオレフィンを5〜30モル%、フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体を10〜80モル%、ジシクロペンタニル基含有(メタ)アクリレート及び/又はジシクロペンテニル基含有(メタ)アクリレートを1〜25モル%含み構成されることを特徴とする。
【0025】
本発明の含フッ素共重合体において重合単位フルオロオレフィンが5モル%より少ない場合には、外装塗料として用いる場合に充分な耐候性や耐汚染性が得られず好ましくない。またそれが30モル%より多い場合には、塗膜の透明性が低下する(ヘイズ値が1%を超えてくる)ほか、撥水材料として用いる場合に、100°以上の高撥水性が得られず好ましくない。より好ましくは5〜25モル%である。
【0026】
また、フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体の割合が10モル%より少ない場合には、撥水材料として用いる場合に、100°以上の高撥水性が得られず好ましくない。またそれが80モル%より多い場合には塗料ベースとして用いる場合に充分な塗膜硬度が得られず好ましくない。より好ましくは20〜60モル%である。
【0027】
またもう一態様においてシクロペンタニル基含有(メタ)アクリレート及び/又はジシクロペンテニル基含有(メタ)アクリレートを含む事であり、シクロペンタニル基含有(メタ)アクリレート及び/又はジシクロペンテニル基含有(メタ)アクリレートを1モル%より少ない場合には、塗料ベースとして用いる場合に充分な塗膜硬度が得られず好ましくない。それが25モル%より多い場合には繊維撥水材料に用いる場合に風合いが損なわれ好ましくない。より好ましくは2〜15モル%である。
【0028】
本発明の含フッ素共重合体は、所定割合の単量体混合物を重合開始剤を用いて共重合させることにより製造することができる。
【0029】
このための該重合開始剤としては、重合形式や所望に応じて用いられる溶媒の種類に応じて、油溶性のものあるいは水溶性のものが適宜用いられる。
【0030】
油溶性開始剤としては、例えば、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル型有機過酸化物;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート型有機過酸化物;メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド型有機過酸化物;1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール型有機過酸化物;t-ヘキシルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド型有機過酸化物;ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド型有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等が用いられる。
【0031】
水溶性開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、あるいはこれらと亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤との組み合わせからなるレドックス開始剤、さらにはこれらに少量の鉄、第一鉄塩、硝酸銀等を共存させた無機系開始剤やコハク酸パーオキサイド、ジグルタル酸パーオキサイド、モノコハク酸パーオキサイド等の二塩基酸塩の有機系開始剤等が用いられる。
【0032】
これらの重合開始剤の使用量は、その種類、共重合反応条件等に応じて適宜選ばれるが、通常使用する単量体全量に対して、0.005〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、特に好ましくは0.1〜2重量%の範囲で選ばれる。
【0033】
また重合方法については特に制限はなく、例えば、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法等を用いることが出来るが、好ましくは溶液重合であり、本発明のフッ素系共重合体溶液を1工程で得る事が出来る。加えて、光重合開始剤を用いれば、低温での光による共重合反応が可能である。
【0034】
本発明で特徴とされる水素原子とフッ素原子と炭素原子のみから構成される環状フッ素系溶剤の具体例としては、1H,1H,2H−ヘプタフルオロシクロペンタン(1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン)、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロシクロペンタン、 1H,2H−オクタフルオロシクロペンタン、1,2,3,4,5−ペンタフルオロシクロペンタン、1,1,2,2,3,4,5−ヘプタフルオロシクロペンタン、1H−ノナフルオロシクロペンタン、1,1,2,2,3−ペンタフルオロシクロブタン、1,1,2,3,3−ペンタフルオロシクロブタン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロシクロブタン、1,1,2,3,3,4−ヘキサフルオロシクロブタン、cis−1,1,2,2,3,4−ヘキサフルオロシクロブタン、trans−1,1,2,2,3,4−ヘキサフルオロシクロブタン、1,2,3,4,5,6−ヘキサフルオロシクロヘキサン、1,1,2,3,4,4,5,6−オクタフルオロシクロヘキサン、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロシクロヘキサン等が挙げられ、これらを単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせても良い。
【0035】
これらの中でも、特に、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、1H,2H−オクタフルオロシクロペンタンが好ましく、例えば、前者において、市販品としては、ゼオローラH(日本ゼオン(株)製環状フッ素系溶剤、ゼオローラは登録商標)等が挙げられる。
【0036】
それぞれの共重合反応における反応温度は、通常−30℃〜210℃での範囲内で、重合開始剤や重合媒体の種類に応じて適宜選ばれる。例えば、溶媒中で共重合を行う場合には、通常0℃〜170℃、好ましくは10℃〜130℃、特に好ましくは30〜110℃の範囲で行われる。また、反応圧力については特に制限はないが、通常0.01〜10MPa、好ましくは0.02〜5MPaの範囲で選ばれる。反応において重合阻害を起こさない窒素加圧も使用可能である。さらに、該共重合反応は、適当な連鎖移動剤を添加して行うことができる。
【0037】
本発明のフッ素系共重合体溶液中の含フッ素共重合体の分子量としては、特に限定されるものではないが、溶媒にテトラヒドロフラン(THF)、標準物質としてポリスチレンを用い、GPC(ゲル パーミッション クロマトグラフィー:ゲル浸透クロマトグラフ装置等とも称する)により測定される重量平均分子量値(Mw)が、5,000〜3,000,000であることが好ましく、より好ましくは7,000〜2,000,000の範囲、さらに好ましくは10,000〜1,000,000の範囲である。Mwが、5,000未満では塗膜の靱性低下や耐薬品性低下、表面定着性低下が起こりやすく、また、3,000,000を超えると溶液粘度が非常に高くなったり、均一溶液が得られなくなったりするため、コーティング時又は塗装時の作業性が低下する。このMwは、共重合反応を行う際の溶媒種類や量、溶媒に対する原料モノマーの仕込み濃度、開始剤種類や量、重合反応温度や時間などを調整することにより、およそ制御可能である。
【0038】
また、本発明のフッ素系共重合体溶液中の含フッ素共重合体の屈折率(n)としては、特に限定されるものではないが、アッベ屈折計により測定した屈折率が、1.32〜1.59であることが好ましく、より好ましくは1.33〜1.56の範囲、さらに好ましくは1.34〜1.50の範囲である。本発明のフッ素系共重合体溶液を低屈折率材料として用いる場合には、特に1.32〜1.48の範囲が好ましい。
【0039】
本発明のフッ素系共重合体溶液中の含フッ素共重合体が硬化部位として水酸基を含有する場合には、多価イソシアネート類を用いて常温で硬化させることができる。該多価イソシアネート類としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、水添MDI、トリレンジイソシアネート(TDI)などのジイソシアネートやその付加物(プレポリマーも含む)、及びこれらジイソシアネート由来のポリイソシアネート(ビウレット型、イソシアヌレート型、アダクト型)、2−イソシアナートエチル2,6-ジイソシアナートヘキサノエート等が好ましく挙げられるが、これらの中でIPDI系ポリイソシアネート(アダクト型、イソシアヌレート型)、TDI系ポリイソシアネート(アダクト型)、HDI型ポリイソシアネート(ビウレット型、イソシアヌレート型、アダクト型)、XDI(アダクト型)、水添XDI(アダクト型)、2−イソシアナートエチル2,6-ジイソシアナートヘキサノエートが特に有効である。イソシアネート類を用いて常温硬化を行わせる場合には、ジブチル錫ジラウレート等の有機スズ化合物、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等のアミン系触媒等の公知触媒の添加によって硬化を促進させることもできる。
【0040】
さらに、ブロック化多価イソシアネート類も硬化剤として好適に用いることができる。また、メラミン硬化剤または尿素樹脂硬化剤の使用に際しては、酸性触媒、有機スズ化合物の添加によって硬化を促進させることもできる。硬化促進剤は1種を用いてもよく、2種以上を併用しても良い。
【0041】
さらに、メラミン硬化剤、尿素樹脂硬化剤、多塩基酸硬化剤などを用いて加熱硬化させることもできる。該メラミン硬化剤としては、例えばブチル化メラミン、メチル化メラミン、エポキシ変性メラミン等が挙げられ、用途に応じて各種変性度の物が適宜用いられ、また自己縮合度も適宜選ぶことができる。尿素樹脂硬化剤としては、例えばメチル化尿素樹脂やブチル化尿素樹脂等が挙げられ、多塩基酸硬化剤としては、例えば長鎖脂肪族ジカルボン酸、芳香族多価カルボン酸類およびこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0042】
また、本発明のフッ素系共重合体溶液中の含フッ素共重合体が硬化部位としてエポキシ基を含有する場合には、通常の硬化性エポキシ塗料に用いられている硬化剤、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のような脂肪族アミン類またはその変成物、メタフェニレンジアミン、p−p’−ジアミノジフェニルメタン、ジアミノフェニルスルホン等のような芳香族アミン類またはその変性物、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水シュウ酸、ヘキサヒドロフタル酸、ピメリン酸等の多価のカルボン酸またはその無水物、グラフト1級アミノ基を側鎖に有するポリマー、グラフト1級アミノ基を側鎖に有するアクリル系ポリマー等が挙げられる。
【0043】
また、本発明のフッ素系共重合体溶液中の含フッ素共重合体が水酸基等の官能基を有する場合、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等の末端にイソシアネート基を有する単量体とのウレタン反応により、側鎖に不飽和基である(メタ)アクリレート基を導入することができる。更に塩化シンナモイルや(メタ)アクリル酸クロライドとの脱塩酸反応、アクリル酸やメタクリル酸との脱水縮合反応により、側鎖に不飽和基である(メタ)アクリレート基を導入することもできる。該不飽和基含有含フッ素共重合体を含むフッ素系共重合体溶液に、光重合開始剤や熱重合開始剤を添加し、塗布後に紫外線(UV)照射処理や電子線照射処理や加熱処理を行うことにより、前述のような硬化剤を使用せずに硬化被膜を得ることが出来る。電子線照射処理の場合は、光重合開始剤があっても良いし、なくても良いが、光重合開始剤を使用することにより電子線の照射量を少なくできる。即ち、通常の照射量10〜200kGyに対し、5〜80kGyで硬化可能となる。紫外線照射処理する場合の雰囲気としては、空気中や窒素中、炭酸ガス中等が挙げられる。
【0044】
本発明のフッ素系共重合体溶液を主成分とする塗料を製造する場合には種々の溶媒が使用可能であり、前述の水素原子とフッ素原子と炭素原子のみから構成される環状フッ素系溶剤が最も好ましいが、その他にも例えば、酢酸エチルや酢酸ブチル等の酢酸エステル類、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトン等のケトン類、キシレンやトルエン等の芳香族炭化水素類、エチルセロソルブ等のグリコールエーテル類、イソプロピルアルコールやn−ブタノール等のアルコール類、市販の各種シンナー類、鎖状HFCやHFE等のフッ素系溶剤類等が挙げられる。また、必要に応じてアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂等の他樹脂を添加することが可能で、これら他樹脂に対して含フッ素共重合体を全樹脂中に5〜95重量%、特に10〜80重量%含むように調節して使用するのが好ましい。
【0045】
本発明のフッ素系共重合体溶液と各種溶媒あるいは各種樹脂との混合は、ボールミル、ペイントシェーカー、サンドミル、三本ロールミル、ニーダー等の通常の塗料化に用いられる種々の機器を用いて行うことが出来る。この際、必要に応じて顔料、色素、分散安定剤、沈降防止剤、粘度調節剤、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、シリコーン系カップリング剤、コロイダルシリカ、PTFE分散液等を添加することもできる。また、該フッ素系共重合体溶液と金属酸化物の微粉末の混合や該フッ素系共重合体溶液とシリカ微粉末の混合においても、上記方法を用いることができる。
【0046】
本発明のフッ素系共重合体溶液は各種基材を溶解しない為に材料適合性に優れる。塗布対象物としての基材には特に制限はなく、有機材料も無機材料も用いることができる。例えば、使用できる基材の材料として、アクリル材、木材、プラスチック(PET、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、PEN、PPS、塩ビ、ABS、PMMA、PC等)、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、ニッケル、SUS等)、フィルム(無処理、コロナ放電処理、易接着処理等)、グラファイト、紙、コンクリート、アスファルト、天然大理石、人工大理石、不燃材(石膏ボード、珪酸カルシウム板、フレキシブルボードなどのセラミック材等)、ガラス、FPR、カーボン、繊維、衣服、炭素繊維、ビニールレザー、ノンハロゲンレザー、クロス、合成皮革、天然皮革、印刷板等が挙げられるが、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0047】
更に本発明のフッ素系共重合体溶液は基材に対して均一な被膜を形成することが可能である為、塗布対象物としての基材の形状に特に制限はなく、平面状であっても凹凸があってもよい。本発明の塗膜を有する物品は、各種の内装用途、屋外用途に用いることができる。
【0048】
塗布方法は、特に限定されず、たとえばエアースプレーコート、エアーレススプレーコート、グラビアコート、ドクターナイフコート、カーテンコート、フローコート、ロールコート、バーコート、刷毛塗り、静電塗装等が挙げられる。
【0049】
更に、本発明のフッ素系共重合体溶液から形成される被膜が基材表面を覆う単位面積辺りのコート面積は、全面にされたコート表面が好ましいが、部分的でも構わない。
【0050】
また、本発明のフッ素系共重合体溶液を、上記の各種基材に対して平滑となるように塗布して得られる塗膜は、該塗膜に対する純水の撥水角が100°〜116°とすることができ、必須とする重合成分の比率を選択することで、好ましくは110°〜116°とすることが可能となる。
【0051】
また更に、本発明のフッ素系共重合体溶液を塗布して得られる塗膜は、必須とする重合成分の各比率を選択することで、そのヘイズ値を1%以下、特には0.10〜0.40%にすることが可能である。
【0052】
そして更に、本発明のフッ素系共重合体溶液は、撥水撥油性、透明性、溶液安定性に優れ、且つ環境対応特性、安全性(不燃性)、材料適合性に優れる為に、各種用途に使用する事が出来る。例えば、撥水撥油剤、防水剤、防油剤、転落性付与剤、滑落性付与剤、防汚コート剤、指紋付着防止剤、耐磨耗剤、傷付き防止剤、スベリ剤、潤滑剤、離型剤、剥離剤、非粘着剤、接着剤、接着添加剤、防湿コート剤、防湿絶縁コート剤、オイルバリア剤、這い上がり防止剤、防錆剤、絶縁コート剤、電子部品コート剤、プリント配線基板コート剤、レジスト材料、モールド材料、モールド離型剤、ナノインプリント材料、リソグラフィー材料、導電剤、電極材料、電磁波シールド材、太陽電池材料、光ファイバーのコア材、光ファイバーのクラッド材、反射防止膜材料、光学材料、光学接着剤、帯電防止剤、帯電コート剤、帯電調節剤、フィルム形成材料、界面活性剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、レベリング剤、表面改質剤、反応における添加剤、反応における溶媒、光沢付与剤、高硬度付与剤、難燃剤、外装塗料、内装塗料等が挙げられるが、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【実施例】
【0053】
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0054】
実施例1
内容積540ccのステンレス製攪拌機付きオートクレーブ(耐圧10MPa)に、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(以下、c−HFPと略す)360g、メチルメタクリレート(以下、MMAと略す)9.2g(50モル%)、ジシクロペンタニルメタクリレート2.0g(5モル%)、2−(ペルフルオロオクチル)エチルメタクリレート37.9g(40モル%)、t−ブチルパーオキシピバレート(触媒)0.64gを入れた。系内の酸素を除去する為に窒素置換を2回行い、更に深冷脱気した後、テトラフルオロエチレン(以下、TFEと略す)1g(5モル%)を入れ、常温に戻した。続いて、攪拌しながら内温を60℃に昇温した。その後、攪拌しながら加温し60℃一定を保持して反応を17時間継続した。17時間後、攪拌を停止し、オートクレーブを水冷した。オートクレーブより取り出された反応液は、無色透明液体(目視による外観観察並びに濁度計観測を実施)であり、ゲル化を生じることはなかった。得られたフッ素系共重合体溶液の収量は407g、加熱残分(100℃で24時間乾燥操作前後の重量変化から算出)は11.6%、反応率は94%であった。又、フッ素系共重合体溶液中に溶解している含フッ素共重合体の燃焼法によるフッ素含有量は51重量%、GPC(東ソー(株)高速GPC装置HLC−8220GPC、THF溶媒、ポリスチレン換算)で測定した重量平均分子量(Mw)は81000であった。
【0055】
得られたフッ素系共重合体溶液を容量100ccの透明ガラス瓶に7割ほど入れ(気相部はair)、密栓した。その後、このガラス瓶を50℃の恒温器に入れて保存安定性試験を行なったところ、3ヶ月後も増粘はなく良好な保存安定性を示した。
【0056】
他方、得られたフッ素系共重合体溶液を、ガラス板上に#16バーコーターにて塗布し、常温で4日間乾燥し、評価用塗膜を作成した。フッ素系共重合体溶液から得られた評価用塗膜の塗膜諸特性を以下の方法で調べた。結果を表1に示す。
【0057】
[Haze(ヘイズ)値]
日本電色工業(株)製 濁度計(濁り計)NDH2000により、作成塗膜の光線透過率を、常温にて測定し、次式によって算出した。
ヘイズ値(%)=(散乱光/全光線透過光)×100
[表面性]
目視により5段階評価を行った。
良好(表面性状が平滑である)
やや良好(表面性状がおおよそ平滑である)
普通(平滑の部分と凹凸の部分がある)
やや劣る(凹凸の部分がかなり目立つ)
劣る(表面性状が平滑でなく、凹凸である)
[撥水性]
協和界面科学(株)製 CONTACT-ANGLE METER CA-DTにて、各塗膜表面と純水との接触角を常温にて測定した。
[撥油性]
協和界面科学(株)製 CONTACT-ANGLE METER CA-DTにて、各塗膜表面とn−デカンとの接触角を常温にて測定した。
[鉛筆硬度]
JIS−K5400 6.14(鉛筆引っかき試験)により常温にて試験した。
[屈折率(n)]
(株)アタゴ製 多波長アッベ屈折計DR-M2 干渉フィルター589(D)nmを使用して測定した。
測定温度23℃ 波長589nm(D線)
[静摩擦係数]
新東科学(株)ポータブル摩擦計 HEIDONトライボギアミューズ TYPE:94iにて
各塗膜表面とナイロン繊維との静摩擦係数を常温にて測定した。
【0058】
実施例2〜11
表1〜2に示す仕込み組成にて、実施例1と同様に反応を行い、フッ素系共重合体溶液を得た。又、実施例1と同様に評価用塗膜を作成し、実施例1と同様に評価を行った。その結果を表1〜2に示す。
【0059】
比較例1
表3に示すように、実施例1の仕込み組成のうち、重合溶媒を酢酸ブチル400gに変えた以外は実施例1と同様な仕込組成及び反応条件にて反応を行った。その結果、溶液では得られずゲル化物となった。
【0060】
比較例2〜3
表3に示すように、重合溶媒に比較例2ではハイドロフルオロエーテル(HFE)であるNovecTMHFE−7200(COC:住友スリーエム(株)製)を用い、又比較例3では直鎖HFCであるバートレル−XF(HFC-43-10mee)(CF3CHFCHFCF2CF3:三井・デュポンフロロケミカル(株)製、バートレルは登録商標)を用い、表3に示す仕込組成にて実施例1と同様な反応条件にて反応を行った。その結果、溶液では得られなかった。
【0061】
比較例4
表4に示すように、実施例1の各仕込みモノマー量を4倍量(重量比)とし、触媒を0.64gから0.01gに減量し、重合溶媒を360gから200gに減量し、また反応温度を17時間から48時間に延長した以外は実施例1と同様な仕込組成で反応を行った。その結果、オートクレーブより取り出された反応液は、不透明な不均一液体(目視による外観観察並びに濁度計観測を実施)であり、実施例1のように無色透明液体は得られなかった。
【0062】
比較例5
表4に示すように、実施例1の各仕込みモノマー量を1/5量(重量比)とし、触媒を0.64gから1.27gに増量した以外は実施例1と同様な仕込組成及び反応条件で反応を行った。その結果、オートクレーブより取り出された反応液は、無色透明液体(目視による外観観察並びに濁度計観測を実施)であった。しかしながら、実施例1と同様にして得られたフッ素系共重合体溶液を、ガラス板上に#16バーコーターにて塗布し、常温で4日間乾燥し、評価用塗膜を作成したところ、塗膜表面にハジキが発生し、表面性状が平滑な塗膜は得られなかった。
【0063】
尚、実施例及び比較例及び表中の略語は以下の通りである。
【0064】
TFE:テトラフルオロエチレン
MMA:メチルメタクリレート
c−HFP:1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン
c−OFP:1H,2H−オクタフルオロシクロペンタン
M%:モル%
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロオレフィンとフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体とを必須の重合成分として含んでなる含フッ素共重合体が、水素原子とフッ素原子と炭素原子のみから構成される環状フッ素系溶剤に溶解されてなることを特徴とするフッ素系共重合体溶液。
【請求項2】
含フッ素共重合体が、(1)フルオロオレフィンの5〜30モル%、及び(2)フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体の10〜80モル%、を含み構成されることを特徴とする請求項1記載のフッ素系共重合体溶液。
【請求項3】
フルオロオレフィンとフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体、さらに、ジシクロペンタニル基含有(メタ)アクリレート単量体及びジシクロペンテニル基含有(メタ)アクリレート単量体より選択される少なくとも1種の単量体を必須の重合成分として含んでなる含フッ素共重合体が、水素原子とフッ素原子と炭素原子のみから構成される環状フッ素系溶剤に溶解されてなることを特徴とするフッ素系共重合体溶液。
【請求項4】
含フッ素共重合体が、(1)フルオロオレフィンの5〜30モル%、(2)フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体の10〜80モル%、ならびに(3)ジシクロペンタニル基含有(メタ)アクリレート単量体及びジシクロペンテニル基含有(メタ)アクリレート単量体より選択される少なくとも1種の単量体の1〜25モル%、を含み構成されることを特徴とする請求項3記載の含フッ素共重合体溶液。
【請求項5】
水素原子とフッ素原子と炭素原子のみから構成される環状フッ素系溶剤を溶媒に、フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体を含む重合成分を溶解し、30〜110℃の温度条件において、その溶液を攪拌しながら溶液中にフルオロオレフィンを導入し、フルオロオレフィンとフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体とを必須の重合成分として含む共重合体を合成する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフッ素系共重合体溶液の製造方法。
【請求項6】
水素原子とフッ素原子と炭素原子のみから構成される環状フッ素系溶剤を溶媒に、ジシクロペンタニル基含有(メタ)アクリレート単量体及びジシクロペンテニル基含有(メタ)アクリレート単量体より選択される少なくとも1種の単量体と、フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体とを含む重合成分を溶解し、30〜110℃の温度条件において、その溶液を攪拌しながら溶液中にフルオロオレフィンを導入し、フルオロオレフィンとフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体、さらに、ジシクロペンタニル基含有(メタ)アクリレート単量体及びジシクロペンテニル基含有(メタ)アクリレート単量体より選択される少なくとも1種の単量体を必須の重合成分として含む共重合体を合成する、ことを特徴とする請求項3又は4に記載のフッ素系共重合体溶液の製造方法。
【請求項7】
溶液が無色透明であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフッ素系共重合体溶液。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のフッ素系共重合体溶液を塗布して得られる塗膜であって、該塗膜に対する純水の撥水角が100°〜116°であることを特徴とする塗膜。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のフッ素系共重合体溶液を塗布して得られる塗膜であって、そのヘイズ値が1%以下であることを特徴とする塗膜。
【請求項10】
含フッ素共重合体が、水酸基含有不飽和単量体、アルキルビニルエーテル、アルキルアリルエーテル、フッ素化ビニルエーテル、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル及び不飽和カルボン酸の内から選択される少なくとも1種の重合成分を、さらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフッ素系共重合体溶液。
【請求項11】
含フッ素共重合体のGPC(ゲル パーミッション クロマトグラフィー)で測定される重量平均分子量値(Mw)が、5,000〜3,000,000であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフッ素系共重合体溶液。
【請求項12】
フルオロオレフィンが、CF=CXY(式中、X、Yはそれぞれ水素原子、フッ素原子、塩素原子、またはトリフルオロメチル基を示し、同一であっても異なっていても良い)で表されるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフッ素系共重合体溶液。
【請求項13】
水素原子とフッ素原子と炭素原子のみから構成される環状フッ素系溶剤が、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、1H,2H−オクタフルオロシクロペンタンの内から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフッ素系共重合体溶液。
【請求項14】
フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体が、CH2=CHCOOCH2CH2(CF2F、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF2F、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF2F、CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF2Fの内から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフッ素系共重合体溶液。

【公開番号】特開2008−280530(P2008−280530A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100267(P2008−100267)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000157119)関東電化工業株式会社 (68)
【Fターム(参考)】